Coolier - 新生・東方創想話

霊夢と胡蝶の夢

2008/01/05 06:00:38
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眩しい。

陽光が目蓋の向こう側から瞳を刺す。

どこからか、小鳥の歌うような囀りが聞こえる。

夢を見ていた。

どんな夢なのかは、もう思い出せないけれど・・・。

ひどくだるい。

もう何ヶ月も体を動かしていなかったかのよう。

関節がぎしぎしと軋みをあげる。

まるで今の今まで死んでいたみたい。

・・・いや、寝ていただけだけど。

つまり、あれだ。

誰にとっても疎ましい瞬間が訪れたのである。

要するに、朝。

「・・・・・・眠い。」

掛け布団を頭まで引きずりあげて、攻撃的な陽光を遮断する。

布団、じゃないな。タオルケットかなにかか。

そういえば暑い。

今は夏なんだっけ。

まだ起きたくない。

起きたくないし、起きなければならない理由もない。

ならもう少し寝ていよう。

いや、少しと言わず昼くらいまで。

「お~い!」

うぐっ。

嫌な声が聞こえた。

魔理沙だ。

「お~い、霊夢! いつまで寝てる気だよ!」

ドタバタと階段を上がりながら、霧雨 魔理沙は声を張り上げる。

最悪だ。

よりによって、こんな調子の悪いときに早朝から来ないで欲しい。

私は眠いのだ。

寝かせてくれ、頼むから。

なんとかテレパシーで意思が通じないかと念じ続けてみるが、

私にそんな能力があるはずもなく。

変わらず階段を上がってくるうるさい足音が・・・。

・・・あれ?

うちの神社に、階段なんてあったっけ・・・?

「いい加減に起きろって。遅刻するぞ。」

がちゃ、とドアを開けて、魔理沙が私の部屋に入ってきて。

・・・ドア?

家の間仕切りは全部襖のはずじゃあ・・・。

いや、どうでもいい。

とにかく寝よう。

「おい。」

無視無視。

「おいってば。」

くっ、今日はしつこいわね。

暇なら私じゃなくて紅魔館にでも盗みに入ればいいのに。

「お前まだ皆勤だろ? 遅刻したら台無しじゃないか。」

か、カイキン?

カイキンって、なに?

・・・チコク?

「いい加減に、しろッ!」

がばぁ!

と、タオルケットが盛大に剥ぎ取られた。

「うぅ~・・・、あと3時間寝かせて。」

「馬鹿言ってんじゃない。さっさと朝飯食って着替えろ。」

「なによぉ、出かける予定なんかあったっけ・・・?」

「・・・お前、いつまで週末のつもりでいるんだ?

 もう月曜だよ、月曜。」

月曜?

月曜だからなんだというのだ。

「寝ぼけてるのか?

 オーケー、わかった。死の宣告をしてやろう。

 今日からな―――」

たっぷりと、間を持たせてから魔理沙は続けた。

「―――学校だ。」





~起床~





ガッコウ。

・・・学校、か?

なんだ、魔理沙はどこぞの学校にでも通い始めたのか。

学業に目覚めたのは感心な話だが、なぜ私まで巻き添えにされているのか。

私は重い頭を引き摺りながら、魔理沙に引き摺られて階段を下りていく。

「紫さん。罪人を連行しました。」

「あらあら。悪いわねぇ、魔理沙ちゃん。お客さんなのに。

 ほら、霊夢もいい加減に起きなさいな。寝ぼすけさんねぇ。」

目が開かない。

目の前が真っ暗なまま、どすん、と魔理沙に椅子に座らされた。

いまいち眠気で頭が働かない。

「やれやれ。そらっ。」

―ぴたっ

「ひゃっ!?」

突然、頬に冷たい何かが押し当てられた。

驚いて目を開けると、

目の前には魔理沙が居た。

汗のかいたコップを片手に、呆れたようにこちらを見ている。

「おはよう霊夢。」

「・・・・・・?」

コップの冷気でようやく頭が回転し始めた私に、

めまいがするほどの違和感が襲い掛かった。

何に違和感を感じたのか。

・・・全部だ。

目に映るものすべてに、私は違和感を感じた。

目の前、私と同じテーブルの席についているのは、間違いなく霧雨 魔理沙だ。

それは間違いない。

が、

「・・・白いわね、魔理沙。」

「当たり前だぜ。夏服なんだから。」

白かった。

何がって、服装が。

いつもの、黒ずくめの魔女っ子スタイルではない。

おまけになんだ。

私は椅子に座って、テーブルの席に着いているのか?

椅子? テーブル?

うちの神社にそんなものはない。

いや、それ以前に、

「・・・・・・ここ、どこ?」

「お前の家だぜ。」

「またまたご冗談を。」

ここはまったく見慣れぬ家だった。

おまけに魔理沙はここが私の家だと言う。

私の家は神社だ。博麗神社。

こんな洋風な家ではない。

ここの家のイメージはアリスの家に近い。

コタツではなくテーブル。

座布団ではなく椅子。

台所ではなくキッチン。

そこに立つのは、

「・・・・・・誰?」

「誰、ってお前・・・。紫さんに決まってるだろ。」

紫さん?

ますます誰よ。

確かに私と魔理沙の共通の知り合いに、八雲 紫という胡散臭いスキマ妖怪がいる。

が、魔理沙は紫のことをさん付けで呼んだことなどない。

かつ、これからも永遠に呼ぶことはないだろう。

じゃあ、あれは誰だ?

「はい、お待ちどうさま。早く食べないと学校遅れちゃうわよ?」

ことり、と目の前にパンと目玉焼きの乗った皿を置いたその人物は、

・・・そう、紛れも無く八雲 紫だった。

今度はトタトタと、フローリングの廊下を駆ける慌ただしい足音が聞こえてきて、

「じゃあ行ってきます、母さん。

 魔理沙も来てたのか。ゆっくり・・・、している時間はないんだったな。

 霊夢も学校遅刻するなよ。」

「電車は間に合うの、藍? 急いでも車には気をつけなさいね。」

「まだ全然余裕だよ、母さん!

 じゃあ行ってくるからな~、橙。いい子にしてるんだぞ~?」

廊下からひょっこり顔だけ出して挨拶したスーツ姿の女の人は、

足元の猫にぐりぐり頬ずりしてから、慌ただしく玄関を飛び出していった。

・・・あれが、藍?

八雲 藍?

尻尾も耳もなかったけど・・・。

「・・・・・・。」

「・・・どうした、霊夢? さっさと食っちまえよ。」

あまりに混乱しすぎて声も出ない。

どこだ。

ここは、どこだ?

なんだこれは?

なにが起こっている?

「・・・顔が真っ青だぜ? マジで調子悪いのか?」

魔理沙『によく似たそいつ』は私の顔を心配そうに覗き込んだ。

違う。

魔理沙じゃない。

あそこに居るのも、紫じゃない。

この明らかに異常な状況の中で平然としているあいつらは、

この状況と同じように異常な存在なのだ。

・・・いや、そうか。

周りが異常なんじゃない。

私だけが『異常』なのか。

だからすべてが『異常』に感じるのか。

落ち着け。

冷静に状況を把握しろ。

クールになれ、博麗 霊夢!

「・・・オーケー。まずは状況を確認しましょう。」

「・・・・・・はぁ? 構わんが食いながらにしてくれよ。

 真剣に時間が危なくなってきたからな。」

まず、自分の置かれている状況。

朝起きたら突然見知らぬ場所に居た。

この魔理沙(仮)が言うには、ここは私の家らしい。

私と魔理沙(仮)は今日、学校に行く予定だった。

早いところ、この紫(仮)が作ってくれた朝食を食べて学校に向わないと、

なんだかまずいことになるらしい。

周りが明らかに平然としているところを見ると、どうやらおかしいのは私のほうで・・・。

「・・・そっか。」

「いいからさっさと食え。」

これは夢なのだ。

私がグースカ鼻提灯を膨らましている間に見ている夢。

膨らましませんけどね、実際ッ!!

・・・とにかく、状況から見て、ここはおそらく結界の外なのだろう。

妖怪の妖気もちっとも感じないし、

さっきから外でブンブン唸っているのはおそらく『自動車』とかいう乗り物だ。

ここは幻想郷ではない。

かといって、私一人が寝ている間に結界の外に放り出された、というわけでもないようだ。

魔理沙(仮)も紫(仮)も藍(仮)も、まるで幻想郷にいた彼女達と同一人物のようだ。

他人の空似にしては余りにも酷似しすぎている。

ついでに言うと、寝起きドッキリというわけでもないだろうな。

紫はともかく、魔理沙や藍は結界の外には出られない。

ゆえに、これは私の見ている夢だ。

私はこの夢の中の世界では、神社ではなくこの家に住んでいて、

魔理沙(仮)と学校に通っている。

そういう設定なのだろう。

なるほど。理解した。

サクッ、と食パンを一口齧る。

「ねえ、魔理沙(仮)。」

「なんだその(仮)っていうのは。」

「ちょっと頼みがあるんだけどいい?」

「食べるペースを1.5倍速に上げてくれるなら聞かないでもないぜ。」

サクサクサクッ。

「オーケー。なんでも言ってくれ。」

「あのね、どうやら私、記憶喪失になっちゃったみたいなの。

 昨日までの記憶がまったく無いのよ。」

「ほうほう、それで?」

「で、現在私が置かれている状況を、可能な限り詳しく説明して欲しいんだけど。

 なるべく面白おかしく、原稿用紙400枚分以上でお願い。」

「わかった。お安い御用だぜ。」

魔理沙(仮)は口の滑りをよくするためか、

コップの水を一口飲んで、

「・・・で、どこからが冗談?」

「なるべく面白おかしく、から。」

「・・・・・・マジで言ってるのか?」

「普段の魔理沙くらいマジ。」

「ふざけるな。」

「ふざけてるのか。」

んんっ、と魔理沙(仮)はわざとらしく咳払いをして、

一瞬、キッチンの紫(仮)の様子を覗った。

こちらに注意を向けている様子はない。

「・・・記憶喪失って、本気か?」

魔理沙(仮)は打って変わって、真剣な表情で声を潜めた。

嘘だがそういうことにしておく。

幻想郷から来た別の『博麗 霊夢』です、と説明するほど私は馬鹿ではない。

そんなのは魔理沙(仮)から見れば、妄想と現実がごっちゃになったカワイソウな人だ。

精神錯乱者よりも記憶喪失者にされるほうが若干マシだと判断したからである。

これはこの場で魔理沙(仮)から情報を引き出すための方便だ。

「本気。全部じゃないけど、いろいろ情報が欠けてるみたい。

 あんただから相談してるの。」

「まず紫さんに相談したほうが・・・。」

「誰に頼ればいいかもわからないのよ。

 そういう意味も含めて現状の説明をして。今すぐ。」

「・・・・・・わかったよ。」

ほっとした。

少なくとも、こちらでも魔理沙は頼りになりそう。

もうそろそろ(仮)は外しておこう。

おそらくは、この魔理沙は幻想郷の魔理沙と同一のポジションに位置する存在だろうから。

「まずお前自身からな。

 博麗 霊夢。17歳。私立東方学園高等部、2年D組。ちなみに女子高だ。部活は帰宅部。

 成績は中の上、私より若干低いくらいだな。ちゃんと勉強しろ。

 現在のところ皆勤な所は偉いと思うけどな。」

なるほど。

ここはやっぱり幻想郷ではなくて、

私は普通の高校生で、学校に通っている。

そういう設定らしい。

「帰宅部って?」

「ニートのことだ。」

げっ・・・。

「次に私だ。

 霧雨 魔理沙。おなじく17歳。私立東方学園高等部、2年D組。陸上部。

 成績は上の下。お前と違って真面目にやってるからな、私は。

 お前とは腐れ縁で、幼稚園からずっと同じ学校だ。

 クラスは9割方同じで、席も大体同じ班とまあ、運命すら感じちゃうほどの腐れ縁だ。

 家もかなり近い。お前がこっちの家に引越してくる前は家も隣だ。

 ちなみに実家は骨董品屋。骨董品屋そのものがすでに骨董品だと思うがな。」

魔理沙とはこちらの世界でも腐れ縁のようだ。

まあ、そのお陰で今こうして助かっているわけだが。

「・・・引越しって?」

「それも含めてこれから説明する。

 次に紫さん。今キッチンで洗い物をしてる人な。

 八雲 紫さん。年齢は・・・、よく知らん。

 料理上手で、美人で、博識で、その上優しい。

 まさにパーフェクト主婦だな。うらやましい限りだぜ。」

危うく、飲みかけの牛乳を盛大に噴出するところだった。

あのグータラがパーフェクト主婦ですって!?

博麗大結界が崩壊しようとそれだけは絶対にありえないッ!!

「お前のお袋さんが亡くなって、お前の親父さんと再婚する予定だったんだよ。

 紫さんも旦那さんを亡くしててな、意気投合したんだって。

 けど入籍する前にお前の親父さんも亡くなっちまって・・・。

 そういう事情があって、いまでも姓は博麗じゃなくて八雲のままなんだ。

 で、天涯孤独の身になったお前を養子として引き取ってる。

 つまりここは紫さんの家で、紫さんはお前の義理の母親。」

ひどい。

ひどすぎる。

紫が私の義理の母親!?

こんな設定にしたヤツは顔の形がわからなくなるまでニードルを・・・、

・・・・・・私か。

私の夢だもんね。

やっぱ今のなし。

「さっき出て行ったのが藍さんだな。

 八雲 藍さん。24歳。大学は海外の方に留学していて、現在は社長秘書だそうで。

 バリッバリのキャリアウーマンというやつか。格好いいぜ。

 紫さんの連れ子で、なにをやらせても完璧なパーフェクト超人だ。

 このパーフェクトさは遺伝子に刻み込まれてんのかねぇ。羨ましい。

 が、猫を持つと性格というか人格が変わるのが玉に傷だな。

 ちなみにそこに居るのが橙。ペットの猫だ。」

藍はこちらの世界でも優秀みたいね。

橙はペットか。ははは。

こうしてみると、こちらの世界でもあまり違和感は無いみたいだ。

ここが結界の外で、私が学生であると言う点を除けば、

あまり幻想郷との相違点はないみたい。

もちろん紫は論外だ。

あまりにもおかしすぎるから、別人と考えたほうがいいくらい。

「・・・ありがと。状況は大体把握できたわ。」

「いいや、全然できてない。」

魔理沙は首を振ると、腕に嵌めた時計を私に突きつけた。

8時50分。





~登校~





「急げよ霊夢!!」

玄関の向こうで魔理沙が叫んでいる。

えっと、そんなに切迫してるのかな。

よくわからない。

玄関の姿見で、軽く身なりを確認する。

うわっ、そういえば巫女服以外の服着たのって何年振り?

魔理沙と同じ、白がベースの制服。

学校には指定の制服を着て登校しなければいけないらしい。

・・・あの、スカート短いんですけど。

「霊夢、ハンカチとティッシュはちゃんと持ったかしら?

 急いでるからって、スピード出しすぎちゃだめよ。

 あら、リボンが曲がってるわ。」

見送りに来た紫が、慌ててるんだかおっとりしてるんだか、

よくわからない動作で私の制服のリボンを弄くり回す。

うあ、なんだこの光景・・・。

居心地悪そうに魔理沙に視線を送ると、

魔理沙はこちらを見て、ニヤニヤと笑っていやがった。

あんにゃろう・・・!!

「・・・これで、よしっと。行ってらっしゃい。」

「・・・・・・ん。」

だめだ、居心地が悪すぎる。

極限まで切り詰めた短い挨拶を残して、私はそそくさと玄関を出ようとした。

しかし、背中になんとも言えないような視線がじぃ~っと向けられている。

肩越しに振り向くと、紫がこの世の終わりみたいな顔で私を見送っていた。

「・・・・・・行ってらっしゃい。」

「ぐっ、ぬぅ・・・。い、行ってきます、紫・・・・・・さん。」

お出かけの挨拶をもらった紫は満足そうに微笑みながら手を振って私を送った。

よもや私が紫に『行ってきます』を言う日が来ようとは・・・。

その上、さん付けで呼んでしまった・・・。

あれは別人、あれは別人、あれは別人・・・。

私は自分に言い聞かせながら、魔理沙の元へと向っていった。

私が紫をさん付けで呼んだ直後のほんの一瞬、

わずかに、傷ついたような表情になったのを、私は見逃していなかった。

それは、すぐに笑顔で打ち消されてしまっていたけれど。



              * * *



「ごめん、お待たせ。」

「おう、丁度見捨てていこうかと思ったところだぜ。」

私が勢いよく鞄を振り上げたのを見て、

魔理沙は愛想笑いを浮かべながら、どうどう、とそれをいなした。

馬扱いするほうが失礼だと思うのだがどうだろう?

「なあ、まだ認めてやれないのか?」

なにがよ、と不機嫌な声音で返そうとして、私は言葉を飲み込んだ。

今の魔理沙の表情が茶化せるものではなかったからだ。

「紫さんのことだよ。

 お前にだって本当のお母さんが居て、複雑な心境だとは思う。

 私みたいな部外者が口に出していいような問題じゃないとわかってはいるけどな。

 紫さんだってお前に認めてもらおうと頑張ってるよ。

 一度くらいさ、『お母さん』って呼んであげてもいいんじゃないか。」

・・・私は何も言えない。

それは私ではなく、こちらの世界で今日まで過ごしてきた『博麗 霊夢』の問題だから。

そういう意味では私も部外者であることに変わりはない。

私にはどうしようもない問題だ。

答えづらそうにしている私を見て、魔理沙は苦笑した。

「・・・悪い。覚えてないんだったな。

 とにかく今は普段どおり学校に行こうぜ。

 普段どおりに生活してりゃ、その内全部思い出すさ。

 足りない記憶は私がカバーしてやるよ。」

こういうとき、やはり魔理沙は心強い。

魔理沙の明るい対応は気分を楽にしてくれる。

多分、魔理沙もそういうつもりで、勤めて明るく接しているのだろう。

明るくと不真面目とは、必ずしも同義ではない。

こちらの魔理沙もそういうところは同じだ。

しかし、私が思い出すことなどなにもない。

私は、こちらの世界の『博麗 霊夢』ではないのだから。

「ほら、早く自転車乗れよ。」

「乗るって魔理沙、箒は?」

「・・・・・・ボランティアでクリーン活動してたから遅れました、か?

 斬新な言い訳だが笑いは取れそうもないな。」

「あ、あー・・・、いや、なんでもない。」

そうか。

結界の外には魔法とかないんだっけ。

つまり箒で飛ぶこともできないわけだ。

私は魔理沙に気付かれないようにこっそり試してみる。

・・・・・・飛べない。

私もこちらの世界では飛行能力が失われてしまっているらしい。

いや、私一人で飛んでいっても大騒ぎされるだけだろうからやらないけど。

「で、ジテンシャって何?」





~ホームルーム~ 四季 映姫





廊下を全力で疾駆しながら、私と魔理沙はお互いをけなし合う。

「家から全力疾走とか馬鹿じゃないの!?」

「馬鹿はお前だ!! 自転車の乗り方すら覚えてないだと!?」

「しょうがないじゃない!! 知らないものは知らないの!!

 どんな天才だって生まれたときは言葉すら喋れないのよ!!」

「どんな運動神経壊滅ながきんちょでも小学校で乗れるようになるわい!!」

「このクソ暑い真夏の快晴の日に全力疾走とかもうね、馬鹿かと!!」

「ああ、もううるせぇ!! 無駄に体力使わせるな!!

 教室はそこを曲がってすぐだぜ!!」

―ガラガラガラッ、ピシャ!!

「頼もう!!」

盛大に声を張り上げると、魔理沙は勢いよく扉を開け放った。

雪崩れ込む様に二人で教室に駆け込む。

「よし、セーフだ!! チャイムはまだ鳴ってな―――」

き~んこ~んか~んこ~~~ん...

チャイムが鳴った。

これがなる前に教室にたどり着かなければ遅刻になってしまうらしい。

ギリギリ間に合ったということか。

「・・・・・・アウト。」

ぽつりと、重々しい声が転がった。

「おい審判、どこ見てやがるんだ!! 今のはどう見ても―――」

「私のジャッジになにか不満でも? 霧雨 魔理沙さん。」

ぎろり、と睨まれて、魔理沙は石になったかのように硬直した。

「ど、どう見ても・・・・・・、アウトですよね~。はははは。」

脂汗をだらだらと流しながら、魔理沙はあっさりと自分の意思を引っ込めた。

教壇に立つその人物は、まるで槍でも突き出しているかのような視線で、

ぐっさり貫いた魔理沙の体を無理矢理席に座らせた。

「あなたもですよ、博麗 霊夢さん。

 せっかく皆勤賞でしたのに、残念です。

 がッ!! ・・・例外はありません。席に着きなさい。」

「は、はい・・・。」

怖い。

学校って軍人を育てるところだったっけ?

違う気がする。

私は魔理沙に手招きされるまま、隣の席に座った。

「登校とはすなわち、学生が勉学に励むために学校に来ること。

 つまり学校に来て、授業が受けられる体勢が完全に整っている状態でなければなりません。

 席に着くまでが登校です。よろしいですね?」

「鬼! 閻魔!!」

「それを言うなら閻魔ではなく悪魔でしょう。

 ところで、たった今登校してきた霧雨さん。

 今あなた達が教室に飛び込んでくる直前に、廊下で大声を上げている生徒と、

 廊下を全力疾走している生徒が居たようですが、見ませんでしたか?

 少しお説教が必要な生徒のようですので。」

「い、いやぁ、ははははは。どこのどいつでしょうねぇ・・・。」

「おや、霧雨さん。息が荒いようですが。

 まるで今の今まで全力で走っていたようですよ?」

「先生、出欠!! 出欠取ろうぜ!!」

頭痛を抑えるように首を振る先生。

まったく、と世話のかかる子供を見るような表情を浮かべて、

先生は出欠簿を広げた。

「ま、その生徒のことは置いておきましょう。

 出欠を取ります。」

「ひゃっほう、映姫先生最高! 一生付いていきます!」

「お断りです。来年度にはきっちり卒業しなさい。」

映姫。

そう、教壇に立ったその人物は、まさに四季 映姫・ヤマザナドゥその人。

こちらの世界でもやっぱり、決まりごとにはうるさいみたい。

「そうだ。あの人がウチのクラスの担任な。

 四季 映姫先生。年齢は怖くて聞けん。2年D組担任教師。

 担当教科は倫理。部活動顧問は特になし。

 校則や規律にめちゃめちゃ厳しい人で、映姫先生の辞書にオマケという文字はないらしい。

 アダ名はヤマさん。ちなみにヤマさんのヤマは閻魔さまのことらしい。」

納得。

こちらの世界でも違和感はない。

・・・が、違和感を犠牲にしてでももっと優しい人柄がよかった。

「アリス・マーガトロイドさん。」

「はい。」

「じゃ、クラスメイトを適当に紹介するぜ。全員は勘弁。

 アリス・マーガトロイド。工芸部だったかな。

 なにをするにも大体一人だな。ツンツンしててちょっと付き合いづらいんだ。

 本人も構われるのを拒んでるみたいな空気があるもんで、

 なんつーか、接触しないのがクラス内の暗黙の了解みたいな感じになってる。

 ちなみにアリスだけじゃなくて、ウチの学校は海外から来てる生徒や教員がかなり居るぜ。

 なんつったって私立だからな。手広く商売してやろうってのが学校の方針なんだろ。」

アリスはこっちでもロンリーなのね。

「十六夜 咲夜さん。」

「はい。」

「十六夜 咲夜。部活は無所属。

 品行方正、成績優秀。THE・優等生だ。うちのクラスのクラス委員長でもある。

 どうも放課後にどっかのお屋敷でメイドのアルバイトをしているらしい。

 この学校はバイトOKだからな。

 基本的にはいい奴なんだが、一つだけ注意事項がある。

 咲夜は極度のジョジョヲタだ。うかつにジョジョの話を振ると3時間は軽く拘束されるから気をつけろ。

 うっかり『最高にハイってやつだァ!』とか『俺は人間をやめるぞォ!』とか言わないように。」

普通うっかり言わないから。

「因幡 鈴仙さん。」

「はい。」

「鈴仙 優曇華院・イナバじゃないんだ・・・。」

「どこの国の人だそりゃ?

 因幡 鈴仙。部活は生物部。

 あらゆる面において並。そういう点では付き合いやすくていい奴だな。

 ただ一つおかしなところがあってな―――」

「ちょ、耳!! ウサ耳生えてる!!」

「ああ、それなんだ。なぜだかは知らんが、ウサ耳バンドを愛用している。

 さすがに体育とかの時は外してるけどな。」

(へ、ヘアバンドか・・・。)

それを聞いてなぜかほっとした。

それから魔理沙の名前が呼ばれて、私の名前も呼ばれた。

なるほど、こうやって出席者を確認しているのか。

クラス内にもちらほら知っている顔が居て、

それもやっぱり幻想郷の人物像とあまり違いはないようだった。

もしかしたら他のクラスにも知っている人が居るかもしれない。

誰一人知らない世界に突然放り込まれたら、きっとパニックを起こしていたと思うけど、

これならこちらの世界を楽しむ程度の余裕はありそうだ。

いつもと違った生活を経験してみるのも、それなりに楽しい体験にはなるだろう。

せっかくの貴重な体験だ。

楽しんでしまえ。





~1時限目 歴史~ 上白沢 慧音





「1853年、アメリカ海軍のペリー提督が日本の浦賀に来航しました。

 この時、日本は鎖国中で―――」

私が人生初めて受ける授業は歴史だった。

日本史である。

担当教員は、・・・やっぱり見覚えのある顔で。

「上白沢 慧音先生。26歳。担当教科は歴史。顧問は歴史研究部。

 優しくてもやることはきっちりやる先生で、生徒からも人気は高いな。

 授業もかなりわかりやすいから、私的にも好感度大高騰だ。

 ただ怒らせると怖いぞ。頭に角が生えたような錯覚すら起こす。」

錯覚か。

あっちの慧音はリアルに角生えるわ。

・・・怒ってなくても生えるけど。

「その時、来航したペリー提督は言いました。

 日本が鎖国状態だったとは。いやぁ、誤算でした。」

「「へぇ~。」」

「・・・・・・もちろん冗談だ、生徒諸君。日本人じゃあるまいし。」

「「ちょ!!」」

「だがこうやって覚えるんだぞ。黒船来航は、いやぁ誤算(1853)年な。」

どっ、とクラス中から笑いが湧いた。

なるほど、確かに覚えやすい。

人気が高いのも頷ける。

まあ、私が日本史を勉強したところでどうなる、ということもないけれど。





~2時限目 生物~ 八意 永琳





1時限目の授業が終わると、クラスのみんながぞろぞろと移動を始めた。

はて、なんだろうか?

「おっと、次は選択理科だったか。」

「選択理科?」

「おう。理科は物理、化学、地学、生物の四つの科目に分かれていて、

 それぞれ受ける授業を生徒が選ぶんだ。

 私は化学で、お前は生物専攻だったな。

 受ける授業が違うから、それぞれ教室も違うぜ。」

へぇ~・・・。

それでみんなぞろぞろ教室を出て行くわけか。

・・・・・・それってマズくないですか?

「マズいね、うん。私とは別の教室だからフォローしてやれん。」

「ちょ、どうしたらいいのよ!

 教室とかわからないじゃない!」

「なら鈴仙にくっついていけよ。あいつも生物専攻だったし。

 お~い、鈴仙!」

ぴょこり、と耳が振り向いた。

・・・耳じゃないや、鈴仙だ。

どうしても耳の方に目が行ってしまう。

「ん~? なに、魔理沙?」

「霊夢を教室まで連れて行ってやってくれよ。」

「別にいいけど、なんで?」

「・・・・・・?」

黙るなよ。

そしてこっち見んな。

余計怪しいだろ。

でも、下手に記憶喪失とか言って話を大きくしたくないし。

「霊夢、体調でも悪いの? 今朝珍しく遅刻してたし。」

「そ、そう! それなんだよ!

 霊夢の奴、今朝から熱でちょっと頭をやられててさ。

 時々物を忘れたり変な奇行に走るかもしれないけど、多めに見てやってくれよな。」

「そうなのよ。時々変かもしれないけど、気にしないでね。

 こんな風、にッ!!」

―ドスッ!!

ぐほぁ、と肺から空気を搾り出して呻く魔理沙。

差し込んだ手刀が綺麗に肋骨を避けて脇腹に刺さった。

誰が頭やられて奇行に走るって・・・?

もっとマシな言い訳があるだろうに。

「・・・全然元気そうじゃない。保健室に行く必要はないのね?」

「ないない。全然オッケー。」

「そう。じゃあ授業始まる前に行きましょ。」

若干首をかしげてはいるが、なんとか鈴仙を説得できたみたいだ。

危ない危ない。

こっちの世界でも鈴仙が面倒見のいい性格でよかった。

「れ、れいむ・・・。」

「あら、魔理沙。まだ生きてたの?」

脇腹を押さえてうずくまりながら魔理沙が呻く。

「ほ・・・。」

「ほ・・・?」

「保健室で、休んでた方が、都合よかったん・・・じゃ・・・・・・?」

・・・・・・それもそうだ。



              * * *



「血液中の赤血球は酸素を取り込んで体中を巡ります。

 こうして全身の細胞に酸素を届けているんですね。」

担当教師が黒板に赤チョークで書かれたドーナツを指して説明している。

そーなのかー・・・。

授業を受けるというのもそれなりに楽しいものだ。

悪くない。

「で、鈴仙。あの先生は?」

「・・・霊夢。そのボケ新しいけど、八意先生に直接言ったら解剖されるよ?」

「ほら、熱のせいで頭がうまく働かないのよ。ちょっと説明して。」

熱でそんなになるかなぁ、と首をかしげながらも説明してくれる鈴仙。

お人よしめ。そんなんだからいつもてゐに騙されるのよ。

「八意 永琳先生。自称永遠の25歳。担当教科は生物。顧問は生物部。

 趣味は実験、特技は解剖。本気で怒ると逆に笑顔になる怖い先生。

 どんなにひどい怪我をしても、八意先生の特製塗り薬を塗ると5秒で直るんだって。」

「へぇ~。病院要らずね。」

「ううん。効果が高すぎて怖いからみんな病院に行くよ。」

納得。

永琳もこちらの世界ではやっぱりマッドな人みたい。

・・・・・・偏見?

知るか。どうせ私の私による私のための主観の世界なんだから。

「因幡さん、私の授業で私語とはいい度胸ね?」

「ひっ、ひゃい! ごめんなさい!!」

やばっ、目付けられた。

たまたま前の席に座っていた鈴仙が睨まれたみたい。

私と話すときは後ろ向かざるをえないもんね。

耳が立ってりゃ、そりゃ目立つわ。

ごめん。

「私の授業で私語をするくらい余裕ならば、これから私が出す問題にも答えられるはずね。」

にやにやと嫌な笑みを浮かべながら指示棒を振る永琳。

ドSの目だ。

一体どんな難題を吹っかけられるのか、わかったもんじゃない。

生きて帰れよ、鈴仙。

「ほぼすべての動植物において、遺伝情報を構成している物質を正式名称で答えなさい。」

「はい。デオキシリボ核酸です。」

・・・・・・今、鈴仙何て言った?

助さん格さん?

「・・・。」

「・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「生意気ね!!」

「何故ッ!?」





~3時限目 家庭科~ 西行寺 幽々子





「は~い、みなさん。それじゃあ今日は調理実習です。

 今日のメニューは野菜炒めと大根のお味噌汁。

 四人一組でグループを作ってくださいね~。」

家庭科か。

どうやらご飯をおいしく作れるようになろうという授業らしい。

筆記勉強ばっかりじゃないのね。

「はぁ~・・・。」

「なに、魔理沙? 憂鬱そうね?」

「そりゃ憂鬱にもなるさ。

 幽々子先生の家庭科になってから調理自習しかしたことないんだぜ?」

「そ、そうなんだ・・・。」

それって、いいのだろうか・・・。

幽々子らしいといえば幽々子らしいのだが。

「西行寺 幽々子先生。27歳。担当教科は家庭科。顧問は剣道部と茶道部を兼任。

 出たいときに出たいほうを出るらしいぜ。お陰で剣道部は半分放置だ。

 見かけによらず胃袋がでかくて、軽く引くくらい食うぜ。

 この辺一帯に『完食できたら無料』の看板がないのは全部あの人のせいだ。」

それは大丈夫。見慣れてるから。

幽々子が大喰らいなのもあっちの世界と一緒。

むしろ向こうは人間じゃない分、こちらのほうが生易しいはずだ。

「まずは人員確保だ!」

開始とともに魔理沙が視界から消えた。

早いな、さすがは陸上部。

しかしそんなに慌てなくても、別にメンバーにはこだわらないけど・・・。

「喜べ霊夢。我が軍の勝利だ。」

「拉致されてきたわ。よろしく。」

魔理沙が連れてきたのは十六夜 咲夜だった。

なぜそんなに胸を張る、魔理沙?

「馬鹿め。調理実習で高得点を収めるために必要なものを知らないな?

 それは目利きでも腕前でも才能でもない。料理がうまいやつと組むことだぜ。

 過程や! 方法なぞ! どうでもよいのだァーーーッ!!」

もっともな意見だが賛同しかねる。

なぜか咲夜が今のセリフにぴくりと反応した。

「あと一人は?」

「適当に鈴仙あたりでいいか。人数足りないだけだし。」

「「ひでェ!!」」



              * * *



「霊夢は野菜炒め。魔理沙と鈴仙は味噌汁担当ね。

 私はご飯炊いたら霊夢のほうを手伝うから。」

慣れた感じでてきぱきと指示を飛ばす咲夜。

さすがメイド長。

いや、こっちの世界ではクラス委員長だったか。

「魔理沙は鈴仙の指示に従いなさい。この間鈴仙が作ったお味噌汁は十分美味しかったから。

 霊夢、野菜炒めは炒める順番に気をつけなさい。

 最初はお肉、次に固い野菜から順に入れるのよ。

 炒めすぎると野菜の食感が死んでしまうからほどほどにね。

 最後にオイスターソースを使うとおいしくなるわ。

 野菜炒めはタイミング命になるから必要なものはすべて手元に置いておきなさい。」

・・・すげぇ。

ホントに過程や方法なんかどうでもよくなってくる。



              * * *



「よし、完成だぜ!」

「・・・うん、十分美味しいわ。80点くらいかしら。

 これなら評価も心配ないわね。さ、提出してきましょう。」

さすが咲夜さん。

・・・はっ、無意識のうちにさん付けしてしまった。

しかし魔理沙の言い分は正しかった。

調理実習で本当に必要なものは、人材だ。

「霊夢は野菜炒めとご飯の盛り付けしておいてくれる?

 私は味噌汁のほうを見ておくから。」

「ラヂャ。」

フライパンに乗った野菜炒めをいそいそと皿に移し変える。

どれくらいの量がいいんだろう。

他の班も提出するわけだから、あんまり多すぎるのもアレよね。

「・・・よし、オッケー。」

「味噌汁のほうもいいわね。先生、完成しました!」

なぜか調理実習をしている生徒達をうっとりした目で眺めていた幽々子は、

咲夜の声で、はっと我に返った。

「あ、あら。B班は早かったわね。さすがだわ。」

私は自信満々で、出来た野菜炒めを提出した。

生涯最高の野菜炒めが出来たと自負している。

90点は堅いわね。

咲夜の80点は若干辛口だったと言わざるをえない。

さあ、どうよ!

「れ、霊夢・・・?」

「盛ったの、お前だよな?」

「・・・・・・馬鹿。」

えっ、何?

なにかまずいことした?

「少なすぎだろう。常識的に考えて。」

・・・はっ!!

相手はあの西行寺 幽々子。

並みの量で満足するはずがない。

その上、他の班も作るから、と控えめな量で盛ってしまった。

幽々子に対して量で遠慮するなど愚の骨頂!!

幽々子はくちを△にして、不服そうに私と野菜炒めを交互に眺め、

「・・・・・・20てん。」

「「せめて食えよ!!」」





~4時限目 国語~ 蓬莱山 輝夜





「ほら、さっさと席に着きなさい愚民ども。授業を始めるわよ。」

無駄に長い着物を小さな体でずるずると引き摺ってきた教員。

次の授業はアレがやるらしい。

「蓬莱山 輝夜先生。13歳。担当教科は国語。顧問はなにもやってない。

 10歳で小学中学を飛び級して米国マサチューセッツ州の某大学に入学。

 その大学も2年で卒業してきたトンデモ先生だ。

 エリート街道をスキップどころか走り幅跳びで進んできたような人だな。

 アダ名はてるよだが、そう呼ぶと怒る。でもみんな呼ぶぜ。」

なぬっ!?

まさか輝夜はこっちではすごい人なのか!?

というか、職に就いているという時点ですでに驚きだ。

「今日は竹取物語ね。読むわよ~?

 え~、おっほん。

 今は昔、竹取の・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・竹取の。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・竹取のぉ?」

「「おきな。」」

「翁という者ありけり。

 野山にまじりて―――」

・・・・・・。

まさか、読めなかったのか?

生徒達のフォローをまるでなかったように読み続ける輝夜先生。

あっ、また詰まった。

「・・・すげぇよなぁ、金の力って。」

「全部金かよッ!!」

ああ、うん。

輝夜もあんまり違和感はないみたいだ。

「なんだ~、そのドロドロに汚れきったヘドロみたいな汚職政治家を糾弾するような目は!!

 ばかにするな! せんせーだぞ!!」

ああ、はいはい。





~昼休み~ アリス・マーガトロイド





き~んこ~んか~んこ~~~ん...

「はい、じゃあ今日の授業がここまで。

 って、くルァ!! 待ちなさい霧雨 魔理沙!!」

輝夜が授業終了を宣言すると、

魔理沙は一目散に教室を飛び出して行った。

あんなに急いでどうしたんだろう。

トイレか?

「今日はどっちが勝つかしら?」

「また魔理沙の負けでしょ~。」

クラスメイトがどやどやとざわめきながら、廊下に顔を出す。

一体なんの騒ぎだ?

私も同じように顔を出してみると、

廊下を全力疾走している魔理沙の背中が見えた。

さすが陸上部。速い速い。

どうやら、B組とC組の間にある購買部に向っているらしい。

あっという間に購買部にたどり着いた魔理沙は、開口一番こう叫んだ。

「香霖!! 胡蝶パンだ!!」

「売り切れたよ。残念だったね。」

「バカなぁぁぁあああ!!!」

がっくりと崩れ落ちる魔理沙。

チャイムが鳴ってから最速で駆け込んで売り切れって・・・。

「くっくっく。今日も遅かったですね、魔理沙さん。」

その後ろで不敵に笑う一人の女生徒。

「これで魔理沙さんの戦績は47勝200敗になりましたね。

 おや、記念すべき200敗目ですよ。ぜひ校内新聞の一面にしましょう。」

「くっ、どちくしょーーー!!!」

・・・なんだあれは。

どうやら魔理沙は敗北したらしい。

「・・・今日も魔理沙の負けだったわね。」

私の頭の上から、ひょいっと金髪が顔を出した。

「ねえ、アリス。あれ、何?」

「何って、毎日やってるじゃない。購買のパンの取り合い。」

「あの2人が?」

「射命丸 文。2年A組。部活は新聞部。

 東方学園最速の足を持つ、魔理沙の天敵ね。

 陸上部顧問の不死原先生の熱烈なラブコールを蹴り続けてるくらい、

 ジャーナリズムに命を懸けてるらしいわ。」

なるほど。

こうしてクラス中から顔を出している連中は、

毎日恒例の2人のレースを楽しみにしている観客達というわけか。

「胡蝶パンっていうのは?」

「12:30きっかりから購買で販売される、一日一個限定の超激レア菓子パンね。

 アレを獲得するために、魔理沙はいつもああやって競争してるわけ。」

「・・・販売個数増やせばいいのに。」

「そうすると不味くなるらしいわよ。」

「よっぽど美味しいのかしら?」

「勝利の味がするらしいわ。」

なるほど。

そりゃ増やしたら不味くなるわ。

「でも魔理沙も一応47勝はしてるのね。今度買ったら一口もらお。」

「次に勝つとしたら明後日ね。」

「・・・なんで?」

「A組の水曜4時限目は移動教室で隣の棟だから。」

・・・そういえば、勝率はほぼ4:1。

学校は週5日だから、魔理沙はひょっとして水曜日のハンデ付きの日しか勝ってないのか?

実質魔理沙の全敗じゃないか。

「って、魔理沙の親友のあなたが知らないわけないじゃない。

 なんで私が説明しなきゃいけないのよ。」

いや、睨まれも・・・。

説明するのがそんなに億劫なのか。

「ちょっと通りますよ。」

―ずんっ

といきなり視界がふさがれた。

画面いっぱいに巨大な風呂敷が映っている。

「わっ、ななななにこれ!?」

巨大な風呂敷が宙に浮きながら廊下を闊歩している。

廊下にぎりぎり収まるサイズで、重そうにのっしのっしと進む。

私が外れた顎を嵌めなおしていると、

風呂敷の向こうから小さな頭がにゅっと生えた。

・・・いや、違うか。

風呂敷ですっぽり見えなくなってしまうほど小柄な女生徒が、

その巨大な風呂敷を背負って歩いていたのだ。

余りに風呂敷が大きすぎて、その姿がまったく見えなかった。

「ああ、霊夢先輩にアリス先輩。こんにちは。」

「お疲れ様。毎日大変ね。」

「いえ。これも鍛錬です。」

すぽっ、と再び小さな頭が見えなくなり、

風呂敷は前進を再開した。

廊下にいる生徒たちを押しのけながら進んでいく様はまるでボーリング。

「・・・なに、あれ?」

「魂魄 妖夢。1年D組。剣道部。

 東方学園剣道部期待の星ね。1年生にしてエースというスーパールーキー。

 ああやって昼休みに顧問の幽々子先生に昼食を持っていくのが日課。

 魔理沙とならんで、ウチの学校の昼の名物ね。」

「・・・3時限目、調理実習だったわよね?」

「そうね。」

「・・・幽々子先生、全部の班の食べてなかったっけ?」

「そうね。ちなみに4時限目はC組の調理実習だったらしいわ。」

・・・・・・聞くんじゃなかった。

私が疲れてげんなりしていると、

各クラスの生徒達もぞろぞろ教室に戻っていった。

今日の出し物はこれで終わりらしい。

私も購買でなにか買ってこよう。





              * * *





私は購買で購入したおかかおにぎりを袋から開けながら、

窓の外をぼんやりとながめた。

グラウンドでは初等部らしい子供達がわいわいサッカーに興じていた。

馬鹿っぽい女の子が蹴ったボールが味方である筈の女の子の後頭部を捕らえ、

ぶつけられた女の子は「そ~なのか~!?」と、きりもみしながらコート外に弾かれていた。

平和だ。

「で、聞いてもいいかしら?」

私の正面に座っているアリスが、弁当を突きながら私に尋ねた。

「いいわよ。」

アリスは十分に間を置くように、タコさんウィンナーを一つ口に放り込み、

さらに『Alice Chan Love♪』と描かれた恥ずかしい海苔弁を一口。

「なんであなたが、なんでわたしの目の前で、なんでおかかおにぎりを開封しているのかしら?」

「開けなきゃ食べられないじゃない。」

「そこじゃなくて。」

「まぐろわさびと迷ったんだけどね。オーソドックスにしてみた。」

「そこでもない。」

「おお、すっげー!! 海苔がぱりぱり!! これを考えた奴は天才だわ!!

 私の権限でノーベル平和賞を差し上げる!!」

アリスが額を押さえて、盛大なため息をついた。

もちろんわざとだ。

「だって、ねえ。1人で食べててもさみしいじゃない。」

「わっ、私はさみしくなんてないわッ!!」

「ん? ああ、いや、私自身の話だったんだけどね。」

勢いよく音を立てて椅子から立ち上がったアリスを、

私は不思議に思って眺めた。

なにを必死になって否定しているのか。

すっかりクラスの注目を集めてしまったアリスは、顔を真っ赤にしながら椅子に戻った。

「・・・別に、あなたがさみしかろうと私の知ったことじゃないわ。」

「アリスがさみしくなかろうと私の知ったことじゃないわね。」

「・・・・・・嫌な奴。」

「照れるぜ。」

紙パックのイチゴ牛乳にストローを差し込む。

甘ッ。

・・・・・・おにぎりとは合わなかった。

くっ、あの時お茶にしておけば。

お互いに黙々と食事を進める。

そういえば、向こうのアリスは人形マニアだったな。

こっちのアリスもそうなんだろうか。

「おっ、やっぱりあった。」

机の横に掛けられたアリスの鞄に、

小さな人形がぶら下がっていた。

「なによ。鞄に人形付けてちゃ悪い?」

「うんにゃ。むしろほっとした。」

「・・・はぁ?」

不思議そうな顔をアリスを無視して、

私は人形を手に取って見た。

「おっ、上海だ。こっちはオルレアンだったかな。」

なるほど。

こんなところでも共通点。

「・・・・・・よくわかったわね?」

意外そうに目を見開くアリス。

「そうよ。そっちが上海製の人形で、こっちがオルレアンで作られた人形。

 あなた、意外と人形に詳しいの?」

「えっ!? あ、ああ、いや、まあ、人並みには。」

弾幕で覚えたなんて言えるか!!

「ふうん。ちょっと意外だったわ。」

「い、いや、それがしもおなごの端くれでござりまするから!」

「・・・・・・くすっ。」

笑われた。

いや、私でも同じことやられたら笑うけど。

「ねえ。」

アリスは慣れた手つきで上海人形を鞄から外すと、

机の上に置いた。

「この子、あげるわ。」

「へっ?」

差し出された人形は、紛れもなくあの上海人形。

多分、向こうのアリスの一番のお気に入り。

「・・・いいの? お気に入りなんじゃない?」

「な、なんで知ッ・・・!? べ、べべべべべつにお気に入りなんかじゃないわよ!!

 本当に気に入ってたらあんたなんかにあげるわけないでしょ!?」

なるほど、もっともだ。

ここは遠慮せずに貰っておこう。

いずれはレーザーを出してくれるようになるだろうか。

「いや、その前にまずお茶汲みかな。」

「お茶汲み? この子が?」

アリスが不思議そうな顔で私を見ている。

・・・しまった。

あっちの上海はアリスが魔法で動かしていたものだ。

魔法のないこちらの世界ではお茶汲みなんかできるはずがない。

レーザーなんて論外。

これじゃ私がまるっきり不思議ちゃんじゃないか。

「この子にはお茶汲み人形みたいなギミックは入ってないけど・・・。」

ですよね~・・・。

「・・・でも、そうね。その考えは素敵。

 大切に使ってあげたら、いつかお茶くらい汲んでくれるようになるかもね。」

間抜けなことを言った私を、アリスは馬鹿にしなかった。

それどころか、なんだか嬉しそうな顔で私を見るのだった。





~5時限目 体育~ 藤原 妹紅





青い空。

白いグラウンド。

そして、

「炎天下のマラソン地獄・・・。」

5時限目は体育。

内容は、まさかのマラソンだった。

だって、今、真夏・・・。

「あの先生は少し非常識すぎる。」

「まあ、あの不死原先生だしなぁ・・・。

 藤原 妹紅先生。26歳。担当教科は体育。顧問は陸上部。

 一言で言うと熱血先生。アダ名は死なずと書いて不死原先生。

 マラソン大会で5キロを全力疾走で走り続けたという伝説を持つらしいぜ。

 今でも毎朝、乗り物を使わずに走って学校に来てるみたいだ。」

げっ、人間かそれ?

こっちでも体力馬鹿なのか。

それは結構だが巻き込まれるのは御免被る。

大体、この炎天下の中マラソンとか。

絶対倒れる人とか出てくるし・・・。

っていうか、倒れそうだし。

「あ、暑ィ・・・。」

「ん、暑いかー?」

「暑いに決まってんでしょがッ!! むしろ熱い!!」

「速く走れば風が当たって涼しくなるぞ?」

「「なるわけねぇだろ!!」」

「お前らー。倒れたら八意先生に引き渡すことになってるから安心して倒れていいぞー。」

「「アホかー!!」」





~6時限目 数学~ 小野塚 小町





「し、死ぬかと思った・・・。」

「ああ、生きてるって素晴らしいぜ。」

「もう駄目。6時限目を乗り越える体力がない。」

「心配するな。次は数学だぜ。」

―ガラガラッ

チャイムが鳴る前に、教室の前の扉が開いた。

担当教員の人が入ってきたようだ。

「小野塚 小町先生。28歳。担当教科は数学。顧問はなし。

 慧音先生とは違った意味で生徒から絶大な人気がある先生だ。

 私もこまっちゃんの授業は大好きだぜ。ある意味慧音先生以上にな。」

魔理沙がベタ褒めしている。

そんなにいい先生なのか小町。

向こうとは大違いかもしれない。

き~んこ~んか~んこ~~~ん...

チャイムが鳴った。

チャイム前に来ているとは、意外と真面目。

・・・いや、それが普通なんだけど。

「出欠取るぞ~。今日の日直は?」

「はい、私です。」

「よし、十六夜。これよろしく。」

ぽん、と咲夜に出欠簿を手渡した。

咲夜はさも当たり前のように名簿を開いて、生徒達の名前を順に読み上げていく。

小町は脇のパイプ椅子で成り行きを見守っているだけ。

「・・・この授業は生徒が出欠を取るの?」

「いいんだよ。あれが小町先生のスタイルなんだから。」

へぇ、まあいいや。

そういうものなんだろう。

誰もそれについて不満を抱いては居ないみたいだし。

出欠が取り終わると、小町は出欠簿と交換するようにプリントの束を渡した。

束を渡された咲夜が、それを列の先頭の人に振り分けていき、

それが一枚ずつ取られて後ろに回されていく。

なるほど、ああすると効率よく全員にプリントが行き渡るのか。

で、なにこのプリント。

名前欄と問題文が―――

「ああ、今日はテストの日だったぜ。」

「なんですとッ!?」

昨日までの記憶がまったくない私にいきなりテストですか!?

ぶっちゃけ本番ですか!?

それはあまりにも無理無茶無謀というものだ。

「全員行き渡ったな? 時間は6時限目の終わりまで。

 とっとと始め!!」

うわっ、マジだ。

マジでテストだ。

しかもみんな黙々とテスト用紙に向っている。

一体何なんだ、この生徒達のあふれんばかりの真面目さは。

小町はパイプ椅子に座って腕を組み、

目を閉じてテスト終了を静かに待っている。

うわっ、マジだよみんな!?

なにこれ!?

とりあえず問1の問題を読んでみる。

なんだこれ!?

+とか×とかはわかるけど、

なんだこれ!? 見たことねぇ!?

8の上に√とかいう変な形の記号が付いてる!?

なにこれ!? 屋根!? 屋根なの!?

そんなところに雨なんか降らねぇよ!!

私が悪戦苦闘すること約5分・・・

「そろそろね。」

唐突に咲夜が席を立った。

あれっ?

テスト中に席を立っちゃっていいんですか?

すたすたとパイプ椅子に座った小町に近寄り、

―びしッ!!

いきなりチョップをかました!?

なにしてんのあの人!?

いくらテストがわけわかんないからって暴力ダメ、絶対!!

ところが小町はそれにまったく反応せず、

「・・・よし、完全に寝てるわね。

 いつも通り、窓際の列から順に問を3つずつこなしなさい。

 終了15分前に列内で、10分前になったら全員で答え合わせをします。

 わからなければ隣や他の列の人に聞くこと。

 以上、ミッションスタート!!」

えっ?

えっ!?

なに!?

「ああ、いつものことだぜ。

 こまっちゃんの授業は自習かテストかの2択だ。

 どっちも開始早々居眠りして、終了直後に目を覚ますから、それまでほとんど自由だ。

 テストは全員で答え合わせしてから出すから大体100点だな。」

「そ、そんなんでいいの!?」

「バカやろう!!」

魔理沙は拳をきつく握りこんで一喝した。

「難しいテスト問題にクラス全員で立ち向かうことで団結力を。

 教師は介入せず、生徒達自身に勉強をやらせることで自主性を。

 そんな小町先生の素晴らしい理念がお前には理解できないのか!?」

「・・・・・・あ~、うん。理解した。

 最高だね、小町先生。ひゃっほ~い・・・。」





~下校~ 霧雨 魔理沙





一日の授業が終わった。

今は魔理沙と2人でならんで歩きながら、家路についている。

「魔理沙、部活は?」

「今日はサボりだ。」

「いいの?」

「お前1人で帰り道わかるのか?」

「部活なんかサボっちまえ!!」

「お前もなにか部活やればいいのにな。

 割と楽しいぞ。ヤなことあっても忘れられるしな。」

「部活ってなにがあるの?」

「まず運動系だと不死原先生の陸上部だろ。幽々子先生の剣道部。

 中国・・・あー、美鈴先生の卓球部。ほかにもソフトボールやテニス部があるぜ。

 文科系だと漫研ミス研オカ研の三種の神器、文がやってる新聞部はある意味運動系か?

 歴史研究部、生物部、あと幽香先生の園芸部なんかもあったな。」

「やめとくわ。帰宅部と掛け持ちは無理そうだから。」

ははは、と魔理沙は軽快に笑う。

私もそれに合わせて笑った。

大変な一日だった。

けど、それ以上に楽しかった。

「で、どうだ?」

「なにが?」

「なんか思い出せたか?」

・・・思い出した。

ああ、いや。

こっちの世界の記憶とかじゃなくて、私が記憶喪失だっていうことにしておいたこと。

すっかり忘れてた。

だって私は、実際には記憶喪失なんかじゃないのだから。

私は、こちらの世界の『博麗 霊夢』ではないのだ。

「・・・・・・。」

「どうした?」

魔理沙には、話しておこうか。

本当のことを。

魔理沙は信頼できる。

そしてその信頼に、嘘で答えるのは、

・・・辛い。

「ねえ、魔理沙。」

「おう。」

「これからすごく真面目な話をするわ。

 真剣に聞いて欲しい。」

魔理沙は驚いて目を丸くしたが、

すぐに頷いて返してくれた。

「私、この世界の『博麗 霊夢』じゃないの。

 あなたの知っている『博麗 霊夢』じゃない。」

「・・・・・・どういう意味だ?」

「そのままの意味で。

 ここが私の作り出した夢の世界なのか、

 私の居た世界とよく似た別の、パラレルワールドなのか、

 私にはわからないけれど、とにかく私は別の世界に居たの。

 本当は記憶喪失で昨日までのことを覚えていないんじゃなくて、

 こっちの世界に今日突然放り込まれたから、こっちの世界の記憶がないだけ。」

魔理沙は眉を潜めた。

そりゃそうだ。

私だって突然こんなこと言われたら、頭がおかしくなったんじゃないかと疑うだろう。

「・・・・・・やっぱり、信じられないわよね。」

「・・・・・・。」

魔理沙は答えない。

でも、真剣に聞いてくれているみたいだった。

じっくりと、慎重に言葉を選んでいるようだった。

「・・・・・・お前が、冗談や面白半分で言ってるんじゃないってことは、信じる。」

「えっ?」

意外だった。

魔理沙はあっさり私のことを信じてくれた。

「お前の顔を見りゃ、真剣に言ってるんだってことは疑いようもない。

 記憶がないってのも芝居とは思えなかったし、

 頭がおかしくなったと思われるよりは記憶喪失のほうがマシ、というのも納得できる。」

なんだ。

こんなことならとっとと魔理沙に本当のことを話しておけばよかった。

それならきっと、もっと気楽に学校生活も楽しめただろうに。

「けどな、お前、本当に私が知っているのとは別の『博麗 霊夢』なのか?」

「・・・・・・どういう意味?」

「行動パターンとか、癖とか、そういったものが余りにも似すぎてる。

 育ってきた環境が違うなら、そういうものには違いが現れるはずだろ。

 私にはお前が私の知っている昨日までの『博麗 霊夢』としか思えない。」

「やっぱり、信じてないんじゃない!?」

「私も真剣に話してやるから、お前も真剣に聞けよ。

 そうじゃない。私はお前が真剣だってことはわかってる。

 けどな、お前が信じている真実が事実とは限らないんじゃないか?

 お前が違う世界から来た霊夢だってことは絶対に間違いないのか?

 お前はそれを自分自身に証明してやれるのか?」

「だって、昨日まで向こうの世界で過ごしてきた記憶があるわ!!」

「それだけか? それ以外になにか決定的なものはないのか?」

私は覚えている。

幻想郷で過ごしてきた今までのこと。

神社でのんびり過ごしながら、気が向いたら妖怪退治に出ていた。

紅魔館に乗り込んでレミリアたちとも戦った。

春を取り戻すために霊界で幽々子たちと戦った。

永遠亭で輝夜たちと戦って、本当の月を取り戻した。

三途を渡って小町や映姫とも。

みんな覚えてる。

それだけじゃ足りないの?

「これは私の推論でしかないんだけどな。

 お前、実は本当に記憶喪失なんじゃないのか?」

そんなことはない。

絶対にない。

だって昨日まで向こうの世界で過ごしてきた思い出が、

「昨夜から今朝にかけての間に記憶をなくしちまって、

 今朝方偶然見ていたその世界の夢と、現実の世界をごっちゃにしちまってる可能性は?」

夢と、現実を、ごっちゃに?

「時々あるだろ。起きてからもしばらく夢と現実の区別がつかなくなる事。

 からっぽになったお前の記憶に、たまたまその夢の中身がすっぽり収まっちまったんじゃないのか?

 お前はそれを真実だと、本気で勘違いしちまってるんじゃないのか?」

幻想郷が、夢?

私の、勘違い?

「お前、最近色々ありすぎたからな。

 親父さんもおふくろさんも亡くなっちまって、突然赤の他人だった紫さんの養子だろ?

 最近のお前、すごく悩んでるみたいだったよ。

 窓の外を眺めてぼーっとしてることも多かったし、よく物思いに耽ってるみたいだった。

 紫さんとお前の問題だから部外者の私が口を挟むのはよくないと思って黙ってたけど、

 ホントは後悔してる。ちゃんと相談に乗ってやればよかったってな。」

いろいろありすぎて、ショックだったから。

精神的な負担がかかりすぎていたから。

だから私はよく夢想していた。

違う世界の私。違う世界のみんな。

そして、こっちの世界のことなんか全部忘れてしまいたいと・・・。

そんな、そんなこと・・・。

本当にないのか?

本当にそんなことないと言いきれるのか?

だって、それを否定できる証拠も、私が幻想郷から来たという証拠も、なにもない。

唯一ある記憶すら、魔理沙の言ったように私が信じているだけのものだとしたら・・・。

「ただの仮説だよ。それが真実とは限らない。

 本当のことは当事者のお前しかわからないし、お前にしか決められない。

 本当にお前が違う世界からきた『博麗 霊夢』なのか。

 私のよく知っている、腐れ縁の『博麗 霊夢』なのか。

 どちらが真実なのか確信できたら、そのときはもう一度私に相談してくれ。

 お前が別の世界からきた『博麗 霊夢』なら、お前が元の世界に戻れるように協力する。

 私にできることは図書館に通うことくらいだが、協力は惜しまない。

 だがな、もしお前がこちらの世界の『博麗 霊夢』なら、

 私はお前を現実に引きもどしてやらなきゃならない。

 お前がそうなった原因の一端は、私にもあるんだからな。」

私は、わからなくなった。

本当に幻想郷から来た『博麗 霊夢』なのか。

それとも、こちらの世界の『博麗 霊夢』なのか。

確かに記憶はある。

今まで幻想郷で過ごしてきた記憶が。

でも、それが本当に現実の記憶なのか、私には確信できない。

だって、私は、

こちらの世界では飛ぶことすらできないのだから。





~課外授業~ 八雲 紫





夕食も食べ終わり、各々がのんびりして過ごす時間帯。

藍は橙を抱えてテレビドラマに見入っている。

紫はテーブルの上の食器を片付けていて。

もうそろそろ一日が終わろうとしている。

ただの夢にしては長すぎる気がした。

とっくに醒めていてもいいだろうに。

私は、まだどちらの世界が現実なのか判断付かないまま、

ただ宙ぶらりんに時間を浪費し続けている。

「どう? おいしかったかしら?」

紫が上機嫌そうに私の顔を覗き込んで、

ご飯粒一つ残らない茶碗を片付けていった。

おいしかった。

そう、おいしかったのだ。

夢の中で、味覚なんてあるのか・・・?

私は俯いたまま、何も答えられなかった。

「・・・藍、お風呂入ってらっしゃい。」

「えっ、でもいまドラマが・・・。」

「いいから。」

藍は私と紫を交互に見てから、大人しくテレビの電源を切った。

「よ~し、橙。お風呂入ろうな~♪」

橙を抱えたまま立ち上がると、鼻歌を歌いながら風呂場に向う。

嫌な気配を察知したのか、橙が腕の中で暴れたが、

抵抗むなしく橙は藍に拉致されていった。

「お茶でも淹れましょうか。」

紫は熱々のお茶を二人分淹れて、テーブルの私の正面に座った。

ずずっ、とお茶を一口。

「さて、霊夢。私になにか相談したいことがあるんじゃないかしら?」

「・・・・・・読心?」

「心を読むよりも顔に書いてあることを読むほうがずっとも楽よ。」

紫にはお見通しみたいだ。

いや、正直紫に相談すべきか迷っていた段階だったのだが。

まあ、いいや。

紫がドラマを中断させてまで藍に風呂に入れといったのも、

多分このための人払いなのだろうから。

私は全部正直に話すことにした。

「私、こちらの世界の博麗 霊夢じゃないの。」

紫は一瞬目を丸くしたが、すぐにその表情を押し殺した。

黙って続きを促す。

「ここじゃない別の世界があって、私はそっちの博麗 霊夢なのよ。

 こっちが私の夢なのか、よく似たパラレルワールドなのかはわからないけれど、

 とにかく、私は別の世界から来た。

 だから、私はこっちの昨日までの記憶がまったくなくて、

 逆に今まで向こうで過ごしてきた記憶があるの。」

「・・・・・・向こうの世界、っていうのは?」

「車とかテレビとかはないけれど、代わりに魔法があって、妖怪とかも沢山いる。

 私は神社で巫女をやっていて、あちこち飛び回りながら妖怪退治をしていたわ。」

「魔法、ね。まるで御伽の国ね。」

御伽の国、と紫は漏らした。

そう、こちらの世界から見れば、まるで夢の国。

実際にはいいことばかりではないけれど、それでもこちらでは憧れの対象。

「人もね、魔理沙とか鈴仙とか、知ってる顔がいるのよ。

 魔理沙は魔法使いで、鈴仙は月から来た兎で。」

「私も居た?」

「ええ、居たわ。」

「そう。ふふっ、よかった。」

どんな人物像だったかは、ここでは伏せておこう。

あんまり本人を前にして言いたくはない。

「それで、どういうわけかはわからないけれど、

 今朝、こちらの世界の博麗 霊夢と入れ替わっちゃったわけ。」

「・・・そう。」

ずずっ、と、紫はもう一口お茶を飲んだ。

そういえば私も喉がからからだ。

私も一口だけお茶を飲んだ。

「それじゃあ、あなたは昨日までここにいた霊夢とは別人なの?」

「ええ、そのはず。」

「・・・はず?」

「こんな話、信じられないでしょう?

 私もわからなくなっちゃった。」

「どうして?」

「魔理沙に相談したらね、それは私の勘違いなんじゃないかって。

 本当は私は記憶喪失で、今朝偶然見ていた夢と現実がごっちゃになってるんじゃないかって。

 記憶喪失になったのも、いろいろ心労が重なったからなんじゃないかって。」

「・・・・・・あなたはどう思うの?」

「わからない。唯一あるこの記憶が間違っているものだとしたら、私には証明するすべがない。

 こっちの世界では空だって飛べないんだもの。」

向こうの世界の私とこちらの世界の私。

違いなんてそれくらいのことしかない。

それすら偽りのものだとしたら、向こうとこちらの私の区別なんてつくはずがない。

私が現実と夢の区別がつかなくなった、行き過ぎちゃった妄想少女である可能性もある。

というか、普通はそう考えるだろう。

私も、今となってはその可能性のほうが高いかもしれないと考えるようになった。

「やっぱり、信じられないわよね。こんな話。」

「そんなことないわ。」

紫は強い口調ではっきりと、即答した。

「私の話、信じられるの・・・?」

「もちろんよ。あなたは私の娘ですもの。」

私は言葉に詰まった。

正直、私はまだ幻想郷を信じている。

けど、それは相談に乗ってくれた魔理沙や、

私のことを娘だと言ってくれる紫を否定するということ?

「胡蝶の夢。」

「コチョウの、ユメ?」

「そう。

 ある日、荘周は蝶になった夢を見た。

 目が覚めて、荘周は人間の体に戻ったが、

 果たしてそれは荘周が蝶になった夢を見ていたのか。

 それとも蝶が荘周になった夢を見ているのか。

 そういう話よ。」

なるほど。

今の私の状況に似ている。

幻想郷の私がこちらの世界の私を夢に見ているのか。

それとも、こちらの私が幻想郷の私を夢に見ていたのか。

「どちらが現実なのかはあなたにしかわからない。

 いえ、あなたにもわからないのでしょうね。」

「・・・うん。」

「じゃあ、あなたはどちらの世界がいいの? どちらの世界を選ぶの?

 真実がわからないのなら、あなたが望むほうを選びなさい。」

私が望むほう?

私はどちらを望むの?

こちらの世界と、向こうの世界と。

こちらには、辛いことが沢山ある。

勝手気ままに生きてきた向こうとは違う。

でも、こちらにしかないものもある。

たとえば、学校。

たとえば、家族。

それに、向こうの世界に戻れる保障などどこにもない。

「もしあなたがこちらの世界で記憶をなくしてしまった霊夢なら、その責任は私にもある。

 あなたにとってここが辛いのなら、私があなたを守ってあげる。

 そしていつか、あなたをこちらに振り向かせてあげる。

 どちらを選んでも、いつだって私はあなたの味方よ。

 だから、本当にあなたが望む方を選びなさい。」

向こうの世界を選ぶなら、私は向こうに戻る方法を探さなければならない。

きっとまともな生活は送れない。

幻想郷に思いを馳せながら、この世界を否定して生きるしかない。

それでも紫は、私を守ってくれるのだという。

こちらの世界を選ぶなら、私は向こうの世界を諦めるということ。

魔理沙たちと学校に通い、卒業して、就職するのだろう。

そうなったら、いつまでも幻想の世界に浸っているわけにはいかなくなる。

それは、私の中から幻想郷が消滅するということ。

「お、母、さん・・・・・・。」

思わず口をついて出た言葉。

紫は、本当に嬉しそうに目を細めた。

私は―――

「どちらを選ぶの?

 私達が生きている、こちらの世界と。

 あなたの中にある『幻想郷』という世界と。」

・・・・・・私は、気付いた。

どちらの世界が現実なのか。

どちらの世界が夢なのか。

そう、気付いたのだ。

その上で、考えた。

現実の世界で生きたいのか。

夢の世界で生きたいのか。

どちらの世界も、私がそちらを選びさえすれば現実となりうる。

どちらの世界も現実と遜色ないリアルさ。

だからそれが夢だろうと現実だろうと、私にとっては現実に他ならない。

私がそう信じれば、それは私にとっては現実となるのだ。

「決めたわ。私は現実を生きる。

 現実である、向こうの世界を。」

そう、私は幻想郷を選んだ。

紫の表情が、わずかに曇った。

「・・・そう。あなたがそう選んだのなら、私は止めない。

 けど、現実は本当にあなたの言う向こうの世界なの?」

「ええ、間違いない。紫、あんたに相談して正解だったわ。

 お陰で向こうが現実だと確信できた。」

「・・・どうしてかしら。理由を聞いてもいい?」

「おかしいと思ってたのよ。

 魔理沙も鈴仙も咲夜も、みんな向こうの世界の人物像とほとんど同じなの。

 魔理沙は一番の親友で、鈴仙はウサ耳で、咲夜はメイドで、映姫は規則に忠実で、

 慧音は歴史を教えてて、永琳はマッドで、幽々子は大喰らいで、妖夢は幽々子のパシリで、

 輝夜はダメ人間で、アリスはやっぱりロンリーで、文は新聞書いてて、

 妹紅は体力バカで、小町はサボり魔で、藍はしっかり者で橙にべったり。橙は猫。」

一気に言い切った。

多少偏見があるが気にしない。

どうせ私の夢なのだ。

主観の固まりなのは当たり前。

「そう、あんただけなのよ。人物像で私の予想を完全に裏切ってくれたのは。

 まるで私が組んだキャストに無理矢理割り込んできたみたい。

 そうなんでしょ? スキマ妖怪の八雲 紫!」

紫は困ったように眉を潜めた。

「・・・私があなたの世界でどういう役割なのかはわからないけど、

 それは向こうの世界の私がこちらの私と違うということではないの?」

「・・・・・・誰と誰が違うって?」

「あなたの言う幻想郷の八雲 紫と、こちらの世界の八雲 紫がよ。」

私は湯飲みを傾けた。

ああ、やっぱりそうなんだ。

こっちが夢で、幻想郷が現実。

「2度目よ、紫。」

「・・・・・・?」

「あなたがその名を口にしたのは2度目。」

怪訝そうに首を傾げる紫。

いつまで芝居を続けるつもりだ。

「『幻想郷』。私はこの名をあなたの前で、いや、こちらに来てから一度も口にしていない。

 もし幻想郷が私の妄想の産物でしかないのなら、あなたがこの名を知り得るはずがない。

 それとも、顔にでも書いてあったのかしら?」

紫は一つ小さなため息をついた。

お茶を飲もうと湯飲みを持ち上げ、もう空だったことに気付く。

紫は、『空間のスキマに腕をつっこんで』急須を取り出した。

「・・・まさか、こんな初歩的なヘマを私が踏むとはね。」

優々とした動作でお茶を注いで、

ついでに私の分のおかわりも注いだ。

「お見事ねぇ。私の負けよ、霊夢。

 多少の無理はあったけど、結果よければすべてよしとしましょう。」

「ならさっさと解説編に移りなさい。

 何が目的でこんな茶番を組んだわけ?」

紫の雰囲気は、もうすっかりいつもの胡散臭い感じに戻っていた。

やっぱり芝居だったのか。

「茶番を組んだのはあなた自身よ、霊夢。」

「・・・私?」

「そう。これは99%あなたが作り出した夢の世界。

 私は用意された舞台にいた、母親という役を横から拝借しただけ。

 藍が娘役なのはおそらく、あなた自身がその矛盾を減らすように配役を変えて調整したのね。

 あなたのよく知った顔ぶれがクラスメイトだったり教師だったりしたのは、

 全部あなたが決めた配役なのよ。」

・・・そうか。

その通りだ。

役を与えられた者たちは、ほとんど私の主観による偏見に忠実だった。

そうじゃなかったのは、横から割り込んできた紫だけだったということか。

「でもこれ、普通の夢じゃないわよね?

 疲れもあれば痛みもある。五感が普通に働いている。

 夢にしちゃリアルすぎるわ。」

「そうね。それは私の能力によるもの。

 つまり、私があなたに真っ白な台本を渡して、

 それにあなたは『こちらの世界』というシナリオと配役を書き込んで劇を始めた。

 私はそれに横からこっそり、母親役を挿げ替えた。という感じかしら。」

トリガーを引いたのは紫、母親役のポストを書き換えたのも紫。

それ以外はすべて私が行ったこと、なのか。

「ま、それがわかっちゃえばどうということはないわ。

 さっさと幻想郷に帰して頂戴。」

「まあ待ちなさい。犯人がわかったら次は動機の追求でしょう?」

自分で言うな、自分で。

どうせただの気まぐれだろうに。

「まあ、ひどい。全部あなたのためだというのに。」

私のため・・・?

この夢が?

「そうよ。湖の水だって、かき混ぜなければ腐ってしまうものね。」

「意味がわからない。」

「聞きたい?」

「話したいんでしょ。」

「うん、話したい。」

もう勝手にしろ。

とにかく最終的に幻想郷に帰れればそれでいい。

「まず、今の幻想郷にいるあなたの状況だけど。」

「うん。」

「死んだわ。」

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・はい?

「死んだ?」

「そう。ほとんど死んだ。限りなく死んだわ。」

意味がわからない。

完全に死んだ、というわけではないのか?

「死んだら小町のケツ蹴飛ばしながら三途の川を渡って、

 映姫の理不尽な審判を受けて地獄なり天国なりに遠征するんでしょ?

 全然違うじゃない。それともここが天国?」

「完全に死んだわけではないわ。

 肉体が使い物にならなくなって、精神だけが放り出されている状態。

 ま、肉体と精神が分離してたら死んでるのと大差ないわよね。」

つまり、今の私は肉体と精神が分離している状態なのか。

よくわからない。

なんでそんな状態になったのか。

「覚えてないみたいね?」

「ええ。」

「無理もないわね。死ぬほどのショックを受けたら普通は記憶だって千切れるわ。

 よかったわね、覚えてなくて。」

「よくない。説明しろ。」

「あら。でも結構ショッキングよ?」

死んでるって聞いた時点で十分ショッキングだ。

今更なにがこようとたいしたことはない、はず。

「あなたはね、魔理沙の魔導実験の失敗に巻き込まれたのよ。

 方陣張ってた魔理沙本人は怪我一つなかったんだけど、

 偶然訪問してきたあなたがそれに巻き込まれちゃったわけ。

 そりゃあもうひどいのなんのって。

 爆心地のすぐ脇にいた霊夢はほとんど即死。

 2つあるはずのパーツが1つしかなかったりとか、

 もう見た瞬間胃袋の中身がカラッポになるくらいひどい有様だったのよ。」

「・・・・・・で、どこからが嘘?」

「魔理沙の魔導実験から。」

「全部かよッ!!」

湯飲みの中身をぶちまけてやろうと振りかぶったら、

残念ながらすでに空だった。

これほどお茶がうまいことを呪った瞬間はない。

「と、言うよりも。魔理沙の魔導実験のところだけ嘘。

 あなたが致命傷を負ったのは本当のことよ。」

私がそんな、聞くも語るもスプラッタなことになったってことか?

「冗談でしょ?」

「多少の脚色があったことは否めないけど、

 あなたの肉体が使い物にならないレベルまで損傷したのは本当。」

一体なんでそんなことに?

全然覚えていない。

「あなたはね、近隣の人里から妖怪退治を依頼されたのよ。

 あなたはそいつにやられたわけ。ま、ほとんど相打ちだったけどね。」

「私が妖怪退治でヘマをやらかしたってわけ?」

「無理もないでしょう?

 あのレミリア・スカーレットよりちょっと弱いくらいの妖怪が、

 スペルカードルールも無視して本気で殺しにかかってきたんだから。

 弾幕ごっこに慣れきってたあなたじゃ相打ちになっただけ上出来ね。」

「・・・その空気読めない妖怪さんは、なんでスペルカードルール無視してきたわけ?

 そんなに恨まれるようなことした覚えはないけど。」

「単にルールを理解できるほどの知能がなかったんでしょ。」

「・・・ああ、納得。」

最近流行のKYとかいうやつか。

私よりもむしろそいつが学校に通うべきではないだろうか。

「それで、あなたは限りなく死んじゃったわけなんだけど、

 幸い、ほら、居たでしょう? 月から来た天才さん。

 彼女のお陰でギリギリ助かったのね。」

「私の精神がこんなところにほっぽりだされてるってことは、助かってないんじゃないの?」

「黙って最後まで聞きなさいな。

 肉体のほうは修繕中よ。ただ、それにかかる時間が約1ヶ月程度。

 肉体の損傷が激しすぎたから、その間精神は肉体に戻れないままの状態が続いたの。

 そこでさっきの動機の話。」

「湖の水は、かき混ぜなければ腐ってしまう?」

「そう。肉体が活動できないせいで、精神のほうがまったく刺激を受けられない状態が続いた。

 そうすると、肉体は回復していても精神が衰えていって、いずれは死んでしまう。

 そこで夢という手段を使って、肉体を使わずに精神活動をさせておこう、というわけ。」

なるほど。

私のため、というのもあながち嘘ではないわけだ。

「ちなみにこちらの世界の今朝から今の時間までで、

 幻想郷では大体一ヶ月くらいの時間が経ってるわ。

 そろそろ肉体のほうも完全に回復したでしょうね。」

「そ。なら戻れるのね?」

「ええ、戻れるわ。でも―――」

紫はお茶を一口。

十分すぎるほど間をおいてから続けた。



「―――あなた、本当に幻想郷に戻りたい?」



・・・・・・は?

どういう意味だ?

そんなもの決まっているじゃないか。

「私はね、このあなたの作り出した世界を見て思ったわ。

 ああ、ここは博麗 霊夢の夢なんだ、って。」

「そりゃそうでしょう。あんたが見せたんでしょ?」

「そっちの夢じゃないわ。寝るとみるほうの夢じゃなくて。

 将来なりたい職業とか、憧れとか、そっちのほうの夢。」

ゆ、め・・・?

「そう。この世界はあなたの願望なのね。

 幻想郷と外の世界との境界に住むあなたは外の世界のことも知っている。

 あなた本当は普通に学校に通って、クラスメイトと馬鹿やりながら過ごしたかったんじゃない?

 普通に家族と一緒に暮らして、もっとお母さんに甘えたかったんじゃない?」

「そんな、こと・・・・・・。」

「私は本当は見ているだけのつもりだったのよ。

 でもね、この脚本を見て気が変わったわ。

 だから母親役としてあなたの決めた配役に割り込んだの。

 こうしてあなたに真実を話して、夢と現実をフェアにするために。」

夢と現実をフェアに?

「そう、ここにはあなたの望んだものがある。学校も、クラスメイトも、家族も。

 ここは現実じゃない、あなたの作り出した夢の世界なのだから。

 でも現実に勝るとも劣らないリアルさ。暑さも痛みも料理の味も感じる。

 そう、あなたさえ望むなら、こちらの世界が現実に成り代わることができる。

 ここは生と死の境界であり、夢と現の境界でもあるのよ。

 その上でもう一度聞くわ。

 あなたは、どちらの世界を望むの?」

夢より現実のほうがいいに決まっている。

でも、本当にそうだろうか。

五感も普通にあるし、現実とまったく遜色ない夢。

ここで言う夢と現実なんて、ただの型枠の名前でしかない。

所詮人間なんて主観の生き物だ。

客観なんてわかりはしない。

この世界だって主観的に見れば現実そのものだ。

なら、私は・・・・・・。

「・・・・・・?」

なにか違和感を感じて、ポケットに手をつっこんでみた。

なにか入っている。

なんだったっけ?

私のスカートのポケットから、小さな人形の頭が飛び出していた。





~帰宅~ 博麗 霊夢





眩しい。

陽光が目蓋の向こう側から瞳を刺す。

どこからか、小鳥の歌うような囀りが聞こえる。

夢を見ていた。

どんな夢なのかは、もう思い出せないけれど・・・。

ひどくだるい。

もう何ヶ月も体を動かしていなかったかのよう。

関節がぎしぎしと軋みをあげる。

まるで今の今まで死んでいたみたい。

・・・いや、寝ていただけだけど。

つまり、あれだ。

誰にとっても疎ましい瞬間が訪れたのである。

要するに、朝。

「・・・・・・眠い。」

掛け布団を頭まで引きずりあげて、攻撃的な陽光を遮断する。

布団、じゃないな。タオルケットかなにかか。

そういえば暑い。

今は夏なんだっけ。

まだ起きたくない。

起きたくないし、起きなければならない理由もない。

ならもう少し寝ていよう。

いや、少しと言わず昼くらいまで。

「お~い!」

うぐっ。

嫌な声が聞こえた。

魔理沙だ。

「お~い、霊夢! いつまで寝てる気だよ!」

ドタバタと縁側の廊下を走りながら、霧雨 魔理沙は声を張り上げる。

最悪だ。

よりによって、こんな調子の悪いときに早朝から来ないで欲しい。

私は眠いのだ。

寝かせてくれ、頼むから。

なんとかテレパシーで意思が通じないかと念じ続けてみるが、

私にそんな能力があるはずもなく。

「いい加減に起きろって。とっくに起きてるはずだって紫が言ってたぞ。」

スパーン、と襖を開けて、魔理沙が私の部屋に入ってきて。

・・・襖?

私の部屋はドアじゃなかったっけ・・・?

いや、どうでもいい。

とにかく寝よう。

「おい。」

無視無視。

「おいってば。」

くっ、今日はしつこいわね。

暇ならゲーセンでも行ってシューティングでもやってればいいじゃない。

「いい加減に、しろッ!」

がばぁ!

と、タオルケットが盛大に剥ぎ取られた。

「うぅ~・・・、あと3時間寝かせて。」

「馬鹿言ってんじゃない。1ヶ月じゃ寝たりないってか?」

「なによぉ、今日は開校記念日って言ってたじゃない~・・・?」

「寝ぼけてるのか?

 オーケー、わかった。」

たっぷりと、間を持たせてから魔理沙は続けた。

「(プチ)スターダストレヴァリエ。」

「ぎゃッ!!」

頬とか腕とかいろんなところに、なにかチクチクしたものが突き刺さった。

驚いて目を開けると、

目の前には魔理沙が居た。

トランプサイズのカードを片手に、呆れたようにこちらを見ている。

「おはよう霊夢。」

「・・・黒いわね、魔理沙。」

「いつも黒いぜ。」

あちこちに刺さった星をぷちぷち引き抜いていくうちに、

ようやく頭が冴えてきた。

そっか、私、戻ってきたのか・・・。

続けてドタバタと激しい足音。

「魔理沙!? 霊夢が目を覚ましたって!?」

「おおう!? 早いなアリス。」

アリスか。

アリスって、廊下をドタバタ走ってくるほど騒がしい奴だったっけ?

「おはよう、アリス。心配かけたみたいね?」

「し、心配なんて1tもしてないわよ!!

 私は1ヶ月も寝てた霊夢の寝起きのひどい顔を見に来ただけ!!」

アリスは、ふん、と鼻を鳴らしながら、

すとんと布団の脇に腰を下ろした。

顔を見に来ただけの割には居座る気満々だ。

しかし、単位が1tとは大きいな。

「体の調子はどうだ?」

「ぎしぎし言ってるわ。油差してないブリキ人形みたい。」

「そりゃそうだ。腹の中もカラッポだろ。

 おかゆでも持ってきてやるからちょっと待ってろ。」

魔理沙がそう言うと同時に、お腹が切なく鳴った。

向こうでは晩御飯食べてきたのに・・・。

魔理沙はそれに苦笑すると、小走りに部屋を出て行った。

それと入れ替わりに、今度は鈴仙が部屋に駆け込んできた。

「あれ!? 元気そう!?」

「悪かったわね。」

「あ、あはははは。そういう意味じゃなくてね。

 1ヶ月も寝てたら普通は起き上がる事だってできないわよ。

 筋力は相当衰えてるはずだし。」

平気なところを見せようと腕を上げたら、

肩より上に上がらなかった。

これが噂に名高き四十肩か。

いや、1ヶ月だから三十肩?

そもそも寝てた日数じゃないし・・・。

「そうだ、鈴仙。」

「ん、なに?」

「ほぼすべての動植物において、遺伝情報を構成している物質を正式名称で答えなさい。」

「デオキシリボ核酸だけど、何、突然?」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「生意気ね!!」

「何故ッ!?」

困惑する鈴仙に、私は一人でニヤニヤしていた。

このやりとりもそのままだ。

「霊夢。」

「ん?」

アリスのほうを向くと、

目の前に人形がふわふわ浮いていた。

ご丁寧にお盆に湯気の立ったお茶を載せている。

「病み上がりには好物を摂取するのが一番でしょ。」

「これはどうも。」

アリスに礼を言ってお茶を頂く。

ついでに、お茶を持ってきた上海人形の頭を撫でておいた。

人形のくせに嬉しそうに目を細めるところがかわいい。

意外と早く、人形にお茶を淹れてもらえるときが来てしまったようだ。

残念ながら、スカートのポケットには人形はもう入っていなかったけど。

「うわっちゃー!!」

台所のほうで、魔理沙が中国人みたいな絶叫を上げた。

火傷したらしい。

「なにやってるのよ、もう。」

アリスと鈴仙がどたばたと部屋を出て行く。

鈴仙は応急手当役だからともかく、アリスまで行く必要はないだろうに。

まあ、いいや。

ぐぐっ、と体を伸ばすと、関節がパキパキ鳴った。

昨日まで炎天下の中マラソンをしていたはずなのに、

戻ってきてみれば極度の運動不足とは。

まったくの走り損じゃないか。

「おはよう霊夢。お目覚めはいかが?」

「お陰さまで。」

声に送れて、空中からひょっこり顔が生えてきた。

紫だ。

私はいつも以上に嫌そうに顔をしかめた。

「あらひどい。そんな顔しなくてもいいでしょう?

 助かったのは私のお陰でもあるのよ?」

「黙れ狸。」

何が私のお陰だ。

楽しんでたくせに。

「ふふっ。でもよかったの?」

「なにが。」

「こっちの世界で。あっちにはあなたの望むすべてがあったというのに。」

「ないわ。なにもない。」

「ない? あれはあなたの願望の世界でしょう?」

「そうね。でも魔理沙も鈴仙もアリスも、誰も居なかった。」

「居たじゃない。」

「違うわ。あれは私よ。

 魔理沙役の私。鈴仙役の私。アリス役の私。

 私の主観によって構成された、私の中のあいつら。」

あれは私の主観であり、私がそれらの役を演じているに過ぎなかった。

クラスメイトも家族も居た。

それでも、私は一人だった。

だから私は選んだのだ。

この、みんなが居る幻想郷を。

「でも、そうね。

 やっぱり礼くらいは言っておいてあげようかしら。」

「あら、お礼なんていいのよ。その代わり―――」

紫は限界までその意地悪い笑みを強くして、

「―――ママって呼んで?」

「死んでしまえ。」

私はそれに精一杯の悪態で答えた。






投稿13発目。

みなさんあけおめです。
新年一発目はもう何番煎じかもわからない学園モノ。
でもまあ、一応ストーリーは繋がっているものなので一味違う、かも。
こんな長いの最後まで読んでくれて本当にありがとうございます。(礼)


キャスト

博麗 霊夢      :17歳。2年D組。帰宅部。悩める乙女。少女妄想中。
霧雨 魔理沙     :17歳。2年D組。陸上部。陸上部最速の足を持つ。
アリス・マーガトロイド:17歳。2年D組。工芸部。実はイギリス人と日本人のハーフさん。ロンリー。
因幡 鈴仙      :17歳。2年D組。生物部。ウサ耳バンドをしてはいけないという校則はない。
十六夜 咲夜     :17歳。2年D組。帰宅部。放課後はメイドのアルバイト。ジョジョヲタ。
射命丸 文      :17歳。2年A組。新聞部。東方学園最速の足を持つ。新聞は人気ない。
魂魄 妖夢      :16歳。1年D組。剣道部。剣道部期待の星、兼パシリ。

四季 映姫      :年齢不詳。2年D組担任。顧問なし。担当教科は倫理。通称ヤマさん。
上白沢 慧音     :26歳。2年C組担任。歴史研究部顧問。担当教科は歴史。怒ると角が生える錯覚。
八意 永琳      :永遠の25歳。2年B組担任。生物部顧問。担当教科は生物。年齢の話は禁句。
西行寺 幽々子    :27歳。1年D組担任。剣道部兼茶道部顧問。担当教科は家庭科。通称ピンクのあくま。
蓬莱山 輝夜     :13歳。担任なし。顧問なし。担当教科は国語。「ばかにするな! せんせーだぞ!!」
藤原 妹紅      :26歳。2年A組担任。陸上部顧問。担当教科は体育。死なずの不死原。
小野塚 小町     :28歳。2年E組担任。顧問なし。担当教科は数学。グレートティーチャーオノヅカ。
紅 美鈴       :28歳。3年C組担任。卓球部顧問。担当教科は体育。中国から来た外来の先生。中国。
風見 幽香      :年齢不詳。担任なし。園芸部顧問。担当教科は生物。出番は名前だけ。

チルノ        :10歳。初等部の生徒。蹴ったほう。
ルーミア       :10歳。初等部の生徒。蹴られたほう。
森近 霖之助     :25歳。購買のお兄さん。魔理沙の従兄弟。学校はハーフパンツなのになぜかブルマが並んでいる。

八雲 紫       :年齢不詳。料理上手で、美人で、博識で、その上優しい。未亡人(!)。
八雲 藍       :24歳。社長秘書。パーフェクト超人。ねこだいすき。
八雲 橙       :2歳。ペットの猫。声の出演:?
神綺         :年齢不詳。イギリス人の旦那さんと国際結婚した日本人の奥さん。『Alice Chan Love♪』
暇人KZ
http://www.geocities.jp/kz_yamakazu/
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コメント



0.7630簡易評価
5.90名前が無い程度の能力削除
いや面白かったです。読みごたえがありました。
最初はそのままパラレルものとして終わると思っていましたが、そのあとの意外な展開にちょっぴり驚きました。
私が一番好きだった場面は、昼休みに霊夢とアリスが食事をしていて、人形のお話をしていた場面です。
最後に嬉しそうな顔をしたアリスを頭に浮かべて、なんだか自分も幸せになった気分です。
7.80名前が無い程度の能力削除
素晴らしいというよりすごい!
パラレル系の話は好きなのでそれだけでも良かったんですが、あくまでその方向でオチなのかな、と思わせておいて、最後にキッチリ元の世界に戻ってくる理由付けと文体ギミックといい。楽しませて貰いました

ただ、東方らしさという点では若干-要素があるようなないような…(それでも十分いけますが)
8.100名前が無い程度の能力削除
これは面白い!
10.80名前が無い程度の能力削除
読み進めるうちにどんどん面白くなっていきました。GJ!
11.100名前が無い程度の能力削除
いや~楽しかった。
序盤のギャグ満載の展開から中盤のシリアス路線の移り変わりが
大変よくできていて中々凝った構成だなと思いました。
でも紫ママが実際にいたら絶対マザコンになっちゃうだろうなあ…
13.100時空や空間を翔る程度の能力削除
コレはお見事の一言では済まされない。

夢と現実と幻想郷が1つの糸で結び着ける話の良さ、
下味がじっくりと染み出す面白さです。

14.90名前が無い程度の能力削除
題名から初夢ネタの夢オチENDかと推測して読んでたら、結構シリアスな面も出てきて、いい意味でやられました。
ウン、面白かった。
30.90三文字削除
夢でも良いから幻想郷に行ってみたいなぁ
まあ、夢は夢と自覚しなければ主観的に現実ですからね。
それと、未亡人の紫様に惹かれたのは俺だけで十分です
32.70名前が無い程度の能力削除
読んでいる途中では少しくどいように感じた登場人物に関する説明が、実は霊夢の思っている彼女らであった、という収束をしたのは感嘆しました。

紫が介入しなかった場合の母親役は誰だったんでしょうね?そもそも存在しない役なのかな?
33.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。ゲットバッカーズの世界観と似てますね、あちらとは逆ですが。

紫が母親役をやっていたことにみょんな深さを感じます。
35.100名前が無い程度の能力削除
皆さんが真面目に、いい感想書いてらっしゃるところ申し訳ないですがこれだけは言わせて欲しい。
ジョジョオタの咲夜さん最高すぎだろ!俺の理想型咲夜さんがここに爆誕なされましたねもう。性別を越えた友情を築けます。
それだけでなく読み物としてもとても楽しく読ませていただきました!新年早々うきうきしてしまいました。学園ものいいですねぇ・・・。100点付けさせてもらうしかないや。
36.90名前が無い程度の能力削除
うわ、いいなこれ。
出来ればこのまま夢の続きが見たい。
他の面子がどうなってるのか想像するだけでニヤニヤが止まらないわww
39.80乳脂固形分削除
これはいいですねw なんとなく、ヴィジュアルノベル感覚w
ほんとゲームにしたら面白そう。自分の妄想とベストフィットで楽しいw
JOJOネタに固執する咲夜とか、声を出して笑ってしまいましたw
42.70いらんこといい削除
>>「・・・まさか、こんな初歩的なヘマを私が踏むとはね。」
これは、「やっと気づいたのね」的な感じの方がいいのでは。
肉体の修復も終わりかけてるみたいですし。
47.100幽霊が見える程度の能力削除
時空や空間を翔る程度の能力さんに同じ
52.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいアイディアと、綺麗なまとめかた。

楽しませて頂きました。
57.100名前が無い程度の能力削除
ただただ圧倒されるばかりです…。
普通に哲学の題材として使えますね、この小説は。
62.無評価暇人KZ削除
シリアスで、3000超えれば、高評価(5:7:5)
なんかたくさん評価もらえたみたいでホッとしました。
みなさんありがとうございます。いい肥やしになります。(礼)
いらんこといい氏からいい所につっこみが入っているので、
レスがてらSSの補足をば。

この『紫ママ』という人物像は紫の演技だった、ということで収束していますが、
実はこれは紫の本質的な部分、無意識下の母性や慈愛といった部分の表れです。
本人は『紫ママ』の演技をしているつもりでしたが、実は素の紫だったんですね。
このことは霊夢はもちろんのこと、紫本人ですら気付いていません。
ゆえに、霊夢と紫の主観のみで構成されたこの物語では語られない部分です。
本質的にはまさにその通りなのですが、それに気付けるのは読者の方だけです。
そう考えると、『紫ママ』という人物像がもっとジューシィになりますね。
65.無評価司馬貴海削除
話のオチが歌月十夜みたいだったな、とこのメッセージを書き始めたときに思った。だがそれがいい。
あとがきにネタが入り込んでて笑ったww 原作でも猫の声は「?」になってるんですよね、あれ
66.100司馬貴海削除
点数忘れorz
67.100あらさん。削除
コレイイ
69.100名前が無い程度の能力削除
むぅ・・・一話完結なのか・・・
面白かったです。特に魔理沙がw
でも、できれば紫が夢の世界であることを伝えたあたりまでを前編にして、その次の日もう一度学校に行って霊夢が幻想郷と夢の世界のどちらを選ぶか悩むシーンが欲しかったかなぁと。
でも十分に楽しめました。次回作が楽しみです。
71.100名前が無い程度の能力削除
こういうの凄い好きです
いい作品をありがとう!
74.100名前が無い程度の能力削除
その文才を分けてくれ!
75.100bobu削除
すごく良かったです。
一ヶ月分引っ張って欲しいと思ったぐらい良かったです。
ありがとうございました。
79.100名前が無い程度の能力削除
紫が霊夢のお母さんって設定は案外しっくりくるなぁ
80.100名前が無い程度の能力削除
こういうのもいいね!
97.100名前が無い程度の能力削除
面白かった!
118.100マイマイ削除
色んな所で律儀に笑った自分がいるwww
122.100名前が無い程度の能力削除
最後らへんの霊夢の「死んでしまえ」が笑えたwww
125.100名前が無い程度の能力削除
最近紫が原作でも霊夢のお母さんみたいになってるからなあ
いや、ほんとうに楽しませてもらいました
134.100名前が無い程度の能力削除
おもろー
137.100名前が無い程度の能力削除
素敵です。
どうも。
142.100名前が無い程度の能力削除
いやあ、良かった!
150.100名前が無い程度の能力削除
貴女のSSにはアリスへの愛がこれでもかというほど溢れている
素晴らしい!アリスかわいいよアリス!!
ついでにレイアリはジャスティス!
153.100幻想にあこがれを抱きそうな中2削除
霊夢が幻想郷という言葉について紫を問いつめるところがかっこよくて感動した。
166.100名前が無い程度の能力削除
これは斬新な学園物だ…

いやおもしろかったです。
171.90名前が無い程度の能力削除
もうちょっと長ければよりよかったと思います。
紫の態度についてはフリーレスを見て納得。
全部演技なら、あせってボロをだしたり、「お母さん」ってつぶやきに喜んでいたり、
夢の世界に引き留めようとするのはおかしいですものね。
174.100日間賀千尋削除
私が読んだ学園モノの中で一番感動しました。            もっと早くこの作品に出会いたかったです。
176.100名前が無い程度の能力削除
学園ものは苦手なはずなのに東方だから楽しく読めてしまった。
後半の展開にはひきこまれた。
183.90S_Kawamura削除
オチがしっかりしていてGOOD!もっと長編でもよかったなぁ。
187.100名前が無い程度の能力削除
藍さまが24歳ってことは配役上紫は四十過g(ry
192.100絶望を司る程度の能力削除
ギャグとシリアスがいい感じに混ざってたと思います。
201.100うそっこ大好き削除
素晴らしかった。ずっと心に残る作品でした。