Coolier - 新生・東方創想話

緩んだ封印(加筆修正)

2004/09/12 03:26:45
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日が沈もうとしていた。
赤、橙、紫、藍、黒
刻々と変わる世界の色。
そんな神秘的で、幻想的で、不安定な空を飛び回る2つの黒い影
「つぅ」
赤いリボンをした黒い少女が顔をしかめる。
相手の少女の放った魔力弾が掠めたのだ。
傷は浅いがバランスを大きく崩す。
「ふっ、これで終わりだぜ、ルーミア」
もう一人の黒い少女。
こちらは箒に腰掛けている。
その少女のかざした手に魔力が集中し、
カード状に魔力が形成され、弾けるように消える。
スペルカードだ。
「魔符・スターダストレヴァリエ!!」
魔法使いの周囲に星が無数に生み出され、全方位に向って撃ちだされる。
必死に体制を建て直し、回避しようとするが、数が多すぎた。
「ひ!、わ!、うぇ!うわぁぁぁあああぁああ!!!」
いくつかの星を回避したところで直撃を受けてしまい、吹き飛び、落下する。
「・・・・・・ふぅ。」
それを眼で追いながら一息つく。
助ける気は毛頭無い。
あんな事で死ぬのは人間位だろう。
相手は妖怪だ。
「さて、帰ってご飯ご飯」
霧雨 魔理沙は満足そうな顔で家に帰っていった。

ガサ、ガサガサガサガサガサ、ベキ、ビシ、ガササ、ドスン!
「ん、んぅ・・・・」
そこらじゅう擦り傷だらけで横たわるのは先ほど撃墜された少女。
ただ、特徴的だった赤いリボンが消えうせていた。



黒い世界、散りばめられた星々と上弦の月が静かに佇む夜空。
そんな静かな夜空を静かに飛ぶ人影があった。
「ふぅ、遅くなったわね。」
誰に言うでもなく、呟く少女。
周囲に2体の人形を連れている。
アリス・マーガトロイド
魔法使いという種族、略して魔族の少女である。
大きな紙袋を抱えている。
研究に必要な材料を購入、収集していたらいつの間にか日が沈んでいた。
「ん~、少し足りないわね。これじゃあ、明日も遅くなりそう・・・ん?」
不意に妖力を感じた。
夜は妖怪の世界。
別に妖怪が現れてもおかしくないが、すこし、違和感を感じたのだ。
「え!?」
目の前には、いつの間にかルーミアがいた。
服が所々破れているが傷は無い。
「ウフフフ、清々しい夜ね。」
ぞくり、
違和感を感じる。
普段の彼女とはあからさまに違う。
違和感。
「えぇ、こんばんわ、ルーミア」
「フフ、なんだか、体が軽く感じられる。それに、力も湧いてくる。」
「あら、よかったじゃない。それじゃ、私は急ぐから。」
事実、彼女は急いでいたし、
意味不明な違和感を感じる相手と一緒に居たくないという心理が働いた。
「だめ、こんなに気分がいいんだから、遊んでもらうわ。」
妖力がルーミアに集中する。
「任せたわ」
紙袋を2体の人形に任せ、ルーミアと対峙する。
「フフフフフ」
ルーミアが手を広げる。
無数に妖力の塊が現れ、光を放つ。
レーザーが網目状に絡みながらアリスを狙う!
「ふん」
光の軌道を読んでいたアリスは簡単にコレを回避する。
確かに調子は良さそうだが
感じた違和感は気のせいだったのか?
そう考えた瞬間。
「フフ、捕まえた」
光がやむ気配が無い。
どうやら、嵌められたらしい。
「チェック!」
妖力がカード状に集中する。
光の格子に囚われた魔法使いに止めを刺す。
「夜符・ナイトバード!!」
妖力弾が鳥の羽のように展開しながらアリスに迫る。
光の格子によって行動範囲が狭められた状態で、アリスはニヤリとする。
「甘いわ!
操符・乙女文楽!!」
魔力弾を撃ち出す。
魔力弾はすぐに弾け、
4体の人形が光の格子の隙間を縫って現れ、弾幕を展開し、ナイトバードを相殺する。
この時、1体の人形が腕を飛ばされた。
そして、光の格子もようやく消える。
「むぅ」
「私は急いでるって言ったでしょ!」
新たな符に魔力を流し、術式を起動する。
アリスの目の前にカード状に魔力が形成される。
「蒼符・博愛の仏蘭西人形!!」
さらに1体、人形が召喚され、
4体の人形が回転しながら魔力弾を放つ。
放たれた魔力弾はさらに分散し、弾幕と化す。
ルーミアを取り囲むように弾幕が流れる。
左右から挟み込むような弾幕をなんなく回避し、妖力弾を放って反撃する。
「お返しよ・・・・あら?」
妖力弾が穿ったのは1体の人形だった。
「・・・帰ろう。」
遊び相手が消え、拍子抜けしたルーミアはそう呟くと、去っていった。



黒から藍と移り、そして青い世界、白く、まばゆい光。
時間にして昼である。
「お~い、アリス~昼飯食べに来てやったぜ」
同じ魔法の森の住人。
・・・・・・
返事が無い。
「まぁ、勝手に入るからいいけど・・・」
言いながらがちゃりとドアを開け、進入する。
アリスは工房にいた。
「あ、魔理沙、・・・また勝手に入ったの!?」
「返事をしないお前が悪い。修理か?」
アリスの手元には腕の無い人形があった。
「えぇ。昨日の夜、ルーミアに襲われてね。
面倒だったから転送魔法で逃げてきたけど。」
「お、復活したのか、中々はやかったな」
「復活?なにそれ?」
「いや、夕方くらいにな、撃墜したんだよ。私が」
「ちょっと待って、撃墜されたばかりでなんで調子がいいなんて言ってたのよ?」
そう言ってガラスケースに収まっている人形達を眺める。
霊夢、魔理沙、などアリスの知り合った人物の人形だ。
いくつかの人形には本人の髪の毛が仕込まれている。
ふと、ルーミア人形に眼が止まる。
「あ、髪の毛とリボンか」
「何が?」
「昨夜感じた違和感。
リボンが取れてて、髪が少し伸びてたのよ。背も伸びてたかも」
それを聞いて魔理沙が少し表情を曇らせる
「・・・何か嫌な予感がするな。」
「なんで?」
「いや、あのリボン、封印らしいんだ。」
「心配なら調べてみればいいじゃない。ほら、貴女の行きつけの図書館で。」
そう言ってアリスも外出の準備をする。
「ん、お前も行くのか?」
「えぇ、調べたい事もあるし。」
「そうか。その前に」
「何よ?」
「昼ご飯」



日が傾き始めた。
大きな湖の上を飛行中だ。
「まったく、ご馳走になっておきながら4回もおかわりする?」
「いや、美味しかったからつい、な」
と、本音が出てしまい、
さすがに恥ずかしかったのかポリポリと頬を掻く。
「ま、まぁいいわ」
そんな答え方をされて照れるアリス。
すこし目線をそらしている。
(あ、チルノだ)
そらした時に視界に入った。
何やら赤い物を持って嬉しそうにしていた。
「お、見えてきた。」


コンコン
扉をノックする音が聞こえる。
読書をしていた図書館の管理人、パチュリー・ノーレッジはめんどくさそうに答える。
「・・けほけほ、どうぞ」
ガチャリ
「よぅ、パチュリー。」
「お邪魔するわ。」
「・・・珍しい組み合わせね。あ、リトル、この2人に案内は要らないわ」
司書である小悪魔リトルにあらかじめ言っておく。
「・・・パチェ、私の事が嫌いになったの?」
すこし、眼を潤ませるのがポイントだ。
「本を返却してくれれば好きになるわよ?」
「あんたまだ返してなかったの?」
「・・・まぁ、その話は置いといてだな、封印関連の本、たしかこっちだったよな?」
「なに?結界でも壊したの?」
「違うわ、ルーミアのリボンが取れてたのよ。」
ピクリと眉が動く。
「あの子のリボンが・・・?」
コンコン
「どうぞ」
がちゃ
「失礼します、パチュリー様」
入ってきたのはティーセットを持った昨夜だった。
「ありがとう咲夜、そこに置いておいて・・ごほっ」
「お、メイド長、私たちのカップが無いけれど?」
「お客様になら出すけど、どうせ問題でも起こしに来たんでしょう?」
「失礼ね、ルーミアのリボンが取れたから調べに来たのに・・・」
ピクッ
昨夜の動きが止まる。
以前、ルーミアの封印が解かれてしまい、時間を巻き戻すという事までやった経験がある。
その時の惨事が鮮明に甦る。
「(・・・まさか、また封印が解かれたとでも言うの?)ルーミアはどうなってたの?」
「あら、気になるの?髪が少し伸びて、妖力も以前より増えてたわね。」
「(最悪の状態では無いって訳ね・・それでも、レミリアお嬢様に影響が出る前に行動しなければ)
・・・そう、お茶、用意してあげるわ。」
「お!?」
「ただし、今日中に再度封印をする事。」
「ふぅ、仕方ないな。」
「元々そのつもりでしょ?」
無かったはずの2つのカップに紅茶を注ぎ、2人に出す。
「あと、助っ人も呼んで来てあげるわ」
そういうと図書館を出る。
キィ、バタン
「完全に封印は解けてないようだし、あの子を呼べば十分かしら?」

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「ふぅ、なんとか庭掃除終了っと」
今日は食事会の日だ。
幽々子様は、友人である紫さんを誘って楽しくすごそうって事らしい。
ん?
ピキィィィッ
空間が割れる。
グバァ
「あら、こんにちわ」
件の隙間妖怪、八雲 紫だ。
するりと隙間から出てくると、その後から彼女の式、八雲 藍とその式の橙が現れる。
「妖夢どの、今日は招待ありがとうございます。」
「ようこそ、白玉楼へ。」
隙間は一度閉じて、再度開く。
中から一人出てきた。
背の高い老紳士である。
「や、夜摩様!?」
柔和な笑みで妖夢に挨拶をする。
「ん?妖夢のお嬢ちゃんか、お久しぶり」
「は、はいお久しぶりです、夜摩様。でも、なんで隙間から?」
「ふふ、私と夜摩は古くからの知り合いなのよ。ね」
「ふむ、幽々子のお嬢ちゃんは説明してなかったのか、あ、それと、お土産じゃよ。」
と夜摩が蟹を出す。
三途の川産なのだろうか・・・
「私もお酒を持ってきたのよ・・・」
紫がゴソゴソとなにやら探し出す。
「あら、持ってきたと思ったのに・・・ん~無いわね」
橙に色々木の種類を説明していた藍が顔色を変える。
「忘れたんですか?だからアレほど確認しろって言ったのに・・・」
「藍、ちょっと持ってきてくれない?それじゃ、行きましょうか」
妖夢の背を押して屋敷に急ぐ紫。
幽々子に会うのも久しぶりなので少しはしゃいでいた。
「・・・・ハァ、解りました。」

ぽつんと一人残されてハッと気がつく藍。
「まさか、飛んで行けと!!?」

------------------------------------------

「幽々子様ー、食事の方、用意できたみたいです。」
「そう?なら運びなさい。」
この日の白玉楼は慌ただしかった。
古くからの友人である八雲 紫と、その式達を食事に招待したのだ。
紫がよこした返事は、「ゲスト1人連れて行くわ」
との事だった。
「それにしても、夜摩様がゲストだったとは・・・」
食事を運びながらそう呟く。
死後に人を裁く者。最初の人、閻魔王
何故か、紫とは知り合いらしい。
年齢が気になるが、聞かない方が安全だろう。
触らぬ神に祟りなし、だ。
みょんな事を考えていると、いつの間にか部屋の前まで来ていた。
すぅと襖が開く。
「あ、妖夢さま、お運びいたします」
襖が開き、白玉楼で働いている霊が仕事を手伝うと言ってきた。
ちなみに、人の形をしている。
「あ、お願いしていいですか?」
食事を渡す。と、
「妖夢」
声が掛けられる。
反射的に返事をしてしまう。
「はい、なんです・・・うわぁ!!?」
そこにいたのは、幽々子様でなく、紫さんでもなく、咲夜さんだった。
「ちょっと、そんなに驚かなくてもいいでしょ?」
「あ、いえ、そんな訳では・・・」
ドキドキ・・・
鼓動がはっきりと聞こえる。
顔が熱い。
たぶん、頬が赤くなっている。
こんな風になるのは、親睦会の時の咲夜の行動が原因だった。
「あら、具合でも悪いの?」
まったくその事に気がついていない咲夜の手が妖夢の額に触れようとする。
慌てて一歩引く。
「いえ、そんなんじゃないですよ。」
「そう、ちょっと付いて来て欲しいんだけど、いいかしら?」
「え、あ、今仕事が・・・」
「仕事よりも重要なのよ。封印が解けたみたいだし、説明は後、とにかく来なさい!
時間も無いし、周囲の時間を遅くしてでも急ぐわよ!」
「え、ちょ、待って意味が、うわぁ!」
手を握られると強引に連れて行かれる。
でも、どこか幸せな妖夢だった。

-------------------------------------------

酒瓶を抱えた妖怪が空を飛んでいた。
九尾の仙狐、藍である。
主に言われて、わざわざマヨイガの棲家まで酒を取りに戻っていた。
まったく、なんでこういう時にスキマを使ってくれないんだろう。
そんな愚痴を心に隠して白玉楼に戻る途中、
「ん?メイド長と妖夢殿?」
高速で白玉楼の方角から飛んできた2人。
何か言っているようだ。
「もう、急がないと日が沈んで夜がきちゃうじゃない!」
「そもそも、封印ってなんの事ですかー!?」
「説明は後!」
ものすごい勢いで飛び去っていく。
時間でも加速しているのだろうか?
まぁ、あのメイド長なら時間をいじる事位やりかねないが。
過ぎ去った事は、気にしない。
急がなければ食べるものが無くなりそうだ。

----------------------------------------------------

「もう一度確認するわ。」
パチュリーが本を仕舞い、向かいに座った二人に問いただす。
「夕刻には何時も通りのルーミアで、撃墜したのね?」
「あぁ、普段どおり撃ち落したぜ」
「そして、夜中にはリボンが無かった。髪、背が伸びていた。妖力が上昇していた。変わっていたのはそんな所ね。」
「えぇ」
どうやら、リボンが外れて封印が弱まったようね。」
「封印が解除されたんじゃないのか?」
「あのリボンは、封印の要だったの。
外すだけじゃ解除には至らないわ。
それでも封印の効力は激減してると思うわ。」
「要って事は・・・」
コンコン、
また誰かが来たようだ。
「どうぞ」
「失礼します。」
「お、お邪魔します・・・」
先ほど出て行ったばかりのメイド長、咲夜と
「なんだ、助っ人って半分幽霊か」
妖夢だった。
何故か顔が赤い。
「で、なにが大変なんですか?」
やっと落ち着いて質問ができた。
「ルーミアの封印が外れたのよ」
と、ジト目の少女が簡単に説明した。
「(この人、知らない人だ・・・)あの、ルーミアって誰ですか?」
はぁ、とため息を付くパチュリー。
「・・・宵闇の妖怪よ。咲夜、なんでこんな子連れてきたのよ」
「す、すみません、パチュリー様。思いついたのがこの子だったので・・・」
と叱られた子犬のようにしょんぼりした顔で謝る咲夜。
”こんな子”呼ばわりされてちょっとショックを受けた妖夢だが、
咲夜の子犬のような表情を見て
咲夜さんの為に頑張ろう!と硬く決意した。
「「・・・・」」
咲夜が謝っているのを見て、なぜか赤面し、拳を握っている妖夢を見て、
魔理沙、アリスの動きが止まる。
いち早く我に返った魔理沙が口を開く。
「さ、さっきの続きだが、リボンを探さなきゃいけないのか?」
「ん、あぁ、そういう事。」
「おいおい、大体の場所は判るけど、見つかると思うか?」
それなら、と咲夜が
「私が探してきますわ。」
「・・・そうね、けほッ、時間を止めて探せばどれだけ探しても大丈夫ね。」
「じゃあ、場所は・・・」
赫々云々と説明する。
「ふぅん、解ったわ。」
「あ、あの、私はどうすれば?」
「貴女は此処に居なさい。」
ガチャリ、パタン
・・・・・
咲夜を見送っていた妖夢に
「自由に座っていいわ。」
とパチュリーが席を勧める。
「あ、ありがとうございます。」
「それにしても、メイド長はなんであんなに必死なんだ?」
「さぁ?」
”過去の未来”を知らない者たちには一生わかるはずの無い疑問だった。


しばらく4人は、写本した闇、夜、黒の書を参考に色々調べていた。
「ふぅん、夜を操る能力って事かしら・・・月、星との関係?ふむ、」
「なになに、死、眠り、忘却を産んだ?・・・・ふむ、庭師~、何か資料は無い?」
「んー、直訳で夜、昼、人、境は旱を従えて腐を討った、夜は腐を許した、んん?争いでもあったのかしら?」
「はい、資料これでいいですか?」
コンコン、
ドアがノックされる。
今日は本当に来訪者が多い。
「どうぞ」
カチャリ、
なんと、紅魔館の主、レミリアだった。
「パチェ、咲夜みなかった?」
「先ほど出て行ったわ。」
「ん~、じゃあ、霊夢の所に遊びに行って来るからって伝えておいて。」
「けほけほ、分かったわ。」
キィ、扉を開ける。
「・・・パチェ、喘息大丈夫?」
部屋を出る時に何気なく容態を聞く。
「げほ、ごほッ・・・えぇ、気にしないで行ってらっしゃい、レミィ」
うん、と頷くと静かに扉を閉めた。

-----------------------------------------

咲夜は、魔理沙が教えてくれた場所まで来ていた。
「・・・・木ばかりね、」
それでも探さなくては。
あの時のような惨事にしないためにも。
決意を改めて固めると、木々に向って降下していった。
「さて、始めましょうか・・・」
先ほど、1時間程時間を操作したために、反動で1時間は時間操作ができない。
厳密には、操作可能だけど、その後の反動がより大きくなるので使わない事にしている。
木々が折れている箇所を中心にしばらく探したがリボンらしき物は落ちていない。
ゴミすらも落ちていないのだから赤いものが落ちていればすぐ解るはずだが・・・
「ふぅ、木に引っかかってるのかしら?」
魔法を使って空に浮く。
もうしばらく掛かりそうだ。

-----------------------------------

谷底の崩れかかった城の中
ルーミアは居た。
その髪は背中まで伸び、別人のような印象を受けた。
「リカルド、マリー、そろそろ行くわよ」
老騎士と涙目のメイドにそう告げる。
「どこへ行かれるのです?」
「あの娘の所よ」
「何をするのでしょうか?」
クスリと笑いながら
「リボンを外してくれたお礼よ。」

---------------------------------------

西の空が橙色だった。
まだまだ明るいが、日が沈もうとしている。
「う~、もう日が真っ赤だわ・・・」
探し始めて1時間程たった時、
「♪~♪~、あら、メイド長じゃない何してるの?」
湖の氷精チルノがふらふらとやってきた。
妙に上機嫌だ。
「探し物、邪魔するならあっち行ってもらうわよ?」
その上機嫌な表情を見て、少しイライラしてしまう。
「邪魔なんてしないわよ・・・手伝ってあげようか?」
「へ?」
拍子抜けして変な声が出てしまった。
「手伝ってあげるって言ったのよ!」
イタズラ好きな妖精が手伝うだなんて!
「で、何を探してるの?」
「あぁ、えっと、赤いリボンなんだけど・・・」
「赤い、リボン・・・・・あぁ、アレ?」
「え、知ってるの?」
「うん、今日拾ったよ。」
がしぃっとチルノの両肩を掴む。
「返して!あれが必要なの!」
「いたい!もうラミィにあげちゃったからもって無いわよ!」
ラミィ?あの仲のいい大妖精の名前か?
「そう・・・」
チルノを離し、湖へ行こうとする咲夜。
「もし、ラミィから奪い取る気なら、容赦しないぞ!」
チルノが殺気立つ。
両者には決定的に実力差がある。
それが怖いのか、チルノの足が震えている。
「ふん、子供の氷精が私に勝てるとでも思ってるの?」
ナイフをどこからともなく出現させる咲夜。
正に一触即発。
両者に緊張が走る。
「二人ともやめてください!」
唯一止める事のできる第三者の声が掛かった。
大妖精のラミュスだ。
その目は涙でいっぱいになっていた。
いつもの片方だけ髪を束ねているが、今日は、あの、赤いリボンで束ねてあった。
「ラミィ!?」
「チルノさんは悪くありません、ただ、私が喜ぶだろうと思っての行動なんです。」
そう言うとリボンをしゅるりと解く。
まとめていた髪がラミュスの濡れた頬に掛る。
「ラミィ!せっかくの記念日なのに!」
「ごめんなさいね、チルノさん、折角のプレゼントなのに・・・はい、どうぞ」
赤いリボンを受け取る咲夜。
チルノがわんわん泣いている。
リボンを渡したラミュスがそんなチルノを抱きしめてなだめている
なんの変哲も無いリボンに見えるが、リボンに籠められた力を確かに感じる。
「・・・記念日って?」
「ひっく、ぐすっ、ラミィの大妖精になった日が、ひっく、今日なのよ、ぐしゅ」
「・・・・・」
まさか、そんなに大切なプレゼントだったとは・・・
しかし、今は時間が惜しい
くるりと後ろを振り向き口を開く。
「・・・明日、」
「「?」」
「そう、明日、夜が明けたら紅魔館の喫茶館に、2人で来なさい。」
ふわりと宙に浮き、
「門番の美鈴に聞けば分かるわ。」
と付け足し、高く高く舞い上がった。
「(後は、霊夢ね・・・)時間よ、止まれ!」

------------------------------------------

まだ日は沈みきってはいない。
赤い橙色の空
一番最初に異変に気がついたのは、門番の美鈴だった。
「空が、暗くなっていく!?」
空を見上げていた美鈴の近くから声がする。
「ここに、霧雨 魔理沙が来てる筈だけど?」
「!?」
一瞬で間合いを離す。
髪が伸び、大人びた少女が立っていた。
「誰、ですか?」
「あら、お土産までくれたのに・・・酷いわ美鈴さん・・・」
よよよ、とわざとらしく泣き真似をする。
「え、まさか、ルーミアさん?」

図書館で咲夜の帰りを待っていた4人も異変に気がつく。
数少ない窓から差し込んでいた光が突然遮断されたのだ。
部屋中が真っ赤に染まっていたのが一瞬で暗くなる。
「まさか、向うから来たの?」
「みたいだな、まぁ、この人数ならメイド長が来るまで余裕だろ。」
「げほ、ごほ、先に行ってて、薬、飲んでいくから。ごほっ」
「あぁ、終わった後にでもこればいいさ。いくぜアリス、妖夢」
と気楽に図書館を出て行った。

「魔理沙さんは来ていますけど、なんの御用ですか?」
「今日は、お礼をしに来たのよ。」
美鈴の後ろから声がする。
「お礼なら、グリモワール3冊でいいですわ」
澄ました声が聞こえた。
「ご登場ね」
魔理沙である。後ろにアリスと妖夢も続く。
「それで、何のようなの?」
「言ったじゃない、お礼に来たのよ」
「(聞いてないわ)お礼?」
「そう、リボンを外してくれたお礼と、今までのお礼参りよ!」
ルーミアの妖力が増大する。
「いくらリボンが取れて強くなっても、4対1で勝てるのかしら?」
「あら、誰が1人で戦うなんて言ったのかしら?」
両手を広げ、スペルカードを発動させる。
「闇扉・逢魔ヶ刻!!」
広げた両手近くの夜がグニャリと捻じ曲がる。
捻じ曲がった夜が縦に渦を巻き、中から騎士とメイドが現れる。
「3対4よ。マリーは魔法使いを、リカルドは門番と剣士をお願いね。」
「舐められたものね、メイド1人が相手だなんて・・・いいわ、相手をしてあげる!」
格下に見られたと思い、苛立つアリス。
「お、お手柔らかに、お願いします、ね。」
「そうそうマリー、」
「はい?」
「アレを使っていいわ」
「は、はい・・・」
マリーと呼ばれたメイドはおびえながらそう言うと、ルーミアから離れていった。
「美鈴さん・・・」
妖夢が目の前の騎士に警戒を強める。
「はい、強い、ですね・・・」
「ふむ、お嬢さん方、あちらで、試合ましょう。アレは危険ですからな。」
騎士が率先して離れていく。
妖夢と美鈴に背中を見せているのは余裕の表れだろうか?
「ふふ、1対1よ魔理沙。」
「これは、親切にどうも。」
「試してみたいでしょ?私の力」
「正直、間に合ってるけどね、いいさ」
「さぁ、夜に沈みなさい、黒い魔!」
「ふん、切り裂いてやるぜ、暗き夜!」

-----------------------------------------------------

「只今戻りました、紫さま」
「もう、遅いわよ、藍」
「(誰のせいで・・・)すみません、はい、幽々子さん」
と持ってきたお酒「雪崩れ(ゆきくずれ)」を渡す。
濁り酒である。
「あら、ありがとう、妖夢ー・・・あら?」
「あぁ、妖夢どのなら、先ほどメイド長に連れられてどこか行きましたよ。」
「メイド長って紅魔館の?」
「はい。なんだか夜がどうの、封印がどうのって言ってましたけど。もぐもぐ」
そう説明して、食事をつまむ藍。
ふと箸が止まる2人。
「夜、封印・・・?」
「ふむ、まさか・・・」
考え込む二人。
「あら、どうしたの?」
「幽々子、ちょっと出かけるわ」
藍がギクリとした。
「ふふ、藍は残ってていいわ。橙も。」
「いきますか、紫どの」
「あら、夜摩様もいくのですか?」
「すまんの、すぐ戻るよ」

-------------------------------------------------

対峙する1人と2人。
「まずは、名前を聞きたい、私から名乗ろうか。」
全身を甲冑で包んだ騎士がぶぅん、と大剣を構える。
「私はリカルド、リカルド=シルベリウス。」
「魂魄妖夢、」
「紅 美鈴、」
「ふむ、魂魄・・・剣豪・魂魄妖忌の娘か孫か、
なるほど、そちらのお嬢さんは、武術ですかな?帽子の龍が気になりますが・・・
ふぅむ、お二人とも参られい!」
牽制するように七色の弾幕を撃ち出す美鈴。
「様子見など、できるのかな?」
弾幕を気にせず距離を詰めようとする騎士。
「はぁぁぁ!獄界剣・二百由旬の一閃!!」
弾幕を盾にして先手必勝とばかりに妖夢が真っ向から楼観剣で斬りかかる。
「なかなか良い太刀筋、しかし、」
ギキィン
必殺の斬撃を丸みを帯びた篭手で軽く受け流し、
「まだまだ未熟!」
崩れた所を蹴り飛ばす!
「ぐぅ!」
体が軽いため、かなり吹き飛ぶ。
さらに追撃して止めを刺そうとする。
「させません!」
バキィ
「むぅ」
美鈴の蹴りがリカルドを捕らえる。
が、甲冑に阻まれて効果が無い。
美鈴も分かっているのか反動を利用して間合いを取り、弾幕を展開する。
「妖夢さん、大丈夫ですか?」
「けほっ、だ、大丈夫です。」
構えを正す妖夢。
間合いを取り、2人を見つめる騎士。
「ふむ、これは、骨が折れそうだな・・・」
一角獣のような角のある兜の中で騎士がニヤリと笑った気がした。

------------------------------------

「操符・乙女文楽!!」
魔力弾から人形が飛び出し、弾幕を展開する。
「ぐす、わわ!」
泣きながらも、的確にソレを回避するマリーツィア。
「たかが泣き妖怪の癖に、さっきからうろちょろと!」
「お返しです、涙符・止め処ない雫!!」
マリーの周囲に水の弾が無数に出現し、アリスに襲い掛かる。
「この程度で、うわ!?」
マリーの手元から高圧縮された水が数条撃ちだされる。
人形が半数も撃ち落された。
「えぇい、行きなさい!
操符・マニピュレイトパペット!!」
スペルカード同士が相殺する。
「しっかし、今回も上手く避けたわね・・・・」
泣き妖怪バンシーは、死期の訪れた人が居ると、泣いて知らせるのである。
つまりは、危険予知が可能。
これを上手く利用すれば、涙の流れない場所が安置となる。
なので回避が異常に上手いのである。
「続けて、行きます、泪符・・・」
メイドがスペルカードを起動させる。
ここにきて、アリスは考えを改める。
相手を見くびらない、単なるメイドとは、思わない。
「ふぅん、・・・すこし、そう、少しだけ実力を出すわ・・・」

-------------------------------

黒い弾幕が容赦なく黒い魔法使いを襲う。
「ちぃ・・・(確かに強くなってる・・・)」
「ウフフフフ、逃げてばっかりじゃあつまらないでしょ?」
箒に魔力を篭め、地面すれすれを高速移動して、弾幕を大きくやり過ごす。
「なら、これでもどうぞ」
魔理沙の手からマジックミサイルが無数に放たれる。
「そんな攻撃、以前の私でも避けられるわ」
体を少しずらし、紙一重で避ける。
「こんなのはどうかしら?」
避けながら、頭上に両手を掲げる。
妖力が両手に集まっていく。
ルーミアの動きが一瞬止まる。
ニヤリ
魔理沙の口がゆがむ。
「甘いぜ!」
紙一重で避けたミサイルが突如爆発する。
「きゃ!」
至近距離での爆発で力の集中が中断し、体勢が崩れる。
「いくら力が強くなっても、扱う者が成長していなきゃ意味は無いぜ!」
追撃とばかりに周囲に浮かべた魔法玉からストリームレーザーを放つ。
「くぅ!」
体勢を崩しながらも莫大な力を利用した瞬発力で回避する。
お互いに距離を離す。
「小ざかしい真似を!!」
もう一度頭上に両手をかざし、大量のレーザーを地上付近にいる魔理沙に放つ。
距離があるため、降り注ぐレーザーを難なく避ける。
「ふふん(さて、どうしたものか・・・)」
力の容量差はかなりある。
経験と技量と知恵でどうにか覆せないかと魔理沙は思案する。

-------------------------

ギギィィン!
すでに何度目だろう?斬撃を篭手で逸らされる。
横薙ぎにしても軌道をそらされて、斬撃が打撃にしかならず、鎧で止められてしまう。
そして、逸らされる度に隙ができてしまい、そこを美鈴に助けられる。
「す、すみません・・・」
「いえ、あの方の技量が並大抵じゃないって事です。」
いくら妖夢の才能が素晴らしいとはいえ、剣士としての経験だけは埋められなかった。
妖夢でも、原理は分かる。

球という形はそれだけで逸れやすい。
騎士の篭手は楕円だが、半球形である。
斬る為には、垂直に刃を当て、引く事。
この、刃の当たった瞬間、引く直前に、刃を受けた篭手を捻り、横に弾く。
たったそれだけである。
しかし、実際に行うには相当な熟練が必要だった。

騎士が悠然と歩を進める。
「どうした?お二人さん」
「くっ」
悔しさの為か妖夢が楼観剣を強く握る。
「・・・妖夢さん、私に”とっておき”があるんですが・・・」
小声で美鈴が問う。
「え?とっておきって、切り札って事ですか?」
「はい。攻撃系の技ではないので、使うのに時間が掛るので、しばらく耐えてくれますか?」
「分かりました。」
「ふむ、作戦会議か?こないなら、こちらから・・・」
妖夢が2刀を構え、幽気を刀に篭める。
「畜趣剣・無為無策の冥罰!!」
騎士に向かい、無数に斬撃をする。
幾本もの衝撃波が発生し、騎士に襲い掛かる。
「むぅ!」
衝撃は甲冑に擦り傷程度しか与えられないが、衝撃は内部まで伝わる。
騎士の動きが止まる。
「まだまだぁ!!(よし!)」

妖夢が衝撃波による足止めをしてくれている。
「龍の字が伊達でない事を見せてあげます。」
地上に降り、そう呟くと、目を閉じ、精神を集中し、気を練り始める。
そして、
「スゥーーーーーーーーーー・・・」
大きく息を吸い、
「ハァァァ・・・・・・」
吐く、吐く、吐く。
肺の中の空気を吐ききる。
そして、拳に練り上げた気を乗せると、
ドスン!
自らの水月を突き、体の内部に気を送り込む。
「ぐっ、・・・くぅぅぅぅッ!!」
全身が熱い。
血液が沸騰しているような錯覚を覚える。
経絡が開いているのだ。
肺が空っぽになっている為、酸素が足りない、
体内で何かが変わる。
美鈴の周囲に彩色の気が滲み出る。
「ッッ、ガハァッ」
大きく息と共に気を吸う。

強制的に呼吸法を変え、
手の太陰肺経[11穴]手の陽明大腸経[20穴]足の陽明胃経[45穴]
足の太陰脾経[21穴]手の少陰心経[9穴]手の太陽小腸経[19穴]
足の太陽膀胱経[67穴]足の少陰腎経[27穴] 手の厥陰心包経[9穴]
手の少陽三焦経[23穴] 足の少陽胆経[44穴]足の厥陰肝経[14穴]
任脈[24穴]督脈[28穴]
の14の気の通り道「経絡」を強制開放し、
体内、体外の”力”(魔力など)を全て気に変換し、それを取り込み、全身に行き渡らせる。
美鈴の周囲の彩色の気は、魔力、霊力を含む全ての”力”を気に変換し取り込んでいる証で、気の供給量が半端じゃない。
この技法はいつ終了するか不明で、
しかも、終了時に身体にかかる負担が尋常じゃなく、良くて極度の疲労、
酷い場合は経絡が全てズタズタになって最低限の気すら流れなくなってしまい、衰弱していき死に至る。
故に、切り札、奥の手なのである。
「奥義・宿龍呼法、完了。」

「天上剣・天人の五衰!!」
「同じ手は食わぬ、刑罰・逆剥!!」
斬撃により発生した2つの衝撃波が相殺する。
「はぁぁぁぁ!!」
相殺されるのが判っていたのか、妖夢が突進する。
「ふん!」
真正面から向ってくる妖夢に、エクスキューショナーを縦一文字に一閃させる
妖夢の刀が届く前に大剣が妖夢に迫る。
ギギィィィン!
ズギィン!!
「なに!?」
なんと、白楼剣で断頭剣の軌道を逸らし、初めて斬撃を当てた。
リカルドの甲冑が傷付く。
さらに、半身である霊体による追撃が襲う!
「くッ!」
追撃である、幽気弾を防ぎ、間合いを離す。
「(戦いの中で成長しおった!?)む!!」
爆発的に巨大化した力がビリビリと大気を震わす。
「コォォォオオオ!!、虹符・彩虹の風鈴!!」
普段のスペルカードとはケタ違いの量の弾幕がリカルドの足元から襲い掛かる。
「!?い、いかん、」
今下からの弾幕を回避すると、横から妖夢の斬撃を受けてしまう。
瞬時に判断すると、
「開門!」
突如、リカルドの姿が掻き消え、
妖夢の遥か後方に出現する。
「なんと、お嬢さんは龍を宿せるのか!!」
実際には龍なんて宿してはいないが、そう思える程、力が増加した場合に
龍を宿す、龍を降ろすなどと言う。
「め、美鈴さん!」
妖夢が美鈴に近寄る。
「これが、龍の字の意味です。行きますよ!」
「はい!」
爆発的な加速で間合いを詰める2人。
「ふむ、ならば、」
2人との戦いになって初めて両手で柄を握る。
「本気を出そう!」

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スペルカードが相殺する。
「あぁ、泪符が・・・ぐすッこれなら!」
ありったけの妖力でスペルカードを3種同時に発動する!
「憂愛・亡国三仁-比干諫死-、-微子亡命-、-箕子狂奴-」
直線、曲線、反射と、3種の膨大な弾幕が複雑に絡み合いながらアリスに襲い掛かる!
「ふふ、3重起動なんて、やっぱり、貴女の事、甘く見なくて、正解だったわ。」
弾幕を避けながら魔力を持っている本に込める
「見せてあげるわ、人形使いの実力を!」
バチン!
いつも持っている封印された魔道書。
その封印を一部だけ解き、とあるページが開く。
開いた本のページに膨大な魔力を注ぎ込む。
足元に巨大な魔方陣が出現する!
「魔操巨兵・サモン・ゴーレム!!」
魔方陣が、光を発し、巨大な光の柱のようになる。
そこから現れたのは、人形と言うには巨大すぎる代物だった。
ゴーレムの頭に乗ったアリスが命じる。
「やりなさい!」
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!!!
ゴーレムは咆哮し、全身の魔法玉からレーザー、弾幕を放つ!
「ヒィィ!!」
マリーツィアの放った全力の弾幕を意図も簡単に打ち消し、周囲を焼き払う。
危険予知により、辛うじて攻撃を避けるがメイド衣装は所々焼かれ、涙符、泪符、憂愛と自分の持てるスペルを出し尽くしてしまった。
「ひぃぃん、ぐすっ、うぅぅぅ・・・」
「さぁ、もう終わりにしましょう」
不意にマリーツィアの涙が止まる。
「・・・”アレ”を使います。」
一本のナイフを取り出す。
「?」
ドッ!
そのナイフで自らの腕を切り付けた!
血が滴る。
「ちょ、ちょっと何を・・・」
ギギギッ
ブシュゥゥゥ!!
かまわず、刃を動かし、傷を深く、大きくする。
血が噴出す。
ナイフを腕から引き抜くとマリーツィアがつぶやく。
「太古、討伐され、昼と人は止めを望み、境は傍観した。夜だけが、許した・・・
滅ぶ運命だった命をルーミア様に、救われた・・・だから、
私の一族は、忠誠を、誓う。
命を、懸けて!」
血液が流れ続ける腕を高く掲げ、力を発動させる。
「腐陣・腐蝕血界!!」
流れ出していた血液が、爆発するように一瞬で霧状になり、周囲を覆う。
「ッ!?」
魔力障壁でその赤い衝撃を防ぐ。
周囲にいた上海人形、蓬莱人形が一瞬で崩れ落ちる。
「ッ、私の血液には、腐蝕の力があります・・・」
「腐蝕!!?」
「どちらが先でしょう?貴女の大きなお友達が崩れ落ちるのが先か、私が失血死するのが先か・・・」
「貴女が先に死ぬのよ!」
ゴーレムが数条のレーザーと共に弾幕を張るが簡単に回避される。
「私には、危険予知があるのを、お忘れですか?」
「クッ」
非常に相性の悪い能力だ。
人形を使わなくても魔法は扱えるが、今のアリスにはこの状況で有効な魔法が無い。

お互いに魔力、妖力を大量に消費していて、こちらの攻撃は回避され、
向うは攻撃するほどの体力が残っていない。
このままでは、本当にどちらが先に行動不能になるかの我慢比べになってしまう。

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封印が緩んで、力が増したルーミアだが、時間が経つにつれ、髪が伸び、力も大きくなっていた。
「ふふ、分かるかしら?先ほど、日が沈んだ事を。」
「・・・・」
周囲を旋回しながら、ゴソゴソとポケットを探り、小袋を取り出す。
「あら、無視は酷いんじゃないかしら?」
ルーミアがレーザーで魔理沙を狙う。
「しまった!」
取り出した小袋が破れ、中に入っていたビー玉のような物が落下する。
「あら、何か落しましたよ、魔理沙さん。」
わざとらしくそう言うと、スペルカードを発動させる。
「月符・ムーンライトレイ!!」
2対の月の光が魔理沙を襲う!
「くそ!」
「あははは!これでも力を扱えないというのかしら?ほら、ほらァ!」
月の光が3対、4対と増え、
いたぶるように、魔理沙を追い立てる。
「いまだ!」
一瞬の隙を見つけると、弾幕をかいくぐり、ルーミアの側面に回り込み、スターダストミサイルをばら撒く。
「何度も引っかかるか!」
先ほどの至近距離爆発を避けるため、大きく避ける。
立ち位置が丁度逆転した。
「ルーミア、動くなよ!」
符に魔力を流し、術式を起動、スペルカードが発動する。
「魔符・ミルキーウェイ!!」
周囲に無数の星が出現し、ルーミアに雪崩の様に降り注ぐ!
「星の力なんて、打ち消してあげるわ!」
夜の力がルーミアに集まる。
「闇符・、」
「かかったな!」
未だに魔符が起動しているというのに、もう1つの符を起動する!
「光符・アースライトレイ!!」
先ほど落下したビー玉が、魔法玉になり、ルーミアの足元から無数の光が迸る。
「く!、ディマーケイション!!」
夜の境界を全方位に展開する。
正面からの星の魔法を打ち消すが、足元からの光の相殺に失敗する。
弱まってはいるが、光の幾本かがルーミアを焦がす。
「グゥゥッ」
バッ
たまらず距離を離し、弾幕で牽制する。
「くッ・・・(あれで倒せないとは、どうする・・・)」
「さすがね、あの小袋を落したのも作戦だったなんて・・・でも、」
そこで言葉を区切ると、闇符に妖力を注ぎ込み、術式を起動する。
注がれる妖力が莫大な量である。
似ている、そう、魔理沙の持つ、最強のスペルに。
「これが最後のスペルだぜ!」
恋符を起動し、さらに自身をもそのスペルの術式の一部とする。
周囲の魔力を急速に、限界まで取り込み続ける。
「これで終わりよ!」
「そっちこそ、光の渦に切り裂かれろ!!」
「宵闇・暗く黒き夜の波動!!」
「魔砲・ファイナルスパーク!!」


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すこし、時間をさかのぼる。
時間を止めてまで、博麗の神社に急いだ。
途中で停止した時間を戻して急いだ。
この後、時間操作の時に支障がない様にだ
「ハァ、ハァ、ハァ、れい、む、ハァ、霊夢、」
鳥居をくぐると、すぐそこに箒を持ってたたずんでいた。
博麗の巫女、博麗霊夢である。
「・・・・珍しいわね、どうしたの?」
「今すぐ、一緒にきてもらうわ。」
「掃除も終わったし、別にいいけど・・・何で?」
ぐぃ、
「うわぁ!?」
霊夢の腕を掴むと、問答無用で紅魔館の方角に飛ぶ。
「質問は後、急ぐわよ!!」
そういうと、周囲の時間を遅くした。

・・・・1日に同じような事を2度もする羽目になるとは・・・

その頃レミリアは・・・
「急に暗くなって・・・今日は運がいいのかしら♪」
とても上機嫌で博麗神社に向っていました。

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「ぬぅぅぅん!!」
「はぁぁぁあ!!」
大剣による必殺の一撃が暴風雨のように無数に繰り出され
彩色の気を纏った爆撃のような拳撃が暴風雨に激突する。
お互いに互角の撃ち合いである。
この均衡を破ろうとしているのが、妖夢の斬撃である。
リカルドと美鈴の攻防の隙を突いて、妖夢が一撃離脱を繰り返している。
今はまだ、捌けてはいるが、
だんだんと、その精度を増してゆく妖夢の才能にリカルドは焦り出していた。
たぶん、彼女は刹那思考を会得しているのだろう。
一瞬の判断に迷いが無い。
「(このままでは、魂魄のお嬢ちゃんに足元を掬われる・・・仕方ない。)」
妖夢の斬撃を捌く。
妖夢が引き、美鈴が突進してくる。
この一瞬の隙
「美鈴殿、自身の力、味わってもらおう!」
美鈴の打撃は既に放たれている。
「罰符・絞首階段!!」
6発の打撃全てを妖力を込めた大剣の剣背で受け止める。
「ぐが!?」
瞬時に剣背から6発の衝撃が美鈴を襲う。
自らの打撃を返されたのである。
続けて符を起動する。
「すまんな、車符・首無しのチャリオッツ!!」
突如美鈴の側面に2頭の馬に引かれた戦車が出現し、そのまま突撃した。
「美鈴さん!?」
戦車の突撃に巻き込まれた美鈴を心配する妖夢に、
「甘いぞ!」
大剣の一撃が襲う。
ガギィ!!
「ぐッ」
なんとか二刀を交差させ、受け止めた。

「これが、奥の手と言う物だ!」
鋭い角を付けた兜が、頭ごと飛び出し、妖夢に迫る。
騎士は首無し騎士だったのだ。
「!?」
思わず目を瞑る。
ガィン!
「ぐぬ!?」
が衝撃がこない。
変な金属音がしただけだった。
それに両腕に掛っていた重圧が無い。
「妖夢のお嬢ちゃん、大丈夫かい?」
聞いた事のある声だった。
恐る恐る目を開ける。
「や、夜摩様!?」
飛び出した首を杖で突き飛ばし、胴体を蹴り飛ばしたのだった。
吹き飛んだ首がひとりでに体の元に戻る。
「夜摩殿・・・邪魔をなされるのか?」
「その剣、罪人を斬る為の剣だと言って授けたというのに・・・」
「主の命は絶対です、夜摩殿」
リカルドが剣を構える。
「ならば、灸を据えてやろう」
杖で円を描く。
「戒符・画地為牢!!」
周囲に無数の針が出現し、
描いた円がリカルドを中心に回転し、球を形成する。
「よいか、そこから出れば、待っているのは死じゃ。」
「主が存命なのに先に死んでよいのかな?」
「ぐっ・・・」
「まぁ、そこで頭でも冷やすんじゃな。」
周囲の針はくるくると回転していた。

「夜摩さま、美鈴さんが・・・」
「ほっほ、大丈夫じゃよ」
そういうと、地面を指した。
なんと、美鈴は戦車の突撃を止めてしまったのだ。
ただ、丁度、宿龍呼法が終了し、気絶してしまったのだ。
「お嬢ちゃん、あの子にこの薬を飲ませて上げなさい。」
と小瓶を受け取る。
「これは?」
「神農の秘薬じゃよ。
多分動けないだろうから、飲ませてやってくれ。」
そういうと、ルーミアの方に飛んでいった。
「あ・・・飲ませるって・・えぇ!!?」

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「ふぅ、やっと喘息も治まったわ・・・」
やっと図書館から出てきた魔女、パチュリー
周囲の魔力からどこに誰がいるかを察知する。
「ん・・・向うは、気ね、美鈴か・・・
あちらは、魔理沙ね。
あら?知らない魔力ね・・・それも大きい」
興味がわいた。
見知らぬ魔力、それもかなり巨大である。
「魔理沙には悪いけど、あちらに行かせて貰うわ」


ズズズッ
ゴーレムの指先が腐って落ちた。
「く・・・(このままじゃあ、この子が、壊されちゃう)」
メイドの出血量は最初よりは少ない。
この赤い結界を作るのに大量に消費し、今は維持だけのようだ。
それでも、ムダに魔力、血を失わないためか、攻撃はしてこない。
「あ、そうだ!」
アリスが自ら弾幕を放つ。
「・・・ムダなのに・・!!?」
ゆっくりした動作で弾幕の隙間をゆらゆらと避けるマリーツィア。
が、そこに伸びる巨大な手。
弾幕を回避されるなら
それを利用して直接捕まえればいい。
殺意を持たなければ危険じゃなくなるだろうという予想から、
捕まえにいったのだ。
「うッ?」
「やったわ、これでお終いよ!」
ゴーレムが絞め殺そうと、掴んだ手に力を入れる
が、
グシャァ
掴んだ手がいきなり崩れ落ちた。
「そんな!?」
「・・・この結界は、私の血でできているのよ?」
ここでアリスは心が折れそうだった。
自分の迂闊な行動で大事な人形の崩壊をさらに進めてしまい、
現状の自分にこの結界を破る術が見つからない事に。
「そう、貴女の血だったのね」
いきなり、第三者の声がする。
結界の外側からだ。
「・・・魔女ね?」
「まったく、来てみたらレミィの真似事してる輩が居るし・・・」
いつぞやの紅い霧の事だろう。
当然、マリーは知らない。
「アリス、」
「な、何よ」
「4人は、旱を従えて腐を撃った。
腐は湿、旱は乾。
貴女読んでたでしょ?
それくらい思いつきなさい!」
しかし、マリーは余裕だ。
「貴女に壊せるのかしら?」
「実践してあげるわ、火符・カグツチの抱擁!!」
巨大な炎の渦が結界を丸ごと焼く。
「火符ね・・・でも、水精・アプサラスの加護!!」
内側から、逆回転の水の渦が炎を掻き消す。
「水で消せるわ。」
「その為に妖力を残していたのね・・・」
「えぇ、貴女が火符を使わなくて良かったわ。」
ふらりと体勢を崩す。
先ほどの消耗が相当堪えたようだ。
結界の外でふむと少し思案すると、
「血も水よね・・・」
「「?」」
3枚の符に魔力を流し、術式を起動し、さらにこれらを組み合わせる。
「木木日金符・雷剣神タケミカヅチ!!」
轟音と共に、無数の剣が結界に突き刺さり、
その刹那巨大な雷撃が結界を丸ごと焼き尽くす。
「そ、そんな!!?」
「結界が強かったから中は無傷ね・・・ゴホッゲホッまた喘息が・・・」
「五行だけじゃなかったの?・・・」
「五行と陰陽を組み合わせたのよ、雷程度なら余裕ね。ケホッ
それより、そのデカブツを出して負けそうになるなんて、本気くらい出しなさいよ」
「うるさいわね、本気を出さないのが私の流儀なの!」
ギャアギャアと魔女2人が言い合っている。

結界を破壊された事で戦意を喪失し、マリーの気が緩む。
失血もあり、そのまま気を失い墜落する。
「あ!」
慌ててアリスのゴーレムがマリーを助ける。
その顔は涙で濡れていた。
すでに血の能力も消えうせている。
「・・・・傷の手当て、できる?」
「ついでに貴女のデカブツも治してあげるわ、時間が掛りそうだけど。」


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光と闇の巨大な力が激突し、相殺しあう。
「はぁ、はぁ、はぁ、なんて、魔力・・・」
お互いに大出力魔法を撃ち合ったが互角
に見えたが、魔理沙は消耗しすぎて気絶してしまった。
そのまま墜落する。
ギュパ
突如、空間が裂け魔理沙を飲み込む。
「ふぅ、回収完了よ」
隙間妖怪の紫だ。
「誰?」
「おやおや、忘れてしまったんですか?」
別の方角からもう1人現れる。
「私が八雲 紫であちらが夜摩よ。」
「ゆかり?やま?・・・・」
ピクッ
思案していたルーミアの表情が少しずつ変わる。
記憶が戻ってきているようだ。
「隙間に、人間・・・か、」
「おぉ、思い出されましたか、夜殿」
「また、私を封印しに来たの?
あの時のように・・・」
「そうよ、貴女が起きるのは、もっと後なの。
人の世が終わった時・・・」
「紫どの!あれは・・・」
「夜摩、いいわ、弁解はしない。
騙して封印したのは事実だし・・・」
「もう1人の犯人は?」
「”昼”は、外の世界よ。」
「そう・・・いい機会だわ、復讐してやる!!」
背中から2対の黒い炎が噴出する。
髪が腰までの伸び、
周囲の夜が濃くなる。
「夜翼・ナイトバード!!」
普段のナイトバードとは違い、6対、12枚の黒き翼が2人を襲う。
この弾幕を回避しながら確信する。
「記憶と共に、力も取り戻したようね・・・」
「再生以外の能力は戻っているのは間違いないようですな。」
夜摩が懐から小さな地蔵人形を取り出す。
「地蔵・地獄と現世との堺!!」
地蔵が前方にレーザーを発し、その両側から別々の弾幕が広がる。
片側はゆっくりとした速度で漂う巨大な魔力弾
反対側は高速弾の嵐。
レーザーの射線を動かし、弾幕がレーザーに触れると、速度が変化するという性質を持つ。
黒い翼を相殺しつつ、ルーミアを牽制する。
「こんな遅い弾、当たるものか!」
「なら、追加してあげるわ」
「境界・空と地の狭間!!」
追加はいらないとばかりにスペルカードを発動する。
「暗剣・黄昏!!」
夜を集め、剣とする。
「ここには夜しかないのに、頑張るわね!」
剣を振るい、弾幕を展開する。
「今までの永い、永い時間、伊達に過ごして来てはいないわ
(とは言っても、封印できるような隙が無いわね・・・)」
しかし、封印の隙よりも、気になる事があった。
夜には切り札がある事を紫と夜摩は知っている。
「(たぶん、使えないとは思うけど・・・)夜摩、アレお願い」
「うむ、」
そう頷くと、老人の持つステッキが槍へと変貌する。
「夜どの、人間も色々な武器を作り出してきたのはご存知かな?」
夜の剣を振るうルーミアに問う。
「ふん、それがどうした、人間が一度でも夜を止めた事があるのか?」
槍を構える
「今の貴女はあの頃の夜には程遠い!
神槍・グングニル!!」
ビュン!
槍に変貌したステッキをルーミアに投げつける。
「そんな物、落してあげるわ!」
無数の漆黒の弾丸が槍に向って放たれる!
が、槍は砕けず、全ての弾丸を弾いてルーミアに向う。
「チィ!」
旋回して回避しようとするが、
槍がルーミアの付近に来ると消えうせる。
「な、?」
消えうせたと思った瞬間、全周囲に先ほどの槍が無数に出現し、ルーミアを串刺しにする。
ドシュ、ドシュシュ、ブシュ、グシャ!!
「がッ!?」
「必中の槍です、不完全な貴女には十分な武器でしょう。」
2対の揺らめく夜の翼で全身を覆い、刺さった槍を消す。
「・・・わたしのどこが不完全か、コレを見てもいえるのかな?」
今までとは、比べ物にならない量の夜がルーミアに集まる。
「(アレを使う気ね・・・・)今の私には貴女の切り札は通じないわよ?」
「貴女が知っているのは、死、昏睡、忘却だけでしょ?」
「え?」
紫が驚愕した。
今まで誰にも見せた事の無い、自分でもする事の無くなった表情である。
「見せてあげるわ、混沌より続く系譜を!
紹介してあげるわ、大地、海、時、を除く暗黒と夜の一族を!」
ルーミアを中心に夜が濃く、深くなる
「昼、
輝く光、奈落、不毛、
死神、戦死、皮肉、死の運命、愛欲、欺瞞、
眠り、造形、威嚇、仮像、夢神、幻夢、淫夢、悪夢、
争い、破滅、忘却、狂気、復習、苦痛、誓言、飢餓、殺戮、苦労」
28もの名を告げる。
「(お、多すぎるわ!いくら境界をいじれば対処できるとはいえ、この数は・・・)」
一瞬の静寂。
紫と夜摩に緊張が走る。
「神夜・夜の系譜、ん?」「うわ!?」
スペルを唱え、ルーミアの周囲に28の力の渦が現れ、弾幕を展開するはずだったが、
意外にも、第三者が突然の出現に、気を取られ、不発になる。
「今よ!」
間髪いれず、そう指示するもう1人。
いつのまにか、ルーミアの髪に赤いリボンが巻かれている。
至近距離に霊夢が現れていた。
「霊符・夢想封印・結!!」


ゆっくりとした時間の中、高速で飛ぶ2つの影
「ちょっと、どういうことなの?」
「だから、ルーミアの封印が解けたのよ!」
「リボン位あんた結べるでしょ?」
「・・・封印とかの専門家がそんなんでいいの?」
「・・・・分かってるわ、一度緩んだ封印をもう一度強固なものにするんでしょ?」
「分かってるじゃない、私がリボンを結んで、至近距離まで貴女を運ぶわ」
「ちょっと、それって」
「いきなり目の前に現れるから、一瞬が勝負よ」
霊夢が愚痴を言うが気にしない。
そうこうしていると、紅魔館にたどり着く。
「向うから来ていたの?」
3人が激しい弾幕ごっこをしている。
「あら、紫とルーミアと・・・知らない爺さんね」
「あの人は、閻魔天、夜摩さまよ」
「うそ!?」
「さぁ、心の準備はいいかしら?」
弾幕同士が激突し、打ち消しあう。
なにやらルーミアが大技を披露しようとしているらしい。
今がチャンス!
「止まれぇぇ、時よ!!」
連続での時間操作。
止める時間は数分だが、時間の減速を長時間使っていたので
この日の時間操作はこれで最後にしたかった。
動きの止まった霊夢をルーミアの背後に移動させ、リボンを結ぶ。
「時よ、動け」
「うわ!?」「神夜・夜の系譜、ん?」
「今よ!」
赤いリボンを対象にする。
「霊符・夢想封印・結!!」
博麗の霊力がリボンに込められる。
「ぐぁ!!?」
周囲の夜が薄くなる。
と、ルーミアが一回り縮んだようになり(髪は長いまま)、気を失う。
咲夜がそれを抱きとめる。
「ふぅ、お疲れ様」
「もう2度とやらないわ!こんな危険な事」
「・・・・」
「・・・・」
「ちょっと、霊夢?」
むすっとした表情で紫が言う。
「何よ?」
「なんで美味しいところを持ってっちゃうのかしら?」
「ほっほっほ、紫殿、残念でしたな」
「あ~あ、もういいわ、夜摩帰りましょ」
そういうと隙間を開く。
「じゃあな、博麗のお嬢さん」
ピキッ
っと隙間が閉じる。

「・・・・お茶位なら煎れるわよ?」
「当たり前でしょ?」

美鈴、リカルド、妖夢、パチュリー、アリス、マリーツィアが紅魔館に戻ってくる。
みんなボロボロだった。
ルーミアを騎士に渡すと、
「主が戦闘不能な今、我ら従者が戦う意味は無い。」
と言い、3人とも消えてしまった。
妖夢が何故か赤面していたのと、魔理沙が紅魔館玄関に捨てられていた事が気になった。

-------------------------------------

次の日、
特別に休暇をもらった美鈴が、湖の主、エレンと昨日の事を話していた。
美鈴は薬のおかげで、危険な状態にはならなかったが、咲夜から特別に休暇をもらったのだ。
「それでですね、私が目を覚ますと、その妖夢さんが、何故か赤面してるんですよ
その後も何故かよそよそしいし・・・嫌われたんでしょうか?」
「(ガーン!)そ、それは、薬を口移しで・・・は、そうか、その子今度紹介してくれないかしら?」
「え?いいですよ~、あ、チルノさん!」
丁度、エレンの背後にチルノが大妖精ラミィを連れて現れる
「おー、美鈴、げ!リータン」
「そっちで呼ぶんじゃないの!」
エレンの背後で触手が蠢く。
チルノが大妖精の影に隠れる。
トラウマになっているようだ。
「あ、フルネーム、エレン・リータンって言うんですか?」
「え、えぇ、こんな名前恥ずかしくって・・・」
「可愛いじゃないですか~」
「そ、そう?」
触手がトプンっと湖に隠れる。
「め、美鈴、案内して!できれば早く!!」
「ふふ、それじゃね、エレン。チルノさんこっちです。」


紅魔館の数ある別館のうちの1つ喫茶館
「チルノにはコレ、大妖精にはこっち、と・・・」
大妖精記念日を台無しにしたお礼に、チルノにはコンペイトウの瓶詰セットを、
大妖精には
妖精なら、草花の成長を促進させる程度の能力があるだろうって事で
パチュリー様に作ってもらった「花符」を用意した。
後は4人分のケーキと紅茶だ。
ケーキは先ほど出来上がった。
後は来るのを待つだけだ。

そういえば、気になる事が1つある。
夜遅く帰ってきた紅魔館の主、レミリアお嬢様の機嫌が斜めな事だった。
カランカラン
「咲夜さーん、お連れしました~」

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レミリア自室にて
「咲夜が霊夢を連れてきたのは嬉しいけど、
前もって言ってくれればムダに神社まで行く事無かったのに・・・」
愚痴を親友であるパチュリーにこぼす。
本を読んでいたパチュリーだったが、ふと思ったことを口にする。
「・・・・レミィ、昨日あった事何も知らないの?」
「そういえば、対岸とか周辺が色々壊れてたけど何かあったの?」
「・・・・・ハァ(大変ね、咲夜も・・・)」

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その頃、ルーミアはというと・・・

リカルドが主の前に立つ。
その片手にハサミをもち、もう片方には大きな布を持つ
「さ、髪の毛を切りましょう、ルーミア様」
「いや」
頬を膨らませ、ぷいッと横を向く。
「な、なぜですか?」
「せっかくマリーみたいに長く伸びたんだから、このままがいいの!」
「・・・いっしょ・・・」
主と一緒がそんなに嬉しいのか、少し微笑むが、リカルドに睨まれてすぐに俯く。
「はぁ・・・(もう一度封印緩まないものか・・・・)」
リカルドの苦労はもう少し続きそうだ。

まず、最初に、こんな長文読んでくれてお疲れ様です、ありがとうございます。
今までのお話(永夜除く)の登場キャラ全員登場(してるはず)です。

自分は、長い話を区切るのが苦手で、今回はかなりの長文になってしまいました。
一応、この話は、封印の解けた夜から、いままで書いた話のまとめENDな感じです。

マスタースパークとかってミニ八卦炉使ってるんですね・・・
勝手な設定して大恥だーーーー!
(慧音さんのEX姿も_| ̄|○)

感想あると嬉しいです。


多分誰も読まないだろうけど、加筆修正しました。
妖夢の今後がどうなるか・・・
幽々子、咲夜、に引き続き、唇を奪った(?)美鈴も加わって4角関係に(ぉ

昼の神とか夜の神とかはギリシア神話ですね。
紫(境界な神様)も探したんですが、ペルセポネが冥界と地上を行き来できる
ので、それっぽいかな?
でも、妖夢の方が近いか・・・
ローマの神様には、境界の神もいるんですけどね~

この話でルーミア封印のリボン関係の話はオシマイです。

ルーミアは封印解けたらロングでナイスボディなお姉さんになる派です(`・ω・´)ドウシモトム!
EXAM
http://homepage3.nifty.com/exam-library/
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