Coolier - 新生・東方創想話

弱肉強食

2004/06/24 09:00:36
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「霊夢さんが最強!?」
「ああ、そうだぜ」
今日は――今日も、幽々子様の身辺警護をサボり紅魔館に遊びに行き、その場に居た魔理沙さんに言われた一言に私は驚愕した。
事の発端は私――魂魄 妖夢がまだまだ剣士として未熟という話から、幻想郷で強く、放って置くと危険な妖怪や人間の話をしていたことが始まりである。
「あの、ぼーっとしていて…何事もやる気が無くて…いつもだれているあの巫女が!?」
「凄いモノ言いだな。本人聞いてもさして怒らないだろうけどな――事実だし」
魔理沙さんは咲夜さんの入れたハーブティーを一口飲み頷いた。
それは、いつも私が言っている事と全く同じ事を本人に言っているからいえる確信なのであろう。
「咲夜さんもそう思ってるんですか?」
お茶の準備をした張本人兼同席している咲夜さんに私は尋ねた。
「そうね――最強とは言わないまでも、私達よりは確実に強い――というか、戦闘に関してはズルいわね」
「うんうん、それは言えてるな」
その物言いに深く――深く頷く魔理沙さん。

(ズルいとは一体どういう意味なんだろう?)

私が思い切り心中が顔に出ていたのかもしれないが、それに対し魔理沙さんが咲夜さんの言葉に付け加えた。
「『ズルい』っていうのは言葉どおりだぜ。性格が捻くれているせいか戦い方もアイツは捻くれてるんだぜ」
「それでも、意味が飲み込めないんですが……」
笑いながら言った魔理沙さんの説明では私は意味が理解できなかった。素直に『卑怯』という意味でとって良いのであろうか。
その時、扉がバタンと開き話題の張本人――博麗 霊夢が経っていた。
「本人の居ない所で陰口叩かないでよ」
「本人が居ないから『陰口』って言うんだぜ。で、今日はお嬢様のお守りか?」
『お守り』という言葉に霊夢さんは嘆息し、咲夜さんに愚痴を漏らした。
「ちょっとぉ~、咲夜。このお嬢様をなんとかしてくれないかしら?…重いんだけど」
それに対し、咲夜さんは『どうにもならないわ』という仕草をした後ハーブティーを飲んだ。つられてこの場で発言する気もない私もハーブティーを口に含む。
「霊夢、一緒に遊んでくれるって言ったじゃない。さ、こんな所で油売ってないで私の部屋に行くわよ」
そして、お嬢様――レミリア・スカーレットは霊夢さんの腕を引っ張る。
レミリアに引っ張られる度、霊夢さんはだるそうな顔をしていた。
そんな、やり取りに助け舟を出したのが魔理沙さんだった。
「――そうだ。妖夢、霊夢と戦って見ろよ。そうすれば、アイツの強さと『ズルさ』が身に染みて判るぜ」
「え?」
「……はぁ、無駄な戦闘するのも嫌だけどレミリアから開放されるなら私は構わないわよ……」
「――だそうだ?」
そのやり取りに対し、口を尖らせて反論するレミリア。
「私と遊んでくれるって約束は~?」
「また後ね♪さ、行くわよ妖夢」
「は――はい」
殺意の篭った視線を背中に浴びながら私達は紅魔館の中庭に出た。







「で、真剣勝負でいいのかしら?」
霊夢さんは充分間合いを取った後、御祓い棒を取り出し言った。
「いつもの弾幕勝負ではなく――真剣勝負で……」
楼観剣と白楼剣を一瞬で抜刀し私は博麗 霊夢に対峙した。
意識を集中し、切先を霊夢さんに向けた――が、外野の一言で集中力が途切れた。
「霊夢ー。手加減してあげろよー」
「いまさら何言っているのよ、魔理沙。貴方の時と同様、今回も手加減するに決まっているじゃない」
その返し言葉に思わずジト目になる外野二人。
「あの巫女、結構口悪いわね」
「――いまさらだろ。まあ、あの言葉には本当に嘘偽りなど無いんだろうけどな。……妖夢、コテンパンにしてやれー!!」
売り言葉に買い言葉。
「そのつもりですっ!!」
「まあ、そんな簡単にはやられない――――わよっと……」
私は霊夢さんが言い終わる前に楼観剣を一閃させた。楼観剣からほとばしる私の気が先ほどまで霊夢さんが居た場所を一直線に切り裂いた。勿論、このような単調な攻撃で霊夢さんを倒せるとは思っていない。
次いで、先ほど上から下に振り下ろした楼観剣に念をこめる。これが本命。
先ほど一直線に切り裂かれた虚空と地面から妖気が漏れ出す。
「修羅剣『現世妄執』!!」
漏れ出した妖気が弾幕となり形を成し、霊夢さんの周りを取り囲んだ。
「結構、本気なのね。……この程度なら大した事無いけどね」
そう言って、弾幕の隙間を潜り抜け上空に飛び上がった。
勿論、その程度で私の技から逃れられる筈も無い。気弾が一直線に霊夢さんに向かって収束する…。
「追跡弾なんていやらしいわねぇ」

(あんたが言うか…)

この場に居る全員がそう思ったが敢えて口にせず…。
そんなツッコミ所満載の台詞を口走っている当の本人は玉とじゃれるようなアクロバット飛行で私の気弾をかわしていた。
「はいっお返しっ!釣りはいらないわよ♪」
そう言って、どこから取り出したか判らない無数の針を私に対して降らした。
「この程度っ!!」
避ける事が可能なものは全て避け、避ける事が適わぬものは白桜剣で全て弾いた。
霊夢さんの針の雨が途切れた瞬間、一気に間合いを詰める。そして、すぐに楼観剣で虚空を切り裂いた。
「いっけえええええええええぇぇ!!」
全力で楼観剣を振り切る。この一撃――この機会を逃すわけにはいかない!!
巨大な横一文字の妖気の刃が霊夢さんを襲う。その様は三日月が天に上っていくに相違ない。
この距離、この大きさならば避けられる筈が無い――普通の相手ならば――。







「あらよっと♪」

「なっ!?」







霊夢さんは跳び箱の応用でその妖気の刃に手を突き飛び越えたのだ。
勿論、跳び箱だから勿論開脚もして……。
「な――なあああぁぁぁぁぁぁあ!?」
言葉にならない。
外野二人も目が点。さらに、開いた口が塞がってない
こんな事あり得るものか。こんな無茶苦茶なことがまかり通って良いものか!!
しかし、現実に巫女には当たるどころか被弾すらしていなかった。つまり紛れも無い現実。
その当の本人は両手を上に挙げよく判らないポーズをとって「10.00!!」とか言っている。
そして――

「さっきのでお終い?」

――とか言ってきた。
しかし、ここで立見席から野次が飛んだ。
「霊夢っ、さっきのはなんなのよ!!」
「さっきの?あー…アレ?」
咲夜さんだけでなく魔理沙さんも続いた。
「ちょっとあのトリックはなんなんだ!?」
「ちょっと……やったのよ。うーん、もう一回だけやるわね。妖夢、なんか攻撃してみて」
霊夢さんに促されるままに私は楼観剣を一振りした。
今度は軽く振っただけなので先ほどのような刃は出ない――というよりは、ポンポンあんな物出せないのが事実なのだが…。
小さいが雑魚なら一掃出来るほどの刃が霊夢さんを襲う。
「てい」

ペシンッ。

今回はそのような音を立てて刃を払った――素手で。
やはり目が点になる他三人(私含む)。そして、またしても悩む魔理沙さん。
「すまん。霊夢、解答編を頼む」
「はいはい――単に空間をちょっとだけ曲げたのよ。簡単な話でしょ?」
つまり、妖気の刃が当たる瞬間自分の目の前の空間を曲げて飛んでいく方向を変えた…と。
確かに、跳び箱を跳ぶような仕草をしていたけど勝手に刃が避けていった気もする。

でも――

「全然、簡単に聞こえないんですけど……」

思わずジト目で愚痴ってしまった。
「生活の知恵みたいなものよ。広範囲の空間を曲げる気も無いし、手に意識集中させてるから攻撃も出来ないしね――外野は少し五月蝿いけど勝負続行する?」
外野は解答編を聞いても、約一名ギャーギャー騒いでいた。
時を操る能力を持つ人の方は意外と簡単に納得はしているみたいである。
「したいのは山々なんですけど…」
「さっきのような術はもう使わないわ。その代わりこの一枚で一気にケリをつけるから」
そう言って、一枚の符を取り出す。先ほどのような御気楽さは消え失せ、すぐに私は戦闘態勢に戻った。
「いくわよ」
霊夢さんはにやりと笑みを浮かべると、その直後に手にした符が閃光をほとばしった。
「くっ、目くらまし?」
閃光がやむと――視界には誰も居なかった。
「何処いった!?………ん?」
何か……変な感じがする……。
「こっちよ」
耳元で囁く声。
しまった!背後を取られた!?こんな古典的な手に……
「ちぃっ!!」
振り向きざまに剣を一閃する。だが、あっさりとその太刀は避けられてしまった。
そして、先程の閃光時から続く違和感。
「妖夢♪これなーんだ♪」
霊夢さんは私から少し離れた距離から、ある白い布を取り出しヒラヒラさせた。
「?」
あれって――もしかして――まさか――?







妖夢の脳が動き出すまで、あと5秒……







あと4秒……







あと3秒……いらない!!





直ぐに手である物を探る。見事に上も下も綺麗サッパリに抜き取られていた。
「あああああああああああああぁぁぁぁ!!」
霊夢さんの手に握られて、そよ風に吹かれヒラヒラしているものは紛れも無くさっきまで私が見に着けていたもの。
さらしとぱんつ。しかも昨日新調したばかりっ!!
「な、な――返して下さいっ!!」
思わず桜観剣で一閃する。
「私に当たるとコレ塵になるわよ」
ニヤニヤ微笑みながらあっけらかんと返答する。今のこの人は幻想郷一の悪魔に違いない。
「くぅぅぅぅ」
「これ返して欲しければ、今着ている服と交換よ」
「それじゃ、意味ないでしょ!!」
「あと選択肢は大人しく博麗神社まで付いて来ることね♪」
訊きたくは無いけど一応。
「――付いて行ったら素直に返してくれるんですか……?」
「素直に大人しくしていれば返してあげるわ」
当たり前だが期待していない返事だった。
逃げるという手もあるけど、上も下もノーの状態+スカートで外を飛び回るのは恥女の極みである。
勿論却下。すなわち――

「みょん」

「決定ね。それじゃ日が暮れる前に行きましょ♪」
――逆らえる訳が無いのだ。







この世では弱い者は強いものに食われる――『弱肉強食』の世界なのだから――。













霊夢と妖夢が去り取り残された二人――魔理沙と咲夜。
長い静寂の後。
「結局、勝負はどうなったのかしら?」
「続きは布団の上で繰り広げられるんだろ。結果は妖夢の完敗でな」
そして今日も騒がしい夜がやってくる……。







最低なオチで終幕。
オチについては語らず。

何と申しますか……やっちまったの一言に尽きますね。
当初、霊夢VS妖夢のバトル物だったんですがどこから間違えたんでしょう?
ここに初投稿の作品がこんなものになるとは――うーん、気にしたら負けですかねw
もしかしたら、妖夢好きな方から刺されるかもしれませんので……一応、背後には気をつけマス。

次投稿するのはいつになることやら……。次があったらよろしくお願いします。
のりまろ
http://www28.tok2.com/home/norimaro/
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コメント



0.2130簡易評価
11.無評価nanashi削除
ぜひ、続きをねちょで書いてください。
14.無評価電脳の狭間に生きる者削除
確かにネチョだ。
続きキボンn(未来永劫斬
16.無評価名前が無い程度の能力削除
面白かったです。ぜひ続きが見たいですねー。

ただ一つ気になった点が・・・
妖夢の武器が文中では「桜観剣」と「白桜剣」となっているのですが、正しくは「楼観剣」と「白楼剣」ですね。
17.60名前が無い程度の能力削除
点数を入れ忘れてしまいました。大変面白く読ませていただけました。
18.無評価のりまろ削除
御指摘・感想有難うございます。修正しておきます。

で、続きですが。


18禁かぁ………   _| ̄|〇|||
20.50電脳の狭間に生きる者削除
っとと、俺も点数入れ忘れてたw
詫びもかねて。
52.60名前が無い程度の能力削除
みょんww