Coolier - 新生・東方創想話

夢の終わり

2008/01/04 03:42:23
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「霊夢~、遊びにきたぜ~」
いつもの様に魔理沙が博麗神社へとやってきた。
しかし同じくいつもの様に縁側でお茶を飲んでいるはずの霊夢の姿が見当たらない。
今まで無かった事に魔理沙は軽く首をかしげながらも勝手知ったる他人の家とさっさと上がりこんでいく。
「霊夢~、どこだ~」
大して広くない神社だがそれでも部屋数はいくつかある。
一つ一つ覗き込んで最後に霊夢が寝室として使用している部屋を魔理沙は覗き込んだ。
そしてそこに霊夢は居た。
ただし寝間着のまま、布団につっぷしている。
「なんだ、まだ寝てるとは寝ぼすけだな」
そう言って笑いながら近寄っていく魔理沙はある異変に気がついた。
それは霊夢の姿勢の不自然さと周りに置いてある物の乱れ方だった。
枕元に置いてあったであろう小物類はぶちまけられ、霊夢は倒れたかのような姿勢をしていた。
「霊夢!おい!しっかりしろ!」
魔理沙が霊夢を抱きかかえて声を掛けるが霊夢は青白い顔をして苦しげに息をするだけで目を覚ます気配が無かった。
魔理沙は霊夢を布団に寝かせると神社を飛び出していく。
魔理沙の向かった先は永遠亭。
永琳の下だった。

「・・・どうなんだ?永琳」
「・・・師匠?」
心配そうに覗き込む魔理沙とウドンゲ。
永琳はただ真剣な表情で聴診器を当てている。
「内蔵系の疾患ではなさそうね・・・熱もない・・・寧ろ異常なまでに冷たい体温・・・」
永琳は呟くように言う。
しかしその表情は困惑に満ちている。
「酷く衰弱している・・・でも栄養失調や過労じゃない・・・体自体に異常は見られない・・・一体何がどうなってるの・・・」
「おい!一体何がどうなってるんだ!教えろ!」
永琳の呟きに魔理沙が堪えきれずに叫ぶ。
永琳はただ重い溜息を吐くとゆっくりと話し始めた。
「これは病気の類じゃないわ。それだけははっきり言えるわ。でも・・・今の霊夢を例えると穴の開いた器みたいね」
「穴の開いた器・・・ですか?」
ウドンゲが聞き返した。
永琳は頷くと話を続ける。
「ええ、人間が生きていく上で生命力と呼ばれる燃料のようなものが必要不可欠よ。これが少なくなれば病気になったりするわ。そしてその生命力を受け止めているのが器である体なのよ。そして今の霊夢はその器に穴が開いてる状態なの」
「そうするとどうなるんだ?」
魔理沙が苛立ちながら話を促す。
「・・・穴が小さければ軽い病気で済むし、穴自体もそのうち塞がるわ。でも今の霊夢は底が抜けているようなものよ。はっきりいって・・・1ヶ月持てば長いほうじゃないかしら・・・」
永琳の告げた事実は残酷なものだった。
霊夢の余命は後1ヶ月。
つい昨日まで普通に会話し、戯れていたはずの霊夢が後1ヶ月で死ぬ。
そんな現実に魔理沙は目の前が真っ暗になった。
「魔理沙!」
倒れそうになった魔理沙をウドンゲが慌てて支える。
気絶するのを辛うじて耐え切った魔理沙は永琳に懇願する。
「頼む!霊夢を治してやってくれ!なんだって協力する!お前は天才なんだろ!それぐらい出来るだろ!」
普段他人に頭を下げる事の無い魔理沙が土下座までして永琳に霊夢の治療を依頼する。
しかし永琳は首を横に振った。
「無理よ・・・天才は万能じゃないの・・・私では霊夢の延命は出来ても治療は出来ない・・・その延命だって1ヶ月が限界なの・・・」
永琳は力無く言う。
その目には涙さえ浮かんでいる。
永琳だって霊夢を助けたい。
霊夢の事を好いていない者など幻想郷には居ないと言っても過言では無い。
「師匠・・・」
ウドンゲも項垂れる永琳を見て困惑の表情を浮かべる。
今まで、どんな困難でも打ち勝ってきた永琳の敗北。
それはあの事件の時から言って二度目とはいえ本来永琳の最も得意とする医学の分野に置いての敗北。
神社に重い空気が立ち込めた。
「とりあえず延命を施す為に永遠亭へ移動させるわね・・・」
「ああ・・・頼んだぜ・・・」
永琳とウドンゲに霊夢は永遠亭に運ばれて行く。
魔理沙はただそれを呆然と見送る事しか出来なかった。

「・・・ない!・・・これでもない!・・・これじゃない!パチュリー!他の本は無いのか!」
「魔理沙、もう魔法薬の本もウィッチクラフトの本も錬金術の本もそれで全部よ」
何もしないで居られなかった魔理沙は図書館へ押しかけると霊夢の治療が出来そうな本を探した。
しかしそこに書かれているものは全て霊夢の治療には役に立たないものばかりだった。
パチュリーが魔理沙を気遣うが魔理沙は止めようとしない。
もう自棄だと魔理沙はジャンルを決めずに次々と魔道書を探す。
「魔理沙・・・それじゃ貴方の体がもたないわよ」
「黙ってくれ!霊夢を!霊夢を助けるんだ!」
既に三日間不眠不休で本を探す魔理沙の顔には死相すら浮かんでいる。
必死で探す魔理沙だがやはり限界が来た。
「魔理沙!だから言ったのじゃない!こぁ!咲夜を呼んで頂戴!」
「は、はい!」
フラリと倒れる魔理沙を抱きしめるとパチュリーは咲夜を呼びに使い魔を走らせた。
使い魔のこぁは大慌てで咲夜の名を呼びながら飛んでいった。

「全く・・・焦るのは分かるけどそれで貴方まで倒れてどうするのよ」
「分かってるさ・・・でも・・・何かしてやりたいんだ・・・」
呆れる咲夜に魔理沙が落ち込みながら言う。
咲夜に顔を見られないように背を向けている魔理沙には分からなかったが咲夜の表情も呆れのそれではなく何処か辛そうな表情だ。
彼女もまた霊夢の事を聞き、心を痛ませているのだ。
「私だって霊夢に何かして上げたいわ。でも・・・それが分からないからといってがむしゃらに何かすればいいってものでもないわよ」
「・・・・」
咲夜の言葉に魔理沙はただ沈黙するだけだった。

「・・・霊夢・・・貴方は望まないでしょうけどいざとなれば私が貴方を吸血鬼にしてでも生きながらえさせてあげるわ」
「レミィ、残念だけどそれは無理よ」
レミリアの言葉をパチュリーが否定した。
「なぜ?」
「霊夢の血は貴方にとっては猛毒に等しいわ。彼女は博麗の巫女。その血には強い浄化の力を秘めているわ。一口でも飲めば貴方はたちまち死ぬわ。つまり霊夢を吸血鬼にする事は出来ない・・・」
人間を吸血鬼にするには吸血鬼が人間を吸血行為で死なせなければならない。
しかし霊夢の血は吸血鬼には猛毒。
つまり霊夢を吸血鬼にする事は不可能である。
「なぜその事を貴方が知っているの?」
「図書館で偶然巫女について書かれた資料を見つけたのよ。巫女は元々浄化の能力に長けた一族だけがなるものなのよ。それが幻想郷を束ねる博麗の巫女ともなれば並大抵の力じゃないわね」
そこでレミリアはハッとある事に気がついた。
それは霊夢が一度も吸血を許してくれなかった事だ。
普通に考えれば吸われるのが嫌だった、と思うとこだろうがレミリアはある事を思い出していた。
それはある宴会で酔ったふりをして血を吸おうとした時に霊夢に物凄い勢いで弾き飛ばされた事だ。
その時の霊夢の表情は怒りよりも危機迫るといった感じの表情をしていた。
何か大きな失敗を危うい所で避けることが出来た。
そんな表情だった。
「つまり霊夢は吸われたくないんじゃなくて吸わせたくなかったって事なのね・・・」
「ええ・・・貴方を殺さない為にね」
レミリアは今まで自分がどれほど危うい橋を渡ってきたのかと考え、重たい溜息を吐いた。
パチュリーはいつもの様な無表情で・・・、しかし心の中では霊夢の事を考えながら紅茶を飲んだ。

「・・・幽々子様、霊夢の事、お聞きになられましたか?」
「ええ・・・まさかあの霊夢が死ぬかもしれないなんて・・・」
幽々子の部屋で妖夢は辛そうに言う。
幽々子も書物に顔を向けたままだがその声には隠しても隠し切れない動揺が混じっている。
「霊夢は・・・ここへ来るのでしょうか・・・?」
「分からないわ・・・でも生前の記憶なんて存在しない・・・それがここのルール・・・霊夢であって霊夢でない・・・」
死者は生前の記憶を持つことは許されない。
生前の記憶があればそれは執着や後悔を生み、魂が浄化されずいつまでも転生できないからだ。
例え様々な力の束縛をうけない霊夢とは言えルールには逆らえない。
なぜなら彼女は幻想郷の一番手本とならねばならない存在だからだ。
「幽々子様・・・」
「妖夢・・・死者は死に行く生者へ干渉するべきじゃないわ・・・それはこの世の理を大きく崩す事になる・・・死はどんな存在にも等しく訪れる絶対の平等・・・例え不老不死と言えど死は存在する・・・それを止める事は出来ないわ・・・」
妖夢の言わんとすることを先読みし、幽々子は禁じた。
妖夢は申し訳なさそうに頭を下げると部屋を出て行った。
残された幽々子は書物の上に一つ、二つと涙を落としていく。
「・・・無力ね・・・私も・・・妖夢も・・・」
幽々子の呟きが虚しく響く。
「・・・霊夢・・・」
部屋の外で妖夢は空を見上げながら涙を流している。
空はどこまでも青く・・・そして何も答えてくれなかった。

「永琳・・・霊夢の容態はどうなの?」
輝夜が永琳の部屋を覗きながら霊夢の容態を尋ねる。
霊夢が寝かされている寝台の向こう側で永琳は机に向かって様々な薬品を調合したり本を読んだりしている。
「姫・・・今師匠に話しかけても無駄です・・・集中してて何も聞こえませんから・・・それから霊夢の容態ですが今は安定してます・・・相変わらず悪いままですが・・・」
ウドンゲが霊夢の様子を見ながら輝夜に告げた。
普段から他のイナバ達に比べて垂れ気味な耳がさらに垂れている。
「永琳!貴方なら出来るわ!蓬莱の薬をも作り上げた貴方なら霊夢を治せる薬の一つくらい出来るはずよ!」
永琳は自分に言い聞かせながら次々と薬を調合していく。
だがどの薬も霊夢には明確な効果が現れなかった。
精々顔色を僅かに良くするのが限界。
少なくとも今すぐには死なない程度にしか霊夢の容態は改善しなかった。
「永琳・・・」
「どうしたの永琳!貴方の頭脳はそんなものなの!」
自分を叱り付けながら永琳は薬を調合し続ける。
しかし出来上がるのは強力な薬でも霊夢には効果の無い代物ばかりだった。

「・・・紫様・・・霊夢の事でお話が・・・」
「もう知ってるわ。霊夢が死に掛けてるんでしょ?」
藍の言葉より先に紫が言う。
その表情は普段の彼女の妖艶な笑みとは違い真剣なものだ。
「原因はやはり・・・」
「ええ・・・」
主語の無い会話。
しかし長年の付き合いから何を言わんとするか互いに察する。
「・・・全ては定められた事、薄々感じていたとはいえ辛いわね・・・」
「予想より早く・・・ではありますが・・・」
悲しみに沈む主従。
「紫様?藍様?どうしたんですか?」
「橙、今から言う事をよく聞いて・・・そして覚悟しておくのよ」
「?」
遊びから帰ってきた橙に紫が霊夢の話をする。
「・・・嘘だ!」
「橙・・・辛いかもしれないが・・・これが博麗一族の定めなんだ・・・」
「紫様!藍様!嘘だって言って!嘘だって!うそ、う、うわあああああああ!」
泣き叫ぶ橙を藍は抱きしめた。
顔を上に向け、涙を流すまいと必死に堪えながら。
だがその目元には溢れそうなほどに涙が溜まっていた。
そんな二人を悲しそうに見つめながら紫はスキマへと消えていく。
決して流すまいと過去に誓ったはずの涙がスキマに浮かんでいた。

「けーね先生ぇ・・・巫女のお姉ちゃんが死んじゃうって本当?」
「・・・ッ!心配はいらない!永遠亭のお医者様がちゃんと治してくれるさ!さあ!授業を始めるぞ!」
慧音は空元気を振り絞り明るく子供達に笑いかける。
「先生ぇ・・・無理・・・しないで・・・」
「・・・すまない」
天狗達の号外で既に噂は広まっている。
子供達は慧音が自分達の為に無理やり明るく振舞っているのが分かっていた。
子供は確かに無知かもしれないが決して愚かではない。
慧音は永遠亭の方向を心配そうに見つめた。

「号外!号外!博麗の巫女危篤!博麗の巫女が危篤だよ!」
「博麗の巫女余命幾許か!?最新情報はコチラだよ!」
「号外!ごうが~い!」
新聞好きの天狗達がここぞとばかりに騒ぎ、号外をばら撒く。
その数は既に1万部を超え、今なお新しい号外が配られる。
情報は殆ど誇張されたものばかりで物によっては既に死亡したと書かれたものや後継者が決まったなどと書かれたものもある。
そんな中、鴉天狗の文はお気に入りの枝で何をするでもなくぼーっとしている。
「文様・・・よろしいのですか?」
「椛・・・貴方は私に書けと言うのですか?」
部下の白狼の椛に後ろから声をかけられても文は振り返る事なく答えた。
右手は愛用のカメラを撫で、左手は肩にとまっているペットの烏、文々丸の嘴を撫でている。
「・・・文様の望んでいたネタですよ?」
「ッ!私は!」
椛の言葉に文は声を荒げて立ち上がる。
あまりの勢いに文々丸がギャアギャアと鳴きながら飛び上がった。
「他人の不幸はネタの匂い。私達天狗の諺ですね」
「私は記者失格でもいい!例えネタの為でも!天狗新聞大会で優勝する為でも!友人の不幸を書けるほど!私は!私は!」
あくまで冷淡な椛に文は泣きながら詰め寄る。
「・・・そんな貴方だから・・・私は好きなんですよ・・・」
「う・・・ううっ」
椛の胸倉を掴んだまま泣く文を椛はそっと抱きしめながら呟いた。
その顔は語っていた。
同じ天狗である事がこれほど虚しいとは、天狗の新聞好きがこれほど悲しいものだったとは・・・と。

「・・・小町、少し話があります」
「映姫様!今日はさぼってませんよ!」
突如現れた上司に小町が驚く。
「・・・その様子ではまだ知らないようですね。あれほど天狗達が騒いでいると言うのに・・・寝てましたね?」
「う・・・すみません・・・。それで何の話ですか?」
サボり癖のある部下に頭痛を覚えつつ映姫は話を進める。
「博麗霊夢が死に掛けています。小町、今日の仕事はここで終わりにし、霊夢の元へ行きますよ」
「う、嘘ですよね!?殺しても死にそうに無いあの霊夢が死ぬなんて!」
驚いた小町は思わず映姫の両肩を掴む。
かなりの握力で掴まれているにもかかわらず映姫はそれを辞めさせようとはしなかった。
「残念ですが本当です。それと・・・彼女には私でも貴方でも二度と会えなくなります。覚悟しておいてください」
「どういう事ですか!?私達は天国でも地獄でも入る事が許可されてるんですよ!なんで会えなくなるんですか!」
死神と閻魔は死者の国へ行く事が出来る。
それは自分が運んだ相手や裁いた相手が地獄でどの様な生活を送っているか見る為だ。
ただの見学ではなく、後から来る魂たちによりリアルな話をする為である。
「・・・その事については・・・紫殿から詳しく聞かせていただけるでしょう」
「・・・」
普段あまり感情を表に出さないように心がけている映姫の顔が悲しみに沈んでいる。
長い付き合いから小町は映姫があの巫女に好意を持っている事に気がついた。
それは全てにおいて公平でなければならない閻魔なら失格者の烙印を押されるものだが小町は何も言わなかった。
今目の前にいるのは四季映姫であり、閻魔であるヤマザナドゥではないと思ったからだ。

「・・・・」
「・・・・」
「あの・・・神奈子様?諏訪子様?」
突如自分が使える二人の神に呼び出された早苗は厳しい表情をしたまま一言も喋らない主達に声をかける。
「早苗、単刀直入に言うわ。霊夢が今死に掛けてるわ」
「え!?」
神奈子の言葉に早苗は耳を疑った。
「その原因の一端を・・・私達が作った」
「・・・!」
そして諏訪子の言葉に早苗は真っ青になった。
「私達が幻想郷へ無理やり引っ越してきた時・・・貴方の力を使って結界に穴を作った・・・それが決定打になってしまった」
「とっくに限界だったってわけ・・・博麗大結界は・・・」
「そんな・・・」
早苗は呆然とその場へ崩れ落ちた。
せっかく出来たはずの友人を、己の手で死へ追いやってしまったという事実に・・・。

紫から幻想郷中に伝えられた事実は驚くべきものだった。
博麗の一族は結界を維持する為に、幻想郷を維持する為に生み出された贄の一族。
なぜ博麗一族が短命だったのか、なぜ霊夢が異変を一度も見逃さなかったのか、幻想郷と外の世界を隔離する博麗大結界がどの様にして維持されてきたのか。
全てはこの幻想郷を維持する為に作られた予備部品。
結界を保つ為に寿命を削り続ける。
結界が傷つけば傷つくほどに寿命は減り、最後には魂すら残らず消え去る定め。
度重なる異変が霊夢の寿命を削り、そして外からの来訪者が開けた穴が残り僅かであった霊夢の寿命を奪い去ってしまった。
「例え蓬莱の薬でも、運命を操る能力でも、歴史を操る能力でも、奇跡を起こす能力でも、霊夢が消える事を止める事は出来ないわ」
霊夢を心配していた者達に紫はそう説明して回った。
説明が、というよりは説明を受け入れない者を説得するのが終わった時には霊夢が倒れてから1週間が経過していた。



長いようで短い3週間はあっという間に過ぎてしまった。
永琳の努力も虚しく霊夢が目を覚ます事は無く、無情にも別れの時間がやってきてしまった。
せめて最後は神社で迎えさせてやろうと霊夢は多くの者の手を渡って神社へと運ばれていった。
神社は人や妖怪が押しかけて霊夢との別れを惜しんだ。
太陽が沈むにつれて霊夢の体は徐々に透明に近くなり、そして月が顔を見せた時、着ていた服がパサリとその膨らみを失うと同時に霊夢はこの世から消え去った。
激しく泣き喚く者、ただじっと涙を流す者、悲しみの矛先をどこに向けていいのか分からずに暴れだす者、この場には居られないと飛び出していく者。
同時に振り出した雨は、まるで幻想郷が泣いているかのようだった。



「・・・あれからもう3年ね」
「・・・そうだな」
霊夢が消え去ってから3年の年月が流れた。
博麗神社には新しい博麗の巫女が既に生み出されている。
「一体どこから来てるんだ?歴代博麗の巫女は」
「私もよく知らないわ。ただ聞いた話では外の世界で生きるべきだった魂が幻想郷に取り込まれたものらしいわ」
紫と幾分か大人びた魔理沙が上空から見下ろした先には5歳ぐらいの小さな巫女が身長ほどもある竹箒に苦戦している姿がある。
その面影はどこか霊夢とかぶる。
「さっき名前を聞いてきたら零夢(れいむ)だそうよ」
「零の夢・・・か」
魔理沙はそう呟くと神社とは反対方向へ飛んでいこうとする。
「会わないの?」
「そうだな・・・あいつが亀に乗って空を飛ぶようになったら。そん時は弟子の一人でも見つけて神社を襲撃でもするさ」
魔理沙はそう言うと手を振りながらどこかへ飛んでいった。
「歴史は繰り返す・・・ね。歴代博麗でも霊夢ほど好かれた巫女は居なかったわ。今度の巫女はどうなるのかしら?」
紫はそれだけを言うとスキマに消えていった。
神社では小さな巫女が熱心に掃除をしている。
彼女が異変を解決できるようになるのはまだ先の事である。

終わり
既に三日ですがあけましておめでとうございます。
博麗大結界はどうやって維持しているのかなぁ、と色々と考えて思いついた一つが人柱説でした。
それを元に話を膨らませて作りました。
霊夢生存END、魔理沙暴走END等々多くの終わり方を考えていたのですが自分の中で収拾がつかなくなってしまい、一番すんなりと終わった歴史は繰り返すEND(名前は適当)になりました。

誤字脱字の指摘及びご感想をお待ちしております。
夢を綴る程度の能力
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コメント



0.340簡易評価
1.40リース削除
pc98のときから名前変わってるからわりと違和感がないもんだね
3.30なつき削除
ん~、霊夢が好かれてるのはいいんだけど、なんか周りの反応がわざとらしい。
結界を維持するために寿命を削るってのもありがちだし
5.無評価名前が無い程度の能力削除
霊夢のことに関しては色々と説がついてまわってますよね。
実際この話に書かれている通りに結界の維持で寿命が削れてるのかしれないし
そうではないのかもしれない・・・。

結果としては結構楽しく読ませていただきました。
次回も楽しみにしています。
6.30名前が無い程度の能力削除
個人的にこの手のネタは興味あるので好感触でした。

が、

あからさま過ぎというか、霊夢自身も含め、周囲の反応や話の展開が御都合が過ぎるかな・・・と思います。
比較的深刻な内容(シリアス?)な割にほとんどセリフで構成されているのも惜しいです

ただ、話の筋やプロットとしては悪くはないので、これからも頑張って下さい
7.30名前が無い程度の能力削除
心情、情景描写も織り交ぜるともっと共感しやすくなるかも
8.無評価名前が無い程度の能力削除
おしい
9.90名前が無い程度の能力削除
いいのでは。
下の方がおっしゃっている通り話し言葉がわざとらしいところもありますが、
リアリズム小説として見なければそれはそれで。

今度の巫女は熱心なのかーそーなのかー
13.無評価名前が無い程度の能力削除
序盤読んでて何か知ってる内容だなと思ったら、
同じような内容の同人誌が結構前に出てたの思い出した。
ラストや細かい所はちょっと違うけど、話の筋とかは概ね一緒だったのでちょっと微妙だな。
後はやっぱり周りの人の表現が大袈裟すぎるかな。
14.-30名前が無い程度の能力削除
自分も東方キャラでは霊夢が一番好きだけど、これは「霊夢至上主義」が前面に出すぎていて、かえって痛い。。。
17.無評価名前が無い程度の能力削除
ただ霊夢が死んだってだけで特に感じ入る事はありませんでした・・・。
この文章で読者に何を伝えたかったのでしょうか