Coolier - 新生・東方創想話

幻想ノ風・暴風編 零風~開戦~

2008/06/18 21:59:20
最終更新
サイズ
30.02KB
ページ数
1
閲覧数
661
評価数
2/25
POINT
1180
Rate
9.27

分類タグ


 時はやや遡り、幻想郷結界に穴の開く四半刻前。

 妖怪の山にある河童の里にて、にとりは巨大なリュックサックに荷物を詰めていた。
 物を開発・改造・修復する道具一式。そして武器になるものをいくつか。最前線で戦えないとしても、侵入してきた敵を迎え撃ち、前線で戦う仲間の援護ができるように。また、どんな敵にも対応できるように。
 にとりの事情については、数日前に天狗が河童の長老へと伝えた。無論それは、天狗の知る事実が完全な真実というわけでもないので、あくまでにとり自身が結界であるという部分は省かれたものであった。
 それを聞いた長老は、にとりに訊ねた。守られたいか、それとも守りたいか。
 私は、仲間と一緒に戦いたい。それがにとりの返答。嘘偽りのない、覚悟と願いであった。
 にとりの回答を受け、長老は微笑むと、本来は戦うなと言わねばならんが、最前線ではないのであれば許そう、と、にとりの戦線参加を許可したのだ。
 驚きながら、にとりは深く感謝をして、それ以来準備を整えてきた。万全ではないが、それなりに武器を集めることもできた。ただし、材料の不足はどうしようもなかった。表だって最前線に出ない為、戦う河童たちが材料を集め、自然とにとりの手元にはそれほど良い材料が残らなかったのである。

「……心許ないなぁ」

 手元の武器は、あくまで非常時用の物ばかり。威力はそこそこだが、何より対多数用ではないものばかり。一時撤退用、対一での鎮圧用など、そのくらいである。やはり材料を集め、何か頼れる武器ぐらいは作った方が良い。そう思うものの、今更材料を集めるわけにもいかず、にとりは腕を組んで唸ってしまう。

「にとりさん! 居ますか!」

 と、突然ノックもせずに戸を開けて、礼を欠いた客が飛び込んできた。それは血の気の失せた白狼天狗、犬走椛であった。

「あれ、椛さん?」

 意外なタイミングで意外な人物が来たと、にとりはやや驚きの表情を浮かべる。そして次の瞬間、そんな時は決まってろくでもない情報がやってくるのだと察し、意図せずに頬が僅かに引き攣った。

「あ、文さんが、どこにもいないんです!」

 両手で顔を覆うにとり。やっぱり悪情報だったと、何か無性に泣きたくなってしまった。と同時に、この状況下で問題を起こす文にかなり文句を言いたくなった。

「……どこにもって言うと、どういうことなの?」
「部屋にも、それに辺りも捜したけどいなくて、誰も見てないって言うし……ねぇにとりさん、私どうしたら!」

 混乱している所為だろう、音が乱高下する。
 にとりはハァッと短い溜め息を吐いてから、椛の両手をギュッと握って、ひとまず椛を落ち着かせることにした。

「哨戒天狗の任務は、報告が一番重要なんでしょ。しっかりしなさい」

 その言葉にハッとして、椛は自分の頭の中で渦巻く情報を必死に整理する。そしてそれを済ませると、未だ動揺を完全には押し殺せないながら、丁寧な説明を始めた。
 まず、文は結界修復の為にその力を霊夢に貸しており、戦うことはできないという説明が天狗の中ではなされていること。これに関しては椛も真実は知らないようで、にとりが文と同じ役割であることさえ知らない素振りであった。
 次いで、本日文の様子を見に行ったところ、中に気配がなく、匂いを追って探ったところ、窓から飛び出してしまったというところまでは判ったのだということ。
 現在、文は待機が命じられている。結界修復の役割を持っているというのだから、それは当然のことであろう。だからこそ、無断で飛び出したとあれば、それは罰せられても文句は言えない。そうなることが心配で、椛はこんなにも青い顔をして、天狗ではない友人の元へと駆けてきたのだ。

「お願い、にとりさん。文さんを捜すのを手伝ってください!」

 頭を下げて、必死に助力を乞う椛。同じ天狗仲間では、文の探索を頼めない。それなので、今の椛にとって頼みの綱となるのは、にとりくらいしかいないのだ。
 にとりは沈黙する。自分もまた、文より幾分か自由を与えられてはいるが、ほぼ同様の役割を帯びている。それを説明して断ろうかとも思うが、今にも泣き出しそうな椛が憐れに思えること、こんな時に飛び出した文のことが心配ということとが頭の中で重なって、無碍にはできないように感じてしまうのだ。
 しばらく思案してから、にとりは溜め息を吐きながら返事を返す。

「判った。私にもやることがあるから少ししか手伝えないけど、それでも良い?」
「はい!」

 問いの直後には返答。と同時に、椛の顔色が血の気を取り戻していく。
 十五分くらいかな、とにとりは計算し、その間に最大限動き回れる装備を探す。

「な、何してるんですか?」

 一刻も早く文を探したい椛は、部屋をウロウロとするにとりを急かす。

「時間がないんでしょ。だから、時間を有効に使える道具を……あ、あったあった」

 ゴトリ。
 衣装ダンスの中から、かなり不似合いな鉄の塊が転がり出る。それは流線型をした、筒と円錐を足したようなシンプルなもの。ただし、それは随分と巨大であり、にとりの身長よりも大きい。それがどのように衣装ダンスに入っていたのか、椛にはそこが酷く気になった。

「……なんですか、それ」
「これは人間を飛ばす為のロケット。単純な設計だけど、凄い速度で飛べる優れものよ。定員は二人だから丁度良いと思ってね。この前友人に貰って、いつか改造しようと思ってたの」

 試用するのが楽しみなのか、にとりの声がちょっと弾む。そしてそれを自覚すると、不謹慎かと思って、小さく咳払いをした。

「これで人を……飛ばす?」
「そう」

 口にしながら、にとりは耐火服を二着取り出して椛に差し出す。

「はい」
「え、これは?」
「それ着ないと、最悪燃えるから」
「危険すぎませんか!? というか私は自分で飛べますし……それに別々に探した方が」
「どんなに速く幻想郷中を飛び回っても、私に千里を見通す力はない。だから、あなたが見るの」
「うっ」

 現在、にとりはそのロケットを使うことしか頭にない。他の方法による手助けなどはもう浮かばないし、考えようとも思っていない。そしてそんなにとりの考えが良く判ってしまったので、椛も閉口する。
 ……もしかすると、助けを求める相手を間違えたかもしれない。
 真剣にそう思ったりしたが、さすがにそれは口にしなかった。
 その数分後、耐火服を着用したにとりと椛は、完璧にロケットを装着していた。ロケットをにとりが背負い、更に椛を抱えるような恰好で固定されている。手にはロケットを操作するレバー。不謹慎とは思いながらも、にとりは興奮が抑えられなかった。
 一方で、椛は先程までとは別の気持ちで血の気が失せた顔をして、手の平を合わせては念仏を唱えている。

「それじゃあ、行きますよ椛さん」
「………っ!」

 ビクリと身を震わせると、キュッと目と口を閉じる。目は開けてなさいと思いはしたが、飛んだら開くだろうとにとりはレバーを弄る。
 発射までのカウントダウンへと入った。にとりは始めは右に回る感じで幻想郷を一周しようと、レバーを操作する。そしてその途端。

「……あっ」

 にとりが呟く。

「………?」

 その声に、恐る恐る椛が目を開く。
 にとりの手には、力なくぶら下がるレバー。それは、ロケットから抜け落ちていた。
 一瞬で真っ青になる二人の表情。次の瞬間ににとりは背中のロケットを外そうとするが、既に遅い。
 着火。

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 爆音と土を巻き上げながら、二人はその悲鳴と共に空を切り裂いて突き進んでいった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 静かな空。
 風もなく、雲がのんびりと泳いでいく夕刻の空。
 そこに、少しばかり強めの風が吹いて、霊夢の前髪をしゃらしゃらと揺する。
 耳を澄ませば聞こえる、何かの割れる音。空気がひび割れていく。幻想郷の空が壊れていく。

「……案外呆気ないわね」

 手を結界の中心から引き抜き、霊夢は大きく息を吐く。
 たった今、幻想郷結界にはいくつもの穴が開いた。もうすぐ外の力が流れ込み、それが化け物となって幻想郷中に溢れ、襲い来る。
 まったく、面倒なことになった。
 そんな思いと共に、霊夢の表情が曇る。不安な気持ちが止まらず、肩が震えてしまう。

「……あぁ、辛いわ」

 何もできないことが、これほど苦しいことだとは知らなかった。
 霊夢は戦闘に参加できない。戦ったところでほとんど効果がないというのも理由だが、結界修復の為に力を温存しておかなければならないという一番の理由がある。それが極めて大事な役目であり、どんなことがあっても成功させなければならないことだというのも理解している。
 だが、その上で苦しかった。どうしても、自分の無力さが苦かった。

「考えない。気にしない……仕方ないことでしょ」

 自分に言い聞かせると、再び結界の中心に手を差し入れ、続けて結界を発動させる。
 準備していた、補強用の結界。今開いた穴が、これ以上は拡がってしまわないようにする為のもの。
 もう外の力……敵は溢れ出してくる。敵が来たのなら、霊夢は萃香と藍に守られ、ただその二人の姿を見ていることしかできない。
 思わず強く噛み締めた歯で、唇を噛み千切りそうになる。

「そんな顔するもんじゃないよ。似合わないから」

 と、そんな霊夢の頬を萃香が優しく撫でる。
 頬を撫でられたことに対して、照れくさそうにそっぽを向いて見せるものの、手は払わない。なんとなくではあったが、萃香の言葉で安心した部分があったからだ。

「……二人とも、そろそろ来るぞ」

 空を睨みつける藍が、二人に聞こえるようにそう呟く。すると、霊夢はふぅと息を吐き、縁側から中へと上がる。

「お茶でも淹れて飲んでるわ。欲しくなったら言ってね」

 気楽。それを演じる。二人が気を遣わぬよう、そして自分が折れてしまわぬように。

「お茶菓子に団子と酒でも用意しておいて」
「それなら私は酒と炙った油揚げだ。醤油も用意しておいてくれ」
「お茶だって言うに」

 空気が緩む。霊夢の心が判る二人もまた、霊夢の為に僅か巫山戯る。
 霊夢が台所へと向かう背を見送ってから、再び氷を思わせる雰囲気を纏い空を睨みつける。鋭く、空を裂くような空気。それはまさに、抑え込まれた激情であった。
 そうする内、視界にふと、黒いものが映る。
 ついに敵が現れた。
 刹那、空気が爆ぜる。藍の纏っていた冷気は炎熱と化し、圧倒的な質量と持ったままで周囲を焼き尽くそうと空気は燃え広がっていく。
 触れるものを破砕する冷気。触れるだけで炎上する熱気。それは、理性と野性とがそれぞれ生み出した、純粋な怒りの結晶であった。
 歯を剥き、軋ませ、藍は空から湧いてくる黒い敵に対して全力の殺意を向ける。

「お前たちは関係ない……紫様の死には、お前たちが関係ないのは判っている」

 ギラギラと燃えている瞳と裏腹に、言葉は酷く冷静なものであった。けれどそれも僅かに震え、薄ら氷のような危うさを孕んでいる。

「だが、私の怒りを向ける先は、お前らしかないんだ」

 淡々と語る。そしてそこで一旦言葉を句切ると、藍は全身を強張らせ、拳を振るわせる。周囲に溢れる熱ではまだ足りないと、もっと内側の熱を外に出させろと、牙を剥いて。

「悪いが、八つ当たりをさせてもらうぞぉぉぉぉぉ!」

 咆哮。見るもの全てを吹き飛ばし打ち砕こうとする、暴力の轟音。
 突如、抑え込んでいた感情と共に噴き出した九尾の力が、青白い光を放ちながら空へと立ち上る。それはまるで、天を支える柱のようにも見えた。
 それを見ていた萃香は、暢気そうに頭の後ろで組んでいた手をゆっくりと下ろす。

「本気だねぇ、藍。それなら、私も本気でいこうかな」

 ゆっくりと足を肩幅に開き、両手をゆっくりと握り込む。そしてそれを、ぶつけ合う。

「紫が消えた憂さ晴らし、まだ私もしてないしねぇ!」

 鋼と鋼が打ち合うような音を響かせ、この鬼もまた牙を剥く。
 九尾と鬼。馬鹿げた力を放出しながら、二人は闘志を隠すことなく空を見上げる。
 茶を入れて縁側に戻った霊夢は、その二人のやる気に僅かに呆れてしまう。対して自分はというと、なんとなく全身に怠さを感じ始め、仰向けに寝転んでしまおうかと少し思案をしていた。
 ピシ、ピキ
 不意に聞き慣れない音がして、霊夢は音のした空を見上げた。

「……あ、あの馬鹿たち」

 顔が引き攣った。
 折角補強した結界が補強ごと割れ、穴がより大きなものへと変わっていた。

「……そりゃ、結界が二人いて、片方が九尾の狐と一緒に本気出してりゃ壊れるか」

 ひくひくと引き攣る頬を押さえ、呆れた顔のままで盛大な溜め息を吐く。

「ま、自分らでやったことなんだから、どうにかしなさいよ」

 その言葉は、どこか楽しげであった。
 縁側に腰を下ろす霊夢の視界の中で、藍と萃香は構えを取る。藍は無駄に放出した力を整え、自分の中で暴れる感情と力を制御する。ここしばらく眠らせていただけあって、開放したてではまだ扱いが難しかった。
 空から現れる敵は大抵は、やや大きめの鳥や獣、あるいは巨大な虫といった姿をしている。自然に近い物の形を取ろうとするようだ。といっても、完全な肉体を持っているわけではないので、影が固まったような肉体しか持たず、見た目には動物のような形の影、というものにしか見えない。
 空から一直線に自分を目掛けて降りてくる鳥の形をした敵を、藍は自分の間合いに入った直後に裏拳で叩き落とす。その一撃を受け、敵は地面に身を擦りつけた。土煙と共に、土に擦り下ろされた偽りの肉体が霧散していく。こうして、外の世界の力を取り込んでいくのだ。
 目的は一つ。結界修復に足るだけの、敵を倒すこと。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 藍は再度咆哮し、空へと駆け出す。そして、地面に降り立つ前の敵の頭部を片手に一体ずつ握り締めると、背骨を軸に横回転をする。その遠心力に、敵は肉体を保てず、あっという間に頭部と胴体が切り離され、先程と同じように霧散する。そして霧散を確認するや、藍は次の敵へと飛んでいく。

「はぁ!」

 捻りながらの掌底。触れた相手を回転させながら打ち砕く。そして押した勢いを自分に乗せて飛び、また別の敵へと飛んでいく。
 それは野性的でありながら、鋭い理性を充分に生かした戦闘手段であった。
 一方、少し離れたところで萃香も戦っている。地面に降り立ったその敵に対して、本気の拳打をみまう。拳は敵を貫通せず、まるで巨大な岩で殴りつけているかのように敵の全身を押し潰した。
 この戦闘を始めて、紫の書に書かれた、戦えないという事実を萃香は身を以て知ることとなる。敵に触れると判るのだが、触れた瞬間に、実際には触れていない範囲まで一気に浸食されるような感覚に襲われる。感覚だけでなく、触れた場所に関しては酷い火傷のような状態になってしまう。藍が大丈夫な以上、これは結界に対してのみのもの。また、敵を萃めて放り投げようともしたが、ほとんど効果はなく、まるで暖簾に腕押し。
 そこで萃香は、自分も能力も敵と直接触れない戦闘方法を考えた。自分の腕の周囲に空気を萃め、強固な膜で拳を覆う。こうすれば、敵に触れることで一時的に萃める力は弱くなるが、殴りつけることはできる。能力と肉体を合わせれば、戦えないことはなかった。
 しかし、そう考えると他の奴も戦えるような気が萃香にはした。萃香は、自分が戦える理由については自覚がなかった。この結界が不安定な状況下で強い疲労をせず、また能力を自在に使えること。それこそが、萃香と幽香が戦える理由。この二人だけは、結界がどういう状態にあろうと一定の期間は影響が訪れないようになっているのだ。

「さてと。戦い方が殴る蹴るだけになっちゃうなぁ」

 そう呟きながら、振りかぶった拳で眼前の敵を破砕する。敵に触れる寸前に空気の皮膜を拡げ、その拳打の衝撃範囲を拡げる独特の攻撃手段。もしも拳が貫通してしまったら、敵の体内に入った手が皮膜を失った手に密着して傷を負ってしまうので、それを防いでのことであった。
 空中を跳ね回り、手当たり次第をむちゃくちゃに叩き潰す藍。地上で構え、降り立った敵を次々と撃破する萃香。怒りに任せる藍の粗を萃香が埋める形であるが、これが存外上手く作用し、神社に近付く敵は一匹たりといなかった。それほど、鬼の反射神経と気配を察知する力は驚異的であった。

「物足りなぁ。拳一発で倒せちゃうと」

 攻撃をしてこない敵に、萃香はやや余裕を見せ始める。最初こそしくじって怪我をしたが、今はほとんど体力も消費せずに倒せている。数は多いが決して強くはない。
 と、降り立った敵の一匹が、萃香をジッとみつめる。鹿のような形をしているが、その額には一角獣を思わせる鋭い角。それをまるで槍のように、頭を揺らして萃香へ狙いを定めている。

「おぉ。角生えてるね。鬼の真似? 上等じゃない」

 それに対して、ちょっとした苛立ちと期待を覚える。と、その敵はタッと地面を蹴って萃香へと駆けてくる。角の先端は、真っ直ぐ萃香の胸に照準を合わせて。
 その角ごとへし折ろうと、萃香は拳を引いて構える。その瞬間、霊夢はハッとする。

「あ、萃香駄目っ!」
「えっ?」

 霊夢の声に驚きながらも、萃香は拳を突き出す。拳は相手の角を打ち砕きながら突き進み、相手の頭部まで触れると、そのまま相手を吹き飛ばした。

「いたたたたたたたたたた!」

 敵を吹き飛ばした萃香は、その手をバタバタと忙しく振る。右手は拳の先端から痺れるように震え、毒でも回ったようにズキズキと痛んだ。接触時間の長かったことで空気の皮膜が失せ、直に触ってしまった影響である。
 迎撃はしてはいけなかった。回避と攻撃、場合によっては攻撃後に僅かに退く感じで戦わなければならない。力自慢の鬼として、それは実に悔しい戦法であった。

「いったいなぁ、もう」

 少しだけ泣きそうだった。これでは、右腕はしばらく使えない。面倒になったと思い空を見れば、次々と降り注ぐ黒い影。

「ねぇ、霊夢。空からじゃんじゃん降ってくるんだけど!」

 予想より多い量に、萃香が文句を言う。けれど愚痴ではなく、何か口寂しさを紛らわす為の言葉でしかなかった。

「自業自得。しっかり戦いなさいよ」
「……え、なんで自業自得?」

 結界拡大については、自覚のない萃香であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おーおー。綺麗な狼煙が上がったぜ」
「……派手ね」
「おー。こりゃ見事な花火ね」

 藍の放った力の放出を見て、人里を守護する三人がのんびりと呟いた。そして、残っている紅茶を呷ると、魔理沙はティーカップを置く。妹紅もまた、紅茶を飲み干して湯飲みを置く。湯飲みの方が良いと我が侭を言って、紅茶を湯飲みに注いで貰ったのだ。
 その二人に続いて、アリスもそっとティーカップを置く。
 三人はそしてすくりと立ち上がると、阿求の屋敷を出て行く。そしてその背中に、阿求は個性はない、だが感情の篭もった言葉を送る。

「皆さん、お気を付けて」
「あぁ」
「任せとけって」
「紅茶でも飲んで待ってなさい」

 片手を上げて応える者。振り向いて笑顔を見せる者。反応はなく言葉だけを返す者。
 空へと舞い上がっていった。空から見下ろすと、何やら黒い雪のようなものが少しだけ色々な所に降り注いでいるのが見えた。
 三人は空から敵を見る。

「結界はいつ頃張れそう?」
「んー。十五分はかかるわ」

 妹紅の問い掛けに、少し思案で表情を歪めてアリスが応じる。
 ここでいう結界とは、魔法を使って里を防衛するものだ。だが、それが敵をしっかりと識別できるように、結界を張る前に敵と接触をして情報を集めなければならない。

「それじゃ、私は北の方へ行ってくるぜ」

 そう言うと、魔理沙は箒で北へと飛んでいく。

「それじゃ私は西南西っと」

 それに続くように、妹紅も飛んでいく。それを見送り、アリスもまた二人と逆の方向へと飛んでいく。再度合流するのは、魔法の結界が張れて敵の襲撃がある程度防げるようになってから。それまでは、来る敵を一人一人で撃退し続けることとなる。

「……数が多い分、弱いと助かるけど」

 降り注ぐ恐らく黒いものを見つつ、そんな思いを抱く。見上げれば、いくらかは里に直接降ってくるであろう軌道を取っているのが良く判る。
 軽く頭を掻いてから、溜め息を吐いて、気合いを込める。

「よしっ」

 指先から魔力が流れていく感覚。じわりじわりと指先の熱が抜けて、糸を伝い人形へ流れ込んでいく。そしてそれが人形に届いた時の反響。失った熱が微量戻り、じんわりと手の平を痺れさせる。感覚が人形と繋がるような感覚が拡がっていく。
 戦う準備は整った。あとは結界の準備をする為、アリスは自分の持ち場につくと地に降りて、魔法陣の中に手を置く。それとほぼ同時に、魔理沙もまた魔法陣に手をついた。

「「結界。情報収集、開始」」

 と、里中に刻まれた魔術式が僅かに光を放つ。二人の魔女が里の人間の力を借りて、数日がかりで書き上げた魔術式。恐らく里の人の手伝いでは不十分な部分もあるだろうが、そうでもしなければ間に合わなかったのだから仕方がない。

「結界の準備はこれで良し。後は、時間稼ぎね」

 地面に触れた手をパンパンとはたき、アリスは眼前に迫る敵を見やる。
 目の前に現れる敵は、動物や虫を模しているものも多かったが、不格好な球体のものも多かった。ここには敵の狙う結界が居ない為、強い力が集まらず、結果このような完全でない力が集まってきてしまったのだろう。それの持つ力や強度も、他と比べれば幾分劣る。
 アリスは人形で、その黒い敵を切り伏せる。人形は小さな槍や剣で戦うが、なかなか敵を倒すには至らない。連続で斬りつけて、十数度でどうにか一体を倒すことができた。

「これ、倒すと霧散するのね。影みたい」

 その後も二体を同じ戦法で倒すも、アリスはこの戦い方では埒が明かないと見切りを付け、人形に送る魔力を増やし、武器での攻撃から魔法による攻撃に切り替えた。
 人形の一体一体が、両手を合わせて小さな魔力の球体を生み出す。そしてそれがピンポン球ほどの大きさになると敵に投げつける。敵に触れると、途端その魔力の塊は爆発する。それを喰らうと、敵は霧散して気配ごと消え去った。

「……なるほど。ようするに、吹っ飛ばせば良いのね」

 より効率の良い戦い方を理解すると、あとはそれのみ。アリスは人形たちに次々と魔力の球体を生み出させると、あとはそれを投げつけ続けた。



 アリスが効率の良い戦い方を見つけた頃に、妹紅と魔理沙もまた、どう戦えば良いものなのかを理解してきていた。
 敵と接触し、両手で挟み込んで焼き尽くす戦法と取っていた妹紅であったが、これは力が外へと流れてしまって効率が悪い。

「どうしたものか」

 そんなことを思いながら、どうにか敵を撃退していく。すると、こちらへ急速に向かってくる猪に似た敵が現れた。抱き付いて燃やそうと思ったが、勢いがある為、下手に触れては吹っ飛ばされると思い直す。そこで、ならば迎え撃ってやろうと、妹紅は腰を落とし拳を固く握りしめた。そして、駆けてくる敵の鼻っ面目掛けて拳を突き出す。その敵の勢いに負けて数メートルほど後退したが、吹き飛ばされることはなく、右腕を敵の顔に突っ込む形で妹紅は踏み止まった。

「こんなんでまだ生きてるのか……やるね。でも」

 その状態で、炎上。途端、先程までしぶとかった敵が一瞬で霧散した。
 呆気にとられる妹紅。随分と脆く消滅した敵に、つい唖然としてしまった。だがハッと正気に戻ると、今度はニッと笑う。

「なるほど。内側から焼き尽くせば早いんだな」

 手の平に拳を打ち付けると、妹紅は宙を舞い、新しい敵を探す。その自分の考えを、確信に変える為に。



 そんな風に二人が順調に戦う中で、魔理沙は少々戸惑っていた。強い威力の魔法ばかりを用意したのだが、それらは里の中での細かい戦闘に不向きな魔法ばかりだということに、戦闘が始まるまで気付かなかったのだ。

「あぁ、細かい魔法があと僅か……どうしよ」

 手持ちで周囲の家を破壊しない魔法を手当たり次第使っていると、貫通力の高い魔法の弾丸が敵には効果的であるということ言うことが判った。判ったのだが、その魔法は既に尽きた。元より非常用に持ってきた方だったので、弾数がグッと少なかったのだ。高威力広範囲を主として、巨大な敵に対抗する為の魔法ばかりを用意しすぎた。

「完全に裏目だぜ」

 少し泣きそうであった。
 作り置きの魔法を補充しようにも、それは全部魔法の森の家の中。後でそれを取りに行くとしても、それはどうしたって魔法の結界が張られた後になるだろう。今はとにかく、数少ない魔法で切り抜ける他ない。

「おーい、こっちに来たぞ!」
「こっちにも来てる! 早くどうにかしてくれ!」

 里の人の声が響く。

「判ってるからちょっと待ってくれ!」

 困る時間も悩む時間もない。そう思うと、魔理沙は全力で箒を飛ばす。
 見えた、一体。
 敵を視界に収めると、魔理沙は箒に抱き付くようにギュッと丸くなる。

「てぇぇぇい!」

 体当たり。残り少ない魔法の温存であった。
 箒の先端が敵にめり込み、続いて魔理沙の体が敵にぶつかる。強い衝撃が頭に走って、魔理沙の意識が一瞬だけ飛んだ。そして、箒から体が落ちて地面を転がる。

「かっ……」

 魔法で自分をコーティングせずの体当たり。それは油断であった。どうにかなるだろうと、甘く考えた。傍から見れば当然で、しかし魔理沙にとっては予想外の衝撃。危うく重傷を負いかねないものであった。

「あぁ、痛っ。こりゃ駄目だな」

 のそっと起き上がると、体の土を払って箒を握る。魔理沙もダメージを負ったが、どうにか敵は倒せたようであった。

「さて、っと!」

 次の敵を目指し。魔理沙は飛び上がっていった。
 それからおよそ十五分が経過する。まだ魔法の結界は張られていない。次々と現れる敵に、魔理沙の魔法もほぼ尽きかけていた。

「アリス、まだなのかっ!」

 他の二人と違い、予め作り置きしたもので戦闘をおこなう魔理沙は、残りの魔法が尽きれば一時的に戦闘不能になってしまう。そうなる前にはどうにかなってくれと、魔理沙は強く願っていた。

「まだ、あっちに敵がいた!」

 また一体を倒し、別の場所へと飛んでいく。

「こっちは片付いたぞ!」
「ここは大丈夫だ、別の場所に行ってくれ!」

 と、飛んでいく魔理沙の耳に響く、里の人の声。

「えっ?」

 見下ろしてみると、里の人間が十数人で手を振っていた。手には槍や刀、あるいは農具や家具を握り、かすり傷や切り傷を負って、成し遂げた顔で手を振っていた。

「まさか、倒したのか!?」
「おうよ!」

 唖然としてしまう。大勢が取り囲んでめった打ちにして、どうにか敵を倒してしまったのだ。
 しばらくは言葉を失っていた魔理沙であったが、次の瞬間には歯を見せて笑う。

「ははっ、凄いぜ!」

 そう口にして、魔理沙は別の場所へ向かった。里の人がただ守られてばかりでもないと判り、やる気が湧いてきた。
 実のところ、里の人は皆、いざとなれば戦えるのかと不安であった。だが、魔理沙の必死な戦い振りを見て、自分たちにもできる。そして、彼女たちにばかり頼ってはいけないと、武器になりそうなものを手に立ち上がったのだ。
 魔理沙の余裕のない戦い振りが招いた、思わぬ出来事であった。
 と、そんな魔理沙の耳に、別の魔法使いの声が響く。

「魔理沙。ほとんど結界の準備ができたわ」
「本当かっ!」
「えぇ。だから、結界を張る間、空の敵をどうにかしてくれる?」
「任せろ!」

 結界の発動は、里の周囲に壁を作る。だから、地上からの侵入はあまりないものと思って良い。ただし、空まで結界が覆うのは少し後になるので、結界の張られる場所から敵を消しておかなければならないのだ。

「ようやく、私の出番って感じだぜ」

 魔理沙は周囲への被害があまりない魔法をほぼ全部使用して、周囲にいた敵を倒す。それから、里の中心へ箒を急がせた。
 空への攻撃。そこに障害物はない。つまり、高威力広範囲の魔法が、撃ち放題なのだ。

「アリス、妹紅。絶対に当たるなよ!」

 里の中心に立つと、魔理沙は空に向けてミニ八卦炉を構える。使う魔法は、威力を分散させることになるが最大広域を誇る、マスタースパークの変形系。
 魔理沙がどういう魔法を使う気なのかを不意に察した妹紅は、周囲を飛んでいる敵に近付く。

「ほれ、オマケだ!」

 そして、魔理沙の方へと敵を三体蹴り飛ばした。
 と、その行動とほぼ同時に、魔理沙の持つミニ八卦炉が光り、魔法の準備が整った。

「マスタースパーク!」

 その叫びを合図に、魔法が放たれた。
 名は一緒だが、制御を大幅に外したその魔法は、ミニ八卦炉から噴水のように拡がりながら飛んでいく。それは、まるで天幕のようであった。
 その広さだけあって威力は抑えめだが、それほど強固でもない敵には有効なようで、触れて数秒で敵は霧散していった。空を覆い尽くすように魔理沙の魔法が拡がり、その隙間を縫って降りてくる敵を妹紅が倒す。その光景に、里から恐れと共に強い歓喜が湧く。

「うおぉぉぉ!?」

 しかし、これだけ大出力であったので、十八秒という時間で魔法は終わってしまう。いや、むしろ良くもってくれたと、魔理沙は自分の調合した魔法を褒めた。そして、ミニ八卦炉をスカートにしまうと、あまりの反動にビリビリと痺れた両腕を軽く振っていた。

「いくわよ、妹紅、魔理沙」

 二人の耳にアリスの声が響く。そしてその途端、空に電流が流れるような光景が一瞬だけ起こり、次の瞬間には結界が完成していた。
 結界に触れると、敵は霧散する。それほど強固な結界でもないので結界の外で戦わなければならないのだが、それでも、里の中で侵入してくる敵を倒すことを考えれば、遙かに気が楽なものとなる。

「よっしゃ、良くやったぜアリス!」
「なんとか結界は成功みたいね」
「でも、結界だっていつ消えてしまうか判らないわ。あまり頼らずいきましょう」

 三人の少女が、二十分ぶりに揃う。
 人里の防衛は、今のところ問題はなく順調に進んでいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 妖怪の山の頂。そこで、二柱が穴の開いた空を見上げていた。

「もう来るわね、諏訪子」
「もう来るね、神奈子」

 空の端に小さく見える黒い粒。あれが敵なのかと思うと、どこか胸の中で昂ぶるものがあった。

「こんな戦いは久しいわ」
「そうね。戦のような戦いは、随分昔からやってなかったから」

 遙か昔。神々が争った時代や、人が戦に神を招いた時代。思い出せるが、匂いさえ忘れた戦乱の記憶。
 それとはいささか状況が異なるが、それでも、二柱は揃ってこの懐かしい感覚に身を震わせた。

「今日くらいは、精一杯の加護があっても良いわよね」

 幻想郷のパワーバランスを狂わせるからと、大きすぎる加護を振りまいてはならないと言われた。それからは自粛していたが、今は緊急事態。一時的に大きな加護を与えることくらいは問題がないと思われた。

「いいんじゃないかな」

 こちらは、問題があると言うことを知った上での行動なら、まぁ問題はないだろうと考える。
 加護を与えるのは、主に神奈子の役割。神奈子は守矢神社の中央に立ち、呼吸を整えて準備をする。そして、手を左右に広げたと思うや、周囲の光量は増し、まるで蛍のような光の球が神奈子の周囲を飛び交った。
 それらは増え、また飛ぶ範囲をぐんぐんと拡げていく。やがて、それらは神奈子の周りを離れ、山へと散っていく。
 山に棲む神々や妖怪にその光は降り注ぎ、大いなる加護を与える。特にこれは、風雨の神の加護。風なら天狗、雨なら河童。効果が薄いわけがない。

「さすが神奈子」

 その加護に、諏訪子が手を打つ。そして同時に、負けたくないという思いも湧き、諏訪子自身も力を込めて加護を与える。

 パキン

 と、その瞬間、嫌な音が響く。

「「え?」」

 空を仰ぐ神。そして、唖然とする。空には、先程よりも巨大な穴が出現していたのだ。
 幻想郷のパワーバランスの一角を担う天狗。そして河童。その他の妖怪に、多くの神々。更にはその頂の二柱。それだけの力が集まった場所で、そのどれもが緊張と興奮を覚え力を振るったのならば、こうなることは目に見えていた。
 ……だが、失念していた。力が過ぎれば、空が割れることを。

「か、神奈子の馬鹿ぁ! やり過ぎなのよ!」
「な、私だけの所為じゃないだろ!」

 やっちゃった、という思いから罪をなすりつけ合う威厳の薄い神たち。

「だいたい、神奈子は手加減をしらないのよ! あんな大穴開けちゃってどうするの!」
「待て待て待て、さっきお前も加護を与えてたじゃないか!」
「うっ!」

 気付かれてたことに言葉が詰まる諏訪子。
 この後ギャーギャーと騒いでいたが、すぐに二人は落ち着いて、いきなり濃くなった空の黒さを改めて仰ぐ。

「でもま、倒せば倒しただけ、早く異変が片付くんだよね」
「そうね」

 揃って思うは、早苗のこと。あの子の為に、神社を壊すわけにはいかない。だけど、あの子の為に早く異変を片付けたい。
 どちらが大事かと言えば、どっちも大事。

「神社は壊さず、大群の強敵を撃破。それで良いかい、諏訪子」
「言われるまでもないことでしょ」

 一度お互いの目を交差させ、また空を見上げる。

 やがて敵は降り立ち、妖怪の山は妖怪やら神やらが総出で戦うことになるだろう。慌ただしくなる。

 だが、それもまた悪くない。今はそのように、山の頂に棲まう神には思えてならなかった。

 たった一度限りの盛大な祭り。存分に暴れ、存分に遊び疲れる幻想の宴。

 さぁ、相手は死なず、数も尽きない絶好の的。全力で唄い、全力で舞い、精根尽き果てようと騒げ。

 二柱揃って加護を撒き散らす。
 時間が勿体ない。祭り囃子はもう響いている。
 互いに手の平を軽く打ち合わせ、お互いの中で合図を鳴らす。

「「さぁて、祭りの時間だ!」」

 また少し、空が割れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……足りないわ」

 太陽の丘で一人。退屈そうに寝転ぶ女性が居た。

「ちょっと、退屈~……」

 不平不満が漏れる。
 と、眼前に巨大な口が開き、寝転ぶ女性、幽香の顔を食べようとする。
 だが、次の瞬間にはその口が上下へと裂かれる。ほんの一瞬に、幽香が上下の顎を拳で叩いて強引に引き裂いたのだ。
 途端押し寄せる黒い敵の群れ。飛び起きてそれを回避すると、敵の腹部に蹴りを叩き込む。切れ味のないそれは、だが尋常でない早さを以て強引に四つ足の敵の腹部を断つ。

「あんまり強くないんだから、一気に来てくれないと面白みに欠けるわよ」

 相手に反応する知能を期待しているわけでもないのに、口からは自然と挑発の言葉が溢れる。
 ふと、じわじわと痛む足に気付き、長く触れすぎたと気付いた。けれど、それだけのダメージでは面白くないという感じに、ペシペシと傘で足を叩く。

「……これぽっちの置き石じゃ、足りないかしらねぇ」

 力量の差の開き具合が不満であった。結界で強力な幽香が居るからそれなりには集まるが、けれどやはりここには力が足りない。敵の集まりがあまり良くない。

「ま、いいか」

 けれど、それもそれと幽香は思う。全力で戦っていれば、じきに空が割れてもっと強いのが出てくるだろう。そう思うと、徐々に疲労して体に怪我を負っていくのも面白いと思えた。

「私が倒れるまでは付き合ってもらうわよ。だから、ちゃんと殺す気できなさいよ」

 どこかワクワクとした笑顔で幽香は笑う。心底楽しそうに。






 割れた空は、容赦なく黒い力の塊を吐き出し続ける。
 少女たちはそれを倒し、その霧散した力を持って幻想郷の結界を修復する。
 紫の読みで、その時間はおよそ一刻。
 まだ、太陽さえ沈みきってはいなかった。






 現在の布陣
 ・博麗神社 霊夢、萃香       藍
 ・白玉楼  幽々子、        妖夢、早苗、霖之助
 ・永遠亭  永琳、慧音       輝夜、鈴仙、てゐ、橙、メディスン
 ・妖怪の山             神奈子、諏訪子
 ・紅魔館  レミリア        咲夜、美鈴、パチュリー、フランドール
 ・人の里               妹紅、魔理沙、アリス
 ・太陽の畑 幽香

 行方不明 にとり、文        椛
 三十回目になります、大崎屋平蔵です。
 ……なんかもう、書くの遅くて申し訳ないです。それほど長くもないのに。

 えーっと、ですね。初めて読んだ方がいるかもしれないので、いくらか説明を。

 この作品は、前作品集の「幻想ノ風 十つ風~凪~」という作品の続編に当たります。読まれてなくても構いませんが、部分的に意味不明だと思います。ご容赦ください。
 ちなみに簡単な説明をネタバレ控えめに言いますと。

 ・八雲紫がいない設定。
 ・霊夢、萃香、レミリア、幽々子、永琳、慧音、幽香、文、にとりの九人はちょっとした理由で戦っちゃいけない設定。
 ・敵は幻想郷の外から押し寄せてきてる設定。

 こんな感じです。


 それと、大変言いにくいことなのですが……この長編、諏訪子と神奈子の出番これでほぼお終いです。お二方が好きな方には申し訳ないです。

 次回は白玉楼戦『一風~二百由旬を鳴り響け!・前編~』を予定しています。

 それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました♪
大崎屋平蔵
amusukeryuuseigun@yahoo.co.jp
http://ozakiya.blog.shinobi.jp/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1020簡易評価
13.90名前が無い程度の能力削除
>この長編、諏訪子と神奈子の出番これでほぼお終いです。


……………………………………………えっ!!
15.無評価名前が無い程度の能力削除
幻想郷の外からの敵っていうのを、兵器とかの科学技術と期待していたが。
17.無評価大崎屋平蔵削除
 コメントをいただいたお二方に向けて。
 申し訳ない……

1,神奈子と諏訪子は強すぎて話として書けませんでした。
2,兵器とか科学技術の作品も考えたものの、その手の知識がなくて構想段階で断念しました。

 何はともあれ、お読みいただきありがとうございました。
22.70名前が無い程度の能力削除
逆に私は、兵器とかじゃなくて安心しましたよ……