Coolier - 新生・東方創想話

人の形を弄びし少女~忘命~

2008/06/11 17:09:31
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 ◆・プロローグ 自我拡散・◆




 アリス・マーガトロイドは何なのだろうか?
 私は私にその存在意義を問いかけた。


 魔界の神より寵愛を受け、その力の片鱗を身に宿しながらもたった一人の人間に負けた出来損ない。
 私を破った人間の名前は博麗霊夢。
 幻想郷に住まう絶対中立の巫女は森羅万象の摂理に縛られない奔放不羈な存在。その在り方が人々を惹きつけ、彼女を取り巻く。
 彼女の力はあらゆる幻想を叩き伏せ、どんな軋轢にも妨げられることがなく、荒ぶる道でさえも彼女の前では平坦になる。
 そのくせ誰に対しても良くも悪くも平等に接する。まるで晴天を漂う雲みたいに自由な彼女。

 では、私は?
 アリスという存在は生粋の魔法使いという妖怪であり、そして人形遣いである。
 ヒトの型を真似た入れ物を作り、糸で繋ぎ、操ることが特技。私を破った人間を見返すために昼の光さえも固く遮る魔法の森で研究を続けている。
 自律稼動する人形を作ることが目標で最近では里にまで出ていって人形劇をすることも始めた。
 友人と呼べる存在はいない。はた迷惑な隣人も、突発的な来客も含めて深く関わりあうことをしてこなかった。
 呼ばれれば答える。自分から行動を起こそうと思ったことは指で数えるほどしかない。

 人間について学びたいと魔界の神に願い出て幻想郷へ降りたこと。
 長く続く夜を止めるために繰り出したこと。
 妖しい霧を払おうと調べたこと。

 そのうちの二つは幻想郷に来てから体験した異変であったが、どちらも真相を知ってみれば取るに足らない騒ぎだった。
 だが、冗談にならない激しい戦いがあったことは間違いない。
 それでも私は全力で戦ったことは一度もなかった。

 全力で勝負するということが怖いとか負け惜しみのために故意で加減しているわけではない。
 私は知ったのだ、外の世界の脅威というものを。自分が井の中の蛙であったことを。
 たった少し努力した程度では何ともならない連中が幻想郷にはいくらでもいた。それはもうどのくらい強いのかをいちいち測るのが面倒になるほど。
 それらは皆、弾幕勝負でも一目で余裕と分かるほど遊んでいた。そんな底知れない相手に全力を尽くしても対等になれるかどうかさえ不安視していた。

 だが逆に考えると答えは簡単に出た。
 相手が本気を出してこないというのなら自分も本気を出さなければいい。ただし、できるだけ負けが積まないように拮抗させる。
 つまり限りなくブラフに近いブラフを張ることで心の殻を作り、私は私というものを保つことに成功した。
 これならば負けても仕方ないと思えるし、勝てば自分の力の証明にもなる。

 けれど、アリスという存在は他人と打ち解けられるほど開放的ではなかった。
 窓は開けない。開けて、万が一でも心を覗かれれば虚勢であることを見抜かれてしまいそうだったから。
 そして私は私が望む「アリス」で在り続ける必要があった。だから、自分を演じ続けるための冷静な選択肢を常に用意できる自分を模索し続けた。
 結果としてアリスの内側に生まれたのが「第二のアリス」だった。

 彼女は便利だった。状況に流されず、表面上のアリスをよく観察したうえで助言し、常にアリスを守ってきた。
 それが私、本心である私。でも最近はどちらが自分なのか分からなくなってきた。
 表で接しているのが私なのか。冷静に見つめているのが私なのか。
 それとも私を守ろうとして必死になっている滑稽な二人の私を見つめているのが私なのか。

 ――――自分が演じさせられていると知りながらアリスであろうと努める殻のアリス。
 ――――殻が壊れてしまわないように冷静に対応させようとする内側のアリス。
 ――――必死になってアリスというものを守ろうとする二人を嗤っているアリス。

 惨めな自分を晒さないように傷つけないように着飾った結果はアリスという矛盾した存在を確立させた。
 同時に、私は私を見失った。
 誰かを羨むこともなくなった。怒りを発することも、自分に接触してくる何かに対して無感動になってしまった。
 操り手が人形になった人形劇。それでもなんとか毎日を生きていたのに、ある日見つけた一体の人形を見た瞬間、自分の体から熱が引いていくのを感じた。

 それは見事な自律する人形。自分で考え、自分からアクションを起こし、自分を防衛するための機能も備えていた。
 登ろうとしていた山が信じられない記録によってすでに踏破されていた。そんな気分に近かった。
これでは自分が今から自律人形など作っても達成感は愚か、生まれてくる子を自分と同じ出来損ないにしてしまう。
 考えれば考えるほど心の沼は広がって、私はついに私を繋ぎとめていた目標さえ奪われた。


 それから数日、私は家に篭もっていた。
 誰が来ても応対せずに居留守を貫き通し、まったく面白みのないルーチンワークをするみたいに人形を作り続けていた。
 心のこもらない人形が増えても私は何も感じない。針で指を刺しても痛くない。
 以前は生まれてくる人形たちにたくさんの愛を込めて作り上げ、その微かな表情の変化も読み取れたはずなのに今はまったく分からない。

 やがていくつの人形たちを作った後だろうか、私はふと自分の目標について考えた。
 なぜ自律人形を作ろうとしたのか。
 結果まで至る考察を何度も繰り返したのちに私はまるでバネ仕掛けのように椅子から立ち上がり、ある場所に向かった。
 どうして忘れていたのだろう。私が今まで作ろうとしていたものは過程であり、あくまで私らしいやり方であったことを。
 本当はあの人間を見返すことが目的だったことを失念するなんて。

 逸る気持ちを抑えながら私は博麗霊夢の住む神社へと飛んだ。
 ずっと暖かい家にいたからだろう、久々に感じた風がいつもより冷たかった。



 ◆ 前章 ロマンチックコラプス~劇的な崩壊~ ◆



 しばらくしてアリスは博麗神社に着いた。
 うららかな春が過ぎたばかりの境内では箒でのほほんと掃除をしている巫女、博麗霊夢の姿があった。
 ゆっくりと下りていくとやがて霊夢はアリスの存在に気がついて掃除の手を止めた。

「あら、いらっしゃい」
「相も変わらず適当ね。落ち葉もないのに何を掃いているのかしら」

 陰鬱な気分のときでも普段どおりに会話ができてしまう自分を恨めしく思いながら、アリスは霊夢を正面に捉える。
 黒く伸びた艶やかな黒髪。鮮烈な赤と白の巫女服のうえからでも分かる美しい曲線。神社の静謐な雰囲気と相まって際立つ彼女独特の清浄な雰囲気。
 本人は無自覚かもしれないが霊夢という存在性はまるで真っ白なキャンバスのように澄み切っている。
 現実味を帯びないその在り方が彼女の魅力。アリスも不本意ではあったが霊夢に惹かれている一人なのだ。

「何も掃くのは葉だけじゃないわ。境内に渦巻く邪気を掃くのも巫女の仕事よ」
「邪な人間に言われても説得力に欠けるわねえ」
「いいところに来たわね、お茶でよければ出してあげる」
「今さらいい人ぶっても無駄よ。あなたの優しさは薬師のクスリにも及ばない」
「心外ね、善意に大小はないのよ」

 霊夢は裏表がない。隠すことをしなければ着飾ることもない自然体でアリスとは真逆の接し方をする。
 何も考えていない空っぽのようで言葉をかければ必ず反応が返ってくる。
 アリスにとって霊夢は不思議な存在。彼女を前にすると着飾っている自分がひどく目立っているように感じていた。

「で、本当に何の用なの?」
「最近は雑談に勤しんでいなくてねえ。そこらへんに適当なものが転がっていないかしらと思っていたところなの」
「独り言に飽きたのならそう言えばいいじゃない」

 霊夢の言葉にアリスは締め付けられるような想いに襲われておもわず手で胸を押さえた。
(独り言じゃ、ない)
 人形たちは木の葉が擦れるような小さな声で語りかける、誰も本気で聞こうとしないだけでアリスには聞こえている。
 創造物であるならそれが人間でも人形でも心がある。冗談のような常識が息づいている世界で、なぜそれが認められないのか。

「少しは魔理沙を見習えば? あれぐらい社交的だと話す相手にも困らないわよ。陰で恨み言とか言われそうだけど」

 それとも、所詮人形は人形なのか―――――――?

「……あなただって、暇だとかまるで恨み言のように呟いているじゃない」

 表情の変化に気取られないためにわざと皮肉を口にする。
 平静を装ったはずのアリスだったが霊夢は逆に心配そうな表情に変わる。

「アリス? ちょっと、具合でも悪いの?」

 苦しそうに胸を押さえていることを具合が悪いように捉えたのだろう、病気か何かと勘違いしているらしかった。
 勘のいい巫女が勘違いとは面白い冗談だったが、アリスには笑う余裕などなかった。
(都合のいいときばかり人の心配をして)
 伸びてくる霊夢の手。触られたら弱さに甘えてしまう気がしてそれを跳ね除ける。
 思いも寄らない行動にさすがの霊夢も異常と感じたらしく、いよいよアリスへかける声に不安が混じってきていた。

「ねえ、アリス。本当にどうしちゃったのよ。心臓が痛むの? 何か言って―――――」
「うるさいッッッ!!!!」

 びくりと霊夢の肩が跳ねる。
 仇敵に心配される義理などないから、彼女の優しさが心に染み込んでいくほどにアリスは自分が惨めな気分になっていく。
 見返そうと躍起になって地を這っているところを上から見下ろされている不快な感覚。
心の底では笑われ、情けをかけられている錯覚に襲われる。

「何なのよ、あんたは……人のことを蔑んでおきながら中途半端に優しさを見せて」
「……アリス?」

 なんでも分かったような顔をして――――――今すぐ謝るのよ。
 あなたが無神経に接してくるから――――――感情的になれば弱みが出る。
 邪魔だと思うくらいなら優しくしないで――――――落ち着いて次の言葉を検索すればいい。
 ずっと探している。さっきから探しているけど見つからない――――――泣き言を言ってはいけない。

「どうせ心のなかで笑っているんでしょ!? みっともないって! 私のことを馬鹿にしてるんだわ!!」

 押し込められた悪意が溢れる。毒を吐き出し続けている蛇口は開いたままで閉じることができない。
(早く謝らなきゃ。でも謝ってどうする? そもそも謝ったところで何をどう取り繕えばいいの。そもそも何て言って謝ればいいの)
 止まらない混迷のスパイラルは無限の闇に向かって急降下をし続け、吐き出してしまった毒は中和されないまま霊夢の表情を汚していく。
 何か言わないと。早く何か言わないと誤解されてしまう。
 ―――――――“誤解”されるって、何を?

「違う、アリス違うの。私はただ……」
「『ただ……』何? 私を哀れだと思ったの!? 独り言を喋るのが好きな可哀想な子だから相手をしてやってるって言いたいの!!?」

 そもそもアリスは霊夢と仲睦まじい雑談をしに来たわけではない。
 自分の目的を叩きつけ、再度目標へ向かう熱を取り戻そうと思って神社へやってきたはずなのに心無い一言に胸を抉られ、何を思ったか感情的になっている。
 いつもなら皮肉の一言でも返して平然としていられたアリスだったが、今は平静さを取り戻せない。

「待ってアリス、私の話を聞いて!」
「近寄らないで!! あんたの話なんか聞きたくもない!」

 空へと飛び去ってしまうアリス。
 遠くなっていく彼女を見送るだけの霊夢だったが去り際のアリスの横顔が、まるでスローモーションのように目に焼きついていた。
 憎々しげに歯を噛みしめながら涙を流していた彼女の横顔が。



 …………魔法の森の邸宅に戻ってきたアリス。
 彼女はすでに乾いた涙のあとを拭い、ベッドへと倒れこんだ。

「あんなこと、いうはずじゃなかったのに」

 本当なら彼女は宴会で霊夢と話すときのように平然として、さりげなく話の流れを誘導しながら自分の目的を伝えるはずだった。
 だから人と話すのは嫌いだ、とアリスは寝返りを打って枕をきつく抱く。
(人形が相手なら上手く話せるのに)
 純粋で裏表がなく、常に自分の思ったとおりに反応してくれる人形たちはアリスにとって家族同然の存在。
 人形を相手に劇の練習もするし、挨拶すればちゃんと反応が返ってくる。

『独り言』

 アリスの脳裏に蘇る霊夢の言葉。
 自分に向かって話しかけている風に言われた言葉は、彼女が人形たちの心を理解していないから。
 霊夢には人形のことを知らない、わからない。
 だからアリスは気にしない。気にしないはずなのに、弱気になっていた彼女はおそるおそる連れの人形に問うた。
 人形たちに対して不審を抱いてしまった自分を怒っていないだろうかと不安になって。

「上海。あなたの好きなものは何?」

 問いかけて、脳内に人形が伝えようとしているイメージと声が流れ込んでいる。
 糸という術式で擬似的な霊的ラインを形成しているアリスには、人形と密接なコミュニケーションが可能となる。
 流れ込んできたのは自分の姿。連れの人形はアリスが好きだと答えた。

「ありがとう。そう、そうよね。私にはあなたたちが―――――――」

 いる。そう言おうとした口が硬直したままアリスは声を失った。
(……私、今なんて思った?)

 人形たちは自分の期待を裏切らない。人形たちはいつでも自分の味方で必ず望む答えを返してくれる。
 逆に考えてみれば、それは心のなかで一人葛藤しているのと同じものではないか?

『独り言』

 脳内で霊夢の声がより強く響いた。

「違う違う違うッッッ!!! ねえ上海、みんな、お願いだから嘘だと言って!! あなたたちは私じゃないって! あなたたちは自分の心を持っているって!!」

 悲鳴か懇願かも分からない叫びが室内に木霊する。もうどうすればいいのか判らなくなっていたアリスはすでに向かうべき方向を見失っていた。
 目標を奪われ、演じるべき役を見失い、果てに唯一の友達も信じられなくなっていた。
 このままでは人形遣いのアリスとして築いてきたものすべてが水泡に帰す。それだけは何としても避けたかった。

 長い沈黙が続き、やがて連れの人形がアリスに言葉を発した。

『アリス』
「上海……!」

 わずかな間。

『ワタシハアリス』
「………ぇ」

 アリスの笑みが色を失う。
 やがて上海の言葉をきっかけに人形たちが次々と言葉を発していく。
 「ワタシハアリス」「ワタシモアリス」とまるで呪いのような感情のこもらない人形たちの声がアリスを侵蝕していく。

「止めてッ!! 違う、私はそんな答えが欲しいんじゃない………っ」

 呪いは止まらない。より深く、より強くアリスの傷口を抉り取る。

『『『ミンナガアリス』』』

 泣き崩れるアリス。止めてと言っても人形たちは口を閉ざす気配を見せない。
 ――――――アリス・マーガトロイドは余裕を保ち続けなければならない。
 ――――――アリス・マーガトロイドは冷静さを失ってはならない。
 そのすべてが自らによって打ち崩されていく。

 ふと、人形たちの声が止んだ。
 空気の変化を感じ取ったアリスが顔を上げるとそこには大量の人形たちが彼女を囲んでいた。
 そして一斉に声を発した瞬間、“人形たちが笑った”ように見えた。

『アナタハアリスジャナイ』

 アリスを演じられないあなたはアリスじゃない。
 余裕もなく冷静でもなく、ただ救いを求めるばかりの役など求められていない。
 ゆえに人形たちはアリスをアリスじゃないと罵った。

 そして知る――――――――――“第三のアリス”がここにいたということを。

 アリスは自分の感情の糸が切れる断末魔を聞いた。




 ◆ 中章 アル・フィーネ ソニャンド~曲の終わりまで、夢見るように~◆



 数日が経ってもアリスはベッドから出ることはなかった。
 彼女の寝室にある棚に収まっているはずの人形たちは部屋の外に散乱し、どれでも魔力が通っていないことがわかる。
 アリスが愛し、それに応えるように愛してくれた人形たちがアリスを否定した。

「………わかって、いた」

 アリスの魔力が通い、そして命が吹き込まれた彼らが人間と同じ思考を持ちうるはずがないということ。
 命は命。空っぽの器に水を注いだだけで何か反応があるわけでもない。
 ――――――そもそも第三のアリスとは何なのか?

「あの子たちが……自律した存在じゃないことぐらい」

 人形に脳はない。ゆえに思考し、行動するだけの神経がそもそも存在しない。
 アリスの送り込んだ魔力が人形の擬似的な脳や神経の働きを担ったとも考えられるが、それは単なる空想に過ぎない。
 魔力はただ魔力。純粋なエネルギーに神経や思考を模倣することなど皆無。

 人間が思考するために必要な脳、運動と反射に使われる神経と脊髄が綿の詰められた人形のどこにあるというのか。
 アリスが動かしているのは人形の外側。けっして内側を操ることなどできない。もし彼女が内部を操作しているのならアリスは人形一体が受容する情報や反射をこと細かく操作しなければならない。
 魔界人とはいえアリスの脳が特別なはずがない。受け取る情報量と保存しておける容量には必ず限度が存在する。
 だから人形が料理の手伝いをするときはアリスの深層意識内の欲求に反応し、彼女が持っている情報を元に反射的に行動していると思うのが普通だ。
 よって人形ごとに経験値が違うのは単純に操っているアリスのその人形に対する順応度と考えるのが妥当だろう。

「でも、どうして私を否定したの……?」

 それが最大の疑問。
 人形たちが仮にアリスの意識から分離、もしくは拡散したものであるならば本体である彼女の崩壊を阻止するはず。
 だというのにまるでアリスという存在の崩壊を助長させるような発言をしたのはなぜか。
 ここで主題である第三のアリスについて考察する。

 まずアリスは自分の存在を幻想郷にいる実力者たちと対等に見せるために冷静で余裕のある人格を演じていた。これが「第一のアリス」。
 そして「第一のアリス」が常に保たれるように補助する第三者的存在が「第二のアリス」である。
 では、三人目のアリスはどこにいるのか? その答えは“劇場”にある。

 アリス・マーガトロイドを舞台のうえで演じる女優。
 女優を助けようと舞台袖から補助するプロンプター。
 そして――――――舞台にいる女優を見つめる大勢の観客たち。

 そう、第三のアリスは観客たち。人形たちは女優を観賞する観客なのである。
 しかしなおさらおかしい。観客は舞台のうえにいるものたちに感情移入することのある、むしろ味方のはず。

「それとも、知っていたの……?」

 残された答えはひとつ。
 観客たちは、舞台のうえにいるのが女優であり、アリス・マーガトロイドではないことを知っている。
 どんなに女優がアリスを演じても彼女はアリスにはなれない。それが例え本人だとしても、演技である以上彼女は本物にはなりえない。
 ――――――壮大にして滑稽な一人芝居。それがアリスの正体。

「だから、私を否定するの………?」

 抑えてきた感情が溢れる。とめどない悲しみが激流となって彼女を埋め尽くす。
 アリスはいつでも冷静で余裕に溢れている、だが今の彼女にはそれができていない。だから彼女はアリスではない。
 悲壮なモーダストレンスが彼女の頭のなかで同じ証明を繰り返す。

 そんなとき、ひとつの考えが彼女の脳裏に浮かんだ。
(もし、私がアリスを演じ続けるとしたら何をするべきか)
 もう一度人形遣いとしての目標を探すこと。否。
 博麗霊夢を倒す。それは最終目標であって一度彼女を負かしたところで自信にもならない。第一、戦うための自信が彼女にはない。
 けれども聡明なアリスはすでに答えを見出していた。
(私が私であり続けるために私は、私を犠牲にする)

「―――――――――だったら」

 アリスが立ちあがり、固く閉じていた部屋から出る。
 そして散乱していた人形のうちの一体を拾い上げると力強く握り潰す。

「私は――――――あなたたちの命を否定する」

 鋭利な刃物を突き立てるように、彼女は冷酷な決断を下した。
 もうその目に、涙はない。

 やることが決まれば行動は早かった。
 人間らしいイメージを強調していた過去の人形たちのパーツを分解、機能と性能を重視した改造を行う。
 腕をハサミで断つたびに人形たちの悲鳴が聞こえる錯覚に襲われてもアリスは止まらない。
 心のない人形に、痛みや悲しみはない。
 まるで自分自身が人形になってしまったかのように、無表情で人形たちの処刑を行う。

 そして縫い合わせる針も長時間かけて集めてきた蒐集物、そのなかでも厳選した霊力の高いものを惜しみなく使い、縫い合わせる。
 さらに個々の能力をあげるために触媒を用いて強化する。足りない容量は人形の装飾を増やすことで補う。
 また、自分自身の強化も忘れない。良質な布を裁断して普段纏っている服と同じものを作る。
 最後に新しい人形を用いた弾幕を記述したスペルカード。もちろん単純に強化を施した人形によって手持ちのスペルカードも強化されている。

「――――――できた」

 寝食を忘れ、作り上げた人形たちを前にして彼女は思わず感嘆の息をもらした。
 少し目を凝らしただけであふれ出ているのが一目でわかる人形たち。そしてそれらを生かすスペルカード。
 全力を出すのは主義ではないが作るものに全力を込めるのはまた別。他人に対して余裕を見せられれば主義は守られる。

「あとは調整をするだけ…………ふぅ」

 連日の作業で睡眠不足なためかアリスはあくびをしてしまう。
 眠たげに目を擦り、机のうえにある人形たちを一瞥すると彼女は静かにため息をついた。

「……少し寝よう」

 外は何度目かの夜。
 根を詰めて作り上げたのだから調整まで行いたいのは山々だったが、失敗すれば意味がない。
 ここは休みをとってから人形たちの調整をしようとアリスは寝室に向かう。
 ベッドに背中から倒れこんだ彼女を睡魔が襲う。一分と経たないうちにウトウトしだして、やがてすぅすぅと寝息を立て始めた。



 ……アリスは里で新しい人形劇を披露している夢を見ていた。
 劇を観ている人間たちの食い入るように見つめる視線が嬉しくて彼女の操る指にも熱が入る。
 ところが突然、自分の動かしていた人形たちが動かなくなってしまう。
 おかしいと思って何度も操作を行い、魔力を送るなどしてなんとか動かそうと試みるが人形たちはまるで動こうとしない。

 動け、と命じる。
 動け、と鞭を打つ。
 それでも人形たちは動かない。まるで心を閉ざしてしまったかのように。
 ……嘘だ。人形に心なんてない。
 アリスの首筋をイヤな汗が流れる。否定したはずのものに邪魔をされ、ままならないことに苛立ちを募らせる。

 ふと、自分が失敗をやらかしているというのに観客たちが静かすぎることに気づく。
 普通なら様子を窺うざわめきが聞こえてもおかしくないのに、まるで凪のように静まり返っている。
 不思議に思ったアリスが顔をあげる。
 そこには無表情でアリスを見ているたくさんの“アリス”たちがいた。


「……………ッッ!!!」

 驚きで目が覚める。
 同時に乾いた喉で息を吸い込み、声にもならない声が出る。

「なに、今の……」

 ふと額に違和感を覚えた彼女が袖でぬぐってみると汗が大量に付着していた。
 寝ている間に汗を掻いていたのだろう。服に触れてみるとところどころ汗で濡れていた。

「最悪、お風呂入ろう………うん?」

 寝巻きに着替えて置けばよかったとアリスは後悔しながら、気持ち悪い汗を流そうとすると上海人形が玄関からやってきた。
 糸から伝わってきたのはある人間の顔。

「……霊夢? 霊夢が来ているの?」

 珍しいとアリスは小首を傾げた。
 自分から神社を離れることの少ない霊夢が魔法の森までやってくるなど、驚きを通り越して疑問であった。
 そもそも彼女は何の用で来たというのか。数日前にはアリスから一方的な怒りを叩きつけられたのに。
(謝りに来た? ううん、それこそありえないわ。霊夢に非なんてなかった)
 むしろ軽口に過敏に反応した自分こそ大人気なかった。それは当事者であるアリスが一番よく分かっている。

「あ……」

 と、ここでアリスは机のうえに置かれたままの人形たちに目がいった。
 作り上げられたばかりの人形。命の祝福など微塵も与えられないまま完成を迎えた布地の塊。

「ダメよ、これは霊夢を見返すために作ったわけじゃない」

 アリスが寝食を惜しんでまで作り上げたのは人形の製作に熱中することで迷いを忘れ、そして弱い自分を犠牲するため。
 自己に埋没し、原点に回帰し、アリスがアリスであるための証明が机のうえの人形たちなのだ。
 それなのに冷静さを失った代償を霊夢に求めるのは間違っている。アリスが今行おうとしていることは霊夢への八つ当たりに他ならない。

「でも」

 このままではすっきりしないのも本心。

「少しだけ、少し試すだけよ」

 自分に言い聞かせるとアリスは玄関に向かいドアを開ける。そこには上海が伝えてきたとおり霊夢が立っていた。
 彼女はいつものような奔放不羈な態度はなく、なぜか礼儀正しく不安そうな表情を浮かべていた。
 これもまた奇妙なことだとアリスは思った。

「おはよう。それともこんにちは?」
「………なんか、いつもどおりね」
「そう? よく分からないけど」

 否、アリスは感じていた。今まで持っていた自分らしさが戻ってきていたことを。
 霊夢と相対していても冷静でいられる。本心を隠せている。
 大丈夫、と嬉しさを表面に出さないようにしながら彼女は霊夢に用件を尋ねる。

「それで何かご用? 宴会のお誘いかしら」
「それもあるけど……アリス、うちに来たときに具合が悪かったでしょう。それでどうなったかなと思って」
「具合? ……ああ」

 なるほど、と納得するアリス。
 霊夢が来たのは失言を謝るためではなく、あのとき具合が悪いように見えたので様子を見に来たのだ。

 すうとアリスの心臓が冷める。
 つまり目の前の女は自分の言葉が相手を傷つけたと微塵も考えていない。
 そこまで思考がたどり着くとアリスの顔に冷たい笑みが宿った。
(そう、あなたも所詮自分勝手な人間の一人だったってことね)
 彼女は白く細い手をきつく握り締める。
(だったら容赦はしない。遠慮なく実験台になってもらうわ)

「別に、なんともないわ。それより暇だから弾幕の相手をしてくれない? 嫌とは言わせないわよ」
「……望むところよ」

 霊夢の返事に覇気がない。だが人形の運用テストに頭が集中している今のアリスにそれがどういう意味かなど知る気などない。
 ふわりと二人の少女が空に舞い上がる。
 アリスは上海を呼び寄せ、霊夢は札と針を小袖から取り出して構える。ここではまだアリスは作ったばかりの人形たちを呼ばない。

「行くわよ!!」

 一斉にばら撒かれる破魔の札。そこに生まれるわずかな隙間にアリスは身を躍らせ、即座に反撃する。

「その程度で当たるほど安くないわ」

 彼女の周囲に八体もの人形たちが召喚され、一斉に霊夢へと向かって飛ぶ。あるものは遠くで弾幕を張り、あるものは札が避けられるギリギリまで霊夢に近づいてやはり弾幕を張る。
 しかし軌道を先読みされ、霊夢はかろやかに弾と弾の間を潜り抜ける。それでもアリスは人形たちの動きに手ごたえを感じていた。

(いける。命令の伝達速度も反応も悪くない、これならもう少しいい動きができる)
 糸は術式であるため質そのものは変わらない。問題は受け取る側がどれだけ敏感に反応できるかであったが、それはアリスの予測値を上回っていた。
 試しに彼女は霊夢が切り返してきたところで攻撃を止め、カードを一枚きる。

「赤符『シュールヘッジホッグ』」

 ルールにのっとって弾幕名を宣言、そしてスペルカード用に作った数体の人形を前線へと放つ。
 それらは霊夢から少し離れた乱雑な位置で静止すると霊夢に向かって放射線状に弾幕を発射する。
 だが幾多の弾幕を避けてきた彼女には些か甘かった。飛んでくる弾幕の当たらない位置を予測、そして舞踊と見紛うほどの軽やかさで回避する。

「(これなら間を潜ってアリスに近づける……!)そっちこそ、本体がお留守よ!!」

 弾幕を撃ち終えた人形たちはまったくの無防備。それどころか術者であるアリスさえも無防備だった。
 すぐにスペルの弱点を見破った霊夢がアリスへと急接近を試みる。
 そこへ、近くにいた弾幕を撃ち終えたばかりの二体の人形が霊夢の邪魔をしようと進路を塞ごうとした。

「甘いわ! 今さら守ったところで……!?」

 そのときだった。霊夢の直感がまずいと本能に訴えかけてきたのは。
 勘に従って霊夢は急停止、即座にその場から脱出する。その直後、行く手を塞いでいた人形たちが内部から膨張、爆発した。
 爆風から顔を守ろうと腕で防御する霊夢。

「痛ッ」

 腕に痺れと痛みが同時に走る。それも腕だけではなく全身に。
 爆発が止むと霊夢は痛みの正体が何なのかを見ようと自分の腕を下ろした。

「なに、これ………裁縫用の針?」

 種類がまちまちの、およそ小指の長さほどの針が霊夢の腕にまるでハリネズミのように刺さっていた。
 まさか、と霊夢は想像したことをアリスに聞く。

「アリス……あなたまさか、これを人形に仕込んでいたの?」
「ええ、正解よ」

 冷ややかに笑い、霊夢の想像を肯定するアリス。
 冗談どころではない。爆発だけならともかく、爆発したあとにまで武器を仕込んでいるなんて。
 そもそもアリスの人形は火薬など仕込んでいない。人形を大切に思う彼女は大事な人形に火薬を詰め込むはずがない。
 霊夢は魔術に詳しくないために細かい原理は知りえないが、それでもアリスが人形を苦しませてまで何かを仕込む少女ではないことぐらい知っていた。
 爆発させるのは良からぬ物が憑きそうな危ないものと言いながら、壊れる人形を悲しげに見ているアリスを霊夢は見ていたのだから。

「どうしちゃったのアリス、あなたにとって人形は友達なんでしょう? どうしてこんなひどいことするの?」
「非道い? ふふっ、おかしなことを言うのね霊夢。人形に心なんて崇高な概念があるはずがないじゃない」

 誰よりも人形に詳しく、優しく接してきたはずの少女が否定する。
 仮初めの体などに魂はおろか心すら宿らないと。

「アリ、ス……?」
「所詮人形は道具、私の命令を忠実に実行する“僕(しもべ)”。それに、人形なんて壊れたら作りなおせばいい。そんな道具に対して非道いなんて博麗の巫女もずいぶん優しくなったものね」

 そう言って、アリスは静かに嘲笑した。

「あなたは針を使う、御札を使う。それらを投げることを可哀想だと思う? 手から離すことを躊躇う? いいえ、違う。道具には道具らしい用途がある、それと同じことよ」

 使い捨てる道具に心を込める必要はない。いずれ無くなるものに愛着を持っても意味がない。
 ならば最初から道具らしい扱いをすれば何の気兼ねもすることがなくなる。アリスが言っていることは正しい。
 しかし、彼女はそれを嫌ってきた。道具を使うことは惜しまないのは大事な人形たちの修理のためだけ。
 人形に愛情を注ぐことを惜しまなかったアリスが、なぜ真逆の考えをするようになってしまったのか。

「友達ですって? そんなものは初めからいなかった。だから私は命じるの、爆ぜろとね」
「―――――――ッッ!!!」

 霊夢のまわりをいつの間にか人形たちが囲んでいた。
 そして見る。アリスと人形を繋いでいる糸がぷつんと切り離される瞬間を。
 感覚で攻撃を予測した霊夢は能力を止めて頭から急降下、人形たちと距離をとる。そのすぐあとで人形たちが一斉に爆発して針をまき散らす。
 急降下していた霊夢は爆発の範囲から逃れており、攻撃が止まったのを見ると再び能力を行使して停止、アリスがいる高度まで飛翔する。

「二度目は当たらないか。さすがね」
「アリス……」
「じゃあこれはどう? 操符『スティッキードール』」

 アリスが弾幕を張るのと同時に数体の人形が剣を持って霊夢の後方へ向かって飛んでいく。
 ところが後方へと飛んだ人形たちが急停止。直後、人形たちの背中から刃の羽が体を突き破って生える。そこから霊夢めがけて体ごと突撃する。
 人形たちはまるで霊夢に引き寄せられるように高速で接近するも、彼女が敷いた結界によって弾かれる。

 この人形も、と霊夢は悲しげに目を細める。
 以前のアリスであれば人形を傷つける刃物を仕込むことなどありえなかった。だというのに今のアリスには人形を壊すことに躊躇いがない。
 よく見れば刃を仕込まれた人形たちは首に糸を巻かれて引っ張られていた。初めから相手にぶつけるために作られたため、手や足に糸を付ける必要が排除されているのだ。

「さっきからずっと手が動いてないわよ霊夢。それとも避けるだけで必死なのかしら」

 アリスが挑発しても霊夢は回避に専念するばかりでまったく攻撃してこようとしない。
 時折、彼女はアリスを見て目を細める。避けているだけで必死な割には余裕のある行動に、逆にアリスのほうが苛立った。
 攻撃が当たらないことにではなく霊夢が見せる表情や態度がアリスを哀れんでいるように見えたから。

 さらにアリスは弾幕の密度を高める。
 それでも霊夢には当たらない。初見のはずなのに彼女は的確に隙間を見つけて避けていく。反撃する瞬間があっても彼女は何もしない。
 いい加減焦れたアリスは霊夢に言葉を投げかける。

「一体なんのつもり? 負けるつもりならさっさと当たればいいのに」
「アリス、あなたは間違っている」
「なんですって?」

 突きつけられた言葉にアリスのなかでくすぶっていた怒りに火が点く。

「確かに使い捨ての道具を大切にするなんて馬鹿げているかもしれない。でも、そんな道具でも以前のあなたは大事にしていた」
「間違っていたのよ。ほら、そろそろ鴉天狗の鳴く頃よ。無駄口叩く暇があるなら墜落なさいな」
「……そう、そういうことなら仕方ないわね」

 弾幕が止む。アリスが魔力を高めて最後の一撃を構える。
 やがてゆっくりと霊夢は袖から針を取り出した。
 ようやく闘う気になった霊夢は一度だけ目を伏せると決意の眼差しをアリスに向けた。

「あなたの正しさを証明する。人形を粗末に扱う今のあなたはアリスじゃない」
「ッ……!! 違う、私はアリスよ。私はアリス・マーガトロイドなのよ!!」

 霊夢からも聞こえさせられた否定の言葉についにアリスは押し込めていた感情を爆発させる。
 そして悲痛な叫びを合図に、最後の宣言が夕刻前の空に響き渡る。

「妙技『忘命劇団』―――――――!」

 無数の糸が踊り、一斉に多数の人形たちが召喚されると術式の糸が人形たちを繋累する。
 ここまでは普段のアリスの人形操術と何ら変わりはなかった。
 だが、ここからすべてが一変する。
 糸を繋ぎ終えたアリスの体が脱力してだらりと前倒しになる。また、まわりの人形たちもアリスと同じ体勢になっている。

「(……仕掛けてこない?)」

 人形たちもアリスも最初の位置を維持したまま身動きひとつしない。
 不審に思った霊夢がアリスに向かって針を投擲する。
 ――――――魔法の糸が風を切った。
 舞踊の如く、突如としてアリスが動いた。そしてそれが引き金となり、彼女から遠い位置にいる数体の人形が針に向かって弾幕を発射、撃ち落した。

「え……っ?」

 霊夢が声を出して驚く。
 攻撃してこないはずのアリスがまるで攻撃に反応したみたいに急に動き出したのだ。その滑らかなのに過激な彼女の操術に、霊夢は思わず見惚れてしまった。
 アリスから反撃として種類の異なる弾幕が無数に放たれる。一見しただけでは霊夢から統一性がないように見えたが、しかし回避してみると厳しい回避を迫られる計算されつくした弾幕だった。
 また離れた位置から鏡を持った人形たちが一定以上の大きな弾を跳ね返すなど、幾重にも張り巡らされた弾幕の罠が霊夢を追いつめる。

 さらに霊夢の驚愕は続く。
 今のアリスは霊夢を見ていない。否、目を見開いてすらいなかった。
 いつ相手の攻撃が飛んでくるかもわからない状況で彼女はひたすらに人形の操作に没頭していた。
 それだけに留まらずアリスは操っている糸を指から離しては別の糸を付けるという離れ技までやってのけていた。
 人形たちに繋がっている糸を指に付けて操ったかと思えばすぐに自分の上へと糸を放って、また次の糸を指に付ける。
 アリスの頭上へと舞い上がった糸は不可視の風に流されることなく、重力に従って落ちると再びアリスの指へと戻る。

 普通に考えれば分かることだ。どんなに優れた魔法使いであろうとも同じ指で複数の人形に異なる命令を送るなど不可能。
 樹木と同じ原理である。それが桜の木であるかぎり、そこから桃の花が咲くことなど絶対にない。
 そしてアリスの周囲には指の数、十を越える人形たちがいる。どんなに頑張っても指の数を増やさない限りアリスは十以上の人形を操ることはできないはず。

 しかし、アリスは糸を付け替えることでそれを可能にした。糸を放り上げる高さと落下してくる時間を計算にいれ、大多数の人形を連続的に操った。
 もちろんただの糸では風で流れる。だがアリスが使うは魔法の糸、風を計算に入れる必要がない。
 そうして完成したのは舞に見えるほど流麗かつ激しい操術。流れるように見えるのはすべて計算されたものであり、激しく見えるのは彼女が人形を操る作業に没頭しているから。
 まさに妙技。器用もここまでくれば立派な神業である。

「く……!」

 なんとかして隙を作ろうと霊夢が弾幕の隙間からアリスへ向かって退魔の針を投げつける。
 だが人形の集団に飛び込む直前で的確な迎撃に遭ってあえなく撃ち落されてしまった。
(見えていないのなら私の攻撃を防ぐことなんてできないはず)
 アリスはいまだ目を瞑ったまま。音で判断するにしても周囲は弾幕の海、どうやって霊夢の攻撃を知りえたのか。
 と、ここで霊夢の慧眼がアリスの周囲に漂う四つの人形に目を付けた。

「あそこだけ妙に攻撃頻度が高い……?」

 四方に配置された人形たちは他の人形と違って位置を変えることなく、定位置のまま弾幕を張り続けていた。
 その攻撃頻度は他の移動しながら攻撃してくる人形たちよりも目に見えて多く、まるで常に操られているようだった。

「まさか……!」

 霊夢は飛んでくる攻撃を回避しつつ、アリスの動きに注目する。
 見ると、アリスは次から次へと糸を付けては離していたが両手の小指と薬指の糸だけが付けられたままであった。
 次から次へと糸を付け替えるほどの離れ技を可能とするアリスの器用さであれば、残る二つの指の糸も付け替えられるはず。
 では、そうしないのは何故か。
 否、理由ではなく思考するべきはその目的。つまり“あえて小指と薬指の糸だけを付けたままにしているのは何の為か”?

(目を瞑ってまで集中力を上げたのに攻撃が避けられなければ意味がない。でも移動すれば糸を付ける計算が狂ってしまう。だから四方に目の代わりになる人形を置いて迎撃に特化させることで弱点をカバーした――――――!!)
 避けられないのならば相殺すればいい。避けることが当たり前の弾幕ごっこではある意味無謀とも言える行為。
 だが彼女は人形遣い。一匹の威力で足りなければさらなる数で迎撃することができる魔法使い。

「だったら小細工は不要ね、一気にいくわ! 夢想封印・集!!」

 スペルカードを発動させる霊夢。
彼女の力によって集約された霊気が珠となり、不思議な輝きを放ちながらアリスへと撃ち放たれた。

 ふわり。魔法の糸が二度舞う。
 攻撃していた人形たちがアリスの前面に並んで壁となる。

「無駄よ! あなたの弾幕には火力が足りない、私の夢想封印は相殺できないわ!!」

 勝った、と霊夢は勝利を確信する。ところが彼女は奇怪な光景を目にすることになる。
 壁になったはずの人形たちが弾幕を撃たない。それどころか前進を止めず、まっすぐに夢想封印へと飛び込んでいくのだ。

「ちょ……ちょっとまさか………!?」

 霊夢の予感は的中する。人形たちは全速力で夢想封印の弾に体当たり、自らの体を以って攻撃を相殺した。
 他の人形たちも次々と夢想封印へと突撃し、ついにはすべての攻撃を相殺しきった。
 失念していた、と霊夢は自らの軽率さを恥じた。
 今のアリスに人形を慈しむ心はない。ただ心のない道具を当たり前のように使い捨てる非道さを持っていることを。
 だとすれば攻撃を止めてまで総力で相殺するよりも、最小の操作で操作することを選ぶのは自明の理。

(封魔陣で人形たちを繋いでいる糸を無効化するか? ううん、それにはもっと近づかないと。あとは威力のある『瞬』だけど)
 弾である以上、接触すれば破裂する。同じ弾ではなく人形をぶつけられれば先程と同じ結末で終わってしまう。
(一番強い、接触しても止まらない攻撃)
 弾幕を避けて、人形たちに邪魔されず、なおかつアリスに人形の操作を止めさせるほどの強力な攻撃。

「あるにはある、か」

 頭に浮かんだ方法が最適にして最良であると判断し、一人頷いた霊夢。

「行くわよ。この攻撃、避けられるなら避けてみなさい!!」

するとおもむろに針を取り出して自ら弾幕の海へと飛び込んだ。
 鋭い弾に掠って白い肌に傷がついても止まらない。服がわずかに焦げても彼女は怯まない。脇目も振らずにひたすら前へ、前へ。
 狙うは本体であるアリスのみ。

 霊夢の狙いを悟ったのか、アリスの糸が三度激しく舞う。
 広く展開していた弾幕がアリスへの道を遮るように中央へと集中する。その密度は先程までとは比較にならないほど。
 だが飛び出した紅白の弾丸は止まらない。どれほど弾に掠っても、当たっても、彼女の勢いは少しも緩まなかった。

 それでもアリスの動きに焦りなどない。まるでこの展開を予想していたかのように計画的に、人形たちが霊夢を包囲する。
 遠距離の攻撃が通じないのであれば至近距離で直接弾を当てるしかなくなる。
 霊夢の目が大きく見開かれるのとほぼ同時に人形たちが霊夢に向かって突進。
 ―――――そしてその小さな体を大きく膨らませて爆発。巫女を閃光で包み込んだ。

 光が消えて、あとには煙と爆発によって散った人形の生地が舞う。
 さすがの霊夢といえども、これでは動けないだろうとアリスは閉じていた静かに目を開く。

「……終わったのね」
「いいえ、まだよ」

 わずかな煙の向こうからアリスの独り言に答える声があった。
 驚き、アリスが構えようとするよりも早く声の主が彼女の懐へとすばやく飛び込む。霊夢である。
 巫女装束をボロボロにしながら、ところどころに火傷や怪我を負いながらも彼女はアリスにしがみついた。
 手に針は持っていない。おそらく針は人形たちが特攻してくることを読んで、人形たちに自爆される前に破壊したためであろう。

「私の勝ちねアリス。残念だったわね」
「まだ攻撃できるわ。腕を封じられても指は動く、あなたの後ろから人形があなたを射貫く。それでも構わなくて?」
「降参するまで意地でも離すもんですか」

 舌を出して徹底抗戦を訴える霊夢。意固地なところが彼女らしいと思いながらもアリスは自分の状況を冷静に考える。
 仮に霊夢が手を離すまで攻撃するとして有効であるか。
 弾幕ごっこでは殺人はご法度。このルールには従わなければいけないため、下手に霊夢を攻撃しつづけて死なれると困る。
 気絶するまで攻撃するにしてもこの後の宴会に差し障るであろうと考えられるのでこちらも却下。

 つまりどう転んでもアリスは負けるしかない。
 が、それはあくまで霊夢が攻撃を受けて手を離さないことが前提の話である。
 身の危険を感じた霊夢が自分から手を離せば状況はアリスに有利、確率にして八割七分九厘の割合で勝てる。

「ねえ霊夢、あなた絶対に手を離さない自信がある?」
「もちろん」
「だったら」

 くい、とアリスの指が動く。
 すると周囲に浮かんでいた人形たちがアリスと霊夢のまわりに集まりだした。
 これを見た霊夢はまずい、と危険を察知する。

「これだけの数が一斉に爆破するとして、あなたは果たして耐えられるのかしらね」
「正気!? こんなにたくさんの人形たちを爆破させればアリスだって危ないわ!!」
「じゃあ手を離してあなただけ逃げればいい。簡単なことでしょう」

 ニィとアリスは口の端を吊り上げて笑い、直後に人形たちを起爆させる。
 そして数秒の後―――――――大きな爆発が空で巻き起こった。




 ◆ 終章 七色の橋を渡って ◆




 強い痛みにアリスは目を覚ました。

「う……」

 背筋が痛むのを堪えながら起き上がった彼女は周囲を見渡す。そこは空ではなく紛れもない見慣れた地上の光景だった。
 気がつけば沈みかけていた日は傾いており、茜色が森を照らしている。

「魔法の森……そうか、私は霊夢を引き剥がそうとして」

 人形たちをすべて爆破した。そのあとで気絶してしまったらしい。

「我ながら情けないというか……あれ? 傷が、ない?」

 自己嫌悪に陥り、頭を抑えるとまったく傷を負っていない自分の体が視界に入ってきたのを見てアリスは驚いた、
 小規模とはいえ威力のある爆発による火傷はおろかほとんど無傷。地上に落ちた際にぶつけたと思われる背中だけが唯一のダメージだった。
 至近距離での爆発を受けたのだから火傷を負うくらいの覚悟はあったし、常に自分を守っている魔法の障壁で軽減されていても不思議はない。
 とはいえ障壁に外からの衝撃を完全に殺せるほどの力はなく、せいぜい上空から落下しても死なない程度のもの。
 擦り傷も負えば火傷もそれなりに負う。だから余計に無傷なのは不思議で、それこそ霊夢のような強力な結界でもない限り―――――――。

「霊夢?」
「ここよ」

 声がすぐ後ろから返ってくる。
 生きていたのかと安堵しながらアリスはそちらに顔を向け、そして声を失った。
 霊夢は地面にうつ伏せに転がっていて、背中には爆発で受けたとみられる怪我のあとがあった。
 さらに全身はボロボロの雑巾のように酷い有様になっていて、声を出せるのが不思議なほどの怪我だった。

「まさか、私を庇ったというの?」
「そんなんじゃないわ、私は手を離さなかっただけ。防御したのはついで」

 言われて霊夢の伸ばした手の行方を追うと、確かに彼女の手はアリスのスカートを掴んでいた。

「あとお礼なら上海にしなさいね。アンタの落下の衝撃を和らげてくれたんだから」
「上海に? あ……」

 さっきまで自分の倒れていたところを振り返るとアリスの背中があったところにボロボロの上海人形が横たわっていた。
 おそるおそるアリスは上海を抱き上げる。いつも側にいた人形はきっと必死で主人を受け止めようとしていたのだろう。人形の服は木の枝で切れてひどく損傷していた。

「どうして……? 私は助けろなんて命令していない。それなのにどうして?」
「本能的にそうしたんじゃないかな。誰だって大切な人が傷つくのを黙って見ていられるわけないもの」

 土で汚れた人形をアリスは思わず強く抱き締めた。
 守ってくれてありがとうと、使い捨ての道具としてではなくて大切な友達に感謝するように。
 そんな彼女を微笑ましく見つめる霊夢。そういえば、とアリスは彼女のほうに向き直る。

「……ありがとう」
「別に。それよりも怪我して動けないわ」
「その割には平気そうじゃない」

 やれやれと首を振ってアリスは上海を懐に入れて立ち上がる。ところが霊夢はまだスカートから手を離そうとしない。

「あのね? いい加減離してくれないと動きにくいの」
「じゃあ負けたって言いなさい。そうしたら離す」
「はいはい。負けたわ、負けました。これでいい?」
「釈然としないけど私の勝ちにしてあげるわ」

 偉そうに言いながら霊夢はやっと手を離す。
 ようやく解放されたアリスは霊夢の側に近寄り、彼女の体を起こすのを手伝う。

「歩けそう?」
「無理~」
「その舌はいったい何枚目なのかしら。ほら、背中貸してあげるから乗りなさい」

 アリスが体の向きを変えて霊夢を背中に乗るように促すと彼女は素直に寄りかかってきた。
 それから膝の裏側に腕を通し、ゆっくりと霊夢の体を持ち上げる。

「意外に軽いのね。もう少し重いと思っていたけど」
「乗り心地の悪い人に言われてもねえ」
「乗り心地のいい人間ってそれこそどんな人よ」

 さくさく、と森の中を歩く。それほど家から離れていなかったのは幸いで遠い木々の合間にアリスの家が見えた。
 一分としないうちに家へたどり着くと霊夢を背負ったまま家に入り、彼女を寝室へと運んでやる。
 傷のある背中をベッドに触れないように優しく端に下ろしてやるとアリスもベッドに座る。

「はぁ、疲れた」
「それは私のセリフ。誰があなたを背負ってきたと思っているのよ」

 疲れたと愚痴をこぼす機会を逃し、小さくため息をつくアリス。

「それよりも霊夢、あなた怪我しているでしょう。薬を塗ってあげるからそこにうつ伏せになりなさい」
「アリスってば大胆ね」

 霊夢の言葉をさらりと無視してアリスは救急箱を取り出し、うつ伏せになった霊夢に薬を塗る。
 しかしくすぐったいのか、怪我している部分に触れると霊夢は身を捩じらせて逃げようとする。

「こら、大人しくしなさい」
「じゃあくすぐったくないようにしてよ」

 薬を塗ってもらっている立場のはずの霊夢がふくれ面をしてアリスに抗議する。
 ああ言えばこう言う。面倒だと思いながらもアリスは治療を続ける。

「アリス」
「文句は受け付けません」
「私はいつものアリスが好きよ」
「はい?」

 訳がわからないと訝しげに顔をしかめるアリス。
 だが霊夢はアリスの顔を見ようとしないまま言葉を続ける。

「人形を大事にして、愛情を注いだだけの責任を果たそうとしている優しいアリスが私は好き」
「…………」
「でも、さ。たまには日の下に出てきてよ。人形とだけじゃなくて私とも話をしてほしい。それだけで喜ぶ人間がいるんだから安いものでしょ」

 優しい霊夢の言葉にアリスの心が大きく脈打った。嬉しいと叫んだみたいに強く鼓動が跳ねた。
 考えもしなかった。憎まれ口を叩きあうだけの仲だった霊夢に好きと言われるなんて想像もしていなかった彼女にとって不意打ちだった。
 霊夢がアリスのほうを見ようとしないのはきっと恥ずかしいから。それはもう真っ赤になっているに違いない。
 そう思うとアリスの悪戯心がくすぐられた。薬を塗るのを止めて霊夢の顔に自分の顔を近づける。

「ねえ霊夢。もう一度言って?」
「言わない」

 頑なに顔をあわせようとしない霊夢。さすがいじめたのは悪かったかなとアリスは笑ってしまい、でも嬉しくて彼女も本音を告げる。

「私はね、霊夢。自分が自分でなくなるのが怖かったの」

 あらかじめ用意された言葉を使わずに、ただ思うままに彼女は言葉を紡いでいく。

「ずっと私は私らしく生きていこうとしていた。いつも冷静で、負けても言い訳が立つように自分を守ってきた」

 アリスがアリスであるために殻を作って外からの衝撃から隠れ続けてきた。
 周りに流されないように常にあるべき選択肢をとり、あたかも自然な風に振舞って自分を演じ続けること。

「でも羨ましかったのね、きっと。霊夢を見ると自分が必死になっているのが目立ってしまってすごく恥ずかしかった」
「アリス……」
「あなたの何気ない一言にも敏感に反応を返したりして。ふふ、今思えば霊夢といるときの自分が一番私らしかったのかもしれない」

 霊夢の側にいると隠してきたアリスが殻から出ていってしまいそうになる。
 霊夢の側にいるだけで自分をさらけ出してしまいそうな自分に嫌悪し、その怒りを霊夢にぶつけてしまう。
 アリスにとって見返したい人物は最も近寄りたくない人物でもあった。

「けれどあなたと別れたあの日に人形たちは私を否定したのよ、『あなたはアリスじゃない』ってね」
「じゃあ……」
「そう、あの子たちに思い知らせたの。あなたたちはただの人形で道具なんだって。ずっと愛してきたあの子達の命を否定した。そうすることで私は私という存在を保とうとした」

 結果として生まれたのが針や刃を埋め込まれた悲惨な人形たち。そして使い捨てることを前提とした弾幕。

「アリス。その、私には人形たちがアリスを否定したようには思えないわ。だって上海はあなたを助けた」
「当たり前よ」
「え?」
「舞台の上に立つべきは女優、決して裏方が出てきてはならない。そして観客は誰よりもそのことを知っている。そういうことよ」

 観客たちが求めていたのはアリスという女優だけ。裏方が出張るなどという展開は望んでなどいない。
 裏方は女優を助けようと観客の前に立った。それがすべての間違いだったということだけのこと。

 結論としてアリス・マーガトロイドとは何だったのか。
 それは弱い少女の代わりに立った架空の存在、殻であり女優。人形たち、つまり観客であるアリスは弱い少女が出ることを叱咤した。
 一人芝居であるのならどれだけの役があったとしても、それはすべてをひとつに束ねるために働きかける。いわゆるペルソナである。
 必要な役割のために演じる仮面。それ以外の仮面は必要ない、だから本能でふさわしくない自分を自分が叱咤する。

「あの子たちは私の分身、大切にするのは当たり前だったのよ。他人として接しようとするからいけなかったの」
「人形が、アリスの分身?」
「似たようなものってこと。ああ、でもそうすると今はどちらが本心なのかしら。自分でも訳がわからなくなってきちゃった」

 霊夢を前にすると出てきてしまう本物の自分と、人形たちに潜んでいる自分。

「どっちもアリスなんじゃないの? むしろ二人でアリスみたいな」
「それって人形すべてに当てはまるじゃない。でもそっちのほうがしっくりくるかも」

 喜怒哀楽を共にすることと大切にすること。本当に守るべきものに出会ったときに人は自我を拡散させるのだろう。
 そうすることで拠り所を作り、自分を守る殻を形成し、自分という存在を確立させていく。
 そのために他人を排すこともあれば閉じこもることもある。それがどちらに対するものであっても自分を守る行為である。
 アリスの場合、守るべきものを壊したことで自分を取り戻したがアリスという存在を保てるほど強くなかった。

 けれどそれは悪いことではない。必ずしも自己がひとつである必要などない。
 それは本のなかの登場人物に自分を重ね合わせることや、花の生き様に自分を見ることに近似する。
 自分が花ではないからと無理矢理切り離す必要はない。何かに自分を見るということは大切なものを感じるということなのだから。

「じゃあ早く上海を直してあげないといけないわね」
「そうね。でも先に汗臭いから風呂に入るわ、これから宴会なのにこのまま行くわけにいかないし」
「あら本当、汗臭いわアリス」
「同じことをわざわざ言わなくてもよろしい」

 笑いながら二人は仲良く風呂へと向かう。

「そもそも霊夢、あなたは薬を塗ったばかりなのだけれど」
「シャワーだけ借りるわ。そのあとでもう一回薬を塗ればいいじゃない」
「なんで偉そうなのよ」
「あと今日の宴会の幹事やってもらうから。ああ、背中が痛むわ」
「それこそおかしいじゃない。あなた普通に歩けているのにどうして私が幹事なんかやらなきゃいけないの」
「何事も経験よ」

 ―――――――その日、アリスは夢を見た。
 空に架けられた七色に輝く橋を人形たちとともに笑いながら渡る、メルヘンチックな子どものような夢。
 そして彼女の横には一緒になって笑う霊夢の姿があった。






  END
魔理沙「最近なぜかアリスと霊夢の仲がいいんだ。なんでだろうな?」


レイ×アリが僕のデスティニー。
時期的には花の異変が終わったあたり。下手に最近すぎてもつまらないかなと思い。

6月13日 誤字修正。

アリスはお姉さん属性かもしれないが、霊夢には妹属性があると思っている僕はおかしいかもしれない。
和と差を操る程度の能力
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コメント



0.1920簡易評価
4.80名前が無い程度の能力削除
同士よ
5.100名前が無い程度の能力削除
幸せすぎて全俺の有頂天。
霊夢はのんびりものの姉、やんちゃな妹に挟まれた次女的ポジションがしっくりくる。
時と場合により姉属性と妹属性を使い分ける無敵の巫女さんなのだよ!
6.90名前が無い程度の能力削除
レイアリというのも珍しいな
俺はどんなカップリングでもアリスなら大歓迎だぜ
11.100名前が無い程度の能力削除
よいレイアリが読めて大満足。
16.80名前が無い程度の能力削除
最後の部分の魔理沙、やきもちか?やきもちなのか??
だとしたら霊夢とアリスどっち狙いだ。両方か!?
そしてパチュリーかフランあたりが笑ってるのか!??
25.60名前が無い程度の能力削除
まずは誤字報告を。

> 寝ている間に汗を欠いていたのだろう。
> 霊夢は札と張りを小袖から取り出して構える。
> 初見のはずなのに彼女は適格に隙間を見つけて避けていく。
> だが人形の集団に飛び込む直前で適格な迎撃に遭って

アリスの自己心理分析はかなり突っ込んだ内容で読み応えがあり、彼女も
いい感じに狂ってくれていたので中盤以降の展開に期待していました。
しかし、弾幕ごっこが終わると同時に憑き物が落ちたように正気に戻って
しまったので、拍子抜けです。
戦闘中のアリスの鬼気迫る荒々しさは一体何処へ?
というか、弾幕ごっこの前後のアリスのキャラにギャップがありすぎです。
終章では、「何でアリスも霊夢もそんなにフツーに話せるの?」と、読んで
いて戸惑いました。
いや、レイ×アリは私も大好きなんですけどね(マリ×アリの一万倍くらい)。
いっそ、霊夢の愛(kiss)がアリスを狂気から目覚めさせた、とかやって
くれれば!
26.無評価名前が無い程度の能力削除
ギャップの変化が大きすぎるような・・・・アリスが途中まではとても病んでいるのに、最後は何事もなかったかのようです。
もう少し、過程をいれて欲しかったです。
レイアリは自体はとても好きなので、次回に期待しますという意味でフリーレスで
27.90名前が無い程度の能力削除
レイアリだなんて、もう絶滅したのかと思ったよ……。良かった。
しかしこれは良いアリス。
28.50名前が無い程度の能力削除
他の方もおっしゃってますが、終盤の変わりように少々違和感がありました。
それと戦闘中、恐らく病んでる状態のアリスが宴会のことをわざわざ気にしたりするのも
どうにもおかしい感じがしました。
ヤンデレアリス←霊夢はとても好きなジャンルなんで、もうちょっと深く書いてほしかったかなと。
36.90名前が無い程度の能力削除
レイアリごちそうさまでした。とても良かったです。
全体を通して心理描写がすごかったので、アリスが鬱から立ち直る時の内面をもっと描いてほしかったです。段幕ごっこはストレス社会の救世主?
39.90名前が無い程度の能力削除
レイアリは俺の生きる糧!
私もアリスがあっさり立ち直りすぎるのがかなり違和感ありますね。
途中まで素晴らしかっただけに、もの凄~~~くもったいないです。
あと、霊夢側の心理描写が無かったのもとても残念。

あ、『やりすぎ注意報』の時から和と差を操る程度の能力さんのファンです。
あれの続編もみてみたいな~なんて・・・
40.無評価和と差を操る程度の能力削除
たくさんの評価、ありがとうございます。

No4>同士よ
 戦友よ。

No5>時と場合により姉属性と妹属性を使い分ける無敵の巫女さんなのだよ!
 やんちゃな魔理沙が相手だと姉、のんびりなアリスが相手だと妹ですね。わかります。

No6>俺はどんなカップリングでもアリスなら大歓迎だぜ
 つ 霊夢も好きになる薬

No16>最後の部分の魔理沙、やきもちか?やきもちなのか??
 後の悲劇の伏線である。

No25>弾幕ごっこの前後のアリスのキャラにギャップがありすぎです。
 誤字報告ありがとうございます。
 さて、確かにアリスと霊夢が自然に話せているのは不自然に感じられたと思います。実際悩みました。
 アリスの狂気がどれほどのものか。よく描かれているアリスの印象は暴走すると止まらない感じが多いのです。
 よって、僕は弾幕ごっこのことは弾幕ごっこのこととして水に流してしまったわけです。
 コメントを見てから自分で読み返して納得。思わず「うわぁ」と呻きました。次はもっと気をつけて書こうと思います。
 >いっそ、霊夢の愛(kiss)がアリスを狂気から目覚めさせた、とかやってくれれば!
 ↑のこれは考え付かなかった……。今度からそうさせていただきます(ぇ

No26>ギャップの変化が大きすぎるような・・・・アリスが途中まではとても病んでいるのに、最後は何事もなかったかのようです。
 申し訳ないorz でもアリスが好きな僕に彼女を暴走させるなんてできなかったんだ!(言い訳

No27>レイアリだなんて、もう絶滅したのかと思ったよ……。
 レイアリは何度でも蘇るさ!(ム○カ声

No28>ヤンデレアリス←霊夢はとても好きなジャンルなんで、もうちょっと深く書いてほしかったかなと。
 いいえ、アリス←ツンデレ霊夢です。

No36>弾幕ごっこはストレス社会の救世主?
 現代社会のストレス発散にアリス酸はいかがですか?

No39>レイアリは俺の生きる糧!
 ブルータス、お前もか。
44.80名前が無い程度の能力削除
同士発見。レイアリに喜ばざるを得ない。
弾幕ごっこ面白かった。 上海……。
48.90どどど削除
つんで霊夢w
54.80名前が無い程度の能力削除
私は負けない・・・レイアリを絶滅させてはならない・・・!
作者様、超応援しています。
59.100名前が無い程度の能力削除
好き