Coolier - 新生・東方創想話

日雨傘

2008/06/13 23:08:39
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 外には鉛色の雲が広がり、空がいつもより近いような気さえする。しとしとと音が聞こえてきそうなくらいに鉛は静かに雫を落とす。

 レミリア・スカーレットはまっさらなテーブルクロスに肘をつき、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
「紅茶、冷めちゃったわよ。」
向かいに座っていたパチュリー・ノーレッジは、手にした魔道書から目を逸らす事無く呟いた。
「・・・『冷めちゃった』じゃなくて『冷めちゃう』じゃないの?」
そう言ってレミリアは視線を窓の外から戻す。
「もう冷めちゃってるんだもの、仕方ないわ。」
パチュリーもようやく視線を上げる。
「ならもう少し早く言ってくれればよかったのに。」
「私の紅茶も冷めてるの。分かるかしら?」
「冷めるまで気づきませんでした。って認めればいいのに。」
「気付かなかったのはお互い様よ。認めたら私が負けたみたいで悔しいわ。」
「パチェは妙な所で意地っ張りなんだから。まぁでも、すぐにでも紅茶は温かくなるよ。」
そう言ってレミリアは紅茶のカップをわざとらしく音を立ててさらに置く。そして数瞬。
「新しい紅茶をお持ちしました。」
いつの間にかテーブルの脇に紅茶の乗ったトレイを手にした十六夜 咲夜が立っていた。
「ありがとう。気が利くのね。」
レミリアはわざとらしい笑顔を咲夜に向ける。
「いえ、ではまだ仕事がありますので。」
咲夜は闇に溶けるように仕事に戻った。直後。
「レミィ」
紅茶を口にしたパチュリーが口を開く。
「温かくなるだけじゃ済まなかったみたいよ。」
パチュリーはカップを皿に戻した。
「ん?」
レミリアは紅茶に口をつける。
「苦っ!!!」
「どうやら、"体にいい"紅茶だったみたいね。」

 
 「ねぇレミィ、なんで空なんか眺めてたのかしら?」
「あぁ、ちょっと天気が気に入らなかっただけよ。ここ数日ずっと雨だったでしょ?
もう空が何色だったか思い出せないわ。」
レミリアの視線がまた窓の外に向く。
「晴れていたって文句を言うじゃない。」
「気分的な問題よ。全く晴れないのも気が滅入るわ・・・」
自然と溜息をつく。
「そんなものかしら。天気なんかあんまり気にしないし・・・」
「まぁパチェは外に出ないから。こう雨続きじゃろくに外出もできやしないわ。」
「出かければいいじゃない。晴れの日だって日傘差してよく神社に出かけてるんだから。」
「・・・そうか、傘って元々雨を防ぐものだったわね。日傘で雨は防げるものなの?」
「試したことないけど、ある程度の強度があれば十分なんじゃないかしら。魔法で強化しておいてあげるわよ。」
「お願いするわ。これでめでたく太陽の光も雨も防げる"日雨傘"が完成ね。」
「ただの強化日傘にたいそうな名前をつけないで頂戴。」
「いいじゃない。なんなら更にオプションをつけて強化しましょうよ。」
「オプションねぇ・・・もっと強化して弾幕を防げるようにしましょうか?」
「そんなの傘がなくたって防げるもの、もっと面白い機能が欲しいわ。」
いつの間にかレミリアは机から身を乗り出している。
「そうねぇ、魔法の力を使えば色々できそうね。」
「そうだ!こんなのはどうかしら!」
目を輝かせながらアイデアを出すレミリアにパチュリーは一言こう言った。
「紅茶、冷めちゃったわよ。」
 
 
 「しばらくぶりの晴天ね。ありがたいわ。」
神社の境内で箒を手にした博麗 霊夢は空を見上げて呟いた。
「そろそろお茶にしようかしら。」
振り返り神社に戻ろうとすると妙な気配が近づいてくるのに気づいた。
「ん?なにかしら。あれは・・・雨?」
階段の下から"雨"が近づいてきた。
霊夢が呆然と眺めていると、雨の袂に人影が現れた。
「おはよう霊夢、お茶を飲みに来たわ。」
「レミリア、これは一体どういう事?」
レミリアが連れてきた雨によって神社はすっかり雨に包まれてしまった。
「ふふん、これはパチェに作ってもらった日雨傘よ!」
「日雨傘?」
「そう、この傘を開くと上空に雨雲を形成してその周囲だけ雨を降らせることができるのよ。
これ一本あれば太陽は隠せるし、雨も弾いてくれるすぐれものなの。」
霊夢は溜息をつく。
「それは"すぐれもの"とは言えないわね。とりあえず、お茶飲んでく?」
「そのつもりで来たんだもの。」
二人は神社に入って行った。
 
 晴れた神社の縁側で二人はお茶を飲む。日雨傘は今は閉じていた。
レミリアは日陰から空を眺めていた。
「たまには緑のお茶もいいものね。」
「安っぽいって言われてるみたいで腹が立つわね。」
「ふふ、素直においしいって事よ。」
「そうかしら。ねぇ、今日はあの傘を見せびらかしに来たの?」
「そうね、それが5割。」
「残り5割は?」
「逃げてきたの。」
「逃げて?」
「そう、あの傘持ってると妹が壊しに来るのよ。」
「ああ、あの雨が苦手な・・・」
「全く、世紀の大発明を壊そうとするなんてどうかしてるわ。」
「まぁ壊したいとも思わないけど、欲しいとも思わないわね。」
霊夢はお茶をすすりながら答える。
「時代の先端を行く者はいつだって認められないものなのね・・・。
ところで、あの傘置いていくから。」
霊夢はお茶を吹き出しそうになった。
「いらないわよ。あんなもん。」
「持って帰っても壊されるだけだもの。それに、紅魔館からここまで差してきたら割と飽きてきちゃって。」
「だからって押し付けないで頂戴。」
「いいじゃない。プレゼントするって言ってるんだから。いらなきゃ河童にでもくれてやればいいわ。」
「でもねぇ。てかあんたどうやって帰るつもりなのよ。傘がなきゃ帰れないでしょ。」
「それは日が出ていたらの話でしょ?ゆっくりさせてもらうわ。」
「はぁ、仕方ないわね。」
霊夢は立ち上がるとレミリアを見てこう言った。
「お茶、冷めちゃったわよ。」
初投稿です。
未熟かつ稚拙な文章で申し訳ないです。あと何か変なもん発明してゴメンナサイ。
レミリア大好きだったんでちょっと作っちゃいました。
でもなんかキャラが固定しないような・・・精進します。
長篠
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コメント



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4.60煉獄削除
なんかこう・・・・足りないものがあるような。
う~ん・・・・物語の起伏が少ないのかもしれない。
坂も曲がり道もなく、ただ真っ直ぐな道をただ通っていった感じ。

悪くはありませんでしたし、レミリアが好きだというのも伝わりました。
次回に期待したいですね。
7.60からなくらな削除
あれだ、そう
作者さんはもうちょっと作品に介入できますよ
8.70名前が無い程度の能力削除
雨が足りない時にはすごく重宝しますね
水不足ともおさらばだw