Coolier - 新生・東方創想話

ルーミア

2008/06/08 22:17:37
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 朝、眼を覚ましてわたしは指輪を見つけた。

「綺麗だなー。わはー」

 それは朝日を反射し、銀色に輝いていた。

 わたしが住んでいる森、いつものお気に入りの大きな木に背中を任せて座り、その指輪をじっと眺めていた。

 どう考えても人間の物だとわたしは判断した。

 そう言えば、人間の物はちゃんとそれに関わる人に返さなければいけないと、偉そうな半妖が言っていた気がする。

 このまま無視してもいいのかもしれないがどうせ今日も暇だし、せっかくだからあの慧音とか言う奴の所に持っていってみよう。

「そうと決まればレッツゴー! 突撃十進法!」

 薄く霧がかかり、朝の温度で冷やされた森を、わたしはいつものポーズで走り抜けた。



「ほう、それで私の所に来たのか」

「そうだよー」

 慧音の家で椅子に座り、温かいお茶を飲みながら答えた。

「うんうん感心感心。最近またおかしな異変のせいで、妖怪たちを嫌う人間が増えてしまったからな。

 私の寺子屋に子供を預けようとする親が減ったことからもそれがよく分かる。

 まったくもってけしからん。容姿に角や牙があると言うだけで、こちらの話をまともに聞こうとしない人間のなんと多いことか。

 だがルーミア。お前のように人間のことを気にする妖怪がもっと増えれば。このつまらない隔たりはきっとすぐに無くなることだろう」

「そうだねー」

 何を言っているのかよく分からないため、適当にうなずいておいた。

「これがその指輪か」

 慧音は指輪を指でつまみ、いろいろな角度からそれを観察していた。それで何か分かるのだろうか。

 わたしがお茶を飲み終えるころ、調査結果が出た。

「これはあいつの嫁さんの物だな。指輪の裏側に名前が彫ってある」

「ふーん、それじゃあ、わたしはもう帰るね」

 立ち上がり、帰ろうとしたわたしの腕を慧音が「まて」と言いながらつかんだ。

「今日、私は授業で忙しいんだ。代わりにお前があいつの家に届けてやってくれ」

 えーめんどくさい、と言おうとしたわたしの口は慧音の恐ろしく力のこもった瞳によって動きを止めた。

「これは妖怪にも話の分かる奴がいると、人間に覚えてもらうチャンスなんだ。ぜひお前に行ってほしい。

 分かるよな?」

 わたしは理解した。断れば頭突きをお見舞いされるということが。

「行ってきます! 突撃十進法!」

 指輪と家の住所が書かれた紙を受け取り、その場から逃げるようにわたしは飛び出した。


 慧音に教えてもらった人間の家を見つけた。

 扉をどんどんと叩くと中から若い男が出てきた。その人間の顔は憔悴しきっており、とても不味そうだった。

 わたしが指輪を見せると目を大きく開かせ驚いていた。

 用事がすんだので帰ろうとすると彼が呼び止め、小さな飴がいくつも入った袋をくれた。

 わたしが笑顔でお礼を言うと、お礼を言うのはこちらの方だと返された。

 名前を聞かれたのでわたしはこう答えた。

「わたしは妖怪のルーミア。妖怪にだってわたしのように可愛くて優しい子もいるんだよ」

 これで慧音に頭突きをされることはないだろう。



 慧音の家に戻りこのことを報告した。

「それでこの飴までもらったのか。良かったな」

「うん」

 報告を聞いている間、慧音はづっと笑顔だった。人間との隔たりが少しでも薄くなったことがよっぽど嬉しいようだった。

「どうだ、ルーミア。人間のために働いて良かっただろう。

 このことをチルノやリグルにも教えてやれ。もっと多くの人間に感謝されるぞ」

 慧音は腕を組んで力説していた。

 正直、わたしにとって人間に感謝されるなんてどうでもいいことだった。

 人間と妖怪の在り方とか、あまり難しいことはそんなによく分からないし興味もない。

 だが、ご褒美があると言うのならば、たまにはこんなことも良いかもしれないと思った。

 飴を口の中で転がしているわたしに慧音が質問してきた。

「ところでさっきの指輪どこで見つけたんだ?」

 わたしは笑顔で答えた。

「朝、まだわたしの歯に引っかかってた」

 それを聞いた慧音はなぜか顔を青くした。

   










、 
どうも500です。ショートショートです。

ルーミアを可愛く書けたのでよかったです。

作品を読んでくださったあなたに全力の感謝を。

追記。詰めが甘い所もありましたが、多くのコメントありがとうございます。
500
http://beripann500978.blog25.fc2.com/
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コメント



0.7180簡易評価
1.70名前が無い程度の能力削除
オチがすごかった
2.50名前が無い程度の能力削除
そーきたかー
3.無評価名前が無い程度の能力削除
やはりルーミアとはこうあるんだなというのを改めて実感した
6.60名前が無い程度の能力削除
オチがびびる。
7.70八重結界削除
ルーミアにはブラックジョークがよく似合う。
ただ、嫁を心配している割にはルーミアをあっさり帰した夫に少し違和感。指輪について色々訊くかと思ったんですが。
でも、この手の話でそれを指摘するのは野暮かもしれませんね。
十進法と書いてラブハートと読んだら素敵。
8.80名前が無い程度の能力削除
上手いなぁ……届けに行って××かと思ってたら斜め下に落ちてきて空振り三振でした。
10.60名前が無い程度の能力削除
やっぱそうなるか。
13.80名前が無い程度の能力削除
うまい。
まさにルーミア
17.70名前が無い程度の能力削除
オチ見て逆に安心した。
ルーミアはこうあってほしいな。
19.80煉獄削除
なるほど、ルーミアに合うような面白い話ですね。
オチがそう来るとは思いませんでしたよ。

人を食べる妖怪なのだからそれは当然のことなんですよね。
ルーミアにとっては食事をしただけであり、彼や慧音にとってはそれで終わるわけでもない。
とても複雑ですよねぇ。
かたや人を糧にする者、かたや被捕食者とそれを守る者ですからね。
実際、どうすうることも出来ないでしょうしね。
20.90名前が無い程度の能力削除
ラストでみすちー肌になった。
21.80名前が無い程度の能力削除
ですよねー
24.100名前が無い程度の能力削除
これぞ、幻想郷。
27.100名前が無い程度の能力削除
良いオチ。
31.90名前が無い程度の能力削除
すばらしい!オチで完全にやられました。
34.80からなくらな削除
ラストがうまいですね
36.90名前が無い程度の能力削除
ぐはぁ!これが幻想郷…
38.60名前が無い程度の能力削除
慧音……
39.40名前が無い程度の能力削除
いや待て……幻想郷の人間を襲ってはいかんのでは……?

飯は食料係が確か調達してくるとか書いてあったと思ったが
41.100名前が無い程度の能力削除
これはあれか
旦那が■した嫁の後始末をしてくれたお礼、なのか?
47.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいオチでした!
読んでいてすごくルーミアの「らしさ」を感じました。
51.100名前が無い程度の能力削除
これぞルーミア
53.無評価名乗ることができない程度の能力削除
オチでグラリ。あ~あ。

やっぱり私も人間だな。

うまいこともっていったと思います。
55.100名前が無い程度の能力削除
こいつぁまたなんともルーミアな話だ!
59.100名前が無い程度の能力削除
まぁ、ルーミャだしな
61.80名前が無い程度の能力削除
このオチはすごいなぁ
62.90名前が無い程度の能力削除
可愛いルーミアに和んでいた頬が一瞬で凍りつきました…。
66.70名前が無い程度の能力削除
予想通りだけど、それがいい。
67.80名前が無い程度の能力削除
とてもルーミアでした。ありがとうございました。
68.80名前が無い程度の能力削除
ワラタ
69.70名前が無い程度の能力削除
なるほどいいオチ。
突撃十進法!
70.70名前が無い程度の能力削除
お、おお~
超ほのぼの系と思ってたら…

いいオチでした
72.100名前が無い程度の能力削除
最後にやられたZE。

突撃十進法!
73.80名前が無い程度の能力削除
展開は読めていたが・・・見つけた場所が場所すぎるw
80.80イセンケユジ削除
そうきたか……。
81.100名前が無い程度の能力削除
まさにルーミア
87.90名前が無い程度の能力削除
なーるほど。
こういうオチが光る作品がたまりません。
92.100名前が無い程度の能力削除
これはよいブラックジョーク
星新一を思い出した
98.70名前が無い程度の能力削除
ルーミアがあんまりにもボケボケっとしてるし、慧音はなにやら人間と妖怪が仲良くなれば良い、とか
言ってるもんだからそこで読むのをやめようかと思った。

……最後まで読んだら点数やらコメント数に納得の鳥肌物だった。
ごめんなさい。秀逸なオチでござんした。
99.80名前が無い程度の能力削除
>その人間の顔は憔悴しきっており、とても不味そうだった。
思えばコレは複線だったのかっ!!
101.80名前が無い程度の能力削除
オチうまい。
まさにルーミア。
104.90名前が無い程度の能力削除
可愛いけど怖い…怖いけど可愛い
良いオチでした
105.100名前が無い程度の能力削除
正直・・・ぞっとした
107.80名前が無い程度の能力削除
いいオチでした。
ルーミアらしい気がしました。
109.無評価名前が無い程度の能力削除
彼はルーミアが妖怪だと知り、何を思ったのでしょうか
妻の安否か、ルーミアに対する猜疑心か…
どちらにせよ若い男の人は気の毒だなあ。
ルーミアにとっては食事もでき、ご褒美ももらって申し分なしなのでしょうが。
110.無評価500削除
確かに彼の心理状態を配慮することなく話が進みます。
これは結末を考えると、その部分の描写は邪魔になるのではないかと考えたからです。
しかし、あまりにも簡単に書きすぎた気もします。
そのあたりのことはよく意識して、次の作品に生かしていこうと思っています。
144.80名前が無い程度の能力削除
ぞくっときた・・・
162.100名前が無い程度の能力削除
ルーミアらしいはなしでよかった
164.100名前が無い程度の能力削除
ルーミア…
172.90名前が無い程度の能力削除
オチの切れ味に完敗
177.100名前が無い程度の能力削除
背筋が凍るとは正にこのこと……
178.100名前が無い程度の能力削除
実に妖怪らしいルーミアでした
180.100にあ削除
オチに驚きました。
でもなるほどと納得。面白かったです!

名月祭ではお世話になりました。色々と話せて楽しかったです。
イベントの詳しいことも聞けてためになりました、有難うございます。
また会えたらお話しましょう!!此処で言ってしまって申し訳ありません;;
183.100名前が無い程度の能力削除
ここまで切れ味の鋭いオチは見たことないです
184.100名前が無い程度の能力削除
妖怪の恐怖もさる事ながら、無垢な子供の残酷さと申しますか。や、ルーミアの年齢は解りませんが。
日常に溶け込むようにありそうな恐怖ですね。や、身近に人喰いが居たら困りますが。

やられました。凄く良かったです。
185.70名前が無い程度の能力削除
これは面白い。
186.90名前が無い程度の能力削除
文章の短さゆえに、読みとれるであろうオチを悟らせないまま一気に読者に対して殴りかかるこの衝撃具合。
実に感服、眼福。楽しませてもらいました。
187.100名前が無い程度の能力削除
いい
ぞくぞくした
188.100名前が無い程度の能力削除
KOEEEEEEEEEEEEEE
触れるだけで切れてしまうカミソリのような鋭いオチ。
自分の表情も慧音のように蒼白になりました。
ほのぼの系統の多めなルーミアでの、妖怪としての本来の姿を描いたSSをありがとう。
189.70名前が無い程度の能力削除
序盤から予測できてしまったけど、
最後の1行で小気味よく切り返すショートショートな構成が
とてもスマートで良かったです
190.100名前が無い程度の能力削除
おおぅ……こいつぁすげえ
切れ味良すぎる
191.100名前が無い程度の能力削除
こんな作品が読みたかった
194.100桜田ぴよこ削除
流石のオチとスマートな構成。
ルーミアかわいかったです
195.100名前が無い程度の能力削除
うーん、バシッと決められてしまった。素晴らしいです。
197.80名前が無い程度の能力削除
何故8月22日にコメントがどっと増えたんだw

オチでそうか、と思いました
198.80名前が無い程度の能力削除
そーだよなー
210.70名前が無い程度の能力削除
正直オチは出だしで分かってしまうものの、無邪気故の狂気にも似たそのあり様が際立った様に思います。

暖かい世界のすぐ裏にはこんな世界が広がっているのかもしれませんね・・・
217.80名前が無い程度の能力削除
ルーミアですなー
221.100名前が無い程度の能力削除
戦慄した…
225.100うみー削除
うまい