Coolier - 新生・東方創想話

永夜抄IF パチュリー・レミリア編 7

2008/08/24 03:08:07
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迷いの竹林

諭吉さん二人を手に入れ、気味が悪い程に上機嫌だった霊夢。
喜びの舞(?)を踊り初めてから、さらに後。
向こう側に逝っていた意識が、ようやく現実に戻る。
その後、頬をつねるなど、現実を確かめてから帰路に就く。
だが、過剰なほどに辺りを見回しながら帰路に就くその様は、どう見ても不審者にしか見えない。
世が世なら、即、警察に通報されていただろう。
そして、ふと下を見ると、そこには。

「ん?、何これ・・・兎?」

兎妖怪が、目を回して倒れていた。
それは、レミリアに投げられ、屋敷の天井に大穴をあけて飛んで逝った兎妖怪だった。
事情を知らない霊夢は、この兎をどうするか、一人考える。

「兎・・・んー、兎、ねぇ・・・」


Q、竹林の外周部で見つけた兎、貴方ならどうする!?

1、怪我をしているようなので、手当をする。

2、そのまま放置、現実は非常である。

3、おぉぉぉもちかえりぃぃぃぃぃぃ!!、と叫びながら、コレクションに加える。

4、美味しくいただきます。(兎料理のフルコース)

5、とりあえず、適当に復活の呪文を唱えてみる。

さあ、どれだ。

しばらく考え、霊夢のだした答えは。

「んー・・・・・・5、かしら?」

とりあえず、適当な復活の呪文を唱えてみることにする。
思い浮かべるのは、この前紫の魔女が研究していた復活の呪文。
誰にでも簡単に出来る、と言われたので、一応、教わっていたそれを、使ってみることにする。

「ええっと・・・確か・・・」




ささやき いのり えいしょう ねんじろ!




すると、魔力が渦を巻いて、兎妖怪に収束してゆく。
おお、これならば、と思った瞬間。



おおっと!!






・・・・・・・・・





リテイク、しますか?   はい/いいえ

霊夢がどちらを選んだのか、真相は謎のままである。







~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第7話 永遠の満月








いよいよ最後の戦いに挑む紅魔組。
手元には、ラ○フカードが二枚ある。
一つには、『このまま先に進む』と書いてある。
そして、二枚目には。
『ロケットを作ってみる』。
そう書いてあった。

「・・・何で、ロケット・・・」

それはこの後の話ではないか。
というか、何故ロケット。
どこをどうしたら、『ロケットを作ってみる』なんて選択肢が出てくるのか。
というか、ロケットを作り、どこへ行けと言うのか。
自分の親友が、月に兎狩りに行きたい、なんてアホなことでも考えない限り、あり得るはずがない。
すると、ライ○カードを提示していた小悪魔が、口を開いた。

「あ、間違えました・・・本当はこちらです」

と、先の二枚を引っ込め、新たに三枚を提示。
そこには。

・さっきの奴を追う(Aルート)

・勘を信じて、別の道を行く(Bルート)

・死人に鞭打て!ジェノサイド!(Cルート)

と、書いてあった。
それを見て、レミリアは迷う。
Aルートに進むか、Bルートに進むかを。
それを見て、パチュリーは迷う。
Bルートに進むか、Cルートに進むかを。
そして、同時に結論。

「「B(C)ルートね」」

意見が分かれる。

「ちょっとパチェ!、Aルートならまだ解るわ、なのに、何でCルートに行こうとするのよ!」

しかも、死人に鞭打てだなんて、あまりにも非道すぎる。
レミリアがそう言うと、パチュリーは。

「冗談よ・・・私が本当にそんな事をすると思ってるの?」

冗談。
その言葉に、レミリアはホッと胸をなで下ろす。
良かった、自分の親友が外道に外れてなくて。
するとパチュリーが、一枚のカードを裏向きで手渡してきた。

「・・・本当は、これを選んでいたのよ」

そう言って、先に進むパチュリー。
はて、何を選んだのだろう、と、紙を裏返すと。


・魔法の実験~実戦編~


と、書いてあった。
レミリアは考える。
実験。

・・・・・・実験!?


Q、何を?

A、魔法の実験を。(戦闘用の)


Q、誰に?

A、ここの住人に。


Q、何故?

A、使ったことがないからDEATH。


結論:やっぱりジェノサイド。


「ちょっとまてええええぇぇぇぇぇ!?」

叫んだときにはもう遅い。
パチュリーと小悪魔は既に、部屋の一つを開け、中に入っていくところだった。
急いで追いかける。
部屋の中からは、既に破壊音が聞こえてくる。

「待ちなさいっ!、パチェ!」

幾ら敵地だからと言って、そんな非道いことが許されるはずがない。
そして、そこで、レミリアの見た光景は。

「・・・」
「・・・ケホッ」

黒く煤けた自分の親友と、その使い魔だった。
え、何事?、と、パチュリーに問いかける。

「・・・失敗したのよ」

憮然とした表情で、そう答える。
それを聞いて、レミリアは、ため息一つ。

「全く・・・使ってない魔法の実験なんてしようとするからよ」
「・・・面目ないわ」

そう言って、煤をはたきながら立ち上がる。

「・・・んん?」

そこで、レミリアは、違和感を覚える。
確かに、パチュリー達は煤で汚れている。
だが、床や壁はどうだ。
魔法の暴発に、只の床や壁が耐えられるはずがない。
そのはずだ。
だが、実際には、壁も、そして床にも傷一つない。
これはあまりにも不自然だ。

「・・・何か、あるわね」
「何が?」
「床、見てみなさいな」

そう言われ、床を見るパチュリー。
試しに廊下に出、弾を床に撃ち込む。
すると、その弾の大きさの穴が開いた。

「ああ、そういうこと」
「でしょ?」
「・・・進んでみる価値はあるわね」

そう言って、先へと進む。
道は思ったよりも長く、思っていたよりも、ずっと広かった。
もしかしたら、何もないかも、と思ったが、途中、妖怪兎達の邪魔もあったことで、この先に何かがある事を確信させた。
さらに先へ進んだところで、レミリアが口を開く。

「ねえ、パチェ」
「何?」
「これ、どこまで続くと思う?」

その質問に、しばらく考え、答える。

「・・・何とも言えないわね」

まあ、と続ける。

「そんなに知りたいなら、あそこにいる奴に聞いた方がいいと思うわ」

と前を指さす。
そこには、人影。

「・・・ああ、もう、こっちに来たらだめだというのに・・・ウドンゲの陽動も無駄じゃないの」

そこには、先の妖怪兎の隣にいた人物。

「・・・また会ったわね・・・ところで、幾つか質問があるんだけど」
「いいわよ・・・何かしら?」
「じゃあ一つ目、名前は?」
「八意 永琳」

質問に答える永琳。

「二つ目、この空間は、幻術の類?」
「ええ・・・幻術に長けた子がいるから、協力して作ったのよ」

良く出来ているでしょう?、と聞いてくる。
まあね、と返し、次の質問。

「じゃあ、三つ目、これが最後よ」
「・・・何かしら?」

そう言って、永琳の後ろを指さす。

「・・・貴女の後ろの戸、その向こうには、何があるのかしら?」
「・・・」

沈黙。

「まあ、貴女を倒して進めばいいだけの話ね」
「あら、それは無理ね」

なぜ?、と聞く前に、異変は起こった。
レミリアの気配が急に弱くなったのだ。

「っ!、レミィ!?」

後ろに振り向く。
そこには。

「うー・・・・・・」

紅魔館の主、レミリア・スカーレットではなく。

「ぱちぇー、どうしたのー?」

紅魔館の主、れみりあ・スカーレットがそこにいた。

「どうかしら、満月を新月に変えられた気分は」

そう言われ、気付く。

「・・・なるほど、月を置き換える事が出来るのなら、逆もまた然り、と言った所かしら」
「そう、貴女のパートナーが、あまりにも解りやすい格好だから、利用させてもらったわ」

確かに、こんな翼が生えているなんて、それこそコウモリか、悪魔、後は吸血鬼くらいな物だろう。

「これで、貴女達の戦力は下がったわ・・・これ以上戦うのは無駄じゃないかしら?」

勝ち誇った笑みを浮かべる永琳。
だが、パチュリーの表情は、静かなものだった。
勝利を確信したときの余裕。
それに準じるものを、パチュリーは確信した。

「・・・貴女は解っていない」
「?、どういう事かしら」
「新月の時のレミリアの真の恐ろしさを」

訝しむ永琳をよそに、小悪魔に抱えられているれみりあに話しかける。

「レミィ」
「なーに?ぱちぇー」
「貴女は本当に、強くて恐ろしい存在なのかしら?」
「うん!れみりあはつよくて、おそろしいの!」

元気いっぱいに答えるれみりあ。
その言葉を聞いて、満足そうに頷くパチュリー。

「そう、なら・・・」

永琳を指さし、続ける。

「アレを倒すなんて、朝食前よね?」
「うん!あさごはんまえー!」
「え、ちょっ、パチュリー様!?」

そう言って、小悪魔の腕の中から飛び出すれみりあ。
いや、絶対無理だろう、と小悪魔は思った。
いつものレミリアならまだしも、今のれみりあはそれこそ、阿求のげんこつでも泣くんじゃないだろうか、と思えるほどに弱々しい。
だがれみりあは、何を思ったのか、倒せると言ってしまった。

「頑張ってらっしゃいな」
「うん!、いってくるねー、ぱちぇー」
「だ、ダメですよ!、ちょっと、パチュリー様!何考えてるんですか!?」
「大丈夫よ・・・たぶん・・・」
「たぶん!?、今、たぶんって言いましたね!?」
「そんなことないわよ?」

何故疑問形。
ともかく、そんなやりとりをしている間に、れみりあは永琳に向かって走ってゆき。

「うりぃー!!」

体当たり。
タックルではなく、体当たり。
わざでいうと、たいあたり。
だが、今のれみりあは、ポ○ケモン換算でLV3ぐらい。
そんな攻撃が、ポケ○ン換算でLV100オーバー。
実年齢で、×××○○×歳の永琳に通用するはずもなく。

「あうー!」

ぶつかった反動で、自分がこけてしまった。
どうやら、すてみタックルだったようだ。

「ううううー」

転けたのが痛かったのか、れみりあは、なかなか立ち上がらない。
パチュリーは、遠くから、レミィ、ファイト!と声をかけている。
永琳は、あっけにとられた表情で、突っ立っている。
その時間は数秒。
だが、その数秒が、永琳の命運を分けた。
突然現れる殺気。
永琳は、それを感じ取った瞬間、即座に横に飛び退く。
その一瞬後に永琳のいた空間を通り過ぎるナイフ。
壁に刺さったナイフを見て、永琳が冷や汗を流す。

「・・・これは、ナイフ?」

どこからか、自分目掛けてナイフが飛んで来たのだ。

「そう、これが貴女の誤算よ、永琳」
「!?」

その言葉に、パチュリーの方を向く。

「貴女の誤算、それは・・・」

その隙が命取りだった。
次の瞬間には、永琳の額に、ナイフが刺さっていた。

「悪魔の忠実な猟犬を、甘く見過ぎていたこと」

単純な理由ね、と、既に事切れている永琳に向かって言い放つ。
次の瞬間、パチュリーに向かって、ナイフが飛んできた。

「むきゅ!?」

ナイフは、パチュリーの帽子だけを射止めて、反対側の壁に突き刺さった。
そして。

「お嬢様をけしかけた、どこぞの紫モヤシも同罪です」

そう言って現れる咲夜。

「・・・殺す気かしら」

半目でにらむ。

「お望みなら」

笑顔でナイフを取り出す。

「・・・止めとくわ、仲間割れをしている暇なんてないし」
「賢明なご判断です」

そう言いながら、れみりあの元へ駆け寄る。

「ああ、お嬢様、なんと素晴らしいお姿・・・いえ、お怪我はございませんか?」
「うー、さくや?」
「はい、お嬢様の為ならば、何処へでも駆けつけますわ」
「うん、ありがとー、さくやー」

先ほどまで白かったエプロンドレスを、自分の血で染めながら、笑顔でれみりあに接する。
あの、ハンカチを、と差し出してきた小悪魔に、自前があるから、と断る咲夜。
次の瞬間には、血は止まり、エプロンドレスも、綺麗なものに着替えられていた。

「・・・いつもながら、反則じみた能力ね」
「お褒めにあずかりまして、恐縮ですわ」
「・・・まあ、それはおいといて」

まだ、れみりあの姿は元に戻らない。

「これは、どういう事かしら?」

月を元に戻さなければこの状態から戻らないのか。
それとも、術者を倒さなければ、この状態から戻らないのか。
この二つは、似ているようで、全く違う事実を持つ。
前者なら、このまま、永琳の守護していた部屋に進めばいい。
だが、後者なら、少々面倒なことになる。
そして、その答えは、残念ながら後者だった。

「ふ、ふふふふ・・・」

事切れていたはずの永琳が、突然笑い声を上げる。

「そんな・・・確かに仕留めたはず・・・」

咲夜がナイフを構える。

「驚いたかしら?・・・先ほどまで死んでいた人間が突然生き返って」

立ち上がり、悠然と笑みを浮かべる永琳。
でも、ものすごく痛かったわ、と言う。

「人間?、妖怪の間違いじゃないの?」

半目でにらみつけ、皮肉を言う。

「いいえ、確かに人間よ?」
「どこがよ・・・死なないなんて人間の範疇から外れているわ、それだけで理から外れた存在よ」
「違うわ、死なないだけの、只の人間」

皮肉に対し、笑顔で返す。
それを見て、一歩、前に進み出る咲夜。

「そうですか・・・なら」



どこまで死なないか、試してみようかしら



瞬間、全方向に展開される、ナイフ、ナイフ、ナイフ。
全てが永琳のいる空間に切っ先を向けている。
そして、咲夜の号令で、全てが一斉に放たれる。

「なかなか・・・でも、この程度で!」

迫り来るそれらを、弾幕で打ち消し、回避する。
だが、ナイフは、壁や床に反射され、しつこく対象に食らい付く。
そして、いつの間にか、跳ね返るナイフの中心に押し返されている事に気がつく永琳。
大体予想通りの展開になったところで、咲夜は次の手を打つ。

「ええ、存じております・・・では、こちらはいかがでしょう?」




幻符「殺人ドール」




宣言。
同時にナイフの量、早さ共に、倍以上に跳ね上がる。
そして、増えた分が、永琳に食らい付こうとする。

「スペルカード?・・・なら、こちらも使わせてもらおうかしら・・・」





蘇生「ライジングゲーム」





宣言し、弾幕を張る。
現れた弾幕は、進路場にある咲夜のナイフを次々とかき消しながら迫る。
大きい弾を避け、小さい弾を相殺しながら凌ぐ咲夜。
それを見て、永琳は、余裕の笑みを浮かべる。

「大言を吐いた割には、随分とあっけないわね?」
「・・・そうでもないわ」
「!?」

だが、次の瞬間、目の前に咲夜の姿。
その手には、次のスペルカード。

「何時の間に!?」
「さて・・・何時でしょう?」



傷符「インスクライブレッドソウル」



宣言。
一瞬で懐に飛び込み、ナイフで切り刻む。
そして、的確に、人体における、ほぼ全ての急所を切り伏せた。

「く・・・あ・・・」

くずおれる永琳。
倒れた永琳を中心に、ジワリと、床に赤黒いものが染みこんでゆく。
そして、それを見届けてから振り返る咲夜。

「どうやら、耐久力は人間と変わりなさそうですね・・・」
「・・・当然よ、人間だもの」
「咲夜!・・・まだ生きてる!」

瞬時に蘇生した永琳が、咲夜の背中に向け、一撃。
ほぼ完全に不意をつき、勝利の笑みを浮かべる永琳。

「悪いわね・・・これで終わりよ」

だが。

「別に、悪いなんて思っていませんけどね」
「なっ!?」

不意に背中にのしかかる重み。

「戦場では、隙を見せた方が死ぬ・・・ただそれだけですから」
「咲夜、本の読み過ぎよ」
「あら、年中本を読んでらっしゃる方に言われるなんて・・・光栄ですわ」
「いや、別に褒めてないから」
「あら、今で言う、つんでれ、という奴でしょうか?」
「・・・」
「失礼しました・・・冗談ですわ」

さすがに敵を増やすのはどうかと思ったのか、それ以上ボケるのは止める事にした。
幾ら悪魔の犬でも、本気になった魔女を相手にしたくはないらしい。
決して、漫画や、その類を読ませてもらえなくなるとか、そう言った理由ではない。
・・・・・・理由ではないってば。

「・・・さて」

ナイフを弄びながら、咲夜は永琳に言う。

「この状態なら、108通りの処刑方法がございますが・・・いかがでしょうか?」
「やっぱり、漫画の読み過ぎね・・・」

選べと言う、地獄を見るか、降参するか。
笑顔で脅迫・・・もとい説得。
これがメイド長クオリティー。

「・・・答えを出す前に、幾つか質問があるわ」
「何かしら?」
「いや、貴女じゃなくて・・・」

そう言って、パチュリーに視線を向ける。

「何・・・私?」
「ええ、そうよ」
「・・・まあ、答えられる範囲でなら、いいわ」

そう返事が返ってくる。

「・・・まず、一つ目の質問・・・貴方達は、月から来たお迎えかしら?」
「・・・その月から来たお迎え、とやらが何なのか知らないけど・・・」

咲夜を見る。
次いでれみりあ。
そして最後に、自分。

「え・・・あの、私は・・・?」

小悪魔が寂しそうに見ている。

「冗談よ」

真顔でそういう冗談を言うのは止めて欲しい。
七月七日に、そんな短冊が吊されていたとかいないとか。
取りあえず、最後に小悪魔を見て。

「・・・私達が、そう見える?」

見えるのなら、眼科に行くことを進める、と、言外に滲ませて言う。

「・・・見えないわ、ね」

まあ、確認のためよ、と言って話を切る。

「他には?」
「そうね・・・なら・・・」

しばらく逡巡し、質問する。

「この世界には、強力な結界か何かが、張ってあるのかしら?」
「?、結界?」
「ええ」
「ああ・・・成る程ね」

その一言で、殆どの答えが氷解した。
月を隠した理由。
こんな竹林の奥に住んでいた理由。
つまり、ワケありなのだ。
ならばと、その質問に答えることにした。

「ええ、張ってあるわ・・・それも、私達が総出で挑んでも破れそうもない、とびっきりの結界が」
「・・・本当に?」
「こんな時に嘘を吐く趣味なんかないわ」

その答えを聞き、永琳は、ため息一つ、ガックリと体の力を抜く。
その姿を一瞥して、パチュリーは、戸に手をかける。

「答えが出たのなら、休んでなさいな・・・ご隠居様を引きずり出してくるから」
「ご隠居って・・・姫は、そんな見た目じゃないわよ?」

まあ、歳だけなら超ご隠居だけれど、と続ける。

「貴女も大して変わらないみたいだけれど?」
「・・・気のせいよ」
「目をそらさない・・・ああ、それと・・・」

忘れていたがもう一つ、大きな問題がある。

「レミィを、何時まで放っておくのかしら?」
「私としては、別にこのままの方が・・・いえ、何でもありません」

一部、反対意見が出たが、却下。
何故か、小悪魔も残念そうな顔をしている。
却下と言ったら、却下だ。

「・・・ともかく、元に戻してもらえないかしら?」
「ええ、解ったわ」

そう言って、呪文を詠唱する永琳。
唱える呪文は・・・。



ささやき いのり えいしょう ねんじ・・・イタ!?



いつぞやの復活の呪文だった。
なんだ、ファンなのか、お前ら全員ファンなのか。
最後まで詠唱し終える前に、本の角で殴って止める。

「・・・何するのよ?」
「それはこっちの台詞よ」
「絶対成功させてみせるわ、ね?」
「失敗する奴は皆そう言うわ」

仕方ない、じゃあ普通に、と、普通に月を出現させる永琳。

「簡単に出すのね・・・しかも、ほぼゼロ行程で」
「戻すのは簡単なのよ、消すのと違って・・・そっちも似たようなモノでしょう?」

違いない、と、視線を移すとそこには、いつものレミリアの姿。

「・・・大丈夫かしら、レミィ?」
「んー、まだ違和感が・・・」

そう言って、数回羽ばたいたり、体を蝙蝠に分解、再生を繰り返す。

「よし、問題ないわ・・・後は・・・」

そう言って、永琳を見るレミリア。
その目は殺る気に満ちあふれている。

「え、私?」
「ええ、貴女」

そう言って、取り出したのはグングニル。

「戦いのカンを取り戻さないと・・・ねぇ?」

にっこり笑って私刑宣告。

「ちょっと、これなんて私刑よ?」
「大丈夫よ、どうせ生き返るんでしょ?」
「なんて他力本願na」

ピチューン

「・・・死ぬかと思ったわ」
「いや、死んでた死んでた」

すぐさま蘇生。
その再生速度に、レミリアも呆れる。

「全く・・・本当にデタラメな再生速度ね」

殺しがいのない奴、と毒づく。

「殺されても死なないけど、痛いものは痛いのよ・・・全く」
「あの、ハンカチ、要りますか?」
「・・・いただくわ」

永琳は、小悪魔の渡したハンカチを受け取り、血を拭う。

「・・・さて、咲夜もご苦労だったわね・・・屋敷に戻っていいわよ」
「はい、それではお気をつけて」

そう言って、壁や床に刺さっていたナイフと共に一瞬で消える。

「さて、私達も行きましょうか」

そう言って、再び戸に手をかける。

「気をつけてね、姫様は私よりも遙かに・・・」
「・・・遙かに?」
「撃たれ弱いわ」
「秒殺できそうね」

何に気をつけろと言うのか。
普通の人間以下ならば、只の雑魚ではなかろうか。
そう思いながら、中に入る。
そして、そこにあったものは。

「・・・戸?」
「戸ね」
「戸ですね」

戸だった。

「・・・まあ、開ければその先があるわよね」

そう言って戸を開く。
すると、その先には。

「・・・また戸」

そして、その戸を開いた先には。

「・・・まだあるの?」

戸。
戸。
戸。
戸。
戸。
さすがの数に、うんざりする。

「何これ、嫌がらせ?」

表情と声色に、苛立ちが混ざっている。
だが、隣の親友は、感心した顔で、しきりに頷いている。

「違うわパチェ、これは趣味だと思う」
「・・・理由を聞かせてもらおうかしら?」
「格好いいからよ・・・雰囲気出るでしょ?」

笑顔で即答する親友に、これ程殺意を覚えたことはない。
次の日の日記には、そんな文章が書かれていたとか。

「・・・いつか、私の手で灰にしてやろうかしら(そうね、趣味なら仕方がないわ)」
「パチュリー様、本音と思考が逆です」
「あら、ごめんなさいね、レミィ、私はそんなこと、ゼンゼン、コレッポッチモ、ケッペンタリトモオモッテナイカラ、安心していいわ、その日までは」
「ハ、ハハハ、パッチェサンハヤサシイナー」

さすがのデーモンロードにも、怖いものはあるのだ。
そうしている間にも、次々と戸は開け放たれてゆく。
そして。

「・・・この先かしら」

先ほどまでの扉とは装飾の違う戸。
それは、現代で言うドアだった。
そして、掛札が吊されており、そこには。


輝夜のへや♪


と、可愛らしい文字で書かれていた。
それを見たパチュリーの表情は、鬼ですら真っ青な顔で道を譲るほどのものだったと言う。
そして、部屋の中に入り、そこに。

「んー?、お客さん?」

と、寝転がったままでP○Pをしている輝夜らしき人物を確認した瞬間。



日符「ロイヤルフレア」



「え、ちょっパチェ、まっ・・・」

家財道具、そして部屋もろともに焼き払ったのは、人として間違っていないはずだ。
副作用として、自分の親友と使い魔も焼き払った気がするが、気のせいだろう。

「わ、私、なにもしてないのに・・・」

使い魔の声で空耳が聞こえたが、気のせいだろう。
そして、寝転がったままの姿でリザレクションし終わった輝夜が掴み掛かってくる。

「ちょっと!、何するのよ!、PS○壊れちゃったじゃない!」

べんしょーよ、べんしょー!、と心底ご立腹のようだ。
だが、元祖引きこもりも負けてはいない。
本の角で殴打した後、踏みつけ。

「ほら、さっさと部屋から出るわよ、この引きこもり姫」

自力で出ないのなら、無理矢理引きずり出す、と目で言っていた。

その眼力に、一瞬怯んだが、輝夜も負けじと言い返す。

「な、何よ!、アンタなんて永琳を呼べばコテンパンなんだから!」

えーりん、えーりん、たすけてえーりん!、と、えーりんコール。
だが、パチュリーは、さらに、輝夜を絶望の淵へと追いやる。

「・・・そのえーりんが、引きずり出してきてくれ、と言ったのよ?」
「・・・ゑ?」

勿論、これはパチュリーの曲解だが、当の永琳は、輝夜の所に殴り込みに行くのを黙認していたので、まあ、大丈夫だろう。
さすがの輝夜も、この言葉は効いた。
どのくらい効いたかというと。
炎属性に、水属性をぶつけたぐらいだ。
ゲームがゲームなら、こうか は ばつぐんだ!、と表示されていただろう。

「う、うそよ・・・そんなのうそよ・・・」
「残念だけど、事実よ・・・諦めなさい」
「うそだ!!」

そう言って、パチュリーの手を振り払い、部屋の隅へと走る。

「動かない、死んでも絶対に動かないわ!」
「あら、そう」

じゃあ、試してみようかしら、と言って取り出したのは、六枚のスペル。



金&水符「マーキュリポイズン」



「こ、こんなものでええぇぇ!」



水&木符「ウォーターエルフ」



「り、リザレクショオオォォォン!」



木&火符「フォレストブレイズ」



「熱っ!?あっつ!?、ちょ、待って!燃えてる、燃えてるから!」



火&土符「ラーヴァクロムレク」



「アーーーーーーーーーー」



土&金符「エメラルドメガリス」



「え、ちょ、たんマベシッ!」



火水木金土符「賢者の石」



「り・・・りざ・・・れく・・・しょん」



以上、ダイジェストでお送りしました。
都合六枚、合計六回死んでは生き返るを繰り返し、その姿は、見ていて痛々しい。
しかし、死んですぐに生き返るという、驚異の再生能力のおかげで、どう見ても命張ったギャグにしか見えないのが現状。

「う、うおおおおお・・・・・・」
「・・・なかなかしぶといわね」
「え、何、この状況」

すると、今まで気絶していたレミリアも気が付いた。

「ああ、おはよう、レミィ」

なかなか早い復活だったわね、と挨拶する。

「ねえ、パチェ・・・何で、こんなにボロボロなのかしら、私・・・って」

そこで思い出す、自分の親友であるはずの紫モヤシが、部屋に入った瞬間、MAP兵器を打ち込んだ事を。

「パチェ・・・そろそろ、自重って言葉を覚えて欲しいんだけど?」
「残念ね、私の辞書にはそんな言葉、載ってないわ」

そろそろ、友情という言葉について、拳で語り合う必要が出てくるかもしれない。
この日を境に、「漢の友情~熱血編~」とか「友人と拳で語り合う1000の方法」とか言うタイトルの本が図書館から借り出される事が増えるようになったとか。

「・・・で、そこに転がってる炭は何?」
「炭って失礼ね・・・一応、ここの主なんだけど?」

と、交わした言葉がファーストコンタクト。

「ああ、じゃあ、そいつを部屋から引きずり出せば終わりか」
「いや、自分で出るわ」

と言って、アッサリ立ち上がる。

「あら、さっきまであんなに嫌がっていたのに・・・どういう心境の変化?」
「永琳が出て来いって言ったんでしょ?、なら、もう外に出ても良いってことよ」

それに、と続ける。

「部屋をボロボロにしてくれたお礼もしなきゃ・・・ねぇ?」

首だけを後ろに回して、嗤う。

「・・・まだやる気?、まあ、良いけど・・・っと、レミィ?」
「次は私の番よ・・・パチェは、そこで休んでなさい」
「ああ、暴れたりないのね・・・」
「そうよ、出番を取られたり、弱体化させられたり、さんざんなんだ・・・だから・・・」

次の出番は、ワタシニ喰ワセロ。
凶暴な笑みを浮かべ、言い放つ。
そう言って、輝夜を連れて、天井に開いていた穴から、外に出ていく。
すると、部屋の入り口に、気配。

「生きてるかしら?」
「どっちが?」
「当然、貴方達」
「この通りよ」

残念ね、無事で、と言い、本当に残念ね、と返す。
そして、パチュリーの対面に座る。

「・・・で、貴女の所のお嬢様と、うちの姫様は?」
「上よ・・・なんか変なスイッチ入ったみたいね」

まあ、半分私のせいだろうけど、と言った。
そこで、部屋の惨状に初めて気が付き、半分じゃなくて、殆どの間違いよ、とため息を吐く永琳。

「全く、良くここまでやるわね・・・誰が修理すると思っているの」
「誰が修理するの?」
「イナバ達」
「・・・可哀想に」

本心からの同情だった。
イナバ達、というのは、待ち伏せしたり、弾幕撃ってきたりしていた兎妖怪達の事だろう。

「・・・うちからも、少しは人員を貸すわよ?」
「当然よ・・・勝手にやってきて、壊すだけ壊したらサヨナラなんて、絶対に許さないわ」

そう言うと、立ち上がる。

「ああ、もう、これからの事を思い浮かべるだけで気が滅入ってくるわ・・・」
「なら、後腐れがないように、白黒つけない?」

そう言って、上を指さす。

「あら、そんなこと言って・・・後悔するわよ?」
「100回死んでも同じ事が言えるかしら?」

そう言って、立ち上がる。

「うー、パチュリー様?」
「ああ、小悪魔、少し出かけてくるから」
「はい?、どちらへ?」
「上、よ・・・混ざってくるから、これ、預かっておいて」

そう言って、本を手渡す。

「あ、はい、お気をつけて」

その言葉を、背中で聞きながら浮かび上がる。

「あら、魔導書なしで挑むつもり?」
「あれは魔導書じゃないわ・・・ただの小説よ」
「・・・呆れるくらいに本の虫ねぇ」

上空に到達。
そこは、既に極彩色に彩られていた。

「・・・派手にやってるわね・・・二人とも」
「・・・そうね」

紅と虹色。
押しては返し、かき消してはかき消される。
そんな光と色のせめぎ合いを背にし、お互いにスペルカードを取り出す。

「さて、見せてもらいましょうか、地上の魔法を」
「さて、見せてもらうわよ、外界の技術を」

夜は、まだ終わりそうにない。





スペルカード セット










「・・・ところで、私は何時まで時間を止めてないといけないんでしょうか?」

あ。












次回予告

戦いはまだ終わらないエンドで幕を閉じた永夜の異変。
だが、宴はまだ終わらない、否、終われない!

輝夜「ふふふ、これよ!、これであの憎き紫の引きこもりを・・・」

何かを企む輝夜!

永琳「程々にして下さいね?」

諦めムードの永琳!

レミリア「はあ?、肝試しぃ?」

面倒くさそうなレミリア!
そして・・・。

パチュリー「何、また何か企んでるの?、あの引きこもり・・・」

やっぱりこの人が主役だ!

小悪魔「え、また私も行くんですか!?」

頑張れ小悪魔!受難は続く!







次回、~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~第8話 最後はやっぱりエキストラ!? お楽しみに!!







??「ハッ、焼き鳥・・・もとい、焼き吸血鬼と焼き魔女にしてやるよ!!」







今回のNG

「ん?、何これ・・・兎?」

兎妖怪が、目を回して倒れていた。
それは、レミリアに投げられ、屋敷の天井に大穴をあけて飛んで逝った兎妖怪だった。
事情を知らない霊夢は、この兎をどうするか、一人考える。

「兎・・・んー、兎、ねぇ・・・」


Q、竹林の外周部で見つけた兎、貴方ならどうする!?

1、怪我をしているようなので、手当をする。

2、そのまま放置、現実は非常である。

3、おぉぉぉもちかえりぃぃぃぃぃぃ!!、と叫びながら、コレクションに加える。

4、美味しくいただきます。(兎料理のフルコース)

5、とりあえず、適当に復活の呪文を唱えてみる。

さあ、どれだ。

しばらく考え、霊夢のだした答えは。

「うっさぎっなべっ、うっさぎっなべっ」

耳を掴んで意気揚々。スキップしながら遠ざかっていく。
霊夢の答えは4だった。


BAD END (霊夢的にはハッピーエンド)











今回のNG、その2

「ううううー」

転けたのが痛かったのか、れみりあは、なかなか立ち上がらない。
パチュリーは、遠くから、レミィ、ファイト!と声をかけている。
永琳は、あっけにとられた表情で、突っ立っている。
その時間は数秒。
だが、その数秒が、永琳の命運を分けた。
突然現れる殺気。
永琳は、それを感じ取った瞬間、即座に横に飛び退く。
その一瞬後に永琳のいた空間を通り過ぎるフォーク。
壁に刺さったフォークを見て、永琳の目が点になる。

「・・・フォーク?」

どこからか、自分目掛けてフォークが飛んで来たのだ。

「そう、これが私と貴女の誤算よ、永琳」
「!?」

その言葉に、パチュリーの方を向く。

「私と貴女の誤算、それは・・・」

その隙が命取りだった。
次の瞬間には、永琳の額に、フォークが刺さっていた。

「悪魔の忠実な猟犬は、食事中だったということ」

単純な理由ね、と、永琳に向かって言い放つ。
次の瞬間、パチュリーの額に、フォークが刺さっていた。

「タイミングの悪い、どこぞの紫モヤシが一番悪いです」






紅魔館

「咲夜さーん、お酒のお代わり、見つかりましたよー・・・あれ?咲夜さーん?」
さて、次はエキストラステージだー。
頑張った、自分。
見てくれて有難う、皆さん。
では、最後の馬鹿騒ぎ、頑張って書いてきます。

では、ご意見、ご感想、弾幕など、よろしくお願いします。
GUNモドキ
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コメント



0.610簡易評価
9.80名前が無い程度の能力削除
4が性的な意味でじゃないことに泣いた!おおいに泣いた!!
13.100名前が無い程度の能力削除
食事中wwwwフイタwww
16.90名前が無い程度の能力削除
食事中だからってフォーク持って来なくてもw
まあ、元ネタのナイフも食事用だけどな!