Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷雀王決定戦 ~ようやく本番な3~

2008/06/21 03:46:32
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※この作品は、麻雀の名を借りた能力バトル物です、
※普通の麻雀の勝負を期待していた方はゆっくりしていってね。
※なお途中に無意味に挟まれる麻雀牌の表記は、
※萬子(一~九)索子(1~9)筒子(①~⑨)となります、機種依存で申し訳ありません。



予選が終わった後、パチュリーが美鈴に連れられてやって来たのは門番の詰め所だった。

「ちょっと待ってくださいね、今準備しますから」
「準備……?」

そういって美鈴が壁に隠されたスイッチを押すと、
途端に床が割れ、そこから全自動卓が競りあがってくる。

「あとは隊形説明用の黒板と……」
「美鈴……こんな仕掛けどこで作ったのよ」
「仕掛け? ああ、名うての雀士なら皆これぐらいの設備は持ってますよ」
「……奥が深いのね」

黒板を設置しながら背中越しに答える美鈴、
パチュリーも卓の付属されている椅子に腰掛けると、その様子を眺めていた。

「準備は出来ました、ではボードの方をご覧ください」
「もう見てるわ」
「早くて助かります……まずは幻想郷の麻雀についてでしたね」

チョークで黒板にカツカツと文字を書いていく美鈴。

「麻雀そのものは五十年程前にはすでに幻想郷にあった模様です」
「むきゅむきゅ」
「妙な頷きですね……、それで幻想郷の麻雀を打つ場所として最も有名な場所が、
 人里の繁華街にある幻風荘です、かくいう私もここでよく打ってました」
「むきゅきゅ」

パチュリーが頷くたびにむきゅという音が静かに鳴り響く。

「有名な打ち手を羅列しましょう、まず代表的存在として幻想四雀鬼がいます、
 四にて死に誘う姫、四喜少女、筒ちゃん、そして最後の一人が……九連の狐」
「九連の狐?」
「八雲藍さんの事です、10回和了れば6,7回は九連という豪腕の持ち主ですよ」
「ぶっちゃけありえないわね」
「でもありえるんです、幻想郷ですから」

そして美鈴はさらに黒板の文字を増やしていく。

「続くトップクラスとして、幽香さんや雛さんなどがいるのですが……」
「……ですが?」
「ここ最近、お嬢様のような新参にして豪腕の打ち手が増えまして」
「ああ……そういえば私たちはまだここでは新しい方の住人だったわね」
「それによって幻風荘のパワーバランスは大幅に変わりました、
 新たな打ち手はさらに増え、その様子はさながらに戦国時代と言えるでしょう」
「ふうん……で、私はどのあたりに入るの?」
「パチュリー様ですか……残念ですが、トップクラスの一つ下に割り込めるかどうかでしょう」
「つまり、順序で言えば……」
「上から三つ、ないしは四つ目のグループに位置する存在です……」

一旦視線を落とし、自らの力量を再確認するパチュリー、
一度だけ深く溜め息を付くと、視線を美鈴へと戻し、質問を問いかける。

「で、あなたはどのあたり?」
「えっ!? わ、私ですか!?」
「隠し事は一切無しよ、もし隠したりしたら……かばってあげないわ」
「は、はい……私のレベルは、このトップクラスの方たちを鴨にする程度です」
「……え?」
「順序付けでいえば、四雀鬼とトップクラスの間、と言った所でしょうか」
「それって……凄く強いって事?」
「そういう事になりますね、四雀鬼の影に隠れた猛者、とでも」

それはパチュリーにとって衝撃だった、普段は弄られ役のただの門番が、
自分より確実に上手と断言した者達を鴨にしていたのだから。

「その影の猛者として名をはせているのが、紫さんや閻魔様です、
 基本的に職務が忙しかったりして中々打つ機会の無い方々ですね、
 私も基本的に、紅魔館に雇っていただく前は地味な妖怪をやってましたので」
「つまり、打つ回数が少ないけども強いグループ?」
「そうですね、四雀鬼の方々と違って滅多に見ませんから影的な存在なんです」
「むきゅ……」

そして美鈴の書き込むペースが一気に加速し始めた。

「ですが先ほどもいいましたように、今はトップクラスから四雀鬼レベルの間に
 割り込んでくる方達が増えました、それこそ過去に類を見ない速さで」

カカカカッと凄まじい勢いで黒板に名前を羅列していく美鈴。

『地和の洩矢諏訪子、十三不塔のフランドール・スカーレット、
 天和の八坂神奈子、天才の打ち回し八意永琳、緑一色の蓬莱山輝夜、
 人和のレミリア・スカーレット、砕卓の伊吹萃香』
「……と、新勢力の代表的な存在としてはこのような方々がおられます」
「むきゅむきゅ」

最後まで書き終えるとチョークを置き、美鈴は真剣な眼差しでパチュリーを見つめる。

「パチュリー様」
「むきゅ?」
「何故お嬢様を含めた方々がこのような余興に参加したと思います?」
「……何故って、最強を決める為でしょう?」
「違います、それは建前に過ぎません」
「どういうことかしら?」
「この戦いの真の目的は……幻風荘、その旧勢力と新勢力の覇権争い!!」
「むきゅっ!?」

美鈴は再度チョークを手に取ると、今度は区分けして黒板に名前を羅列していく。

「現在生き残った十六名の中ではまず旧勢力として四雀鬼の西行寺幽々子、射命丸文、
 八雲藍、影の猛者の八雲紫と私の五名が、そして新勢力は八坂神奈子、洩矢諏訪子、
 フランドールお嬢様、パチュリー様、蓬莱山輝夜、藤原妹紅、伊吹 萃香の七名、
 残りの霧雨魔理沙、魅魔、東風谷早苗、咲夜さんなどは不確定要素と言った所でしょうか」
「私に覇権争いとかそういう気持ちは無いんだけど……」
「旧勢力の方々が一方的にやる気を出しているというのが正解ですね、
 ですが新勢力の中でも新しい神社の方や、鬼はその気ですよ」

段々と話が重くなり始めた模様です。

「その点で考えれば筒ちゃんが落ちたのは痛いですね、
 お嬢様には予選で落ちてほしくは無かったのですが、これからを考えると……」
「成る程、確かに旧勢力はやる気満々ね」
「……話が逸れていました、まあ今現在の幻想郷の麻雀事情はこんな所です」
「事情は分かったわ、麻雀についてはまだだけど」
「はい、では本題に入りましょう」

美鈴は一度頷き、黒板の文字を消すと、今度はパチュリーの名を書いた。

「パチュリー・ノーレッジ……七曜の魔女、動かない大図書館、紫もやし」
「……嫌味?」
「違いますよ、名前や通称は麻雀で勝つ為の大事な要素です」
「どういうこと?」

パチュリーが頭を捻ると、今度は黒板に紅美鈴と書かれる。

「紅美鈴、気を操る程度の能力……これを麻雀に通ずる物にすると何になります?」
「……考えても思いつかないけど」
「正解は「機」を操る程度の能力、つまり機会を察したり、作り出す程度の能力、
 例えばここに来る前パチュリー様は言いましたよね、役満を頭跳ねで潰したり、
 親の連荘を人和で止めたりと……これらはつまり守りの機、というわけです」
「……つまり、こじつけ?」
「う~ん、言ってしまえばそうなりますね、強引にでも自分に合う雀力を持つということです」
「雀力……ねえ」
「はい、雀力です」

黒板の上部にでかでかと書かれる雀力の二文字、
次いで美鈴は自分の苗字である紅を丸で囲み強調する。

「さて、私の雀力は機を操るだけにとどまりません、
 私の苗字である紅、これも私は雀力へと通ずることに成功しました」
「(そんな名前だったかしら……?)」
「何故か怒りがこみ上げてきましたがそれは抑えておくとしまして、
 この紅を麻雀に通ずる物にすると何になると思います?」
「紅……紅い色、すなわち中を操るとか?」
「一割は正解ですね……答えは紅孔雀、紅一点を上がる程度の能力です」
「……そんな役聞いたことないけど」
「外ではそうでしょう、ですがここ、幻想郷では違うのです」

段々と怪しげに感じてきたのか、パチュリーの目つきがじとりと垂れ下がりはじめる。

「ちなみに今上げた二つの役は全て役満になりえます」
「あーはいはい、それで私の場合はどうなるの?」
「投げやりにならないでくださいよ、ここからが一番大事なんですから」
「むきゅーむきゅきゅきゅー」
「頷きでリズムを取らないでください」

仕組みは不明。

「では最初にお伝えします、このままではパチュリー様は絶対に勝てません」
「元から勝てる気なんかしてないのだけど」
「……まあ、いきなり幽々子さんの雀力を目撃してましたし、
 仕方はありませんが、それ以上に決定的な理由があるんです」
「決定的な理由?」
「はい、普通の人間には不可能な打ち回し、人知を超えた領域へと麻雀が突入した時、
 幻風荘の雀士達によってあるルールが作られました、驚異的な腕前を持つもの同士が
 打ち合うときに選ばれるそのルールは、ほぼ間違いなく次の戦いでも使われるでしょう」
「一体どんなルールなの?」
「……役満縛りです」
「むきゅっ?」

役満縛り、つまり役満以上でなければ和了ることすら許されないということ。

「各々の持ち点は96000点、そして役満の点数以外での点棒の移動は一切無し!」
「……それって、まともな勝負になるの?」
「パチュリー様からすれば信じられないようなルールですが、私たちには普通なんです」
「どこが普通なのよ」
「分かりやすくお伝えしましょう、例えば一般の方が一盃口で和了るとします」
「むきゅむきゅ」
「私達はそれと同じような感覚で四暗刻を和了ります」
「むきゅっ!?」

さすがのパチュリーも固まって動けないようだ。

「つまり、私達は役満で和了って当然なんです、そしてこのルールの真に恐ろしい所は
 役満の種類が一般的な麻雀のルールと比べて何倍にも増えること」
「増える……!?」
「つい先ほど書いた紅系の二つの役がありますが、これらは普通は役満とは認められません」
「しかしこのルールだと認められる……ということ?」
「はい、例えば私がレミリアお嬢様から最初に和了った跳満がありましたよね?
 あれも準紅孔雀といって実は役満なんです、結構苦肉の策だったんですよ」

準紅孔雀:1579索と白中のみで構成、中必須。

「他にも幽々子さんの四槓子は連槓和と複合して二倍役満、
 お嬢様の人和もこのルールでは役満扱いです」
「裏切ったわねレミィ……!」
「ですので、このルールですとパチュリー様は和了ることすら難しいわけです」
「そうね……七対子で役満は清一とドラを絡めてやっと……」
「絶対に勝てないといった理由がお分かりになられたでしょうか?」
「数え役満狙いでは不利すぎる、ってわけね?」
「そうです、だからこそパチュリー様は雀力を増す必要があります」

二人が共に頷いた後、美鈴は黒板に書かれた七曜の魔女を丸で囲んだ。

「今現在パチュリー様の雀力の根源は、七曜の魔女、転じて七対の魔女」
「え……何よそれ?」
「ご存じなかったんですか? 麻雀界でのパチュリー様の通名ですよ」
「勝手に名付けないで~」
「もしかして知らずに七対子を和了ってたんですか?」
「そうだけど……」
「(ふむ……つまり無意識に自分の力を知っていたということですか)」

パチュリーの返答に少し考え込む美鈴、
そのまま二、三分ほど思案すると顔を上げる。

「パチュリー様の雀力は七対子を源流とするものにほぼ間違いはないでしょう、
 とすればより雀力を増すように通じさせる必要があります……せめて10アカギまでは」
「……何よその10アカギって」
「ああ、雀力を現す数値ですよ、今のパチュリー様で3アカギぐらいです」
「だからアカギって何?」
「1アカギがアカギさん一人分の強さってことです、3アカギですと
 パチュリー様一人でアカギさん三人を相手にして互角に戦えるレベルとか」
「人名なの!?」
「さて、これを10アカギにするということは、和了の五割が役満というレベルですが」
「無視しないで~」

1アカギは10カイジ、1カイジは10黒服。

「どうやらコーチしてくださる方がすでに来ているようですね」
「むきゅっ?」
「アリスさん、そろそろ出てきてはどうですか?」
「……ばれてたのね」
「アリス……?」

入り口の扉を開け、その姿を現したのは七色の魔法使い。

「あなたに七対子の何たるかを全て教えてあげるわ、この七対の魔法使いがね!」
「……ねえ美鈴」
「はい、何でしょう?」
「アリスの雀力ってどのくらい?」
「ざっと7アカギって所ですね」
「美鈴、あなたは?」
「私ですか? 私の雀力は53アカギです」

アリス7~8人分。

「……美鈴、あなたが教えてくれない?」
「ちょっ! 待ちなさいよ!! 折角来てあげたのに!」
「ああ言ってる事ですし、相性というのもありますから……」
「レミィはどこ?」
「御免なさい! 偉ぶった私が悪かったです! ですからどうか教えさせてください!!」
「最初からそういえばいいのよ」
「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

こうしてアリスの熱意に押され、パチュリーの特訓が始まったのだった。





「皆様、長らくお待たせしました、これより準決勝を始めるぜ!」

どこから萃まってきたのか、予選の時よりもさらに多い観客達の
拍手に迎えられ、新たな戦いの幕が開く。

「というわけでまずは準決勝のルール発表からだが……、
 すでに観客の中にはどんなルールになるかお気づきの方もいるだろう、
 そう! 準決勝は幻風荘でおなじみ……役満ルールだぜ!!」


 ~麻雀準決勝戦ルール~
・半荘
・原点96000点
・役満縛り
・食いタンあり
・後付あり
・包無し
・赤牌・花牌無し
・点棒の移動は役満の点数のみ(リーチ等の点数の移動も無し)
・決して作者が点棒計算面倒臭くなったわけじゃないよ!


「それでは第一戦の組み合わせを抽選するぜ!」

ステージの上に用意されたのははてなマークがでんと書かれた箱、
魔理沙はその中に手を入れ、ぐるぐるとかき混ぜながらボールを四つ引き抜いていく。

「一人目はパチュリー・ノーレッジだ!!」
「……早速ね」
「頑張ってね、パチェ」
「特訓の成果を見せてよ!」
「当然よ」

パチュリーはレミリアやアリスの応援に答えながら、卓へと向かう。

「二人目は東風谷早苗!」
「あ、はい……」
「頑張りなよ早苗!」
「頑張れ~」
「……行ってきます!」

続いて早苗が神様二人に背を押されて卓へ。

「三人目は~、おおっと! この私こと霧雨魔理沙だ!」
「魔理沙!?」

意外な三人目にさしものパチュリーも戸惑った、
他にアリスも全力で悔しがっていた。

「そして最後の一人は……紅美鈴だ!!」
「っ!」
「中国、パチェに勝ったらどうなるか……」
「ナイフの準備は出来ていますわ」
「何で私ばっかり!?」
「冗談よ、精々頑張ってきなさい」
「せめて二位にはなるのよ?」
「微妙な応援ですね……」

最後の一人が卓に座り、面子が揃った。

「美鈴……勝負よ」
「はい、手加減はしませんよ」
「おいおい、盛り上がるのはいいが私もいるんだぜ?」
「一応私もいますけど……」


 ~準決勝:第一戦~

東一局零本場 東:魔理沙(親) 南:早苗 西:パチュリー 北:美鈴


「んじゃ早速私からだな……」

魔理沙の打牌と共に準決勝の第一幕が上がった、
まずは慎重に、各々が手牌を揃えていく。

「(まずは流れを掴むことが肝心……)」

――流れさえ掴めば、自分より雀力が何倍も上回る相手とも戦えるわ。

「(そうアリスは言っていた……ならば、ここで和了れば美鈴に勝てる)」

パチュリーもまだ流れも何も生まれていないこの場と
自分の手牌を見て最終形を想定し、打ち進める。

『パチュリー手牌 一三22①③③⑤⑥⑥⑦⑧⑧ ツモ①』

「(七対の魔女……その雀力の更なる発展から生み出せる役満は……車輪系!)」

パチュリーが頭に浮かべた最終形は清一と七対子を絡めた役満、
すなわち変則小車輪と中車輪であった。

「(よし、いけるわ!)」

三巡目にはパチュリーは②をツモり、さらに手を進めた、
全ては順調かに思えたが、パチュリーの思いは直後に寸断される。

「ツモ、萬緑叢中一点紅」
『えっ!?』

『美鈴和了 二二三三四四六六六八八八中中』

「古い役ですが、れっきとした役満ですよ」
「中国の役だな、さすがは中国」
「美鈴ですってば!」


1位:紅美鈴         128000 (+32000)
2位:パチュリー・ノーレッジ   88000 (- 8000)
2位:東風谷早苗       88000 (- 8000)
4位:霧雨魔理沙        80000 (-16000)

東二局零本場 北:魔理沙 東:早苗(親) 南:パチュリー 西:美鈴


「(強い……たった三巡で役満を決めてくるなんて)」
「(手加減はしないと言いましたからね)」

53アカギ、美鈴が言った自らの雀力が嘘偽りは無し、
その圧倒的な力の差に、パチュリーの覚悟が揺らぐ。

「(私は……勝てるの? この圧倒的なまでの強者に……)」

焦りを漂わせながら打ち進めるパチュリー、
しかし彼女の覚悟を取り払ったのは意外な人物だった。

「パチュリー、そんなに焦ると和了るものも和了れないぜ」
「焦ってなんかないわ、焦ってなんか……」
「しょうがない、私が手本を見せてやるぜ、リーチ!」
「(リーチ!?)」

魔理沙がリーチの声と共に千点棒を場に叩きつける、
だがパチュリーからすればそれは無謀でしかなかった。

「(役満はリーチをする必要なんかない……美鈴相手に数え役満で勝負を挑む気なの?)」
「見てろよパチュリー、魔法使いの魔法をな!」

リーチを宣言した後、二巡、三巡と場が巡る、
そして美鈴が八萬を捨てた後、魔理沙が手牌を倒した。

「ツモだ!」

『魔理沙和了 一一二二三三七七七八八北北北』

「リーチ、ツモ、北、一盃口、混一ドラ3だぜ!」

ずらりと綺麗なその和了形、しめて10飜。

「魔理沙、役満にはあと3飜届かないわよ?」
「ふふ、私の魔法はこれからだぜ?」

そう言い、魔理沙はドラ表示牌の下の牌をめくる、
そこに現れたのは六萬、よって裏ドラは七萬となった。

「さらにドラ3を追加……合計13飜、数え役満だ」


1位:紅美鈴         120000 (- 8000)
2位:霧雨魔理沙      112000 (+32000)
3位:パチュリー・ノーレッジ  80000 (- 8000)
4位:東風谷早苗      72000 (-16000)

東三局零本場 西:魔理沙 北:早苗 東:パチュリー(親) 南:美鈴


「どうだ? 私の魔法は」
「……やるのね」
「ま、伊達に魔法使いじゃないってことだ」

魔理沙の見事なまでの和了に、パチュリーは感心せざるを得なかった、
だが何よりも感心させたのは、魔理沙の自分に対しての絶対なまでの自信。

「(裏ドラが三つも乗る可能性は低い、だけど魔理沙は乗ることを疑わなかった、
 理解したわ、雀力を使いこなすと言うことは、自分を信じること……!)」

雀力を理解したパチュリーの顔からは焦りが消え、
いつものようにふてぶてしくも無表情な顔が戻る。

「(私は私の力を信じればいい)」

パチュリーは自らの手牌に対子を萃め、またも車輪系の役満を狙う、
しかし和了していないパチュリーに流れは今だ来ない。

「ツモ、紅一点」

東三局は流れを逃さんと美鈴が和了る、そしてその流れを一気に受け、
続く東四局でも美鈴の勢いはとまらなかった。

「ツモです、四暗刻、そして純正紅孔雀!」
「く……何て雀力だ!」
「このままじゃ……止められないわね」

純正紅孔雀、一五七九索と中の五種で構成し和了った役であり二倍役満となる、
四暗刻と合わせて計三倍役満なり。


(東三局+四局零本場)
1位:紅美鈴        296000 (+176000)
2位:霧雨魔理沙      56000 (- 56000)
3位:パチュリー・ノーレッジ  16000 (- 64000)
3位:東風谷早苗      16000 (- 56000)

東四局一本場 南:魔理沙 西:早苗 北:パチュリー 東:美鈴(親)


「(流れが完全にあっちにいっちまったな、まずいぜこれは)」
「(これが雀力53アカギの強さ……)」

美鈴の強さはまさに圧倒的だった、
すでにパチュリーと美鈴の点差は28万、
二位の魔理沙ですら24万もの差が開いている。

「(せめてこの流れが変わってくれれば……)」

準決勝第一戦、その勝負はもはや決したかに思われたが、
魔理沙の願いを神が聞き入れたのか、その願いが届く。

「あ、美鈴さん、その一索ロンです……えーと、四暗刻、かな?」

『早苗和了 一一一九九九11999①①①』

「……す、四暗刻単騎、清老頭ですか……」
「え? え?」

早苗の起こした奇跡は三倍役満の形を得て降臨した、
そして美鈴一辺倒だった流れが急激に乱れたのを魔理沙もパチュリーも感じ取る。


1位:紅美鈴       200000 (-96000)
2位:東風谷早苗      112000 (+96000)
3位:霧雨魔理沙      56000 (変動無)
4位:パチュリー・ノーレッジ  16000 (変動無)

南一局零本場 東:魔理沙(親) 南:早苗 西:パチュリー 北:美鈴


「(美鈴の流れは逆流した、和了するとしてもほぼ終盤……チャンスは今ね)」

早苗の起こした奇跡が美鈴を止め、死にかけた場を揺り動かす。

「(でもここで急いではいけない、まずは考えること、雀力を発揮するためにはどうするか)」

パチュリーはその機を得るため、高速で思考を巡らせる、
そして彼女が行き着いたのは、今自らが目指そうとしてる雀力を疑うことだった。

「(私は本当にこれでいいのかしら? 確かに七対子系の役満を目指のが普通……)

アリスと二人で行き着いた結論、それは七対子の上位である車輪系や竹林系の役満を
目指すことだった、しかしそれは本当に正しかったのだろうか?

「(アリスと私は似て非なる存在、アリスの雀力は七対子を求めても、
 私の雀力は待ったく別の物を求めているのかもしれない……)」

パチュリーは考えに考え、手牌を再度確認する。

『パチュリー手牌 一44577④⑧北南白中中』

「(美鈴の代名詞の中が私に二枚……やはり美鈴の流れは最悪……)」

中から流れの悪さを感じ取るが、自らの手牌も良いとはいえないもの、
しかししばらく睨みあってる間に、パチュリーは何らかの違和感を感じ取った。

「(中が二枚……中が対子?)」

やがて自らのツモ番が来る、引いた牌は5索、
それを手牌の上に乗せ、北を手にとる。

「(……駄目!)」

だが何を思ったか、パチュリーは北を元に戻し、ツモった5索を切った、
この時パチュリーは目指すことの出来た小、大竹林を捨てたのだ。

「(……見えた、私の目指すべき和了形!)」

その後、荒れた場は誰も和了に導く事無く巡り続けた
しかしその中で和了りへ一番真っ直ぐに向かっている者がただ一人。

「(いいわ、これで聴牌……!)」

『パチュリー手牌 東東南南西西北北白白發中中』

パチュリーの手に綺麗に並ぶ字牌、彼女が目指したのは字一色だったのだ。

「(ここで……流れを掴む!)」

そして誰も和了ることなく、再度パチュリーにツモ番が巡ってくる、
慎重に、そして臆する事無く牌をつまみ、その目で確認した。

「……ツモ、字一色よ」

『パチュリー和了 東東南南西西北北白白發発中中』

それは彼女が自分の新たな雀力に辿り付いた瞬間だった。

「16000、8000よ」
「いや、そいつは違うな」
「ええ、違いますね」
「むきゅっ!?」

あとは点棒を受け取るだけ、のはずだったのだが。

「な、何? これじゃ和了れないの?」
「正しく言えば、その手牌は字一色では無いんですよ」
「どういうこと? た、ただの七対子になるわけ?」
「いやいや、その役の正しい名前は七星……二倍役満だぜ」
「むきゅきゅっ!?」


1位:紅美鈴        184000 (-16000)
2位:東風谷早苗      96000 (-16000)
3位:パチュリー・ノーレッジ  80000 (+64000)
4位:霧雨魔理沙      24000 (-32000)

南二局零本場 北:魔理沙 東:早苗(親) 南:パチュリー 西:美鈴


「(七星……これが私の雀力なの……?)」

二倍役満、それを和了った事に興奮を抑えれないパチュリー、
それでも何とか平常を装って競りあがってくる手牌を見る、
するとそこには自らの目を疑うような光景が待っていた。

『パチュリー手牌 東東東南西西北北白發發中中』

「(し、七星の一向聴!?)」

場の流れは一気にパチュリーへと傾き、後押しを始める、
ここまで揃えばもはや誰もとめることは出来ず、
三巡目、パチュリーはその手牌を倒した。

「ツモ……よ、七星、二倍役満」

そしてこの時、パチュリーは自らの雀力が何たるかを理解した、
七曜の魔女、転じて七星の魔女、その能力、七星を和了る程度なり。


1位:紅美鈴        168000 (-16000)
2位:パチュリー・ノーレッジ 144000 (+64000)
3位:東風谷早苗       64000 (-32000)
4位:霧雨魔理沙      8000 (-16000)

南三局零本場 西:魔理沙 北:早苗 東:パチュリー(親) 南:美鈴


「(いける、これなら美鈴を超えられる……!)」

流れは完全にパチュリーのものとなり、
美鈴との点差も役満一つで逆転できる距離となった、
それどころか、あと一回でも七星をツモで和了れば魔理沙が飛び、
決勝進出へと手が届く範囲まできたのだった。

「(この勝負、私が勝……)」

ちらりとパチュリーは横目で美鈴を見る、そして映ったのは、
普段の様子からは想像だに出来ない程の凄みに溢れた美鈴だった。

「……雀、解」

その時美鈴が呟いた言葉は、パチュリーの耳だけが聞き取ることができた、
言葉の意味は理解できなかったが、美鈴からの危険な何かは感じ取れた。

「(何かしてくる……?)」

気圧されるものの、流れは自分に有りと手牌を確認する。

『パチュリー手牌 三⑦東東南西西北白白發発中中』

「(一向聴、中も二枚ある……これなら美鈴でもどうにもならないはず……)」

美鈴が紅系の役満を和了るのに必要な中、
それを二枚自分の手に確保し、なお和了まで一向聴、
状況は確実にパチュリーを勝利に導く状況だった。

「(……よし)」

三萬を捨て、二巡後には南をツモる、七星の聴牌である。

「(この流れなら早くて次、遅くても三巡以内にはツモ和了れるわ)」
「……ツモ」
「えっ?」

勝負は決まった、そうパチュリーは確信した、
しかし直後、美鈴は手牌を倒し、ツモを宣言したのだった。

「五龍鳴動、役満です」

『美鈴和了 11223345688899』

「(嘘……美鈴の流れは最悪だったはず……)」
「(申し訳ありませんパチュリー様、ですが私も負けるわけにはいかないんです)」


1位:紅美鈴        200000 (+32000)
2位:パチュリー・ノーレッジ 128000 (-16000)
3位:東風谷早苗        56000 (- 8000)
4位:霧雨魔理沙        0 (- 8000)

南四局零本場 南:魔理沙 西:早苗 北:パチュリー 東:美鈴(親)


決戦の終末は、あまりにもあっさりと訪れた、
卓から競りあがってきた牌を、並べ替えるまでもなく倒す美鈴、
他の三人が突然のことに固まっている中、美鈴は牌を見つめて淡々と呟いた。

「天和、紅鶏報暁、四暗刻単騎……四倍役満です」


 準決勝第一戦最終結果

1位:紅美鈴         392000 (+192000)
2位:パチュリー・ノーレッジ   64000 (- 64000)
3位:東風谷早苗       - 8000 (- 64000)
4位:霧雨魔理沙    -64000 (- 64000)





ステージの上に張り出されている参加者の名簿、
それの一番にある決勝進出者の枠の中に紅美鈴の名が刻まれる、
美鈴はその様子を、どこか物憂げな表情で見つめていた。

「美鈴」
「…………」
「中国」
「ほぁっ! パチュリー様!」
「やっぱりあなたの名前は中国だったのね」
「ち、違いますっ! 美鈴です! 紅美鈴!」

背後のパチュリーの呼び声に中々気付けず、慌てて取り繕う美鈴。

「勝ったのに、嬉しくなさそうね」
「あ……その、本当はもう少しパチュリー様の活躍を見ていたかったんです」
「私の成長を……?」
「はい、パチュリー様が七星を和了られた時、本当に心の底から震えました、
 恐怖ではなく嬉しさでです、才能が芽生えた瞬間をもっと見ていたかった……」
「…………」
「でもそれ以上に負けたくない気持ちが出てしまって……」
「いいじゃない」
「え?」
「今度こそ、勝ってみせるもの」

そう言ったパチュリーの顔は、何よりも充足感に満ちていて、
暗くなっていた美鈴の心を晴らすには十分なものだった。

「は、はい! 期待して待ってます!」
「ああ、それはそうと美鈴」
「はい! 何でしょう!」
「雀解って何?」
「あ……聞こえてました?」
「ええ、ぼそりとね」
「……わかりました、この私がなんでもお教えしましょう!」


熱気渦巻く会場に、新たな猛者がまた一人、
紅に導かれるまま、彼女もまた新たな領域へと踏み込むのだろう。


そして戦いは新たなる舞台へと移る――。

.
20日だけで12作品……焦りました、
さてこの麻雀対決、ローカルな役満がどれだけあるのか調べてみれば
それはもうまさに膨大、ある意味書いてて楽しゅうございます。

今回の敗退者の能力
パチュリー・ノーレッジ:対子を集める程度の能力
パチュリー・ノーレッジ(覚醒):七星を上がる程度の能力
攻略法:覚醒前のパチュリーであれば能力を駆使すれば勝つことは容易い、
しかし覚醒後は七星を和了るどころか、鳴いて字一色、大三元、小大四喜まで和了ってくる、
コンビとして雛を連れて行くと打ち筋が鈍るため、勝率が二割は上昇する。

霧雨魔理沙:魔法を使う程度の能力
攻略法:百%リーチで勝負してくるため早上がりを狙えば容易に勝てる、
ただし和了ってしまった場合、確実に裏ドラが乗ってくるのでそこには注意、
出来るだけ振り込まないように戦いたい、コンビは並以上であれば誰でも。

東風谷早苗:奇跡を起こす程度の能力
攻略法:通常の場合は和了ることすらない特異なキャラ、
しかし自分が追い込まれたり、一位が独走すると奇跡を起こす、
出来るだけ点差が離れていない状態から倍満などで一気に飛ばすべし。

今回のローカル役満(コピペしそこねてました)
紅一点:緑一色の發が中になった物
萬緑叢中一点紅:紅一点の中が雀頭の場合はこちら
純正紅孔雀:一五七九索と中で構成、二倍役満
準紅孔雀:一五七九索と白中で構成、中必須
七星:東南西北白發中を揃えた七対子、通常ルールでも字一色で和了可
五龍鳴動:門前清一の状態で五を嵌張待ちでツモ和了
紅鶏報暁:一索、東白中の刻子と一筒の雀頭で和了
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.990簡易評価
3.90名前が無い程度の能力削除
1アカギの基準には異論を申し上げる!
え? パチュリーがアカギ3人分? ははは、ご冗談を……
4.90名前が無い程度の能力削除
雀解ってwwwブリーチ・・・だと・・・?

最高です
5.無評価名前が無い程度の能力削除
師事するってのは、師匠として尊敬して教えてもらうことですよ?
逆の意味で使ってる気がします。
6.無評価幻空混削除
>名前が無い程度の能力 ■2008/06/21 10:59:21
訂正しました、ご指摘ありがとうございます。
7.100名前が無い程度の能力削除
アンタ最高だwwwwwwwwwwwwwwwwww
八木さんのポジションに待機しつつ続きを楽しみに待ってます
10.90名前が無い程度の能力削除
面白く読ませていただきましたw
1から読みなおさせてもらって思ったのですが、2で「手牌を作りかえるのは反則」とのことですが、紫のやったこともこの反則に該当するのではないかと・・・・w
(正規にくる手牌と、結果を作り変えているので
11.80名前が無い程度の能力削除
ゆかりんの場合は山をつくる過程でレミリアのと入れ替えてるので反則ではないという解釈かと
一応、全自動卓だし。手積みじゃイカサマくさいけど。
(「手牌を作りかえる」の意味が物理的に作り替えるって意味かもしれませんが)
手牌を作り変えるのが反則じゃないと、咲夜さんに勝てる人いないし
てか、白一色って麻雀としてありえないw
12.無評価名前が無い程度の能力削除
11さん
それだと境界を操る能力よりも、レミリアのような運命操作に近くなるような気がするのですが。

まぁ、麻雀は同じ牌4枚しかないですからねw
18.100kou削除
楽しみながら読ませていただきました。
ローカル役っていろいろあって面白いなぁ。
この小説読んでローカル役いろいろ調べるようになりました。

続きも楽しみにしています
19.無評価名前が無い程度の能力削除
ミス

>五龍鳴動:門前清一の状態で五を搶槓単騎待ちでツモ和了
→五龍鳴動:門前清一の状態で五を嵌張待ちでツモ和了

槍槓は待ちではなくて役です。
また、単騎待ち以外に「単騎待ち」という表現は使いません。(例外として国士には使う場合もある
23.90名前が無い程度の能力削除
パッチュさんが3アカギなのやめーりんが53アカギなのはいいんだ、
あんな異常能力者たちの前ではそれはしょうがないと認めざるをえない。

しかし1アカギ=10カイジなのには異論を申し上げるっ!
せめて1アカギ=200カイジくらいにっ……!
24.100名前が無い程度の能力削除
とりあえず美鈴は変身をあと2回残しているという訳ですね。
26.100名前が無い程度の能力削除
うむ、麻雀は良いものだ。
30.無評価名前が無い程度の能力削除
作者と>>23に異論申し立てる!
「覚醒カイジはアカギを凌ぐ」とは他ならぬ福本伸行本人の言葉である!
よって2者の発言の訂正を要求する!


・・・といってもあくまでも「覚醒」カイジの話なんで、スルーしてくださいwww
34.100名前が無い程度の能力削除
これほどたくさんのローカル、ないし古い役をよくもまあ…
37.100名前が無い程度の能力削除
知らない役ばかりだったので後書きはありがたいです
39.90名前が無い程度の能力削除
面白かった。続きが読みたいなぁ

野暮なツッコミだけど、その1でゆかりんが、自分を四雀鬼と呼んでいたような。