Coolier - 新生・東方創想話

冬一番は神社に願掛け

2008/01/19 17:11:25
最終更新
サイズ
6.64KB
ページ数
1
閲覧数
306
評価数
7/32
POINT
1680
Rate
10.33

分類タグ

  えっさか ほいさ
  ねこに ヴァイオリン
  めうしがつきを とびこえた
  こいぬはそれみて おおわらい
  そこでスプーンはおさらといっしょに おさらばさ


 寒々として澄み渡る青い空に燦々と輝く太陽の下。
 とある山間の獣道はまちまちな高低差によって右へ左へと振れて、紅葉の茂る雑木林の深さは日中であっても明け方のような暗さを作り、その深さ故に僅かに右なり左なりへ傾いた先を見通せないでいた。
 そこを歩く肉付きのいい少女は、手で影を作るまでもなく太陽の方を見上げる。日が明るい所為で陰も濃く、周りの草の色もよくわからず、少女自身が着ている服の色ですら目視ではわかりかねる有様。

 そんな有様であることを重々承知だから、獣道の上空を、好みの黒と白の色合いで揃えた少女の魔女が箒に跨って一気に飛んで越えていく。
 魔女が目指すのは山の中腹の、つまりは雑木林の茂みの中から伸びている石段の頂上にある神社。
 魔女は真っ直ぐ神社を見ていたが、ふとした弾みで下を見た。木の葉の紅の切れ間に青が混じっているのに気付いた。
 箒に行く先を少し変えさせた魔女は、魔女から見て茂みに入る手前の石段の上に降りた。その時、降りる勢いにあおられて紅葉が舞い上がる。逆さに流れる紅の滝に黒が混じった、
魔女が被っていた帽子も飛ばされていた。

 石段からそれを見ていた少女は、飛んだ帽子に向けて、ふぅっ、と息を吹き付けると、帽子は空で上へと跳ねた後、ゆらめきながら真っ直ぐ落ちていく。
 少女は木陰の外に手を伸ばす。帽子はすとん、とそこに落ちる。そうして、重力に沿って流れる紅葉のヴェールを一歩踏み越えた肉付きのいい少女は、青と白を装う姿を魔女の目にさらした。

 魔女から。
「サンキューな。普通に迷惑な奴」
「レティ・ホワイトロックよ」
 彼女、レティは帽子を差し出し、受け取った魔女は早速被り直す。
「おお、サンキューな。先に名乗られたから私の自己紹介は割愛するぜ」
「三回目でも自己紹介を割愛するのはよくないわ」
「そーだな、私は霧雨 魔理沙だ。わいて出てきたお前は誰だ」
「飛んで落とされるのが怖いから歩いて神社に行く普通の黒幕よ」

 石段を登りきった二人は、境内で箒を手にして紅葉を集める紅白の巫女を見かける。同じく、境内の紅白の巫女は鳥居の前に並ぶ肉付きのいい青白と箒を持った黒白の姿を見て眉をひそめた。
 魔理沙は相手の戸惑いなどお構いなしに挨拶。
「ぃよう、霊夢」
 箒を持つ手を止めて眉をひそめたまま、博麗神社の巫女、博麗 霊夢が口からついて出た言葉は。
「今日は何を企んでいるの?」
 魔理沙とレティは同時に答えた。
「茶と菓子」
「お参りよ」
 霊夢と魔理沙はぴたりと止まった後で、すぐ目の前の、またはすぐ隣のレティに目をやった。

 縁側に腰掛けるレティと魔理沙に霊夢はお茶を振る舞い、その霊夢もお茶を手に魔理沙とレティの間に座る。
「いやー、めでてぇめでてぇ。こりゃ明日は雪だな」
 祝杯の美酒のように茶をあおる魔理沙。
「やめてよ、冗談じゃ済まないわよ」
「気を遣わなくていいわ。私はちゃんと善処するから」
 言い終わると、レティはお茶で喉を潤した。
「その気遣いって、ちゃんと人間基準でやってくれるんでしょうね」
 お茶の水面をぷるぷる振るわせつつ、霊夢はレティを睨みつける。
「まあ、いいじゃねーか。にゃろうの初観測と初雪が一緒ってのも結構おつだぜ」
「わぁ、嬉しい。出てきて早々こんな優しい言葉を掛けられるなんて、この幸せを皆に分けてあげたいわ」

 自分の前を通り過ぎる魔理沙とレティの言葉に霊夢は背筋を寒くした。
「あんた達、いい加減にしなさい。魔理沙も調子いいこと言わないでよ、こいつをおだてたって良いことなんて一つもないのよ」
「ひどい。私、人間の驚く姿を見るのは結構好きだけど、人間の苦しむ姿は別に見たい訳でもないのに」
「あんたねぇ、常識で物言いなさいよ。うっかりやり過ぎても雪に埋もれるか家に閉じ篭もっているかの人間が、外を飛び回るあんたの目に留まる訳ないでしょ。
 大体、『幸せを分ける』って何よ。調子に乗って所構わず寒くするとかそんなんでしょ」
 今度はレティが眉をひそめた。
「当たり前よ、そんなこと。歓喜は寒気に換わるものよ」
 ぴしゃりと言われて、少し取り乱し気味だった霊夢は、むしろ落ち着いてしまった。
「試しに訊いてみるけどさ、落ち込んだ時とかはどうなの」
「荒涼たる心は私の身の内よりにじみ出て、泣き声が遠方にまで響くが如く……」
「つまり寒くなるってことね」
「ええ、そうよ」
 霊夢の要約を笑顔で認めるレティ。
「あんたの笑顔って寒いわ~」
「……こいつがわいて出てきた時点で『詰み』ってこった、諦めろ」
 魔理沙の断定を前に沈黙する霊夢と、にこにこするレティ。

 空の湯飲みが縁側に並ぶ。同じように青白、紅白、黒白の少女達も並ぶ。
「真面目な話、もう少し寒気を抑えるとか出来ないの?」
 すると、レティは少し考え込んで。
「……例え話を一つ」
 あまりの唐突さに面食らう霊夢だが、「どんなんだ」という魔理沙の食い付きの良さが話をその方向に進める。

「ある夜のこと。貴女はうるさいので目を覚ましました。
 猫がじゃかじゃかヴァイオリンを弾いて、月を飛び越えた牝牛がぐおおっと降ってきて、それを見た子犬がげらげら笑い、お皿とスプーンが自身をがちゃがちゃ鳴らして駆けていきます。
 さて、うるさいので一つ文句を言ってやろうと思った貴女は誰に文句を言いますか?」
「文句なんてない。もっとやれって応援するぜ」
「魔理沙は置いといて。月でしょ、それって。本当に周りがしっちゃかめっちゃかになったにしろ、自分だけが狂っていたにしろ、狂わせたのは月明かりよ」
「あら素敵、どちらもご明察。
 霊夢のいう通り。猫がヴァイオリンを選んだことも、牝牛が月を飛び越えたいという衝動に駆られたことも、牝牛の大ジャンプが子犬の笑いのツボだったことも、その時に限って食器が走り出したことも、ましてやそんなもの見せられたとしても、全て月の所為で片付けられるもの。
 つまり、私もそういうこと」
 レティの結論に、霊夢と魔理沙の思考は混乱。例え話と結論とが一本につながる糸口か尻尾は踏んでいるが、どうにも色々と混線する。
「つまり、どうしてこうしてそういうことなの?」
 レティは二人の表情を見てから続きを述べる。
「雪かきで腰を痛めても、軒先に張った氷に滑って尻餅ついても、燃料切らして残りの冬で寒い思いをしても、冬の中で被った嫌な思い全部が私の所為で片付けられるということよ」
「あんたは月じゃないでしょう。冬の寒さを皆が望むような好い加減にすれば、誰もそんなこと言わなくなるわ」
「駄ぁ~目。冬はびゅうぅぅっと寒くするのが一番いいの」
「わかるぜ。魔法も夜中にどかーんってすんのが一番だ」
 霊夢は頭を抱えた。
「私は冬も夜もお部屋でごろごろしているのが一番よ」

 レティから。
「それに『皆が~』とか言うけれど、深山の天狗様や紅魔館のお嬢様からはむしろ『もっと寒くしろ』と言われたりするけど」
「はぁ?」
 それは霊夢の理解を超える発言だった。
「暖房設備が完璧だったり、あんまり寒さを気にしない方々には、冬の寒さは風情として楽しむ感性が備わっているのでしょう」
「私もあんま気にしてないぜ」
 霊夢は再び頭を抱えた。
「安心して、私はそういうお願いも聞き入れていないから。あくまでも私は、私の好き勝手に寒くしているだけだから」
「それも喜べる情報じゃないわよ」
「確かにね。でも、冬の災難を何でもかんでも私の所為にされるからこそ、私が寒くした為に雪が降るという結果的に天候を捻じ曲げたとしても、力あるお歴々も含めて『冬のレティだから仕様がない』と普通は片付けてくれるのよ」

「へぇ~、そいつぁ順風満帆じゃねぇか。で、さあ。なんで文句なしの冬を前にして、こんな寂れた神社にお参りに来るんだ?」
「ん?ん~……」
 魔理沙の素朴な疑問に口籠もったレティは、一旦霊夢を見やってから正面の空を見直す。
「『寒さの腹いせに紅白の巫女に絡まれませんように』」
 初投稿な上にアレなペンネームですが、まぁ、そういうことですので、そういう奴と割り切って愉しんで頂ければ幸いです。
やっぱりレティが好き
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1100簡易評価
4.70名前が無い程度の能力削除
霊夢の一番案に一票
5.無評価名前が無い程度の能力削除
初投稿お疲れ様(?)です。
楽しく読ませて頂きました。
レティはほのぼの系SSに良く合いますね~。
私もレティ好きなのでレティSSが増えるのは嬉しいです。
次回作も期待してます。
6.80名前が無い程度の能力削除
点数付け忘れました二重投稿ですみません。
8.80Seji Murasame削除
こういうレティは新鮮だなあ。良いお話だと思いました。
10.90名前が無い程度の能力削除
このとても寒い自室の中で、ほんのり暖かい気持ちになれたのも、
これまで以上に、彼女の魅力を感じることが出来たのも、
そりゃあ『冬のレティだから仕様がない』ってなもんですね。
14.90司馬貴海削除
これで初投稿とはレベルが高い。
次の作品も期待せざるを得ない。
16.80床間たろひ削除
良いなぁ、レティが実にらしい。
無実の罪を背負わされようと、人間だから仕方ない、天狗だから仕方ない、巫女だから仕方ないと軽やかに笑う彼女に、妖怪としての懐の深さを感じました。いや、ほんとこのレティはツボすぎるw
17.90名前が無い程度の能力削除
実に妖怪らしいレティでした。
ほのぼのしたお話の中にも、妖怪の思考や理論といったものが見えてよかったです。
そして「肉付きのいい少女」w
レティも何だか可哀想ですね。ちょっと当たり判定が広かっただけなのに…w