Coolier - 新生・東方創想話

東方闇魔郷 ~ the Embodiment of Dark Devil.

2008/08/22 15:18:44
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※この話は極度のオリ設定・キャラ崩壊を含みます。スーパーモードです。
 名前&台詞なしですが、妖精メイドがオリキャラで一人含まれます。

※閻魔郷(えんまきょう )ではなく、闇魔郷(あんまきょう)です。










――世界が薄闇に包まれた――





――1――


「貴方達と出会い、今まで過ごしてきた時間、とても好ましいものだったわ」

 レミリアを見ると、瞳に涙を浮かべていた。
 真実心の底から思っているかのように、感情を込めた言葉だった。

「いきなり何よ、今生の別れみたいな言い回しね」
「この薄闇が原因か? どっかの馬鹿が異変でも起こしたのか」

 レミリアにお茶会へ誘われ、霊夢と魔理沙は紅魔館に来ていた。
 お茶会の途中、室内に明かりがあるにも拘わらず、部屋が薄闇に包まれたのだ。
 窓から外を見てみると、昼間だというのに夜の如く闇が広がっている。

「霊夢、魔理沙、全ての運命はあなた達にかかっているわ」

 霊夢達の言葉には答えず、尚も真剣な面持ちで次の言葉を発した。
 涙はもう床に滴り落ちるほどで、止めどなく溢れていた。

「本当にどうかしたの? 薄闇に頭がやられる効力でもあるのかしら」
「原因をとっちめれば治るだろうし、さっさと異変解決に乗り出そうぜ!」

 そんなレミリアを部屋に残し、二人は異変解決へ向かった。



「最後まであきらめないで……」

 二人が部屋を飛び出した後、扉の前でレミリアは一人呟いていた。
 その顔はまるで、世界の終末の運命を見たかのような有り様だった。





――2――


「やはり行くのですね。貴方達はこれから、大きな試練を迎えることになります。
 貴方達に僅かながらですが、祝福を授けましょう」

 部屋を出ると、通路の先に咲夜が佇んでいた。

「あなたも変になっちゃってるわけ? 口調まで変わってるわよ」
「こりゃ一刻も早く解決しないと、私たちもヤバイかもな」

 軽く受け流してそばを通り過ぎようとすると、突然咲夜の背後が白く輝きだした。
 光は通路全体へ広がり、その場は光り輝く神殿のような有様へと変貌していた。
 二人があっけに取られて見ていると、咲夜は光に包まれながらゆっくりと口を開いた。

「この身は時間の主神、ズルワーンの力が宿りし器。祝福を授けることができます。
 この祝福で貴方達はいかなる場合であろうとも、時を惑わされることはないでしょう」

 咲夜が腕をかざすと、二人は淡い夜のような青色の光に包まれた。
 熱も重さも無く視界も変わらないが、まるで母親に抱かれているように二人は感じた。

「どうか、我が子……マズダーの行く末を頼みます――」

 そう言い残し、咲夜は役目が終わったとばかりに目の前から消え去っていた。
 同時に通路の光も消え去り、元の有様を取り戻していた。

「………………行くか」
「………………そうね」

 二人は今起こった事を脳裏から削除しつつ、淡く光りながら通路を後にした。





――3――


「来たわね。魔理沙、霊夢」

 外へ続く通路の途中にある、図書館の扉の前にパチュリーが一人佇んでいた。

「……お前は無事か?」
「何を言っているのかしら? それよりこれを受け取りなさい」

 そう言って、パチュリーは西瓜ほどもある赤い結晶を差し出した。

「これは……賢者の石じゃないか! 無茶苦茶でかい上、単一結晶で魔力密度も高い……」
「つい先程完成したの。異変解決に役立てなさい」

 パチュリーと魔理沙のやりとりを見ながら、霊夢は心底ほっとしていた。
 研究成果であり切り札でもある賢者の石を、簡単に差し出す様は見ていて異常ではある。
 しかし、咲夜の様な超常じみた事態でなかったことは、精神上ありがたかった。

「ありがたく貰うが、お前錬金術苦手だったよな。こんなにでかい物どう作ったんだ?」
「私が使役している小悪魔は知っているわよね。彼女はゾロアスター教の七大魔王の一人、
 タローマティだったの。この異変と同時に覚醒したのだけれど、異変の原因ではないらしいわ。
 私に異変の内容を教えてくれて、あなたに賢者の石を託すためにも力を貸してくれたのよ」

 霊夢はほっとした過去の自分を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。その衝動を抑えるべく、
 通りがかった妖精メイドを壁際へ追い詰め、頬をお祓い棒(正式名称:大幣)でつついた。
 強大な霊力に怯え涙を滲ませる顔を見て、霊夢の嗜虐心がそそられていく。

「……あー、賢者の石についてはよくわかった。それで異変の内容「それは駄目よ」は?」
「それは貴方達が、自らの手で掴み取らないといけないことだわ」
「…………まぁ、深いことは聞かないでおく。小悪魔には礼をいっといてくれ」

 魔理沙はそう言うとポケットから折りたたみ鞄を取り出し、鞄へ賢者の石を突っ込んだ。
 その後、未だつつくことに夢中となっている霊夢を連れて、図書館を後にした。





――4――


 紅魔館の門では、美鈴が仁王立ちの体勢でこちらを見つめていた。
 その周囲に門番隊の面々は見られず、一人門の中心に佇んでいる。
 魔理沙は、もう何が起こっても気にしないと心がけながら話しかけた。

「中国。お前はあれか? 帽子の字の如く龍神様だったりするのか?」
「よくわかりましたね。それでは真実の姿をお見せしましょう」

 かなり投げ遣りな気持ちで尋ねた魔理沙に答え、美鈴は巨大な龍へと姿を変えた。
 その太さは優に樹齢数千年の大木を超え、天の一部を埋め尽くす長さであった。
 魔理沙は後悔した。迫力がありすぎて少し濡らしてしまったことは一生の秘密となるだろう。
 その存在感故に、霊夢は妖精メイドの頬をつつく手を一時止めたが、すぐに再開した。

『この姿を現したのは、博麗大結界が張られた時以来ですね。吸血鬼異変の際、
 私は傍観していましたから。気まぐれで外の世界へ行き、なんだかんだありまして
 吸血鬼少女の従者をしていましたが、幻想郷の最高神であることには代わりありません』

 いつもよりわずかに低く、それでいて心に強く響くような声で美鈴は答えた。
 龍神の持つ圧倒的な威圧感に耐えながら、魔理沙は過去の美鈴への所行を思い出していた。
 流石に反省しようとも考えたが、――元中国だしいいか――即座に思考を放棄した。

『む、今失礼な事を考えられた気がしましたが……まぁいいでしょう。それでは二人とも、
 私の背に乗ってください。異変の特異点まで連れて行きます』

 そう言うと、美鈴は頭を門前まで近づけた。目の前にある龍の顎はとてつもなく怖かった。

「いっそ中ご……龍神様が異変を解決してくれたりとかは駄目なのか?」

 魔理沙は浮かび上がる恐怖故に名前を言い直しながら、他力本願気味に聞いてみた。

『中国でも良いですよ、魔理沙さん。今宵の異変について、私は少し傍観することにします。
 これは貴方達の問題でもありますからね』

 本来の姿に戻ったおかげか、美鈴は名前への執着を潜めているようだった。
 美鈴によると、この異変は魔理沙達に関係ある問題でもあるらしい。美鈴の希望では、
 どうやらこの異変を魔理沙達に解決してもらいたいようだ。

 美鈴の額に二人と一匹は降り立った。美鈴の顎がゆっくりと浮かび上がる。
 美鈴は異変の特異点だという、時の歪みの如き斥力を発する、霧の湖の上空へと顎を向けた。
 その斥力は力強く、神でさえも進入を拒めるほどの、ある種の結界であるといえるだろう。
 だが竜神の巨体は、幻想郷最速の天狗さえも上回る早さで、斥力など無いかの如く昇っていく。

 魔理沙は襲い来るであろう重圧が無かったことを不思議に思いながら、圧倒的速さを楽しんでいる。
 霊夢は妖精メイドを胸に抱き、相変わらず大幣(別名:祓串)で頬をつついている。
 妖精メイドはもう逃げられないことを悟り、霊夢からの責め苦を受け入れ始めている。

 二人と一匹の身を包む淡い光が、速さや特異点より迫る重圧から、人知れず守ってくれていた。





――5――


<よくぞ来た。妾は善と悪とを峻別する正義と法の神、
 全知全能の最高神、アフラ・マズダー(智恵ある神)である>

 頭の中に直接、厳粛な声が響いている。目の前には神々しい輝きを全身から放つ――

「……そうじゃないかと、うすうす思ってはいたが……」

 ――チルノがいた。輝くばかりの純白の衣をまとい、背にはいつもの氷の三対の羽根ではなく、
 金色に輝く天使のような一対の大きな翼が収まっていた。更に腰と左手には光輪を携えている。
 等身も僅かに上がっている様である。顔は無表情ではあるが、どうみてもチルノであった。

<妾は世界の終末の日、最後の審判の時まで『智恵なし者』として自己を封印せしめておった。
 封印は今宵解かれた。時が至った後、妾は善なるものと悪しきものの分離を行うのみ力を発する>

 なにやら大層な講釈を垂れているが、魔理沙はもうどうでもいいという気持ちでいっぱいだった。
 霊夢の方へ視線を向けると、僅かだが嬌声が混じり始めた妖精メイドの頬を、延々とつついていた。
 歪んだ二人の世界を作り出している霊夢達は放っておくことにし、魔理沙はチルノに話しかけた。

「ここまで来たらもう予想はつく、紅霧異変の逆順だ。今回の異変の原因はルーミアだろ?
 正体はもう正直どうでもいい。早くぶっ倒して家に帰って寝たいから居場所を教えてくれ」

<今宵の異変の原因について、其方の考えは正しかろう。しかし、居場所を伝えることはできんな>

 予想通り異変の原因は、ルーミアであるらしい。居場所が答えられないのは、なぜなのだろうか。
 なんだか嫌な予感がしたが、気のせいだと魔理沙は質問を続けた。

「おいおい、どういうことなんだ? まさか萃香みたいにこの薄闇がルーミアだって言うのか?」

<それは正しくもあり、誤りでもある。かの者は全であるが故、特定の場所に限ることはない>

 嫌な予感は強くなっていく。しかし、早く帰って寝たいという欲求から魔理沙は無視してしまった。
 もし、予感に従い尋ねなかったとしたら――違う未来を歩んでいたかもしれない。

「もう少しわかりやすく教えてくれ、結局ルーミアはいったい何なんだ?」



<かの者は全である。あらゆるものはかの者で構成され、その境界もかの者で構成されておる。

 それはこの世のみならず、冥界、天界、魔界、地獄、全ての事象であって、適用される事柄である>



 その言葉を意識した瞬間、魔理沙は咲夜でもないのに、時が止まったかのように感じられた。
 頭のどこかで考えるなと、警鐘が打ち鳴らされている。理解してしまえば、もう戻れないと。
 しかし、魔法使いとしての聡明な彼女は、その意味を正確に把握してしまった

「なっ……、ぐぁっ!」

 理解したとたんに襲いかかってきた頭痛で、魔理沙は頭がおかしくなりそうだった。
 チルノの言うことが真実であるならば、幻想郷ばかりかこの世界、それどころか我が身でさえも、
 ――こう考えている、この思考さえも――ルーミアで構成されているというのだ。



 それではまるで、この宇宙そのものではないか――



 チルノは今も神々しい態度で、こちらを静かに見つめている。
 その体から発せられる神気は、幻想郷の最高神であるという龍神をも遙かに超えていた。
 嘘だと思いたかったが、何より本能が今の言葉に嘘偽りはないのだと、頭痛として訴えてきている。
 夢なら早く覚めてくれと願った。しかし、今も続く頭痛が、無情にもこれが現実だと知らしめている。

「じゃあこの異変はなんだ? このままだと世界の終末とやらが起こるのか?」

 とにかく情報が欲しいと、魔理沙は質問を続けた。

<今宵封印が解かれた故、世界は単一へと還ろうとしておる。全ての境界は消え失せるであろう。
 後に最後の審判を下し、善なるものと悪しきものを再び分離するのが妾の役目である>

「……お前が分離した世界は、この世界と同じになるのか?」

<我が関与するのは善悪の対立のみ。故にそれが同一の世界となることはあるまい>

 正に今、世界が滅亡の危機に瀕しているらしい。幻想郷のみならず、全ての世界の危機である。
 あまりの規模の大きさに、魔理沙は最高神であるチルノへ何度も助力を願った。
 しかし、妾は善悪の分離を行うのみであると、同じ返答を繰り返されるだけであった。
 会話により情報は引き出せるが、直接的な助けは期待できそうもない。

「どうすりゃいいんだ! どうすればこのままの世界でいられる!?」

 魔理沙は恥も外聞もかなぐり捨てて叫んだ。
 それにチルノは最初から何一つ変わらない態度、表情で答えた。

<今一度封印を行えばよい。しかし、かの者の器は封印が解かれた際の衝撃で消滅しておる。
 再度封印を行うには事象を身に受け入れる術をもつ、器を用意しなければならない。
 だが、境界の消滅は今も進行しておる。時が満ちるまで、幾ばくかの猶予しかあるまい>

 魔理沙は必死に考えた。時間は余り残されてはいないらしい。
 どういう訳かルーミアの体が消滅しており、新たな体となる器が必要である。
 今から探しに行ったのでは、手遅れになるかもしれない。

 そもそも事象を身に受け入れる術をもつ器、という問題も解決しなければならないのだ。
 最悪自分の体をとも考えたが、人の身では事象を内包することはできないだろう。
 魔理沙は髪を掻きむしりながら、先程から放っておいた霊夢に顔を向けた。

「くそっ! おい霊夢、お前も何か考え……」

 そこには、決意を窺わせる瞳を宿した、霊夢と妖精メイドが立っていた。





――6――


 その頬は、赤く腫れ上がっていた。左右ともに林檎のような有様だった。
 その小さな右手は、しっかりと霊夢の左手へと繋がれていた。
 その小柄な体は、端から見てもわかるほどに震えていたが、瞳は真っ直ぐと前へ向かれていた。

 放っておいた間に何があったんだと、魔理沙は無性に気になった。
 あの歪んだ二人の世界で、何か掴んではいけないものを掴んでしまったのだろうか。
 しかし、尋ねようとした魔理沙を遮るように、霊夢はチルノへと向かい口を開いてしまった。

「アフラ・マズダー。神に仕える巫女として、私は貴方に問う。この自然の現象である妖精は、
 事象を身に受け入れる術をもつ、器と呼べるかしら」

 場の雰囲気が一変した。空気は張り詰められ、これから神事が執り行われるかのようだ。
 智恵ある神へ、神に仕える巫女として対峙した霊夢は能面のように無表情だった。
 しかし、瞳だけは力強く輝きを放っていた。これから戦を始めるが如く。
 魔理沙は戦慄した。霊夢が妖精メイドをつつきながら神の名を違えず記憶していたことに。
 そして理解してしまった。妖精メイドとのことを、尋ねられる機会がなくなってしまったことを。

<我が名に誓い、その問いには真と言えよう。だがその場合、器の強度が持たないであろう。
 補うにはそれ相応の物が必要となるであろうな>

 魔理沙は自分がいないかのように進む場の雰囲気に、もどかしさを感じていた。
 劇の進行中、突如主役を奪われたかのような気分だ。せめて一矢報いたいと思っていた。
 不意に魔理沙は鞄の中から振動を感じた。今か今かとまるで出番を待ち構えていたかの様に、
 そこには血のように赤く輝く、賢者の石が胎動している。今がチャンスだと言われた気がした。
 魔理沙はそれに応じ、大きく声を張り上げる。

「この賢者の石は使えるか? 魔王印で永遠の生命を与えるほどの代物だぜ!」

<……それを用いれば可能であろう。魔に属する物が作った物故、魔の属性に傾くであろうが>

 チルノは表情を崩してはいないが、僅かばかり不満げな思念によって答えた。
 正義と法の神でもあることから、悪に属する魔に傾くことには、思うところがあるのだろう。

「そう。それじゃもう一つ問わせてもらうわ。この妖精の精神はどうなるのかしら?」

 神の不満なぞいざ知らず、霊夢は問いを続けた。
 繋いだ左手にビクリと大きな震えが伝わり、小さな右手の握りしめる力が強くなった。
 霊夢はそれに対し、出来うる限りの優しさを込めて握り返した。

<かの者は全である故、全にはその器の精神も含まれる。ならばこそ、混じり合うといえよう。
 存在の大きさ故、混じり合った後に残るかどうかは意志の強さによるであろうな。
 封印は札を結びつけ境界を授ければよい。ただし、神を従えるほどの力を必要とする>

「……」

 霊夢は目を瞑り口を閉ざし、思考に没頭した。封印の為の力をどう工面するか考えているのか。
 はたまた、妖精メイドの精神についてか……。
 そんな中、今まで無言で見守っていた美鈴が口を開いた。

『封印に必要な力については、私が一臂を仮しますよ。中国では、龍は神を従えていますからね。
 これぐらいの手助けならば問題ないでしょう』

 これで封印の障害となるべく直接的な事項は全て解決した。後は実行に移すのみであるが――



 霊夢は目を瞑ったまま、妖精メイドとの思い出を回想する。
 二人の時間の中で、妖精メイドとの間にあった様々な事が思い浮かんだ。
 最後に妖精メイドの満面の笑顔が思い浮かぶと同時に、瞳を開いた。

 霊夢は膝立ちとなり、今までずっと手を繋いでいた妖精メイドと目線を合わせた。
 そのまましばし見つめてみるが、妖精メイドの方は見つめてはそらす、を繰り返している。
 若干気後れしている様だ。霊夢は微笑を浮かべ、おいでという風に両手を広げた。

 妖精メイドは数瞬躊躇した後、無言で霊夢に抱きつき、霊夢もまた抱き返した。
 四つの瞳には涙が浮かんでいたが、双方とも決して嗚咽は漏らさなかった。
 これは今生の別れではあるが、生まれ変わってまた逢うことができるのだから……



「それじゃ、付けるわね」

 懐から取り出した一枚の御札をリボンとし、髪を手櫛で丁寧に梳いた後、頭に載せた。
 水引の結び方の一つである、決して解けない結び切りを用いて、リボンを結んでいく。
 もう二度と、この様な悲劇が起きないように、一度きりと思いを載せて。



「あとは美鈴の力を借りて、賢者の石ごと御札に結界を張れば、境界は完成ね」

 そういうと、霊夢は結界を張るための、最後の準備を開始した。
 それには妖精メイドも手伝っている。一人と一匹は、何かを吹っ切れたような笑顔だった。

<時が満ちる前に、全ては済むであろうな。
 人の子達よ。妾に最後の審判を下させず、終わらせたもう事、誠に感謝する>

 最後の段階となった頃、それまで沈黙を保っていたチルノが感謝の言葉を述べてきた。
 同じく沈黙を保っていた魔理沙が、暇つぶしを見つけた子猫のように反応する。

「なんだ? 全知全能の最高神様も、この世界が気に入っているのか?」

 からかい口調で魔理沙が尋ねると、先程より若干高い声のような思念で、チルノは答えた。

<然りな。仮の器である『智恵なし者』の生は、妾にとっては森羅万象に勝る興である>

 返答の最後にチルノは無表情から微笑へと、この場で初めて表情を変化させた。



「結界を張る準備が整ったわ」










――Epilog――


 幻想郷は今日も快晴だった。
 幻想郷は平和だった。
 黒い少女は、なぜか胸騒ぎがした……なんてこともなかったが今日も神社に来ていた。

「暑いぜ暑いぜ、暑くて死ぬぜ」
「死んだら、私が妖葬にしてあげるわ」
「折角だし、フランに任せてくれないかしら」
「フランに任すのは、絶対にいやだぜ」

 神社には偶々、気分転換にと緑茶を飲みに来た、紅い悪魔もいた。
 そのときである、3人を脅かす雷鳴の如き腹の音がなったのだった。

「ルーミアね」
「この時間に、相変わらずだな」
「あの娘もつつかれるというのに、めげないわねぇ」
「あれは愛情表現よ。それに同意の上だわ」

 しばらくたっても、ルーミアはやってこない。外の様子を見ると少し離れた位置に、
 不自然な物体が見えた。
 境内の奥の端っこに、大きな黒い球体が転がっていた。

「あら、力尽きているみたいじゃない」
「ほんとだ、昨日もちゃんと食べていたのに……」
「悪魔に成り立てだからかもな。血でもあげれば喜ぶんじゃないか?」
「霊夢の血なら私も欲しいわ」
「馬鹿言ってないで早く回収してきてちょうだい、私は食事の用意をしてくるから――」





 あの後、妖精メイドは器としてルーミアを受け入れ新生し、名実共にルーミアとなった。
 妖精の器、しかも魔王特製の賢者の石を利用した為か、その身は妖怪とはかけ離れた。
 結果、所謂悪魔のような存在となってしまったが、別段本人は気にしていないようだ。
 妖精の精神は無事残っているらしく、私に頬をつつかれ毎日幸せに浸っている。

 レミリアがあの日おかしかったのは、世界の運命が途切れる様を見てしまったからだとか。
 ルーミア新生と同時に世界の運命は修復されたらしく、安堵した後普通の態度へと戻っていた。

 咲夜はあの日のことを覚えていないらしい。気がついたらベッドの上で寝ていたそうだ。
 授けられた淡い光は、新生ルーミアをつれ神社へ帰る頃には消え去っていた。

 パチュリーもさっぱり忘れているようだ。視線を側にいた以前と同じ姿の小悪魔へ向けると、
 人差し指を口の前で立て、朗らかな笑顔でウインクしてきた。

 美鈴は相変わらず門番だった。魔理沙は相変わらずマスタースパークを容赦なく撃ち込み、
 それを受けた美鈴は黒こげになっていたが、三秒後には復活し門前に立っていた。

 チルノは馬鹿――アフラ・マズダー風に言うと、智恵なし者へとすっかり戻っていた。
 元気いっぱいに今日も蛙を凍らせ、大蝦蟇に飲み込まれていく。その様はとても楽しそうだ。



 幻想郷は今日も平和だった。









「そういやなんでルーミアの封印が解けたんだ?」
「あの日紅魔館へ行く途中、リボンが木の枝に引っかかってたから外して結び直してあげたの。
 めんどくさいから蝶結びで済ませたのだけれど、また引っかかって外れたのね、きっと」
「結び方一つで世界の運命が途切れたのね……」
――プロット――

強ルーミア書きたい→紅魔郷を逆にすれば→レミリアより順にキャラ強化→⑨最強過ぎ→ルーミア宇宙化



――このSSの新生ルーミア――

・外見=ルーミア+メイド服+妖精体型(ちびっ子)+悪魔属性(蝙蝠羽+悪魔尻尾)

・性格=ルーミア(そーなのかー)+妖精メイド(ドM)

・種族=宵闇の悪魔(中悪魔)=妖精+ルーミアの一部(暗黒物質っぽい物)+魔王印の賢者の石

・強さ=小悪魔×37×満腹度(%) ※平均満腹度=3(%) ※平均強さ=小悪魔×1.11




――あの日の別視点――

大妖精:実は悪神アンラ・マンユ、チルノとの友情から傍観

フラン:地下でお休み中、割と良い夢っぽい、笑ってる

萃香:境内で酒に飲まれお休み中、割と悪夢っぽい、唸ってる

映姫:割と近くでこっそり浄玻璃の鏡を照らし観覧、キャラが微妙にかぶってる事へ不満を感じる

香霖:薄闇の中、草薙の剣が輝きだしたが、これ幸いと読書の明かりに使用

早苗:異変解決へ向かうも迷子

紫:境界の消滅に巻き込まれかけ全治三日の重体



――あとがき――

お読みいただき、本当にありがとうございました。
至らない点が多すぎるかもしれませんが、どうか温かい目でご了承くだされば幸いです。

書き始め、仮タイトル“郷魔紅方東”でググったら某掲示板のレスが一件該当。
同じ思考回路な人が一人でもいると知り、なんとなく嬉しくなりました。 (2008/08/22)



――あとがき追記――

誤字を訂正するついでに加筆修正しました。
門番隊の皆は詰所で美鈴にお昼寝を命じられていたと言うことにしてください。
美鈴の腹の中にいるなんてことは多分ありません。 (2008/08/23)

誤字、一部表現を修正しました。 (2008/08/28)

玄海月(くろくらげ)
玄海月
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コメント



0.900簡易評価
1.60名前が無い程度の能力削除
なんとも言えない気分になる。
多分面白いって気分なんだろうな……いいぞもっとやれ。
この設定の妖々夢とか永夜抄とか読みたいです。
もうちょいボリュームがあったら嬉しい。
3.80名前が無い程度の能力削除
ド、ドリームソルジャー……
5.80名前が無い程度の能力削除
早苗さんかわいそすつД`)・゚・。・゚゚・*:.。

⑨最強すぎだろ・・・
6.80名前が無い程度の能力削除
妖精メイド乙過ぎるwwwwwwwww
7.60からなくらな削除
早苗が迷子ってのがツボ(笑)
8.50煉獄削除
一応読んだけど・・・ごめん、私はついていけませんでした。
面白いには面白いと思いますが。(苦笑)
9.80名前が無い程度の能力削除
本来の姿に戻った美鈴の寛容に驚いた!
あの日の別視点で笑ったw
>時を惑わされることはないでしょう
で蓮子が頭に浮かんだのは私だけかな?(本編と関係無いですが
11.70名前が無い程度の能力削除
タイトルを閻魔郷と読んでしまい、てっきりえーき様がボスクラスで出てくるかと期待してました。ルーミアでしたか。
場面場面の描写があっさりとさらっと流れていくので薄味だなという感じもしましたが
次につながる話が気になってくる魅力がある話筋ですね。
17.無評価玄海月削除
皆さん感想ありがとうございます。正に舞い上がりそうな気持ちです。
生涯初書きSSだったので、欠点等の指摘もとても為になり、ありがたいです。
簡易もコメントもこれほど嬉しいものとは思いもしませんでした。

>1,11
ボリューム不足を感じさせてしまいすみません。自分でも少し薄いと感じていたのですが、
間、間の描写がなかなか思い浮かばず、文章の肉付けがうまくいきませんでした。
妖々夢や永夜抄はもっと実力を付けてから挑もうと思います。

>8
読んでいただきありがとうございます。
かなりぶっ飛んだ内容なので、私も書きながら人を選んでしまう作品だと思いました。

>9
確かにそう言う感じもしますね。蓮子も飛べたら能力的に加護無しでたどり着けたかも。
21.90名前が無い程度の能力削除
\すげえ/
24.40名前が無い程度の能力削除
私も閻魔境に見えてあれ?と思ったクチです。まあそれはさておき。

最初のギャグ調と後半の断絶が大きすぎるのでは?
ワンクッション無いと読む方が置き去りになってしまうと思います。

また、永遠と→延々と、神を仕える→神に仕える(神を使える?)
など、基本的な点はきちんと推敲すべきかと。
特に後者はどちらとも取れる上に意味が変わるので混乱しました。
30.60等品 骸削除
話を追って行くうちにふと思ったのですが、ルーミアの正体ってデミウルゴス・ヤルダバオトそれともアザトースなんでしょうか?
いや、この話において言及されていないもので。
32.100名前が無い程度の能力削除
ギャグ…で良いんですよね?この作品w
33.無評価玄海月削除
>24
見間違えが多そうなので最初に注意書きを追加しました。(闇魔と閻魔)

確かにワンクッション入れた方がよかったと思いました。(断絶について)
加筆し手を入れてみましたが、多少でも良くなっているといいのですが……

誤字指摘もありがとうございます。神を仕えるは確かに解りづらいですね。
従えるは微妙に違うかなと思ったんですけど、解りやすさを優先し変えてみました。

>30
この作品のルーミアはとにかく宇宙って感じで書きました。
宇宙全体、宇宙内のもの、間の暗黒物質、異世界、精神体、魔力、なんでもかんでも
実はルーミアなんだーというような感じでした。

>32
おそらくギャグで良いと思います。作者的にはスーパーモードでいろいろがんばりました。
35.30名前が無い程度の能力削除
ギャップが激しいと読みにくいです・・・
36.60名前が無い程度の能力削除
冒頭:あんまきょう…?そうか!めーりんのマッサージ修行の旅か!

しかしこの妖精メイドはかわいいですね。ほっぺたぷにぷにしたい。
37.無評価玄海月削除
>35
キャラのギャップも展開のギャップも確かに激しいです。読みづらくてすみません。
私の今の力量では、ルーミアを宇宙と大風呂敷を広げた時点で、夢落ちか担ぎ系、
ギャップは無視して無理矢理にでも畳む、という方式しか思いつきませんでした。

>36
“紅”が“くれない”じゃないから“やみ”はやめとこうと、安易に決めました。
“あんまきょう”と思いついたとき、実は私もそっちの“あんま”を思い浮かべてたり。
ぷにぷにほっぺを見ると、なんとなくつついてみたくなりますよね。
39.80名前が無い程度の能力削除
目の付け所がルナティックw

それをどうにかこうにかして話に纏めたってのはそれだけで評価できるかなぁ。お見事
41.80名前が無い程度の能力削除
好し
42.80名前が無い程度の能力削除
なんか壮大な話で楽しかったです。

ただ言わせてもらえば草薙の剣で読書するなメガネww
43.70名前が無い程度の能力削除
妖精メイドがこんな活躍をするなんて……