Coolier - 新生・東方創想話

てゐもこ!

2008/08/05 16:15:44
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全体的にキャラ壊れてるかも。




















 「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!!!!!」


 迷いの竹林奥深くにひっそりとたたずむ屋敷、永遠亭。

 辺りに漂う厳かな雰囲気をぶち壊すかのようなてゐの叫び声が、突如として響き渡った。
 
 朝風呂上がりらしく、まだ寅の刻だというのに頭からはほこほこと湯気が上がっている。

 そして、ブルブルと震えるその手には一枚の紙が握られていた。


 『    しばらくソレを着ていなさい     てるよ 』


 てゐはゆっくりと、いつも脱いだ服を入れている籠(この紙もそこにあった)から何かを持ち上げる。

 淡い、レモン色をしたエプロン一着がのみ。


 「・・・・・・」


 てゐは今、素っ裸である。

 服を取り上げられているのだから当然と言えば当然なのだが。

 つまり――


 「裸、エプロンになれ、と・・・?」


 てゐの耳が徐々に赤くなってくる。

 今までにも輝夜に理不尽な命令をされたことはあるが、これは度が過ぎていた。

 さらに言えば、てゐはいつも悪戯する側の人間である。

 相手を騙すことは得意でも、イジメには慣れていないのだ。


 「私、何かしたか?」


 だが、ここで屈するのはてゐのプライドが許さない。

 何か打開策は無いかと思考を巡らせる。

 集中することにより羞恥心も薄れ、頭の回転が良くなったところで――


 「ふぇっくしょいぃ!! ・・・いかん、湯冷めした」


 とにかく、服を取り替えそう。

 ずるずると鼻をすすりながら、そう結論づけた。













 大きめのタオルを体にしっかりと巻き、隠すところは隠した素兎がぺたぺたと廊下を歩く。

 無論、輝夜の部屋に向かっているのだ。

 永遠亭は相当広いが・・・飛ぶなどできない。

 パンチラなんて可愛いものじゃなく、ケツもろである。


 「うぅ~・・・!」


 こうも屈辱を受けて、てゐは内心穏やかではない。

 思いっきり叫んで鬱憤を晴らしたいところであるが、まだ朝早いとはいえ料理担当の兎などは既に起きている可能性がある。

 見つかれば、ぅん千年とかけて築き上げた今の自分の地位が危ない。


 「糞、あのニートめぇ・・・」


 ぶつぶつと文句を漏らしながら進む。

 今のてゐを支えているのは、主人への不満だけだった。

 そうでもしていないと顔から火が出る。

 ――だから、てゐは気付かない。

 『てるよの部屋』と札が下げられた部屋の前までたどり着いてもまだ、気付かない。

 輝夜は兎達に友好的で、そしてそれはてゐに対してもそうであるということ。

 輝夜の命令はいつも、大変ではあっても最後にはお互いが楽しめるものだったということ。

 そしてなにより――


 「姫ーーっ!!!」


 スパン、と勢いよく襖を開ける。

 まずてゐの目に入ってきたのは、部屋の真ん中に綺麗に敷かれた布団。

 次に、何故か部屋の入り口近く、布団からずいぶん離れて眠る永遠亭の主。

 そして、見覚えのある・・・


 「・・・・・・あるぇー?」


 だらだらと冷や汗が流れ始める。


 (えーっと、昨日は確か・・・)


 ――そう、このニートを毎朝起こして・・・いや、昼か。

 とにかくこのニートを毎日起こしに来るレイセンに罠を仕掛けたんだった。

 部屋の糸に引っかかると上から金だらいが・・・


 「・・・・・・」


 もう一度部屋を見渡す。

 布団。

 てるよ。

 愛用の金だらい。

 タンコブ。


 「やっちゃったウサ☆」

 「あらあらてゐ、ご機嫌ねぇ?」

 「ウサ!?」


 ガッと肩を掴まれる。


 「ぬ、ぬるぽ☆」

 「順番が逆よ」

 「チッ」


 振り向かなくても分かる・・・永琳だ。

 永琳は輝夜に忠誠を誓ったゾッコンである。

 これの仕返しに、服を奪ったのも恐らく永琳だろう。

 ここでようやくてゐは思い出す。

 裸エプロンなどという趣向の持ち主は、永遠亭に一人しかいないということを。

 体の向きを無理矢理変えられ、目を合わせられる。

 笑顔だが、目が笑っていない。


 「てゐ?」

 「な、何ウサ」

 「あなた、姫様に悪戯するなんてどういうつもりかしら?」

 「いや、あれはニートを狙ったんじゃないウサ! あれはレイセンを嵌めy」

 「ニー・・・なんですって?」

 「しまった、つい本音が!?」

 「へえぇ・・・」


 永琳が笑顔で迫ってくる。

 目以外も笑っていない。

 ついでに首も絞められる。


 「う、う゛ざ・・・」

 「あらいけない、手から力が抜けないわ。どうしましょう」

 「い゛、いや゛、違うウサ! ニートなんていってないウサ!」

 「じゃあ、ホントは何て言ったの?」

 「え、えと・・・姫様かわいーな゛っ!?」


 首を絞める手に力を込められる。


 「ニー、何て言ったのかしら?」

 「や、や゛めで! ゆ゛るめ゛で!」


 選択肢はないらしい。


 「えほ、げほ・・・」

 「ほら、早くなさい」

 「え、ええと・・・ニー・・・」

 「ニー?」

 「ニー、ソバット?」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「そう・・・」


 永琳が手を離す。


 「し、死ぬかと思った・・・」

 「てゐは、私に思いっきり蹴られたいのね?」

 「は!? いや、全然そんなこt」

 「あら、やっぱりニートって言ってたような気がしてきたわ」

 「どうぞ蹴ってくださいウサ」


 嗚呼、『ニーソバット』で許してもらえるわけないよね、そりゃそうだよね。

 けどまあ、蹴り一発なら安い方か。

 そう思い、永琳が蹴りやすいように四つん這いになる。


 「あらあら、てゐ。色々と丸見えだわ」

 「忘れてたーーーー!!!!!」


 修羅場の所為で完全に失念していが、今、タオル一枚だった。

 というかコイツ、絶対こうなるって分かってて『蹴る』なんて言いやがったな。


 「ふふ、これはお仕置きが必要ね」

 「え、ちょ、ちょっと待つウサ!」

 「ふん!」

 「無視ー!?」


 最後の砦、タオルを剥ぎ取られる。

 スッパ兎、略して素兎(すうさぎ)。


 「何するウサ! 早く返せ・・・というか、私の服返せ!!」

 「お仕置きって言ったでしょ? これでも着てなさい」

 「ん? おお、私の服と同じ色・・・ってやっぱエプロンなのかよ!!」

 「だが律儀に着る」

 「うるさい!」

 「可愛いわよ?」

 「嬉しくないウサ!」

 「さて、次のお仕置きよ」

 「え、今ので終わりじゃないの!?」

 「まだ蹴ってないじゃない?」

 「詐欺ウサ・・・」

 「あなたが?」


 もういいウサ、と呟き再び四つん這いになるてゐ。

 永琳は思いっきり足を振り上げ、


 「行くわよ! ドライブ! シューt」

 「かかったな! アホめが!」


 瞬間、てゐが地を蹴る。

 盛大にすっころぶ永琳。

 ――成功した。

 後はこのまま逃げて、他の兎達の予備の服を調達する。

 お気に入りの服を見捨てるのはもったいないが、永琳相手じゃ仕方がない。

 ほとぼりが冷めるまでどこかに隠れていよう。


 「やーいやーい、永琳のばーか! 私がそんな簡単に反省するわけないウサー! 永遠にニートの尻ぬぐいでもしてるウサ! あばよー!!」


 今は恥ずかしいだの見えるだの言っている場合ではない。

 部屋を一気に駆け抜け、開け放たれた襖から廊下に飛び出し――


 「あれ?」


 てゐの目の前には、先ほど飛び出したはずの輝夜の部屋が広がっている。

 振り返ると、廊下。

 もう一度振り返ると、ドアップの永琳。


 「げ」

 「A-LINK・・・」

 「ご、ごめんなs」

 「ナッコォォォォォォォ!!!!!!!!」

 「ウサーーーーーー!!!!」


 強烈なアッパーカットを喰らい、廊下から外にぶっ飛ばされるてゐ。


 「うどんげ!」

 「はい、師匠!」


 波長を操り、今まで身を潜めていた優曇華院が姿を現す。

 先ほどもてゐの波長を狂わせ、幻覚を見せていたのだ。

 素早く狙いを定め、小さくなっていく肌色の影に一発の弾を放つ。

 数瞬後、影はびくりと体を跳ねさせ、失速して竹林へと落ちていった。


 「命中?」

 「後ろを見せた相手に外す筈がないですよ」

 「さすがね・・・ところでうどんげ」

 「? はい、師匠」

 「あなた、鼻血が出てるわよ」

 「あ! いえ、これは・・・・その・・・」

 「さっき私が転んだとき、見たのね?」

 「・・・・・・はい」

 「まったく、悪い子ねえ」

 「うう・・・すみません」

 「あなたにもお仕置きが必要かしら?」

 「え? ・・・あ、はい・・・♪」

 「ふふ・・・ほら、早く中に入りなさい」

 「はい、師匠♪」




























 「あいたたたた・・・」


 迷いの竹林の中。

 てゐは痛むお尻をさすりながら、当てもなく歩いていた。


 「これからどうしようかな・・・」


 永遠亭にはしばらく戻れない。

 ・・・自分が逃げ出した後、戻る気を無くすために永琳に暴言を吐いたのが裏目に出た。

 永遠亭以外で、服を頼めるような相手もいない。


 「野生にでも戻ろうかなあ・・・」


 ってそれはいかん。

 竹林の中でそんなことをすればすぐに永琳に見つかる。

 かと言ってエプロン一丁のまま遠くに行くのも・・・


 「何かないかなー・・・」

 「春ですよー」

 「はあ~・・・」

 「はーるでーすよー」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「ぐへへ、目の抱擁ですよー」

 「何ぬかしとんじゃ、われぇ!!!!」


 どこに隠し持っていたのか、愛用の杵を取り出し振り回し始める。

 バコンと小気味の良い音がして、リリーは顔面から地に叩き付けられた。

 気絶したらしく顔を地面に埋めたまま動かない。


 「・・・こいつ、口封じしとかないとまずいかな?」


 しばらく思案して、


 「そーだ」


 大きめの葉っぱをちぎり、爪で文字を刻む。

 ソレをリリーの服に、文字が見えやすいように括り付ける。

 そして、


 「タイガ~~~・・・」


 杵を大きく振りかぶり、


 「ウッッズ!!!!」


 ゴルフの要領でリリーを空高く打ち出した。


 「うん、風向き、角度、パワー、どれをとっても完璧」


 自らの仕事ぶりに満足げに頷くてゐ。


 「って、身ぐるみ剥いどきゃよかったーーーー!!!!!!」


 なんでもう少し早く思いつかなかったのか、と少し落ち込む。

 だがまあ、これでするべき事は分かった。

 誰かが通りかかるまで待ち、服と金を奪う。

 耳を隠して人里に行けば、しばらくは何とかなるだろう。

 その後は・・・まあ、その時考える。


 「っし、やるぞー!」


 気合いを入れる。

 だが、朝から何も食べていない腹が盛大に鳴る。


 「・・・・・・」


 どっかにニンジンとか生えてないかな。





























 「うう、不味い・・・」


 生のタケノコをボリボリと囓りながら、てゐは林道の近くに身を潜めていた。

 既に太陽は真上を通り過ぎてしまっている。

 正確には分からないけど、申の刻ぐらいかなー、とぼんやり思う。


 「くそ、早くまともな物食べないとつらい・・・」


 てゐにとって誤算だったのは、迷いの竹林に人が滅多に来ないことだ。

 普段ならすぐ気付きそうなものだが、やはり今のてゐは色々といっぱいいっぱいのようである。

 もう諦めて永遠亭に帰ろうかなどと、弱気な意見まで出てくる始末。

 だがそのとき。

 ザッ・・・ザッ・・・


 (キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!)


 草を踏み分ける音。

 興奮する心を落ち着け、息を殺す。

 段々と近づいてくる足音のリズムに合わせる。

 そして、


 「うおらあぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 先手必勝。

 気付かれる前に自ら飛び出し、杵による一撃を繰り出す。

 だが、てゐの一撃はあっさり掴まれてしまう。

 
 「うおっと!! 何すんだ・・・ってお前、何してんの?」

 「げ! も、妹紅!?」


 藤原妹紅。

 輝夜とまともに殺り合うほどの実力を持つ。

 つまり、全く歯が立たない。


 「うふ、うふうふふふふ」

 「お、おいどうした? つーか何だその格好は・・・」

 「もう終わりウサ・・・鬱だ・・・死のう・・・」

 「おーい! とりあえずしっかりしろ!」


 数刻後。


 「で? 追い剥ぎをしようと?」

 「し、仕方ないウサ! こっちだって必死だったウサ!」

 「・・・ったく、しゃあないな!っと」

 「うひゃあ!? な、何するウサ!」


 なんとか落ち着き、事情を説明し終えたてゐを妹紅が肩に担ぐ。


 「行くとこないんだろ? だったらとりあえず私ん家に来な」

 「え・・・?」

 「飯ぐらい出すし、服も着替えさせてやるよ・・・一応、迷いの竹林の案内人同士だしな」

 「え、えと」

 「なんだ、嫌なのか?」

 「いや、そうじゃなくて降ろして・・・恥ずかしい・・・」

 「ありゃ、すまん」





























 「ほれ、できたぞ」

 「うわあ・・・」


 妹紅の家。

 てゐが目の前に置かれた鍋に、子供のように目を輝かせていた。

 服も妹紅の服を貰い、ぶかぶかではあるが今までより遙かにましである。

 てゐがホントにもらって良いのかと聞くと、妹紅曰く安物だから構わないそうだ。

 殺し合いをする度に服が使えなくなるからであろう。


 「見てないで食ってみなって。結構自信あるんだ」

 「じゃ、じゃあいただきます」

 「ん、召し上がれ」


 よく色の変わった大根、タケノコや山菜が食欲をそそる。

 竹で作られた妹紅特製の箸を使い、とりあえずタケノコを食べてみる。


 「おいしい・・・」

 「ほらほら、遠慮してないで食べな。私が全部食べちゃうぞ?」

 「む」


 無言で箸を進める。

 がっついてないものの、遠慮がちながら次々と食べていくのを見れば気に入ってくれたらしい。

 それを見て妹紅も箸を取る。


 「あ! 大根がもうない!?」

 「早い者勝ちウサ♪」

 「ん~、なら、これはもらおうかな」

 「好きじゃないから良いウサ」

 「好き嫌いせず食べな・・・ほれ、ふきをプレゼントだ」

 「実は好物という罠」

 「コイツ・・・」

 「ウサウサ♪」


 遠慮などしていないらしい。







 「ふうー、ごちそうさま! いやー、食った食った」

 「お粗末様。にしても、よく食べるねえ」

 「う・・・ま、丸一日ほとんど食べてなかったし。それにおいしかったし・・・」

 「おーおー、ありがと。いやー、慧音以外に食べさせたことなかったからちょっと不安だったんだよね」

 「惚気?」

 「だとしたら、もう無理だな。てゐに振る舞っちゃったし、手料理」

 「鍋を手料理と言えるのか微妙ウサ」

 「それもそうか・・・にしても」

 「?」

 「大分調子戻ってきてるじゃないか。良かった」

 「あ、うん・・・」


 少し俯く。


 「・・・これから、どうする気だ?」

 「え?」

 「永遠亭に戻りたいか?」

 「無理ウサ」

 「ところが、出来るんだな」


 てゐが驚いたように妹紅を見る。


 「お前さんが悪戯した歴史を、慧音に食ってもらえばいいんだ」

 「あ・・・」

 「運の良いことに今日は満月だしな。・・・さて、もう一回聞くぞ?」


 てゐに向き直る。


 「永遠亭に、帰りたいか?」

 「・・・・・・」

 「別に帰れと言ってるわけじゃないぞ。帰りたくないならそれでもいい。輝夜なんかに付き合ってたら疲れるだろうしな」

 「・・・・・・」

 「しばらくしてから戻るっていうのもアリだ。なんなら、しばらくここで暮らしても構わないぞ?」


 そこまで話したところで、聞いているだけだったてゐが口を開く。


 「意外とさー、あのニートって優しいんだ」

 「・・・ほう」

 「上から命令ばっかするけど、結構私達のこと心配してくれてたり。レイセンは私が何したって、最後には許してくれるんだよね。仕方ないなーなんて言いながら。永琳だって言うことキツイけど、根は優しいんだよ。怪我してたらすぐ診てくれるし」

 「お人好しだらけだな」

 「うん。だから、私を受け入れてくれる」

 「・・・そうか。じゃあ」

 「それに!」


 妹紅の言葉を遮り、てゐが言葉を続ける。


 「あんな悪戯しがいのある連中、このてゐ様がほっとくわけないウサ!」


 今までどこか暗かった雰囲気が消え、その顔はいつものてゐに戻っていた。

 もう心配することはないな、と妹紅は密かに思う。

 けど、何か忘れてるような・・・


 「もこーーーーーーーーーーーーう!!!!!!」


 突如、妹紅の家の戸が吹き飛ぶ。

 同時に、淡い緑色をした影が妹紅に飛びついた。

 ロングホーン・トレインだ!


 「ガフッ!!!」

 「何!? というか妹紅、角が刺さってる!!」

 「しまった! 妹紅、しっかりするんだ妹紅ーーーー!!!」

 「リザレクショーン!!」

 「脇腹刺されただけで死んだ!?」

 「いや、舌をかみ切った」

 「うわぁ・・・」

 「ああ、妹紅! 良かった、無事なんだな!」

 「慧音、落ち着け」

 「なんで暴走してるウサ」

 「む、お前はてゐ? 貴様、何故妹紅の家にいるんだ!! 許せん!!!」

 「とにかく角を抜いて降ろしてくれ、痛いから」


 突撃をぶちかましてきたのは慧音である。

 獣化しており、立派な角と尻尾が生えていた。


 「というか、なんでいきなり慧音が押し掛けてきてるウサ?」

 「ふふふ、簡単だ! 私が妹紅を、す、好きだからだ!!! きゃ、言っちゃった♪」

 「満月の日はいつもこんな感じだ」

 「・・・大変だね」

 「もう慣れたよ」


 妹紅の服の予備が多いのは慧音の所為でもあるらしい。


 「そんなことよりも因幡てゐ! 何故貴様が妹紅の服を着ている!!!」

 「い!? え、えーと・・・」

 「あー、私が服を燃やしちゃったから上げたんだよ」


 嘘ではない。

 あのエプロンは妹紅が焼却処分してしまったのだ。

 可愛いのに。


 「何だとぉ~~? 貰っただと~~?」

 「う・・・」

 「こらこら、そう突っかかるな。あとで慧音にも上げるから」

 「あ、ありがと♪」


 対応に慣れている。


 「そうだ、慧音。ちょっと頼みたいことがあるんだが」

 「そんなことは後だ! 今日は月に一回のお楽しみじゃないか!!」

 「あ」

 「・・・お楽しみ?」

 「あー、忘れてた」

 「さあ、早く行くぞ!」


 そう言って、慧音は肩を掴む――てゐの。


 「え、ちょ、何するウサ!!」


 そしてそのままずるずると引きずられる。

 その行き先には敷き布団が一つ。


 「今日は三人か。久々に『科学忍法・火の鳥』でもするかな!」

 「え、何ソレ、ていうか待って、いや、というか助けて! 妹紅ー! って妹紅も捕まってる!?」

 「すまん。諦めろ」

 「ふはははは!! 長い永い夜の始まりだ!!!」

 「ッウサーーーーーーーーーー!!!!!!」







































 「色々世話になったウサ」


 翌日、まだ日の昇りきってない朝。

 昨日とは色違いの服を着たてゐが、妹紅の家の前に立っていた。


 「いや、礼を言われるほどじゃないよ。・・・むしろ色々大丈夫か?」

 「昨日一日だけで大切な物をたくさん無くした気がするウサ・・・」


 男泣きの振りをするてゐだが、流す涙は恐らく本物であろう。


 「一応、慧音も歴史を食べてくれたらしいから。早く帰らないと心配してるんじゃないのか?」

 「あ、うん・・・えっと、その」

 「? 何だ?」


 しばらく口ごもっているが、やがて意を決したように。


 「・・・あ、ありがと」


 消え入りそうな小さな声で呟いた。

 そう言えば今まではっきりと礼を言われてなかったな、と妹紅は思う。

 そしてふと気が付いた。

 ――この兎、本当は人に構って貰いたいのだろう。

 けれど、何があったかは知らないが他人を信用できないのだ。

 だから自分にも素直になれず、悪戯という行動でしか接点を作れなかった。

 『ありがとう』と、本心からの言葉を口にするのにどれだけ勇気が要ったのだろうか。

 きっとこの兎は、私を信頼できると思って、感謝の言葉を口にしたのだ。

 ならば、その重みに応えてやろう。




 妹紅はてゐに歩み寄り、優しく抱きしめた。


 「むう!?」

 「また、遊びに来な」

 「・・・ん・・・」


 てゐの耳がほんのりと朱に染まった。

 


 しばらくして妹紅が離れようとするが、てゐは腕を妹紅の背中に回してソレを拒んだ。


 「お、おい?」

 「・・・もうちょっとだけ」

 「・・・ったく、仕方ないなあ」


 口ではそう言いつつも、妹紅も悪い気はしていない。

 甘えるように顔を寄せ、離さないとばかりに抱きついてくるてゐを、もう一度両腕を回し優しく包み込む。

 素直にしてれば可愛いもんだ、などと思っていると――

 パシャ、と場違いな音が突如聞こえた。

 てゐが肩をびくりと震わせる。


 「どうも、お二人さん。いやー、朝からお熱いですねえ」


 いつからいたのか、射命丸が竹の上から降りてきた。


 「盗撮とは感心しないなー」

 「珍しい組み合わせですけど、なにがあったのですかね? できれば詳しいお話の方を・・・」

 「聞けよ」


 妹紅のクレームもどこ吹く風、全く気にしない。

 先ほどからてゐの耳はブルブルと震え、真っ赤になっている。


 「輝夜さんといつもいがみ合っているというのに、そこにお仕えする兎と仲が良さそうなのはどうしてなのでしょうか? まさか、妹紅さんは輝夜さんと仲直りしたわけですか? いやいや、それとも」

 「こんの、KY天狗ーーーーーーー!!!!!!」


 てゐが妹紅を振りほどき、弾幕を張る。


 「おおっと、いきなりですねえ。しかしこれでは取材は無理そうです」

 「逃がすかーーーーー!!!!」


 バキバキと竹をへし折りながら空へ向かう二人。

 妹紅はやれやれとため息を一つつき、


 「ま、友人に加勢ぐらいはさせて貰おうかな」


 焔の翼を大きく羽ばたかせ、竹林にぽっかりと開いた穴へと舞い上がった。













Fin.
































 その頃、紅魔館眼前に広がる湖の近くで。


 「寒いのですよ~・・・助けてなのですよ~・・・・・・くちゅんっ!」


 『わたしは かえる』と書かれた葉っぱを身に着け、氷付けにされた哀れな妖精がいた。
















今度こそFin.




















おまけ1





 「あややや、二対一ですか。しかし私に敵うとお思いですか?」

 「いや、三対一だ」

 「おー慧音、起きたの?」

 「ああも騒がれたら嫌でも目が覚める・・・因幡てゐ、手伝うぞ」

 「いつのまに仲良くなったのか気になる所ですが・・・さすがにキツイので逃げさせて頂きます!!」

 「星符!『ドラゴンメテオ』!!!」

 「あややややや!? あ、危ないですね!」

 「私の恥ずかしい写真、返してもらうぜ!!」

 「真っ昼間からドロワ一丁で寝てる魔理沙さんが悪いんですよ!!」

 「責任転嫁にもほどがあるウサ」

 「それについてはフランに言ってくれ!!」

 「って、何があったウサ!?」

 「あちらもお盛んだねえ」

 「頼むからそういうことは言わないでくれ、妹紅・・・」

 「お前らもこのブン屋狙いか? だったら手伝うぜ!」

 「しかし僅かな隙をついて脱出ーーー!!!」

 「あ!?」

 「何してるウサ!!」

 「うるさいぜ! すぐに追い抜いて・・・ん?」

 「あやや!? 何で距離を離せないの!!?」

 「あたいだよ」

 「あやや、無縁塚の死神がどうしてここに!?」

 「映姫様があんたをちょっと懲らしめてこいっていうからさ。まー、何か気に障ることでもしたんじゃないの?」

 「嘘ぉ!?」

 「理由なんてどうでも良いぜ」

 「これでもうお前は逃げることはできない」

 「覚悟するウサ!!」

 「『パゼストバイフェニックス』!!」

 「『三種の神器・郷』!!」

 「『マスタースパーク』だぜ!!」

 「『宵越しの銭』っと」

 「『エンシェントデューパー』!!!!」

 「いやああああぁぁ!! 誰か助けてーーーーー!!! 椛ーーーーー!!!」


 ピチューン。


 「これでちったあ、あいつも懲りただろうよ!」←※椛
























おまけ2





 麺類     「はあっ! ああっ! 師匠、ししょうっ!!」

 ( ゚∀゚)o彡゜ 「ふふ、うどんげったら・・・」

 てるよ    「・・・あ・・・ありのまま今起こったことを話すぜ! 『目が覚めたと思ったら私の部屋で永琳とうどんげが(以下略



















おまけ3



 「映姫さまー」

 「小町・・・また仕事をサボって・・・」

 「まあ、多めに見てくださいよ」

 「駄目です! あなたは少しマイペース過ぎます。もう少し他人のことも」

 「映姫さま」

 「・・・何ですか」

 「可愛いですよ」

 「っ! か、かわ・・・」

 「映姫さまー」

 「小町が・・・私・・・可愛い・・・か、かわわわ・・・小町、可愛い・・・」

 「えーきさまー」

 「! え、あ、はい、小町、何ですか?」

 「ちょっとブン屋を懲らしめてきていいですか?」

 「な、何でまた・・・」

 「あたいの胸丸出しの写真を撮られたのですが」

 「今すぐ行ってきなさい」
どうも、ニカド電池です。
以前の「或る日。」でのコメント、ありがとうございました。
やっぱり読み手のことを考えて書かないと駄目だなー、と痛感しました。
よく考えれば、自分が考えた話なんだから自分で読んで理解できるのって当たり前なんですよね(苦笑


と、いうわけで。
今回はその辺り意識して作ってみました。
一応、一つのテーマみたいな物に沿って話が進んでます。

テーマとは関係ないですけど、てゐの深層心理を妄想しながら読むと面白いかもです。
『話で語られているのは妹紅の妄想だ! 実はこうに違いない!』みたいな感じで。


ちなみに「おまけ」はただのおまけですので、内容に特に深い意味はないのでご注意を。

今回も感想、批判等お待ちしてます。


・・・実は作者、ギャグセンスがおかしいとよく言われるので、こういう話を投稿するのは不安だったり((((;゜Д゜)))
ニカド電池
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コメント



0.920簡易評価
2.70名前が無い程度の能力削除
作者…、限界に挑戦中か?(°□°;)
いっそ向こうで、もこてゐを書いt(正直者の死
…いや、えーこまでm(ラストジャッジメント)地獄に落とされました。
なんにしてもてゐが可愛い(^^)ほのぼの分(?)を補充させていただきました(^^)
7.80名前が無い程度の能力削除
もこてゐもいいもんだと思ったら慧音乱入w
あと、気づけよチルノww
9.80名前が無い程度の能力削除
おまけ2に吹いたwwww麺類wwwwww
11.90名前が無い程度の能力削除
もみじがwwwwもみじが黒いよwwwwwwwwww
つかタイガーウッズってwwwwww
突っ込みながら笑わせていただきました 面白かったです
16.30名前が無い程度の能力削除
ニートは駄目でてるよはOKなの?
基準が分からないよ。
17.70名前が無い程度の能力削除
おまけがいい味だしてる。
18.10名前が無い程度の能力削除
設定壊せばいいってもんじゃないのにな。
28.無評価 削除
あるいみ面白かったです。
29.70名前が無い程度の能力削除
てゐもこというよりもこてゐな気が
慧音、邪魔すんな
嫉妬か?