Coolier - 新生・東方創想話

紅魔永夜運命譚.終 ようこそ――幻想郷へ

2008/06/27 23:53:29
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様々な二次創作ネタの影響を受けて創作されています
原作のイメージを壊したくない人はご注意ください

この小説は続き物となっております
できれば第1章からご覧ください






終章 ようこそ――幻想郷へ

「やれやれ、やっと追いついたか」
 紅魔館まで後もう少しと言うところで、久方ぶりに聞く声がした。恐らく一度聴いたら忘れられないだろう。高圧的でありながら、幼さを隠しきれないそんな声
「まだ私に用があったのかしら、お嬢さん?」
 まさか、紅い悪魔の存在を認識しておきながら対応しないわけにもいくまい。私はゆっくりと声のした方を振り返り、意外な人物を見ることになる
「そう言うことだったんですね」
「貴女・・・そう、気づいたのね」
 どうやら争う必要はないようだと、永琳は知らず知らずのうちに息をもらす。吸血鬼の相手など、二度とご免だった
 そこに居たのは紛れもない紅い悪魔と、白玉楼の庭師、魂魄妖夢の姿だった
「全く、何のつもりか知らないが、やってくれるな? どうりでこんな不毛なことをするわけだ? 月の天才は考える事が違う」
 どこまでも不敵に、どこまでも不遜に、紅い悪魔は笑う。その笑みが実に楽しそうであることを見て、私は安堵した。とりあえず、怒っているわけではないようだ。やはり彼女も、妹のことは気にかかっていたのだろう
 レミリアの笑みをみて、月の頭脳八意永琳は思わず笑う。向かい合って笑う二人の異形に、妖夢は小さくため息をついた。スケールの違いに、呆れているのだ
「黙っていて申し訳ない。それと・・・不名誉な呼称をしたことも謝るわ。出来れば、許してもらいたい」
「あぁ、いいよいいよそんなことは。私を本気にさせなければならなかったんだろう?」
 レミリアは我至りと言った様子で手を振るが、妖夢はいまいち今のやり取りを飲み込めていないようだった
「えぇ、かなり際どかったのだけど・・・恐らく、成功していることでしょう」
「それほどまでに、難しい問題だったのですか? 貴女の能力を用いればいいだけの様に思えましたが・・・」
 妖夢が納得いかないと言った様子でレミリアを見る。しかし、レミリアはどこか悲しそうに頭を横に振る
「駄目だ。あいつの運命は・・・私に操れる代物じゃなかった。壊されていたんだよ、完璧に。恐らくは、あいつ自身の手によって」
 だから、救えなかった。だから、出してやれなかった。己の不甲斐無さに、レミリアは唇を噛む
「無理もないわ・・・あれだけ強大な存在。ましてや、貴女とおなじ夜の王たる吸血鬼ですもの。その運命を軽々しく操れたら、貴女はそれこそ神よ」
「吸血鬼たる私に神をあてがうとは、なかなか言ってくれるね。おまけに、お前はそれを実行して見せたじゃないか?」
 先ほどの表情をどこかへ飛ばすと、レミリアはまたも不敵に笑った。どうやら、永琳に対して興味を抱いているらしい
「私は運命を操ったわけじゃないわ。運命が動くように仕向けただけ。実際に運命を変えたのは――」
 永琳はちらりと妖夢を見る。この戦いで一番運命を左右したかもしれない存在であることを、彼女は自覚しているのだろうか? いや、している筈がない、か
「この戦いを行った者たち全員よ」
「・・・私の運命、お前の運命、あいつの運命、咲夜に美鈴にパチェの運命、月の兎に賽銭兎にここの庭師の運命、死力を尽くして戦った、ありとあらゆる者の運命」
 レミリアは紅魔館の方を睨むと、表情を消した。運命の流れが複雑に絡み合っていることは、明らかである
「それらを動かして、あいつの運命を変えて見せたのか・・・」
「そのために、貴女を本気にさせなければならなかった。運命が干渉し合うには、貴女の能力が不可欠だったから」
「つまり、私たちが戦い合うことで、本来は変えられなかった運命を変えたと言うことですか?」
 妖夢の言葉に、レミリアと永琳が頷く。天才の策と、レミリアの能力、そして大勢の運命を絡めることで、彼女の運命を変えた。その事実に、妖夢はまたしてもため息をつく
 と、そこへ――
「あ、やっと見つけたわ~」
 間の抜けた声、と言うと聞こえが悪いが、そう表現するしかない声が上空から聞こえてきた。その声に、妖夢は顔をしかめる
「・・・まさか、なんでここに」
「もぉ、私を忘れて話を進めるなんて酷いじゃないの?」
 ゆっくりと彼女たちの下へ降り立ったのは、白玉楼の主である西行寺幽々子だった。彼女は楽しそうな笑みを浮かべながら妖夢の傍へ近づいていく
「あら、こんなところに紅い悪魔さんがいるなんて、奇遇ね? おまけにいつかの薬師さんまで」
「・・・露骨過ぎて何も言えないわ」
「タイミングを図ったにしてもやりすぎじゃないか?」
 永琳は呆れた顔を、レミリアは困ったような顔を浮かべる。突然の来訪者に、どうしていいかわからないようだった
 しかし、次第に3人ともその顔を笑顔へと変えていく
「全て掌の上、かぁ・・・」
「わからないほうがおかしいのよ~」
「これは、せめてもの恩返しよ」
 笑い合う3人を見て、妖夢は眉をしかめる。紅い霧を、終わらない冬を、欠けた月を作り出した3人がこうして笑い合う日が来るとは、世も末だなと
 そして言葉を交わすことなく、3人は動きだす。明確な目的を、成すべきことを分かっているが故に、語らない
「妖夢、手伝いなさい」
「え、何をですか? と言うか、なんでわざわざ幽々子様がここに?」
「そうね・・・大した活躍もしてないのだけれど、今回は事後処理に努めましょう」
「え? 事後処理?」
 ?マークだらけの妖夢を無視して、幽々子はゆっくりと下降していく
「きっと半獣さんや紫の式もいるはずよ~」
「ちょ・・・待ってください幽々子様!」
 慌てて妖夢が幽々子の後を追いかけていく。その様子を永琳は微笑ましそうに見送った
「さて、私もいきますか・・・。まだてゐたちが頑張っているでしょうからね」
 レミリアは真っ先に紅魔館へと向かってしまった。そう、それでいい。それこそが今なすべきこと。私たちがするべきこと

 紅い悪魔は考えていた。なぜ自分がこんな事をしているのかと
 亡霊の姫は考えていた。なぜ自分はこんなにも清々しいのかと
 月の頭脳は考えていた。なぜ自分の思い通り事が済んだのかと

 そして、その答えはわかっていた
 自分を行動させるものの正体を
 自分を満たしてるものの正体を
 自分の思惑を運ぶものの正体を

 その正体は―――

「「「よりよい幻想郷の為に、か――」」」


「妹様が・・・!」
「無理だ、とてもじゃないが・・・!」
 魔理沙とフランの姿を見たメイド達が慌てるが、彼女たちは最早動くことすらままならない。メディスンの放った神経毒が、魔理沙たちの安全を保証していた
「おー・・・あいつらしっかりとやってくれたんだな」
「・・・これって何が起こってるの?」
「ま、お前さんが気にすることじゃない。お前が外に出るために頑張った奴がいっぱいいるってことだ」
 魔理沙は軽い調子でそう言うと、紅魔館の外へと飛び出す。そこに永遠亭軍の姿は見当たらなかった
「・・・なるほど、無抵抗なやつらを叩くほど、幻想郷の理を違える気はないってことか」
 恐らく、敵軍の抵抗力を完璧にそいだ後で門の外までさがったのだろう。賢明な判断に、魔理沙は舌を巻く
「さて、こっからどこに向かえばいいんだか・・・」
「永遠亭のやつらなら、湖の近くまで後退してるよ」
 その声に、魔理沙は顔を上げる。声は少し上から聞こえてきた。恐怖を抱くべき、その声が
「レミリア・・・!」
「・・・っ!」
 それが広げているのは、禍々しき翼。その口元には、歪んだ笑み。その姿は紅く、それゆえに彼女は紅い悪魔と呼ばれている
「全く・・・囚われのお嬢様を助けた騎士がお前だとはな・・・」
「・・・だったらどうするってんだ? こちとら、満足のいく弾幕勝負もできてないんだ。一戦くらいは骨のある相手と交えたかったところだぜ」
 まずいな、魔理沙は冷静に判断する。魔砲をぶちかましたからってどうにかなる相手じゃない。幾重にも弾幕を展開した上でねじ伏せなければ、黙らせることはできないだろう
 フランは完全に固まっていた。まさかよりによって、最悪の相手に見つかるなんて。姉様はきっと私を怨んでいる。どうしようもない運命を持って生まれた私を怨んでいる。私が外に出る事を、許してくれはずがない――
 しかし、考え込む2人をよそに、レミリアは呆れたため息をつくだけだった
「何を惚けてるのよ・・・さっさと行ってきなさい。夜が明けても知らないわよ?」
 その言葉に、2人はまたしても固まる
「レミリア、お前・・・」
「・・・お姉様?」
 フランの声を聞いて、レミリアは複雑な顔を浮かべた。喜びと、悲しみが入り混じった様な、そんな複雑な表情を
「外に出れたのね、フラン」
「・・・私が、外に出ても・・・?」
 レミリアはゆっくりとフランに近づいていく。魔理沙は箒からフランを降ろすと、二人の様子をじっと見守った。危害を加えるつもりなら、とっくに出来ている。つまり、レミリアにこちらをどうこうする気はないと言うことだ
「・・・・・・・・・」
 レミリアは黙って手をフランへと伸ばしていく。フランは恐怖心で眼を閉じてしまう。それを見て、レミリアはまたしても悲しそうな顔を浮かべた、が
「・・・あ」
 恐る恐るフランが眼を開く。自らの姉の手は、頭に優しく乗せられていた。その手がゆっくりと動き、優しく頭を撫でていく
「・・・外に出るのは、今からでも遅くないわ」
「お姉様・・・」
 フランは信じられないものを見ているかのように、姉の顔を覗き込む。その様子に魔理沙は心が痛むのを感じた
 姉妹だって言うのに、いままでこんなやり取りすら出来なかったのか・・・
「ごめんなさい、フラン・・・。私にはお前の運命を変えてやることができなかった・・・。お前が自分から変わるのを見守ることしかできなかった・・・」
「・・・・・・・・・」
 あぁ、だから私は閉じ込められていたのか。あんな状態で外に出る事のないように。あんな状態じゃなければ、外に出ようともしないが故に
 私はこの能力のせいで閉じ込められていたんじゃない
 見守られていたから、閉じ込められていたのか――
「結局、姉らしいことは出来ないまま、見送ることになりそうね・・・」
 すっと、レミリアがフランから離れる。フランは言葉も紡げずに涙を流した。ぼろぼろと、ぼろぼろと泣いて、やっとの思いで言葉を紡ぎ出す
「ごめんなさい・・・ごめんなさいお姉様・・・」
「・・・ごめんなさい、フラン・・・」
 魔理沙はどこか気の抜けた表情で二人を見ていた。姉妹らしいやり取りは何一つできず、姉らしい真似も、妹らしい素振りもできず。だと言うのに、こいつらときたら――
「心の通った姉妹、か――」
 全く、どこまでも世話が焼ける姉妹だな。魔理沙が感じた胸の痛みは、いつの間にか消えていた
「さて、と」
 レミリアはフランから完全に離れると、魔理沙の方を向き直った。さきほどまでは姉の顔をしていたが、それでも紅い悪魔の威厳は消えていない。魔理沙は笑みを消してレミリアに向き直った
「それじゃ頼もしい騎士よ、後は任せた。私はちょっと疲れたわ」
 不死の相手をするのも大変ね、とレミリアは肩をすくめる。魔理沙はしっかりと頷くとフランへと手を伸ばした
「お前を必要としている人たちがいるんだ、来てくれるな?」
「・・・私を必要と?」
 今日は信じられない出来事の連続だった。まさか、こんな私を必要としている人がいるだなんて
「・・・お姉様」
「あぁ、行ってこい行ってこい。良い社会勉強だと思うわ」
 行き先が永遠亭なら、尚更である。レミリアはフランが暴れないことをほんの少し祈った。だけど、きっと大丈夫だろう。彼女の運命は、確実に動き出しているのだから
「・・・お姉様?」
「んー?」
 レミリアは先ほどまでとは違う声のトーンに、訝しげな顔をする。はて、フランがそんな声を出すと言うのは、どういった感情に基づいているんだったっけか?
 レミリアが記憶を探るのもお構いなしに、フランは今言うべきことを言葉にした
「・・・行ってきます」
「・・・・・・・・・」
 レミリアの口が小さく開いた。あまりのことに、言葉を紡げず、しばらく黙る。危うく涙を流しそうだったが、レミリアは気丈な姉を振舞ったまま、それに返すべき言葉を見つけた
「・・・行ってらっしゃい、フラン」


「よくもまぁ、これだけの戦力で耐えたものね・・・」
 紅魔軍はいかなる策を用いてきたのか、残された兎兵の数に永琳は驚愕を隠せずにいた。こちらは妖夢と魔理沙を投入したと言うのに、その事実があってもこれだけの兵を失ったのか
「最後は気力が物を言うってこと、覚えておいたほうがいいですよ・・・」
 てゐがぐったりした様子でにやりと笑う。どうやら幾度も修羅場を抜けてきたらしいその顔には、悲壮なまでの逞しさがあった。メディスンはそんなてゐをつついて遊んでいる
「永琳様、来ました!」
 遂に、来たか。永琳は内心で大きなため息をつくと、その影を視界に収める。実を言えば、今の今まで内心は不安でいっぱいだった。なにしろ、相手は悪魔の妹である。細心の注意を払いきった後で尚、不安が満ちてくるのだから
 恐らく、私の思惑は何度も外れたことだろう。計算外の事態など、いくらでも出てくるだろう。だと言うのに成功したのは、紛れもなくその存在によるものだろう
「みんな、一応私から離れておきなさい。刺激なんかしたら駄目よ」
 しかし、疲れたな。永琳は気丈さを振舞いながらも、内心では休みたくてしょうがなかった。今からまた吸血鬼に対応することを思うと、逃げだしたくもなる
 だけど、私たちが今こうして居られるのは、幻想郷と言う存在そのもののおかげである
 だったら、たまには恩返しをするべきだろう
「なんて、みんなが知ったら怒るかしらね」
 影はみるみる大きくなっていく。やがて箒に乗った2人の姿が確認できると、永琳は小さく息を吐いた
 何はともあれ、最後はこうして成功したのだ
 だったら、私が言うべき言葉は1つだろう
 完全に降り立った影に、兎兵たちは少しばかり興奮した様子だった。当の本人は戸惑いを隠せない様子できょろきょろとあたりを見回している
 やがて、私の方をしっかりとその眼で確認すると、ぴたりと動きを止める
 私も彼女を見て、その言葉を口にした

「ようこそ――」


「幽々子様!」
 妖夢が慌ただしく駆けてくる。何か問題でもあったのだろうか?
「このままじゃ数が多すぎて、収容しきれませんよ!」
「そう・・・仕方ないわね。妖夢の自室は解放したのよね?」
「はい、既に倒れた兵達でいっぱいです」
「なら私の部屋を解放しなさい」
「そんな・・・よろしいんですか?」
「困った時はお互いさまよ、妖夢」
「・・・何故、そこまで?」
 白玉楼には次々と倒れた兵士が運び込まれていた。両軍の倒れた兵士は霧の湖の周囲に放置されていたが、そのままではいくらなんでも危険である。すくなくとも、安静に寝かせるだけの処置は必要だった
 倒れた兵を上白沢慧音、或いは八雲藍と言った面々が一カ所に運び、それを紫の能力で白玉楼まで送り届ける。運ばれてきた者たちを、また運んで寝かせていく。それだけの広さを持った屋敷となると、確かに白玉楼以外には存在しないだろう。あまりの数に、いつしか冥界の霊達も手伝い始めていた
 しかし、妖夢はどうにも解せなかった。倒れた兵の介抱を行うことではない。それは当然誰かがしなければならないことだし、頼まれれば自分だって断りはしない
 だが、どうして自らの主がそれを率先して行っているのか?
「そうね・・・今この役をこなせるのは私しかいないのよ。他の人たちじゃ役不足ね」
「幽々子様、役不足の用法が間違ってます」
 それにしたって、自分の主がここまで積極的になることなんて、永夜の異変以来である。なぜここまで協力的なのだろうか?
「妖夢、あなたはどうしてここに居られるの?」
「え・・・それは・・・?」
 唐突な質問に、言葉が詰まる。唐突でなくても、きっと私には答えが出てこないことを同時に悟った
「それはね、幻想郷が全てを受け入れるからなのよ」
「・・・・・・・・・」
 半人半霊の存在など、受け入れられる筈がない。死を操る亡霊姫など、受け入れられる筈がない。幻想郷以外では――
「だから、拒んではいけないの。幻想郷が受け入れてくれなければ、私たちは存在しえないのだから」
「・・・なるほど、恩返しですか」
 わかったみたいね、と幽々子は笑った。そうなれば、いつまでも止まってはいられない。倒れた者は次々に運ばれてくる。妖夢は再び兵士の収容へと駆けて行った
「吸血鬼も、亡霊も、不死も、鬼も、万象は在るがままに――」
 幽々子は白玉楼の中庭から虚空を見つめる。どうやら、彼女も幻想郷へとたどり着いたようだ
 途方もない時間を経て
 途方もない苦悩を経て
 途方もない、悲しみを砕いて
「なら私から言うことは一つだわ」
 いつか、春を集めたときのように
 幻想郷は、全てを受け入れる
 だから、言うべきことは一つ

「ようこそ――」


「紫様も少しは手伝ってくださいよ!」
「無駄だ・・・あれは人の話は聞かん。あいつの式神ならよく分かっているだろう?」
「ううう・・・なんと無力」
 可愛い式神と、生意気な半獣が何かを言っている気がするが、私は意にも介さなかった
「私は私の役目があるのよ。ほら、もう少しで終わるのだから頑張りなさい?」
「藍様ファイトー!」
 式の式が士気を上げようと頑張っている。彼女はとてもじゃないが力がないのでもっぱら応援をしているだけだった
「さて、それじゃぁ第何陣だか忘れたけれど・・・送り込みますか」
 異界を開く。それは決して見てはいけない。それは決して触れてはいけない。決して語られるべきではない万物のハザマを開くと、私は倒れた兵士を白玉楼まで送り届ける
「はい、次を急いでねー」
「重要性が高いのは向こうなんだろうが・・・」
「釈然としないのはわかります・・・」
 口よりも手を動かしてもらいたいものだ。私は手も動かしていないが
「さて・・・」
 全てが全て、と言うわけではないけれど、どうやらうまく行っているらしい。霊夢はさぞかしつまらなそうな顔をしているだろう。そのことを思うと少し愉快だった
 なに、こういった作業には慣れている。遥か昔からこんなことは行っていたのだから
 つい最近では、博霊大結界を張ったりもしたか。眼を覚ますたびにその修復をしなければならないのは流石に面倒ではある。いっそのこと、式神が結界を張れればいいのだけれど・・・
「そこまで他人任せにしちゃ、駄目よねぇ」
 そう、今回のことにしたって、本来ならもう少し私が頑張らなければならなかった筈である。しかし相手が相手だけに、力技は通用しない。こういった件に関しては、私の能力は向いていないのだ
「たまには他人任せなのもいいわねぇ」
 幸か不幸か、幻想郷のことを理解してくれる存在が増えていた。古くからの友人も幻想郷に馴染んだようだし、昔よりは楽が出来るかしら
「って、常に他人任せじゃないですか・・・」
「命が惜しければそれ以上は言うな・・・」
 相も変わらず失礼なことを言う存在が2人分くらいあった気がしたが、私は意にも介さない
「しかし、うまくいくものねぇー・・・」
 八意永琳の策は、やはり不完全なものだったのだろう。個々の能力をしっかりと把握できていなければ、それは仕方がないというものである。だと言うのに成功できた理由とは、やはり――
「アナタも随分と、世話焼きなのね・・・」
 ひょっとしたら、私も都合のいいように動かされているのかもしれない。だけど、それがどうしたと言うのだ。その方が私も都合がいい
「・・・と、どうやら囚われの姫が助け出されたみたいね」
 何にせよ、私一人ではそう上手くはいくまい。これから先、何が起ころうと揺らがせてはいけないのだ。そのために、今はこの言葉を送っておこう
「幻想郷は全てを受け入れる・・・。それはそれは残酷な話ですわ」
 受け入れたのが善きものとは限らない。だけど、拒むことだけは有り得ない。幻想郷がそれを許しはしない
 なら、私が拒む理由もない。少なくとも、歓迎くらいならばしてもいいはずだ

「ようこそ――」


 フランが去って行った空をじっと見つめる。私もいつか、そうだったように
『こんなに月も紅いから――』
 まるで昨日の出来事のように、思いだす。私がここにいる理由を。私が受け入れられる理由を
 せめてもの恩返し。受け取ってばかりでは、確かに割に合わない
「・・・・・・・・・」
 一抹の不安は残る。果たしてフランを幻想郷に解き放つのが、正しかったのか否か
 ただ、どちらにしても、フランが拒まれることはない。それは私がよく知っている
「幻想郷は全てを受け入れる・・・」
 だったら、姉としてではなくて、送り出すものとしてではなくて、彼女に言うべき言葉がある気がする
 彼女を、受け入れる者として

「・・・ようこそ――」


 それは、全てを受け入れて
 それは、全てを許容して
 それは、否定を否定して
 そして、全てを受け入れる

 だから、言葉を送ろう
 その言葉を、放とう
 受け入れる者として
 彼女を受け入れるために

 ようこそ――


「「「「幻想郷へ――」」」」


――End
その主役の名は
 主役の名は、幻想郷
 よりよい幻想郷の為に、みんなが動かされていたと言うまさかの展開
 よくもまぁ、思いついたもんだね

ラスボス集う
 3人のラスボスが終結
 よりよい幻想郷の為に、がんばりましょう
 日頃から幻想郷に感謝しているから
 そのための恩返しを、互いに誓ったのです
 言うまでもないけど、その正体は幻想郷ね

姉妹の邂逅
 こんな感じだったらいいなぁ、と
 仲良しこよしで良いじゃない
 無理にひねくれた感情を挟む必要なんかないよね
 たった1人の、家族だから

ようこそ――幻想郷へ
 幻想郷は、最後に彼女へそう言葉を贈った

色々と後書き――
 っていうか、裏話 裏話って書いてて楽しいな

 予定と違ったところは次々と出てきたんですが、特に終わり方が劇的に違う
 元々は『フランを外に出すために永琳が仕組んだ』って感じだったんですよ
 でもそれだと、いろいろと弱いんですよね
 最終的には『よりよい幻想郷の為に、永琳が仕組んだ』って感じに
 結局永琳が仕組んだのかよ、と思うかもしれないですが
 幽々子様が頑張ったり、紫が不気味だったりとか
 予定にない良い部分がいっぱい書けた気がします
 なんだ、フランの為の噛ませ犬かよって考えから
 幻想郷の為にみんなが頑張ったって感じにもなりますからね
 ・・・よくもまぁ、思いついたもんだ
 これなら萃香を使わない決定的な理由になるもんね
 ハッピーエンドなんかじゃないよ ハッピーネバーエンドなのだ

 紅魔館が迎撃の準備を構えていたのは、当然ながら永琳の仕業です
 いかにも攻めに行くぞって情報を、あらかじめ紅魔館に流したんですね
 っていうか、普通に宣戦布告みたいな文章とか送ってそう

 長かったなぁー・・・2か月くらい書いてたのかな
 最後を思いついてからは、3日で終わりましたけどね
 なんとか形になって よかったよかった
 途中から作者が変わったんじゃないかってくらいめちゃくちゃだけどね

 10万文字に届きそうなほどになったのは、予想外
 自己満足もここに極まり
 でもそれくらい東方が好きなんだと思ってくれよ 幻想郷万歳
 書くこともないし、そろそろ終わらせようか

 もしも本当に最後まで読んでくれた人がいたとしたら 感謝の極みです
 最後までお付き合い ありがとうございました

 08’06/21 執筆了
DawN
http://plaza.rakuten.co.jp/DawnofeasterN/
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コメント



0.630簡易評価
6.100名前ガの兎削除
良かった。
ただ紅魔館至上主義には少し物足りない感じだったかもしれない、100%主観だけどね!

また書いてくれ、面白い話を読ませてくれて感謝してる。アンタの名前は忘れないぜ。
7.20名前が無い程度の能力削除
「何故最初に交渉を行わないのか?」終始この疑問が頭に浮かぶうえに内容自体が一方的な理由での侵略戦ですし、
それでいて永遠亭が押し切った形なので色々と不快感が残りました。
12.50名前が無い程度の能力削除
長い上に難しくて私には理解できませんでした
13.40名前が無い程度の能力削除
一番割り喰っためーりんに涙を禁じえないZE
14.20名前が無い程度の能力削除
館の周辺の空間をいじれば簡単に一網打尽できるだとか
殺し合いさせないために弾幕のルールが作られたとか
そんなことはどうでもいいんです。とにかくこの夢オチみたいな虚しいラストをどうにかして欲しかったです。
17.100名前が無い程度の能力削除
最初から一気読みしてきましたよ。最近少ないガチバトルもので楽しく読めました。
何より紅魔時代のカリスマお嬢様がみれて良かったです。戦う理由も悪くなかったかと。
あえて言えばいくつかまとめて投稿したほうが良かったのではないかと思います。評価はまとめてこの点数
18.50名前が無い程度の能力削除
長い……。

感想としては「独自解釈お疲れ様でした」の一言を。
22.50名前が無い程度の能力削除
終盤からの話の内容が、どうしても理解できない。
そもそも、ここまでの大規模な戦闘をする意味があったのかが疑問に残る。
それに、話の内容にしてはラストがインパクトに欠ける
24.10名前が無い程度の能力削除
つまり纏めると
フランが狂気に取り付かれる→フラン幽閉→フランが自分の運命を破壊→レミリアがフランを救えなくなる→態々永遠亭がフラン救出
ってことでいいの?
なんで何の繋がりも無い永遠亭がフランを救出するのかわからんし、フラン自身は戦いのことを魔理沙がくるまで知らなかったのに何か狂気が解けた!っぽいことになっててイミフだし
もしこんなんで解けるなら魔理沙が最初にフランに会った時点で狂気が解けてないとおかしいだろと

それと魔理沙死んでるだろ・・・
ボロボロの身体で痛み消した状態なだけで炎の紅魔館に突撃とか・・・ボロボロの魔理沙にそれできるならてゐにだって出来ただろ・・・
魔理沙が行ったことはビルの屋上から飛び降りて、また上に上って飛び降りてを何度も何度も繰り返してるのと同じことじゃないか
魔理沙が人間らしからぬ頑丈さを持っていた上に死ぬかもしれないってことを何の義理も無い永遠亭のために犠牲になろうとする姿勢もわからん
雇われ傭兵でも命の危険が迫ったら逃げますよ
ついでにパチュリー視点で見ると魔理沙がすっげぇウザイ
勝手に本は持ってく上に紅魔館殲滅作戦に参加してるし、何度も出てくるしウザイことこの上ない
しかも話の内容的にパチュリーに感情移入しやすくなってるからなお不快
25.10名前が無い程度の能力削除
そういやなんでフランちゃんは戦わないの?
自分を外に出すためとはいえ紅魔館も住民たちもボロボロだよ?悔しくないの?
フランちゃんの紅魔館に対する思いはそんなもの?
28.100reabook削除
圧巻。いや、圧倒的感動で圧感。
このボリュームと、それぞれのキャラの見せ場と、この大団円的な締め。
もう文句なしに最高です。戦略的なとこも含めてドキドキさせられっぱなしで、
一気に読みました。いや、ありがとうございます。
いいもん見た。
29.90名前が無い程度の能力削除
いろいろと突っ込むところも多いけど、カッコよかったです。