Coolier - 新生・東方創想話

月の夜

2008/10/13 18:43:50
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窓からのぞく闇
月はない

土砂降り
耳鳴りのように、ただ

礼拝堂
椅子の群れ

雨のにおい
ステンドグラス
燭台には赤、灯火
転々と並ぶ

照らされる顔


爛々と、暴虐
照らされる金属
反射する刃
爛々と、暴虐


身を捩る度、音が知らせてくれる
ワタシの有様
吊るされているのは、ワタシ

延々と続く
誰かが刃を振るう
飛び散る、赤

切り離して――痛みを
切り離して――感情を
早く直して――傷口を
先へ進めて――傷口を
元に戻して――感覚を
元に戻して――感情を
はい、元通り

土砂降り
耳鳴りのように
延々と続く


前はいた
母と呼べる人も
父と呼べる人も
今はいない

ある日、父は
真っ赤になって
ある日、母は
真っ青になって
そして、ワタシは
真っ白になった

それから、どれだけ経った?


延々と、延々と
男も女も疲れ果て
それでも、はい、元通り

不意に
男が目の色を変えた
女も目の色を変えた
それぞれ、別々の色
目線を下に向けると、長い脚
脚が隠れたスカートも
膝が隠れていなかった
目線を横に向けると、長い腕
長袖着ていたはずなのに
半袖着ているような丈
誰の身体?
ワタシの身体
もっと小さかった筈なのに

元通りにはならなかった


男の目つきが変わった
別のものを見るように
絡みつく
気持ち悪い

怖いと思う
新鮮

鎖から外されて
別の場所へと引きずられ

今度は元通りになるかしら
漠然と不安

不意に風
赤い風
不意に霧
赤い霧

風ではなかった
女の子
目の前の男を吹き飛ばし

霧ではなかった
男の身体
もう跡も形も無い

女の子は風
めまぐるしく吹き荒び
男も女も
みんなみんな赤い霧

「悪魔と魔女の区別もつかないのか。人間め」
もう、誰もいなくなって
ワタシもいなくなるのかな

「あら、あなたは何かしら」
ワタシはなにかしら

――白
喉からは木枯らし

「白? なに、それ」
でも、通じた

――何も無いから白
ひゅうひゅうと、風の音

――今日の月みたい
――何も無い、白

「あら、今日は雨よ」
でも、通じた

――今日は少し欠けた月

「そうね。わたしは、紅よ。昨日の月のように」

紅い、満月
まぶしい

「…あなた、いくつかしら」

――6歳、より上

「より上?」

――数えるの、やめちゃった

「なるほど、白ね」
紅い三日月、口

「身体と心があっていないわ」

――時間
――早回し
――やりすぎ

大きな紅い瞳
ますます大きく
まるで満月

「そんなことが出来るの?」

首肯

切り離す――自分自身と世界
全て凍る――まず立ち上がる
全て凍る――その世界を歩く
全て凍る――バランスを崩す
全て凍る――この身体は重い
全て凍る――バランスを崩す
全て凍る――必死に辿り着く
元に戻す――自分自身と世界

立つ
紅い月の背後

振り返る
紅い月
驚き
やがて
満面の笑み

「すごいわ、本当にすごい。本当に人間なのかしら」

ニンゲン
ルーツ
過去

ワタシは、何?

――ワタシは何?

「あなたはあなただわ。それ以外の何でもないじゃない」

アナタハ、アナタヨ

「あなたが何だって構わないわ。」

タトエ、アナタガナニデアレ

「私はあなたが気に入ったの」

ワタシハ、アナタヲアイシテイルワ

「一緒に、行きましょう」

コレカラモ、ズット、イッショニ

過去
交錯

――うそ

「嘘ではないわ」


感情
悲哀

――ワタシ、置いてかれた

「私はあなたを置いていかない」


苦悶
無念

――みんな逝く、怖い

「私は死なない」

赤母青父白…



ただ、真摯
悪魔


不思議な、安らぎ

――どこへ、行くの

「どこへでも。私と共に。あなたと共に」

紅く
どこまでも紅く

「でも、あの雨が上がってから」

紅が
滲んで
意識も
滲んで
やさしい紅に
包まれる
安らぎ
遠のく意識

「目覚めた頃には雨も上がるわ。そうしたら、出発しましょう」

髪に触れる
優しい手

意識が滲んで
でも、傍らにある
あり続ける

永遠に紅い月
Closetとか言う物置です。

…作品自体に迷いは無いですが、ここに投稿することに若干迷いがあります。ありました。
「これってSSなのか」とか、「2次創作の体を保てているのか」とか、「怒られないかな」とか。

作中に固有名詞を一切出さなかった(多分)ので、蛇足とは思いつつ書き添えると、
咲夜さん視点での、レミリアとの出会いの場面です。

思い描いた空気と感情が多少なりとも伝わっていることを、切に願います。

それでは。
Closet
[email protected]
http://unlockcloset.blog116.fc2.com/
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コメント



0.390簡易評価
1.30名前が無い程度の能力削除
単語の羅列で雰囲気を出したいっていうのは、正直「逃げ」じゃないかな。作者さんはあえてそうしたのかもしれないが。
ちゃんとした文章の中にそういった部分があるのならまだしも、全編通してというのはちょっと。
あまりに詩的というか、文章の体裁をなしていないと思うのでこの点数で。
5.10削除
よほど文章力が高くないかぎり奇策に出たところで面白くはない。キャンバスに適当に絵具を塗りつけただけの自称前衛芸術という感じがする。
6.60名前が無い程度の能力削除
悪くはないと思います。
最初、某ケータイ小説のパロディかとは思いましたがw
7.20名前が無い程度の能力削除
解説無しで東方SSと分からないのは問題かと。
9.10名前が無い程度の能力削除
意味不明、夢日記はご勘弁。
10.50煉獄削除
悪くはなかったのですが・・・ちょっと理解するのが難しいですね。
後書きで咲夜さんとレミリアのやりとりだと見るまでは
このレミリアと話している人物が咲夜さんだと気付かなかったです。
次回、期待したいですね。
17.30名前が無い程度の能力削除
 表現したいイメージが、薄暗い何かと、何物かが出会ったと言う点は伝わりましたが、それも表層過ぎてやや上滑りして見えます。
 恐らくClosetさんの目には、ありありと情景が見えており、その情景にはふさわしい詩なのでしょうが、読者にはその情景は削除されているのです。あるのは断片的な説明だけ。
 また、それは東方を未見の方が読んでも理解できる汎用性を狙ったものかと推測しますが、それはお勧めできません。
 東方のキャラクターは映像媒体の影響が強く、その名前を出しただけで人物像がくっきりと浮き出てくるくらいのインパクトがあります。その強烈なインパクトを利用しないでいるのは、損ですし、或いは読者に対して不親切です。
 隠すなら、きちんと隠したことへのカタルシスを与える必要があります。この作品には残念ながら、隠された者の開示、解放と言うカタルシスはありませんでした。
 そもそもこの文章は、平坦すぎて第三センテンスで飽きてしまいます。それは隠喩、或いは暗喩の不足であり、名詞がイメージ表現にしか過ぎない証拠でもあります。
 折角レミリアと咲夜の出会いと言うテーマがあるのですから、冒頭からよりそのテーマを生かしてより暗喩と隠喩との連鎖を狙い、積極的に文章にひきつけていく遊びを惜しむべきではありません。
「雨の日に吸血鬼は外に出られない」
 と言う東方では当たり前のことでも、明示されなければ文章で流されてしまいます。第一センテンスで告げられているのは、雨が降っていることだけで、それだけでは読者の興味を奪うには至らないのです。恐らく「雨」と言う単語と、第四センテンスまでの流れで、読者が読み取ってくれるであろうと言う期待があったのでしょうが、それは著者の希望でしかないのです。
 東方の二次創作としても欠けておりすし、オリジナル創作としてもハンパです。
 私たち読者が見たいのは、closetさんの幻視した情景であり、その補足文章ではないのです。あえて詩的表現と言う茨の道を進まれるのでしたら、より遊ぶ術を心得ることがよろしいかと。

 ちなみに、第六センテンスくらいまでの出来事は、長くて二(これでも長すぎるくらい)短ければ一センテンスで収まる話です。
 つまりレミリア・スカーレットが何者か(恐らく吸血鬼狩人)に襲われていると言う事件ですから、それを提示するだけで充分なのです。
 生きるのにも死ねないのにも退屈した吸血鬼が、ある日初めて理解者と出会う。
 イカス状況じゃありませんか。咲夜さん、レミリア守って戦っちゃうんですよ?

 東方素材で以って散文詩を作っていくのは、私個人としてはとても面白い試みだと思いますが、先ほども申し上げました通り、茨の道です。それは著者のイメージに描写がついてきていないことが、小説よりもより鮮明になってしまうからです。
 もしも状況説明をよりカットし、雰囲気だけで相手にメッセージを与える事を目的になさっているのでしたら、逆に、一度その野暮な説明に力を入れてみてください。そしてその上で文章を短縮する事をお勧めします。

 少々添削染みた長文ですが、あくまで一意見として御参考くださいませ。
19.10名前が無い程度の能力削除
なんとなく、某理系ミステリー作家氏の著作を連想しました。
21.30名前が無い程度の能力削除
前作を楽しく読ませてもらい、今回はどうだろうと思ったのですが、これはまた冒険されましたねw

辛い意見はあらかた出てますが、思ったことをちょっとだけ。

情景なり心情なり、何かを描写して読者に伝えようとするとき、一番簡単なのは直接書いてしまうことです。
そうせずに、様々な修辞技法を用いる事で、文章に厚みなり色彩なりが加わると思うのですが、この作品を見ると、冒頭を中心に、ほとんどが直接的な描写で描かれています。
この形式で、しかも深読みも出来ないんじゃあ、読む方は結構しんどいものがあります。
恐らく、この作品が単語の細切れのような文章で書かれているのは、咲夜の体と心のバランスが壊れているのを表現したかったのでしょうが……。
あと、カタカナによる表現は、よほどうまくやらないと酷く安っぽくなってしまうので、使うにしても最小限にとどめた方がいいかと思います。この作品ではそれほど気にはなりませんでしたが。

全体を読み返すと、長編の一部分みたいな印象を受けます。
これを冒頭とか章と章の間とかにして、長編かいても面白いかも。