Coolier - 新生・東方創想話

森近の道具屋 一話 日常の余韻

2008/07/27 09:32:35
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夏の真っ只中、炎天下の下には幻想郷。外では陽炎達の舞踏会。
鉄板を日光に晒し、生卵を落としたら本当に目玉焼きが出来上がりそうなほどに太陽は張り切っている。
空を飛び交う妖怪たちは頭を垂れ、木陰に潜む鳥たちもどこか暑そうだ。
その尋常ではない暑さを凌ぐため、彼は本を読んでいた。
先天的なものか後天的なものかは分からないが、本を集中して呼んでいる間、彼の神経はひどく鈍感になるからだ。
手の平と同じくらいの大きさを持つ本を右手に持ち、左手は頬杖を付いている。
表紙には犯行声明文のようにレイアウトされた人間失格という四文字。
それだけでも身震いしたくなるような外の世界の本を、彼は一心不乱に読んでいた。
時折、頬杖をやめて顎に手を当てて唸ったり、首を傾げてみたりする。
文章内に何か不思議な単語でもあったのか、幻想郷と外の世界の食い違いに疑問を持っているのか。
彼が今目を走らせているところにはこう書いてあった。

――光には闇というアントがあり、善には悪、罪と祈り、罪と悔い、罪と告白、罪と、……ああ、みんなシノニムだ、罪の対語は何だ
――ツミの対義語は、ミツさ。蜜の如し甘しさ

人間失格の一部分であるこの短いやり取りの間に、彼はそこはかとなく感心していた。
ユーモアもさるところながら、考えさせられる一言だ。
明るい場所が存在するからこそ、誰にも見えない暗闇が存在する。
善い行いがあれば、悪く不道徳なこともある。
どれも、比較するべき対象があるからこそ、相対的であるからこそ、アントニム、対義語として成り立っている。
それに対して、罪には比較するべき対象がない。罪の重さを比較することは出来ても、罪そのものを対義語とすることは出来ない。
そこで、罪の対義語を「蜜の如し甘し」と定義付けるのには非常に関心が深い。
罪とは本来、規範、道徳、風俗に反する悪行や損害を犯したものに科せられるものを指す。
罪という名の物事に、甘えという観念は存在し難い。
罰を与えることで当人を矯正し、以後そのような過ちを繰り返さないようにする。
その間、辛く厳しい罰が与えられる。言わば辛酸、蜜に対応するならば山椒を始めとする酸辛物。
果たしてこれが罪の対義語になるのかどうかは分からないが、これはこれで面白い解釈だ。

ただ、彼にしてみればこの考えには意義有りだ。
この考えは罪は悪の同義語として考えてしまっている。
善悪は人間が勝手に作り出した抽象的概念、故に、これが悪、これが善だと言い切ることは本来不可能なのである。
何故なら、生き物の価値観や観念はその数だけ異なるのだから。
だが、それを解決するべく、人々は掟、ルールを作り出した。非常に有効で、知的な考えでもあった。
価値観の食い違いはあれども、多数決のような形でそれは決定された。
そして、そのルールにそぐわない者にはそれ相応の罪を科し、罰を与える。
人々はそれを常識と名づけ、その対義語には罪人や不道徳という観念を生み出し、それすらも常識となってしまった。
決まった動きをしなければ村八分。回りに合わせなければ白眼視。
誰一人として、このルールが裏目に出るのではないかとは考えなかったのであろう。
それを長くに渡って行い続けてしまえば、皆同じような人、いや、個性を失い量産されるだけに成り下がった、良識の肩書きを持つ『物』になるのではないだろうか。

――とは思ってみるものの、彼の考えそのものも一つの観念に過ぎない。
これが真理だという証拠などは存在し得るはずがないし、それを創り出すことなんて鶏が鷹を産むようなものだ。
それにしても、罪の対義語は蜜のように甘い、とやや抽象的に伝えることによって、この本は彼のような読者を楽しませているのかもしれない。

ページを捲る乾いた音だけが、沈黙漂う店内に響き渡る。
埃を被ったひょうたん型の壺や、使い方不明の半透明のプラスチックの筒まで、物静かにこの蒸し暑さに耐えている。
周囲の様子や天候には目もくれず、彼は次の頁へと頬杖を解いた左手でページを捲った。今の彼は気温に適応しきっている。

チリンチリンと、外側の玄関に取り付けた風鈴が綺麗な音色を奏でた。
客足の少ないこの店にとって、お客さんは一人一人が唯一無二の神様だ。
付属のしおりを挿み、ゆっくりと立ち上がる。同時に、周囲の熱気に溜息が出た。
本を読んでいる間は何の遠慮も配慮も要らないというのに、本を手放すとすぐにこうなってしまう。
このギャップには既に慣れてはいるが、やはり、普段から本を読んでいるような状態でありたいのもまた事実だ。
少し身を乗り出して玄関の方へ目を向けると、入り口で大きな黒い風呂敷が詰まっていた。
上方からは刃物が顔を出し、別の切れ目からは白い固形物が目に入る。
袋は詰まったまま動かず、なんと脚が生えている。しかし、目や鼻は勿論、手も頭もない。
奇異な妖怪のお出ましだったが、あんなゴミを体に詰め込んだような妖怪の接客はしたくないのが本心でもあった。
カウンターを回り込み、玄関で詰まっているゴミ妖怪に近寄る。背後には昨日彼が作り上げた竹箒が見え隠れしていた。

「くあーっ! 香霖! でかすぎて入らないぜ!」

玄関の外から店内に発せられたのは、随分と聞きなれた声だった。
どうやら、ゴミ妖怪以上に厄介な来訪者のようだったが、同時に、ゴミ妖怪の正体も見破ることが出来た。
袋の結び目が今すぐにでもお別れしそうなほどに中身は大量だった。入り口と袋の隙間から、懸命に袋を肩で押しているのは魔理沙だった。
いつも通りの白黒の分厚い服に、大きな三角帽子。くせっ毛のある金髪は陽光を浴びてそれこそ本物の黄金のように光り輝いていた。
右手には新品の箒を持ち、右肩でグイグイと黒い風呂敷を押す。

「今日はまた随分と大荷物じゃないか。こんなところへ旅行かい?」
「はは、それもいいかもしれないな――うりゃっ!」

魔理沙は力を込めて風呂敷を押し込めるも、結局風呂敷はその場に滞ったまま。
こちらから押し返そうとしても、もう手遅れのように感じられた。
すっぽりと、瓢箪の細い部分だけが玄関に詰まってしまったかのように。
もう引いても押してもどうにもならないかもしれない。今はただ、せめてもの皮肉を掛けることしか出来ない。

「はいはい、ここは客の受けも入り口も狭いから、旅行なら他を当たろうね」
「このまま放置するぜ?」
「とりあえず押すのを止めてくれないか」

押しても駄目なら引いてみろとはよく言うが、引いても駄目なら壊すしかない。
これは彼自身が考えた言葉というより、魔理沙の日常をそのまま応用したものに近い。
何でもかんでも大雑把で、物に対する思いやりがない。押しても駄目なら引いてみろ、の引く段階を飛び越え、即破壊しかねない。
押しても駄目なら壊せ、魔理沙の教訓である。
あまり参考にしてはならない。ただ単純に壊せばよいという考えは短絡的だ。
壊した結果、それ相応の損失がある。こういう時にはもっと頭を使わなければならない。
押すことも引くことも、壊すことも出来ない時にはどうすればいいか。
魔理沙なら間違いなく、諦めると答えるだろう。
ただ、その言葉がもっとも適しているようにも思える。

幸いにも、詰まっているのはただの風呂敷だったので、結び目さえ解いてしまえばどうにでもなる。
中にどんな物が入っているかは分からないが、それがまた好奇心をくすぐる。
魔理沙は詰まった袋の下を匍匐で潜り抜け、彼の横へ立ち上がった。衣服に付いた埃を払い、帽子を脱いで服を仰ぎ始める。
外は炎天下なのだ、暑くて仕方がないのも無理はない。
何とか結び目を解くと、ガラクタの雪崩が玄関を埋め尽くした。
剣と思しき鋭利な刃先、白い直方体のプラスチック箱、何重にも渦を巻いた緑色の物体――相変わらずのカオスだった。
魔理沙に手伝わせようと声を掛けるものの、彼女はそっぽを向いて服を仰いでいる。
暑さの所為で機能しなくなったのか、面倒なのかは考えずとも分かる。
仕方なくガラクタをカウンターまで運び、破けてボロボロになった風呂敷を丸める。
あんな状態だと分かっていれば、壊していてもよかったかもしれない。

カウンターに乗せた品々の中でも、特に興味を惹かれたのは一本の長い刀。刀身はおおよそ八十センチ。
興味を持ったのは他でもなく、そのデザインだ。
形状は極一般の刀を違いはないのだが、この刀は刃と峰の部分が逆転しているのである。
要するに、膨らんでいる方が峰となり、凹んでいるほうが刃となっている。
この刀――布都御魂は実戦に扱われたというより、観賞用としての意味合いが強かったのではないだろうか。
何より、装飾が非常に美しい。
鍔には薔薇のような模様が彫られ、刀身には読解不能の文字が刻まれている。この剣を所持していた者の名か、製作者の銘か。
金色の柄には不可解でありながらも見入るような模様、無数に散らばっている白金の玉。
とても、戦いで汚すのには勿体無い代物のように思える。
そして、この刀には昔、とてつもない霊力が宿っていたようだ。
それは軍勢の毒気を覚醒させ、さらに、荒れ狂う神を退けるほどの力を持っていたそうだ。
実戦で扱うのを躊躇ってしまうのも仕方がないだろう。
そして同時に、この刀は神の遺産のようだ。この刀の持ち主は建御雷神(タケミカヅチ)。その名前通り、雷を操っていたのだろうか。
この布都御魂でどれだけの血を浴びてきたのか、それとも、その神はこの刀をコレクションの一部として扱っていたのか。
真相は謎である。

「香霖、えらく気に入ったみたいだが何か分かったのか?」
「まぁね。どうやら、神様からの贈り物のようだ」
「へぇ、神様も随分と物騒な物を贈りつけるんだな」

もっともな話だ。
神という立場にあるのなら、刀を使わずとも――いや、八百万の神様というくらいなのだから、中には悪しき神々も存在していたのだろう。
その際にこの刀が使用されたのだと解釈すれば合点がいく。

「ところで、その剣の名前は? この間のは草薙の刀とか何とか」
「これは布都御魂。それと、草薙の刀は間違い。剣だ」
「ふつのみたま? 成る程、どこにでもいる神霊ってことだな」

確かに、御霊とは神の霊の事を指す。魔理沙は普通の御霊と聞き取ったのだろうか。
以前、神が死ぬということは信仰を失うことと同義だと聞いたことがある。
科学や情報を信じ始め、それは最早人工的に作られた神への信仰だった。
神というものは崇められ、その見返りとして人々を救っているようなものだった。
しかし、それも無理な話だった。

神々の誰もが願いを叶えることが出来るのなら、万能であるならば、神は一人で充分だ。
子が親を必要とするように、人間も自分を育て、守り、見つめてくれる存在を必要とした。
そして、人間は神々という概念を生み出し、彼らを親とした。神とは空想の産物が産み出したもの。
それらへの信仰がなくなったとしても、不思議な話ではない。
要するに、神の死とは人々の弱さを打ち破った証拠とも言えるのではないだろうか。
この布都御魂という刀は恐らく、神の象徴や化身として扱われていたのではないだろうか。
御霊という名を付けるくらいだ、この刀に憑依していた可能性もある。
人々はありもしない神々を崇拝し、どのような想いだったのだろう。
やはり、本当に神々が困難から救ってくれると信じていたのだろうか。
本当に神様いるのなら、もう少しここの生活を充実させてくれてもいいのではないだろうか。

――ただ、嘘から出た真とは恐ろしいもので、つい最近博麗神社の傍に神が引っ越してきたらしい。それが神との名を偽った詐欺師かも分からない。
刀の鞘はないようだが、これは適当に壁に掛けておくだけでそれなりの雰囲気は出るかもしれない。
流石、神の遺産だけあって装飾が物凄く綺麗だ。やはり、観賞用だったのだろう。
本当に、売り物にすれば相当な値段を付けるに値する。ただ、残念なことに草薙の剣ほどの偉業を成し遂げたわけではないようだ。
刀を傍に立て掛け、他の品に目を移す。興味あり気に、魔理沙が歩み寄ってきた。
魔理沙は収集が趣味であり、コレクションは守備範囲外だ。
いまさら興味を示したというよりは、単純に暇が潰せる何かを探しに来たのだろう。

適当にガラクタを漁る魔理沙を他所に、彼が目に付けたのは携帯電話というガラクタ。
全体は桜色で染まり、側面には小さなボタンがくっ付いている。表と思われる部分には実用性のなさそうな小さな黒い鏡。
裏には更に小さな粗悪な鏡。ただ、その奥には目玉のような物が映っている。
携帯という名を貰うだけあって、折りたたみ式になっている。
携帯電話を開くと、上方にはこれまた写りの悪い黒い鏡、下方には規則正しく配置されたボタン。
以前魔理沙が持ってきたガラクタの中に電話という物があった。
どれだけ遠くに離れていようとも、互いの意思を伝え合うことが出来る素晴らしい道具。
しかし、結局使い方は分からず、今はどこかで埃を被っている。
そこに座り続けている十のボタンが何を意味しているのか、じゃばらで繋がれた細長い物体が何を意味しているのかは分からなかった。
しかし、あれは明らかに、意思を伝えるために必要な機能、準備段階に違いない。
数字を押した数だけの距離の相手と話すことが出来るのか、それとも悪用されないためにパスワードとしての意味を持っていたのか――結局、答えは見つからないまま諦めてしまった。
そして、この携帯電話とやらは文字通り、電話を小型化し、携帯できるようにした物なのだろう。
確かに、あの電話を普段から持ち歩くには重過ぎる。結果的に、この携帯電話も使い方が分からない。
大きさや形、ボタンの数は違えど、機能は瓜二つだろう。当然、使い方も瓜二つ。
ガラクタとは別の場所に置き、次の何かを求めてガラクタに目を付ける。

ふと、魔理沙の持っている渦巻き型の何かに目が向いた。
蚊取り線香――蚊の駆除に使われるもの。蚊の大発生するこの季節、蚊の駆除を目的とした物は非常にありがたい。

「何なんだこれ?」
「蚊取り線香という物らしい。その名の通り、蚊を捕るようだ」
「蚊を追い払うのか? それとも殺すのか?」

蚊を駆除するのだから、恐らく死んでしまうのだろう。光を苦手とする吸血鬼のように、蚊はこの渦巻き型が苦手なのだろう。
ということは、壁にこれと同じ大きさの渦巻き模様を描けば問題ないのではないだろうか。

対象の使い方、原理が分からないというのが彼の能力の唯一にして最大の欠点である 。
いくら名前と用途が分かったところで、使い方が分からなければ意味がない。
だが、もし、使い方は分かるが用途が分からないというものだったら、それは好奇心を糧として危険を冒すだけの能力となってしまう。
用途が分からず、それがもし毒物であれ有害な物であったりすれば、それこそ彼の能力は中途半端、いや、封印する必要があるだろう。
この品物そのものが蚊取り線香と名づけられているくらいなのだから、何か特別な機能があるのだろう。
蚊にとっては有害な気が発せられていたり、蚊の苦手とする特有の匂いを発したりするのだろう。
渦巻き模様で蚊に効果があるのなら、こんな物は必要ない。売り物にでもしてしまえば立派な詐欺である。

それにしても、本から目を離してからの気温への適応の遅さは異常だ。
外の世界には部屋の温度を自由に変えることが出来る機械があるというが、それは一体どのような原理なのだろう。
それはまた涼しい夜になったときにでも考えてみよう。今はいかにしてこの暑さを凌ぐかを考えるかが重要だ。

チリンチリン――風鈴の音色が響く。
今度こそお客さんだろうか。差し当たっては紅魔のメイド長か、奇怪な人形遣いか。
ゆっくりと開くドア――白い振袖が目に映った瞬間、溜息が漏れた。

「暑いわ……」

汗を流し、黒髪の光沢を見せつけながら、右手で自らを仰いでいる。
気だるそうな表情を見せ、わざとらしく息を切らせている。何故か左手には黒ずんだ幣。何を目的に来たのだろう。
霊夢は魔理沙の姿を見てもう一度嫌な表情を見せた。皮肉のように、魔理沙は大きな笑顔を見せる。

「霖之助さん、これよ、これ」

黒味を帯びた幣を掲げ、彼の前に突き出す。

「まるではたきのような扱いを受けているな」
「幣でもあり、はたきでもあり……素晴らしいじゃない」
「本当に素晴らしいな。それじゃあ、その幣は大事にしておかないといけないね」
「ということで、新しいの作っておいてね」

これだ。人の話を聞かない、物を大切にしない、無料で製作を依頼する、挙句の果てには窃盗。
正直言って、魔理沙よりも性質が悪い。
魔理沙が店の商品を盗っていくのは大目に見てもいい。何故なら、彼の趣味である収集に手を貸してくれているからだ。
ガラクタばかりと思われるものでも、彼にとってはお宝のような物なのだから。
その分を差し引けば損得無し、むしろ、頭が上がらないくらいである。
だが、彼は霊夢に何か恩があるわけではない。強いて言うとすれば、幻想郷の平和を確立させてくれているくらいか。

それはこの上ない偉業であり、趣味と平和を比べれば、その差は明白だ。
だが、平和という言葉が当然である今、果たしてそれに感謝している者がいるだろうか。
日が昇ることは必要不可欠なことであると同時に、それは日常だ。
だからこそ、そのありがたみを忘れてしまっている。故に、旱魃の際に降る雨は感謝感激される。
あらゆるものの価値は失って初めて気が付くものではないだろうか。
それは現に、霧雨店で味わっている。

もし、博麗の巫女がいなかったら、博麗大結界が失われたら――その重要性や偉大さを改めて実感することだろう。
それを考えれば、魔理沙だけでなく、霊夢にも頭が上がらない。自分の首を絞めている――そんな風には思わない。

「あぁ、暑いったらないわね……お風呂借りるわよ。」

額から頬に掛けて伝う汗を拭い、肩を下げながら浴室へと向かっていった。
相当な汗の量だったところからして妖怪退治か、はたまた神社の掃除か。いずれにせよ、ご苦労なことだ。
木材を取り出し、カッターで少しずつ削る。どうも、この作業には慣れてしまった。

「あぁ……暑いぜ」
「そうだな、氷精でも捕まえてきたらどうだい?」
「お湯なんか捕まえてもなぁ」
「それじゃあ風呂にでも入っておいで。まだ沸いてないし、涼しいと思うから」
「そうするか……暑い暑い」

帽子をガラクタに被せ、首を振るって浴室へと向かった。
厚紙を切り、先端に貼り付ける。どうも、この作業には慣れてしまった。
今なら、霊夢も魔理沙も入浴中。読みかけの本に目を走らせるのは今しかない。
二人は毎日のように訪れるので、こちらも手の付けようがない。
いっそのこと、また何か大きな異変でも生きてくれれば香霖堂も安泰になるのだが。

ただ、なんだかんだいって二人は香霖堂の活力同然の働きを見せていた。異変が起これば、その度に二人は姿を消す。
彼は基本的に動くことはなく、掃除をするなんてことは月に一度もない。
結果、埃が溜まり、黴が生え、いつの間にか居心地の悪い空間になってしまう。
二人はここの活力というよりは掃除屋だろうか。あまりにも店が汚れているときは積極的に掃除をしてくれる。
自らの溜まり場が汚れるのは嫌なのだろう。
特に、霊夢は毎日欠かさず神社の掃除をやってのけるほどだ。こんな狭い店の掃除は朝飯前なのだ。

幣の完成。いつも通りの完璧な仕上がりである。
それにしても、一体どのような使い方をしたらこんなに黒ずむのかが不思議で仕方がない。
彼は灰色になった厚紙を見ながら鼻で笑った。
ふにゃふにゃにふやけていて、これが以前本当に厚紙だったのかと疑いたくなってしまうほど。
汚れた幣、もといはたきを捨て、新しく作った幣を傍に置く。
彼はもう一度、人間失格に手を伸ばした。そろそろ落ちが分かる、そんなところ。
彼がしおりを掴むのと同時に、風鈴の音が鳴り響いた。彼の口元から零れる溜息。
ただ、魔理沙と霊夢以外ということは今度こそ正真正銘のお客様だろう。
三度目の正直とは嘘ではないのかもしれない。客の姿が目に映った途端、彼の目が輝いた。

「いらっしゃい。今日は何をお求めかな?」

現れたのは紅魔館のレミリアと咲夜。高級な紅茶をそれ相応の値段で買い取ってくれる。
香霖堂の収入の半分ほどは彼女らのおかげだ。今日は一体何を買いに来たのか。
以前のように奇異なマグカップの注文には残念ながら間に合っていないが、ダージリンやらウバやらは揃っている。
魔理沙たちに漁られないよう、厳重に保管しているのだ。

「特に何かが欲しいって訳じゃないんですけど」

落胆する彼を他所に、咲夜は微笑みながらそう答えた。
咲夜の後ろに続くレミリアは日傘を差しながら、窮屈な入り口を通った後、綺麗な音を奏でる風鈴に目を向けていた。
入り口に『冷やかしお断りと』書いた看板でも立てておこうか。
レミリアの視線は相変わらず風鈴に向いている。確かに、和風な風鈴は洋風の彼女には珍しいのかもしれない。
仏の顔は三度までというが、彼は違う。大体、三回顔を撫でられたくらいで怒る仏もどうかと思っていた。
レミリアは風鈴を手に取り、チリンチリンと鳴る度に目を輝かせる。普段見慣れない表情のせいで、彼女がより一層幼く見える。

「店主、この鈴みたいなやつ頂けるかしら」
「うーん……それは僕も気に入っている物だからね。ちょっと遠慮してもらえると嬉しいな。対価次第では考えるけど」

青みを帯びた半透明のガラスには雲や西瓜や魚が描かれている。内側に付いている舌は奇怪な形をしている。
涼しげなこの風鈴は夏の間、いつもの鈴の変わりに取り付けた物。
何か不思議な力でも宿っているのか、鈴の音は一瞬だけ涼感を与えてくれる。
レミリアは面白くない表情を見せ、元の位置に吊り下げた。興味はあるが必要な物ではない、そういったところか。

「で、冷やかしならお断りなんだが」
「ここをお店として扱っている方がどれほどいるのかしら」

事実ではあった。この二人は他の客とは比べ物にならないほどの高額な物を買ってくれる。
客として見るなら、魔理沙や霊夢など目ではない。
ただ、別にここをお店として見てもらわなくとも、彼は然程困ることはなかった。
彼の物に対する優先順位は外の物から順に食料、日常品、そして金銭。
お金を払ってくれなくとも、物々交換や肉体労働で済ませてもらっても問題はない。

「それに、さっきお嬢様が注文したじゃないの」
「生憎、あれは売り物じゃないんでね。君、物売りの店に入って『この家を売ってください』なんて言えるかい?」
「不動産会社に行きますわ」

本当に、この二人は何をしにここまで来たのだろう。
日光が苦手な吸血鬼が用もなしに、こんな辺境までわざわざ皮肉と冷やかしを送るために来るものなのだろうか。
――まさかとは思うが、二人はここへ『遊び』に来たのだろうか? 
冗談じゃない。これ以上ここの住人が増えるのは勘弁願いたい。
手に持ったままの本を置き、彼は重い溜息をついた。すると、レミリアが何かに気が付いたかのような声をあげた。
カウンターの上に散らばるガラクタに興味を示したようだ。
先程の携帯電話や蚊取り線香は勿論、中央に穴の開いた丸くて薄い円盤のような物、片方が萎んでいるプラスチック状で半透明の筒。
どれもこれも、彼が見たことがないのだからレミリアが知っているはずがない。
レミリアは小さな手でカウンターの上にあるガラクタを漁る。
咲夜も興味あり気に、さも遠慮しながら主人が手を付け終えたガラクタに手を付ける。

この光景を見ていると、いや、今に限らず普段から疑問に思うことがある。
咲夜はいつ、何処で、何故レミリアの従者になったのだろう。
確かに、二人の力量差は明らかだが、力による屈服の関係には見受け難い。
いくら吸血鬼とはいえ、余程のことがなければ近づこうという愚か者はいないだろうし、ましてや配下になろうなんて考えは起こらないはずだ。
咲夜の扱うナイフは吸血鬼の苦手とする銀製品、それには何か意味があるのだろうか。
吸血鬼とは関係なく、ただ高貴な雰囲気を出すため、はたまた吸血鬼ハンターだった――咲夜の能力を考慮すれば、後者の可能性もあり得る。
そもそも、咲夜は一体何者なのだろう。いや、彼女だけでなく、魔理沙や霊夢といった『人間』は一体何なのだろう。

人という文字にわざわざ間を付けて『人間』とする理由は人が世間で生きているからに他ならない。
犬や猫に世間という概念は存在しない。だから犬間や猫間という呼び方はない。
世間とは大よそ多数決で成り立っているようなもの。
常識という二文字の下で成り立っているのが世間だ。

それだというのに、彼女らは常識ではなく、非常識な存在となってしまっている。
これは外の世界との事ではなく、幻想郷の内部でも、彼女らは非常識だ。
妖怪に負けるという常識を、スペル制度打ち破ってしまった。
人里の世間に住むことが人々の幻想郷での常識であり、『人間』である条件だ。
彼女らは非常識だから世間では生きてはいけない。『人間』ではない。
世間など存在しない『ヒト』か、ヒトを超越した化け物か。
巫女である霊夢はともかく、魔法使いである魔理沙、時間を操る咲夜は気味悪がられるだろう。
彼女らは『人間』ではないのだろうから。

それは彼も同じだ。形は違えど、人間にも妖怪にも成りきれなかった彼は成りそこない、非常識な存在だった。
多数決で決まる今の世の中、常識が絶対権を持つ今の世の中、それらに該当しない物は全て迫害される。
手が四本ある人が生まれれば差別され、常識を覆す発案をすれば狂人扱い。
頭は一つ、手と足は二本ずつ、指はそれぞれに五本ずつ。喜怒哀楽を持ち、寿命は短く、妖怪には歯が立たない。
それが人間である条件だ。

――ただ、常識を変えうるために、狂人や差別は必要不可欠だということを彼は知っていた。
その点で、彼女らには頑張ってもらいたい。

「これ何だか分かる?」
「マラカス……でしょうか」

考え事をすると周囲の物音が聞き取れなくなるのが彼の悪い癖だ。
レミリアは紅く装飾された筒を揺らし、シャカシャカと音を立てている。以前手に入れたことのある万華鏡と同じだった。

「違う違う、それは万華鏡って言うんだ、貸してごらん」

万華鏡という言葉に二人はピンと来ないのか、首を傾げている。

「ここに穴があるだろう? ここから中を覗くんだ」

以前にも、魔理沙のガラクタには万華鏡が混じっていた。
今、手元にあるものと比べると作りが雑で、まるで子どもが作ったような出来栄えだったが、内部に移る幻想は非常に美しかったことを覚えている。
夜空の星のように散りばめられた金銀、青い六角の煌めき、リング状の綺麗な緋色――筒を回せばややぎこちなくも鮮やかに、幾通りの幻想を目に映し出してくれる。
万華鏡とは製作者の想いがそのまま形になるものなのだろうか。
そうでもなければ、あれほど美しい物が人工物であるとは思えない。一体、誰が何を考えてあの万華鏡を作り上げたのか。
レミリアに渡すと、筒を両手で持ちながら筒を下げ、慎重に穴を覗き込んだ。
数秒も経たないうちに、レミリアは不服そうな表情を見せてこちらを睨んだ。

「まるでここの経営状況を見ているかのようだったわ」
「少し明るいほうに筒の先を向けるんだよ。俯いて見ていたら、そんな暗い世界しか映らないのは当たり前じゃないか」

レミリアの発言を受けて、脊髄反射で真っ暗闇を想像してしまった。

「私の世界は常に光り輝いているわ」

そう言って、レミリアは日差しの差し込む窓に筒を向けた。
気のせいか、先程と比べると日差しが幾分か弱くなっている。
弱くなっているというより、薄くなっているといったほうが的確なのだろうか。いずれにせよ、ありがたいことである。
レミリアは暫らく黙り込んだまま、クルクルと筒を回し続けている。
目を離すと、少しだけ微笑んで「綺麗」と言った。
続いて、咲夜が万華鏡に目を通した。レミリアと同じく、綺麗との一言を残してこちらを振り返った。

「万華鏡……でしたっけ? 買わせていただきます」
「それはあげるよ。万華鏡は他にもあるから」

咲夜は何やら神妙な顔立ちで、口を開いたままこちらを見つめた。
思わず苦笑いで返すと、レミリアの方を振り返った。

「お嬢様、ここに隕石が落ちるという運命は見えますか?」
「……少なくとも、今から雨が降るわ」

レミリアがそう言った途端、バケツをひっくり返したかのような雨が降り出した。
窓の外を見ると、傘に穴が開いてしまうのではないかと思うほどの大雨だった。
レミリアは仕方ないというように溜息を吐き、咲夜は彼を睨んだ。

瞬間、悪寒が体を取り巻いた。

「当分降るわね。夜まで」
「咲夜、君の力でどうにかならないのか?」
「百八通り考えたけれど、どれも無理ですわ」

瞬時に百八通りの打開法を叩き出すその頭脳には感心する。
終りよければ全てよしとは言わないが、どうにも結果が宜しくない。
どうにかしてお引取り願いたい。
この大雨だと、霊夢と魔理沙は間違いなくここに泊まる。
レミリアは吸血鬼。この大雨の中を駆け抜けるのはまず不可能、ここに身を置く必要がある。
もし、そうなってしまえば、咲夜はレミリアに付くだろう。
最悪の展開を考えれば、今日は四人がここで寝泊りすることになる。

――経営状況どころか、生活水準まで落ち込んでしまう。

「何? まさか……ここに寝るとか言わないでよ?」
「私だって嫌ですよ。こんな木枯らし一つで吹き飛びそうな場所」
「勘弁してよ……こんな気味の悪い場所、何が出てもおかしくないわ」

不服そうな表情を見せ、言いたい放題の二人を他所に、彼は外を眺めていた。
先程はあんなにも日照りが強かったというのに、瞬間的にこの大雨。
もし本当に彼の気紛れが影響したならば、それはただのお笑いだ。
もしかすると、また梅霖の妖精でも居座っているのだろうか。これほどの強い雨なら可能性はある。
霊夢には今一度、梅霖の妖精を追い払ってもらう必要があるのだろうか。
妖精というものは総じて懲りというものを知らない。それとも、天気を操る妖怪でも現れたのか。
いずれにせよ、今の状況は非常に危険だ。

引き戸の音と同時に、霊夢と魔理沙が浴室から出てきた。言わずもがな、二人は何の躊躇いもない。
男である彼としてはいささか目のやり場に困る。
まだ子どもであるとはいえ、体も発達しつつある女性だというのに。はしたない。
あらかじめ寝巻きを用意しておくとか、バスタオルを体に巻くとかの方法があるというのに。
目を反らし、気が付かないふりをしていると、霊夢が外の様子に気が付いたようだった。
車軸を押すような大雨だ、気付かないはずがない。二人は濡れた体で畳やら廊下の上を歩く。
床が腐るので止めてくれと何度も注意したものの、馬の耳に念仏だった。
続いて、レミリアと咲夜の存在に気が付いたのか、二人は彼の傍へと寄っていった。
彼は窓に視線を向けつつも、傍で聞こえる話を耳に入れる。

「あら? こんな雨の中わざわざご苦労さん」

霊夢のおちょくった声が背後から聞こえる。

「霊夢がいるからまぁいいわ。咲夜、着替えは?」
「はい――どうぞ」

霊夢の言葉を無視し、咲夜に総お願いするレミリア。
咲夜があの細い体のどこに主人の服をしまい込んでいたのか不思議で仕方がない。
霊夢と魔理沙の遠ざかる足音と同時に、視線を元の位置に戻した。どういう訳か、咲夜がずぶ濡れになっていた。

「それにしても、店主も大変ですわね」
「大変なのは君のほうだろう」

咲夜はクスクスと笑うと、濡れた髪を丁寧にといた。
滴る水滴がゆっくりと床を侵食していく。咲夜の銀色の髪が、不思議な光沢を発していた。

「あの二人のことでしょう、ちょっとでも変な気を起こしたら、殺されるんじゃない? ま、実際はどうなのか知らないけど」
「常に死と隣りあわせということよね。同情しちゃうわ」

二人は他人事だと思って笑っているようだが、実際に誤解を招くようなことになればどうなるか分からない。
それをきっかけに、嫌ってくれても困りはしないが。

「哀れむだけじゃなくて、力になろうとは思わないのかい?」
「まさか」
「万が一にもないわ」

即答の後、二人は彼に向けて妖しげな笑みを浮かべた。
幻想郷にいる男性は本当に少ない。
もう少し的確な言い方をすれば、男性である妖怪は数えるほどもいない。
彼が知っている限りでは妖怪の山に住む大天狗と自分以外の妖怪は聞いたことも見たこともない。
何故このような現象がおきてしまったのであろうか。それこそ、神様の意図か、悪戯か。
とりあえず、短絡的過ぎる考えを彼は好まない。

とりあえず、これは子孫を残すことに関係があるのではないだろうか。
考えられることは生殖機能の関係によることだ。
子孫を残す段階において、女性の負担は非常に大きい。それに比べれば、男性の身体的な負担は無いに等しい。
子孫を残すことだけを考えれば、男性は極少数で済むのだから。男性は数多くないのも分からなくはない。
しかし、ここで疑問になってくるのが妖怪達の寿命の長さだ。
人間の寿命は精々七十年ほどが相場なのに対し、妖怪は何百何千年などは容易い。
そんな彼ら彼女らにとって、生殖活動は無縁の存在なのかもしれない。
現に、今目の前にいるレミリアだって、まだ五百年ほどしか生きていないという。

ただ、そうだとしてもまた別の疑問が湧きあがってくる――何故、女性ばかりが増えたのか。
もしかすると、何年も昔に男性を撲滅する運動があったのかもしれない。染色体の関係で、元々男性は生まれにくいのかもしれない。
真相は謎である――が、特にこれといって困ることも無い。
人里に行けば、男性も多い。この世から男性が消えるわけではない。
偶々、周りには女性の人や妖怪が多いだけだ。これが普通だと思っている。
悦楽に浸ることも、不愉快に思うことも無い。人付き合いは何一つ変わらない。

降りしきる大雨が香霖堂の屋根を休み無く叩き続ける。
天井は今にも雨漏りが起こりそうな顔色をしている。
レミリアと咲夜は今日一日、ここへ寝泊りすることを覚悟したようだ。
レミリアは引き続きガラクタを漁り、咲夜体に張り付く衣服を心地悪そうに引っ張っている。

「君も風呂に入ってきたらどうかな。濡れたままじゃ風邪を引くだろうし、何より気持ち悪いんじゃないか?」
「私に引導を渡してほしいのかしら」
「他意はないよ。君が遠慮するなら構わないけど、その濡れた服と体で奥に上がるのは勘弁してもらいたいね」
「いいじゃないの咲夜、どんな小屋だって体が洗えないよりマシよ」

小屋という言葉に反応しようとした瞬間、レミリアの妖しげな笑みに相殺された。
咲夜がレミリアに忠を尽くすのはそのカリスマ性に起因しているのだろうか。

「どうせなら、この雨で体を洗いたいわね」

ここの畳以外ならどこで体を洗ってくれても構わないのだが、外は不味いのではないだろうか。
衛生的にも彼女の自尊心的にも。
文句を垂れつつも、咲夜は浴室の場所を聞き、溜息を吐いて浴室へと向かっていった。
レミリアは相変わらず、ガラクタに目と手を付けながら漁りを続ける。
仮にも、紅魔館の主、格調高いようには思えない。
吸血鬼の五百年とは本当に僅かな時間に過ぎないのだろう。

「ところで、どうして咲夜はあんなに濡れていたんだい?」
「貴方って案外物忘れがひどいのね」

物忘れ――思い当たる節は無い。一体、何の事を言っているのだろうか。
それとも、運命を見越しての発言だろうか。

「これは何?」

悩む彼を他所に、レミリアが手にしているのは電子辞書だった。
全体を撫で回しながら、弄んでいるようにも見える構造は携帯電話のように折りたたみ式となっており、辞書とは思えない軽さと小ささ。
電子辞書というより、コンピュータの式神を小型化したような物。ただ、肩書きは辞書である。

「まぁ、簡単に言えば辞書だ」
「辞書と言えるほどの情報は入っていないようだけど」
「正しくは電子辞書。電子って言葉に何か意味があるんだろう」
「欠陥とか、不良とか、そういう意味かしら」

確かに、電子という言葉は彼も始めて耳にする単語だった。
電子の電は稲妻――直訳すれば稲妻の子ども。もしかすると、建御雷神の子どもだろうか。
だとしても、こんな固形物が神の子どもであるはずが無い。それとも、これは神の一部か、それとも分身か。
だが、その可能性は無いだろう。神は空想の産物だからだ。
となると、電子とは俗語なのだろうか。それとも、建御雷神の子と言っても過言ではないくらいの重要な品物なのだろうか。

電子辞書に興味を失ったのか、レミリアはガラクタの上に放り投げた。
降り続ける大雨は止む気配なく、黒雲は空を覆い、雨音が耳を突く。
結局原因は何なのか、それを探ることを忘れていた。霊夢を呼ぶと、濡れた髪のままこちらへ顔を出した。
魔理沙も同様に、霊夢の後を追う。寝巻きに着替えていたので安心した。

「この大雨、また梅霖の妖精なんじゃないのか?」

「違うと思うけど。あの時はもっと酷かったでしょう? 雷も鳴っていたし。もし、原因がそうだとしても、風呂上りに汚れろって言いたいの?」

霊夢の言い分ももっともであったので、彼は大人しく身を引いた。




             Ж





暫らくして、咲夜が入浴を終えた。風呂の水が冷たすぎると文句を言われた。
確かに、雨が降り出して急激に低下した気温と水温の差を考えると当然かもしれない。
レミリアは頑なに入浴を拒んだが、吸血鬼はお風呂にも弱かったりするのだろうか。
流石に五百年も体を洗わないでいるはずがないし、咲夜に体を拭いてもらったりするのだろう。

夕食はかなり質素に終えた。和食を食べなれていないのか、レミリアと咲夜は不満を隠せないようでいた。
米、味噌汁、焼き魚に野菜の吸い物。彼女らが普段何を食べているかは知らないが、多少の抵抗があることは確かだった。

レミリアはいつの間にか寝巻きに着替えていた。レミリアの姿を見るたび、咲夜には何度も睨まれた。
高貴な人の寝巻き姿はやはり貴重なのだろうか。
咲夜は相変わらずのメイド服だった。先程のずぶ濡れとなったメイド服ではなく、乾ききった新しいメイド服だった。
一体どういうことなのだろう。まだまだ雨は降りっぱなし。ただ、次第に雨が弱まってきていることは明らかだった。

レミリアと咲夜には一つの布団で寝てもらうことにした。布団という物の上で寝ることに違和感を覚えていたようだった。
霊夢と魔理沙にも、同じ布団で寝るように指示した。布団の数が足りないからだ。
四人の女性と一人の男性が三つの布団を使うとしたら、このような配分になるのは極自然な現象だ。
レミリアと咲夜に一人ずつ布団を渡し、三人で寝るなど考えたくもない。
いくらか涼しいとはいえ、密着して蒸れるのは御免だった。
そして当然、レミリアと咲夜には隣の部屋で、霊夢と魔理沙は彼と同じ部屋に布団を敷いた。
男性と同じ部屋で寝るとは度胸が据わっているというか、非常識というか、意識が低いというか――レミリアたちには軽蔑するような目で見られていた。
複雑な関係だが、どういうわけか傷付いた。
霊夢と魔理沙は布団の上で若干距離を取り、互いにくっ付かないようにしていた。やはり、暑いのだろうか。

「それじゃあ消すよ」
「おやすみだぜ」
「おやすみなさい」

二人がそう言い終えた後彼は明かりを消した。
雨音以外の音は何一つ耳に入らない。
時折、二人の布団を擦る音や呼吸音が耳に入る程度で、本当に何にも聞こえない。
普段から、二人もこんな風に大人しくしてればいいのにな、と思いつつ、彼はゆっくりと目を閉じた。
断続的に鳴り続ける雨音が次第に薄れていった。







――不意に、目が覚めた。体中が痒い。

全身とまではいかないが、主に四肢が異常なまでの痒みに襲われている。
不意に、鳴り響く羽音。鳥肌が立ち、彼は布団から飛び起きた。

蚊――夏の吸血鬼。

痒みを訴える場所に手を当てると、どこもかしこも小指の第一関節程度の膨らみがある。
首筋と右手首、左のふくらはぎを掻く。痒さを取り除く一時的な行為も効き目なく、痛みでしかないほど被害は大きかった。
左手の小指や足の裏など、本当に厄介なところを刺された。
全身で――二十七箇所。昨夜も蚊には悩まされたが、ここまで酷い状態ではなかった。
直立状態のままではまた刺される。常に静止しないように心掛けながら、目を皿にする。
この部屋に何匹の蚊がいるかは知らないが、結構な数はいるに違いない。霊夢や魔理沙も何箇所か刺されていることだろう。
気が付けば、外の雨は上がっていた。だが、そんな情報は蚊を取っ払う作業には無用の長物だった。
何度部屋全体を凝視しても、蚊の存在は確認できなかった。一度も手を打ち鳴らすこともなく、彼は頭を垂れた。
しかし、今一度布団に入れば奴らの思う壺だ。何か打開策はないものか――ふと、昼間の出来事を思い出した。

蚊取り線香――蚊を駆除する品物。使い方は分からないが、せめてもの気休めにでもなるかもしれない。
そんなことを思いつつ、彼は静かに障子を開け、部屋を出た。
すると、隣の部屋で寝ていたはずの二人の姿がなかった。ここの居心地の悪さに嫌気が差し、館へ帰ったというところか。
それにしても、こんな夜遅くの自宅を彼は始めて見た。
夜中に目覚めたとしても、悪夢にうなされた時だけである。自宅をうろついたことなどない。
ただ、深夜の香霖堂は昼間と変わってはいなかった。
唯一変わっていることは、いつにも増して、招かざる客が溢れかえっていることだ。霊夢や魔理沙達とは性質が違う。
厄介なことに変わりはないが、堂々としている分彼女らの方が始末が良い。
蚊は人々が寝静まった頃、音を立てずその肌に吸い付く。この陰湿さは間違いなく群を抜いている。

蚊取り線香は確か風呂敷に詰め込んでカウンターの横に置いたことを思い出し、カウンターを回りこむ。
普段は気にも留めない小さな置物たちが異様な雰囲気を持っているように思えた。
長年愛用された物には魂が宿ると聞いたことがあるが、周りにそのような人物は誰一人としていない。
物の価値を軽視する霊夢、放置しっぱなしの魔理沙。収集人である彼でさえ、微妙な配置である。
風呂敷の結びを解き、暗がりの中で蚊取り線香を探す。特徴的な形をしているとはいえ、もろい小物。
壊れていたとしても不思議ではない――電子辞書の下敷きとなっていた。幸い、壊れてはいないようだった。

問題はこの使用方法である。山を燃やせるミニ八卦炉であっても、使い方を知らなければ意味がない。
少なくとも、このままでは効果を発揮しないだろう。
もし、これそのものが特別な気を発していたりするのなら、この家に蚊など生きていられるはずがない。
それとも、この形状は蚊の視覚に有害であるのだろうか。とりあえず、実行に移さなければどうにもなりようがない。
彼は寝室へ戻り、蚊取り線香を布団の横へ置き、もう一度布団に寝転がる。

――忌々しく鳴り響く、蚊の羽音。
もう一度、体を跳ね起こした。

「くそっ……」

彼の苛立ちの声が余韻を残して湿った室内に吸収される。
彼の苦悩など気にもかけず、子悪魔たちは部屋内を駆け回り、彼の体を取り巻く。
やはり、使い方が違っていたのだろうか。
細かく砕いて飲めば蚊が寄らなくなるとか、水に溶かして気化するとか、おまじないの一環か。
彼が悩んでいると、隣で物音がした。振り向くと、霊夢が上体を起こしたまま目を瞑っていた。
起こしてしまったことを悪く思い、彼は暫らく黙り込んだ。
が、蚊の羽音が耳元で聞こえ、腕で思い切り振り払ってしまった。

「……霖之助さん?」

目を擦りながら、眠そうな口調で彼の名を呼んだ。参ったというように彼は頭を掻き、霊夢に応答した。
霊夢は眠気の表情を残したまま、左腕を軽く掻き始めた。

「痒いわ……」

霊夢は腕を掻く手を止め、今一度目を瞑り、暫らく固まった。何を考えたのか、霊夢はゆっくりと立ち上がった。

「どこへ行くんだい?」
「散歩」
「こんな夜遅くに?」
「霖之助さんが来てくれると嬉しいんだけど」

催促するような言い方と、寝起きとは思えない誘惑に満ちた表情に、彼は今一度頭を掻いた。
確かに、こんなところで子悪魔と格闘を繰り広げるよりはいくらか良い判断かもしれない。
霊夢に誘われるがままに、布団から立ち上がった。
部屋を出る際、魔理沙が小さく寝返りを打った。蚊の騒音に悩まされたのだろうか。
ただ、目を覚まさない辺り、魔理沙は鈍感なのだと感じられた。

改めて外を見ると、東の空が淡い光を放っていることに気が付いた。どうやら夜明け前だったらしい。
この時間帯なら起きていてもなんら問題はない。散歩と言っても、蚊に悩まされて起きてしまっただけだ。
特に行く場所もない、いや、だから散歩なのか。

散歩という行為自体、本当に久しぶりのことだった。
散歩よりも商売、商売よりも物拾い、物拾いよりも彼女らの相手。
無意識のうちに出来上がった優先順位に疑問を思うことも多いが、もう慣れてしまった。
霊夢は人里まで足を運ぶといって、寝巻き姿のまま、足を進めた。

二人の足音が余韻となり、清々しく漂う微風が背中を押す。
日の霞む夜明け、夏とは思えぬ涼感が心地良い。
道の傍らにたたずむ菫や地面を突く小鳥、上空を飛び交う妖怪。
外に出ていなかったためか、外の空気や景色が嫌というほど新鮮だった。
霊夢の欠伸が静かに空気に振動し、彼の関心を示したような声が当たり一帯に響く。
普段の生活とかけ離れた、非日常ともいえる状態だった。

人里までへの途中、廃れた二組のベンチがたたずんでいた。何故こんなところにベンチがあるのか分からなかった。
ここら辺は魔法の森に近いことも起因し、妖怪は比較的少ないが、こんなところにベンチがあるということは何かに使用されたのだろう。
引き続き足を前に出そうとしたとき、霊夢が目の前を横切った。霊夢の足取りはベンチに向かっていった。

「休憩かい?」
「散歩そのものが休憩なの」

霊夢はそう言って綺麗な方のベンチへと腰掛けた。
彼の座るベンチは腰掛けも背もたれもすっかりと禿げ、既にボロが来ていた。
とは言うものの、霊夢のベンチとの差は然程ない。霊夢は一つ溜息をついて自らの肩を抱き締めた。
彼女の寝巻きは彼のお手製、出来るだけ涼しくなるように工夫した代物だ。そんな物を今ここで着ていれば寒いのは当然だろう。
やんわりとした感触が右手に触れた。

「どうかしたのか?」
「……寒い」
「風邪なら移さないでくれよ」

彼の一言を他所に、右手から右腕、脇腹、太股というように、温かな肌が衣服の上から触れる。

「勘弁してくれないか」
「寒いんだもの。嫌なら服脱いでよ」
「捉えようによっては随分と大胆なことを言っている気がするんだが」
「別に減るものじゃないでしょ?」

そう言うと、霊夢は彼を膝枕のようにしてその場に寝そべった。
やはり、霊夢も魔理沙も、もう少し自尊心や羞恥、遠慮を覚えてほしい。
このままではいずれ、ろくな大人になりはしないだろう。

とはいえ、霊夢はまだ子どもだ。親のいない彼女にとって、甘える存在や頼る存在が必要なのかもしれない。
自賛するのわけではないが、少しくらい霊夢や魔理沙に対して大目に見てやっても良いかもしれない。

彼は霊夢の背中を優しく撫でた。滑らかな皮膚が衣服越しでも実感できた。
霊夢は小さく笑うと、彼に後頭部を向けて落ち着いてしまった。



暫らくすると、呼吸ともいびきともおぼつかない息遣いが聞こえた。
肩を二、三度軽く叩いてみても、反応はない――どうやら、寝入ってしまったようだ。

「仕方がないな……」

陽光滲む東の空を目に、霖之助は彼女の髪を優しく撫でた。









                                            予告 永遠亭と月面戦争(仮)
今回のテーマは『冒頭でどれだけ引き込むか』
人間失格は結構有名だから目を通す、尚且つ哲学的な内容をちらつかせて読み――たくなりましたか?
一応、今回は第一話のような感じで扱ってください。当然続きます。全体で十万字越えを目標としているので。
霧雨店で経験したって何を? とか、狂人が必要ってどういうこと?とか、
色々ある疑問は俺設定であることと同時に、次第に明らかにしていくつもりです。
今のところ第三話辺りまでは構想が完成しています。次の投下がいつになるかは分かりませんが。
途中でレミ霖とか変な電波受信して作業が滞りそう。ちくしょう。
100000-14982=85018字
このペースだと6話くらいで完結か?

>6氏
しまった……盲点だった。蚊取りマットにすればよかったのかな。
言われないと気が付かないことも多い自分にとって、こういう指摘は一番嬉しいですね。
ありがとうございます。
>17氏.それらしく訂正。
>33氏.炎天下の下とかもうね。書き手としてはやっちゃいけないミスであるからこそ、あえて残しておきます。
>44氏.書く→掻くへ修正。

報告ありがとうございます。
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コメント



0.2400簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
こうりんころす
3.100名前が無い程度の能力削除
こーりんに死を
6.60名前が無い程度の能力削除
色々期待。
でも蚊取り「線香」って名前から使い方を思いつけないっていうのは
ちょっと無理がある気もしました。
11.100名前が無い程度の能力削除
最後の霊夢と香霖のやり取りが最高すぎる
12.70名前が無い程度の能力削除
こーりん俺と代われ
後半の話が膨らみすぎて、あとがきにあった前半の疑問などの印象が薄く感じられた。
1つの話としては面白いと思うのだが、冒頭、引き込みとしての効果が低くなってしまっていたように思う。
13.100名無し妖怪削除
全六話ってことですかね?
それにしてもなんという長編、続きが楽しみです
それはそうと最後が霊霖っぽくてGOODこのシリーズは誰がヒロインなんだろう

>途中でレミ霖とか変な電波受信して作業が滞りそう。ちくしょう
このシリーズが終わった後書けばいいじゃないですか!
そっちも楽しみにしてますよ
15.90名前が無い程度の能力削除
きれいな文章だ。
引き込まれました。
17.100名前が無い程度の能力削除
久々のかなり良い作品だなぁ
最後の霊霖で沸騰した
「何度も何度も昨夜には睨まれた。」これは誤字?
19.90名前が無い程度の能力削除
>君、物売りの店に入って『この家を売ってください』なんて言えるかい?
レミリアなら言いそうだ
29.90名前が無い程度の能力削除
>>1、2はツンデレなんだな
30.90名前が無い程度の能力削除
原作の香霖堂に近いややこし気な雰囲気の話をスラスラ読ませる相変わらずの筆力が凄い。
それでいて霊霖っぽい空気もあったり、他の女性陣も各々の魅力がよく出てて、個人的に楽しめる要素が満載でよかった。
でも蚊取り線香については、線香(線状の香)って分かってんだから火を点けるくらい試してみても良いような。
あと地の文が三人称の中に一人称気味な部分もあったように見えました。指摘するほど大した度合いでもなかったかもしれないけど、個人的にはハッキリ分かれてるほうが好きなもんで、ちょっと気になりました。

それにしてもレミ霖だと・・・・・・?
主従そろって今回あれだけさんざんな態度だったのに、どんなミラクルが起きるとそんな化学反応が起きるのかという疑問も相俟って、超読みたいですよw(次回はいきなり戦争のようですがw)
咲夜さんがいつにも増して冷たい態度だったのは、お嬢様を取られると思ったからなんですねw(?)
31.80マイマイ削除
本当は100点つけたかったけど、物に関する考察が歴史を無視しすぎているのでこの点数です。
幻想郷が孤立したのは120年前ですから、それ以前は普通に行き来できたそうなので、形状こそ違えど蚊取り線香は流石にあったかと。日本神話も同様ですね。

しかし、こーりんっぽさが出ていたのは非常に良かったと思います。何だかんだいって少女二人に駄々甘なのもGJです。こーりんお得意の考察も、それっぽく書かれていて好きでした。
テーマである『冒頭でどれだけ引き込むか』もああ、と納得させるだけの筆力があると思います。羨ましい。

だからこそ、ちょっと調べるぐらいのことはして欲しいと思います。それがあれば、自分は文句なしに100点を付けたと思います。
これからも頑張って下さい。今から、あなたの作品を色々読みに行ってみようと思います。
33.90名前が無い程度の能力削除
ちょっと気になったのですけど、「炎天下の下」は頭痛が痛いじゃないかな・・・?
各キャラをしっかり掘り下げてあって読んでいて引き込まれるようでした。
レミ、咲の行動が気になりますね、続きが楽しみです^^
34.100名前が無い程度の能力削除
こーりんころがす
続き楽しみにしてます
37.100時空や空間を翔る程度の能力削除
>>この刀は刃と峰の部分が逆転しているのである。

奇遇だな、私も一振り持ってますよ。とま、
霖之助は2人の良き理解者ですな。
38.60名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
でも、蚊取り線香は幻想郷でも知られているはずですよ(永夜抄1面・結界組の会話より、少なくとも紫・霊夢・リグルは知ってるよう)。
41.100名前が無い程度の能力削除
こんな楽しみがあと5回も続くなんて!
42.90名前が無い程度の能力削除
霊夢ころす
俺と変われ、今すぐ、ナウ!!
44.90名前が無い程度の能力削除
おもしろかったです。

霊夢は腕を書く手を止め、の書くってのは誤字では?違ったらすみません。
48.70名前が無い程度の能力削除
よし、俺もこの言葉を使うぜ。
こーりんころがす。
人間失格は最近読み返して中学の時の俺の短絡的な読み方をあらためて反省したものの一つだなぁ。こーりんなら人間失格の面白さを一発で読み解きそう。それでも読むたびに感想が変わるだろうけどね。
49.50名前が無い程度の能力削除
え、これ、って、む?お?想像してたのとちがった。まぁいいや
54.90名前が無い程度の能力削除
なにが羨ましいって、俺も香霖堂に泊まりたい
霊夢とかいなくていい なくていい
56.無評価名前が無い程度の能力削除
これって続き物?
レミリアと咲夜が急に居なくなったところにちょっと違和感感じたんですが
61.70名前が無い程度の能力削除
>妖怪の山に住む大天狗と霧雨の親父さんと半妖の剣士
妖忌は半霊かと。霧雨の親父さんとやらは設定がありましたっけ?
魔理沙の父親なら人間でないとおかしいと思いますが・・
64.無評価名前が無い程度の能力削除
なんで改行で一マス開けないんです?
見づらくてしょうがないんですけど
65.無評価名前が無い程度の能力削除
こーりんころがす
思わず『人間失格』を軽く読み直してしまったww
続き物なので採点は最後にしときます
70.90名無しー削除
>>妖怪に負けるという常識を、スペル制度打ち破ってしまった。

「スペル制度」と「打ち破って」の間が脱字っぽい気も。
71.100名前が無い程度の能力削除
すばらすぃ