Coolier - 新生・東方創想話

虚娘物語

2008/05/16 17:20:57
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※この作品は作品集35『胸娘物語』と作品集38『幼娘物語』の

※続編的位置付けですが、読んでいなくても楽しめるように書いてあります。

※なお、多量のおっぱい成分が含まれてオルランドゥ、用量を守って正しくお読みください。











閉ざされた部屋に、二人の少女が正座で向き合っていた、

一人は守矢の神社の巫女、東風谷早苗、そしてもう一人は

妖怪の山のどこにでもいるような住人であった。


「では、力を送ります」

「は、はい……」


早苗は両の掌をその住人の胸へと押し当てると、

目を閉じ、息を整えて何やら力を送り始める、

そのまま数分の時間が過ぎたとき、早苗は目を見開き、ゆっくりと手を離した。


「終わりました、これであなたの胸のサイズは、一回り大きくなったことでしょう」

「はっ……す、すごい、今つけているブラジャーがなんか窮屈です!!」

「これも我らが神のなせる業です」

「ありがとうございます!!」


住人は大喜びし、満面の笑みを浮かべて部屋から飛び出していった、

残された早苗は一息つくと、顔を一切振り向かせること無く背後の人物に話しかける。


「諏訪子様、新たな信仰の獲得に成功いたしました」

「お疲れ、そろそろ力が尽きてきたころじゃないかな?」

「そうですね、補充しなければいけません」


膝に手を当て、ゆっくりと立ち上がる早苗、

彼女が前を見据えた時、背後にいた諏訪子と共に、目がきらりと光る。




「ひっ……あああぁぁぁぁん!」

「神奈子様、まだ始まったばかりですよ?」


守矢の神社本殿に、神様の喘ぎ声が鳴り響く、神奈子を後ろから羽交い絞めにし、

そのEはあろうかという胸を、衣服の上からこれでもかと揉みしだく早苗、

両手は馬乗りになった諏訪子に押さえられ、抵抗することすら叶わない。


「だ、だって……はぁぁぁん!」

「さぁ、おとなしく早苗に胸力を搾り取られるのよ!」

「やめっ……らめぇぇぇぇぇぇぇ!!」


ぴちゅーん


「ふぅ……まだ全然足りませんね、あと二十回ほどいただきましょうか」

「ひぃえっ!? やめて! ここ連日搾り取られてるのに!」

「……そうですか、しょうがないですね」

「(や、やめてくれるのね、よかった……)」

「分かりました、本気で搾り取りましょう、これなら三十秒もかかりませんから!」

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」

「東風谷一族搾乳術が奥義! 鳴門大渦潮!!」

「ひゃぁぁぁぁぁーーーーん!!」


ぴちゅーん、ぴちゅぴちゅぴちゅぴちゅぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴちゅちゅちゅちゅーん




 第一話 幻の二人



諸君らは、四種類の身力という物をご存知だろうか、

一つ、見る物全てを魅了し、引き寄せる力……裸力

一つ、見る物全ての心を癒し、幸福を与える力……幼力

一つ、見る物全てを幻惑し、本能を奪い取る力……胸力


そして最後の一つは、いまや使える者すら幻の存在である。


「(虚力……それは有る者から胸力を搾り取り、無き者へと分け与える救いの力)」


純和風の自室の中央で、正座し、虚空を見上げながらその両手を前に出す、

両の掌を前に向け、円を描くように回し、時に激しく、時には緩やかに、

それは素人目に見ても熟練の動き、武術の達人と見紛う程に。


「(しかしここ幻想郷でもその供給と需要は成り立たない……)」


手を折り曲げ、くねらせ、指を波のようにうねらせる、

その動きは蛇の如く、その美しさは白鳥のように。


「(神奈子様だけでは一週間に一人が限界……新しい供給元があれば)」


その時、ぴたりと早苗の手が止まる。


「何者です? 賽銭箱は表にありますが」

「霊夢と同じことを言うのね、巫女って皆そうなのかしら?」


突然の来訪者にも動じることなく、

両手を膝の上に戻し、立ち上がって振り返る。


「……メイド喫茶の方でしょうか?」

「初めて聞く単語ね、残念だけど本物のメイドよ」


自室の隅で悠然と佇む女性、そのあまりにも堂々とした態度は、

早苗に彼女が泥棒や強盗の類ではないことを知らせていた。


「では改めまして、私は十六夜咲夜、紅魔館のメイド長よ」

「ああ、あの麓の変……ごほん、麓の吸血鬼が住む館の方ですね」

「ちょっと気になったけどまあいいわ……気軽にパッド長とでも呼んでね」

「パッド……長?」


その言葉を聞いて早苗は頭を傾げた、

自らを卑下するような呼び名を求めるなど、普通はありえないのだから。


「(その言葉の真意は……まさか!?)」

「もう気づいたみたいね、そう、私もあなたと同じ力、虚力を持つ者よ」

「し、信じられない、日本……いいえ、アジアですら私しか持ちえない力の筈……!」


幻とまで呼ばれる力の持ち主が、この狭い幻想郷に二人、

しかし幻だからこそ二人もいるのかもしれない、早苗はそうとも感じた。


「まあ、私がこの力に目覚めたのはつい最近のことよ、いわば駆け出しね」

「それでは、あなたも私と同じように胸の分けあたえを?」

「……私がここに来たのは、その事で話がしたかったからなのよ」

「え?」


真剣な眼差しで早苗を見つめる咲夜、その表情に何かを感じ取ったのか、

早苗は場所を応接間に移し、その話を聞くことにした。


「新参者のあなたは知ってるかしら? この幻想郷に住む豊胸四天王のことを」

「豊胸……四天王!?」

「そう、幻想郷には普通の胸すら持つ者は少ない、しかしそれに反比例するかのように

 外の世界にすら存在しえないほどのすばらしき胸を持つ女性達がいるの、

 その頂点に立つ四人が豊胸四天王……その胸はグングニルをも跳ね返すわ!」

「……!」


ちゃぶ台を叩き、熱烈に説明する咲夜、

しかし豊胸四天王よりももっと早苗を引き付ける言葉があった。


「普通の胸すら持つものが少ない、それは本当ですか?」

「え? ……あ、うん、そうだけど」

「具体的には!?」

「えーと、平均サイズがAに近いBね」

「そんなに幻想郷の胸事情は酷いのですか!?」


目を見開き、ちゃぶ台の上に身を乗り出して迫る早苗の迫力に、

さすがの咲夜もたじろいで体を後ろに傾ける。


「酷い、それは何とかしなければ……」

「……しかし胸力を搾り取れるような女性は幻想郷には殆どいない……四天王を除いては」

「つまりあなたが言いたいのは、私に四天王から胸力を搾り取れ、ですね」

「そうよ、残念だけど覚醒が遅れた私にはその力が無いの、だからここに来たってわけ」


互いに顔を見合わせ、真剣な眼差しで見つめ合う。


「すでに情報は集めつくしたわ、私はあなたにそれを提供する」

「そして私はその情報を元に、胸力を搾り取る」

「四天王程の胸力があれば、一度に数百人、いえ、数千人もの人が救えるわ」

「そんなに……! もしかしたら私はその為にここに来たのかもしれませんね」

「案外そうかもしれないわね」


張り詰めた表情から一転、互いの表情が綻ぶ。


「あなたの負担が大きいけど……構わない?」

「任せてください、同じ力を持つ者同士ですから」

「あ、それと成功の暁には私の胸も……ちょっと、ね?」

「ふふ、勿論ですよ」




 第二話 アルティメット・エラスティック



「あれが、四天王の一人……紅美鈴さん」


早苗は茂みの影からそっと紅魔館の門前を覗く、

そこには気持ちよさそうに昼寝をしているチャイナ服の女性が一人。


「凄い……この距離からでも胸力が感じ取れる……」


天に向かってその形を崩すことなく聳え立つダブルメロン、

そこから放たれる威圧感に近い力に、早苗の額から一筋の汗が流れる。


「紅美鈴……またの名をヴィーナス美鈴、その名に違わず見事な胸……」

「それはありがとう」

「っ!?」


背後から聞こえる女性の声、振り向いて確認すると、

そこにはずっと自分の視界に中にいた筈の紅美鈴の姿。


「不思議そうな顔してるわね」

「ど、どうやって?」

「簡単よ、私の気配だけをあそこに置いてきたの、見られた瞬間からね、

 そして私は気配を消す、すると普通の人間ならいつまでもそこにいると誤認するわ」


早苗はもう一度門前へと視線を向ける、ほんの一瞬だけ昼寝をしている

美鈴の姿が見えたと思うと、それはすぐにぼやけて消えた。


「あなたが最近幻想郷に来たって噂の巫女さんね」

「はい、東風谷早苗と申します」

「それで何の用かしら? どうも私に用があるみたいだけど……」


美鈴は完全な警戒態勢に入っている、偽れば即座に見抜かれるだろう、

早苗は一呼吸し息を整えると、意を決して口を開いた。


「紅美鈴さん、あなたの胸力を搾り取りに来ました」

「ふぅん……成る程、あなたは虚力の持ち主ね?」

「はい、話が早くて助かります」

「ならばその挑戦、四天王として受けないわけにはいかないわね」


搾り取りに来た、その一言で早苗の正体を見抜いた美鈴は、

特に警戒することも無く、むしろ自らの胸をどんと張る。


「……防御をしないのですか?」

「ええ、どうぞ」


美鈴の行動に早苗は困惑した、胸力を搾り取られるとなれば、

普通はいろんな防御、抵抗行動を見せるはずである、

その為に東風谷早苗は幼少の頃より相手を制圧するための武術を学び続けてきた、

だが目の前の女性はそれをしない、むしろ搾れと言わんばかりに胸を突き出してくる。


「あなたが博愛に満ち溢れている方なのか、それとも……」

「ふふ、あなたの力で私の胸を搾れるかしら?」

「……やはり」


否、そうではない、美鈴は自らの胸に絶対の自信を持っているのだ、

たとえ東風谷早苗が何者であろうとも、自らの胸が負けるはずは無いと。


「武術であなたを叩き伏せるのは簡単だけど……それだと私のプライドが許さない」

「わかりました……行きます!」

「来なさい!!」


瞬間、早苗の両手が蛇のように美鈴の胸へと襲い掛かる、

蛇が獲物を食らうように開かれた掌が、チャイナ服の上から美鈴の胸を掴む。


「東風谷一族搾――!!」


途端、視界が縦に回る、空、地面、空、地面と目まぐるしく入れ替わり、

何とか体勢を立て直した時、早苗と美鈴の間には十メートル近い距離が出来ていた。


「こ、これは!?」

「ふふふ……どう? 私の胸に弾かれた気分は!」


紅美鈴、彼女がヴィーナスと呼ばれる理由はその胸の美しさにある、

ではその美しさの源は何か? それは黄金比を一切崩すことの無いその形だ、

そして形を維持するために必要な物……それこそが弾力!


「私の胸はその気になればお嬢様のグングニルですら弾くわ、

 普通の人間の握力では、その形を歪める事すら不可能!」

「……凄い、凄いです」


しかしその圧倒的な弾力に、早苗は臆するどころか、むしろ笑顔を浮かべていた、

外の世界ではありえぬその胸、それとめぐり合えたことが嬉しいのだ。


「……行きます!」

「諦めないのね……いい目だわ、さあ来なさい!」


一足飛びに距離を詰める早苗と、

動ずることなく胸を張って待ち構える美鈴、


「(勢いをそのまま私の胸にぶつける気ですか……いや、違う?)」


真っ直ぐに美鈴の胸へと手を当ててくるかと思いきや、

その寸前で立ち止まり、やんわりと手を胸へ添える。


「……アプローチを変える気?」

「いいえ、それでは逃げたことになります、ですから正面から……揉みつくします!」

「っ!?」


瞬間、美鈴の背筋に悪寒が走る、

脳裏に浮かぶは胸を揉みつくされ、敗北し横たわる己の姿、


「(直接手を弾くか!? 否、それは出来ない!)」


自らの胸で受け止める事を選択した彼女にとって、

ここで早苗を叩き伏せるのは実質的な敗北を意味する、

退くことなく、手段を変えることなく向かってきた早苗に対し、

美鈴もこの胸で受け止めることが戦士としての誇りなのだ。


「この胸で……弾くまで!」

「蛇咬っ!!」


――ぐにゃり。


「(……え?)」


だが早苗の手が胸をしっかりと捉えた時、美鈴の顔に驚きの表情が浮かぶ、

変形し、形を歪めた女神の胸、全てを弾くはずの胸が早苗の手の前に屈服したのだ。


「……な、何故? どうして!?」

「お教えしましょう」

「ふぁっ……」


早苗はやわやわと指先を動かし、美鈴の胸を刺激する。


「東風谷家は代々虚力を扱います、故に幼少の頃より胸力を搾り取るために

 厳しい鍛錬を積み続けるのです、特に指先は胸力を搾り取るための要、

 柔らかき胸を巧みに刺激する為の微細な技術、そしてその対極にあるのが握力!」

「握力……ふぁっ……で、でも人間の力ではどれだけ鍛えても……ああんっ」

「私が積み重ねた鍛錬を甘く見ないでください、それは生誕直後から始まり、

 物心が付いた時には硬貨を曲げる程の領域に、十の頃には金剛石をも粉砕し、

 そして幻想郷に到来した今、私の握力はゴリラ四十頭分に匹敵するのです!」

「そ、そんな事が……! はぁぁぁん!」


早苗の手が動けば動くほど、美鈴は空を仰ぎ、嬌声を上げる。


「あなたの胸も素晴らしい物です、私の握力をもってしても半分程しか形を変えられません、

 ですが……半分もあればあなたから搾り取ることは十分に過ぎます!」

「うあっ! こんな……ことがっ……ああっ!」

「これで終わりです、東風谷一族搾乳術が揉の極! 乳獄殺!!」

「ひ……ひゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」


ぴちゅーん


「……はぁ……はぁ……」

「ふぅ、あなたの胸力……分けていただきました」

「はぁ……あ……私、負けたんだ……」


脱力し、その弾みで仰向けに倒れた美鈴、

早苗は美鈴の右手側に回り込むと、そっと手を差し出した。


「立てますか?」

「……うん、大丈夫、よい……しょっと」


美鈴を起き上がらせ、互いに気の抜けた表情で向き合う、

もう敵意の無き今、美鈴の姿を改めて確認した早苗は感嘆の息を漏らした。


「ほぇー……」

「ん? どうしたの?」

「いえ、美鈴さんって、改めて見ると……」

「私?」

「凄い……美人ですよね、背も高いし、スタイルもいいし……」

「…………」

「あ、すみません、いきなり変なこと言って……」

「えいっ!!」

「むぎゅっ!?」


早苗の言葉に何を思ったか、美鈴はいきなり自らの胸に早苗の頭を抱きかかえる。


「ふぁ、ふぁんですふぁ!?」

「ああもう可愛いなこの子ー!」

「ふぁなしふぇくらふぁいー!」

「門番必殺女神の抱擁ー! うりうりうりうり!!」

「ふぉふぁーーー!」


早苗は美鈴のツボをどことなく刺激してしまったようで、

その後胸で散々弄ばされることおよそ十分。


「はー、堪能したー」

「しないでくださいよ……」

「いいじゃない、お返しよ」

「うう……」


肌がてかてかとしている美鈴と、あまり抵抗できなかった自分を悔やむ早苗、

とりあえず仲良くなることには成功したようだ。


「それで、このまま他の四天王も倒しに行くつもり?」

「はい、全ての四天王を打ち倒して幻想郷の女性達を救わなければ」

「(おおげさだなぁ……)」

「後日改めてご挨拶に参ります、それではこの辺で……」

「あ、待った」

「はい?」


次の目的地に向かおうと振り返った早苗を、

美鈴がいきなり真後ろから羽交い絞めにする。


「なな、何でしょう!?」

「次に向かうところは何処?」

「え? 人里が近いのでそこに向かいますけれど……」

「ならこの胸で送ってあげるわ!」

「ええっ!? ちょっと待――」

「必殺! ツインスプリングカタパルトォ!!」

「ひゃーーーーーーー…………」


美鈴の胸にはじき出され、空の彼方へと飛んでいく青き巫女、

それを見えなくなるまで見送ると、美鈴は背伸びを軽く一回。


「私も鍛えなおさないとね……頑張れ、早苗ちゃん」




 第三話 卵だって割れません



人里にはある有名な寺子屋がある、何が有名か、それは講師の胸である、

ワーハクタクである上白沢慧音の胸は人里一と言われており、

今日もその胸を拝まんと少年達は寺子屋に通っている、将来が不安だ。


「芭蕉の句には……」

「ほああああああ!!」

「うおおっ!?」


そして授業の最中に、突如窓から襲来した謎の超高速飛行巫女、

それは建物に一切衝突することなく、慧音の豊満な胸へと突入した。


「大丈夫か?」

「……は、はれ?」


鳴り響かない衝突音、ダメージを覚悟した早苗に浮かぶみょんな表情、

我に戻って見上げれば、やれやれといった表情の慧音さん。


「私の胸があってよかったな、首の骨を折らないですんだ」

「はぁ……ありがとうございます……」


互いに顔を見合わせて一拍。


「突然ですが搾り取ってもよろしいでしょうか」

「まて、生徒達の目がある、私の部屋に行こう……というわけで今日は自習だ」

『ええ~』


成り行きについていけない生徒達から非難の声が上がる、

しかしごく一部の生徒は変形した慧音の胸を見ただけで卒倒していた。


「では行こうか」


早苗をつれて廊下を渡り、自室へと向かう慧音、

その途中で、早苗が疑問を問いかける。


「すんなり応じてくださると言うことは……もしかして私が来ると分かってました?」

「……来るかもしれないとは思っていた」


問いに答えながら自室の戸を開ける慧音、

その部屋は十二畳はあり、その半分を書棚が占めていた。


「美鈴の胸力がここまで伝わってきたのでな、彼女が本気を出すほどの相手だ、

 もし美鈴を打ち破った場合、次に来るのは一番近い私の所だろうと」

「結構距離があったのに分かる物なんですね」

「まあ、胸力を持つ者同士の共鳴といったものかな、しかし美鈴を負かすとは……」


部屋の中央にある机をどかし、ある程度の空間を作る、

多少部屋を見渡して広さを確認すると、早苗の方へ振り返る。


「自己紹介がまだだったな、私は慧音、上白沢慧音だ、通称――」

「アルファゲル慧音……でしたよね?」

「ふむ、知っていたか」

「では私も……守矢の神社の巫女、東風谷早苗です、よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


互いに目をあわせ、穏やかな表情を浮かべながらも

その間には熱烈な胸気が漂う、死合の時はまさにすぐそこに。


「私達の戦いならこれぐらいの広さがあれば十分だ」

「……美鈴さんみたいに弾き飛ばしたりしませんよね?」

「しないさ、私と彼女では胸の質が違う……ただし私も四天王の一人だ、強いぞ」

「望むところです」


早苗は歩を進め、慧音との距離を縮める、

慧音は臆することなく、どうどうと胸を張った、

どうやら彼女も美鈴同様、自らの胸に相当な自信があるようだ。


「様子見はしません! 東風谷一族搾乳術が打の二! 連指激!!」


早苗の両手の指が二十、さらには四十を超える数に見える程の速度で動き、

まるでネイティブフェイスを弾かんとするピアニストのように慧音の胸を弾く。


「……ふ」

「っ!?」


しかし慧音が喘ぐ様子は何処にもない、

それどころか何をしているのかと言わんばかりの笑みで早苗を見下す。


「打の三! ツーバイフォー!!」


早苗は更なる技を繰り出し、女性の敏感なツボを一気に貫く、

人差し指と中指で左右の胸の計四箇所を刺激するその攻撃は、

普通の女性であればまず昇天、最悪でも腰砕けは免れない。


「……効かんな」

「そんな……!」


自らの攻撃がまったく通用しない、それは早苗にとって初めての体験であり、

少なからずともその心にダメージを負わせるのには十分な物であった。


「ふむ……このままでは何かとつまらない、そろそろ種明かしをしようか」


やがて慧音は警戒する早苗をなんら気にすることなく、

自らの胸に手を当ててぐにぐにと形を変える。


「私の胸はな、いかなる衝撃をも吸収する」

「……吸収?」

「そう、吸収だ……物体は全て衝撃によってその存在を明らかにする、

 触れ、当たり、伝わり、それによって初めて感じ取る事が出来るのだ、

 だが私の胸はその衝撃を完全なまでに吸収する、すなわち……」

「感じるどころか……触れた事実さえあなたには届かない、

 私が飛来し、衝突した時も互いにダメージすらなかった……」

「そうだ、どれだけ私の胸を撫で、揉み、弄くろうとも効きはしない、

 限界は無くはないが……私の胸はレミリアのグングニルすら受け止めるぞ!」

「(レミリアさんのグングニルって一種の指標?)」

「そして付いた呼び名がアルファゲルだ……何のことだかさっぱり分からんがな!」

「(あー、卵を割らずに受け止めるアレですね)」


アルファゲルを敷き詰めたマットなら、人間が高度60mから

飛び降りても大丈夫なんでしょうか、凄く気になります。


「さあ、あがいてみせろ! 歴史を変えてやるとな!」

「いいでしょう……東風谷一族搾乳術が打の極! 二重の極み!!」


叫び声を上げ、自らの掌を慧音胸へと叩き込む、

だが慧音の表情は揺るがない、不動のまま不敵に微笑むばかり。


「どうした、その程度か?」

「くっ……」

「ははははは! 無駄だ! 何をされても私は搾り取られることはない!

 最大の弱点である両乳首後ろから同時こねくりでもされない限りはな!!」

「…………」

「…………」


きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅ!


「らめぇぇぇぇぇーーーー!!」


ぴちゅーん




 第四話 太陽系は秒速220kmで旅をしています



「えーと、この辺ですよね……」


迷いの竹林、その傍を早苗は右に左にうろついていた、

何故うろついていたかというと、それはつい十五分前のこと。


「次は永遠亭に行くのか」

「はい、そこで三人目の四天王、永琳さんと戦います」

「ふむ、だがあそこは少々厄介な所にあってな」

「厄介とは?」

「迷いの竹林だ、その名のとおり迷う……だが安心しろ、いい道案内を知っている」

「そうなんですか、それは助かります!」


そして手渡された地図には凄い竹の近くに道案内の人の家があると書かれていた。


「凄い竹……凄い」


その竹は想像以上に凄かった、何しろでかい、

二千年は生きた屋久島の杉よりもでかいと思えるほどでかかったのだ。


「この竹の近くに小屋が……あ、あった」


見渡せば、人が住んでいそうな小屋がぽつんと一つ、

近寄って見渡してみても、何の変哲も無いただの小屋。


「すみませーん、藤原妹紅さんはおられますかー?」

「待っていたわ、さぁ勝負を始めましょう」

「なんか変な人が出てきたー!?」


がらりと戸を開けて出てきたのは赤と青のコントラストが

あまり目によろしくない巨乳の女性。


「へ、変って……八意家の伝統ある衣装なのに……」

「すすすすみませんっ! って……あれ? 藤原さんでは……?」

「違うわ、私は八意永琳、四天王の一人ことフルムーン永琳!」

「な、永遠亭にいるはずのあなたが何故ここに!?」

「美鈴と慧音の胸力を感じ取った時から次は私のところに来ると予測できる

 ならば慧音が道案内として藤原妹紅を紹介することも考えずとも分かること、

 だからこっちから出向いてあげたのよ、その方が楽でしょう?」


腕を組み、胸を強調しながら微笑む永琳、

しかしその視線は早苗から外されることは無い。


「美鈴を搾った時、あなたは四天王と並び立つ存在となった、

 そして慧音を搾った時、あなたは四天王を超える存在となった、

 ならば私があなたを倒す、そして私は豊胸王の座に誰よりも近い存在となる」

「豊胸王……」

「さあ始めましょう、挑戦者は私、迎え撃つのはあなた」

「でも胸を張るのは変わらないんですね」

「仕方ないじゃない、それとも攻められたい?」

「それは遠慮したいですね……では!」


妹紅の小屋の前で向かい合う両者、早苗は呼吸を整え、

視線を永琳の目から胸へと移すと、一気に両手を疾走らせた


「東風谷一族搾乳術が捻の一! 六つ挟――みっ!?」

「あら、どうしたの?」


両手の親指から薬指までを胸に当て、その指と指の間で挟み込んで捻る、

搾乳術の基本中の基本と言える簡単な技であるが、

永琳の胸を捉えた瞬間、その指があらぬ方向へ飛んでいく。


「な……も、もう一度!」

「はいどうぞ、残念でした、またどうぞ」

「なななっ!?」


永琳の胸に当たるや否や、その表面を滑り右へ左へ上へ下へと流れる指先、

その形を歪めるどころか、まともに掴むことさえままならない。


「こ、これは一体!?」

「ふふふふふ……」


一旦距離をとり、早苗はその胸を見つめなおす、

すると永琳の胸に存在する一種の違和感に気づいた。


「(この胸は……何かがおかしい)」

「……気づいたかしら?」

「(大きさ、は違う……偽者でもない……そうだ、形だ!)」


やがて早苗は答えにたどり着く、

それは地球上では存在しえないはずの物。


「まさか……こんな物を拝めるとは思いませんでした」

「やっぱり気づいたみたいね」

「……あなたの胸は完璧な球形……まさしく、フルムーン」


重力が存在するこの星で、重力に引かれないその胸、

永琳は腕組みを解くとその不思議さがよく分かる。


「ふふ、そう……私の胸は完璧な球、何者にも犯されない絶対の領域、

 球は全ての攻撃を受け流す、それが例えレミリアのグングニルであろうとも!」

「(また出たグングニル!)」

「ここまで到達するには苦労したわ……胸の形を最も歪めるのはご存知の通り重力、

 地球の重力、加えて自転速度、公転速度、太陽系の全ての惑星と衛星をも計算し、

 その果てに出来上がったのがこの胸……それはまさしく苦難の連続だったわ」

「胸は全ての重力から解き放たれた時、完全な球形になると言われている……、

 しかし重力に縛られぬと言うことは地球に縛られないと言うこと」

「そう、ある時の失敗では胸だけが空の彼方に飛んでいったこともあったわね」


つまり楽園の素敵な巫女はいつでも宇宙にいけると言うことです。


「そして完成したこの絶対球の前に、通用する攻撃など何一つ無いわ!」

「じゃあ、乳首攻めます」

「……え?」

「乳首を攻めます」

「いやいやちょっと待ちなさい、天才であるこの私が幾百年の月日を投じて作り上げた

 もう一度言うと幾百年の月日を投じて作り上げたこの胸を攻略しようともせずに

 どう考えても球形とまったく関係ない乳首を攻めようとするなんてそんな酷いこ」

「東風谷一族搾乳術が捻の極! ダイヤルイングリットォォォ!!」

「あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


ぴちゅーん




 第五話 爆発してしまえばおっぱいではない



「大きい……」


その女は無造作に寝ていた、

三途の川のほとりで無造作に眠っていた。


「まさか本当にさぼってるなんて……」


咲夜からの情報では、最後の一人は三途の川のほとりでよくサボっているとあった、

行ってみればサボるどころか眠っていたのだからどうしようもない。


「……やっぱり大きい」


巨大すぎる二つの塊が、女が身をよじるたびにうにうにと震える、

何よりも特筆すべきはその極限のバランス、巨大にして豊胸なそれは、

決して限界を超えずに「おっぱい」と呼べる形を保っていた。


「(あくまで豊胸と認められるのはおっぱいのみ、そのレベルを超えてしまえば

 それはおっぱいではなくただの大きな脂肪に過ぎない……それをこうもギリギリまで)」


誰しもどこかで明らかに人体に不釣合いな巨大胸を見たことがあるだろう、

あなたはその胸に凄さは感じても胸としての魅力を感じるだろうか?


「ふぁ~……ん、ようやく来たかい」

「……はい、お待たせしました、小野塚小町こと、ダイナマイト小町さん」

「気軽にこまっちゃんでいいよ……じゃ、やろうか」


寝転がったまま、人差し指でちょいちょいと早苗を誘う小町、

立ち上がって胸を張ることも無く、悠然とした態度で待ち受ける。


「マウントポジションは攻め手が圧倒的に優位ですよ?」

「なら乗ればいいさ、私はのんびりしていたいんでね」

「……わかりました」


誘われるがまま、早苗は小町の下腹部に腰を下ろす、

マウントポジションは相手にまともな抵抗を許さず、

そして自らは一方的に攻撃が可能な絶対優位体勢、

あえて自分からその体勢に持ち込む小町の自信に早苗は何を思うのか。


「(罠……? しかし……)」


マウントポジションのまま思考を働かせるが、答えは出ない、

胸の向こうではこちらを見るどころか、視線を中空に上げ欠伸する小町。


「(まずは様子見……)」

「お、ようやくかい?」


まずはそっと自らの掌を小町の胸に添える、

数秒待って反応が無いことを確かめると、早苗はかるく指を折り曲げた。


「(よし……行ける!)」


手ごたえを確認すると、一息吸い込み、一気にその手を胸へと埋めこむ、

東風谷一族搾乳術は相手の胸の半分以上を握りこむことで、

数種ある技の系統の中でも最も威力のある揉の技が使えるからだ。


「……かかったね」

「えっ!?」


しかし小町の笑みが早苗に警笛を鳴らした、

技に取り掛かった手の動きを止め、胸から引き抜こうとする。


「うっ……くぅ! こ、これは……!」

「ふふ、抜けないだろう?」


だが手は胸に埋もれたまま出てこない、

それどころか少しずつ胸に引きずり込まれていく。


「私の胸の吸引力はどうだい?」

「そんな……衣服の上から手を当てているのに……」

「関係ないさ、私の胸は手だろうと、衣服だろうと全てを飲み込む、

 たとえレミリアのグングニルであろうともね」


胸は大きければ大きい程その収容力を増す、特に有名なのが谷間収納だ、

しかし世の中には、胸そのものに物をしまいこめる者達も少数だが存在する、

小町のように限界ともいえる大きさであれば、その収納力はまさに無限。


「小銭をしまうぐらいしか用途の無い胸だと思ってたんだけどね、

 ほら、もうあんたは両手を使えない、私は使える、どういうことかわかるね?」

「うぐ……」


わきわきと小町の両手が早苗の胸へと迫る。


「すでにC……いや、Dといった所かな、さすがに四天王を三人も搾ったことはある」

「うう……!」

「普通の人間なら三千人分の胸力と言ったところかい……だけどもうお仕舞いだ」


早苗は腕を引き、体を振り回してでも手を抜こうとするが、

小町の胸は離すどころか、さらに手首までをも引きずり込む、

どうあがいても抜けることは無いと理解した早苗は、突然その動きを止めた。


「お、覚悟を決めたか……じゃ、終わらせるよ」

「いいえ、そうはいきません」

「んん?」

「私をここまで追い込んだのはこまっちゃんが初めてですよ、

 諏訪子様、あなたから受け継いだ秘技……今こそ使う時!」

「(私の胸に包まれて掌どころか指一本動かせない状態のはず、

 まだ、まだ何かあるとでもいうのかい?)」


途端、小町の胸の中で早苗の手が蠢き始める、

やがてその動きは段々と激しくなり、小町の胸すら揺らし始めた。


「な、何が……まさか、手が振動しているのかい!?」

「洩矢流搾乳術が振の極! 振動搾乳マニピュレーター!!」

「ああ……胸が……分解されていくような……ふぁ、あっ……きゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」


ぴちゅーん


「はぁ……はぁ……この技は……人間が使うものじゃ……ないですね……はぁ……」


想像以上の威力の攻撃によって気を失った小町の隣へと、

息も絶え絶えに仰向けに倒れこむ早苗。


「(筋肉の限界を超える高速振動……)」


幼い頃、諏訪子に叩き込まれたその技、

尋常ではない鍛錬の果てに習得しても、今日まで使うことの無かった技。


「(いつか使う日が来るとは言ってましたが、こういうことですか)」


東風谷流だけではどうにも出来ない相手がいることを、

経験から諏訪子は知っていたのだろう。


「(感謝します、諏訪子様……)」




 第六話 実は音声



「確かこの辺に……」


四天王を倒し、その豊胸力を手に入れた早苗、

しかし咲夜からの情報にはその四天王とは関係ない、五人目の情報があった、

四天王に匹敵するといわれるその女性のもとへ向かう最中、

早苗は自らに挑戦的にぶつけられる胸力に気づく。


「……あなたは?」

「私は魅魔、この時を待ちかねたよ、東風谷早苗」


木々の合間から、こちらを見上げて不敵に微笑んでいた緑髪の女性、

近くに降り立ち、相対して気づくその姿の異様さ、青尽くめの衣装に一本だけの足。


「幽霊ですか?」

「悪霊だよ、祟り神でもあるけどね……」

「それで、何の御用です?」

「言わずとも分かっているだろう? あんたに勝負を挑みたいのさ」


ふっ、と場の空気が変わる、断っても目の前の女性は逃がしてくれないだろう、

そう理解した早苗は静かにその両手に力を込め始める。


「豊胸四天王を全て搾ったあんたに勝てば、私の名は幻想郷に鳴り響く!」

「……私も狙われる立場になったということですか」

「ま、そうさね」


四天王とは違った雰囲気を纏う魅魔、

そして早苗は自らが追われる者になった事を自覚する。


「……いいでしょう、その勝負、受けます」

「良い目だよ、しかしあんたに私の胸を攻略できるかねぇ」

「いいえ、攻略も何もありません」

「ん?」

「ただひたすらに搾るのみです!」


先手必勝、その言葉どおりに魅魔の胸へと早苗は手を伸ばす、

四天王の胸を攻略した今、彼女が恐れる胸はもう何も無い。


「あぁ……ああんっ、はぁ……」

「あれ?」


しかし実際に魅魔の胸を揉んだ時、彼女はその反応に拍子抜けした、

四天王のように何かがあるわけでもなく、ただ喘ぐだけ。


「あっ……はぁ……あああっ!」

「(もしかして……弱い?)」


早苗は特に技を使っているわけではない、ただ揉んでいるだけである、

なのに魅魔は顔を赤らめ、体をくねらせて嬌声を上げ続ける。


「……東風谷一族搾乳術が揉の一、団子回し!」

「ふぁあんっ! ああっ……はぁんっ」


このままの勢いで終わらせようと、早苗はついに技を使う、

しかし魅魔は搾られる事無く、喘ぎ続けたまま数分が立った。


「はぁ……いい、いいよ……凡百の男共よりはるかに上手だねぇ……ああっ」

「(これは一体……!?)」

「んん……あ……もう、終わりかい?」


早苗は一度手を離して魅魔の表情を再確認する、

だがその表情は演技ではなく、確実に早苗の攻撃は効いていた。


「(おかしい、普通ならもう十回は搾り取れているはず……)」

「不思議そうな顔をしてるねぇ……だが残念、私は搾り取られていることに慣れているのさ」

「なっ、慣れっ!?」

「そうさね、あれは二年と少しぐらい前から始まったか……」


その日、魅魔はいつものように博麗神社の周りで静かに暮らしていた、

毎日続く平和な日々、弟子の魔理沙の成長を物陰からこっそりと見守りながら

のんびりとした幻想郷ライフを送っていた、だが悲劇は突然訪れる、

謎の男達が彼女の元に訪れ、急に搾乳を始めたのだ、突然の出来事に

わけが分からずに搾り取られていくその胸、どれだけ抵抗しても、

時には覇王翔吼拳を放っても男達は魅魔の胸を搾ることをやめることはなかった、

その悲劇はほぼ毎日続き、多い時には一日に数十人に搾られたこともあった。


「搾られ続けるうちに私は悟ったのさ、抵抗しても無駄なら……受け入れてしまえばいいと」

「受け入れた?」

「そう、私は搾乳を受け入れた、抵抗しようとするから搾り取られる、

 ならば受け入れてしまえばいい……そして受け入れた果てに私は会得した、

 搾乳を操る術を、絶対に負けることの無い胸を!」

「絶対に負けない……」

「そうさ、刺激に屈さねば、胸力を搾り取られることは無い……、

 だが私は屈しない、それを受け入れ、操っても操られることは無いのさ!」


幾千もの搾乳の果てに辿りついた無敵の盾、

敗北し続け、果てに辿りついた境地。


「(まさしく、最強の敗北者……!)」

「さあ、どうやってこの胸を攻略するんだい?」

「攻略ですか……それはありません」

「……何だって?」

「最初に言ったはずですよ、ただひたすらに搾るのみと……そう、全身――全霊にて!!」


早苗の腕が円を描く、やがてその円は個々に形を成して腕となる、

早苗の周りに浮かび上がる数十もの腕が、容赦なく魅魔へと襲い掛かった。


「東風谷一族搾乳術が総の奥義……千手観音!」

「ふぁっ?! あああっあっ……ひぁっ!」


幾十もの手、幾百もの指が魅魔の胸を揉み、捻り、叩く、

魅魔に出来ることはただ一つ、耐えることだけだった。


「(あざやかに耐えてみせる、余裕綽々で抱き屠る、

 そんなふうにやれるものなら私だってそうしたかったさ……やれるものならね)」


魅魔の脳裏に浮かぶ四天王達の姿、

弾き、吸収し、滑らし、収納し、各々が勝利を重ねていくその姿。


「(相手は四天王すら葬り去った達人、東風谷早苗、

 いわゆる牧場四千年、搾乳の集大成! かなわぬ……かなわぬなら!)」


美鈴が、慧音が、永琳が、小町が敗れていく様を魅魔はずっと見ていた、

自分の実力では勝てないことも、最初から理解していた。


「(護る! 胸を護りきる! 護胸とは……搾られぬこと!)」


無様だろうと何だろうと、ひたすらに魅魔は耐え続けた

やがて早苗の手がぴたりと止まる。


「はぁはぁ……おや、攻撃がこないねぇ……もう終わりかい?」

「……許してください」

「っ!?」


途端、魅魔の全身に電撃が走った、今まで受け続けた刺激とは別種の刺激、

魅魔の肩、腋、腰へと当てられた早苗の手が巧みに刺激したのだ。


「やばっ……ああああぁぁぁーーー!!」


そして決着は付いた、新たな刺激によって反応を狂わされた魅魔に

早苗の攻撃を耐えるだけの余地など、何処にも存在しえないのだから。


「(全力で揉み、全力で捻った……奥義を使い、あまつさえ格下に使用すべきではない

 周囲の刺激までも……魅魔さん、あなたは間違いなく強かった)」


幸せそうな顔で横たわる魅魔を背に、早苗は五人目の元へと向かう。


「あっ、言い忘れてましたね……ぴちゅーん」




 第七話 チラリズム



「ちょっと待っててくれ、すぐに掃除と洗濯と料理と家の補修と結界の修復と

 橙の着替えの準備と紫様の起床を手伝うのとお風呂の準備を済ませるから」

「あー……何か手伝いましょうか?」

「それは助かる、そこの洗濯物を取り込んでくれてもらえるとありがたい」


咲夜からの情報を頼りに最後の目的地、マヨヒガを探すことおよそ一時間、

苦労してようやく辿り付いたかと思えば、そこにはもっと苦労してる方が一人。


「これで最後……と」


法衣やらドレスやらを取り込んで、待つこと三十分、

彼女が住んでいるらしき家の中からはまだ作業音が聞こえる。


「(これはあと何時間かかるんだろう……)」

「お待たせ~」

「わっ!?」


縁側に腰をかけていると、突如目の前に現れる亀裂、

その亀裂を二つの手が押し開き、現れるは美麗な女性。


「はじめまして、私が八雲紫です」

「あ、はじめまして、東風谷早苗と申します」

「夢の中からずっと見てましたわ、あなたが四天王を屠る姿を……くすくす」

「(これは……四天王に匹敵する程の胸力……強い!)」


紫は隙間から上半身だけを出して、扇子の影から早苗を見つめる、

対する早苗は身を乗り出すと、その両手を紫の肩にかけた。


「あら? もう始めるの?」

「いえ違うんです、その、言いづらいんですけど……」


そしてぐぐぐっと紫を隙間に押し込んでいく。


「すみません! 私が戦いに来たのは八雲藍さんのほうでして!」

「ええっ!? ちょっと待ってよ、折角張り切って出てきたのにぃ!」

「す・み・ま・せ・んんんん~!!」

「や・め・てぇぇぇ~!」


必死に隙間にしがみつく紫をこれまた必死の形相で押し返す、

数分の攻防の後、ようやく早苗は隙間の奥に封じ込むことに成功した。


「後で戦いたいって言っても戦ってあげないんだから~……!」

「ごめんなさいごめんなさい」


消え行く隙間を謝りながら見届けて、さらに待つこと数十分、

背後の障子が開き、ようやく彼女の待ち望む時が訪れる。


「待たせたね」

「随分と早いですね、もっとかかると思ってたんですが」

「……慣れているから」

「苦労してるんですね……」

「さあ、庭に出ようか」


藍に導かれ、マヨヒガの広い外庭へと場所を移す、

互いに距離をとって向き合うと、藍が疑問をこぼした。


「しかし、君が私と戦う理由が見当たらないな、私の力は裸力……胸力とは異種だよ?」

「私もそう思ってたのですが、今ここで対峙するとよく分かります、

 あなたの胸力は素晴らしい……裸力を支える為に存在するその力は、

 異質なれども、いえ、異質だからこそ強い……四天王に匹敵するほどに」

「ほう」

「ただ、それは胸としての強さではなく、あくまでも力の量として」

「量か……まあ、私は胸で戦うつもりはない、それは分かっているんだろう?」


藍が自身の衣服に手をかける、

それを見て早苗は自らに気合を入れた。


「吹き飛ばされぬように防御体勢を取りなさい」

「……はい」

「ではいくよ……全裸――天狐ォォォォォ!!」


そしてその衣服が空を舞った瞬間、

とてつもない規模の裸力が地響きを立てながらマヨヒガを蹂躙する。


「くぅぅ!!」


対し、早苗は美鈴の弾力と慧音の吸収力をもってその力から我が身を護る、

やがて地響きが収まると、全てが吹き飛ばされた平地の中心に天狐が立っていた。


「これが私の100%中の100%だ!」

「(――美しい!)」


それを初めて見た時、早苗の心に浮かんだのはその一言だけだった、

九本の尾でその身を覆いながらも、その合間から見える素肌が脳髄を刺激する。


「ふふ、どうかな……我が裸体は」

「くうっ!」

「……ああ、まだ戦いも始まっていないというのに」


早苗は屈みこみ、その鼻の奥から血管を突き破って溢れんとする赤い血流を

屈強な意志で押しとどめる、胸力とは違い裸力は相手の鼻腔を突き破れば勝利なのだから。


「(凄い、凄すぎる……これが幻想郷初期から頂点に立ち続ける裸の女王……)」

「ふふ、そんな目をそらさなくても……ほら、じっくりと……見て……」

「うう……ふぐっ!!」


腰を捻り、体勢を変え、両腕を頭の後ろに回し、藍は尾の隙間から存分に見せ付ける、

身体四大裸点であるうなじ、ふともも、わき、そしてくびれを。


「(この距離でもこの威力……こうなれば!)」

「おや……? それは愚策だと思うけど」


互いの距離は十数mはある、それでもなお藍の裸力は弱まることを知らない、

やがて早苗は一つの対抗策にたどり着く、それは見ないこと、つまりは目を瞑る事だった。


「あなたのチラリズムに対抗するには、これしかありませんからね」

「チラリズム……成る程ね、裸力のことは調査済みか」

「ええ、裸の者の強弱を分けるものは一つ……チラリズム」


かつて、広大なアジアの東にある種族が住んでいた、

妖狐、狐が力を得て、人の姿を真似るようになった者達の事である、

妖狐達はその美貌を元に人間の男達に取り入り、日々を暮らしていた、

やがて自分達の美貌に自信を持った妖狐達はより贅沢な生活を求め始める。


だが、そこに落とし穴があった。


裕福な人間達になれば成る程、彼等は妖狐達よりも美しい女を側に置いていたのだ、

男達に選ばれなかった妖狐達は悩んだ、なぜ我々の美貌が人間に劣るのかと、

そして苦悩の中、人間達を観察し続けた果てに彼等は女達のある力に気づく、

それが裸力、人間の本来の姿を数倍にも美しくする美の力だった。


妖狐達はその力を知るや否や、まるで競争のように取り入れ始めた、

だが妖狐達の夢は叶わない、文明発祥時から裸力を磨くための研鑽を欠かさなかった

人間達の前には、どれだけ苦労と努力を積み重ねても届かなかったのだ。


しかし、人間達が予想だにしなかった手法でその壁を打ち破った妖狐が現れる。


その妖狐がとった手法は一つ、全てを見せぬことであった、

本来の姿をより美しく見せる為の裸力にとって、それは想定外の物、

しかしその妖狐は成し遂げた、真に肝心な部分は一切見せず、

代わりに身体四大裸点を絶妙なタイミングで衣服の隙間から見せつける、

男達は見えそうで見えない衣服の影の部分に想像力を働かせ、

その意識によって妖狐の裸力を数倍に増幅させる事となる。


自らの裸力を増幅させるのではなく、相手に裸力を増幅させる、

その手法はやがて「散裸理」と呼ばれるようになった、

この言葉が後にチラリズムの語源となったのは言うまでもない。


「その妖狐は後に中国、インド、日本と渡り歩き、その美貌で国を狂わせた」

「三国で裸の頂点に立った妖狐……白面金毛九尾の狐ですか」

「その通り……ならばあえて言おう! この私がチラリズムの原点であると!!」

「なっ!?」


そう、早苗の前に立っているのは幻想郷の裸の女王ではない、

数千年もの昔より世界で裸の頂点に立ち続けた者なのだ。


「まさか、あなたが……」

「無駄なお喋りはもうお仕舞い」

「……!」


言い終えると共に、藍の尻尾が浮き上がり、長さを増していく、

目を瞑っている早苗でもその妖力によって状況が理解できた。


「この尾で捕らえてその目を見開かせれば、勝負は決する」


そして一つの尾が早苗へと飛び掛る、

しかし早苗は、矢のような速さで襲い来るそれを紙一重で避けた。


「(避けられた!?)」

「一つ!!」


避けたと同時に藍に向かって一気に距離を詰め始める、

対する藍も、咄嗟に残りの尾を早苗へと向かわせた。


「二つ! 三つ!」

「くっ……!」

「四つ! 五つ!」


しかし尾は当たらない、左右から、そして正面から向かってきた尾を

まるでその目で見ているかのように避け、距離を詰めてくる。


「ならばっ!」


直後、早苗の目の前の地面が隆起し、その下から二本の尾が襲い掛かる。


「六つ! 七ッ!」


だが早苗は中空に身を浮かせ、体を横に傾けて二本の尾の間を抜ける、

軽やかに着地した時、すでに藍との距離は無いも同然。


「馬鹿な、どうやって私の尾を……!」

「……勘です!!」

「れ、霊夢じゃあるまいし」


東風谷早苗、奇跡を起こす程度の能力。


「どうしました? まだ二本ほど尻尾が残っていると思いますが」

「うっ……」


九本の内七本は回避され、早苗の後方へと伸ばしたまま、

されど残りの二本はどこか、解はその上半身と下半身に。


「その残った尾で私を捕まえられるかもしれませんよ、チラリズムは消えますけど!」

「お、おのれぇ……その他もろもろな理由で出来ないことを知ってて言うか!」


チラリズムの弱点、それは見せてしまうこと、

相手の想像力によって裸力を増すそれは、逆に想像力を働かせない状況に陥った時

本来の裸力以上の力を発揮することは出来なくなる、

その為に尾が一本しかない妖狐は衣服を脱ぎ捨てることを許されない。


「あなたの胸の位置は目を瞑っていても手に取るように分かります」

「うう……!」

「決着をつけましょう、東風谷一族搾乳術が総の極! 九手乳閃!!」

「コ、コ、コォォォォォォォォーーーン……!」


ぴちゅーん


「……勝った! 挑戦編、完!」


早苗は力なく倒れこむ藍の姿を見とどけ、右手でガッツポーズを作る。


「これでようやく戻れます……って、あれ?」


しかしほっとしたのも束の間、

自分の周りを幾数本もの尻尾が取り囲んでいることに気づく。


「藍さん、これは一体……うひゃあ!」


やがて尻尾はぎゅるぎゅると早苗を包み込み、藍の元へと引き寄せた。


「ふふふ……私に勝った以上、ただで返すわけにはいかない……」

「わ、私をどうする気ですか!?」

「どうもしないさ、とことんもふもふを味わってもらうだけだ!」

「なっ!?」

「そーれもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ」

「……凄い……もふもふです……」


藍のもふもふ尻尾を触ることの出来る者は四人、

主である紫、式である橙、藍に勝利した早苗、そして――。


「どうだ、気持ちいいだろう?」

「ああ……最高です……」

「勝者への祝福だ、好きなだけ堪能するといい」

「はい~」

「……藍?」

「ん?」


現在熱愛真っ最中のレミリア・スカーレットである。


「レレレレレミリアッ!?」

「藍、どういうこと……? この私というものがありながら……」

「ま、待て! 違うんだ! これは私に勝利したご褒美みたいなもので!」

「私の事は遊びだったのね!? そんな……そんな女が本命だなんて!」

「違うんだぁーーー!!」


絶叫、マヨヒガに木霊す。




 最終話 「最胸」



幻想郷の女性達を救うため、東風谷早苗は幻想郷中の胸を搾ってきた、

究極の弾力を持つヴィーナス美鈴、全てを吸収するアルファゲル慧音、

あらゆる攻撃を受け流すフルムーン永琳、幻想郷一の収納胸ダイナマイト小町、

最強の敗北者魅魔、スッパテンコー八雲藍、そして今、彼女の前に一人の女が立っていた。


「手ぬるいわね、東風谷早苗」

「咲夜さん? 何が手ぬるい……と?」


守矢の神社に戻り、咲夜と共に喜びを分かち合う、その予定だった、

しかし咲夜は早苗に対し、敵意を向けながら立ちはだかる。


「あの程度の雑魚に勝ち、その胸力を得たつもりだろうけど……それはあなただけではない」

「私だけでは……まさか!?」

「私は奴等にきっちりとさしてやったわ……とどめをね!!」


その言葉に早苗の顔が青ざめる、とどめをさす、それは胸力を全て搾り取るということ、

搾り取られたものは貧乳となり、力を取り返さぬ限り永遠に胸が元に戻ることは無い。


「あたまでっかちの慧音……でかいだけの死神、脱ぐだけの藍、

 しょせんはウドの大木の美鈴に、道化にすぎない魅魔……そして永琳とかいう

 ババア……どいつも自らの弱さゆえ搾られていった、あなたの名前を残してね」

「何てことを……!」

「倒した者の胸を搾りつくさずして……真の勝利はない!」

「あなたは……あなたは本当にあの咲夜さんなんですか!?」

「咲夜? 違うわ……もう私は以前までの咲夜じゃない、

 豊胸を手に入れた今の私こそ、満月たるお嬢様と並ぶに相応しき存在、

 夜空を漆黒に染める新月! そう、私こそが最胸……十六夜朔夜よ!!」


早苗は歯を噛み締める、心の奥底からふつふつと沸いてくる熱い感情、

死力をかけて戦ってきた強敵を踏みにじられた怒りがその身に滾る。


「朔夜さん……あなたのやってる事は搾乳じゃない、ただの殺乳ですっ!!」


脳裏によみがえる強敵達との戦い、

そして受け継いだその力が早苗を後押しする。


「慧音さんの包容……小町さんの収納……藍さんのチラリズム……、

 美鈴さんの美しさ……魅魔さんの護力……永琳のばーさんの知識が!

 そして……この私の怒りがっ! あなたを倒す!!」


互いに眼光鋭く、その胸力は膨大なり、

数瞬の静寂の後、堰を切るように走り出す両者。


「打の奥義! 三重の極み!!」

「遅い!」

「消えたっ!?」


早苗の繰り出した右手は朔夜を捕らえること無く虚空を貫く、

と同時に、自らの胸に走る電撃。


「ふぅん、中々のサイズじゃない」

「なっ!? いつの間に!?」


早苗の後方から腋下に腕を通して存分にその胸を揉む朔夜、

眼前にいたはずなのに、残像一つ見れずに後方に回られたことに早苗は驚きを隠せない。


「くぅっ!」

「あら、乱暴ね……」

「(私の目でも追えないぐらいの高速移動!?)」


種を明かさんと、早苗は何度も朔夜の胸に対して攻撃を仕掛ける、

そのいずれも届く寸前で朔夜の姿は消え、ある時は後方、ある時は左右、

そして今はあざ笑うかのように早苗の両腕の間に潜り込み、その体を密着させていた。


「あなたにもはや勝ち目は無いわ……諦めなさいな」

「(高速移動じゃない、かといって美鈴さんみたいに気配を操ってるわけでもない……っ!)」


ここで早苗の中に妙案が浮かぶ。


「まだまだっ!」

「無駄な足掻きね……そろそろ本気で搾るわよ?」


なおも技を繰り出す早苗の攻撃を避け、朔夜はその背後へと回り込む、

今度は食らい付いたら二度と離さぬよう、掌を鷲の爪のように大きく開かせて。


「これで終わり――っ!?」


しかしその手を食い込ませる寸前に早苗の姿が消える。


「(これは私と同じ……いや、違う)」


朔夜はズレが生じた思考を一瞬で落ち着かせ、すぐに周囲の確認をすると、

自らの前方5mほどの場所にこちらを向いている早苗の姿を見つける。


「今のは美鈴の得意技だったかしら?」

「ええ、気配だけを残し、相手に敵を誤認させる技……見様見真似で何とかなるものですね」

「(普通はならないと思うけど……)


東風谷早苗は幼少の頃から胸を搾り取るためにあらゆる武術の鍛錬も積んでいた、

そんな彼女であるからこそ出来る芸当である。


「でもその技は気配を無視し、気配の無い相手を追えばいいだけのこと、もう通じないわ」

「もう使う気はありませんよ、あなたの奇術の種ももう見抜けましたし」

「あら、そう簡単に気づけるとは思えないけど?」

「あなたの能力は漫画で読んだことがあるっ!!」

「何ですって?」


早苗は朔夜にびしっと人差し指を突きつける、

その発言に、朔夜は眉を歪ませた。


「あなたの能力は……」

「早苗、あなたは時を止める程度の能力、と言う」

「時を止める程度の能力……はっ!」


場を奇妙な効果音が支配し、早苗の頬を汗がつたう。


「まあ、見抜いたことは褒めてあげるわ」

「(まさか幻想郷にもジョジョラーがいるなんて……)」

「でも見抜いたところで、あなたに成す術は何も無い」

「う……」

「では存分に見せてさしあげるわ、ザ・ワールドはまさに世界を支配する力だと!」


時を止める、ただそれだけの事がただの人間である早苗には大きな壁となる、

特に互いの胸を絞り合う虚力を持つ者同士の戦いでは、そのハンデはあまりにも大きい。


「(どうすれば……あの能力を潜り抜けて搾り取れるのか……)」


――あら、搾り取る必要なんて無いじゃない


「(え?)」


脳裏に突然響いてきた優しい声、声のした方を見れば、

そっと早苗の左腕に自らの左腕を添える紅髪の女性。


「(め、美鈴さん?)」


――お前は私達との戦いでずっと見てきたはずだぞ


「(慧音さん!)」


早苗の右手を、そっと慧音が持ち上げる、

それは彼女の胸に宿った力が見せる、一つの幻。


――胸力は攻めるにあらず、全て受け止めるが為にあり、これは基本よ?


「(永琳さんも……)」


――私達の胸で受け止めてやりゃいいのさ、きっと勝てる


「(小町さんまで……皆……)」


四人の幻が早苗をやさしく包み、光となって消えていく、

早苗は皆との戦いを思い出す、美鈴も、慧音も、永琳も、小町も、

誰もがその胸で早苗を受け止めた、受け止める事こそが胸の真意なのだから。


「あら、観念したみたいね」


両手を左右にそっと開いた早苗を見て、朔夜は無造作に距離を詰める、

確かにその姿を見れば、もはや勝負を捨てたようにしか見えない。


「じゃあ遠慮なく……その全てをいただくわ」


しかしそれは虚力同士の戦いの場合のみの話、

早苗は胸力で戦おうとしてることに気付くも時既に遅く、

朔夜の両の掌は早苗の胸へと当てられていた。


「っ! しまった! これはっ!!」


朔夜の脳内に警鐘が鳴らされ、すぐにその両手を離さんと体に力を込める、

しかし体が動かない、一歩下がると言う命令すら受け入れない。


「な、何故っ!?」


――お前の体はこの胸に魅せられた、近寄ることは出来ても離れることは出来ないさ


「八雲藍……!」


早苗の背後に浮かぶ藍の姿を朔夜は見る、

彼女は優しく微笑み、その九の尾で二人を包みこむ。


「なら先に搾りつくすだけよっ!」

「ん……ああっ!」


朔夜は力を振り絞り、早苗の胸を一気に揉みしだく、

防御を捨てた必死の攻撃に早苗の頬が紅潮し、体が揺らぐ。


「(う……このままでは……)」

「ほらほらほら! 早く搾り取られなさい!」

「ううっ!」


――刺激に抵抗するんじゃないよ、受け入れてコントロールするんだ


「(魅魔さん――!)」


魅魔は耳元でそっと呟いて消えた、早苗はその一言で、

刺激に負けない強固な意思を取り戻す術を手に入れる。


「な、何故!? どうして搾り取れないのよ!?」

「朔夜さん……もう、終わりにしましょう」

「私が! この私が負けるはずが無いっ!」


早苗は両の手を上げ、右手を朔夜の後頭部に、左手を朔夜の腰へと添える。


「あ……い、嫌っ! やめて……!」

「この胸で朔夜さん、あなたを……救います」


両の腕で優しく朔夜の頭を抱き寄せて、その胸で包み込む、

それは幾種もの豊胸の力を得、その力を理解した東風谷早苗だけが到達した幻の胸。



 その名は、幻想胸――。











「んー、大分朝も早くなってきましたね」


東風谷早苗の朝は早い、神社の巫女としての一日の最初の仕事は、

夜明け前に神社の境内の掃除を終わらせることから始まる。


「手伝いはいる?」

「わっ!? ……咲夜さん、いきなり出てこないでくださいよ」

「分かったわ、次からは呼び鈴を鳴らせばいいのね?」

「ゆっくり出てきてくれるだけでいいんですよー」


早苗の胸に包まれたとき、幻想郷の胸を滅ぼそうとした朔夜は消えた、

代わりに、母の胸に甘える子のように、幸せそうな顔を浮かべる咲夜がいた、

その日以来、咲夜は早苗に会うために毎日のように神社を訪れている。


「胸力、全部返しちゃったのね」

「はい、時間はかかりますけど、神奈子様の力で地道に救うことに決めました」

「もうあれは味わえないのね……勿体無い」

「(あの時の咲夜さん、可愛かったなぁ……)」


早苗は咲夜から取り返した胸力を、まずは必要な分だけ返したのだが、

その数日後には全て返すことにしたそうだ、理由は不明である。


「でも大きいと日常生活が不便で不便で……」

「え? 何か言った?」

「あ、いえ、何も……」

「そうそう、幽霊楽団のライブチケット手に入れたんだけど、今度一緒に行かない?」

「あの幽霊楽団ですか!? 一度聞きに行きたいと思ってたんですよ!」

「……聞き方は当然?」

「ジョジョ立ちで!」


同じ力を持ち、同じ趣味を持つ者同士、当然のように惹かれあい、

今では立派な友となった、ただし咲夜の早苗を見る目は何か怪しい。


「そろそろお嬢様が起きちゃうから、また後で来るわね」

「そうですか、それではおいしいお菓子を用意して待ってますね」

「それと……気をつけて」

「はい?」

「あなたの事はもう幻想郷中に知れ渡ったわ、これからは次から次へと挑戦者が現れる、

 最胸のためには自分の命すらいとわないような奴らがね……」


ほんの少しだけ二人は見つめあい、やがて咲夜の姿が消える。


「(最胸か……あ、夜明けだ)」


日の出を見つめると、自らの両の手を太陽の方向へと突き出し、

円を描くように回す、時に激しく、時には緩やかに……、

やがて、何者かの足音が段々と近づいてくることに気付く。


「東風谷早苗さんだね……?」


何者かの声と共に背後から伝わる大きな胸力、自らへと向けられる闘気、

早苗は先ほどの咲夜の言葉を思い返し、心に噛み締めると、その両の手を降ろす。


「君を倒せばこの僕が最胸だ!!」


そして朝日を背に、彼女はゆっくりと振り返る――。

なんか最近おっぱいブームらしいのでおっぱい書きました

一応、藍様を除いてみな着衣です、念の為に記しておきます、

しかし今作品集読んでないのでネタが被ってないか心配だ……。







本当にごめんなさい。
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.2360簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
こーりんばかやろー!

2.100名前が無い程度の能力削除
あまりに凄まじいおっぱいに途中まで現代編だと気付かなかったよ!

まさかおっぱいでアレをやるとは思わなかった。悔しいっ、けど面白いっ。
4.80名前が無い程度の能力削除
ちょっと待て香霖何するつもりだ、この野郎
5.90脇役削除
おっぱいもすばらしいが…現代編ww

結局は永琳の奥義だけで咲夜さんも倒せるんですよねww

でも、早苗さんの知力は25じゃないよ?
8.80名前が無い程度の能力削除
え、エロカッコイイってこういうことか!
10.70名前が無い程度の能力削除
OKわかった



この幻想郷は手遅れだ
12.90名前が無い程度の能力削除
おkおk。

これはあの胸会議で選ばれた四天王達+αの戦いですね。

しかし、最後の現代編は自重しろwwwwwwwwwww



さて、次は貧乳四天王の戦いが待ってるな。
13.100名前が無い程度の能力削除
藍×レミを、藍×レミを今一度!!

それにしてもお嬢様は何故ネタにされると生き生きしてるように見えるんでしょうか。ふしぎふしぎ、すっごくふしぎー。

15.無評価名前が無い程度の能力削除
何を書けばいいか分からないが、とにかくおっぱいということだけは伝わった。おっぱいおっぱい、おっぱい最高!
16.100名前が無い程度の能力削除
返せ、元ネタで感動した俺を返せ!!!

元ネタ見るたびに、このSS思い出して吹いちゃうじゃないかー!!!
18.100名前が無い程度の能力削除
永琳ばーさんww

泣くぞw
20.90名前が無い程度の能力削除
おっぱいを堪能していたらいつの間にかライブアライブの世界に紛れ込んでいた

これがカオスというものか・・・!
21.100名前が無い程度の能力削除
ごちそうさまでした!w
24.100名前が無い程度の能力削除
なんという香霖オチww



あとさり気なく魅魔様が寂海王な件について。
25.100名前が無い程度の能力削除
えーりんの扱いひどいwwww

こういういい意味でのバカ話は大好きだ。

いいぞもっとやれ!!!



個人的には200点あげたいくらいなんだけどねwww
28.100名前が無い程度の能力削除
まさかのLALwwww全く気づかなかったwwww

話も最高におもしろかったですw
30.80名前が無い程度の能力削除
何回この言葉を浴びせなきゃならんのか……。

この馬鹿(おっぱい)野郎www最高だ!
31.80名前が無い程度の能力削除
藍×レミリアとは新天地w

ああ、知力25……これがゆとり教育の弊害か…
32.90名前が無い程度の能力削除
永琳のばーさんひでぇと思ったけど、

森部のじーさんのセリフの所かw

LALネタ来るとは思わなかったw



>洩屋流

ここは洩矢流かな。
33.70削除
おっぱいを題材にするなんて正気ですか?
34.100名前が無い程度の能力削除
OK、『そこまでよ』とか言いたいことはあるがキミにはこの点数がふさわしい。

                   _ _     .'  , .. ∧_∧

          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ '     (    )

         , -'' ̄    __――=', ・,‘ r⌒>  _/ /

        /   -―  ̄ ̄   ̄"'" .   ’ | y'⌒  ⌒i

       /   ノ                 |  /  ノ |

      /  , イ )                , ー'>>100点/´ヾ_ノ

      /   _, \               / ,  ノ

      |  / \  `、            / / /

      j  /  ヽ  |           / / ,'

    / ノ   {  |          /  /|  |

   / /     | (_         !、_/ /   〉

  `、_〉      ー‐‐`            |_/
35.100>>301削除

                    /

                    / 

                  ∠  でも魅魔様の搾乳ならちょっと見たいかも

            ∧_∧    \______________

           (  ´Д`) _

          /⌒ヽ/   / _)

          /   \\// 

          /    /.\/

         /   ∧_二つ

         /   /

        /    \

       /  /~\ \

       /  /   >  )

     / ノ    / /

    / /   .  / ./

    / ./     ( ヽ、

   (  _)      \__つ
36.80名前が無い程度の能力削除
こんなエロイ話なんて読みたくな…え?おっぱい?

おっぱい!おっぱいじゃないか!馬鹿野朗なんではやく言ってくれなかったんだ!

うぉー!おっぱい!おっぱい!(おっぱい成分が多すぎたようです)
37.100名前が無い程度の能力削除
アイカワラズヤッテクレマスネ。

そういうわけで100点進呈イタシマス
39.90名前が無い程度の能力削除
うめぇ。幻想胸やらフルムーン永琳やら言葉のチョイスがうますぎる



                   _ _     .'  , .. ∧_∧

          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ '     (    )

         , -'' ̄    __――=', ・,‘ r⌒>  _/ /

        /   -―  ̄ ̄   ̄"'" .   ’ | y'⌒  ⌒i

       /   ノ                 |  /  ノ |

      /  , イ )                , ー'>>301/´ヾ_ノ

      /   _, \               / ,  ノ

      |  / \  `、            / / /

      j  /  ヽ  |           / / ,'

    / ノ   {  |          /  /|  |

   / /     | (_         !、_/ /   〉

  `、_〉      ー‐‐`            |_/
41.100名前が無い程度の能力削除
なんというおっぱいw

それにしても結局神奈子様は人柱(神柱?)なんですねw
42.90名前が無い程度の能力削除
幻想胸うめぇw

おっぱいは世界を救う。
44.100Admiral削除
なんというおっぱい。

この早苗さんは間違いなく神(奈子様)を超えた。



全編楽しませていただきました。

オチの某は蛇足にも感じましたが、今の早苗さんならボロゾーキンのように蹴散らしてくれるに違いない。

作者様には「HENTAIという名の紳士」の称号と共にこの点数を贈ります。
49.100名前が無い程度の能力削除
    _  ∩

  ( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!

  (  ⊂彡

   |   | 

   し ⌒J

50.80774削除
ケロちゃん、子孫になんつーものを教えてんだよwww
51.100名前が無い程度の能力削除
どこまで続くんだこの話wwwとおもいながらよませてもらいますた
52.100三文字削除
これは酷いwwてか、全年齢的にアウアウ。

魅魔様が出てきたおかげで、私の心は満たされた。だから、尊敬の念を以てこのAAを。



              _ _     .'  , ..      ∧_∧

          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ '     (    )

         , -'' ̄    __――=', ・,‘ r⌒>  _/ /

        /   -―  ̄ ̄   ̄"'" .   ’ | y'⌒  ⌒i

       /   ノ                 |  /  ノ |

      /  , イ )                , ー'>>幻想と空想の混ぜ人

/´ヾ_ノ

      /   _, \               / ,  ノ

      |  / \  `、            / / /

      j  /  ヽ  |           / / ,'

    / ノ   {  |          /  /|  |

   / /     | (_         !、_/ /   〉

  `、_〉      ー‐‐`            |_/

54.100名前が無い程度の能力削除
あ・・・ありのまま今起こったことを話すぜ!
『俺はおっぱいの話を見ていると思ったらLALの現代編になっていた』
な、何を言ってるかわからねえと思うが俺も何をされたかわからなかった
まあ何を言いたいかと言うと純粋に面白かったと
61.100名前が無い程度の能力削除
いろいろ書こうかと思ったが、幻想胸にやられたよピチュ(ry
69.80名前が無い程度の能力削除
あぁ・・・救われる
77.90名前が無い程度の能力削除
オチがひどいwww
全体的に面白ったけど個人的にはゆうかりんにも出て来て欲しかった・・・