Coolier - 新生・東方創想話

終焉、されど波紋は壊れず

2004/07/25 12:24:12
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この作品は『罪の波紋は罰へ広がる』の続きとなっています。
後、この文は残虐なシーンがあります。そう言うのが駄目な人は、すみやかに退出する事をお勧めします。










 
 そこにあるのは、ただひたすら暗かった。
 夜風が優しく体を撫で、その音が私を祝福してくれる。
 空に輝く――月が、ただでさえ目立つ羽をより綺麗に・鮮やかに・儚く・妖しく輝かしてくれる。
 そんな私がいる世界はどこか変だ。
 ほんと、まるでそこには最初っから何もなく、私を孤独と感じさせるには十分すぎるほどに。
 
――――――――――――――――――なんだ、これじゃ私の部屋と同じじゃないか。

 違う。何を言っている。それは大きな勘違いだ。
 風があり、森があり、そして生き物がいる。
 そして何よりここには、時間の流れを感じる事ができる。
 では、なぜそんな風に感じた?
 ・・・・・わからない。
 ただ私は、存在その物が一緒のような気がした。
 たった刹那のタイミングがすべてを狂わすよう、この世界ではきっと一瞬のうちに全てを失い、それによりみんな
 が、最後に世界から自分と言うのが抹消される。

―――――――――――――――――そして自分が存在したと言うのすらなくなるのか・・・・・・・・・・・・・

 ああ、それが似ているのかもしれない。
 私がみんなから、そして自分が一番慕ってた人にも忘れられていったのと同じように。
 あーー、何かわかったらすごく気分がよくなっちゃった。
 さて、そろそろ行こうかな。
 今は午前一時ぐらいだが、夜は長くない。
 太陽が昇り始める前にさっさと博麗神社に行き、そこにある者を壊さなくちゃ。
 う~~ん、でも考えてみたら博麗神社が何処にあるのか知らないや。
 まあ、途中であった人に聞いてみればいいか。
 とりあえず出発しよう。
 そして私は夜空を見上げる。
 そこには紅よりも淡く、危険な朱い月があった。
 それが何よりも私の感情を欲情させる。
 口元にうっすら笑みをこぼし、紅魔館より出てきたフランドール・スカーレットが夜へ旅立つ
 朱い月がそれを優しく迎える。

                  さあ、始めよう。極夜に咲き誇る死舞の血声を





























 どれくらい経ったか。
 実際にはまだ一時間も経ってないが、ここまで何もないと時間感覚が麻痺してしまう。

「ほんとつまんないわね。色々と期待したから変な気持ち。でも実際困ったな。これじゃあ何時まで経っても博麗神
社に着かない。それに何かさっきよりも暗くなった感じがする。こ~んな暗闇には変な奴しかいないんだろうな。」
「変な奴って誰のことよ?」
「別に、あなたの事とは言ってないけど。」
「当然ね。」
「何?さっきからやたら暗いのはあなたのせい?」
「ええ、そうよ。私の周りは常に暗いの。」

 フランの目の前には一人の少女がいた。
 自分の周りが夜の暗さではない、別の暗さを感じた時にちらついてた気配と同じだった。

「はじめまして。私は宵闇の妖怪ルーミアよ。」
「こちらこそはじめまして、私はフランドール・スカーレット。吸血鬼をやってるわ。」
「そーなのかー。」

 ちょっと独特的である。

「で、ちょっと聞きたい事があるんだけど。」
「なに?」
「今私博麗神社ってとこ探してるんだけど、何処にあるのか分からないの。知ってるなら教えてくれない?」
「ああ、博麗神社ね。それならこっちの方角にもうちょっと進んだとこにあるよ。」

 そう言ってルーミアが指をさす。

「そう、ありがと。」
「けど何しに行くの?しかもこんな時間に。」
「あら、別にあなたには関係ないでしょ?私の問題なんだから。」
「まあ、それはそうなんだけど、やっぱ気になるじゃない?それに・・・・・・」

 ルーミアは一度言葉をくぎる。

「・・・・それにそんな血の臭いをさせてたらさ。」
「・・・・・・・・」

 フランの表情が険しくなる。

「血の臭いの中に殺気も感じるわ。もしかして殺しに行くき?だったら止めといたほうが良いかもよ。」

 幻想郷の者は、なんともまあ死に関して鋭いものだ。
 やはり弾幕ごっこがあるからだろうか?
 ある意味、幻想郷ほど生と死が間近にある所はないだろう。

「まあ大半は当たってるけど、何で止めた方がいいの?」
「何気にあそこに居る巫女強いから。私も一度戦ったけど負けたし。」

 お姉様ですら負けた相手なのだから当然だ。
 おまえ程度の力で勝てるわけがない。

「別にあなたが勝とうが負けようが関係ない。私は自分の思い通りにするだけよ。」
「止めといた方が良いと思うけどな・・・・・。」
「止めても無駄よ。道を教えてくれた事には感謝するわ。じゃあね。」

 そう言って、フランが博麗神社に飛び立とうとした。

「そうだ!私良い事思いついちゃった!」

 だがそれはルーミアの声に阻止された。

「何よ?良い事って?」
「私があなたの実力を測って上げる!」

 思わず目が点になってしまった。

「・・・・あなたが?」
「そう。もしあなたが私に負けるようなら、あの巫女には勝てるわけないし。」

 まあそれもそうだが・・・・・、私にはあまり時間がない。
 第一、なぜさっきからこんなにも阻止されなければならない?
 そうだ、私は誰かに阻止される覚えはない。
 ・・・・・もしこれ以上私の邪魔をするようだったら・・・・

「悪いけど却下。私には時間が限られてるの。・・それとこれ以上邪魔するようだったら、まずあなたを殺すわよ?
これは脅しではなく、忠告よ。」
「・・・・・ふ~ん、そう。だったら・・・・・」

 ルーミアが答える

「だったら見せて貰おうかな。あなたの実力!」

 言い終わるより早く、弾幕を展開する。

「!!」

 突然の攻撃に少し浮き足が立つ。
 しかし、すんでのところで弾幕を回避する。

「よく避けたね。でもまだまだだよ!くらえ、夜符『ナイトバード』!!」

 ルーミアから、鳥が翼を広げたような弾幕がフランに襲い掛かる。

「まったく、せっかく忠告して上げたのに・・・・・」

 フランは一歩も動かずに迫り来る弾幕を傍観する。
 そこで、何か閃いた顔をする。

「・・・・・・なるほど、ちょっと練習台になってもらうのも良いかな。」
「変な事行ってる前にこの状況を何とかしたら?いまさら避けきる事なんか・・・・・!?」

 その時、ルーミアは異常な事に気付いた。
 アレ?おかしい。
 さっきまでそこに居たはずなのに、弾幕が当たる一瞬の瞬間にフランの姿が消えていた。
 どうなった?わからない。どうやって消えた?何処に消えた?
 何もかもが一瞬の出来事で何がなんだかさっぱりだ。
 そしてなんだ

                     この体中から感じる恐怖は

 もはや逃げ場は・・・・いや、命すらないと直感的に感じる。
 
「っく、いったい何処に!?」

 いくら探してもさっぱり見当たらない。
 いくら目を凝らそうが、見えるのは闇のみ。
 ・・・・逃げろ。早くしろ。死にたいのか?
 脳の命令、そしてそれを断絶する恐怖。
 だって、気付いた時には・・・・

――――――――――――――――――もう遅いよ

「!!??!」

 背筋が凍る。
 後ろを振り向きたいが、恐怖のあまりそれができない。
 かろうじて首だけを後ろに向ける。
 そこには・・・・コウモリがいた。

「ほーんと馬鹿だね。余計な事に首を突っ込まなければ、死ななかったものを。」

 コウモリが少しずつ人の形に変貌していく。
 手が片方、私の首を捕らえる。

「ぐっ・・・・」
「まあ、おかげで私も妙案が思いついたし。」
「・・ハァ・・何よ、妙案って?」

 後ろから変貌を終えたフランに首を捕まれ、さらに威圧によって体が動かなくなっているルーミアに出来る事は聞
 く・見る・話すだけだった。
 もし少しでも動くものなら、殺されるだろう。

「さっきも言ったでしょ?練習台って。」
「・・・・何のよ?」

 くすっ、とフランが笑みをこぼす。

「私ね、博麗神社の巫女、確か霊夢とか言ったわね。そいつに対してすごい怨みがあるの。だから、ただで殺すなん
て事は絶対しない。身も心も海より深い絶望と苦しみとう名の淵に沈めないと気が済まないの。私ね、『ありとあら
ゆるものを破壊する能力』を持ってるの。そのため、手加減と言うものがあまりできないの。たまに玩具を弄っても
すぐ壊しちゃう。だから困るのよ。一歩間違ったらあっさり殺しちゃう。されじゃあ私の心が満ち足りない。だから
、あなたには手加減をする練習台になってもらうの。」

 そう言ってフランの指がルーミアの背中に触れる。

「ひぃ・・・や・・て。」
「あはははは!恐怖のあまり声すらまともに出せないの?そして何よりその顔!いいなぁ、自分の命がもうない事を
知りながらも、たった一つの希望を探し、さ迷い続けるような者たちと同じ顔。ほんと最高だね!じゃあ、私が良い
声で喚きながら、さらにいい顔をするよう手伝ってあ・げ・る♪」

 そしてそのまま
 フランの指に力がこもり
 ルーミアの背中へと
 挿入される


   ぐちゅ  ぐちゅ  ぐちゅ   
                  ねちゃ  ねちゃ  ねちゃ

「!!!!!い・・・痛いぃぃぃいぃいぃぃーーーーーー!!!」
「あらあら、まだ指が半分しか入ってないんだよ?まだまだこれからが本番なんだから。」
「ひ、ぐぅぅ・ひああああぁぁっぁぁぁぁ・・・・」

 まさに声ではない声。フランの指が痛いぐらいにルーミアの背中の筋肉が締め付けてくる。そこから漏れる血が生
き物ように撒き散らされフランの服・体を濡らし、心を塗る。負けじとさらに指を奥へと入れていく。ルーミアの声
が三半規管を浸食して指から体中のありとあらえる感覚を呼び起こし脳に焼き付ける。表面こそ嫌がってる様だが、
血が潤滑油の役割をはたしてくれ体はまるでさらに求めているじゃないか。ならこちらもそれに答えて上げなきゃね
。指をさらにさらに進め、そのまま臓器まで到達する。さらに、と思いきや・・・・・

「あれ?これからなのにもう全部入っちゃった。つまんないなぁ・・・・。」

 おもんなさそうにはき捨てる。

「・・も・・もう・ぃ・・や・・やめて・・・・・。」

 痛みのせいで涙をこぼす。いや、それだけではない。今のルーミアには体中の液と言う液すべてがこぼれている。

「私が・・はぁ・・・わる・・っ・・かった・・から・・もう・・や「何言ってるの?まだまだこれからじゃん。」

 ルーミアの声は、今の破壊衝動にかられてるフランに届きはしない。

「まだ次のステップが用意されてるんだよ?でもこの状態じゃあやり難いな。ちょっと弄るか。」

 今度は、入れ終わった指を上下左右に動かす。

「!ぃ・・・いやぁぁーーーーー!」

      ねちゃ     ぐちゃ
                  じゅぶ    ぎちゃ
          ねちょ                 ぷち

 さっきよりも何ともまあイヤらしい音を立てるものだ。
 少しずつ指の入っている空間を無理矢理広げ、押し返そうとする力を逆にねじ伏せる。それにより中のものが凝縮
され、変な穴みたいなものが開く。

「・・・ん~~、これぐらいかな?」
「ひ・・ひぃ・・ぐ・」

 もはや呻き声すら上げられないのか、ただ泣くばかりである。

「さて、仕上げといくか。」
「・・・・・・・・・・・」
「ん?何か言いたそうね。まあ、その顔からしてもう止めて、それと次に何をするのか?ってところかな。」
「・・・・・・・・そう・・・よ。」

 あまりの痛みが体中を駆け抜けたためか、どこか言葉も顔も冷めていて面白味に欠ける。
 それが、フランにとってちょっと癪にさわった。
「ふ~~ん。何か挑発的な態度ね。気に喰わないわ。もっと泣いて叫んでくれない?・・・・・・しかたないな。言
ったら、突然の事にどんな表情と声を上げるか見聞きできなくなるけど、やっぱ言って上げる。直で言うわよ。これ
からあなたを私の腕で貫いてあげる。」
「!!!!そ・・それって・・!」
「ええそうよ、今入ってる指の部分をさらに奥に突っ込むの。」
「ちょ・・冗談で・・しょ・。い、いや・・・そんなのいやぁぁーーー!!」

 今度こそ本気で逃げ出そうと体を捩る。
 だが、体を捕らえられ、さらに動けば動くほど体に入れられている指に当たり激痛が走る。
 それが力を奪い、逃げる事が出来ない。

「あははははは!なんだ、やれば出来るじゃない。最初っからその表情をすれば良かったのに。それじゃあいくよ!
たっぷり楽しませてね!・・・ん~~、えい!!」

       ぐしゅ

「!!!!!!!!ひ・・・い・・いたイぃぃぃィィいぃイイィィィィィィーーーーーーー!!!!」

 一瞬だった。
 人の体とは、なんともまあ脆い脆い。
 フランにより、見事中のものをごっそり持っていかれた。
 血管・臓器の損失、さらにフランの腕が通行止めをして、行き場を失った血液が逆流を開始。
 血液が行き場を探しながら色々な所を暴れる。
 そんな血液が、最終的にたどりついたのが口だった。
 出口を見つけた血液がそこに殺到していっきに流れ出す。

「う・ぎ・・・げ・げほ・・がほ・・・」

 突然の吐血に息がつまる。
 酸素を求めて息を吸うが、さらに流れ来る血液がそれを押し留めてしまう。それにより噎せてしまい、体が大きく
反動し、さらに血液が暴れだす。まさに負の連鎖。

「くす、随分苦しそうだね。で、どう?自分の体が異物によって貫かれてる感想は?」
「・・う・・げ・・・・げほ・・・・・・の・・」
「ん、何?もう一回・」
「・・げほ・・こん・・・な・・・こと・・して・なに・・・・・が・・たのしい・・の・」
「楽しいかって?ええ、楽しいよ。そうじゃなかったらこんな事しない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「苦しい?苦しいでしょ。ほんと、最高の眺めだね!」

 腕を少し動かす。

「!ひぃ・・・うう・・・いたい・・やめて・・おねがい・・・・」
「イヤ。まだまだ苦しまなくちゃ。・・・・・・・でもね、こんなの本当の苦しみじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・?」

 なぜか、フランがとても辛そうな顔をする。

「こんなの、所詮は肉体面だけ。時間が経てば何時かは治る傷。時間が自然と癒してくれる。でもね、そんなの真の
傷じゃあない。」

 なぜだろう。苦しいのはルーミアのはずなのに、なぜフランの方が苦しんでるように見えるのか。

「この世にはね、一回傷つけられたら一生治らない傷だってあるんだよ。それは時間が経っても治りはしない。いえ
、むしろ時間が経つにつれて苦しみが増していく。忘れたくても忘れる事ができず永久的に私の頭の中を支配する。
救われたくても誰にも救ってもらえない!それが心の傷のありかた!私の苦しみよ!!!」

 そしてそのまま・・・・・・

    ぼしゅ
              さらさら

 ルーミアが消えた。
 唐突だが、まさにそれ以外言いようがない。
 話してるうちに、つい腕に力がこもってしまったのだろう。
 ルーミアの水分・血液を蒸発させ、臓器を乾燥さし、骨を風化させた。そして中から力を放つ。
 その結果、体が砂状になり夜へと散っていった。

「・・・あ~あ、つい感情的になっちゃった。私もまだまだだな。」

 夜の闇へと散っていくルーミアの体だった物に少しの髪の毛。・・・・・それとリボンだ。
 それはルーミアの髪の毛に縛ってあり、力を封印してた物。
 まあ、フランがそんな事知っているわけないが。
 主を失ったリボンが、宛てもない風に吹かれて闇に消えていく。

―――――――――――――――――――――本当に宛てもない風は誰なのか―――――――――――――――――

 まあいい。思ったより時間をくってしまった。まあ少しは手加減の練習になっただろう。
 さて、博麗神社に行こっと。












 ここは博麗神社。幻想郷と人間界の両方に位置するが、山奥にあるため参拝客は皆無に等しい。
 そのためか、夜中になると余計に寂しく見える。
 博麗神社の巫女であり、何時もならとっくに寝ているはずの霊夢は、今日に限り起きていた。
 寝れない・寝たくない・寝させてもらえない、いったいどれが正しいのか?

「ほんと、なんでこんな事になったんだか・・・・。」

 夜には不釣合いの紅白の衣装を身に纏いながら愚痴をこぼす。
 霊夢が見上げている夜空には、禍々しいばかりの朱い月が輝いていた。
 かつて、レミリアと戦った時見たやつとは違う。
 あの月は、まるで人の血を吸い取っているようだ。

「・・・・考えてもわからないわね。ただ一つわかっているのは、この身に感じる恐怖。」

 ああ、だからさっきの問いに答えられないんだ。
 私は寝ないんだ。
 もし寝れば、それは永遠の眠りへと誘われるから。

「まったく、お粗末な物ね。あんな遠くから殺気立ってちゃ、私じゃなくても身構えるって。」

 見える視える、空に輝く朱い月の光を一身に浴びて、それにも負けない綺麗な羽。
 間違いない彼女は・・・・・・

「いらっしょい、こんな時間に参拝客が来るとは思わなかった。」
「お出迎えありがと、博麗 霊夢さん。」

 私を殺す気だぁ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「しっかし驚いたな。こんだけ殺気立てりゃ逃げると思ったけど。」
「逃がしてくれたわけ?私を殺すためだけに来たんでしょ?」
「あ、ばれてた?」
「もちろんよ。私だって今までに色々な奴と戦ってきたんだから。あなたの姿が見えていた時点で、私はすでにあな
たの射程内に入っている。後ろから攻撃されたり、迂回して先に回り込まれたらそれこそアウトよ。むしろ正面から
受け止めた方が賢明ね。」
「へぇ~、結構頭いいんだ。見かけによらず。」
「五月蝿い!余計なお世話よ!!」
「そう怒らないの。」
「普通は怒るに決まってる!・・・・で、あなた何者?あの朱い月はあなたの所為でしょ?」
「それもばれてるか。はじめまして、お姉様がお世話になったようで。私はフランドール・スカーレットよ。」
「スカーレット?お姉様?どっかで見た顔に似ている気がしたけど、あんたもしかしてレミリアの妹?」
「ええ、そうよ。」

 なるほど、だとすればこれほどの力があるのも頷ける。
 いや、むしろ殺しに関して言えば、はるかに彼女の方が特化した能力を持っている気がする。

「で、フランドールさんは何しに来たのかな?」
「フランでいいわ。そんな事わかってるでしょ?」
「まあね、殺すきでしょ?何、姉の復讐?」
「別に間違ってはいないかな。復讐は復讐。ただ、その理由はお姉様が負けたからじゃない。」
「はい?」

 フランが何を言っているのか霊夢にはわからなかった。
 当然だろ、今の霊夢にはじめて会ったフランに怨まれる理由は、姉であるレミリアが負けた事ぐらい。
 それ以外の理由、まったく思いつかない。

「何か勘違いしてない?復讐の理由がそれじゃないんだったら、私はあなたに怨まれる筋合いはないはずよ。」
「そっちになくても、私にはあるの。」
「・・・・・何よ、その理由って?」
「教えない。」
「何で?私を殺そうとするからにはそれぐらい教える義理はあるんじゃない?」
「義理はあっても義務はない。そのまま永久に何も知らないまま溺死ね!」

   殺気!

 考えるより先に体が動く。
 何もない所を弾幕が素通りしていく。

「・・・・いきなり攻撃してくるとはいい度胸ね。」
「それほどでも。」
「褒めてない。」
「そうだ、殺す前に一つ聞いとく。あなた、私についてお姉様から何も聞いてないの?」
「?ええ、レミリアに妹がいたなんてはじめて聞いたわ。」
「そう、・・・・・やっぱりか・・・・。」

 なぜか、フランの顔つきが寂しそうになる。

「・・・・何があったのか知らないけど、もう帰ったら?私を殺してもレミリアは喜ばないと思うわよ。今ならあな
たが私を襲いに来た事も黙っといて上げる。」
「当然だよ、お姉様が喜ぶわけない。実の妹より、他人であるあなたの方が大事だと思ってる人なんだから。」
「ハイ?」

 いよいよわけがわからない。
 ほとんど事情を知らない霊夢にとって、理解しろと言う方が無理だろう。

「何わけ分からない事いってるの?常識的に考えてそんな事あるわけないでしょ。まったく、いい加減に・・・・」
「いい加減するのはそっちよ!!」

 いきなり叫ぶフラン

「私がどんな気持ちか知らないくせに、偉そうにして。」
「(ムカ)何よ、何も事情を説明しないくせにわかるわけないでしょ!ったく、どんな教育してんだかレミリアは。
明日、いいえ今すぐレミリアに言ってしっかり教育してもらう必要があるわね。」
「あっそ。別に分かってもらおうとは思ってないから安心して。・・・・それにしても・・・・くす。」

 フランが笑みをこぼす。
 霊夢にとって、それがとてつもなく恐怖を感じさせた。

「な、何よ?何が変だって言うの・・・・・・」
「だって、お姉様に告げ口するんでしょ?私は今からあなたを殺すのにそんな事できるわけないじゃん。・・・まあ
仮に逃げられたとしても


                   もう、お姉様はこの世界にいないから

「・・・・ちょっと、それどう言う意味よ?」
「さあ?自分で考えたら。さて、結構話し込んじゃって時間がなくなっちゃった。早く済ませないとね。いくよ!」

 フランが地を蹴る。その勢いで空中に飛び、霊夢に向かって低空飛行をする。

「・・・くっ!考えるのは後にしないとやばそうね。」
「そう言う事!くらえ!!」

 フランが突っ込みながら弾幕を展開する。1・2・3・4!全部で4回弾幕の波が出される。いっせいに咲く夜空の花。
 博麗神社は一瞬にして修羅場とかした。

「ふん、これぐらいで!」

 霊夢が体を捩り、迫り来てた第一波目の弾幕を避ける。次に迫り来る第二波目。しかし、次に迫って来たのは第二
波目、と後ろの第三波目だった。第三波目の方がスピードが速い。速度差攻撃、一瞬動きが鈍くなるがすぐに行動を
開始する。今霊夢がいる位置では、二つの波をほぼ同時に処理しなくてはならない。だから5・6歩大股に下がり、第
三波目を先に回避する。そしてそのまま後ろに下がった反動を活かし空中に飛び、第二波目だった物を回避する。第
四波目も空中に飛んだ事により楽々回避出来た。しかし、そこで全て終わったわけではない。下からはフランが何や
ら企んでる顔をしている。

「空中に飛んだね。それこそこっちの思う壺だよ!禁弾『スターボウブレイク』!!」

 下から弓の弦をひいたような弾幕がいっせいに展開される。

「!!っ・・・真下からの攻撃だと距離感と速度が掴み難い!こうなったら・・・・・」

 リスクは大きいが、直前まで弾幕を引き付け、最小限の動きで回避するしかない。

「・・・・・はっ!」

 回避、少々服を掠めたが、直撃に比べれば安い物だ。

「まだだよ。」

 第二弾。再び同じような弾幕が放たれる。

「ふん、さっきと同じ攻撃?もうちょっと学習したほうがいいんじゃな・・・・・!?」

 そこで気付いた。上空から迫り来るもう一つの弾幕に。
 完璧に騙された。最初に放った弾幕はただのトラップを設置しただけだったのだ。自分の上空からは、先程の弾幕
雨のよう降り注いできていた。しかも、それが重力を受けて、少しずつスピードアップしている。さらに下からもさ
らなる追い討ち。当初のフランの目的はこれだったのだ。上下からの同時攻撃、これこそがフランの企み。そして真
下からの攻撃による距離感と速度の掴み難さと言う、予定外の現象がフランに味方した。少しずつスピードを上げて
降り注ぐ弾幕、そして少しずつスピードを下げれ昇り来る弾幕。この二つが交差するところに霊夢はいた。つまりそ
こは・・・

「こ、これじゃあ・・・・・」

 一番かわし難いポジションに他ならなかった。
 避ける。ほんとにそれだけ。この状況ではスペルを唱える時間すらない。フランは攻撃の手を緩めない。
 霊夢は完全に劣勢だった。フランと違い、動くたびに完璧に避けきれなかった弾幕に体を傷つけられ、体力を奪っ
ていく。こんな状況が続けば

「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!

 落とされるのは必然である。

「う、くぅ・・・・・」

 弾幕を体に受け、上空から地面に叩き付けられる。
 その隙を見逃すほどフランも甘くない。

「取った、もう逃げられないよ。」

 スペルを解除したフランが霊夢の体をつかむ。

「思ったより粘ったね。褒めて上げる。」
「・・・・それはどうも。」
「くす、この状況でもまだ目が生きてるわね。流石、そうじゃなくっちゃ楽しめない。少しずつ絶望に染まっていく
のを見ないと、私の気が落ち着かない。」
「・・・・・どうするつもり?」
「殺す。でもただじゃ殺さない。さっきの教訓として、肉体を先にいたぶったら面白くないってわかったからな。だ
から先に精神から犯してやる。」
「っ・・やめ・・なさい。」
「いや。それにしてもみんな同じ事言うんだね。ルーミアって子もそうだったし。」

 突然、自分の知り合いの名前を出されてびっくりしてしまった。

「ルーミア!?あの子をどうしたの!?」
「殺した。だって邪魔するんだもん。まあ、いい練習台になってくれたから感謝してるけど。」
「!あなた・・・・!!」
「あはははは!!足掻いても無駄だよ。完璧に捕らえられてるあなたが抵抗する事はできない!!」
「・・く・・そ!!」
「それじゃ、はじめようか。いったいあなたがどれだけ私の味わった苦しみに耐えられるか楽しみね。がんばってち
ょうだいね。QED『495年の波紋』!!」

 霊夢の頭に触れながら放たれたスペル。いや、むしろ埋め込まれたといったほうが正しいかもしれない。

「!!な・・・なにこ・・・・・・れ・・・」

 視界がわからない。前後左右がわからない。私がわからない。
 今の霊夢には、脳に焼き付いてくるものが全て――――――――――――――――――――――――――――――













「どうなってるんだ、これは?」

 コツコツと足音が響く。声はただ空を切る。誰にも届かないまま。

「何時から紅魔館は無人になっちまったんだ!?」

 走る。誰に追いかけられているわけでもないのに走る。
 自分だけが取り残されたと言える空間が何とも言えず心を縛り付ける。

「くそ、私はただ本を借りに来ただけなのに。」

 いや、その表現は正しくない。
 むしろ、本をパチリに来たと言った方が正しい。
 昼間、紅魔館に来ては本を物色し、そしてそのまま持ち帰るのが日課だった。
 しかし、今日はパチュリーのせいでそれが出来なかった。

「本を借りたいなら、今まで借りた本を全部返しなさい。」

 と言われたからだ。
 だから、夜中にこっそり持ってってやろうと霧雨 魔理沙は思ったのだ。
 しかし、この状況はどうだ?最初、門番がいなくて理不尽、かつラッキーだと思っていたが、しばらく中を歩き回
っていて変だという事に気付いた。
 まず第一に、あまりにも音が無さすぎる事。見回りのメイドなどに会ってもおかしくない筈だ。
 そして何より、あまりの生気の無さ。
 今や、紅魔館は正真正銘死んでいた。

「はあはあはあ、おーい、誰かいないのか!?」

 何度も叫ぶ。しかし結果は全て空振りだった。

「はあはあ・・・あそこは・・・・・図書館!」

 当初の目的であった図書館がすぐ目の前にある。
 だが、今の目的は本の持ち帰りとは大きく異なっていた。

「おい、パチュリーいる・・・・・か!?」

 図書館と覗くと同時にだった。あまりの惨状に目を奪われたのは。

「こ、これはいったい・・・・。」

 辺り一面に散らばっている本の山。棚は崩れ、本は所々破れていた。

「おい、パチュリー!いたら返事をしろぉーーーー!!」

 だが、声だけが密室された図書館に響くだけで、返事は返ってこなかった。
 魔理沙が図書館内を歩く。
 すぐ近くにある本を拾い上げる。
 それは、何かに焼かれたようだった。
 そしてその他の本も調べてみる。焼かれた本、何かで抉られたような本。
 散らかっている所の本はほとんどがそんな状態だった。
 そして魔理沙は、本と床に見ては、いや見たくなかった物を見てしまった。

「これは・・・・・血!」

 これではっきりした。
 間違いない、誰かがこの紅魔館を襲ったんだ。
 そして、全滅した。

「・・・くっ、何を考えている。きっとまだ生存者はいるはずだ!」

 そうだ、最悪の状況を想像してはいけない。
 探すんだ!!

 ・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 そしてどれくらい経ったか。
 進む道にあった全ての部屋を調べたが、結局何も見つけられなかった。
 咲夜の部屋も、パチュリーの部屋も、美鈴の部屋も、そして他の部屋もだ。
 後残っているのは・・・・・・・・

「ここがレミリアの部屋だったな。」

 そして扉を開ける。
―――――――――――――――――――――――――――――ああ、それで理解した。この部屋には誰も居ない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――はは、そうだ、居てはいけないんだ。
―――――――――――――――――――――――何て別空間。一瞬の内にまったく違う世界に迷い込んだようだ。
 音が無いのに耳鳴りが、誰もいないのに声が、何もないのに見られてる!口・目・鼻・耳・頭・首・胸・腹・手・
足・腕・太股・食道・胃・肺・膵臓・肝臓・小腸・大腸・脳、ありとあらゆる物は存在し存在しない存在できないこ
の空間。体の全てが蕩けてそれが快感を与え、与えられた事が不快感。まるでその液状が媚薬となり全てを魅了し魅
了されていく興奮。それによって起こる破壊衝動。そう、それこそ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 マテ、ソレ以上考エルナ。思考ヲ止メロ。イヤ、殺シテシマエ!!

「ウ、ウアアああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!」

 出る出る出る、部屋から逃げ出る。動きがどうした、あるのはこの部屋にいてはいけない真実のみ。

   バタン!!

「はあ、はあ、はあ、はあ、・・・ぐっ・」

 唾を飲み込む。
 何て生きた心地がしないんだ。だめだ、この部屋には居られない。
 外に出れたんだ、それは助かったと言う事ではないか。
 しかし、これは・・・・・

「ぐっ!止めろ!!思い出すな!!!・・・・落ち着くんだ・・・・。」

  ハーヒューハーヒュー

 とりあえず深呼吸をして息を整える。
 最初は荒々しく、それがしだいに落ち着いていく。

「はあ、はあ、・・・よし。」

 とりあえず平常な状態にはなった。しかし・・・・・・

「いったい何なんだ。いったいどうやったらこんな空間が出来るんだ・・・・・・」

 いくら考えても答えはでない。だが今は休もう。精神をごっそり持ってかれすぎた。

「ふう・・・・・・・・・・・ん?」

 ちょっと休もうと目を瞑った時、あることに気が付いた。

「・・・・これは、魔力の残りカス?」

 今まで、慌てていたせいで気が付かなかったが、どこからか魔力の残りカスが流れて来ている。

「・・・・こっちからか・・。」

 魔力の残りカスを頼りに、道を進んでいく。そして、それは

「地下・・・・か。」

 あまり行きたくない、と言うのが本音だった。しかしこの紅魔館の状況の答えになる物がある可能性もある。
 ・・・・・進むしかない。それが魔理沙の答えだった。

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 道は以外とあっけなく終わった。
 ただ先にあるのは

「地下室か。ここが魔力の根源だった場所っぽいが・・・・・。しかしこれは・・・・」

 中に入った瞬間、お出迎えは頭骨がしてくれた。

「何て殺風景な場所だ。」

 いっそとんでもない。まあ、先程に比べればどうってことない。
 しかしなぜか・・・・・この部屋は時間の流れというのが存在していない感じがする。

「いや、部屋全体が死んでいると言ったほうが正しいか・・・・。」

 わからないな、最近まで使われていたようだが、誰かを幽閉していたのか?
 その時、魔理沙はとある物に目がいった。
 それはベットに付いている棚に一つだけあった。

「これは何だ?何々・・・・フランドール・スカーレットの日記って、スカーレット!?」

 レミリアと同じ名前。その事が魔理沙には大きな印象を与えた。

「あいつ、姉妹がいたのか。何で言わなかったんだか。・・・・ちょっと中身を拝見するか。」

 ペラっと、日記を開ける

      ○月×日
 今日はお姉様と一緒に食事をした。その後色々とお話をして気付いたら寝ていたみたい。ベットで寝てたから、多
分お姉様が移してくれたんだね。やっぱり私はお姉様が大好き。

「・・・・お姉様ってことは妹か。」

ペラ    △月□日
 今日はお外の話をしてもらった。そう言えば私は外に出た事がない。お姉様と一緒に外に出てみたいけど、私には
『ありとあらゆるものを破壊する能力』をもつからだめだって。でもいいや、こうやってお姉様が居てくれるならで
も血一滴も残さず消し飛ばしちゃうのは何とかしたい。

「・・・・『ありとあらゆるものを破壊する能力』か。そりゃ確かにヤバイな。」

その後もページをめくってみたが、ただその日あった事を書いてあるだけだった。書いてある日もランダムである。

「これじゃ、あまり期待できそうにないな。」

 ほぼ諦めかけて、つい最近の出来事はどうなのかと思い、ページをめくってみた。

ペラ    ◎月▽日
 今日はやたらと音が五月蝿かった。しばらくして咲夜が来て、事情を説明してくれた。なんでも霧を消すために二
人の人間がやって来たとか。一人は博麗神社の巫女、博麗 麗夢。そしてもう一人は魔法使いの霧雨 魔理沙。お姉
様が負けたなんて信じられなかった。こいつらムカツク。

ペラ    ◎月▲日
 近頃お姉様が博麗神社に入り浸ってるらしい。他にも、魔理沙が図書館に来るようになったとか。まあ別にそんな
事どうでもいい。お姉様近頃来ないなぁーー。

ペラ    ●月■日
 ほとんどお姉様が来てくれなくなった。何で?私何か悪い事した?・・・分からないよ。

ペラ    ●月▼日
 全然お姉様が来てくれない。今日も一人で取る食事。咲夜に聞いたら、昼間からまた霊夢に会いに行ってるとか。
何で私の所には来ないんだろう。

ペラ    ●月∴日
 辛い。私はお姉様に嫌われたの?嫌だよ。お姉様、もっと私にもかまってよ。・・・・・誰?誰が私からお姉様を
とってるの?紅魔館全員?それとも私が出た事のない外のせい。

ペラ    ●月∵日
 また今日も霊夢に会いに行ってるらしい。もう耐えられない。何で私がこんなに苦しまないといけないの?・・・
憎い、全てが憎い。もう、全てを壊してしまいたい。ああ、そうだ。別にいいじゃないか壊しても。私にはお姉様だ
けに居て欲しいんだから

ペラ    ●月★日
 壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ
、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ
、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ

   ぞくっ

 読んでいて思わず身が凍りそうになった。
 もはや最後は呪文じゃないか。
 ・・・・・・まてよ。この妹君はありとあらゆるものを破壊する能力をもっている。
 もしかしたら

「まさか、紅魔館内の人、全てを破壊したんじゃ・・・・・」

 不可能ではない。血一滴残らず破壊してしまうなら、紅魔館内に死体一つなかったのも頷ける。
 全てを破壊し、外に出た。そう考えるのが妥当だろう。
 もし中に残っていれば、先程から叫んでいる私に気付くはずだし。
 しかし、パチュリーやメイド長、そして姉であるレミリアがかなわなかったとなると事態は深刻だ。
 ・・・・・ちょっとまて。私は今外に出たと行ったな?なら何処に行く?妹君は外に出た事がない、なら行く宛て
などないはずだ。・・・考えろ。自分ならどうする?もし私が妹君の立場ならどうする?レミリアには居て欲しい。
つまりこの時点ではまだレミリアを慕ってる。私が破壊するとすれば、やはり自分の大切な人を奪った奴。紅魔館を
破壊し終わったなら次は・・・・・・・・・・

「霊夢!そうだ、ここ最近レミリアは霊夢に会いに行ってばかりだった!つまり一番妹君からレミリアを奪ってる奴
という事になる!霊夢が危ない!!」

 時間が無い!急がなくては!!













 かつてこの世に生まれた時、人は誰もが見えない足枷にして呪いのような物を背負っている。それは半永久的に自
分に纏わり付き、それが本人を苦しめ楽しませる。人は生まれた時から生ではなく死に向かって生きている。そこに
あるのは早く死ぬか遅く死ぬかの二通り。人と言うのはよく出来ている。人が生きているのは死ぬのが怖いから、は
っきりいって生きていると言うのは、ただ死と言う沼に浸かってしまわないよう暴れているだけだ。そこに何の輝き
がある?何の魅力がある?むしろ醜すぎて感動してしまう。

―――――――――――――――――――――――チガウ

 人は平等?冗談、妄想もいいところだ。平等何て言葉、そんなの当てはまるもんか。誰もが大富豪になれる?誰も
が幸せになれる?まさか、そんな訳ない。元より人は生まれた時から平等なんかじゃない。自分が生まれた家・親・
地域・環境・財産・病気、これら全てがまったく同じなんて事ありえるのか?否。人それぞれ全てが異なっている。
自分のスタートラインはまったく違うんだよ。どこで、どんな風に生まれたのかによって全然違うんだよ。だから人
は努力する。努力?ふん、何て便利な言葉なんだ。無理だったらもっと努力しろ、努力すれば何とかなる、努力すれ
ば願いが叶う。絶対にありえないね。さっきもいった通り、スタートラインはみんな違う。そこには、努力したって
埋める事のできない溝があるんだと。ただそれにちょっと近づく事ができるだけ。誰もがみんな同じに成る事は出来
ない。結局人は、生まれた時から何に成るかと言う選択肢は限られている。あの人はこんなのに成れた。だからとい
って自分は成る事はできない。だが相手にとって、自分が成れた事は成る事が出来ない。そこに何の平等がある?そ
う、それこそが誰もが持つ平等なき平等。

―――――――――――――――――――――――ヤメロ

 人は生きている内に、罪を犯すだろう。そしてそれは罰によって洗い流される。だがふと思う。本当にそれでいい
のか?罪を犯しても、犯された方はあいてが罰を受けただけで満足か?そんなわけない。私なら罪を犯されたなら、
償わず罪を抱いたまま溺れ死ねと言ってやる。そうでなければ気が済まない。償っただけで私が受けた苦しみが癒さ
れる事はない。それは自分の心を根城にし、どんどん増殖するだろう。そしてそれが心という器を零れた時、私は罪
を犯す。そして罰を受ける。あれぇ?何か矛盾してるな。そう矛盾。矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛
盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛
盾矛盾矛盾。そう、世の中結局は矛盾で出来ているんだ。自分が正しいと思った事が相手にとって正しくない。だが
相手にとって正しい事は私にとって正しくない。そこに何の間違いがある?だいたい真に正しい事とはいったいなん
だ?そうだ、結局は自分が正しいと思った事が正しいんだ。人は常識と言う概念に囚われすぎている。ならどうした
らいいかって?簡単、壊れちゃえばいいんだよ。そうすれば自分のした事する事全てが正しいと思えるようになる。
何にも縛られる物がなくなり、はじめて自由になれる。

―――――――――――――――――――――――ウルサイ

 壊れてこその自由。いったい何を躊躇う必要がある?それだけの事で幸せになれるのだから、安い物だ。あなたも
壊れちゃえば?そしたらすっごい楽になれるって!ほら、無理しないで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・イ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ル・・・・・・・・・・・
・・・サ・・・・・・・・・・・・・・・・・ウル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サイ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウルサイ・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「うるさーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!」

 頭を振り、叫ぶ事により頭に響いてくる呪歌を払う。最後に残った理性全てで払いのける。

「・・・・・へぇーーー、あれを振り解くなんてたいしたものね。なるほど、流石はお姉様に勝ってるだけの事はあ
るね。」
「・・・・そう、それは・・・・どうも・・・・・・ありがと・・・・ぐっ!」

 苦しい。体中から悲鳴を上げている。体が動かない。
 正直言って、今の霊夢は死人とたいして変わらない。

「まあ、振り解くのが精一杯だったみたいね。はっきり言って、体は健在でも中身はからっぽね。そんなんじゃ、次
の攻撃を回避する事は不可能。」
「・・・・・・・・・・・・」

 霊夢は何も答えない。むしろ、答えられる力がほとんどない言った方が正しいだろう。
 だが、それでも聞いておかなければ。

「・・一つ聞かせて。」
「ん、何?」
「さっき私に見せたやつ、・・・・・あれはあなたの・・・・・・・」
「ええ、そうよ。あれは私が生まれて495年間味わったもの。結構きつかったでしょ?私が味わった苦しみ、悲しみ、
寂しさ、痛み、醜さを表したものよ。私が495年間紅魔館に幽閉されて、悟ったものと言ってもいい。」
「・・・495年間・・・・・・」

重い、重すぎる。人間では決してありえない年月だ。
しかしそれにしても

「・・・なぜレミリアの妹であるあなたが幽閉されてたの?」

 そこがおかしい。紅魔館の主であるレミリアの妹が、なぜ幽閉されていた?
 何かやらかしたのか?それとも・・・・・

「あなた自身、幻想郷にとっていけない存在・・・・」
「そこまでよ。」

フランが話しを無理矢理区切る。

「それ以上の話は却下。あんまり深く考えないで。あなたには何も知れないまま死んでもらうんだから。」
「・・・・・ふん、自分の都合に合わなければ話を逸らすか。ほんとタチ悪いわね、あなた。本当に何も教えてくれ
ないんだから。これじゃ、すっごい心残りね。もっとも、それがあなたの企みなんでしょうけど。」
「その通りよ。自分がなぜ殺されるのか、なぜ殺されなければならないのか分からないって、すっごい辛いでしょ?
私はね、私を苦しめてたもの全て・・・・・いや、私を生んだこの世界全てが憎いの。だから破壊つくしてやる、全
てをね。全てを絶望の底の底に叩きつくさないと気が済まない。」
「・・・自分かってもいいところね。」
「悪い?結局は世の中自分の好き勝手したもの勝ちなんだよ。さて、そろそろ第二ラウンドはじめようか。さっきと
同じ攻撃をして上げる。今度は振り解く事ができるかな?」
「っ・・・・外道が・・・」
「最高の褒め言葉だね。そんな言葉いちいち気にするようじゃ、こんな事しないって。・・・さあ、いくよ!!」
「・・・くっ・!」

思わず目を瞑る。
それは逃れられない恐怖からか、それともフランの悲しみを見たくないからか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ音が聞こえる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・目蓋に光が見える
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜだ?

恐る恐る目を開ける。そこには・・・・・・・・・・・・
――――――――――――――――――――――――眩い光と
――――――――――――――――――――――――その光に飲み込まれていくフランが見えた












「!!きゃああーーーーーー!」

 吹き飛んでいく、私を殺そうとしたフランが吹き飛んでいく。
 突然の不意打ち。回避できる道理はない。

「・・・・・これは・・・」

 自分の傍に居たフランの姿はなかった。かわりに

「おい、霊夢!大丈夫か!?」
「・・・・・まり・・・・さ?」

 自分のよく知る人が傍に居た。

「ああ、そうだ!しっかりしろ!生きてるな!?」
「・・・まったく、死んでたらこうやって話してないわよ・・・。」
「・・・・そうだな、無事でよかったぜ。」

言いながら、霊夢の上半身を起こす。

  ぞく       

 冷たい。思わず本当に生きているのかわからなくなるほどだ。

「・・・・随分酷いな。体はどうって事ないようだが・・・・・生気がほとんどないな。」
「・・・まあね。」
「あんま喋んな。この状態なら、動かしても大丈夫だな。私の家にいって安静に・・・・・・」

                  酷いな、いきなり攻撃してくるなんて。

「!!?」
「まあ、気付かれる前にやるのは基本だからしょうがないか。」

 前方には、ほとんど傷のないフランがいた。

「おいおい、冗談だろ・・・・・。マスタースパークをもろに受けたはずなのに・・・・かすり傷程度なんて。」
「そうだね、すばらしい威力だったよ。でも私にはね・・・・」
「どいて魔理沙!霊符『夢想封印』!!」

 霊夢が躊躇なくスペルを展開する。
 霊力が固まって出来た光輝く光球がフランに向かっていく。
 なのに、フランは

「どう言うつもりだ?まったく逃げる気配がない。」
「・・・・・・・・・・・・・・」

 逃げるどころか、まっすぐそのまま進んで来るではないか。
 そして、夢想封印が命中しそうになったとたん

「「なっ!?」」

 思わず目を疑った。
 フランが消えたのだ。いや、消えたのではない。コウモリになったのだ。
 そして

「お、おい、夢想封印が素通りしていくぞ!?どうなってんだ!?」
「私が知るわけないでしょ!!」

 夢想封印はそのままフランの後ろへと飛んでいってしまった。
 通り過ぎたのが分かると、コウモリが再びフランの形へと戻っていく。

「残念でした。実は私ね、ああやってコウモリになる事で特殊攻撃、言うならスペルカードを当たらなくする事がで
きるの。最初のあなたの攻撃は不意打ちだったせいで、コウモリになるのが遅れた。だからかすり傷を負ってしまっ
た。でも、見ての通り、スペルが使われたのを見てしまえば攻撃は受けない。」
「・・・・・へ、反則もいいところだぜ。決め球であるスペルを無効化するなんて・・・・・。」
「残念でした。さて、次は何を見せてくれるのかな。」
「・・・くっ・・・まり・・」
「ちょっと黙ってろ。あいつに聞きたい事があるんだ。」

 霊夢の口が魔理沙に塞がれる。

「んぐ・・・・ぷは・・ちょっと、聞きたい事っていったい・・・」
「いいから休んでろ。まったく、無理して夢想封印使いやがって。」

 なんですって!と怒る霊夢を無視して、魔理沙がフランの方を向く。

「一つ聞く。おまえの名前はフランドール・スカーレットか?」
「ええそうよ。私に何か用でもあるの?」
「ああ、あるな。直で言うぜ。紅魔館のみんなはどうした?」

 フランの顔が一瞬変わる。

「何のことかわからないわね。」
「とぼけんな!!なら何で紅魔館には誰もいないんだ!何で図書館に血痕が残ってんだ!」

 黙りこくってしまうフラン。
 霊夢には、二人の会話の意味がまったくわからなかった。

「ちょ・・・魔理沙、それどういう事?だいたい、何であなたが彼女の事を・・・・」
「・・・・私はさっき紅魔館を訪れて来た。ちょっと本を借りたかったからな。」
「黙って持っていったら窃盗よ?」
「今はそんなの関係ない。私が紅魔館に入った時、そこには誰もいなかった。美鈴・パチュリー・咲夜、そして姉で
あるレミリアさえも。まるで初めから誰もいなかったように。これに見覚えはあるだろ。」

 そう言って、魔理沙が懐から一冊の本を出す。

「!!それは・・・・」
「ああ、おまえの日記だ。これを読んで、『おまえにありとあらゆるものを破壊する能力』がある事、そしてそのせ
いで幽閉されていた事も知った。そして、レミリアを取った霊夢のことを・・・・・」
「ええ、怨んでるわ。霊夢だけじゃない、紅魔館全員を怨んでた。・・・だから・・・・」
「だから殺した。一番大切に思っていたレミリアを取られた事をネタにして。」
「ちょ・・・・ちょっとまって、じゃあフランが私を殺しに来た理由って・・・」
「ああ、レミリアを取られた事への嫉妬だ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間違いではないわ。」

 それっきり完璧に沈黙をしてしまったフラン。
 だが、霊夢は魔理沙の説明を聞いて合点がいった。

「そうか、だからレミリアはフランを幽閉していた。『ありとあらゆるものを破壊する能力』を持つフランが外に出
れば・・・・・」
「ああ、かならず幻想郷に大きな被害を与える。なにせ血一滴残さず吹っ飛ばすんだからな、たまんないぜ。」
「ええ。でも外に出れない事により、フランの生活の幅が限られてしまった。そのため、フランが心の奥底から信用
できたのは、レミリアのみ。」
「どれだけレミリアの事を思っていたかは日記を読んでよくわかった。だが、その気持ちが素直すぎたために、レミ
リアを取られた事による嫉妬が大きくなってしまった。それで、片っ端から殺したんだ。・・・・だが一つ疑問が残
る。フラン、レミリアはどうした?」
「・・・・・・・お姉様?」
「ああそうだ。おまえにとって一番大事な家族であるレミリアはどうした?あいつを殺す理由何てないはずだろ?レ
ミリアを取られた事への嫉妬が理由の復讐なら、レミリアに手は出さないはずだ。なのに、レミリアは紅魔館内に姿
がなかった。」
「・・・ちょっとまって。そう言えばフランさっき・・・・・」
「・・・・ふふ、あはははは」

突如、フランが笑い出した。

「あはははははは、ふははははは!あーはっはっはっはっはっは!!!!」

 霊夢と魔理沙の体に寒気が走る。
 あの笑いは、可笑しい・楽しい・嬉しい・悲しいといった感情全てが含まれている。

「・・・っ・・いったい何にたいしてわらってんだ!?」
「あーはっはっはっはっは!!・・・ふう。霊夢、さっき言ったわよね?もうお姉様はこの世界にいないって。」
「ええ、・・・てことはまさか・・・・・」
「私にとってお姉様は大事な人だった。ええその通りよ。今でもその気持ちは変わらない。私はお姉様を愛していた
もの。だから私からお姉様を取った奴等全員壊してやったの。そうすれば、お姉様はまた私だけを見てくれるって。
・・・なのに、なのに結果はまったく逆だった。お姉様は私の気持ちを分かってくれなかった。だから壊してやろう
と思った。手に入らないなら、壊してでも手に入れてやろうと思って。・・・・でもね、途中からそんな事どうでも
よくなったんだ。」
「な・・・・に・・?」

 予想外の答えだった。

「なんかさ、お姉様が欲しいって感情が薄れてきちゃったの。そして気付いたら、お姉様を壊したいって感情に変わ
っていた。可笑しいでしょ?もし私と同じ苦しみをお姉様が味わったら、どれくらい持つかなって。どんな顔をする
のか、どんな血声を上げるのか想像しただけで愉しくなっちゃって。霊夢を襲いに来たのも、ただそれだけなの。お
姉様を取られた嫉妬・憎しみなんて、ただの口実。ただ、私の知ってる人がいなかったから、よくお姉様が遊びに来
てるここに来ただけ。ただ私は人生を愉しみたいの。誰にも、何にも縛られる事のない人生を歩みたいだけ。せっか
くの命なんだから、自分の愉しい事をして過ごさないとね。この世界を怨んでるから、だからそれを壊す愉しみを味
わいたい。」

 そのセリフに一切の迷いはなかった。
 彼女は間違いなく人を壊す、という事を純粋に愉しんでいる。
 そうか、彼女はもう・・・・・・

「・・・・苦しみに耐え切れず、心が壊れてしまったのか・・・・・。」
「ハイ、そこ違う。壊れたんじゃなくて自分から壊したの。勘違いしないでよね。」

 それが人を壊す事への、迷いがない証拠か。

「・・・・くそったれ。最悪の組み合わせだな。」

 『ありとあらゆるものを破壊する能力』を持つ者が、それを愉しんでるとなると幻想郷全てが破壊される危険性が
ある。

「さてと、ちょっと話しすぎちゃったな。絶望の底の底まで叩き落そうと思ったけど、あんたたちに厭きたから、も
う要らないや。」

 フランの周りに禍々しい力がこもる。

「・・・フラン、止めなさい。今ならまだ間に合うわ。だから・・・・」
「五月蝿いなぁ。私は自分の娯楽のためにやってるんだから、止めるわけないでしょ。」
「・・・・くっ・・」

 駄目だ、もう本当に私たちを殺す気だ。

「・・・・魔理沙、あなただけでも逃げて。魔理沙のスピードなら逃げ切れるかもしれないし。」
「お断りだな。おそらく逃げきれないだろう。遅かれ早かれ私も殺される。それに、おまえを置いて逃げるのだけは
御免だぜ。何のために此処に来たと思ってる。」
「・・・・魔理沙・・」

 嬉しかった、だがそれ以上に罪悪感を感じていた。
 全て自分のせいだ。無理に夢想封印を撃ったせいで、自分の体に相当の負荷をかけてしまった。それが祟って、さ
らに体を動かすのが困難になっていた。

「美しい友情だね。でもそれだけに儚く、惨め。この世の中、そう言った絆ほど脆くて壊れやすい物はない。霊夢を
置いていけば、少しでも長く生きれるかもしれないのに。」
「だったらどうした?私は友人を見捨てて生きるくらいなら、死んだ方がましだ。」
「そう、まあいいけど。そっちの方が手間が省けるから。その友情が呆気なく壊す愉しみもいいかもしれないし。逃
げるにしても、今の生気がほとんどない霊夢が動く事はできない。さっき無理して夢想封印を撃ったせいで、より体
への負担も増えてるだろうし。」

 やはり気付いていたか。魔理沙が霊夢を抱えて逃げるという案もあるが、それでは駄目だ。
 今後ろを見せれば、一瞬で殺される。

「関係ない。生きているかぎり、どこまでも足掻ききってみせるさ。」
「その意思お見事。それだけは褒めて上げる。それじゃ、精一杯無駄に足掻いてよ!!」

 そう言って、フランが二人目掛けて迫ってくる。

「くらえ、『マジックミサイル』!!」

 魔力を凝縮したミサイルをフランに飛ばす。
 しかし

「こんなの、避けるまでもない!!」

 フランがちょっと力をいれて触れただけで、あっさり相殺されてしまった。

「くっ、だったら『スターダストレヴァリエ』でどうだ!!」

 今度は、魔理沙のスペルを展開する。
 しかしこれも

「残念、スペルは効かないって、さっき言ったでしょ!」

 コウモリに化けたため、またしても素通りしてしまった。
 そしてそのまま、二人のすぐ目の前まで迫って来た。

「くそ!イリュージョンレ・・・・うわぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!」
「きゃああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!」

 次の攻撃は、発動することが出来なかった。発動するより先に、フランが二人を捕らえた。

「捕らえた。もう逃げる事も足掻く事も出来ないよ。」

 そのまま霊夢と魔理沙の首を掴みながら地面に押し倒す。

「・・ぅ・・くそ・。」
「残念だったね。まあがんばった方だよ。どんなに足掻いたって、結果は変わらないんだから。」
「ぅぅ・・・・魔理沙・・・」
「すまない霊夢。・・・結局おまえを守りきれなかった・・・・」
「こんな状況でもまだ友人の事を思うなんて、すばらしいね。まさかここまでとは思わなかった。その美しさ、尊敬
に値するよ。やっぱ、そうじゃないと面白くない。」
「・・・へ・・それはどうも。何かオマケでもくれるか?」
「そうだね、褒美として一緒に壊して上げる。あの世でも一緒にい居られるようにね。」
「・・・それは有難いはね・・・・・。でもね、何でも自分の思い通りになるなんて思わない方がいいわよ。」
「ならないんだったら、無理矢理力で捻じ伏せるまでよ。」
「そうならないから、霊夢は言ってるんだぜ?」
「なる。今までそうだったんだから。それにしても疲れたな。そろそろ終わりにしましょ。それじゃ、さようなら。
二人して無に送って上げる!!」
「「・・・くっ・・」」

 二人して目を閉じる。
 フランが力をこめ、いっきに二人が壊さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・れない。

「!!?」

 あまりの事に動揺を隠せないでいるフラン。
 再度挑戦するも、結果は同じだった。
 霊夢と魔理沙も、何がどうなっているのかさっぱり分からない。

「そんな、どうして!?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――それはね

「・・・・え・・・・」

 いきなり声が響いてくる。
 この声は

「お、お姉様!?」
――――――――――――――――私があなたの『ありとあらゆるものを破壊する能力』の運命を操っているからよ


















「「レミリア!?」」

 霊夢と魔理沙が同時に叫ぶ。
 しかし、どこにもレミリアの姿がない。

「いったい何処に居るの、お姉様!?」
『ここよ、あなたの頭の中。』

 フランの頭、そう言えばさっきからそこから声が響いてくる。

「レミリア、生きてたのか・・・・」
『かってに殺さないでくれる、魔理沙?』
「でも、さっきフランがこの世界にいないって・・・・・」
『その表現は間違ってないわね。確かに私はこの世界に居ない。今わたしが居るのは、フランが作り上げた独りと言
う世界。今こうやって話せるのも、フランと私の意志を同調させてるからよ。』
「そうだったのか・・・・」

魔理沙が感心したような声を上げる。しかし一人納得のいかない者もいる。

「・・・どう言う事?いったい何時・・・・」
『さっき言ったでしょ?『ありとあらゆるものを破壊する能力の運命』を操っていると。フランは私を凌ぐ力を持っ
ている。だから単純な勝負じゃ勝てないと悟ったの。勝つためには、その能力を使えないようにするしかなかった。
それを掴むのに時間がかかって、その他がおろそかになったけど。』
「・・・・随分あっさり倒れてくれたのは、そのせいだったの・・」
『ええ、そうよ。あの時、蜘蛛の糸ぐらいの細さしか掴めなかった運命。でも知ってる?蜘蛛の糸って見かけによら
ず、結構強いのよ。それを少しずつ手繰り寄せていき、ようやく自分の物にする事が出来た。』
「そのせいで、私の力が出せないのか。自分の能力とは、生まれ持ってるだけに自分の血みたいなもの。それを操っ
たと言う事は・・・・」
『今や、あなたは私の制御下にあるって事。自分の意思でまともに歩く事も出来ないはずよ。』
「ええ、さっきから体がうまく動かせない・・・・・・・・」

 完璧してやられたわけだ。
 もう少し、レミリアがあっさりやられた事に、疑問を持つべきだった。

「おまえが無事でよかったぜ、レミリア。でも、他の者は・・・・」
『・・・・・死んだわ。いえ、私が殺したといった方が正しい。』
「それはいったい・・・・」
『私が縛られてる世界に居たのは私・咲夜・パチュリー・美鈴の4人。でも彼女たちは私が殺した。もうちょっと強く
縛っておくべきだったわね、フラン。あの程度ならすぐに解けたわ。あなたの思い通りにさせはしない。』
「・・・・・・・・・・・・・・」
「な・・・・何でそんな事を!?」

 わけが分からない。なぜ生きていたのに殺す必要がある?

『・・・・壊れてしまったのよ。』
「壊れ・・・・た・・・?」
『ええ、そうよ。彼女たちには、フランの苦しみに耐えれなかったの。そのため、彼女たちは心が壊れてしまった。
仮に、無事脱出しても、もう二度と復活する事が出来ない。そんな状態なら、死んだ方がましでしょ?』
「・・・だからって、そんなの・・・・」

 霊夢が悲痛の声を上げる。

『ごめんなさい。でもね、死による救済だってあるの。』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 霊夢は答えない。それは間違っている、なのに否定しきれない。

『悲しまないで。それが最良の選択だったの。そして、お願いがあるの。フランを殺してちょうだい。』
「「んな・・・・!?」」
「お、お姉様!?」

 あまりの事に、今度は3人して動揺させられる。

「な、何言ってるのよ!そんな事出来るわけないでしょ!?」
「そうだぜ!何も殺さなくたって・・・・」
『無理よ。あなたたちだって気付いてるんでしょ?フランを止めれる方法は殺すしかないって事に。もしここでフラ
ンを生かせば、幻想郷全てが壊される危険性がある。今のフランなら、コウモリになり攻撃を回避する事も出来ない
わ。これは、フランを殺す最初で最後のチャンスなの。そして、それが出来るのはあなたたちだけなの。』
「・・・お姉様本気!?もし、私を殺せば、意識を同調させているお姉様だって一緒に死ぬ事になるのよ!?」
「「!!!!」」

 その事実が、さらに二人を追い込む。
 もし、意識を断絶すれば何の縛りのなくなったフランを殺す事が出来なくなる。つまり、フランを殺すためには、
レミリアがずっと意識を同調させてなければならない。フランを殺す、それはレミリアを殺すのと一緒なのだ。

『わかってるわ。でも、これは私のせいで起こった事件。私には命をかけてあなたを止める義務があるの。霊夢、魔
理沙、迷わないで。あなたたちには幻想郷の未来がかかっているのよ。』
「・・・くっ・・!!」

 魔理沙が身構える。その手にはスペルカードがあった。

「ちょ、魔理沙、まさか殺す気なの!?」
「それしかないんだろ・・・・・・。なら・・・やるさ!」

 魔理沙は本気だ。

「ふざけないでよ。まだ何か方法があるかもしれ・・・」
「だったらその方法を今すぐ見せてくれよ!!」
「それは・・・・」
「そんな方法ないんだろ!?だったら考えている暇はない!霊夢、おまえの気持ちはわかる。だがな、ここであいつ
を止めなかったら誰が止めるんだ?レミリアの努力を無駄にするわけにはいかない。・・・・・・・これ以上、犠牲
者を出したくないんだ・・・・・」

 魔理沙の目から涙がこぼれる。
 辛いのは一緒なのだ。

「魔理沙・・・・」
「私だけでもあいつを殺す。そうしなければみんな死ぬんだ・・・・・。」
「・・・・・・・私もやるわ。」

 霊夢が震える足を押さえ立ち上がる。

「お、おい霊夢、無茶をするな。」
「これぐらい大丈夫よ。あなたの言う通り・・いずれ誰かがやらねばならない事なら、このチャンスは逃せない。」

 霊夢も懐からスペルカードを出す。

『・・・・ありがと。霊夢、魔理沙。』
「っ・・・止めてお姉様!やっと、やっと自由になれたのに・・・」
『それは無理なお願いよ。霊夢、魔理沙やって!!』

 一瞬、躊躇する二人。
 だが意を決して、レミリアの声に答えるようスペルを展開する。

「恋符『マスタースパーク』!!」
「霊符『夢想封印』!!」

 迫り来る光。今のフランにそれをかわす術はない。

「・・・・お姉様は最後まで私を裏切るの・・・・・」

 フランが涙をこぼす。
 破壊に囚われた悪鬼が、今やただの子供のように泣きじゃくっていた。

『ごめんなさい、フラン。あなたは何も悪くないのよ。全ては私のせいなんだから。・・・・フラン、一つだけ信じ
てほしいの。』
「・・・なに・・・よ・」
『今さら言っても遅いって事はわかっている。でもね、私はあなたと一緒に死ねて嬉しいと思っている。またこの世
に生まれたなら、あなたと一緒でありたい。そしてこれだけは私の偽りの無い真実。フラン、私はあなたの事を



―――――――――――――――――――――――本気で愛していた―――――――――――――――――――――
 その時フランはどんな表情をしていたのか?
 光によって見えなくなっていた霊夢と魔理沙に、それを知る方法はない。
 ただそこにあったのは死による救済と、幻想郷が救われたと言う真実のみだった。
 光が収まった時、それが二人の全てだった。











 その後、私と魔理沙は疲れた体を癒し、しばらくして紅魔館へと向かった。
 レミリアの部屋には、フランが死んだ事により解放された、美鈴・パチュリー・咲夜、そしてレミリアの死体が転
がっていた。
 ・・・・・・・アレ?可笑しいな、何で私はそんな危ない表現をしてるんだろ。
 普通なら、遺体が横たわっていたと言うはずなのに・・・・・・・・・。
 私たちはそれらの死体とフランの死体を紅魔館近くに埋めて上げた。
 私たちに出来る事なんてそれしかなかった。
 私たちはずっと無言だった。話したくなかったのか、話せなかったのか。
 死体を埋め終わったら、そのままそれぞれの帰路についた。その間も無言だった。
 私はルーミアの死については話さないでおいた。これ以上、悲しい報告をするのが嫌だから。
 ルーミアの墓は、博麗神社の裏に作っておいた。

 ・・・・・結局何が残ったのか?
 イヤ、残るわけがない。死ねばそこで全てが終わるのだから。
 死による救済?冗談。それは救済ではなく、一番簡単で最悪の逃げ道だ。
 私は何も守る事が出来なかった。
 本当にこれでよかったのか?
 今更考えたって遅いし、答えなんて出てくるわけがない。
 それ以前に、考えられないんだ。
 私はもう、心がカラッポなのだから・・・・・・・・・・・・・・―――――――――――――――――――――




                   









                   人は誰もが疚しい心を持っている


                   ソレは願いであり希望にして欲望


                       人は生きてる間


                   ソレに苦しみ続けなければならない


                       そこにあるのは


                    ただ負けるのが早いか遅いかだけ


                     人がその苦しみに耐え切れず


                       人がソレに負けた時


                     はじめて壊れてしまうのだ


                     壊れてしまえば楽なものだ


                  自分の欲望のままに生きれるのだから


                       ソレはある意味


                    幸せな事なのかもしれない


                         ねぇ


                     次に壊れるのは・・・


                       あなたかな?
はっきり言います。この作品は唐突かつ、矛盾してます。
まあ、それをメインに書いたわけですが・・・・・・。
壊れたフランには、そう言ったのが良いと思いまして。
前後で会話がなりたっていないのは、わざとです。
目先の事が全てのフランにとって、その場で考えついた事が答えです。ついさっき考えていた事も、今の前では一瞬で消えうせます。
これは、自己解決で書いた作品ですので、過去最悪の作品かもしれません。
無駄に長く、面白くない。暗い系なのに怖くない。
私はどうやら、人を魅せる文章が書けないようで。(誰か教えてください)
こんな面白くない文章を最後まで読んでくれたかたがいたら、本当に申し訳ありませんでした。
ちなみに、この文章に書かれていることを、本気にしないでくださいね?
皆さんは、心を強く持ってください。

誤字・脱字、そのオマケに感想をいただけるとありがたいです。
MSC
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コメント



0.990簡易評価
12.無評価いち読者削除
 やはりここまで壊れてしまったフランに、解決も救いもないですよね。
 フランが投げかけた波紋は、本人が死してもなお、壊れることなく霊夢たちに暗い影を落とす。結局は、フランのもくろみが成功してしまった訳か…。うーん、暗い。

 気付いた誤字(誤字指摘の方がオマケですぜ、私は)
・博麗神は一瞬にして →『博麗神社は』
・博麗神社の巫女、博麗 麗夢 →『霊夢』
・純粋い愉しんでいる →『純粋に』
・ルーミアの墓は、博霊神社の →『博麗』

 あと、ルーミア殺害の場面のようなスプラッタ的な描写が作品中でなされている場合は、冒頭部に注意書きをしておいた方が良いと思います。
 …こんな指摘を、作品投稿から一週間も後にするのは遅すぎるよ俺(滅)。
23.100メビウス削除
東方のスプラッタといえばフランなのでしょうか?
まぁどのキャラも一度箍が外れてしまえば似たような結果になるのでしょうが・・・・
絶妙なバランスを保っている幻想郷の均衡が崩れれば簡単にこんな結果が起こるというIfの世界を楽しませていただきました