Coolier - 新生・東方創想話

秋になる、やや前に

2008/08/15 21:58:32
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 こんにちは、秋穣子よ。
 今、この暑い中に、さらに暑い山の麓の樹海に居るの。ちなみに絶賛遭難中。
 右を見ると樹海、左を見ると樹海、前後上下も樹海。かれこれ三時間は見続けてきた景色ね。歩けど歩けど見えるものに変化は無し。もうどんな方向に歩いているのかすらわからないわ。

「あぁ~……あつい~……」

 樹海の外も暑かったけど、中はよりいっそう暑くなった気がする。……もうほとんど感覚が無くなってきてるから関係ないけど。
 事の発端といえば、お姉ちゃんが「暇だから樹海を散策しよー!」とかって言い出したからなんだけど。

「うぅ……なんで樹海を散策するだけで死にそうな目に合わなきゃいけないのよ……」

 もう泣けてくる。お姉ちゃん一人だと絶対に遭難すると思ったからついていったのに、結局お姉ちゃんとはぐれて私が遭難。お姉ちゃんも多分遭難していると思う。
 ……いや、もう干からびて目も当てられない状態になってるかも。

「のど、渇いた……」

 干からびるとか考えたからのどが渇いていることを再認識してしまったわ……。……考えないようにしてたのに……。

「水、みずぅ…………」

 なんでもいいから水っぽいものを飲みたい……。水分ぷりーず。
 まだ夏なのに、まだ秋じゃないのに、ザ・アッキーである私がくたばるわけにはいかないのに……。

「…………くたばるわけにはいかないけど、私にも限界があるわ」

 もう、ゴールしてもいいよね?
 私はどさっと地面に倒れながら思った。
 明日の天狗の新聞の一面は私が飾ることになるだろう。

「あら……?」




 目を開けると、そこは誰かの家でした。でもって私は布団で寝てました。
 うん、なんで?

「起きたのね?」
「だ、だれ?」

 私は驚いて布団から起き上がろうとして、突然の眩暈に見舞われた。

「今は安静にしてなさい。死にたいなら別にかまわないけど。それと私は鍵山雛よ」

 私は布団へ逆戻りした。

「雛さんね、覚えたわ。……じゃなくて、何者なのか、よ」
「何者……そうね、この樹海の住人とでも言えばいいかしら」
「樹海の住人…………? よくわからないけど私はまだ樹海にいるの?」
「ええそうね。あなたが目も当てられないような状態になる前段階だったから助けたの」
「目も当てられないような状態って……」
「干からびてて、顔が壮絶なことになってて……」
「言わんでいい言わんでいい」
「……もしかして感謝して無いの?」
「いや、感謝してるけど……。というかなんでそこに話がつながるのよ」
「なら助けた甲斐があったわ。ここで感謝して無いなんて言われたら止めを刺さなきゃいけないもの」
「いや、ささないでよ……というか私の意見はスルーなのね」
「私は他人に良かれと思うほうに行動するの」
「だから私を助けたと」
「そういうこと」

 それにしてもここ、あんまり暑くない……。いや、暑いけどなんか少し涼しいというか……。

「そうそう、寝ている間ずっと『みずぅ……みずぅ……透明でつめたくて野菜作りに欠かせないみずぅ……私が愛して止まないみずぅ……』って言ってたから川の水を汲んであなたの布団の周囲にいっぱい置いておいたわ」
「私もあなたもなにやってるの!?」

 見ると私の周囲には水がたくさん入った桶がいっぱいあった。一個だけ緑の髪の桶妖怪っぽいのが見えた気がするけど、目をこすってもう一度みたら居なかったから気のせいだろう。

「家にある桶全部使ったわ。感謝してよね」
「いや……たしかに感謝するけどやる気出しすぎな気がするわよ」
「ちなみにさっき言った止めをさすって言うのはこの水全部飲んでもらうってことだから」
「確かに止めにはなるわ!」
「十秒以内に」
「それは無理よ!」
「じゃあ一分」
「この量だとあんまり時間は関係ないと思う!」
「そうね。まぁ湯飲みは置いておくからのどが渇いたら自分で飲んで。たぶん毒は入っていないと思うから」
「毒入れたかもしれないの!?」
「冗談よ。厄イケル・ジョーダン」
「誰!?」
「まぁ安心して飲みなさい。桶の水のほうには毒は入っていないから」
「湯飲みには入っているの!?」
「冗談よ。厄イケル・ジャクソン」
「後半の人名っぽいのがもはや関係ない!」
「まぁとりあえず水に関してはこれで困らないわね。……外は夕立だし」
「あれ……本当だ……」

 確かにさっきからざざぁと雨の降っている音が聞こえていた。なぜか気づかなかったけど。

「まぁ今晩は泊まっていきなさい。もう夜も遅いし」
「え? じゃあ私って……」
「そうね、軽く五時間は寝てたわね」
「…………思いのほか気絶時間は長かったのね」
「ええ。いつ埋めようかと考えていたところだったのよ」
「今起きてよかった! 本当に今起きてよかった!」
「だから冗談よ。……しまった、もう人名ネタが無いわ……」
「無いなら言わなくてもいいわよ!」

 雛さんは奇妙な人だと思った。なんかよくわからないボケをするし、格好もなんかよくわからないセンスしてるし。
 でも全く危険そうには見えなかった。むしろすごくやさしそうな人に見えた。…………たくさん水を持ってきてくれたし。多すぎだけど。

「そういえばあなた、名前はなんていうの?」
「え? あ、まだ自己紹介してなかったわね。私は秋穣子。稔子じゃないわよ」
「わかったわ。稔子ね」
「…………」
「ごめんなさい。怖い顔をして静かに起き上がらないで、あなたはまだ病み上がりなのよ」
「……まぁそれはいいとして……ちょっとあつかましいかもしれないけどおなかが減ってきたのよ……」

 さすがに神様だなんて言うと相手も緊張しちゃうでしょうし、ここはひとつ人間っぽい演技をしておくことにしようかしらね。私みたいに神様っていうのは別に食事をしなくても生きていけるから、そこらへんの演技をしておけばいいわね。……ちょっと今のは無理やりすぎる気もするけど。

「…………そうね、友達が残していったキュウリ数千本しか無いけどいい?」
「多い多い! しかもきゅうりだけ!?」
「ええ……とりあえず肉野菜類は無いわ。一応果物なら少々あるけど」
「え、選択肢果物だけ……? ……じゃあ果物で」
「キュウリはいらないの? さすがにありすぎてちょっと困ってるのよ」
「いや、別に食べる気分じゃないからいいわ」
「むぅ……。まぁいいわ。いつも持ってくる妖怪は持ってくるといつも百本ほど消費して帰るから」
「消費しすぎ!?」
「そのかわり二百本ほど持ってくるけど」
「もって来すぎだ!」
「これでもかなりの量処理したのよ? 前はこの家が埋まるほどあったんだから」
「いくらなんでも多すぎる!」
「一体どこからそんなに持ってくるのやら……。……まぁ河童だから仕方ないけど」
「あ、友達河童なんだ。なら仕方ないわね」

 一発で納得だわ。

「さて、と。じゃあ私は適当に果物を取ってくるわ。安静にして待てなさい」
「あ、うん。わかったわ」
「適当な果物と……キュウリ三百本ね」
「だからキュウリはいらない!」
「大丈夫よ。私が食べる分だから。…………ここ数日間ずっとキュウリオンリーだから慣れたし」
「…………苦労してるのね」
「ええ……。…………食べる?」
「あ、いや、いいわ」
「……結局断るのね」

 多少気落ちしたような声を出し、雛さんは玄関から外へと消えていった。だんだんと小さくなってきている雨音は雨が止みつつあることを示していた。




「あら、起きたのね」
「え……?」
「帰ってきたらまた寝ているからビックリしたわ。相当寝不足なのね」

 どうやら私は雛さんが食料調達に行っている間にまた眠ってしまったらしい。

「あ、ごめん……ところで今は……?」
「もう朝ね」
「……いろいろごめんなさい」
「大丈夫よ。あなたに五百本ほどキュウリを食べてもらうことになっただけだから」
「本当、ごめん!」
「あ、そうそう。あともう少し起きるのが遅かったら私はあなたを埋めているところだったわ」
「また!? また私は埋められようとしていたの!?」
「冗談よ。みの」
「そこで名前を区切らないで! 虫みたいだから!」
「やっぱり『冗談よ』って言った後は名前ネタに限るわね」
「いやいやよくわからないし! しかもさっき使ってた名前ネタと種類が微妙に違うし!」
「まぁその話は良いわ。とりあえず適当な果物持ってきたけど、食べる?」
「あ、うん。もらうわ」

 そう私が返すと、雛さんは何種類かの果物を出した。

「どれも見たことが無いものね……」
「毒が入るといろいろ変わるからそうなるのよ」
「毒入ってるの!?」
「嘘よ」
「……この食べ物を食べるのにものすごい恐怖を感じたわ」
「まぁそう言わずひとつ食べてみなさいな」

 雛はそういうと置いてある果物の中から肌色っぽい色をしているものを手に取り、私に渡した。
 私はそれを手に取ると、軽く匂いを嗅いでから思い切り噛んでみた。

「…………!」
「どう?」
「今まで感じたことが無い味ね……不思議な感じがするわ」
「正式名称はよくわからないから私は『厄るトの実』と呼んでいるわ」
「や、厄るトの実……?」
「そうよ、厄るトの実。私の大好物。あなたにとっての水のようなもの」
「いや、水はただうなされて言ってただけだから大好物じゃないけど……」

 ネーミングセンス、すごいなぁ……。

「ま、まぁおいしいとは思うわ」
「そう。気に入ってもらえたみたいで良かったわ」

 その後もいろんな果物を食べたけど、どれも味わったことの無い味でしかもそこまで嫌いになるものもなく、とても新鮮な気分になることが出来た。
 聞くと、どうやら樹海にしか生息しないもののようで、雛さんはいつもこれを食べているという。

「……さて、じゃあそろそろ帰るわ」
「そう。じゃあね」
「……………………ね、ねぇ」
「何かしら」
「…………里の側に出たいんだけど、どっちに行けばいいの?」
「ああ、そういえば迷子だったわね」
「…………は、はっきり言うなぁ!」
「マイゴマイゴマイゴマイゴ」
「攻撃するわよ!」
「左に受け流すわ」
「じゃあ上から攻撃するわ」
「…………くっ!」
「え!? 諦めるの!?」
「私は左方向の回転しか出来ないのよ……!」
「何の話!?」
「ちなみに一回転しようとしたら必ず二回転になるから横から追撃する時は注意したほうがいいわよ」
「しらないよ!」

 回転って何の話よ……。

「まぁ送っていくわ。遅れないようについてきなさい」
「あ、うん」

 私のそう告げると、雛さんは家の扉を開いた。そこには昨日見たのとは少し違う景色があった。

「ここ……樹海?」
「あなたの目が滅びの呪文による弊害で壊れた眼鏡のガラスが入ったことによって失明していなければそう見えるはずだけれど」
「いや、よくわからないし。私眼鏡かけてないし。…………それにしても今まで見てきた景色とは違うわ」
「……ああ、なるほどね。まぁ仕方ないわ。ここは樹海の中でも特殊だから」

 家の外には木で出来た天然のトンネルが広がっていた。そしてそれは適度な光を樹海の中にすら入れていて、幻想的な風景を作り出していた。

「今まで知らなかったわこんな場所……」
「まずあなたは樹海の中にたくさん入ったことがあるの?」
「…………そういえば無いわね」
「なら知らなくて当然だわ。数え切れないほど樹海に来ている河童ですら、私が教える前はこの場所を知らなかったんだから」
「ふぅん…………」

 妖怪の山の麓の樹海は広いから、そういうこともあるのだろう。

「あ……………………。……さ、出口はこっちよ。…………二時間ほど歩くけど大丈夫でしょう?」
「あ、うん。大丈夫よ」

 私がそう返事をすると雛さんはうれしそうな顔をした。



 道しるべなんてものは全く見当たらないはずなのに、雛さんは完全に知っているかのように……というか知っているんだろうけど、スイスイと樹海を抜けていった。
 で、二時間後くらい経って、ようやく見覚えがある山の麓の景色が見えてきた。

「じゃ、お別れね。さようなら」
「あ、うん。昨日今日と世話になったわね」
「いいのよ、こっちが好きでやってたことだから」
「まぁ、助けてくれてありがとう」
「取るべき行動を取っただけよ」
「…………それでも、樹海の中だったし。……それにあなたに会えてよかったと思っているわ」
「私に? 私に会ったって何の自慢にもなら無いわよ?」
「そう? 私は自慢になると思うわ。あなたは優しいし」
「優しい? そんなに優しくした覚えが無いけど…………まぁ私は樹海から出たことが無いし、少し感覚がずれているのかもしれないわね」
「樹海から出たことが無いんだ……。……じゃあきっとそうね。……まぁ少なくとも私と会ったことはあなたにとって自慢になると思うわよ?」
「? それは何、ナルシスト?」
「違うわよ! 改めて自己紹介するわ。私は秋穣子」
「知ってるわ」
「イチイチ台詞を遮らないでよ。私はね、豊穣の神をやってるの。助けてくれたお礼にあなたの好きな果物が今年たくさん実ることを約束してあげる」
「……へぇ、実はあなた神様だったのね」
「あら? 驚かないの?」
「な、なんだってー!?」
「わざとらしすぎよ!」
「まぁ私はすごく身近に神様がいるからね……別に今更驚くことは無いわ」
「なーんだ。残念。驚かそうと思ったのに」
「私を驚かすのは難しいわよ。そうね……まず水を操る能力が必要ね」
「なんで!? 関係ないと思うんだけど! ……もしかして水が苦手とか?」
「いえ、別に? それに苦手じゃポロロッカに巻き込まれた時にやていけないわ」
「樹海でポロロッカに!?」
「不思議ね、樹海」
「私はあなたが不思議よ!」

 なんで樹海で海嘯に遭うのよ! 流れてる川も穏やかだし! ……でもこの人なら何でもありえそうだから怖いわ。

「そうそう、樹海にはあんまり近寄らないほうが良いわよ」
「え?」
「樹海には厄神が居て、近づくと不幸になってしまうから」
「あ、その話は聞いたことがあるわ」
「ならなんで近づいたのよ…………。まぁいいけど。じゃ、今度は無いかもしれないけれど、またいつか会う機会があったら会いましょう。みのりん」
「みのりん言うな! ……じゃあね」

 私は挨拶をすると、自分の家のほうに歩き出した。ふと、何かを感じて雛さんのほうを振り返ると、

「あれ? もう居ない」

 行動が早いのかしらね。
 私はその後、何もトラブルに会うことなく無事に帰宅した。




「その厄神はこんなにも近くにいたって言うのにね。私のほうが一枚上手だったみたいよ、にとり」
「ひゅいいいいいいいいいいい!?」
「その驚きようはわざとらしすぎるわよ!」
「あはは。まぁ雛にはばれるかなと思ってたけど」
「あら、なんで?」
「雛は私といっしょにいることが多いし、それに気配とかに敏感だからね。ほら、私が行くとすでに左に受け流す体勢で待ってるでしょ?」
「回ってるのはいつものことよ……」
「それに、雛って私が居ると嬉しそうな顔するからわかりやすいんだよね。家を出た時に少しうれしそうな顔になったからそこら辺でかな? 『あ』とか言ってたし」
「な、なんでそんな細かいところに気づくの!?」
「雛がかわいいから」
「はぅ! ……そ、そんなことはどうでもいいからさっさと行くわよ! まだ今日の厄集めしてないんだから!」
「どうでもよくないんだけどなぁ」
「はぅ!」




「ただいまー」
「あ! みのりこちゃん! 無事だった!?」

 私が帰宅すると、そこに待っていたのは慌てた顔をしたお姉ちゃんだった。…………久しぶりに見たなぁ、慌てたお姉ちゃん。

「うん。無事だった。…………あんたに連れまわされたおかげで死に掛けたけど」
「…………それは……ごめん……」
「別にいいわよ」
「よくないよ……。みのりこちゃん死に掛けたんでしょ? 雨まで降ってきて……私みのりこちゃんがすごく心配だったんだから……」
「神様なんだからそんなに簡単に死ぬわけ無いでしょ? ほら、さっさと元気になる! そんなしょぼくれてるのお姉ちゃんぽくないから!」
「う、うん…………みのりこちゃん、死に掛けてたはずなのになんか元気だね」
「え? ああ、樹海で助けてくれた人──雛さんって言うんだけど──が居たの」
「樹海に人…………? 樹海に人は住んでないはずだけど」
「え、そうなの? お姉ちゃんが知らないだけとかじゃない?」
「ううん。もし樹海に人が住んでいたとしても食料難で生きられないよ。まず人じゃああんな迷路みたいな場所迷っちゃって暮らせないし」

 神様も迷ったけど。

「でもその人においしい果物をもらって食べたわ」
「果物……? 樹海に?」
「うん。樹海でしか育たないものなんだって」
「もっとおかしいねー……。……樹海に居るって言ったら……厄神じゃないかな? ずっとずっと樹海に居るから樹海のことを全部知ってるかもだし」
「え? でもその人、最後に別れるときに厄神がいるからあんまり樹海に近寄らないほうがいいって言ってたわよ? それって要するに自分が厄神じゃないってことで……」
「みのりこちゃん。みのりこちゃんはまんまと騙されたんだよ。結婚詐欺的に」
「結婚詐欺!?」
「嘘ぴょーん」
「帽子の葡萄を全て墓地に送り、効果発動!」
「落ち着こう、みのりこちゃん」
「…………まぁいいけど。で、私が何をどう騙されたの?」
「きっとそのみのりこちゃんが人だと思ってたのは厄神だよ。厄神は自分が危険なことがわかっているから近寄らないようにと注意したんだろうし」
「でもそれだけじゃ本当に厄神かどうかわからないじゃない」
「じゃあみのりこちゃん。その『人』はいつもみのりこちゃんのどのくらい近くに居た?」
「え……と……。あれ? そういえばずっと遠くのほうに居たような……」
「みのりこちゃん、きっとキモがられてたんだよ」
「帽子の葡萄を全て墓地に送り、効果発動!」
「落ち着こう、みのりこちゃん。そのネタは二回目だよ」
「……で、実際は何なの?」
「厄神は厄が移るといけないから、絶対に人であれ妖怪であれ近づかないんだ。……おーけー?」
「う、うん。でも厄って神様にも移るものなの……?」
「そうなんじゃん? 少なくとも私は知らないよー。厄神に会ったことがあるわけじゃないし」
「う~ん……じゃあ厄神はずっと独り?」
「仕方が無いけどそうだね。みのりこちゃん友達になってあげたら? 玉の輿」
「なんで玉の輿なのよ!」
「もう、ゴールしてもいいよね……」
「なんでそれ知ってるの!?」
「みのりこちゃんは寝言ネタが多いなぁ……」
「また寝言!? いい加減しつこいよ私!」
「大丈夫。みのりこちゃんは結婚したら絶対に寝言でいじられるから」
「なんで結婚につながるの!?」
「みのりこちゃん、厄神の玉の輿計画・夏」
「いつの間にそんな計画が!? しかも四季で分かれてるの!?」
「……あ、このまま計画の話を続けるとちょっと根幹部分に触れちゃうからそろそろこの話は終わりね」
「まだ何もして無い気がする! というかどうせなら計画も終わりにして!」
「それは無理。なぜならみのりこちゃんに幸せになってもらいたいから」
「絶対楽しみたいからでしょ……」

 まぁたぶん計画云々は冗談でしょうね。……たぶん。

「……あれ? でも雛さん、河童の友達が居るって言ってたわよ?」
「え? 友達が? ……不思議だなぁ。厄神に妖怪が寄り付くなんて。もしかしてもう既婚?」
「いや、それは知らないけど……。でもその証拠に友達の河童が持ってきたって言うキュウリを食べていたわ。しかも処理の困ってたし」
「……気になるね、その謎。孤独な厄神の心を掴んだ河童、二人の間に一体何が!」
「なんで新聞調? ……でも気になるには気になるわね」
「だよねだよね! じゃ、早速明日にでも確かめに行ってくるね!」
「明日って……早いわね。まぁ、私も行くわ」
「……また迷うよ?」
「でも、私も知りたいから」
「…………! ……へーふーんほー。わかったよ。じゃ、いっしょにいこー!」

 一瞬驚いた顔をしたお姉ちゃんは、次の瞬間にはニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべていた。

「? な、なんで笑ってるの?」
「いにゃー? 別になんでもないにゃー」
「何よその語尾」
「みのりこちゃんの寝言の時に付く語尾」
「嘘!?」
「嘘ぴょーん」
「これはサツマイモ以外の農作物が出るまで、何回でも農作物をドローし、収穫物を集めておく場所に置くスペルカード……。そしてその数だけ、豊穣を司る神様は追加攻撃できる!」
「落ち着いてみのりこちゃん。まずは素数を数えよう?」

 まぁ今は気分が良いから許してあげるわ。…………そういえばお姉ちゃんって……

「そういえばお姉ちゃんはどうして樹海から戻ってこれたの?」
「え? あー……ほら、私って紅葉を司れるでしょ?」
「そうね。…………司れるって言う言葉はあまり聞かないけど」
「だから、今後紅葉する適当な木に出口を聞きつつ出たの」
「……なるほどね」

 それは確かにいい方法ね。……私には出来ないけど。

「…………今度は置いていかないでよ」
「善処しまーす」
「…………すごく心配だわ」

 流石に二度目は無いと思うから、今度はぐれたら死亡確定ね。
 ……まぁ、なるようになるでしょう。



 と、いうわけでその翌日。私はお姉ちゃんと樹海来たわけなんだけど、

「見つかったお姉ちゃん?」
「んー……」
「どっち?」
「んー……」
「……日本語喋って」
「んんーんー!」
「……何勘違いしてるのよ。まだ私のスペルカードはまだ終了していないわ。即効スペル発動! 穀物神ソウル!」
「ごめんね。謝る」

 お姉ちゃんが木々に厄神の行方を聞いてもわからないらしく、捜査は難航していた。

「一体どこにいるのよ……」
「むぅー……ねぇみのりこちゃん、ぶっといレーザーで樹海なぎ払えない?」
「できたら最初に来た時にやってるわ」
「だよねー。……チッ」
「まず一個目、ドロー!」
「次の木はどれにしようかなー」
「……まぁいいけど。…………そういえば雛さんの家があったのは特殊な場所だったわ」
「へー? どんなとこ?」
「そこだけ木が薄くて、光が入ってきてたわね。綺麗だったわ」
「ふーん…………ねぇねぇウッドさん」
「今はじめてそうやって聞いたわよね! というかウンドさんって!?」
「この樹海に木がうすーくなってる場所ってある?」
「無視かい……」
「ふんふん……」
「どう?」
「あ、今日誕生日なんだ。おめでとー」
「嘘!? というか話に何の脈絡も無い!」
「へぇー…………。え? シスコン? あはは、死なない程度にね」
「何の話!? しかも気になる単語が!」
「あ、みのりこちゃん。わかったよー」
「今の会話で!?」
「ここから右に五歩、前に三歩歩いたところに埋まってるって」
「何の話よ!」
「え? 厄神だけど……」
「嘘ぉ!」
「嘘ぴょーん」
「この紅葉野郎……」
「ごめん、謝るから怖い顔して接近しないで!」
「いい加減にしてよ! 結局わかったの!?」
「あ、うん。もう一時間前くらいに」
「……………………」
「落ち着いて。その石は人や者や妖怪を殴るためにこの世に生を受けたんじゃないはずだよ」
「じゃあこの一時間何やってたのよ!」
「樹海の木々と雑談を……」
「もー! お姉ちゃんやる気ある!?」
「そりゃあもちろん。だからみのりこちゃんが迷わないようにゆっくりと目的地まで進んだんだから」
「え? ま、待って、じゃあ」
「あれー? 気づかなかった?」
「お姉ちゃん……」
「まったくー。妹の世話は疲れるなぁ」
「お姉ちゃん……」
「姉として妹に少し気を使っただけだよ」
「お姉ちゃん……いくらなんでもそんなに迷いやすいわけ無いでしょ!」
「あれ!? 感謝されてない!?」
「当たり前よ! 私を何だと思ってるのよ!」
「私のかわいいちょっとおバカな妹」
「ちょっとおバカは余計よ!」
「じゃあ私のバカ」
「略しすぎよ! 何その自分バカ宣言!」
「そうだなー……私の妹はバカ。これでどうだ!」
「スペカセットするわよ!」
「むぅ……。難しいね」
「何も難しく無いわ!」
「ごめんね。稔子ちゃん」
「……………………」
「……ごめんなしずは」
「コロス」
「きゃー! 待って待って謝るよー!」
「ナマエ、ソウマチガエルヤツ、コロスベキ」
「お、落ち着こうみのりこちゃん! もう少しで愛しの厄神に会えるんだから!」
「は!? な、なによその愛しのって!」
「え? 違った?」
「違うわよ! なんで私が雛さんのこと好きってことになってるのよ!」
「いや、話の流れ的に……」
「どんな流れよ!」
「思わぬ厄神の優しさに触れ、恋心を抱いてしまったみのりこちゃんは、厄神既婚疑惑の真相を知るため、ぱーふぇくとでぷりてぃーな姉と共に樹海へと入るのであった……」
「普通に河童の友達について聞きに行くだけなのにとんでもない誇張入ってる!? というか自分の部分の表現があまりにも誇張しすぎよ!」
「まぁまぁ。あと三十歩ほど歩いたらそこにみのりこちゃんの捜し求めていたものがあるんだから」
「え、嘘。そんなに近いの?」
「うん。ウッドさんの言ってたことが嘘じゃなきゃねー」
「…………」

 ま、まさか知らぬ間にそんな近くまで来ていたとはね……。
 私は樹海のうっとおしい木々を押しのけつつ、前へ前へと進んだ。

「あ……れ?」

 やや木々を押しのけると、そこは木の無い広々とした場所だった。見上げると晴れ晴れとした青空も見え、川もあった。そしてまるで樹海じゃないかのような錯覚を覚えもした。

「いた……」

 そんな場所に雛さん──厄神はいた。舞を踊るようにくるくると回り、体の周囲に黒い、霧のような、水の塊のようなよくわからないものが、厄神の回転に沿うように渦を巻いて浮いていた。

「へー……。あれが?」
「お姉ちゃんの予想が正しいなら……」
「ふんふん。なるほどねー。あ、とりあえず声かけてみよっか」
「あ、うん」

 そんな小会話をし、雛さんの近づこうとしたところ、

「ちょーっとそこの二柱ー!」
「!?」
「おお?」

 急に目の前の妖怪が現れた。

「今雛は厄を集めてる最中だから近づいちゃダメだよ。ひっくり返された亀のごとく手足をばたつかせてもがき苦しむ事態になっても良いなら別に良いけど」
「だ、誰!?」
「もしかして河童さんかな?」
「あれ? わかった? さすがは秋の神様」
「えっへん」
「とりあえず自己紹介。谷河童のにとりちゃんと巷で有名な河城にとりです。職業は雛の友達以上恋人未満、趣味は機械と雛をいじることです。よろしくつかまつります」
「ちょっと待ちなさい! 今の自己紹介で数点突っ込みたいと思うと部分があるわ!」
「え? 何かおかしいところでもあった?」
「大アリよ! まず職業の部分よ! 友達以上恋人未満は職業じゃないわ!」
「私公認の職業だよ?」
「自分で公認したって意味無いわ! それと、趣味の部分になんで雛さんをいじるっていうのが入ってるのよ!」
「あ、さりげなく入れたけどバレた?」
「当たり前よ!」
「バレない自信はあったんだけどなぁ……」
「いったいどこから来た自信よ……」
「まぁとりあえずそんなわけで雛の厄集めが終わるまでゆっくりしていってね!!」
「え、ええ」

 今一瞬顔がすごいことになったような……。

「わかったー。ゆっくりしていくよ!!」

 お姉ちゃんも!?

「じゃ、私は川の中にいるから、何か質問があったら話しかけてね」
「はいはいっ! 質問です先生!」
「あ、ちょっと待って。川に入らないと焼死体になっちゃうから」
「わかりましたー」

 なるわけないでしょ。

「ふぅ~……。やっぱり水の外は辛いよ……」
「あ、今年暑いもんねー」
「うん…………あ、ところで質問って?」
「あー……厄神──雛ちゃんだっけ? あ、ちなみに私の名前は秋静葉。そっちのみのりこちゃんの偉大なるお姉ちゃんで、紅葉の神様だよ──とにとりんちゃんの馴れ初めを……」
「自己紹介の挟み方が無理やりすぎる! …………一応私も自己紹介しておくけど、」
「あ、知ってるから良いよ。……私と雛の馴れ初め……? ちょっと恥ずかしいなぁ……」
「最後まで言わせてくれない!?」
「いいじゃんいいじゃんー」
「え、えーとね、私が樹海のここみたいな所を通りかかった時なんだけど」
「しかも無視された!」
「うんうん」
「雛は倒木をベンチのようにして座ってたんだ」
「ほうほう」
「……もういいけどね……」
「そして雛は私を見て言ったんだ。『回らないか』って」
「うほっ、いい厄神?」
「うん! まさにそれ!」
「んなわけないでしょ!」
「私は雛の回転を見て思わず『すごく……厄いです……』って漏らしたよ」
「そう言っていると突然雛ちゃんはにとりんちゃんの見ている目の前で厄を集め始めたんだね?」
「うん……。それ以来私と雛は親密な仲になったんだ」
「なるほど……納得だよ……」
「どこにも納得できる要素が無いわよ!」
「で、実際は?」
「んー……たまたま会って、厄でウヴァーってなって、アームをのばして、で、親密な仲に……」
「すごくアバウトだ! しかもアームをのばすってなに!? 関係あったの!?」
「あの時アームをのばすのに失敗してたら私は今ここにいなかっただろうなぁ……」
「そんなに重要な事態!?」
「あー……なるほどねー」
「お姉ちゃん理解!?」
「静葉、私達気が合いそうね」
「うん、とっても」
「何か仲良くなった!」

 でもこの二人の気が合いそうなのはわかる気がするわ。
 私はため息をついてそこに座った。

「にとり、一通り終わったわよ」
「あ、雛お疲れ~」

 気づいたら厄集めを終えた雛さんがそこにいた。

「そちらの方は……?」
「あ、紅葉を司る神様で、秋静葉って言いまーす。よろしくねー」
「私は厄神の鍵山雛よ。よろしく」
「ちなみにみのりこちゃんの完全無欠なお姉ちゃんでーす」
「みのりこ……? ああ、」

 雛さんは私のほうを向くと、

「来ちゃいけないって言ったのに来たのね?」

 やや諦めたような声でそう言った。

「い、いけないなんて言ってないじゃない」
「……似たようなもんでしょ。まぁ前に同じような河童がいたからいいけど」

 私はにとりさんの方を見た。にとりさんは同じタイミングでわざとらしく顔をそらした。というか思い切り首を振りすぎたのか痛がってる。

「で、私に何か用なの?」
「あ、それはお姉ちゃんが……」
「あなたは?」
「え?」
「あなたは私に何も用が無いの?」
「え、えーと……あるような無いような……」
「はっきりしなさいよ……」
「あ、雛ちゃん、」
「何かしら?」
「みのりこちゃんはね、雛ちゃんに恋しちゃったから告白に来たんだよ」
「は……? はぅっ!?」

 雛さんは言われた瞬間すごく赤くなった。

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん! 何言ってるのよ!」
「真実を伝えた後ってすがすがしい気分だね……」
「しんっ……! 何の話よ!」
「お姉ちゃんは知ってるよ」
「何を!」
「あの日、雛ちゃんに助けてもらった時、ドキがムネムネしてたみのりこちゃんを」
「してないわよ! まず助けてもらった場にお姉ちゃんいなかったし!」
「千里眼だよ」
「天狗じゃないんだから!」
「じゃあお姉ちゃんだから知ってるんだよ」
「何その理由!」
「…………ねえ、もしかして私の雛を奪おうとしてる?」
「ひぃっ!?」

 そこには背後にポロロッカを控えた河童さまがいなすった。

「私から雛を奪うというなら、神様といえど死を覚悟したほうがいいよ。即死を。大切なことだから二回言いました」
「二回目でグレードアップしてるけどね!」
「奪わないって言うなら第一回神河童雛会談をして、その後殺めることにするよ」
「結果的に私は殺されるの!? というか何その会談のネーミング! 雛さんも神さまだよね!」
「まぁ私も河童だからね、選択肢を出すよ」
「え? 選択肢って?」
「一、素直に死ぬ」
「最初から直球だ!」
「二、謝ってから死ぬ」
「あんまり変わらない!」
「三、死ぬならせめて雛を奪ってからとか言って、行動を起こそうとしたところをキューカンバー」
「何キューカンバーって!? 私何されるの!? というか行動起こさないから!」
「四、小さなスプーンですごく大きい桶に満杯になるまで水を入れ続ける」
「入れているうちに蒸発必至!? 果てしなすぎるわ!」
「五、『私、この会議が終わったら雛と結婚するんだ』と、言う」
「フラグ!? というか今の状況からしてそれ即死フラグだよね!?」
「六、神に祈る」
「私! 神私!」
「まぁざっとこんなもんだね」
「ほぼ全部において私の死が確定してるんだけど!?」
「にとりんちゃん」
「? まさか邪魔するの静葉」
「……! お姉ちゃん助け──」

 そうだ、私にはお姉ちゃんが──

「…………いい、センス……!」
「谷河童は獲物を逃がさない……!」
「裏切ったなこの野郎!」

 なんてこった! 味方はいないのか!

「…………! あ、そうだ……」

 雛さんだったら! さっきからまったく話してない雛さんだったら私を助けてくれるかも……!

「雛さ──」
「おおっとオータムゴッド。この状況で雛に声をかけることが己の運命にどう影響するのかわかってるはずだよね」

 くそっ! やられた! 味方になってくれるかもしれないのに!

「ほら雛、もうそろそろ落ち着いて。あのエネミーだって雛に告白する気は無いって言ってるんだから」
「私敵扱い!?」
「え、ええ……」

 雛さんまだ赤くなってたんだ……。

「さ、じゃあ早速『ドキドキ・雛神判』をはじめるよ」
「何そのネーミング!」
「えーと、被告人秋穣子には原告鍵山雛を誘惑した疑いがある」
「雛さんが原告!? というかどこで誘惑したの!?」
「意義ありー!!」
「ん? 何かな静葉弁護士」
「あ、いえ。言ってみたかっただけですー」
「では、死刑に異論は無いか?」
「え? いつの間に死刑に決まったの?」
「ないでーす」
「お姉ちゃん本当に私のお姉ちゃんだよね!?」
「では、被告人秋穣子を雛誘惑罪でポロロッカアームの刑に処す!」
「何それ!」
「ちょっと待って!」
「雛さん……」
「それならにとり、あなたも死刑よ!」
「そっち!?」
「う、うわああああああああああああああ!」
「なんか頭かかえて暴れだした!」
「ぐ、ぐふっ……やるね雛。さすがは私が認めた雛」
「え? なんで雛さんの名前が固有名詞じゃないみたいな言い方なの?」
「私も受けに回るだけじゃないの。カウンターの一発や二発は簡単よ」
「だけどね雛、」
「何かしら?」
「私は雛誘惑権を持っているから罪にならないのさ!」
「「何それ!?」」

 思わずハモったよ! 何その無理やりな理屈!

「ハモるなんて……妬ましい……」
「何嫉妬してるの!? というか主にハモったのにとりさんの所為だし!」
「私から雛を奪おうとしたあげく、罪を擦り付けるとは……万死に値する!」
「勘違いされただけなんだから万死に値しないわよ! とりあえず落ち着いて!」
「落ち着けるはずが無い!」
「にとり、落ち着きなさい」
「あ、うん」
「何この差!」
「みのりこちゃんだから」
「ひどい! というかなんでお姉ちゃんが答えるの!?」
「いや……会話に混ざりたいなって」
「無理やり混ざらなくていいから!」

 なんだろう。私いじめられてるのかな?

「まぁいいわ。そろそろ本題に入ってくれるかしら、静葉さん」
「あ、うん。わかったー」
「最初から入ればよかったじゃない……」
「だっておもしろくないじゃん」
「別に面白さを求めなくてもいいから……」
「えーと、厄神に友達がいるっていうのが気になっただけなんだよねー」
「悪いかしら?」
「いや? むしろいいことだと思うよー。私も前から友達になりたいなって思ってたし。まぁタイミングがよくわからなかったからお近づきすら出来なかったけど」
「…………」
「でさ、どんな感じで友達になったの?」
「…………別に、私は……」
「えーとね、樹海でたまたま雛に会ってね、その時いろいろあって私が友達になろうって雛に言ったのさ」
「…………」
「雛も最初は厄がうつるからって拒否してたんだけど、最終的には私の強いアプローチによって友達になってくれたってわけさ。めでたしめでたし」
「なるほどねー。よーくわかったよー」
「……ねぇ」
「なんだい?」
「にとりさんはなんでそんなに友達になろうとしたの?」
「…………」
「あ、いや、別にそれがダメとかじゃなくて、ただちょっと理由が気になって……」
「私が二回目に雛に会った時ね、雛はとても寂しそうな顔をしていたんだ。それを見たときにどうしても友達になってあげたいなと思ったんだよ。たとえ厄が私を不幸にしたとしてもね」
「…………」
「へぇ……」
「にとり…………」

 にとりさん、すごく優しいんだなぁ……。

「どう雛、惚れた?」
「今ので全部台無しだ!」

 言わなきゃ絶対好感度上がってたのに!

「あ、あはは。まぁいろいろわかってスッキリしたよ。ありがと」
「これくらいならお安い御用さ」
「でさでさ、」
「ん? なんだい?」
「私たち姉妹も友達ってことでいいかな?」
「…………もちろんだよ。全然大丈夫だよね、雛」
「……ええ、別に」
「やたっ! じゃ、よろしくねにとりんちゃんに雛ちゃん! ……ほら、みのりこちゃんも」
「え? あ、うん。よろしくね」

 ええと……まぁよくわからないけど友達になれたみたいね。……めでたし、かしら。



 それで、その後も四人でワイワイと話した。始終私と雛さんはツッコミをやってたけど。
 やがて夕方になって、暗くなる前に樹海から出ることにした。
 私とお姉ちゃんは雛さんとにとりさんにさよならを言って帰った。最後のにとりさんの「空を飛べるのなら川の上を行けば山か里のどちらかに着くよ」というアドバイスのおかげで、またここに、今度は一人でも来れそうだった。

「ねぇみのりこちゃん」
「ん……なに?」
「今日楽しかったね」
「ええ、そうね。私はほとんどツッコミやってた気がするけど」
「ま、楽しかったからいいじゃん」
「そうねー……。すごく楽しかったからいいわ」
うわおー! 夏コミまでに間に合えばいいかとかって思ってたらすごくギリギリになってしまったー!
どうも、無駄にネタがしつこく、前回よりさらに甘さ控えめとなった四回目になります。メガネとパーマです。
実は今回、サナエチャーンの話を書こうと思ったのですが、ちょっと行き詰ってきたので別のを書いて気を紛らわそうと思い、書いたところ、気づいたらネタが止まらず結局こっちを先に書くことにしました。
書いてて結構長くなってしまいましたが、まぁにとりとの出会いを書いた話も結構長かったので自分の書く出会い系SSとしては結構妥当な感じになったかなと思います。
それにしても会話文が異常に多い……。
ちなみに静葉お姉ちゃんの口調とか性格とか能力とかはかなり自分の勝手な想像です。確か風神録のオマケテキストには静かとか書いてあったのでキャラ自体違ってる気がしますし……。あと、雛が回転する時、最低でも二回転するのは(私が確認した中では)本当です。ちなみに回転するのは移動する時が多いです。というか移動時に回転しない時が滅多にありません。最初に登場する時や会話シーンではすごく回転してますが。もっとも、私の確認なので例外はあるとは思いますけど。
あと追記することは……あ、最初に穣子が雛と会って、別れるときに何かを感じたっていうのは、雛が穣子に少しついてしまった厄と、もともとあった厄を取ったからです。だから穣子が静葉と次に樹海に入った時にははぐれませんでした。……あれ、厄って結局神様にうつるんでしょうかね……?
……あと、最後まで疑問だったんですが、神様って暑さで倒れるんですか?

さて、次のSSはいよいよサナエチャーンの話になります。
これは話の内容的に雛とかにとりとかの皆勤が切れる可能性が……。
とりあえずいろんな人妖のキャラが崩壊している可能性がありますが、まぁよければ見ていってください。

<オマケ>
「ねぇ雛」
「何かしらにとり」

 私とにとりは星が綺麗に見える山にある丘に来ていた。
 最初に会ってから、何度も何度も足を運んだなじみの場所だ。

「よかったね、友達が出来て」
「まぁ……ね。悪い気はしないわ」
「もう、雛は正直じゃないんだから」
「な、なによ。別にいいじゃない…………それよりもにとり、静葉と仲よさそうだったわね」
「なに? ヤキモチ?」
「なっなな、ち、違うわよ!」
「雛はわかりやすいなぁ……」
「だ、だから違うって言ってるでしょう!?」
「……大丈夫だよ。私は雛一筋だから」
「はぅ! な、ななな……!」
「それに今回だって雛を渡すまいと必至にがんばってたでしょ?」
「あ、あれは冗談でやってたんじゃないの!?」
「雛、」
「な、何!?」
「私は雛が好きなことに関して言う時は絶対に冗談じゃないよ」
「はぅ!」
メガネとパーマ
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コメント



0.320簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
グレイトww
3.70からなくらな削除
コミケに間に合ったかといえば、同人の二日目には間に合っているからセーフ
神に厄がうつるかは知りませんが、ずっと幸せが続く存在はありません
暑さで神が倒れるか・・・どうでしょう
まあ、東方Projectの神は、倒れると思います。なんとなく
次回作も期待
4.90煉獄削除
私は地霊殿体験版やったことないから解らないけどキスメが・・・出てた?w
いや、しかし雛と穣子のやりとりは面白かったです。
次回も楽しみです。
6.70名前が無い程度の能力削除
冒頭から吹きましたw
東方の神様は暑さでぶっ倒れるぐらいは平気でやってくれそうですね。
7.70名前が無い程度の能力削除
雛かわいいよ雛
穣子様の八割は突っ込みで出来てますw
笑わせてもらいました。
8.70名前が無い程度の能力削除
この3人はなんとなく同格くらいの神様(洩矢家レベルだと神格が上すぎるだろうし地底レベルだと…だろうし)だと思うので
仲良くなれるんでないですかねえ。
なんとなく庶民的な神様ズのおたわむれに親近感がわきました。
11.90名前が無い程度の能力削除
はぅ!!
12.80名前が無い程度の能力削除
みんな可愛らしくていいなぁ・・・w
ノリが楽しげで面白かったです。