Coolier - 新生・東方創想話

Ace of Cups

2004/07/07 09:11:28
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「はぁ…」
今日も綺麗に掃除された廊下を歩きながら私は溜息をつく。
そして、この紅魔館唯一の友――紅 美鈴は口を尖らせて注意をする。
その様は、私が昔居た世界でいう――イインチョウ――と呼ばれるものに大して差はない。
「咲夜さん、溜息ばっかりついていると幸せが逃げていきますよ」
美鈴の注意にはもう慣れた。それはもう、毎日毎日顔を会わせていて…私が溜息をつき、それに対し彼女が注意をする。そんな構図が成り立っているのだ。
つまりの所――最近の私は特に溜息が多いのだ。彼女に心配させる程に……。
私だって彼女に心配などさせたくない。けど、出る物は拒む事ができないのだ。
「はぁ…」
「まぁ~たぁ~」
あ~あ、また出ちゃったわ。
それに対し、あからさまに不満そうな顔をする美鈴。しかし、すぐに彼女特有の笑顔に戻る。
「溜息って、自然に出てしまいますから仕方が無いですけどね」
そして、いつも通り私をフォローする。なんだかんだでこのささやかな気遣いが、最近私の生活の糧となっている。
「ありがと。でも、いい加減この溜息とオサラバしなきゃいけないとは思っているのよ」
このまま、鬱な気持ちのままで仕事をしていたらいつ失敗するか判らない。その失敗がお皿を割ってしまうという些細なものではなく、主の身を危険に晒す事になるものであれば取り返しがつかない。レミリアお嬢様の身に危険が及ぶ可能性というのははっきり言ってありえない。しかし、万一がある。その為に、私達がここに居るのだ。そんな事はあってはならない。
紅魔館の門番である美鈴も私と同じような事を考えている素振りを見せる。
「確かに……そうですよね。どうしましょうか?」
「はぁ、どうしようかしら?」
この現状を打破するには……。
「どうしましょう?」
「気分転換する為にやる事すら、パッと思い浮かばない時点で相当疲れているのかしらね」
そうこうしている内に、私達は厨房に着いていた。
「ひとまず今からはお喋りじゃなくてディナーを作りましょ?」
「――そうですね。……けど、ぼーっとして包丁で指を切らないで下さいね。咲夜さんの血が料理に入ってもこのお嬢様達は全く文句は言わないでしょうけど……」
美鈴の台詞に思わず苦笑して、私は彼女と一緒に料理を始めた。
その間、溜息をつき指を切るたびに美鈴からお叱りの言葉を受けてしまった。



夕食が終った後、私達使用人も食事を済ませ残った雑務を終らせた。そして――
「おっそいわねー…」
私は大浴場に居た。美鈴を待ちながら…。
弁明しておくと、こんな夜更けに美鈴と密会ではない。決して、浴場の中であんな事やこんな事をするわけでもない。
これは、所謂――――『女同士の裸の付き合い』という奴だ。
「……結局、それじゃ弁明出来てないじゃない。というか、私ってば誰に弁明しているのかしら?」
そんな事はどうでもいいんだけどね。
そして、浴場入り口前に向かって走ってくる一つの影――美鈴。
「ハァハァ……すみません、部下に命令出していたら遅れてしまいました」
「仕事だからしょうがないわよ。けど、廊下は走らないでくれるかしら?せっかく掃除したのに埃が舞ってしまうわ」
「ご、御免なさいっ!!」
「別にいいわ。掃除なんて大した労力じゃないしね――それじゃ入りましょ?」
そう促して、私と美鈴は中に入っていった。



自分を認識した後、いつも美鈴の裸体を見る度思う。
「世の中不公平ね」
「何か言いました?」
「なんでもないわ」
そうは言っているが、私の目線は美鈴に向けられたまま……。視線を向けられた当の本人は身体を洗った後に、長い髪を洗っているところだった。
身体や髪の泡を流す度、水滴は美鈴の潤った肌を滑らかに――服を着ていては認識できなかった身体のラインに沿ってすべり滴り落ちる。さらに水滴と灯りによって髪は艶やかに光っていた。
まさに水も滴る良い女とはこの様を言うのだろう。
そして、再び湯に浸かっている自分の身体を眺める。
「不公平……ね」
きっと私の身体が成長中だったり、戦闘能力の影響で天は二物を与えていなかったりと様々な理由に違いない。そうだ、きっとそうだ。そうに違いない――そこまで、自分を卑下するほどスタイル悪いわけじゃないけどね。単に比較対象が殿上人なだけ…。
そんな美人が身体と髪を洗い終わり、私の横で全浴をする。
「ふはぁ、気持ちイイですねぇ~♪最近、毎日毎日これだけが楽しみで……って、咲夜さん?私をジロジロ見てどうかしました?」
「え?」
しばらくの間ずっと眺めていたようだ。
慌てて私は目を逸らした。
「な、なんでもないわ」
そうは言うものの脳のベクトルは別の方向へ向かっていた。
そして……少し悪戯したくなった。というよりは、好奇心。
「ここでも充分極楽ですけど……でも、たまには温泉にも行きたいですよね~……って、背後に嫌な気配が……」
すぃーっと湯を掻き分けて美鈴の背後を取り――

ムニュ

――っと、美鈴の双丘を揉んだ。
「なっなっ!☆$◇♀℃§£¢▽!?」
声にならない美鈴の叫び。そして、私の手から逃れ私から約五メートルぐらいの距離まで離れる。
「いきなり何するんですか!!」
「身体測定よ――ある一部分限定のね♪」
そう言って、にんまり笑いながら手をわきわきさせる。
その妖しい指の動きに対し、美鈴は瞬時に手でガードをとる。
「もう、やんないわよ」
私は、美鈴の警戒を解くために指の動きを止めた。しかし、そう簡単には信用などしてはくれないのが世の常。と、私の人間性。
「でもぉ。咲夜さんイジワルだし……」
「もう大丈夫だってば」
「そうですか…?」
半信半疑でまた私の傍にやってくる。なんというか、警戒しながら寄り添ってくる辺りが小動物っぽい。
そして、すぐ傍まで到達するとおもむろに深い溜息をついた。
「何よ?」
「いえ、何でもありませんですよーだ」
あからさまに不機嫌。
「言いたい事があるなら言った方がいいわよ」
「心配するだけ損しちゃいましたよ、もう」
心配?……あぁ、夕食前の会話ね。
もしかしたら、美鈴は仕事中も私の心配してくれたのかしら?
けど、
「心配してくれてありがと。けど、仕事には集中しなさい」
「はい……すみません。けど、心配させる方にも責任はありますよ。料理中もここに来てからもぼーっとしてるし……」
料理中にぼーっとしているたのは認めるけど、後者の方は少し違うわよ。と、言おうとしたが止めた。さらに、そんな事を思い出してしまった為にまた美鈴の身体に目がいってしまった。
「?」
「はぁ……羨ましいわね、貴方の身体」
「!?」
この言葉に過敏に反応し、美鈴は先ほどと違い片手で胸をガードをしもう片方の手で風呂桶を使い攻撃態勢を取った。
しかし、今回は私に悪戯する気などない。
「貴方に対しての純粋な私の感想よ。別にやましい気持ちはないわよ」
「はぁ……私ってそんなにスタイル良いですか?」
美鈴が純粋な目で訊ねてきたので、私は――

1. 美鈴の頬をつねる。
2. 美鈴の腕を極める。
3. 美鈴の二の腕を触る。
4. 美鈴と私の影を重ねる事によって、身を持って教える。

………3と4はなんなのよ!?
結局。
「ひたひぃ~、ほをふねらないでくらはい~」
「アンタが喧嘩売ってくるからでしょう?」
お餅のように、うにゅーと頬をつねる。結構伸びた。
ある程度の時間、美鈴を虐めてから開放した。その後、子供の喧嘩のような事を湯に浸かりながらしてしまった為、二人してのぼせてしまった。
そして、体力のある美鈴に背負われ美鈴の部屋に二人して避難した。



「ふひゃあ……」
美鈴は私を彼女のベッドの上に降ろし、ベッドのすぐ横で大の字に仰向けで倒れてしまった。
「はぁぁぁ……生きてる~?」
「大丈夫ですよぉ………けど、浴場で取っ組み合いなんてやるとは思いませんでしたよ、あはは…」
「そぉねぇ……うーん、まだ身体が言う事聞かないわね……」
パチュリー様程の虚弱体質と言う訳ではないが、私は身体を鍛えているわけではないので身体の異常には結構弱いのだ。戦闘時は力ではなく、ちょっとしたトリックを用いる事によって器用に戦っている。今はそれは割愛。
それに対し、さっきまで私をひぃひぃ言って運んでくれた美鈴はもう上半身を起こしていた。
「窓、開けたほうがいいですね」
「お願い…」
美鈴はふらふらと窓の方に歩いて行き、勢い良く窓を開けた。
窓を開けると、少し冷えた風が私を心地よくした。
「気持ち良いですね」
私の気持ちを美鈴が代弁した。私はベッドの上で仰向けからうつ伏せの状態になり、窓の方に居る美鈴を見た。
美鈴は、その事が判っていたかのように半身をこちらへ向け――
「たまには童心に帰りましょうね」
――と、大人びた笑顔で私に諭した。
彼女は窓の外から降り注ぐ月光を全身に浴び、いつもとは違う雰囲気を醸し出していた。
それは月光のせいなのか判らなかったが、私が今まで見ることが無かった彼女の表情には違いなかった。
そう――私は彼女に魅了されてしまった。風呂から出たばかりの身体に月光を浴びて光を帯び、さらに私ですら気付かなかった心の奥底を見据えることの出来る、達観したその眼に――。
「あなた……」
……本当に私の知っている美鈴なの?
――と、言おうと思った瞬間、月が雲に隠れてしまった。すると、瞬く間に私の知っている美鈴が顔を出した。
「そろそろ、大丈夫ですか?」
「あ――うん。もう大丈夫」
何となく先程の出来事が夢のような気分を残しつつ、私は上半身を起こした。
そして、愚痴を漏らす。
「なーんか、貴方に今日は振り回された感じだわ」
「それなら、堪えろとまでは言いませんが溜息が出ない生活を心がけてくださいね」
と、彼女はコツンとグーで私のおでこを小突いた。
「はいはい、判りました」
「判ってくれれば良いんですけど……今日はこれで気分転換になりました?」
美鈴は明らかにちょっと何かを隠した眼で私の顔を覗いた。
質問の意図が良く判らなかったが、正直に私は述べた。
「貴方のお蔭で少しは気分転換になったわ。ありがとね」
すると、う~んと頭を捻った後に戸棚の戸を開けた。
「あっ!!」
「もしも気分転換にならなかった時用にコレを使おうと思っていたんですが……」
そこにはびっしりと詰まったお酒の数々。
お酒に関しては知識が乏しい私がぱっと見ても判るような名酒もあった。
「咲夜さんどうしましょうか?」
と、言っているが私に向けられている眼は「飲みましょう~、飲みましょうよ~」と語っていた。
「はいはい、しょうがないわね。付き合うわよ……まあ、名目は私のストレス発散だけどね♪」
「やった♪」
――あ、そうだ。
「ちょっとグラス取ってくるわね」
私は少し念じ時を止め、自分の部屋からお気に入りのグラスを2つ取ってきた。
それは片方は蒼色。もう片方は薄紅色の切子のグラスだった。
「それは?」
物珍しそうに私の手にある2つのグラスを眺める。
「これは切子って言う硝子細工よ。この二つは特に私のお気に入りよ。どうせ蒼色のコッチしか使わないから、コッチの薄紅色の方を貴方にあげるわ」
「え!?お気に入りなのに良いんですか!?」
「こういう物は観賞用じゃなくて、使った方が味が出るものなのよ……ある古人の受け売りだけどね」
「では、ありがたく受け賜ります」
私たちは互いに対となる二つの器に酌をし――
「それでは……」
「今宵の一時に……」



チンッ



硝子の触れ合う音を合図に、私達はいつの間にか浮かんでいた月と共に酒を口に含んだ。
どもです。また投稿させていただきました。

今回はあまり下ネタは起用せず……(あまりねw
純粋に咲夜と美鈴の仲を書いてみました。
私の中では『美鈴は脱いだら凄い』という憶測でありまして、こんな事になっています。実際は――どうなんでしょうかね?w

昼間では判らないけど、夜のある一時のみに綺麗になる『月下美人』を美鈴と重ね合わせてみました。結果はどうでしたか。読んでくれた皆様にも私と同じ情景が浮かんでくれれば嬉しいです。浮かばなかったら私の実力不足です、ごめんなさい。残りの足りない部分は貴方の妄想で補ってくださいw

――で。

選択肢の3と4も皆さんの妄想で補ってくださいね。
補うどころか+αが増える人もいるかもしれませんがw

でわ、また次回あれば……よろしくお願いしますね。
のりまろ
http://www28.tok2.com/home/norimaro/
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コメント



0.1420簡易評価
3.無評価裏鍵削除
フェイミはもっとすご(殺人ドール
えーと、自分も(一部)咲夜と美鈴との話を書いたから、直後でこれを見ると何か凄く違和感が。私が書いた咲夜はアレですし。アハハハハハ _| ̄|○
それはさておき、違和感抜きでこれはいいです。内容や描写はかなりいいと思いますよ。思わず想像…想像…うわ凄い違和感…_| ̄|○
どうやら私の問題ですから評価はパスさせて頂きますˋ(′~‵")ˊ
==
咲夜と美鈴…うわ想像出来ない…orz
12.無評価いち読者削除
確かにあまり下ネタではないですが……、でもやっぱりエロすぎ(笑)。
何より、咲夜の手のわきわき具合がエロい。この主張は譲れない(何)。
13.50名無し削除
もし「東方ネチョSS板」が出来た暁にはかならず4以降の選択肢を実現してくれるものと信じております。