Coolier - 新生・東方創想話

そういえば○がない。

2008/02/26 11:36:52
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   春雪異変

「そういえば、なんか春が来なくないか?」
「そんなことあるわけないじゃない」

 こたつに入り、煎餅をかじりながらまったりとしている魔女と巫女。
 外は一面雪景色となっていて、揃ってこたつから出られなくなっていた。

「でもさ、いくらなんでもおかしいって。今はもう五月だぜ」
「寒返りなんでしょ」
「いや、まだ春の陽気がきてないし。っていうか、さすがに雪はおかしいだろ!」

 いくら寒いと言っても、これは異常である。異変に違いない。そう魔女は言うが、巫女は聞く気がない。

「それじゃ、もう春なの?」
「そうだろう」
「そう。それじゃ、今日はすき焼きのつもりだったんだけど、春に鍋物は」
「ばっりばりに冬だぜ。あぁ、寒い。鍋いいね、鍋。酒取ってくるぜ」

 こうして、魔女と巫女は長い冬を満喫した。
 ちなみに事件に関しては、どこかのメイド長が解決したと伝えられている。




   三日置きの百鬼夜行

「なぁ。こないだから、随分延々と宴会をしてないか?」
「ただ酒って美味しいわよね」
「そうだな」

 この後、百に及ぶ宴会の後、騒ぎを起こした鬼がただ見ていることに飽きて異変を止めるに至る。




   永夜異変

「……なぁ霊夢。今日はやたらと夜が長くないか」
「秋は夜長なのよ」

 久しぶりに、魔理沙は霊夢の神社に泊まることにした。けれどその日の夜、眠ったは良いがなかなか朝が訪れないという状況に陥っていた。

「いや、まぁそうだけどさ」
「いいから静かにして眠りなさい」

 数時間後

「まだ夜だぜ」
「おかしいわね、眠りが浅いのかしら?」
「そういう解釈をするのか?」

 数時間後

「……もう無理。もう眠れないぜ」
「もしかして、寝過ぎて翌日になってるとか」
「いくらなんでも、そんなに寝てたら体壊すって」

 十何時間、あるいは何十時間寝たのか判らないが、魔理沙は疲労困憊だった。

「眠れないなら仕方ないわね。夜の散歩にでも行く?」
「まぁ、それでもいいぜ。でも、その前になんか食おう」

 こうして、二人は握り飯を食らってから夜の散歩としゃれ込むことにした。
 目的もなく空の旅、であったが、ふと紅魔館に近付くと、門の前に美鈴が立っているのが見えたので、二人は門の前に降りることにした。

「あれ? どうしたんですこんな夜更けに」

 門番は構える様子もなく、馴染みの二人に声を掛ける。

「眠れないから夜の散歩だぜ」
「そういうこと」

「夜の散歩とはおつですねぇ。そういえば先程、レミリア様と咲夜さんも、揃って夜の散歩に出かけていきましたよ」
「どこも似たようなものみたいね」

「あ、そういえばパチュリー様が怒ってましたよ。連続した本の真ん中を持って行って返しに来ないって」
「また嫌な借り方したわね」

 呆れた顔で魔理沙を眺める二人。だが、見つめられた魔理沙はと言えば、何故か不敵に笑っていた。

「ふっ、私はパチュリーの書庫にあった本から、名言を手に入れた。これを聞いて、まだそんなことが言えるかな、門番」
「名言ですか?」

 すると、魔理沙は胸を張って自信満々にそれを口にする。

「曰く、俺のものは俺のもの。俺のものは、俺のもの!」

 ………

「……あれ?」
「二回言うと強調されますけど……普通です、よね?」
「結局何が言いたいのかはさっぱりね」

 魔理沙は、この短い一文を間違って憶えていた。ある意味奇跡である。

「おっかしいなぁ。何か間違えたかな。読んだ時はすげぇって思ったんだけど」
「実は全然違う言葉だったりするんじゃない」
「夢だったりしたらおかしいですね」

 三人は、しばらくの間そんな雑談を楽しんでいた。
 やがて二人は美鈴に別れを告げると、博麗神社へと戻っていく。そして床に就くと、今度は熟睡することができ、ようやく朝を迎えることができたのであった。




   本編(?) そういえば金がない


「そういえば、最近お賽銭が少ないのよね」

 珍しく深刻そうに、縁側で霊夢は魔理沙に相談をした。
 金。それは大事な物である。特に、食べ物を食べないと生きていけない人間にとっては。食わずとも生きていける、道楽商売の店主とは違うのだ。

「最近? 私は今日まで、ここに賽銭を入れに来た奴なんて見たことないぜ」
「あら、ちゃんと入ってたわよ」
「本当かぁ? 誰が入れるんだよ」

 霊夢は顎に指を当てて考える。

「茂作さんとか」
「誰だよ」

 まったく同じポーズを再度とって考える。

「八兵衛さんとか」
「だから誰だよ」

 聞いたことのない名前ばかりで、魔理沙は少々げんなりとした気分になった。そして、賽銭を入れに来た相手の名前ばかり憶えるような巫女というのは嫌だなと、口にはせずに心の奥で思った。
 と、そんな二人の前に一人の少女が現れた。

「あなたがこの神社の巫女ですね!」

 それは見たことのない巫女であった。

「私は東風谷早苗と申します。早速ですが、信仰心の薄れたこんな神社は必要ないです! 神への冒涜です! ですから、潰してしまうか、それか山の上におわす神様に譲渡すべきです!」

 早苗はそう一気にまくし立てると、少しは緊張をしているのか、キョロキョロと周囲を見回してから霊夢たちの反応を待った。

「なんか変な奴だな……ん、どうした?」
「魔理沙。ちょっとここで待っててね。少し話をしてくるから」
「あ、あぁ。別に構わないけど」

 魔理沙がキョトンとしていると、霊夢はスタスタと早苗に歩み寄る。そして、何を話しているのかは魔理沙には聞こえなかったが、随分と親しげに話しかけていた。
 そしてしばらく話していたかと思うと、神社の中へと二人して入っていく。それを、魔理沙はアクビをしながら眺めていた。
 二人が中に入ると、途端静かになり、魔理沙は縁側に寝そべって空を眺めて始める。そしてそんな平和さに、眠たくなるのを感じ始めていた。
 
「きゃーーーーーーーー!!」
 
 ビクッ!
 絹を裂いたような悲鳴に、眠りそうだった魔理沙は飛び起きた。

「な、なんだぁ!?」

 神社の中から、何かとても神社らしくない声が響いてきた。
 否。まだ響き続けている。

「きゃーー、きゃーーー! 駄目、待って待って待って待って! 嫌ーーーー!!」
 
 ……何が起こっているのだろう。
 そう疑問に思ってみるが、蛇に睨まれた蛙とでも言うのだろうか、体がまったく動かない。そしてそれから一分近く悲鳴が聞こえた後、ぷつりと悲鳴は止んだ。
 何かとんでもないことが起こっていたんじゃなかろうかと思い震えていると、自然な顔をした霊夢が奥から現れる。

「あ、霊夢」
「よし、山に行くわよ」

 開口一番それだった。

「や、山?」
「そう、山!」
「わ、判った……」
 
 聞きたい。とっても何があったのかを聞きたい。でも、聞くの恐い!
 魔理沙はそんな思いから、悶々とした気持ちを背負ったままで山へと向かうのであった。
 

 ~中略~


「あんたが新しく来た神ね」
「そうだ。そして、そんな私にはなんの用事だ、麓の巫女」

 風雨の神、八坂神奈子。
 神らしい威厳を放ち、霊夢と魔理沙の眼前に腕を組み佇む。

「あんたの分社を建てると、信仰が増えると早苗に聞いた」
「ほう、それで?」
「ただ建てるのも癪だから、一発とっちめにきた」
「……はぁ?」

 言葉を飾らずに、霊夢は登頂の目的を告げる。そしてその理由は、魔理沙にとって寝耳に水であった。

「そ、そんな理由でここに来たのか!?」
「随分なことを言うじゃない。巫女風情が。いいだろう、かかっておいで」

 あんまりな売り言葉に、神奈子は苛立ち応じてしまう。
 すると、霊夢は懐からおもむろにスペルカードを取り出した。

「それじゃ、スペルカード宣言行くわよ」

 そのまさかの行動に、神奈子は一瞬硬直した。

「え、え、ちょっと待ちなさい! 風神録では霊撃のはずでしょ!?」
「問答無用! 霊符『博麗幻影』」
「それって過去作品じゃないの!」
「「神様だからってメタ発言が許されると思わないことね」」

 博麗幻影を使い、霊夢が二人になる。そしてその二人の霊夢が、同じように懐からスペルカードを取り出した。
 次に何が起こるのか大体予想が付いた神奈子は、慌てて制止を求めた。

「いっ!? ちょっと待った、ちょっと待った!」

 が、既に霊夢、聞く気なし。

「神技『八方龍殺陣』」
「神霊『夢想封印 瞬』」
「きゃーーーー!?」

 こうして……神は散った。
 魔理沙は、倒れている神奈子を不憫に思い近付いていく。

「……同情するぜ」
「……神より金を大事にする巫女か……世も末だ」

 地面を涙で湿らせながら、神奈子は真剣に幻想郷の未来を案じていた。

「あいつ、泣いてたな……」
「さ、帰って分社建てるわよ♪」
「って、今倒した神のか!?」

 鼻歌を交えつつ、霊夢は空を飛んで博麗神社へと向かっていく。
 それに続こうとして、魔理沙は守矢神社の影に隠れた一人の少女を発見する。

「わ、私は関係ないの。神様じゃないの。通りすがりの蛙なの。げこ、げこ」
「……私は何も見てないし何も聞いてないぜ」




   Extra


「うぅ、酷い目に遭いました」
「こっちもだよ。まったく、なんてとこだい」

 早苗に神奈子、揃って満身創痍だった。
 十二分に神奈子を虐め抜いた霊夢は嬉々とした顔で山を下り、博麗神社でめっためたにされていた早苗を帰還と共に解放した。

「あれ、早苗。その服どうしたの?」
「え?」

 しかし、一つだけ無事でなかったことがあった。
 それは、早苗が腕を上げて自分の姿を確認すると判明した。

「あぁ、脇がない!」

 服から、極めて丁寧に脇が切り取られていた。
 こうして、巫女は脇なしという伝統を博麗霊夢は築いていくのであった。




   Phantasm


「そういえば、最近玄爺を見ないわね」
「気のせいだぜ」

 五分後

「そういえば、最近魅魔を見ないわね」
「気のせいだぜ」

 一分後

「そういえば最近「うふうふ」言わなくなったわね」
「記憶違いだぜ」
 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
 三回目となります、大崎屋平蔵です。

 えーっと。文体を変えたものを書いてみよう、横書きで見易く書いてみようと挑戦をした結果、なにか巫女が大変な暴走をした作品になってしまいました。想定外にほどがあります。
 また、書き方を意識してグイグイと変えた結果、もしかすると読みにくい作品になってしまったかもしれません。それでしたら申し訳ないです。

 そこで、できれば今まで詰めて書いていたので、どういう風に書くと読みやすいのかと意見が頂けると嬉しいです。長い作品を書いてますので、できれば読みやすく仕上げたいので。

 楽しめたのでしたら、まことに幸いです。

 追記
 次こそは「幻想ノ風」の二話を仕上げます。現状70%です。
大崎屋平蔵
[email protected]
http://ozakiya.blog.shinobi.jp/
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コメント



0.1540簡易評価
2.100司馬貴海削除
仕事したのが風神録だけって霊夢さんアンタ!しかも仕事っつうか八つ当たりとかそんなだし!
Phantasmはもっとやべえし……ええ記憶違いですとも!
3.無評価司馬貴海削除
さっき過去作を見てきましたが、そうですね、こっちのほうが見やすいですね。というよりも前回はセリフとモノローグが一行ずつになっていてそのせいで見にくくなっている感じが。
セリフはセリフで、モノローグはモノローグで分けたらすっきりすると思いますよ。必要であれば一行ずつ交互に、というのもアリですが……短い範囲でないとやはり見辛いかな。
4.80名前が無い程度の能力削除
この様子だと、紅魔組が竹林に入ったとき、中がほとんどスッカラカンで拍子抜けしたに違いないw
6.無評価大崎屋平蔵削除
 お読みいただき感謝です♪

>>司馬貴海さん
 なるほど。
 どうも科白を書いて間を埋める癖がある物で、それですね。
 次回はもうちょっと工夫をしてみます。ご意見ありがとうございました♪

 この作品で、裏の主役はきっと咲夜さん♪

>>名前が~略~
(ここって区別付けづらいから、返事する場合は日付にしようかなぁ。まだ一人しかいないけど……とか思った)

 えぇ、もう楽勝だったかとw
 霊夢たちが何もしなかったらどうなるかと思ったのですが、どうにかなりました♪
8.90名前が無い程度の能力削除
霊夢wwwww
博麗の巫女の役割を果たすのが普通だからな。発想がとても面白かったです
しかし、それに乗っかる魔理沙も魔理沙だな

文章も見やすくなっていて良かったです
普段こういうことは気にするタイプではありませんが、やっぱりよく見れば違いは歴然ですね
9.70名前が無い程度の能力削除
早苗の悲鳴にどきどきしちゃった

そういえば最近ホウキ以外で飛ぶとこ見ないわね
12.80名前が無い程度の能力削除
白魔理沙?「うふうふ」?なんのことです?
ところで早苗さんはなにをされt(夢想封印
14.無評価大崎屋平蔵削除
>>13:42:39さん(名無しさん方の区別方法)
 あー、他作品との霊夢のギャップに私がついていけません(笑

 やはり行を変えるっていうのは大事なようですね。なんだか実感しました。

>>16:10:32さん
 えっちなことはされていないはずですよ?

 霊夢が箒で飛ぶSSとか書こうかなと、不意に思ったりしました。

>>20:28:38さん
 えっちなことはされていないはずですよね?

「おっけ~、ここは魔梨沙に(マスタースパーク)
15.60名前が無い程度の能力削除
すべての異変は咲夜が全解決ってことでいい気がしてきました。