Coolier - 新生・東方創想話

紅美鈴が最強ではなく無敵である理由

2008/04/06 04:28:41
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※中国成分を含みます
 多分に捏造設定を含みます
 
 
 
 
「よくマスタースパークでふっ飛ばしてるな」・・・霧雨魔理沙
「さぼってシェスタしている時は額に投げますわ」・・・十六夜咲夜
「よく遊んでもらってるの!」・・・フランドール・スカーレット
 
「門番? あぁ、彼女は無敵よ」・・・???
 
 
 
 ~Fake~
 彼女は門番である。
 故に彼女は門を護る。
 彼女が居るから門はある。
 故に彼女の朝は早い。
「う~ん・・・はぁ、今日も天気は良さそう」
 大きく背伸びをしながら、彼女は朝の空気を吸う。
 何時から彼女がそこに居たのかは誰も知らない、知る必要がない。
 彼女は門番だからである。
「・・・はぁ」
 だらけている。
 だらけきっている。
 薄い雲に覆われた蒼い空を見上げながら目を細める彼女からは、門番としての矜持は見受けられない。
 だがそれでも彼女は門番である。
「・・・もう一度寝ようかな」
 ・・・それでも彼女は門番である。
 
「はっ・・・ほっ・・・はっ!」
 日は高く昇り、もう僅かで真上に達そうかという頃、
「やっ・・・ひぃあっ!」
 美鈴は奇妙な声を上げていた、真剣な表情で。
「はぁっ!」
 見る者が見れば賞賛するであろう美しい太極拳の型をなぞりながら。
 弾幕ごっこには取り入れづらいが、通常の門番業務において彼女の太極拳は役にたっている。
 雑魚妖怪など彼女の前では存在すら許されない。
 
 ・・・雑魚妖怪なら。
 
「ふっ! はっ! ほ・・・ほわ?」
 右手を前に突き出した上体で、美鈴は静止した。
 その目に映るのは、はるか彼方の空にぽっかりと浮かぶ黒い物体。
 その物体が恐るべき速さで近づいてくる頃には、美鈴は既に臨戦態勢に入っていた。
「今日も来ましたね!」
 “今日も”、という辺り彼女が門番として役立っているかどうか怪しいのだが、いろいろな意味で誰もそれを気にしない。
 主でさえも。
「今日という今日こそは貴方に引導を渡して―――」
 
「マスタースパーク」
「ぎゃぁ」
 
 
「ようパチュリー、また借りに来たぜ」
「出来れば返しに来てほしいわ」
「ん、考えておく」
 本当に考えているのかどうか、話半分で魔理沙は本棚へと向かった。
 わずか溜め息をついて、だがどこか嬉しそうにパチュリーはそれを見つめる。
「良かったですね、今日も魔理沙さんが来られて」
「なぜ良かったのかしら小悪魔?」
 メイド長ほどではないが、直前まで気配を感じさせない動きでパチュリーの傍らに小悪魔が現われる。
「いえいえ、では私は紅茶を用意させていただきます」
「・・・もちろん、二人分よ」
「あいあいさー」
 勿体深げに敬礼をして小悪魔が引っ込む。
 その顔は「私は何でもお見通しです」と言いたげであった。
「・・・なにか悔しいわね」
「何が悔しいんだ、パチュリー?」
「貴方に本を盗まれることよ」
 何時の間にか大量の本を抱えてきた魔理沙にパチュリーはそう答える。
「やだなぁ、私は借りてるだけだぜ」
「死ぬまで?」
「そう、死ぬまで」
 あっさりと、良い笑顔でそう返す魔理沙に、パチュリーは眉をしかめて答えた。
「ほんと、門番は役に立たないわね」
「そりゃぁ今日も吹っ飛ばしておいたからな・・・と、そういえばパチュリー」
「何かしら?」
 頭痛でもするのか片手で頭を抑えながらそう問い返す。
「あの門番・・・中国だっけ? なんであんなに強いんだ?」
「まず一つ、彼女は美鈴よ。それに二つ目、貴方相手の彼女の戦績は全敗」
「いや、そういう意味じゃなくてな・・・」
 トレードマークの帽子を脱いで、美しい金髪をガシガシと掻きながら魔理沙が続ける。
「私がここに来る頻度はどれくらいだ?」
「・・・三日に一回ほどかしら」
 それがどうしたと言わんばかりにパチュリー。
「その度に私はあの中国を吹っ飛ばしているんだよな」
「ええ、門番を吹っ飛ばしているわね」
「だったら、だったらなんで・・・」
 
「あいつは無事なんだ?」
 
「・・・そういえば、なんでかしら?」
「なぁそうだろう? 私の全力を喰らってなんであいつはいつも無事なんだ? 今日だって直撃させたはずなのに、数秒後には立ち上がっていた」
「それはいろいろとおかしいわね」
 先の事件においてパチュリーは魔理沙の魔砲の威力は知っている、というより実感している。
 その際は防御に魔力を集中させてなんとか事無きは得たが、それでも一時間は動けなかったほどだ。
 それなのに、彼女ほどの魔力も持ち合わせていないはずの門番が数秒で動き出す。
「・・・口惜しいわね」
「ああ、私も同じ気持ちだ。いったいどんな秘密があるというの―――」
「それなら本人にお聞きになればよろしいのでは?」
 折り良く二人分の紅茶を携えた小悪魔が現われ二人にアドバイスをする。
 だが、そのアドバイスに二人は唸った。
「うぅむ、私はついさっき吹っ飛ばしちまったからな・・・」
「私はあまり門番とは話さないから・・・」
「つまり―――聞きづらいと?」
 二人の前に紅茶を置いてそう問う小悪魔に、二人は頷いた。
 その様子に、主の手前か小盆で口元を隠して小悪魔が溜め息をつく。
「まったく、こういう時“だけは”常識人なんですから・・・」
「「何か言った?」」
「いえ、何も」
 主と客人二人の挙動に、小悪魔はいよいよ天を仰いだ。
 おお神よ、ヤハウェよ、ジーザスよ・・・どれも悪魔に相容れない存在である。
 だが、それでも神は歩いてきてくれた。
「そうだ!」
「どうしたのかしら?」
 名案とは、天から降ってくるものである。
「咲夜さんに聞いてみればどうです?」
「確かに、それは名案ね」
 小悪魔の提案にパチュリーが腕を組んで頷く。
「おお、そいつは名案だぜ」
 魔理沙は手を叩いて喜ぶ。
「私にとっては迷案ね」
 咲夜は無表情でそう答える。
 
「「「・・・・・・・・・」」」
 
 時が、止まる。
 
「・・・能力は使ってないわよ?」
 妙に重苦しい空気に、思わず咲夜が言う。
「いや、慣れたつもりではあったが・・・」
「足音どころか気配すら無かったわね」
「ほんと、心臓に悪いですよね」
 三者三様のジト目が、咲夜を睨む。
「え、私? 私が悪いの?」
 理不尽ではある。
 
 
「気を取り直して、“迷案”とはどういうことなんだ咲夜?」
「文字通りの意味よ。私に美鈴のことを聞いても無駄、というわけ」
 その言葉に、三者三様首を傾げた。
「咲夜、貴方はメイドの人選からシフト管理までこなしてはいなかったかしら?」
「はい、そのとおりですパチュリー様。ですが、美鈴のことは・・・」
 幾分申し訳なさげに咲夜が言葉を濁す。
「どういうことかしら?」
「美鈴は私より前から働いている、という意味でもありますし、また彼女の仕事はお嬢様直々のご命令により執り行われております」
「それはつまり・・・」
 メイド長の管轄外である、ということ。
「全く、役に立たないネコイラズね」
 言葉とは裏腹にあまり怒ってはいない声音でパチュリーは呟くと、小悪魔が持ってきた紅茶に口をつけた。
 だが、温かったようである。
「ああもう、こうなったらこれっきゃないぜ!」
 そんな中で、魔理沙が突然大声をあげた。
「館内では静かに―――」
「咲夜! 今門番はどこにいる?」
 小悪魔の注意などどこ吹く風、次に魔理沙は咲夜にターゲットを定めた。
「え、今は門番のシフトは休みで確か・・・」
 
「フランお嬢様と遊んでおられるかと」
 
 
 
 紅い、紅い
 見る者に恐怖を、畏怖を、もしくは憧憬すら思わせるその光景を、いま私は独り占めしていた。
 ああそうだ、独り占めだ羨ましいだろはっはー・・・
「あははははははは!」
 なんて現実逃避をしても始まらない。
「“禁忌”!」
 とりあえず妹様、奥義と同じで禁忌と名のつくものを連発しないでください。
 
「レーヴァテイン!」
「イ゛ェアアアアアッ!」
 
「・・・ちゅーごく、大丈夫?」
 目を開けてみれば、妹様の顔が間近にあった。
 かといって恥ずかしさが湧き出てこないのは、きっと疲労のせいだろう。
「えぇ、大丈夫です」
 とはいっても体が動かない。
 しかし、妹様の顔が何故か横向きだ、そして頭の下には何やら柔らかい感触。
 ああ、膝枕をしてもらっているのだな、と疲れた頭で実感する。
「でもほんと凄いねちゅーごく、あれだけ“当てた”のに生きてるなんて」
 妖精メイド辺りが聞けば恐怖に戦きそうなことを、この妹様は無邪気そうに言う。
 いや、無邪気なのだ、良くも悪くも。
「・・・頑丈なだけが取り柄でして」
「そーなんだ、ちゅーごくは頑丈なんだ」
 だが、とりあえず訂正だけはしておきたい。
「妹様」
「ん?」
「私の名前は紅美鈴です」
「わかったちゅーごく」
 ・・・全然分かってないが、いつものことだ。
 
「ねぇちゅーごく」
「なんですか?」
 とりあえず疲労は回復してきた(本当に頑丈な体だ)
 だが、頭に当たる感触が心地良いので、もう少しこのままで居させてもらおうう。
「なんでちゅーごくは門番してるの?」
「はい?」
 投げかけられた質問は想定外のもので、思わず間抜けな声を出してしまう。
 答えられないわけではないが、今までそんなことを聞かれたことはなかった。
 と、ここまで考えて妙に好奇心旺盛そうな妹様の顔を見てしまう。
 ・・・夢を壊すようで悪い気がする。
「私が門番になったのは―――」
 
 気がついたらお嬢様の前に居て、
「貴方は・・・“紅美鈴”ね」
 名前を口にされ、
「そうねぇ、渾名は“中国”」
 渾名を決められ(いくら中華風の服装をしていたとはいえこれは酷い)、
「仕事は、“門番”」
 
 
「というわけです」
「いや全然わかんないから」
 やはりそう言われるだろうと思った、だけど私が門番になった理由はこれだけだ。
「お嬢様に任命された、それだけです」
 覚えているのはいつものように紅いお嬢様と、お嬢様の声。
 思えばたった三行に満たない言葉で私の役職は決まった気がする。
「そーなのか」
 ・・・妹様、無邪気にそう言うとキャラ被りますよ。
「それじゃぁさちゅーごく」
「なんですか?」
 さて、もうそろそろ起きようかと思ったところでまた妹様が何かを言う。
「何ですか?」
「門番になる前は―――」
 ぎちり
「よーフラン!」
 妹様の言葉を遮って、扉が思いっきり開けられた。
 現われたのは―――
「おぉ、やっぱり居たか中国」
「“やっぱり”ってなんですかやっぱりって」
「まりさぁ、遊ぼ遊ぼ!」
 と、ふと気がつく。
 今、何時だろう。
「魔理沙さん、今何時です?」
「おぉ? ああ・・・もう夕方だなそういや」
 ・・・それだけの間私は気絶して、膝枕されていたということか。
「魔理沙さん、そろそろお帰りになられては?」
「ん? ああ確かにそうだな・・・聞くのは途中でいいか」
「え?」
「いや、こっちの話だ」
「え~、まりさ帰っちゃうのぉ?」
「そう言うなフラン、また今度遊びに来るから」
 
「で、何故私が黒白の見送りなのかしら?」
「咲夜さん・・・こんなんでも一応お客様なんですから」
「・・・そういうことは聴こえないところで言ってくれ」
 結局あの後、妹様をなだめて魔理沙さんを送ることになった。
 咲夜さんも一応呼んでおいた、というわけだ。
「で、何か私に用事でもあったんですか?」
「ん~、実はな」
「メイド長」
 と、廊下を走ってきた妖精メイドが咲夜さんを呼び止めた。
 どうやら急用らしい。
「咲夜さん、私は魔理沙さんをお見送りしておきます」
「ああそう、お願いするわ」
 
「魔理沙さん・・・次はちゃんとお客として来てくれませんか?」
「おう、考えとくぜ」
 ・・・口だけだろうな、きっと。
 でも今はそんなことより、気になることがある。
「で、何か聞きたいことでも?」
「ああそうだ、いや別にたいしたことじゃないんだけどな」
 たいしたことじゃないのなら、早く済ませてほしいと思う。
「なぁ中国、お前ってさ、何で門番をやってんだ?」
「へ?」
 一度聞かれたこととはいえ、いやだからこそ予想外。
 
 ぎちり
 
「いや、門番だから門番なんですけど・・・」
「むぅ、まぁいいか。それならもう一つ」
 
 ぎちり
 
「門番やる前って、何やってた?」
 
 ぎちりぎちり
 
「なんでそんなことを?」
「ん、ちょっと気になってな」
 
 門番をやる前・・・“前”?
 
「魔理沙さんに関係ないじゃないですか」
「・・・中国?」
 
 “前”・・・門番をやる前、私は何をしていた
 
「なんでそんなことを?」
「いや、名前も珍しいから少し気になってな」
「珍しい?」
「ここらじゃ珍しいだろ? 『紅美鈴』って」
 
 ホンメイリン・・・名前・・・確かに珍しいかもしれない
 少なくとも、お嬢様たちとは違う呼び方だ
 
「だから気になったんだが・・・いやすまん、気を悪くしたなら謝るぜ」
「あ・・・いえ、大丈夫です」
「そうかすまん、じゃあな」
 
 何故、私はそんな名前なんだ?
 
 
「美鈴、あの黒白はもう―――美鈴?」
 
 
 
 ~Real~
 夜。
 普通なら寝静まる頃だろう、だが私にとってはこれからが活動時間。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、咲夜」
 目覚めれば、目の前には咲夜の姿。
 これが彼女でなければ「寝顔でも見てたの?」というところだ。
「お召し物はこちらに」
「分かったわ」
 手早く着替えながら、だが私は不機嫌そうな顔をしていただろう。
 何故なら・・・
「咲夜、何故今夜は騒がしいの?」
 妖精とは本来騒ぎたがるものではあるが、いくらなんでもここまで酷くはない。
 そこら辺りで扉の開閉や廊下を走る音が繰り返されている。
 ・・・巫女の襲撃でもあったのだろうか。
「お嬢様、今夜はいかなる襲撃もございません」
「そう、それじゃあ何故?」
 相変わらず人の心を呼んだかのような返答。さすがメイド長。
 とりあえず、先を促す。
「それが、その・・・美、いえ門番が行方不明でして」
 その口から出てきたのは、彼女らしくない声音。
「あらそう・・・」
 そう言いながら、私は内心合点がいった。
 門番である美鈴は意外と紅魔館内で人気がある。そんな美鈴が居なくなれば騒ぎにもなるものだ。
 まったく、しょうがない。
「分かったわ、とりあえず貴方は騒ぎを収めて、私は出かけるから」
「・・・神社ですか?」
「いえ、すぐそこよ。散歩にも満たないわ」
 そんな私の言葉に、彼女は不思議そうな表情をしていた。
 
 お供無しでの外出は久し振りだ。
 たとえそれが門に出るだけであっても。
「ここは静かね」
 門番が居なくなって捜索でもしているのか館内は騒がしい。
 だからこそ、ここは静かだ。門番は居ない、だからここは静か。
 でも、“彼女”は居る。
「門扉下暗し、とでもいうのかしらね?」
 “彼女”は返答をしない。否、出来ないのだろう。
 それは仕方のないことだ、“彼女”は『存在しない存在』なのだから。
「私は、貴方に謝るべきかしら」
 返答はない、求めてもいない。
 これはある種、私の罪とでも言うべきなのだろうか。
「・・・何を言ってるのかしらね、私は」
 何を言っているのだ、私は夜の王、これしきのことで謝っていては、
 逆に失礼である。
 
 儀式を、始めよう。
 
「貴方は、“紅美鈴”」
 まずは紅い髪が現われた。私の館に相応しいとも取れる綺麗な髪。
 次に豊満な胸・・・どうすればここまで大きくなるのだろうか。
 羨ましい、というより憎たらしい、いっそもぎ取ろうか。
「渾名は、“中国”」
 その羨ましい肢体が中華風の洋装に包まれる。
 しかし、“中国”故に中華風とは、まさに名は体を表すといったところか。
「そして仕事は・・・“門番”」
 締めくくり。
 これで、“彼女”は“紅美鈴”。
 閉じた瞳が開かれ、“紅美鈴”は覚醒する。
 ・・・そして震え始めた。
「お、お、お嬢様・・・・・・」
「あら、おはよう美鈴、夜だけど」
 寒さからではない震えが、“紅美鈴”の全身に・・・
「も、申し訳ございません!」
 見事なジャンピング土下座であった。
「わ、私は決して眠っていたわけではなく、あの・・・これは迷走、いえ瞑想でして・・・で、ですからお仕置きだけは、お仕置きだけはぁぁぁぁ!」
 見ていて面白いが、さすがに何度も地面に打ち付けられる美鈴の額が可哀想になってきた。
 だから、私は彼女を起こす。
「お、お嬢様・・・」
 そして、満面の笑みを浮かべ―――
 
「グングニル」
「うぼぁああっ!」
 
 
 ~Trick~
「ごめんなさいねパチェ、騒がしくさせて」
「いいのよ、眠気覚ましには丁度良かったわ」
「そうかしら?」
「特に最後の悲鳴とか」
 
「でも、いったいどういうことなの? “彼女”は結局何者なの?」
「・・・“紅美鈴”は“紅美鈴”であり“中国”であり“門番”、それだけのことよ」
「レミィ、私が聞いているのは“彼女”のことよ」
「・・・鋭いわね」
 
「彼女は・・・いえ、彼女は女であるかどうかすら分からないわ」
「・・・どういうこと?」
「はるか昔、貴方と出会う前、咲夜が現われるよりもずっと前、彼女は私の前に“出現した”」
「・・・なぜかしら?」
「便宜上“彼女”と呼称するわ、彼女は『存在しない存在』、不定形、矛盾、そういった思念のようなもの、だからこそ磁石のように、強大な力に惹かれた、のかもね」
「それが、“紅美鈴”」
 
「いえ、微妙に違うわ」
「どういうこと?」
「“紅美鈴”は私が与えた名、そして“中国”は私が与えた渾名、“門番”は私が与えた仕事。さて、パチェ? 不定形の存在を定形で留めるにはどうすればいいかしら?」
「簡単ね、名を与え存在理由を与え・・・ちょっとそれって」
「そういうことよ、“彼女”は“彼女”、不定形の存在、それを定形にするために私が与えたのが、名前とキャラクターと存在理由、この三つよ。
 そして、よりその存在を明確にしたければ与える者を鮮烈にする。」
「・・・だからって“中国”はどうかしら」
 
「じゃあ今回の騒動は―――」
「美鈴が自分の名前に疑問を抱いたから。私が与えた三つのうち、どれか一つでも蔑ろにすれば彼女もまた不安定になる」
「それって、」
「黒白の魔砲に耐えられるのは、黒白が美鈴の名前を蔑ろにしているから、
 フランと遊べるのは、フランもまた美鈴の名前を蔑ろにしているから、
 咲夜のお仕置きに耐えられるのは、まぁこれは例外ね、美鈴が存在理由を
 蔑ろに、つまり門番をサボっているから。
 存在が不安定になった存在にいくら攻撃しようと、それを雲を打つようなもの」
「・・・そんな、あり得ないわ。そんな滅茶苦茶な存在」
「彼女は無敵よ。私が創り上げたともいえる、無敵の存在。
 ある意味、門番にしておくのが惜しいくらいね」
 
「でも、何故そんなことを?」
「・・・丁度門番が欲しかったから。でも―――」
「でも?」
「彼女には、恨まれてるかもね」
 
「それは無いわ、レミィ」
「どうしてかしら?」
「確かに“彼女”は恨んでいるかもしれない、でも“紅美鈴”は貴方を恨んで意いない、そう思うわ」
 
 
 ~True~
 彼女は門番である。
 故に彼女は門を護る。
 彼女が居るから門はある。
 故に彼女の朝は早い。
「う~ん・・・はぁ、今日も天気は良さそう」
 
 そして、門があるから彼女は居る。
最強と無敵は違うって幻想殺しさんが言ってた
 
美鈴の強さはいわゆるスーパースターマン(スーパーマンじゃないよ)的なものだと思うんですよ。
 
前作に評価・コメントありがとうございました。
意外な高評価で驚いております。
 
以下言い訳
二次設定における様々な暴力(魔理沙の魔砲・咲夜のナイフ・フランとの遊び)に耐えられる美鈴って何者?
それの答えとしてこのSSを書いたのですが・・・ぶっちゃけこれじゃただの考察に近いですよね。
それに“答え”と言っておきながら、結局美鈴の正体は不明のままです。
 
 
次回作は、「博麗巫女の中立考察withほんのちょっとの弾幕バトル」の予定です。
RYO
[email protected]
http://book.geocities.jp/kanadesimono/ryoseisakuzyo-iriguti.html
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コメント



0.1080簡易評価
3.80#15削除
「最強」と「無敵」なら、やっぱり後者の方が難しいのでしょうね。
ところで、この『中国』は某『正体不明』とかぶってますか?
6.80名前が無い程度の能力削除
イ゛エアアアアアで腹筋が崩壊w

全体的に楽しませていただきました。こういうSS好きです。
10.70三文字削除
イ゛エアアアアアとグングニル吹いたww
美鈴の龍説とかはよく見かけますが、こういったのは初めてです。
ふ~む、興味深い。
12.100☆月柳☆削除
考察とはいえ、ちゃんとしたSSとなっていたので楽しめました。
後、過去の美鈴作品の一つを思い出しました。
16.100アーッハッハッハッハ!削除
イ゛エアアアアアで吹いたww
24.100名前が無い程度の能力削除
なるほどねー
30.90名前が無い程度の能力削除
スーパースターマン懐かしいなおいw
面白い考察だったしちゃんとssになってたよ
お嬢様に惹かれて現れた「彼女」だし今の境遇を恨んではいない、と思いたいね