Coolier - 新生・東方創想話

バックドロップは八雲式

2008/09/12 00:59:53
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「遅いな~。まだかな~」




式は、主の帰りを待っていた。


せっかく話したいことがあったのに。


魚を一人で釣ってきたのだ。


見たことがない魚だったけど、大物だった。


早く主に自慢したかった。









遅い。


いつもより帰りがずっと遅い。




「お腹空いた……」



主が帰ってこなければご飯が食べられない。


いつもは時間通りに帰ってくるのに。


今夜は何かあったのだろうか。







でも、心配する必要はないはずだった。


待っていれば必ず帰ってくる。


主は強い。


誰よりも強くて優しいから。


たった一人で、どんな相手もやっつけちゃうから。














でも最近は、






それがちょっと不満で、不安だった。






※※※※※






その日の朝、八雲藍は、自身の式のために、3つのものを用意した。

一つは釣竿。
竹でできた古いものだが、不思議な品格がある。状態も悪くない。
貝紫色をした柄には、強化の御札が張ってあり、急な引きに耐えられるよう、丈夫にできている。

藍色のバケツ。
このバケツは特別性で、見た目よりもずっと物が入る上に、持っても軽い。
彼女の主が昔、自分のために作ってくれたものであった。
ただの趣味に自身の技を最大限に使うのも主らしい。

最後に、竹の皮で包んだ、おかかの握り飯。
大きな三角のが5つ、漬物と一緒に、山吹色の風呂敷に包んである。
彼女の式一匹で食べきれる分ではない。
これには理由があった。


「よし、準備完了。後は大丈夫ね? 橙」
「はい! ありがとうございます、藍様!」


八雲藍の式、妖怪猫の橙は元気に返事をした。

藍が橙のために用意した物は、八雲家秘伝の釣り道具一式である。
一昨年に二人で釣りに行ったときは、なかなか橙に釣りの醍醐味を知ってもらえなかった。
何せ手づかみで捕る方が楽だということで、はしゃいだ橙に驚いて魚が残らず逃げてしまい、とても釣りどころではなかったのだ。
それが、二月ほど前に、我慢して竿を使って釣った時に、橙は釣りの楽しさに目覚めた。
初めての獲物を手にした日は、しばらくどんなに凄かったかという話を聞かされることとなった。

ただし今回は、橙の要望もあって、藍は同行しない。

一人で出かけて釣っていくほどにまで熱中してくれるとは、
と思ったのだが、よく聞いてみると実は違った。


「橙。出かける前に確かめておこう。覚えているかな。釣りの三か条だ」
「はい! えーと……」


橙は指を折りつつ、思い出すようにして答えはじめた。


「その1、『川に入ってはいけない』。

 その2『うるさくしたり、他の人の迷惑になるような行為をしてはいけない』。

 その3……えーと……『ゴミを散らかさずに持ってくること』」

「うん、よくできた。だけど今回は、最後にもう一つ付け加えておこう」

「はい?」


藍は笑って、橙の頭を撫でてやった。


「その4、『友達と喧嘩せず、仲良くすること』……だ。釣りは楽しくやらなきゃね」
「分かりました! 仲良くします! 喧嘩なんてしません!」
「よし。それじゃあ行っておいで。暗くなる前に帰ってくるのよ」
「はい! 藍様。晩ご飯のおかずはまかせてください!」
「ふふっ。楽しみにしているよ」
「起きた紫様が、びっくりするくらいの大物を釣ってきます!」
「……むう、それは凄い。想像もつかないや」


と、そこで二人は、奥で寝ているご主人様を思い出して笑い合う。

彼女らの主は、橙がクジラを釣ってきても驚くことはないだろう。
むしろ、本人が釣りにいけば、何食わぬ顔で捕ってきそうだ。川釣りなのに。
色々と非常識な存在なのである。






「いってきまーす!!」

マヨヒガ全体に響くほどの声を残して、橙が飛び立った。

朝の日を背に、手を振りながら飛んでいく橙を、藍も振り返しながら見送る。
嬉しそうにはしゃいでいる様子が、小さな影になっても、よくわかる。

あの元気だと結局釣りよりも鬼ごっこに夢中になりそうだ。
晩ご飯のおかずは期待できそうにない。

だが、それもまたよし。
これでひとまず、朝の予定の半分は終わった。

「さてと、次は何からやろうかな」


残りの仕事をざっと頭に思い浮かべてみる。
お昼は簡単なものにするとして、掃除に洗濯、結界の見回り……。

ふと、足元で散らばっている葉っぱが目に付いた。


「とりあえず玄関前を掃いておくか」


箒を取ってくるために、藍は物置へと向かった。











マヨヒガ周辺に住む鳥や虫も、すでに皆起きてきている。

彼らのさえずりを邪魔せぬよう、
すっ、すっ、と、箒を静かに滑らせていく。

一掃いごとに、迷いや煩悩が消えていくようだ。
術で一気に掃除するより、このやりかたが好きだった。


八雲藍は、その日の仕事の順序を、朝になってから決める。
几帳面な彼女にしては珍しい習慣だが、決して怠けているわけではない。
これは、一種の長生きの知恵だった。
毎日同じ順で仕事をこなしては、百年と持たすことはできない。
暦を幾度も巡る妖怪は、常に変化を求めることで、生を充実させるのである。

……もっとも、これは遠い昔に、彼女の主から聞いた受け売りだったが。


今朝は予定外の仕事があった。
前の晩に橙が、友達に釣りの面白さを教えてあげたい、と話してきたのだ。

思わぬ相談であったが、藍は快く引き受けた。
釣り道具を用意し、ついでに、友達の分のお昼ご飯も握って上げたというわけである。
仲の良い友人について、橙は一人ずつ詳しく話してくれた。



――こうやって親離れしていくんだろうか……。



ふと、箒を動かす手を止めて、藍は考える。

最近の橙は、マヨヒガよりも妖怪の山で過ごす時間が増えた。
遊び友達が増えたことが原因かもしれない。
それは保護者である藍にとって、喜ばしいことであった。

家族以外の人間、特に友達と過ごす時間は、子供にとって将来大切な財産となる。
橙にとっては、式としての心の成長にもつながるに違いない。

いずれは主人から八雲の姓を与えられることになるだろう。
めでたし、めでたし。


……で終わるなら、話は早いのだが。


実際のところ、藍は少々不安を感じていた。

ひょっとしたら、自分と橙との距離が、今より遠くなってしまうのではないか。


「まさかとは思うが……いや、ありえるか」


もちろん、橙が藍の式である以上、主のもとから完全に独立することはありえない。
二人は疎の関係になることは無い。それが主と式の摂理である。

しかし、心はどうだろうか。
使役者の手足たる式とはいえ、精神的には自立していってもおかしくない。
すでに自分が、主の紫からある程度自立しているように。

現に、今日の行動を見ても、橙は間違いなくその方向へと歩んでいる感がある。

藍以外の存在に触れ、その中で新たな自分を見出す過程にいる。


二人の関係が変化しまった時も、橙は今のように甘えてくれるだろうか。


ふうむ、と藍は腕を組んで考え込む。


「『寂しいものね。いつか来るとはわかっていても、納得し難い気持ちがあるのは否定できないな』……かしら?」
「わっ! ゆ、紫様!?」


突然聞こえた声に、慌てて振り返った先では、
彼女の主である八雲紫が、スキマからひょっこり顔を出していた。

まだ日が昇ってから間もない。
夜型の主人がこんな時間に起きているというのは実に珍しい。

「あら、失礼なこと考えてるわね藍。私だって早起きをする時ぐらいあるのよ?」
「心を読まないでくださいよ。しかし、本当に早いですね。どうなさったのですか?」

倒してしまった箒を持ち上げようと、藍は屈みかけた。



「私の式が寂しがっていた。それだけで早起きする理由としては十分よ」



紫はスキマに頬杖をついて、薄く笑みを浮かべている。


対する藍は、顎が外れそうになった。


いかにも胡散臭い理由である。

普段から藍を馬車馬のように働かせる紫が、
ただ自分が寂しがっていたというだけで起きてくるなんてはずはない。

これは危険だ、と勘が告げていた。

あの微笑みは厄介ごとの前触れだ。もちろん藍自身にとっての。
千年以上続いている関係の中で体得した、式の経験則である。
当たる確率は非常に高い。


藍はだらしなく開いた口を閉じ、内心でため息をつきながら聞いてみた。


「今度はいったい何をたくらんでいるのです?」
「何もたくらんでなんかいませんわ」


――つまり、何かたくらんでいるということか。弱ったな。


ずいぶんと天邪鬼な解釈だが、相手の紫自身が常識破りなので、これが適当なのである。
これも、長い付き合いの末に、自然に身についてしまった思考法だった。

だが、わかったところで、紫のやることをどうこうできるわけでもない。
それどころか、深く突っ込めば、必要以上に巻き込まれる可能性が大だ。
毎度毎度それに付き合っていては式である自分の身がもたない。


ここはひとまず軽く流そう。


そう結論して、藍はそれとなく話題を変えることにした。


「そうですか。では久しぶりに早起きしたのですから、朝食でもいかがですか?
 すぐに用意しますので」


ちなみに、藍はすでに、橙と共に朝食を終えていた。

主である紫を放っておいての食事など、本来式の立場では考えられないほどの無礼だが、
普段から夜型なうえに一日12時間睡眠を守る主が相手では仕方がない。
橙と二人だけの朝食は、すでに日常化している。
もっとも、紫自身は気にしていないようだが。


――そう。大体にして、紫様が普段とは違う時間に行動をしているというのが実に奇妙。


ひょっとして、また幻想郷に異変が起きたのだろうか。
だとしたら真剣に動かなくてはなるまいが……。

むしろ、目の前で不気味に笑っている紫こそが、異変のような気もする。
異変というより変だが。
何を考えているのかは知らないが、今日は忙しくなりそうだった。
日課を予定通り消化することができるか、心配になってくる。


そんな式の心の内を知ってか知らずか、紫は普段と変わらぬ調子で、話にのってくる。


「そうね。藍の作る朝ごはんも久しぶりだし、いただこうかしら」
「いつもこの時間に起きてくだされば、毎日召し上がっていただけるのですがね。
 もう少し生活を改めてみてはどうでしょうか」


話が逸れそうで安心してしまったのかもしれない。

式の立場からのちょっとした忠言のつもりだったのだが、
そこからつい、藍の口が止まらなくなった。


「というか、そんな生活をしていると牛の妖怪になりますよ。少しは運動しましょうよ。
 近頃は昼だけじゃなく、夜もごろごろしてるじゃないですか。威厳が全く感じられません。
 はっきりいってズボラです、最近の紫様は。妖怪の賢者とは思えませんよ。
 多感な時期の橙に、グータラというバッドステータスがついては困りますし……」

「ストップ」

紫は、しつこい羽虫を追い払うように、扇子をふった。

「こんな早い時間から藍の小言なんて聞きたくないわ。爽やかな朝が台無しじゃない」
「たまにしか起きない紫様が起きている時点で、私の爽やかな朝が台無しです」
「……あら、言うわね仔狐が。少しお仕置きが必要かしら」
「これは失礼ました」


主が怖い笑顔で凄んできても、藍は怯えることなく気楽に構えていた。
それどころか、齢(ピー)の化け狐である自分が『小物』扱いされるのは、
なんと言うか新鮮だなあ、と感じている余裕まであった。

おそらく、珍しく朝に起きている紫様の方が悪いのだ、今は私の時間帯だもの、
という根拠の無い自信があったからだろう。

夜だと、こうはいかなかっただろうが。


そんなふてぶてしい態度を取っていると、紫も堂々と言い返してきた。


「私も言ってやる。最近の貴方の小言には『温かさ』が足りないわ。愛情真心エトセトラ」
「ん? そうですか?」

予期せぬ指摘に、藍は首をかしげた。

「そう。例え小言だろうと、それが温かくやさしいものなら耐えられる。でも温かくないただの愚痴は大凶。
 冷たく乾いた台詞は、ふさいだ耳まで腐らせるわ。もう少しあなたの愛レベルを上げてちょうだい、私のために」
「と、言われましても」

「昔は『ゆかりしゃま~』と可愛い声で懐いていたのに。
 今や主である私をウザがるようになってしまって……ゆかりん悲しい」
「それは石器時代の話ですか」

わざとらしく目をこする主に、藍は薄目で突っ込んだ。

ちなみに『ゆかりしゃま~』ではなく、『ゆかりん』に突っ込んだのは内緒だ。
幸いこれは気づかれることがなかった。


スキマの向こうから、紫は両腕を開いて、子を迎えるかのようにおいでおいでと動かす。


「さあ藍。昔のように私を呼んでみなさい。そして甘えてみなさい」
「嫌です。今の私がそれをやったら崩壊しますよ色々と。何が、とは申せませんが」
「別に崩壊してもいいのに。やっぱり最近の藍は冷たいわね」
「まだ冷めてませんよ」
「朝ごはんの話じゃないわ。冷たいどころか、寒いのね最近の藍は」
「寒くてもいいです。とりあえず、朝食の用意をします」


こんな会話を続けていれば、しまいには午前の家事の時間が足りなくなる。
自分の安全のためにも、さっさと終わらせておくべきだろう。


「では失礼します」


藍は一礼して会話を打ち切り、くるりと背を向けた。










「……橙もそうなるのね」








橙。

その単語だけは、さすがに聞き逃せなかった。






「……今なんと?」
「橙もいつか、主である貴方をウザがるようになるのね」


振り向けば、
紫が先程と同じ悲しげな顔をしている。手にハンカチまで持って。


「紫様」

「貴方を邪魔に感じるようになるのね。うっとおしくなるのね。
 親面してベタベタ甘えてくるんじゃねぇという顔をして、貴方から離れていくのね。
 ああ、大切な式から見離されるなんて、可哀想な藍」

「あのですね、紫様」

さすがに頭に血が上った。
腕を組んで、フンと鼻息を荒くしながら、はっきりと言い返す。

「私は貴方をウザがっているわけではありませんし、見離すなんてありえません。
 そして、橙も私から離れていくなんてことはありえません!」

「ありえない。そう思っていた時期が、わたしにもありました」

「何の話です。大体にして、私は貴方の『式』ですよ。離れるなんてこと不可能でしょうに」

「そういうことを言ってるんじゃないの。貴方も分かってるでしょ」

目を吊り上げる藍を前にしても、紫は全く動じない。
あさっての方角を向き、遠い目をしている。

「時の流れは残酷。そして避けられないものよ。
 それは式でも同じ。貴方と橙の関係もいつか変わってしまう。
 さっき貴方が感じてた通りに」

「どうしてわかるんですか。それに、『紫様と私』、『私と橙』では話が別ですよ」

「やがて心は移り変わり、橙は貴方から離れてしまう。
 今のように甘えるどころか、貴方を毛嫌いすることになるかも……」

「だから、そんなことにはなりませんってば」


憤慨する式の反対意見を完全に無視して、紫は静かに目を閉じた。


「将来つまみ食いをして、橙に説教される藍の姿が見えるようだわ」

「……ああ。わざわざスキマから手を伸ばさなくとも、私に言ってくださればよいのです。
 そして私は、日に四度もつまみ食いをしません。太りますから」

「……寝顔をちょっと突付いただけなのに、朝になって歯磨き粉を投げつけられたりするのね」

「赤の油性マジックで『マルちゃん』と頬に書く人に同情の余地はありません。
 鏡を見て唖然としました。もちろん私は橙にそんな悪戯をすることはありません。絶対に」

「…………夕食の時間にムーンサルトプレスで起こされたことがあったわ。ちょっと寝過ごしただけじゃない」

「その前日は、優しく起こしましたよ。ただし、地獄車で投げ飛ばされましたが。庭まで」

「………………」

「痛かったです。そもそも、あれだけエネルギーが有り余っているのに、
 なんでそのあと二度寝できるのかがわかりません。しかも庭で」

「……ちょっと藍」

そこまで言ったところで、紫がジロリと睨んできて

「なにかしら? 貴方が昔より冷たいのは、私が原因だと言いたいの?」
「じゃなければ誰が原因なんですか。紫様の日頃の行動が全ての原因だと思いますがね」

さらに正確に言えば、「行動」の前に「怠惰な」や「子供っぽい」などの形容がつく。

ついでに「年甲斐のない」もつけたいところだ。
口に出せば間違いなくお仕置きされるので言わないが。


「いいですか。紫様」


親が子に教えるような顔をしながら、藍は一本指を立てて振った。


「私の行動は全て紫様のためを思ってのことです。
 決して冷たくあしらっているわけではありませんよ。
 確かに昔とは形が違いますが、これが今の私なりの……あー、愛情です」


最後は若干言葉が濁ったが、言い切った。

たしなめられた主の方は、ふーん、と眠たそうな顔をする。


「つまり、形は変われど、貴方が私を愛していることには変わりはない、と」

「はい」

「冷たいと感じるのは、私に原因があると」

「はい。僭越ながら」



そこで紫は



笑った。



ニヤリと。



餌に食いついた魚を見るような目をして。



「そう。つまりはこういうことね」



先の子供じみた声色ではない。
威圧感を含んだ、妖気の混じる声、八雲紫の声だ。


「私がしっかりした主に戻れば……貴方は昔のように、私に甘えてくるようになるのね」

「え?」


突然様子を変えた主が、導き出した結論についていけず、藍は聞き返した。


「昔のように私を呼ぶのね。可愛い声で」
「ええっと」
「昔のように、いつも笑顔で抱きついてきてくれるのね」
「あの、紫様」
「そうと知ったらやる気がでてきたわ。何百年ぶりかしらこの感情。ああ凄い……楽しいわ」
「もしもーし?」


「それでは作戦名を決めなくてはね。名付けて……」


バッ


と右手を大きく横に振り、幻想郷の大妖怪は力強く宣言した。


「『オペレーションゆかりん―ツンデレの藍が大変身、ゆかりしゃま大好き作戦』!」

「何ですかそれは!」

あまりのネーミングセンスに、腰がくだけそうになる。

というか大真面目な顔してますが、オペレーションと作戦は同じ意味ですよ紫様。
知ってて言ってるんだろうけど。


「というわけで私は作戦会議に移るわよ」
「作戦会議!?」
「こうしちゃいられないわ、藍が私に甘えるために頑張らなきゃ。ふふふ」


ふくみ笑いをする紫の背後に、禍々しいオーラが見える。

朝の静謐な空気はすでに失われていた。

日の光が頼りなく感じる。再び夜が降りてきたかのようだ。

自然、藍の体が緊張していく。
本気になった主の恐ろしさは、誰よりも身にしみて知っている。

式となってから今までの数々の災難を思い出して、冷たい汗がこめかみを伝った。

今度はいったい、どんな『いたずら』を仕掛けてくるのか。
『オペレーションゆかりん』とは何なのか。


藍は死闘にそなえて、尻尾の毛を逆立てた。





「そうね。まずは鋭気を養うためにも、戻って寝直すわ」

「いや寝るんかい!」

「おやすみ藍。オペレーションゆかりんに乞うご期待」


藍の突っ込みもむなしく、紫はあっさりスキマの向こうへと消えてしまった。


嵐のような会話は、当事者によって唐突に終わりを迎えることとなった。






雀が鳴いている。


肌寒くなる風が吹いた。


紫の気配は消えている。
どうやら本当に二度寝に戻ったようだ。


構えを解きながら、藍はふうと息をついた。

おそらく紫が再び起きてくるのは夕方頃になるだろう。あくまで、おそらくだが。
それまでは安全な時間帯ということである。

この機に家事をさっさと済ませておくことにした。


「まったく。昔は紫様も真面目で凄かったのに」


ぶつくさと言いながら、気持ちを落ち着かせるために、
藍は地面に寝かしていた箒を手にとった。


八雲紫。

先程姿を消した藍の主は、幻想郷の守護者であり、最強と呼ぶに相応しい妖怪である。
境界を自在に操る程度の能力、あらゆる存在の有と無を指一つで変えてしまうほどの力。
それは文字通り有無を言わさぬ力であった。

並の妖怪ではかなうどころか、戦うという段階まで行くことすら許されない。
あまりにも大きすぎるその力は、幻想郷の乱れ、異変の際に行使される。
もっとも、強すぎるためか、深い意味があるのか、本人の性格なのか、
紫自身は間接的にしか働かないのがほとんどだった。

幻想郷に結界が引かれるずっと前、昔の紫は違った。
今よりもっと恐ろしく、もっと鬼気迫る感じで理想を追いかけていた。
先に立ちはだかる者には容赦せず、圧倒的な力で叩き潰し、怨念すら飲み込んでしまう。

だけど、藍にはとても優しい主だった。


――それが、いつからああなってしまったんだっけ。


得体の知れぬ御方という点では違いないが、現在の紫の気配は、ぬるま湯のようであった。
かつてのように、側にいるだけで突き刺さるようなプレッシャーを感じることはない。

ただしそれは、自身八雲藍も強力な妖怪であり、式である余裕があるからかもしれない。
未だに彼女の主は、幻想郷に生きる多くの者達にとって、正体も真の実力も不明な存在であり、
最も畏れられている妖怪の一つであるのは確かなのだ。

……のはずなのだが、

それが何でオペレーションゆかりん。
何でゆかりしゃま大好き作戦。

間近で世話をする式としては、恐ろしいやら、アホらしいやらで、実に難解な存在だった。
千年以上の付き合いにも関わらず、主の行動はいまだに読めない。計算できない。


「なのに、私の行動は読まれっぱなしなような気がする……。たまにはあの方を驚かしてみたいものだけど」


うーん、と腕組みして考える。

が、

結局気を取り直し、藍は箒を手にして、玄関前の掃除を再開することにした。




お日様はだいぶ高くなっていた。





※※※※※ 





不覚をとった。


まさか、ここまでやることになるとは。


まだ理想には、ほど遠いということだ。


避けられぬ戦いが、これからもあるだろう。


本当に、愚かな分からず屋どもめ。


私は負けない。


私は強い。


この程度の傷で私は折れない。


何としても成し遂げてやる。


今は、早く帰らなくては。


あの子がお腹を空かしている。


私の大事な宝物が。






※※※※※






「ただいま帰りましたー!」

夕刻のマヨヒガ。
出発の時と同様に、橙が元気な声で挨拶しながら帰ってきた。

「おかえり、橙」

藍もそんな橙を優しく出迎える。


「どれ。魚は釣れたかな?」
「はい! これです! ちょっと少ないかも……ですけど」


橙が手にしたバケツの中では、小魚が三匹ほど、
その間を縫うようにして一匹の魚が泳いでいた。

イワナか。これは予想していなかった。

ははーん、と藍はニヤリとなった。
イワナと背中に持った山菜。
橙の獲物とは思えない。


「山菜は誰かから分けてもらったの?」
「はい。山で鬼ごっこして遊んでいたら、藤原妹紅さんが……。はっ!」


橙は悪戯が見つかったときのように、二つに分かれた尻尾を立てた。


「ほほう。橙は川釣りをしていたと思ったんだけど」
「あう……す、すみません」
「いやいや怒ってないよ。橙は遊ぶのが目的だったんだし」
「で、でも、イワナは本当に私が釣りました! 妹紅さんに教わって。凄かったんですよ」
「ほう! それはよくやったぞ橙。あとで聞かせておくれ」
「はい!」


自慢げに胸を張る式から、藍はバケツを受け取った。

まあ、半分は予想通りといえば予想通りだったが、思わぬ収穫はあった。
あの蓬莱人には、あとでお礼をしにいかなければ。

「じゃあ、さっそくこの魚を捌いて料理しよう。塩焼きがいいかな」
「わあ、楽しみです」
「手を洗ってきなさい。今から始めるところだから、晩御飯までには少し時間がかかるけど」
「あ、藍様」


橙はぴょこんと手を上げた。


「わたしも手伝いたいです」

「おや? どうしたの、珍しい」

一瞬、山遊びで減らした点数を稼ぎにきたのか、と邪推したが、
橙の表情からは、純粋な好奇心が感じられた。


「ダメですか?」

「いや……もちろんダメじゃないけど」


ダメどころか、普通はこちらから命令するものである。
橙は藍の式であり、主人の藍を手伝うのは、正しく本来の役目だった。

が、何だか気にかかる。

朝の紫との会話を思い出した。









曲名 さようなら藍様
作詞 八雲紫(脳内) 作曲 M田公一

働き者の橙だけど~
主の藍は困り者~
いっつもグータラ寝坊助で~
無茶な命令してばかり~
とうとう愛想が尽きちゃった~
さようなら~ さようなら~
藍様さようなら~♪


カメハメハ大王の節でよろしく  by ウクレレを持ったゆかりん





ブンッブンッと頭を振って、脳裏に流れた嫌な音楽と映像を消し去る。

突然ヘッドバンギングを始めた藍を、橙は不思議そうに見ていた。

ぜーはー、としばらく藍は据わった目で息をついていたが、
横の式の視線に気がついて、なんでもないよ、と笑顔を見せた。


「それじゃあ今日は二人で美味しいものを作ろうか」
「はい!」

いつもと変わらぬ和やかな雰囲気で、二人は玄関をくぐった。


あれ?


しかしそこで、藍は立ち止まることになった。

鼻がひくひくと動く。


この匂い……。


何やら美味しそうな食べ物の匂いが、奥から流れてくる。
これは……味噌汁か?
しかし藍には心当たりがなかった。まだ調理にとりかかる前だったのだ。


「藍様?」


橙も匂いに気がついたらしい。

はて、と二人で首をかしげながら、台所へと向かう。
二人がたどりついた先では……






恐るべき光景が待っていた






「「どえええええええええええっ!!!?」」

重なる二つの叫び声。


無理もない。幻想郷でトップを争う筋金入りの怠け者


彼女らの主人である紫が、なんと




割烹着を身につけて、台所に立っていたのである。


「な、なんで!?」
「あら、藍に橙。悪いけど夕飯にはもう少しかかるから。……ん? それは」


紫は包丁を置いて、驚愕に尻餅をついていた藍の手から、バケツを受け取った。


「あらイワナ。骨酒なんていいわね」


などと言って紫は、目を細めた。


「いえいえ、そういうことじゃ、なくて、ですね」


腰を抜かしていた藍が、ふらふらと立ち上がりながら言った。

陸上を歩行するシーラカンスを目にしたような顔で


「紫様。これは一体何の冗談ですか?」
「藍こそ冗談? 見て分かるでしょ。夕ご飯を作っているのよ」


式の顔を見ずに、おたまで鍋の中身を小皿によそい、味見する紫。
うん、上出来、とうなずいている。
その姿は、中々様になっていた。


「それくらい見て分かりますよ! 動機を聞いているんです私は!」
「それは、可愛い式のためにご飯を用意するのは主の役目じゃなくて?」


めまいがしそうな台詞を、割烹着の妖怪は平気でぬかしてくる。

そんなわけないでしょう。
そりゃあ私は橙に作ってあげてますが、貴方は私に作れと命令する側じゃないですか。
昨晩だって布団の中から当然のように『足』で指図していたじゃないですか。
『働き者』と『八雲紫』の境界でも操ったんですか。
仕事サボって三途の川でクロールしている閻魔様並にありえません。
嫌がらせですよある意味。

走馬灯のように、頭を流れた突っ込みの途中で、


嫌がらせ……?


藍はハッと気がついた。

朝の会話だ。

そうか。これが『オペレーションゆかりん』か!!
これは予想できなかった!!
おのれ! 思い通りにさせてたまるか!


「紫様。私も手伝います」

藍は、ぐいっと前に出た。

それに合わせて、紫はさりげなく、藍が台所に入り込めないような位置に移動してくる。

「あら、いいのよ別に。貴方たち二人は、食卓で待っててちょうだいな」
「いえいえ、主だけ働かせて自分は座っているなど、式としてのプライドが許せません」
「じゃあ、『主』の私が許すわ。行きなさい。そしてあとでたっぷり甘えてちょうだい」
「今のは聞かなかったことにします。さあ、私にも包丁をお貸しください」
「今晩は貴方が使う包丁は無いわ。大人しくしなさい」
「では、この鍋は私が見ましょう。紫様は包丁を持ったまま座っていてよろしいです」
「ら~ん? コックの数が多いほどスープが不味くなる、って諺を知ってる?」
「知っています。しかし、見れば献立は洋食ではなく和食なので。味噌汁なら無問題です」
「そんな理屈が通るわけないでしょ。ほら、橙を見習いなさい。何も言わないじゃないの」

「あれは隅で怯えてしゃがみこんでいるだけです!
 紫様の割烹着姿が、それほどまでに怖かったのでしょう。ああ、かわいそうに橙」

「失礼な。あれはきっと、斜め後ろに力を溜めているのよ。
 うかつに飛び込んでみなさい。凄い勢いで蹴り上げてくるわ」

「んなわけないでしょう! 初期のガイルじゃあるまいし!
 せっかくできた友達がいなくなるような発言は控えてください!」

「もー、うるさいんだから」

わけのわからないツッコミに、
紫はうんざりした顔で、ひょい、と指で合図をする。

とたんに藍の足元でスキマが開いた。

一瞬の浮遊感。

「ちょっ、紫様!!」

「はい。大人しく食卓で待ってるのよ」


のんびりと微笑む紫に見送られながら、藍は部屋の隅にいた橙と共に、
なす術も無くスキマに落ちていった。






※※※※※






「おいしい! すっごくおいしいです」

先ほど衝撃の光景に凍り付いていたとは思えない食欲で、
橙は早くもおかわりを要求していた。

「そう。それはよかった。たくさん食べてね」

紫は茶碗を受け取り、ご飯を盛ってあげている。

愛情にあふれた、主と、式の式の姿がそこにあった。

一方、式の藍は、その光景を見ながら、黙々とおかずの焼き魚を口に運んでいる。
橙が獲ってきた魚なので、この場で誉めてやりたいところであるが、
料理したのが紫なので複雑な心境だった。


「藍、貴方の感想をまだ聞いてないのだけれど」


橙に茶碗を返しながら、紫は藍に話を振った。

意地を張っても仕方が無い。
藍は正直に感想を述べることにした。


「美味しいです。久しぶりに食べましたが、まるで腕は落ちてませんね」

「そう。ありがとう」


藍の久しぶり、という言葉に、橙は不思議そうに目をぱちくりさせる。
紫は気がついて、ああ、と説明をはじめた。


「そういえば橙に教えたことはなかったわね。
 貴方が式になるずっと前、藍が料理を覚えるまでは、私がいつも台所に立っていたのよ。
 そもそも、藍に誰が料理を教えたと思っているのかしら?」

「ああ、なるほど! そうだったんですか」

「そうだったのよ。懐かしいわねぇ」


確かに、藍にとっても懐かしい味だった。
最後に紫の料理を食べた日から、自分が台所に立つようになって長い日が経つ。
その間に藍の料理は少しずつ自己流のものになっていった。

それでも、こうして食べてみると、紫の作る料理を完全に上回ったとは思えない。
なにより、今食卓に並んでいる皿の一つ一つには、
あの頃と変わらない真心がこめられていた。


変に勘ぐるのは間違いだったか……。


藍は少し反省して、素直に紫の手料理を味わうことにした。

好物の油揚げをつまみ、ご飯と一緒に口に運ぶ。



「あの頃の藍は可愛かったわ」


ぐむ。


不意をつかれた藍は、おかずを喉に詰まらせかけた。

し、しまった、息が……


「昔はよく、藍も私に甘えていたのよ。藍に甘える今の貴方以上にね」
「ええっ、ホントですか!?」


橙は藍の顔を見る。
しかし件の主は上を向き、気道を確保するために、胸の上を拳でトントンと叩いていた。
とても返事できる状況ではない。


「それはもう四六時中後をついてきて、よく抱きついてきて。
 なかなか離してくれないのよ。あれはもう『藍幕結界』と言っていいわね」
「ほわ~」
「ぐむむむむ……」


目を丸くする式の式と、顔を真っ赤にしてうなる式。


「一度だけ、飛びついてくるのを、かすって避けたら、大泣きして大変だったわ。
『うえーん、藍は嫌われちゃいましたかー!?』って。それがもう可愛いったら……」
「ゆ、紫様……」

ようやく地獄の苦しみから復活した藍が、たまらず抗議の声を上げる。

「もうやめてください。昔の話でしょうに」
「あら。橙は、藍の昔話聞きたいわよねー」


ねー、と紫は小首をかしげて橙に笑いかける。

橙は、目をキラキラさせながら、何度もうなずく。

藍の顔からサーッと血の気が引いていった。


いかん、大ピンチだ。
このままでは、橙の前で恥ずかしい過去を次々に暴露されてしまう。
よりによって食事の場なので逃げ場は無い。
そして、紫様は間違いなく、そこまで計算してやっているのだろう。

何せ相手は、いたずらに関しては百戦錬磨の強豪である。
こんなに緊張感のある食卓は初めてだ。

嫌な汗を背中に感じながら、藍は置いた茶碗に手を伸ばしていた。

「そうそう、藍ったら昔から焦ると何か手にする癖があったわね」


ピタッ


伸ばしかけた藍の手が止まった。

宙ぶらりんになった手を、横から橙がジーッと見ている。
非常に気まずい。


対して紫は静かに微笑んだままである。

いや、

藍は気づいた。
こちらを見るその目だけが、ニヤニヤしている。
慌てる式の姿が楽しくて仕方が無い、といった様子だ。


――ぐぐぐぐ、おのれこのスキマヨーカイ……!


八雲紫。
人妖をからかうことに関しては、幻想郷でも右に出る者はないのだ。
実際は他の分野でも色々と右に出る者はないのだが……。


――というか紫様は私をいじるのが目的だったのか? これで私がどう甘えろというんだ。


内心動揺しながらも、藍は何気ない素振りで静かに茶碗を持ち上げ、
無言でご飯を口に運んだ。正直、この状況で味なんてわからない。

頭の奥が痺れるようなむずがゆいような、しばらく無かった感覚に悩まされる。
この場でちゃぶ台をひっくり返せば、あるいはすっきりするかもしれないが、
橙の手前それは絶対にできない。
それに、紫が作ったご飯を粗末にすれば、世にも恐ろしいことが待っているのは明白だ。

とりあえず、ご飯をゆっくり噛むことで心を落ち着かせることにした。


も~ぐ、も~ぐ。

も~ぐもぐ。




うん、大丈夫。
落ち着いた。




「たしか、藍が最後におねしょした時も、自分の服の袖を握り締めてたわね~」
「ぶふぉっ!」


またも不意をつかれた藍は、盛大にご飯を吹いた。

が、寸前で口に手をやったため、食卓にご飯粒が散乱する最悪の事態は防いだ。


「ら、藍様!?」
「むむぐむ……!」


そんな式の慌てぶりを見て、紫は困った笑顔を見せながら


「や~ね~。藍ったら下品なんだから。落ち着きなさい」

「だっ、だっ、誰のせいだと思ってるんですかっ。というか! 下品なのは紫様でしょう!
 なんだって今そんな話をするのです! 食事中ですよ!」

「場を和ませるための軽い小話でしょうに」

「本気で言ってるんですか? なら私にもそれなりの考えがありますが……」

「いや~ん、藍の目がこわ~い。か弱い私を守って、ちぇ~ん」

「えっ! えっ!?」

いきなり横から助けを求められて、茶碗を手にしたまま飛び上がる橙。

その光景を見て沸きあがる怒りを、藍は腹の底に力をこめることで、何とか押さえこんだ。
下手に反応すればそれこそ紫の思うツボだ。


もう絶対何も聞かないぞ。


そう心に決めて、藍は猛然とご飯を平らげ始めた。
半ばやけ食いである。


「藍。ご飯はよく噛んで食べないとだめよ。体に悪いから」


黙殺。


「あら。主の心配を聞き流すとは酷い式ね」


無心。


「藍様……怒ってますか?」


橙。















…………橙。



「いや、怒ってはいないよ橙」


心配そうな顔をする式に、藍は笑ってみせた。

この子を不安がらせるわけにはいかない。


「そうよ。藍は照れてるのよね~」


明鏡止水!!


藍は再び無言でご飯を口に運び続けた。






※※※※※






夕食が終わっても、藍は卓についたままだった。
食べ終わった器は、全て紫によって片付けられている。

とんでもない、そんなことやらせるわけにはいきません、
と藍がいくら言っても聞かず、しまいには睨み倒された。
今は台所で洗い物をしているようだ。

「どうしたというんだろう、紫様は」

ため息をつきながら、藍は頭を振った。

『オペレーションゆかりん』。
本気なのか、遊びなのか。
それがよく分からない。

自分が朝に言いたかったのは、もっと威厳を持ってくれ、ということで、
家事を手伝ってくれ、ということではなかったのだが。

正直、一過性の悪戯ならいいのだが、今夜からずっとこれが続くとなると、さすがに気が滅入ってくる。
今の藍に、紫を働かせたり、甘えたりできるほどの図太さはなかった。

それに、何だか嫌な感じがする。
あれこれと働く紫を見ていると、何かを思い出しそうになるのだ。
怖くて、悲しい、昔の記憶を……。
あれは何だったか。


「藍様~」


そこに橙が、畳の上をコロコロ転がって、藍の膝に乗ってきた。

藍は考え事をやめて、懐いてくる橙の耳をかいてやった。

主の膝で喉を鳴らして気持ち良さそうにしているのを見ていると、苦笑いしてしまう。
この式のように、素直に甘えることができるなら話は早いのだけど。


「……すごいですね。紫様」
「ん? 紫様はいつも凄いでしょ」


いい意味でも悪い意味でも、だが。
今になって橙がわざわざ言うほどの話でもない。


「でも、あんなに働いている紫様って初めて見ました」
「ああ。まあ、そうだろうね」


納得してうなずいた。
いつも橙は、寝ているか酒を飲んでいるかしている紫ばかり見ているのだから。
となると、橙の中では紫の株が上がったのかもしれない。
藍は全く変化なし。というか、上下の変動で表せるほど簡単な主ではない。


ふと、藍は疑問に思った。
今こうして自分の式が甘えてくるのはどうしてだろう。

ご飯をあげているから?

優しくしているから?

式と主だから?

どれも今日の紫と藍の関係に当てはまる。
だが、藍の中で、紫に甘えたくなるような感情は湧いてこない。


「橙。一つ聞いていい?」
「はい。なんですか?」
「橙は……どうして私に擦り寄ってくるの?」

「…………」
「橙?」

返事が無いので、藍は下を向いた。

式が涙目になっていた。


「ら、藍様……」

「ど、どうしたの!? 橙」

「ひょっとして、嫌でしたか? わ、私がこうするのが」

「!! 違う違う!」

しまった! と、藍は慌ててなぐさめる。

「ぐすっ、橙は嫌われちゃいましたか?」

「嫌ってない嫌ってない今でも大好きだから!」


とりあえず、泣き止んでもらうために、抱きしめてみた。
おー、よしよし。と背中をさすってやる。

橙はグスグスいっていたが、しばらくすると落ち着いてくれた。


「ごめんごめん。別に橙が嫌いになったんじゃないよ。そんなことは有り得ない。
 ただ、どうしてなのか不思議に思っただけさ」

「……どうしてなのか?」

「うん。でもいいよ、もう別に」

「藍様はねー。優しくて、綺麗で、カッコよくて、柔らかくて、いい匂いがして……」

「ははは、照れるな」

「橙よりずっと強くて、全然かなわないです」

そこで、藍はふと、橙を撫でる手を止めた。

「……かなわない?」

「はい。藍様は凄すぎます」



そうか。

藍は気がついて、愕然とした。

橙が藍に甘えるのは、橙が藍より『弱い』ことを、当然のように思っているからだ。
橙は藍を超えることはない。式が主のスペックを超えることはない。
橙は藍を、強さの比較対象として見ていないのだ。
だから、藍にいくら弱みを見せても構わない。

だが、藍はどうか。


――私は、諦めてなんていない。


八雲紫は強い。
単に、強いと言う形容ができるようになったのも、藍が修行を重ねてからだった。
子供の頃は、強いとか凄いとかいう次元を超えているような気がした。

それでも、昔より実力が近付いたとは到底思えそうにない。
そこに至る道なんて、最初から用意されてないんじゃないのか、と絶望したこともあった。

だけど、自分は今も目指している。
紫の背中を、式として守れるだけの強さを欲している。
それが、藍にとっての成長だった。

そして、橙にはその自分を超えてほしかった。
今すぐじゃなくても、いつかは自分より強くなってほしい。
橙が乗りこえるに相応しい存在になる、それも藍の目標だった。

だけど、橙が自分を目指してくれなかったら?
今、こうして甘えているままで、終わってしまったら?


ぐっ、と藍は拳を握った。


「あら、相変わらず仲が良いわね。羨ましいわ」

そこに紫がやってきた。
洗い物を終えて戻ってきたようだ。
いたずらっぽく笑いながら、

「じゃあ、藍も私の膝の上に乗ってみる?」
「お断りします」
「まだ恥ずかしがっているの? 昔はよくやってあげたのに」

「昔は昔、今は今です」

藍の声が、夕食の時と変わっていた。
部屋の空気が、わずかに重たくなる。

橙は何事かと、藍を見上げた。

「紫様」

藍は、橙を膝から下ろした。

正座して、主を正面から見据える。

「私は貴方の式として、完璧な存在でありたいと思っています」
「ふうん、そうだったの」

紫は興味が無さそうに返した。
いまだ口元には笑みが貼り付いている。
しかし、その目は式の真意を測っていた。

「それは、いけないことでしょうか」
「さあ。知らないわ。好きにすればいいと思うけど」
「わかりました。そこで一言、申し上げたいことがあります」
「なあに、改まっちゃって」


「私は貴方より強くなります」


藍の言葉は静かだった。
紫は表情を変えない。


「式が主を超えるというのは、おこがましい話だと自覚しています。
 お気に障ったのなら、どうぞ叩きのめしてください。ただし……」


藍の瞳が光った。


「私は諦めませんが」
「ふうん」


紫は扇子を広げて、その場に座った。
挑戦的な式の態度にも、涼しい顔で平然としている。


「夕餉の場で、あれほど度を失っていた子が、今さら何を言っているのやら」
「あれは私が未熟だからです」
「確かにそうね。貴方はまだ子供みたいなもんだから」
「いずれは、そういうこともなくなります。紫様に踊らされることもなくなるでしょう」


余裕ぶった態度に負けずに、藍はあくまで言った。

紫の目がすぅっと細くなる。


「私は弱い自分を許せません。甘えは弱さです。私はもうそこまで弱くありません。
 ですから、これからも紫様に甘えたくはないのです」
「実に面白くない答えね」
「私は真剣ですから」

「ら、藍様……」


主らが出す異様な雰囲気に、橙が怖がっている。


「弱さも何も、貴方は弱いじゃない。私より」
「無論です。ただし、弱いことと、弱さを甘んじて受け入れることは別の話です。
 私は強くありたい。貴方の式として」
「どうして?」
「それは……」


と、そこでまた、藍は何かを思い出しそうになる。

悲しくて、泣きたくなるような記憶。

頭が痛くなってくる。
ただそれが、今ここで自分を駆り立てているような気がする。
ただ、何としてでも強くならなきゃいけない。
それが藍の心の根っこになっていた。


「どうしてもです」


だから、そう言うしかなかった。


「式は主に使われてこそです。例え紫様が雑事をこなさなくとも、どんな理不尽な命令を下しても、
 私はいくらでも我慢できます。それが私の役割ですから。
 ただ、私が弱さを見せるのだけは許せません」


口調は落ち着いていたが、ぶつけるような思いが込められていた。


「貴方の式として、貴方を追いこし、貴方より強くなる。そして貴方を守り続けるのが私の存在意義です。
 それが私の、従者としての貴方への愛であり、誇りなのです。お許しください」


そこで藍は、手を畳につき、
深々と頭を下げた。


「どうか、これからもよろしくお願いします」


そして、主の言葉を待った。


畳に乗せた頭が冷えていく中で、これから起こることを予想する。


ぶたれるだろうか。

捨てられるだろうか。

殺されるだろうか。


だけど、主に嘘はつきたくなかった。
どんな結果になろうと、後悔はしない。


「……そう。優秀な式ね。私も誇りに思えるわ」


紫は笑顔で言った。
その笑みには、曇り一つなかった。

そのまま、ゆらりと立ち上がる。
部屋の外へと向かうようだ。

そして、その襖は藍の後ろ側にあった。


紫はスキマを使わずに、

藍の脇を静かに歩いて通り過ぎた。


その背中を見ずに、藍は言った。

「明日から……家の雑事は、いつものように私がしましょう」
「……ええ。今夜は貴方も寝なさい。私は縁側で、月を肴に飲んでいるわ」
「わかりました。すぐに、つまみを用意します」


「結構よ」


紫は言い捨てて、外へ消えた。

後には式が二人残った。


藍は静かに息をついた。
これでいい。
明日から、またいつものような日々に戻るだろう。
自分も修行のし直しをする時かもしれない。


「藍様……」
「橙。今日は疲れたろう。もう寝なさい」


藍は、橙の頭にぽんっと手を乗せた。

やがては、この子も甘えることはなくなるだろう。
それが成長というものだ。
寂しくもあるが、仕方の無いことだ。
自分も選んだ道だから、納得しなくてはいけない。


だが、橙は笑わず、じっと悲しそうに見上げてくる。

一瞬、別の顔に見えた。
少し胸が痛む。


「藍様。紫様は……」
「大丈夫。何も心配はないから。だからお休み」
「でも、」
「橙」
「…………はい。わかりました」


橙は立ち上がり、
一瞬紫の消えた襖に目を向けたが、

結局とぼとぼと寝室へと去った。




藍は、しばらく、その場を動かなかった。

腕を組んで、頭を垂れていた。






※※※※※






あ!




寝そべっていた式の耳が、ぴくりと動いた。


帰ってきた!


無事だったんだ!


すぐに起き上がり、玄関へと急ぐ。


いつも出迎えてあげるのが、式の役目なのだ。


今日は主に自慢してやろう。


こんな大きな魚を一人で捕ったんだと。


そして、この魚の名前を教えてもらうのだ。


台所を手伝うのもいいかもしれない。


帰りが遅かった分だけ、一緒にいたいから。


寝る前に本を読んでもらうのは……我慢しよう。


主に早く休んでもらいたいから。


その代わり、明日は一緒に遊んでほしい。


きっと主もわたしも、一人ぼっちは嫌だから。


それから、それから。


なぜか心配がおさまらない。


早く顔を見て安心したい。




待ちきれずに玄関へと走り、



いつもの合言葉で迎えた。






「ゆかりさま! お帰りなさい!」



そして、式は主の姿を見た。





※※※※※





くい


夜空の下、紫は縁側に座り、独りで酒を飲んでいた。

昨夜はうるさかった虫の音が、今日はぴたりと止んでいる。

静かな夜だった。


ぼんやりと見上げるその先では、鈍く輝く星が、ぽつんとある。

気のせいか、昨日より霞んで見える。前は、もっと蒼かったような。


ずっと昔。ここで、紫はまだ小さかった藍を膝に抱えて、毎晩のように話をしてやっていた。
藍が小さな指で星をさす度に、自分が名づけた星座について語ってあげた。
おしまいには寝てしまい、それを起こさぬよう寝室にそっと運ぶのが、紫の楽しみでもあった。

徳利の酒を杯に注ぎ、
その水面をしばし見つめる。

いつだっただろうか。それが変わったのは。

もう、あの頃には戻れない。
自分も、そして式も。


紫は、ふう、とため息をついた。
夜風に冷えた縁側の床を、指でそっとなぞる。


「藍。悪いけど今は独りで飲みたい気分なの。下がりなさい」


紫は振り向かずに言った。
手にした杯を空にする。


しかし、背後に現れた気配は、下がる様子を見せなかった。

それどころか、足音を立てずに近づいてくる。


舌打ちしたくなるのを抑えて、紫は繰り返した。


「藍? 聞こえなかったの? 独りにし……て……?」




ふわり




風が肩にかかる。

懐かしい匂いが、体を包んだ。


不覚にも杯を落としそうになった。


藍に、

最愛の式に、後ろから抱きしめられていた。


八雲紫とあろうものが、背中が強張り、動けない。

胸の奥が震えてしまう。



藍の額が、そっと背中に当てられるのを感じた。

紫の緊張は、式のぬくもりに吸い取られるように抜けていった。






二人はしばらく無言でいた。






やがて紫は、観念したかのように口を開いた。


「本当に、強力な結界よね。抜け出せないわ」


苦笑しながら、それでも言葉の端に嬉しさをにじませて、紫は呟いた。


「昔はよくここで、二人で座って月見をしたものね。覚えてるかしら」
「……ええ」


振り向かずとも、その顔の色までわかりそうだ。
きっと夜でも分かるほどに赤くなっているに違いない


「それにしても、甘えるのは弱みを見せるのだからいやです~、なんて言ってたのだれかしら」
「……これは別に甘えているわけではありませんので」
「ふふふ、予想通りの答えね」

「予想通りですか……、私は」


藍の口調には、いくぶん諦観がこもっていた。


「私は、紫様のやることなど、想像もつきません。ずっとあなたの側で働いてきたのに」
「あら、ありがとう。わからないように頑張ってますから」
「ほめてません。そんなことをしているから、皆から胡散臭いなどと言われるのです」


そんな式の戒めの言葉に、紫は振り向いて、妖しげに笑った。


「女は、謎の数だけ美しくなるのよ」
「……謎すぎますよ」

いつもの雰囲気に戻るのが不満なようで、藍が少し口をとがらせている。

その様子を見て、紫の笑みは優しいものへと変わった。

あまり意地悪するのも可哀想だ。
向こうが心を開いてきてくれたのだから、こちらもお返ししなくてはいけない。

紫は前に向き直り、杯を横に置いた。


「そうね。せっかくの月だし、お酒もあることだし……。一つ秘密を明かすとしますか」

「え?」

「藍。あなたは、この幻想郷をどう思っているかしら?」


唐突な質問に、背中越しの藍が戸惑っているのが分かった。

夜空を見上げながら、静かに語り出す。


「私は、この地を守るためならなんでもする、という覚悟でいる。何故だと思う?」

「それはもちろん……」

「そう。私が幻想郷を愛しているから。今でも。昔よりもずっと」


一つ一つ思い出すようにして、紫は語り続ける。


「ここは、私の理想そのもの。でも一人ではできなかった。
 長く生きて……いろんな繋がりができて……語り合い、競い合う内に、
 私の中で理想は形作られていった。貴方もその礎を築いた一人」

「私が……ですか?」

「そう。何よりも大きい一人」


そこで、藍の回した手が外れそうになったが、紫は優しくそれを止めた。
このままの距離で、聞いて欲しかった。


「理想を追いかけ、それを守るために、私は強くならなければならなかった。
 どんな無茶も乗りこえてみせた。それだけの力があると信じていた。
 そして……」


藍の手を撫でながら、

紫は静かに、

だが、はっきりと告白した。




「失敗した」




※※※※※




「ゆかり……さま……?」

「ただいま藍」


いつもと同じ笑顔を作って、紫は玄関に入った。


「ごめんね。待たせて。お腹が空いたでしょう」


しかし、藍は普段のように飛びついてこなかった。

それどころか、震えている。
何かに怯えるように。


「どうしたの? 藍」

「ゆかりさま!」


藍は泣いていた。
泣きながら、よろよろと紫の元へと歩いてくる。


「どうしたんですか!」
「……何のことかしら?」


紫の姿は、出かけたときとまるで変わらない。
服装も乱れていないし、顔が血に汚れているわけでもない。
においも、声も、不自然なところはない。


「何も心配ないわよ、ほら」


紫はふざけたように、腕を振って見せた。
しかし、式は誤魔化されなかった。


「嘘です! 藍には見えます! ゆかり様は……」


そこで藍が、いつものように飛びついてきた。


ただし、倒れかけた紫を、抱きとめるようにして。




「ゆかり様は……傷だらけです!」




式の涙が、襟元を濡らしていく。
紫は、刺されてから矢に気がついたような気分で、自嘲の笑みをみせた。

さすがは我が子か。


「なんでわかってしまうのかしらね」

「なにが……なにがあったんですか」


情けない姿じゃないの、八雲紫。

それでも傍にいてくれる、式の髪の毛をそっと撫でた。

この子がいる。この子がいる世界があるから、私は何度でも蘇る。

どれほど情けなく見えても、私は足を止めない。


「何もないわよ。あなたが心配することなんて何一つないのよ。安心なさい」

「嫌です!」


初めて聞く声に、紫の撫でる手が止まった。


「藍は……藍は情けないです。
 ゆかり様の式なのに、ゆかり様の大事な時に何もできないなんて」

「いいのよ藍。あなたはそれでいいの」

「紫様……かわいそう」


かわいそう?


この子は今なんと言った?
可哀想だと。


紫は絶句した。


誰にも負けない、誰よりも強いはずの自分を、
こんなちっぽけな式が哀れんでいる。
あらゆるモノから恐れられている私を、この子は怖がらない。
全を目指した私を、この子は一としか見ていない。

式のために隠した傷跡が、誇りを失って、虚しく感じられる。
自らが固めてきた足場が、砂城のように崩れていく。


「ゆかり様」


主を見返す式の瞳。その強さに、紫はびくりとした。
驚くという感情が、まだ自分に残っていると気づかされるとは。


「私をお使いください」


いつの間に、この子はここまで強くなっていたのだろう。
星のように燃えている。虚無を満たし尽くすような光が、式の体から放たれている。

あろうことか、紫は逃げ出したくなった。
その光に耐えられなくて。


「この藍をお使いください! 藍は、きっと役目を果たします! だから……!」


しかし、式は自分をつかんで離さない。
情けなく強さにしがみついた自分を、必死に救おうとしている。

追い詰められた紫は、自らの世界がはっきりと変わるのを感じた。

そして、

答えを見つけた。





「だから……もう一人で行かないで!」





※※※※※






あの時か……。

藍も思い出していた。

自分が変わるきっかけとなった日だが、あまりに強烈で、怖い思い出だった。

とても悲しい夜だった。
だけど、それ以上に不思議な夜だった。

当時は、なぜ紫が、泣きながら自分を抱きしめてくるのかが分からなかった。
初めて見た主の涙に、目を白黒させていたのを覚えている。

結局二人で大泣きすることになった。そして泣き疲れたら、思いっきり笑った。
次の日から、藍の修行が本格的に始まったのだ。


朝の疑問が繰り返される。
紫が変わっていったのも、あの時からではないだろうか。

もしかして、秘密というのは。


「妖怪の強さって何? 腕力? それとも能力? そもそもそれは力かしら?」


言葉遊びのように口ずさむ紫に対して、藍は答えられない。
心がざわめいている。


「最強の妖怪って何かしら? それにどんな意味があるの?
 個としての完成を目指せば目指すほど、私の出口はどんどん狭くなる。
 ……愛するものが遠くなり、寒くて辛い孤独がやってくる」

「…………」

「でも無敗を誇った私に、はじめて土をつけたのは、他でもない式の貴方だった。
 あの時私は、確かに負けを自覚したの。なんてちっぽけな考えをしていたんだろうって」


それこそが……


「紫様……」

「あの時の貴方のおかげで、私は変わることができた。
 同時に、理想ははっきりと形を変え、今の幻想郷となった。
 私が考えていたよりもずっと強い、私一人では守ることはできない世界。
 自分だけでは手に入れられなかった、大事な答えを得ることができたおかげで……。
 愚かにも自ら掘った深い『穴』の底から、貴方が引っ張り出してくれたのよ。
 大切な……自慢の式が」


それこそが……八雲紫が明かす秘密。

はるか昔、初めて敗北したという秘密。

そして孤独から救われたという秘密。



          ゜


紫は、はるか遠くで蒼く輝く星を、指さした。


「だから、あの星にね。『藍』って名前をつけたの。
 あの日に生まれた星だから。式からの戒めを忘れないようにとね。
 今まで内緒にしてたけど」



大切な、秘密。






地上の藍は、

紫の背中から顔を上げることができなかった。

その星を瞳に映すことができなかった。

胸の奥から湧きだす思いが、瞼の裏を締め付けている。


なんともったいない言葉だろうか。

なんとやさしい言葉だろうか。

式として、これほど名誉な贈り物が他にあるだろうか。


抱きしめる手に力がこもる。


この御方を放したくない。

いとおしすぎて、苦しくなる。

そうだ。あの時、私は確かに誓ったのだ。

この御方をお守りするために。

この御方の思いに答えるために。

強くならなくちゃ。

私が強くならなくちゃ、と。

その思いが、あれからの自分を育ててきたんじゃないか。


嗚咽を止めるために歯を食いしばった。


泣いてはいけない。

この方の前で弱くなりたくない。

誰の前でも、強くありたい。

強い姿を見せなくては。

また、紫様が傷ついてしまう。

泣いちゃだめだ。

泣くな、私。



「だから、あなたも自分一人の完璧なんて目指しちゃ駄目よ」

「!!」



今宵、藍はあっさりと、『穴』から救い出された。
言葉だけで、体を入れ替えられ、抱きかかえられている。
支えていたはずの紫の背中が、いつの間にか自分を背負っているように見える。


「いいじゃないの。式の前で弱みを見せたって。
 泣いて甘えちゃいなさいよ。今より、本当に強くなりたければ……ね?」


思いもよらぬ主からの助言に、藍は涙顔のまま、呆然となった。
結局自分の心境は、主には全てお見通しだったのだ。

そして今、式として未熟な自分を導いてくれている。


――とてもかなわない。本当にこの方を負かしたんだろうか、私は。


心地よい敗北感が、藍の心の内を満たしていく。
相手の膝を折らせるのは、圧倒的な力だけではない。

苦さや重みを消し去ってくれる、優しい一言。

これがかつて、目の前の主が味わったものなのだろう。

そしてそれは、なんと幼かった自分の手柄なのだ。


紫がいつもの調子で笑いながら言った。


「私の間違いを、あなたまで犯す必要はないでしょ」

「……そうですね。わかりました。しかし、紫様」


藍は言葉を返した。
挑戦的で、しかし主に手柄を自慢する、

式として目覚めた、あの夜のように


「できるとこまでは、やらせていただきます。
 せめて、橙が立派に成長するまで。貴方が私にそうしてくれたように」


そうだ。

負かす負かさないの話ではない。
自分もいつか、そこへとたどり着くために努力するだけだ。
孤独という限界を超えて、さらなる境地にたどり着いた、主の後を追って。
主より、強くなるために。

式は成長し続ける。
だって、心は終わることなく成長するのだから。


紫は呆れたように、ため息をついた。


「ほんとに、困った式ね」

「ええ。それはもう」


貴方の式ですから。

そこまで言わずとも通じる。


紫はふふっと笑い、続いて藍もこらえきれずに吹きだした。
しばらく二人は、クスクスと、やがて大声で笑い合った。

楽しくて仕方がなかった。

泣いた後はすっきりしたように笑う。
これだけは、あのときと変わっていないようだ。


「あはは。なんだか、幸せね」
「ええ。本当に」


ごく素直な会話を交えて、

紫は、よし、とうなずいた


「いい機会だから、明日も早起きしてみようかしら」

「? 別に無理はなさらなくてもよろしいのですよ」

「違うのよ。たまには三人で朝食もいいじゃない?」

「えっ!」


びっくりして、思わず回した腕で、お腹を締め付けてしまった。


「こら。痛いわ、藍」

「あ、失礼しました。いえ、わかりました。おまかせください」

「そのまま毎日早起きすることになったりして」

「その時は、毎朝全力で朝食を作らせていただきますよ」


やる気があふれてくる。
式としての新たな一歩が待ち遠しい。
今なら川でクジラを釣って来ることだってできそうだ。


「あら、頼もしいわね。そうと決まったら、今の内に寝ておきましょ」

すっ

「あ……」

紫が立ち上がる気配を見せた瞬間、
藍の口から、思わず残念そうな声が漏れた。

「あら、どうしたの」

「その……」

「なあに? 藍」


紫は首をかしげながら、藍に続きをうながした。


「できればもう少し…………このまま」

「ふふふ……わかったわ」


紫は目を閉じて、藍の胸に体をあずけた。


昔とは逆の体勢だった。


姿も今は変わっていた。



しかし、頭上の月は、あの頃と変わらずに、寄り添う二人を照らしていた。





※※※※※





「おはようございま~す。藍様~」


目をごしごしとこすりながら、式の式が起きてきた。


「おはよう、橙。もうすぐできるから、運ぶのを手伝ってね」


そこで、橙の寝ぼけ眼が直った。


「わあ、すごい」


台所には、すでに料理がいっぱい並んでいた。

だし巻き卵に、カブのぬか漬け。おひたしは茄子。味噌汁。海苔の佃煮。果物。
ここまではいつもの朝食だった。

他にゴマ豆腐。オクラを混ぜたとろろ汁。鴨肉のロースト。
甘鯛の昆布締め。スダチが横に添えられている。
藍が鍋の蓋を開けると、ネギとショウガの香りがする湯気がのぼった。中華粥だ。
昨日橙がもらってきたフキは油で軽く炒められていた。
いつから準備していのか、栗ご飯まである。。

見てすぐにわかるほど、朝食にしては豪華な献立だ。
今日は何か特別な日だったろうか。
藍の顔も心なしか、いつもより幸せそうである。

「あれ? まだ作るんですか?」
「うん、あと一品ね」

ササミをまな板の上に用意しながら、藍は言った。

「でも、ちょっと量が多くありませんか?」
「そうよ。久しぶりの三人での朝食だから」


三人で、という主の言葉に、橙は一瞬考え込む。

が、意味が分かった瞬間に、顔をぱぁっと輝かせた。

「わ、わたし、紫様を起こしに行ってきます!」
「慌てて転ぶんじゃないぞ」


はしゃいで駆けていく式を、藍は苦笑しながら見送った。


「私も、ああだったのかな」


毎日が新鮮で、驚きの連続で。
何をやっても何かを発見でき、成長することができた。

それが、いつの日か、目の前のことに鈍くなり、
成長をやめてしまったのかもしれない。

だけど、今日は違う。
全く分からないと思っていた紫の心を、紫自身が少し明かしてくれた。
そして、自分がまだまだ成長できることを実感できた。

今の自分は、式として修行を始めた頃のように燃えていた。


「ふふふ。何かいいなー、これ」


燃えているというより……少し浮かれているのかもしれない。
これからの朝食を考えると、つい鼻歌までもれてしまう。

そこで、橙がとてとて足音を立てて戻って来た。


「ら、藍様~」

「おかえり橙。紫様は起きた?」


鼻歌を止めて、振り向かずに聞いた。


「う~、と、巴投げで投げ飛ばされました~」








藍の包丁を動かす手が止まった。







※※※※※




どっどっどっどっどっど


すーっ、ばん!


「紫様!!」


藍は怒鳴りながら襖を開け放ち、
紫の寝室にどすどすと足を踏み鳴らして入った。


「起きてください! 起きろ! このスキマ!」

「もー、うるさいわねー」


紫は布団をかぶったままだった。
もぞもぞと動きながらも起きる様子は見せない。


「もう少し寝かしてちょうだい。具体的にはあと十時間ほど」

「それじゃあ、いつもと変わらないじゃないですか! 朝食が冷めてしまいます!」


だが、紫はふふふと幸せそうに笑いながら、


「大丈夫よー。藍の朝食は冷めても美味しいから」

「そこで誉められても嬉しくないです! というか十時間放置は無茶です!」


藍はぐいぐいと布団をひっぺがそうとするが、紫も力で負けていない。


「今朝は久しぶりに三人で朝食なんでしょう! スパッと起きなさい!  
 起こしにきた橙を投げ飛ばすなんて、何考えてるんですか!」

「手加減してあげたわよー」

「そういう問題ではありません! 起きなさい!」

「いやー。明るいのきらーい」

「朝食は明るいうちに食べるものです!」

「ああ駄目。もう限界。寝ます。二人で食べていてちょうだい」


紫がそこまで言ったところで、


「ひ、ひどい! 昨夜の会話は忘れちゃったんですか!」


思わず昔の口調で、半分涙目になりながら、我慢できずに藍は叫んだ。


その瞬間、うねうねとしていた紫の動きが、ぴたっと止まる。


藍もそこで布団から手を離した。


しんと静まり返る部屋の中、

式は正座して、主の言葉を待った。




「…………藍。」

「はい」

















「ごめんね。私は布団と生きるわ」




















藍は泣かなかった。










ただし、ぶちギレた。



「い・い・か・げ・ん・に」



藍は布団ごと最愛の主を抱きしめて


持ち上げて



「しろおおおおおおおお!!!」


見事なバックドロップをきめた。





※※※※※



どたん、ばたん、どすん。ばたばた。

紫の寝室では、幻想郷トップクラス同士の肉弾幕ごっこが行われていた。
じゃれ合いとも言い、プロレスとも言う。
部屋の中央でぎゃーぎゃーと喚きながら取っ組み合う姿には、威厳のかけらもない。

その様子を、襖の陰からこっそりのぞく二つの目。

式の式、橙だった。

いつもの落ち着いて堂々とした姿からはかけ離れた二人を見て、

橙は口に手を当てて笑いをこらえていた。


いいなあ、二人とも。


と本心から思う。

橙にとって藍は完璧な主だ。
優しく、ときには厳しく、式が失敗しても取り乱さず、いつも心を開いてくれる温かさ。
遊んでくれる時も、抱きしめてくれる時も、藍は悠然とした姿勢をほとんど崩さない。
主としてだけでなく、師としても、母としても尊敬でき、とてもかなわない存在である。

そんな藍が、紫のこととなると一変する。

例えば今、スキマ越しに関節を極められて、いだだだだだ、と白目でうめいている。
あんな表情は、橙の前では絶対に見せない。いつもの藍と比べると隙だらけだ。

でも橙は、そんな藍の、そして紫のいつもより子供っぽい姿がたまらなく好きなのである。
紫に藍が振り回されて、二人でじゃれ合う姿はとても生き生きとしている。

昔と形は違うかもしれないが、
あれこそが、今の藍が紫に甘えている姿なんじゃないだろうか、と思う。
そこに入り込めない自分にとって、それはすごく羨ましい光景だった。

もっと自分が大きくなって、立派な妖獣となり、八雲の姓をもらったあかつきには……


流れ飛んできた枕を、


ひょい、としゃがんでかわし、橙は呟いた。


「怠け者の藍様を起こしてみたいなー」


そんな関係が来る日を、橙は楽しみにしているのだった。





お腹が空いた。味噌汁が冷めてしまう。

橙は立ち上がり、両手で輪を作って、大きな声で告げた。



「二人とも~! ご飯にしましょ~!」



平和な、だけどいつもとちょっぴり違う、そんなマヨヒガの一日が始まろうとしていた。
どうも。このはずくです。読んでくださった方々、ありがとうございます。
今回の具材は、式と主の愛情。紫に藍が翻弄されるドタバタ劇です。
……言うまでもなく、創想話において、すでにいくつもの名作で料理されていますね(汗)
しかし、このプロットを思いついてから、どうしても書きたくなったので、魂の導くままに書き上げました。
楽しんでいただければ幸いです。

要するに、大きくなっても可愛い藍様が最k(殴

ちなみに、この話を書いてる途中で思い浮かんだ話が、
あっさり書き上がったので先に投稿させていただきました。
ええ、初投稿のアレです。あれ以来、背後の殺気におびえる毎日……。

9/16 表記揺れを修正
10000点突破!
本当に嬉しいです。点を入れてくださった方々、皆様ありがとうございます。
私自身、この作品を書いたことで、八雲一家がますます好きになりました。
また『彼女ら』のネタがあれば、この雰囲気を壊さないように頑張りたいと思います。
次回作は今作品集中に出したいけれど、間に合うかな……。
10/11
結局、間に合いませんでしたね……。
今は長編っぽいの書いてますが、いつ書き終わるかが、さっぱりわかりません(T T)
なるべく早めにお届けしたいとは思っています。

最後に。八雲一家は妖怪一家であり、女性一家です。
くれぐれも、表記にお間違いの無きよう(←お前だけじゃ)

旧名:PNS
このはずく
http://yabu9.blog67.fc2.com/
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コメント



0.16780簡易評価
6.100名前が無い程度の能力削除
これぞ理想の八雲の関係です!
7.100名前が無い程度の能力削除
(;;;;)ぶわっ・・・
11.100名前が無い程度の能力削除
家族愛っていいよね・・
13.80名前が無い程度の能力削除
確かに真新しくはないかもしれないけど、やっぱり好きだ!
14.100名前が無い程度の能力削除
よきかな
18.90名乗ることができない程度の能力削除
またひとつ、名作が増えました。
19.100名前が無い程度の能力削除
サイコー
にやにやが止まらないですw
にやにやにやにやにやにや
22.100名前が無い程度の能力削除
>「藍は……藍は情けないです。
> ゆかり様の式なのに、ゆかり様の大事な時に何もできないなんて」

この言葉を、橙が言う日がいつか来るんだろうか……。
怠惰な藍は全く想像つかないけど、藍と並ぶ大人びた橙を見てみたくなった。
25.90名前が無い程度の能力削除
あー、いいなぁこれ。
27.100名前が無い程度の能力削除
ええのぅ。ええのぅ。

個人的にはゆかりんがぼろぼろになって帰って来た経過も知りたい所です。
30.100天福削除
はわわ……何というすばらしい八雲一家。
ニコニコしながら読んでいました。
怠け者の藍様を想像して、それもちょっといいかも……なんて思ったのは秘密w
31.100名前が無い程度の能力削除
ブラボー・・・
32.100名前が無い程度の能力削除
朝からいいものを見た・・・
最強の妖怪一家は、愛情も最強なのであった
34.100名前が無い程度の能力削除
文章の読みやすさに隠れてますがこれ構成も凄く上手いですよねー
いくつもの名作がある、なんてそんなの関係ない。だってこの作品も名作だから。ということで100点!
35.100煉獄削除
素敵な八雲一家のお話、面白かったです!
ああ、ホント良いですねぇ・・・この話の皆の雰囲気がとても素晴らしい。
いつまでもこんな家族でいて欲しいと思いますね……。
とても面白い作品でした。
39.100名前が無い程度の能力削除
>「女は、謎の数だけ美しくなるのよ」
>「……謎すぎますよ」
はて。胡散臭さが美しさになりえるものでしょうか。 まぁいいや。紫様美しいし。

いい作品でした。顔が緩みっぱなしになるくらいに。
43.90名前が無い程度の能力削除
初めて点数入れようと思いました
今後にも期待しています

良い作品をありがとうございました
61.100名前が無い程度の能力削除
やっぱり八雲家は最高ですね
とても素晴らしい作品でした
64.100名前を表示しない程度の能力削除
これはいい八雲家。にやけが止まらなかったw

そしてタイトルの意味が何処で分かるかと思ったらラストww
65.100名前が無い程度の能力削除
これは深い・・・深いな・・・

この作品には100点以外付けられません。
3人の心の内がとても上手に表現されていて良かったです。
実にいい作品でした。
68.100名前が無い程度の能力削除
最高でした、理想の八雲家です。
藍と紫、そして橙の愛がこちらまで伝わってくるようでした。
79.100時空や空間を翔る程度の能力削除
愛だよ、愛。
愛を感じた、家族愛を。


たしかに手加減してたね、ただし「地獄車」から「巴投げ」ですがねwwwww。
85.100dododo削除
よいっ!明るいっ!おもしろいっ!

GJw
90.100名前が無い程度の能力削除
なんという八雲一家!なんという主従愛!
ああ……きっと成長した橙がある日言うに違いない。
「藍様の必殺技はプリンセス天狐、四面楚歌チャーミング、と数々あるが
私の好きなのはそのどれでもない。私が藍様の技の中で一番のお気に入りは
地味だが決まった瞬間に描かれる曲線が美しい…バックドロップだーッ!!」
91.100名前が無い程度の能力削除
バックドロップは……八雲式っ!!
もうそれしか感想がでてこねーっ!!! 紫様も藍様も橙だいすきすぎてくるうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
95.100名前が無い程度の能力削除
なんというすばらしい一家
感動してちょっと泣きそうになってしまった
99.無評価名前が無い程度の能力削除
ここでタイトル……っ!!

素敵すぎる!!
101.100名前が無い程度の能力削除
あれ・・・?画面がぼやける(泣
103.100名前が無い程度の能力削除
千年ほど後、藍様にバックドロップを決める橙と
それを見つめる橙の式の姿が
105.100名前が無い程度の能力削除
まさに八雲一家。最高でした。
108.100華月削除
自分も八雲一家好きですがね。
これ最高。
笑い有り、シリアス有りで飽きが来ずに最後まで読めました。
最後にもう一度、GJ!!(・∀・)b
110.90名前が無い程度の能力削除
良質の映画を一本見たような気持ちになりました
幻想郷のそれぞれのお宅にはそれぞれの深いドラマがあるけど
八雲一家にもたくさん涙と笑いとぬくもりがつまってますね
116.100名前が無い程度の能力削除
八雲一家大好きです。
バックドロップはへそで投げる。
122.100名前が無い程度の能力削除
やっぱり八雲一家!
126.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしき八雲一家
これしか言えません
133.100名前が無い程度の能力削除
これはかっこいい藍・・・。
134.100名前が無い程度の能力削除
あぁ素晴らしきかな八雲一家。
135.80deso削除
面白かったです。泣いて笑って本音をぶつける、良い家族愛を見せていただきましたw
137.100名前が無い程度の能力削除
こんな八雲一家…大好きだ!
140.90名前が無い程度の能力削除
タイトルからギャグものだと思っていたのに……!!
本当に感動、おもしろかった
142.100三文字削除
藍様の朝ご飯食べ隊!いきまーす!!
橙は、ゆかりんと藍様の二人を起こす事になるのかなぁ……それはそれで幸せかもしれませんが。
143.100名前が無い程度の能力削除
やはり、こういう紫が一番似合ってると思って止みません。
あ、もちろん藍様かわいいよ、藍様。
次回作も楽しみにしてますよー。
147.100名前が無い程度の能力削除
イイーッヨ!!
これは素晴らしい、序盤から幻視しっぱなしでした。
橙はもちろん、藍様にも幼い時期はあるんだよなあ、と。何故かゆかりんは全く想像できませんが。
150.100名前が無い程度の能力削除
八雲一家はやっぱりこんな感じだよなー
ほくほくしながら読ませて頂きました
GJ!!
182.100名前が無い程度の能力削除
ちくしょう!!

いい話じゃねぇか…
188.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいです。
マイ八雲一家設定が
大きく塗り変わりました。
192.100マイマイ削除
100点だーーーーーー!!!
199.100名前が無い程度の能力削除
和むと同時に考えさせられました
218.90名前が無い程度の能力削除
後書きに「彼ら」って……

八雲一家は女性しかいませんよw
222.無評価PNS削除
>コメント218様
修正しました。ご指摘ありがとうございます。
実に自然に使っていましたねw
224.100名前が無い程度の能力削除
和む・・・
228.100名前が無い程度の能力削除
最高だ~!!
235.100名前が無い程度の能力削除
100点しかないのが許せねぇえええええ!
237.100名前が無い程度の能力削除
これぞ理想の八雲家!!
すばらしいSSでした!
254.100名前が無い程度の能力削除
いいなぁ。
255.100名前が無い程度の能力削除
こんなほのぼの八雲一家が大好きです
ナイスなバックドロップでした!!
258.100名前が無い程度の能力削除
          ゜

句点を星になぞらえる発想力・・・敬服致しました。
266.100名前が無い程度の能力削除
100点以外ないです。
269.100名前が無い程度の能力削除
最後にそうきたか
284.100名前が無い程度の能力削除
maitta!
285.100名前が無い程度の能力削除
バックドロップ一閃っ!
お美事っ!
290.100名前が無い程度の能力削除
橙がらんしゃまにバックドロップをかける日は来るのだろうか。
ああ、来てもいいなあ。
291.無評価名前が無い程度の能力削除
今更ですけど、
藍の初めの方のセリフが、
>「失礼ました」
に。
293.100名前が無い程度の能力削除
和んだ
295.90名前が無い程度の能力削除
ざわっとキター!!
297.100名前が無い程度の能力削除
オチがパーフェクト
298.100名前が無い程度の能力削除
100点以外付けられない
299.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい……。
305.100名前が無い程度の能力削除
いいわぁ…とてもいい。
309.100名前が無い程度の能力削除
素敵な家族
314.100とーなす削除
素敵な八雲一家。
求める形は三者三様違いはあれど、でもこれだけ互いを思いやってるんだもの。きっとこれからも上手く回っていくのでしょう。
暖かい気持ちになれるお話をありがとうございます。

タイトルのバックドロップが、大事なシーンで来るんじゃないかとどきどきしてました、ごめんなさい。
319.100名前が無い程度の能力削除
最高です。
320.100名前が無い程度の能力削除
八雲家は最高ですね
322.100名前が無い程度の能力削除
この八雲一家はいいなぁ。
ラストの橙のシーンがよかったです。
324.100名前が無い程度の能力削除
八雲家はいいですね。生真面目な藍をからかうのが紫の何よりの楽しみなんでしょうねえ。
そして橙の新しい友だちはリグルやチルノやミスティアだと思っていたらまさかの妹紅さんw
326.100名前が無い程度の能力削除
いいわぁ~
330.100名前が無い程度の能力削除
シリアスシーンに入り藍様の決意に感動し、その後のやり取りにグッときました。
最初こそ感動の場面にバックドロップが来ないかとヒヤヒヤしていましたが、いつしかタイトルも忘れてしまいました。
しかし、ここでオチ・・・っ!
さらにそこから繋がる最後のシーンが、これからもなんだかんだで幸せな八雲家が続くことを連想させて最高でした。
338.100名前が無い程度の能力削除
あなたの八雲家が大好きです!
342.100名前が無い程度の能力削除
これは良い八雲家。
343.100名前が無い程度の能力削除
読み進めるのがこんなに楽しかった作品は中々ありません。
とても面白かったです。
373.100名前が無い程度の能力削除
これが理想の八雲一家
378.100名前が無い程度の能力削除
ほっこり
382.100名前が無い程度の能力削除
素敵
384.100名前が無い程度の能力削除
感動しました
385.100名前が無い程度の能力削除
愛情ちゃうでぇ橙!それは甘えてんじゃなくてキレとるだけや!
388.100名前が無い程度の能力削除
これは凄い
391.100名前が無い程度の能力削除
うるっときた
399.100ばかのひ削除
よかったのう
405.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤと涙が止まらないぜ…
417.100R.F.Musa削除
本文が面白くて題名のことを忘れてたところ最後のところを見て思い出しました!!笑いと感動の2つがあって本当に面白かったです!!
421.100名前が無い程度の能力削除
感動
427.100名前が無い程度の能力削除
至高の八雲家の姿