Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷のとある一日・大晦日編

2008/01/01 03:43:26
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12月31日・大晦日・人の里

幻想郷もこの日は外と同じく、年の暮を過ごしていた。
人の里の民家には既に角松が置かれ、いつ新年を迎えても良い状況だ。
「もうじき今年も終わるか」
人の里の守護者、上白沢慧音は家から出てきて晴天の空を見上げ、呟く。
時間は正午。
もう、今年最後の一日が半分終わった。
「慧音~、こっちは終わったよ~」
遠くから慧音に声をかける不死の人、藤原妹紅。
「ああ、すまない。妹紅のお陰で大分皆の作業が楽に進んでいるよ」
「ま、これくらい大した事ないさね」
妹紅は慧音の頼みで人の里の手伝いに来ていた。
万全の用意で大晦日を迎えている者もいれば、そうでない者もいる。
主に、ギリギリまで店を開いている商店などがそうだ。
そういった者達の手伝い、主に力仕事を妹紅は任されていた。
「とは言え、腹は減ったよ。昼飯にしようよ、慧音」
「ああ、そう言うだろうと思って既に用意してあるよ」
「餅食いたいな。餅」
「餅は正月になったらな」
「ちぇ~」
あまり不満そうにみえない不満をこぼしながら妹紅は慧音の後についていった。

「そうだ、妹紅。今日はウチで年を越さないか?」
家に入り、昼食を摂りながら慧音が言う。
「お?って事は年越し蕎麦くれんの?」
「それくらいは当然だろう」
「いいね~。一人で食う年越し蕎麦ってのは味気ないからね」
「それは確かに」
慧音も里の人間から慕われてはいるが、年を越す時は一人だ。
偶に他の民家から誘われたりするが、団欒を邪魔してはいけないと、いつも断っていた。
一方、妹紅は説明するまでもない。
その存在自体が知られていなかったのだから、誰かと一緒に、などあり得ない。
「ああ、それから他にも客人を呼んであるが、構わんか?」
「ああ、いいよ。大勢の方が楽しいしね」
妹紅は二つ返事で了承した。
「解った。さて、それでは私は食器を片づけたら蕎麦を仕入れに行かないとな」
食べ終えた食器を纏めながら慧音は言う。
「あっと、思い出した。蕎麦屋の親父が普段の礼をしたいから慧音に来てくれってさ。ま、蕎麦屋でこの時期だけに蕎麦だろうけどね」
「ほう、それは助かるな」
これも一重に慧音の人徳が成せる業だろう。
「さて、それじゃ私はもう一働きしてくるよ」
「ああ、頑張って来い」
慧音は妹紅を見送り、そして食器洗いに入った。
平穏無事に、人の里は年の瀬を迎えられそうだった。



午後1時・博麗神社

「ふぅ…………今日も良い天気だわ」
博麗神社の巫女、博麗霊夢は縁側で何時ものようにお茶を飲んでいた。
「よう、年の瀬だってのにいつも通りだな」
そして、何時ものように黒と白の客が来た。
「年の瀬だからいつも通りなのよ。年の瀬にバタバタしてるなんてみっともないと思わない?」
やって来た客、霧雨魔理沙に霊夢は言う。
「言われてみれば、それもそうだな」
「でしょ?という訳で、はい、お茶」
「お、悪いな」
そしていつも通り二人並んでお茶を飲む。
「ふぅ…………今年も終わりか」
「早かったような、短かったような」
二人とも頭の中で今年一年を振り返る。
「やっぱ今年の大事件と言えばあれだな。妖怪の山の神様達だな」
「ああ、あれね~。流石に神って言うだけあるわね。紫並みに厄介だったわ。色々と」
「ああ、紫の奴も本当の意味で化け物染みてるからな」
「染みて、じゃなくて化け物でしょ。あのヴァヴァアは」
「だ~れ~が~ヴァ~ヴァ~ア~ですって~」
噂をすれば影が差す。
隙間を開いてご本人の登場だ。
「あんたよあんた。一体何年生きてんのよ」
現れた境界の妖怪、八雲紫に霊夢はあっさりと言い放つ。
幻想郷広と言えども、最強の妖怪と言われる八雲紫にこう言う物言いが出来る存在は少ない。
「まったくだぜ」
ちなみに、魔理沙もその少ない分類に入る。
「ゆかりん18歳~♪」
「「嘘吐くな」」
霊夢と魔理沙が息一つ乱れずに同時に突っ込む。
完璧なハーモニーだった。
「酷いわね~」
「ああ、下二桁が18歳って言うのなら否定しないわ」
「おお、それなら確かにあり得るな」
本当に恐れというものを知らない二人である。
「年末くらい優しくしてくれても良いじゃない~」
が、紫は怒らない。
元々その程度で一々怒るほど紫の器は小さくない。
しかし、それ以上にこの二人を気に入っていると言うのがあるのだろう。
強力な存在は得てして恐れられるものだ。
紫など、その地力と超絶なまでの能力、そして常識を超えた知能指数などから周りの者にとことんまでに恐れられている。
そんな自分に媚びも恐れも見せないこの二人に好意を抱いているのだろう。
「十分優しいわよ。出会いがしらに弾幕撃たなかったでしょ?」
随分な優しさである。
「そう言われてみればそうだな」
「本当に酷いわね~」
言いつつも、それほど嫌そうにはしていない紫。
「で、何の用よ」
「別に、私の悪口が聞こえたから飛んで来ただけよ」
「暇人だな」
「その言葉、そっくりあなた達にお返しするわ」
「あ、そうだ。紫」
唐突に、何かを思い出したように紫を呼ぶ霊夢。
「何かしら?霊夢」
「今日の夜、あんたん所の式、貸してくんない?」
「藍を?」
紫もその式が橙を指してるとは思っていない。
「ええ。日の変わり目でいいから」
「なるほどね~。解ったわ。その時間なら良いでしょ」
霊夢の言葉で状況を察した紫は了承を出す。
「ありがと。助かるわ」
「それにしても、他にも人手必要そうじゃない?」
既に紫は大まかな状況を察知したようだ。
「大丈夫よ。既に人材は確保してあるわ」
「あら?そうなの?じゃあ心配ないわね」
「ええ」
「それじゃあ、今晩を楽しみにさせて貰うわ」
「お賽銭、期待してるわよ」
「別れの挨拶がそれって言うのもどうかしらね?」
最後にそう言い残して、紫は隙間を開けて消えていった。
「何の事だったんだ?」
話に付いて行けなかった魔理沙が霊夢に尋ねる。
「こっちの話よ。それより、どうせ今年もウチで年越し蕎麦食べるんでしょ?」
「おう」
さも、それが当然であるかのように返す魔理沙。
余談だが、霊夢も魔理沙も、加えるなら正月の祭りに参加する面々の大半は、その時期に紫が冬眠から目覚めているのは知っていた。
「それじゃあ、後で慧音の所にお蕎麦もらに行かないとね」
「物乞いかよ」
「違うわよ。お裾分けを貰いに行くのよ」
「似たようなもんだと思うがね~」
「文句言うなら蕎麦あげないわよ」
「それは困るぜ」
そんないつも通りの二人のやり取り。
既に正月の準備を終えている博麗神社は、後はその時を待つばかりのようだった。



午後2時白玉楼

「ふぅ………なんとか間に合ったな」
庭を見やりながら、額の汗をぬぐい、庭師の魂魄妖夢が呟く。
「あら~、綺麗になったじゃない」
そして、白玉楼の主、西行寺幽々子が現れて言う。
「はい。やはり一年の節目ですからね。こういう事はしっかりとしないと」
幽々子の方を振り向いて妖夢はそう返す。
「そうねぇ。それからお蕎麦も大事よね~」
早速食い物の方に思考が働く冥界のお姫様。
「一年の垢を落として新年を迎える。やはり、良いものですね」
それとなく、主の欲求を流して続ける妖夢。
「ええ、そうね~。それに何と言って年越し蕎麦よね~」
が、流しきれない。
「もう、言われなくても解ってますよ。準備の方はしておきますから、そんなに焦らないでください」
妖夢は素直に諦めた。
どの道、今の妖夢ではまだまだ幽々子を流す事など出来ないだろう。
「あ、準備はしなくて良いわよ~」
「え?」
主からの意外な発言に、妖夢はキョトンとする。
「今日は紫から御呼ばれされてるから、夜になったら一緒にマヨヒガに行くわよ」
「あ、そうでしたか」
別段珍しい事ではない。
この白玉楼に紫率いる八雲一家を招く事もあれば、紫に幽々子と妖夢が招待される事もある。
無論、別々に新年を迎える事もある。
「では、こちらからも何か持っていきましょうか?」
「そうね~………まぁ、適当に包んでおいて頂戴」
「畏まりました」
そう言って妖夢は包む物を探しに奥へと向かう。
一人残った幽々子は何処からともなく、お茶と茶菓子を取り出し縁側に座る。
「さて………来年はどんな年になるのかしらねぇ?」
そして、お茶をすすりながら、天を仰ぎ、そう呟いた。



午後3時・永遠亭

「ぬぅ………どういう事だ?」
妖怪兎(獣型)が廊下を雑巾掛けしながら、呟く。
「どしたの?」
偶々通りかかったてゐが尋ねる。
「ああ、軍曹」
「誰が軍曹なのよ」
この妖怪兎、通称ラビット・スネークは、姫の読んでいた軍隊物の書籍の影響を受け、妙なしゃべり方をする。
そして、てゐを軍曹、鈴仙を大佐と呼ぶのだ。
「先ほどから廊下が奇麗にならんのだが…………」
廊下には雑巾掛けをしたはずだが、何故か足跡が付いていた。
「あんた馬鹿?足見なさいよ、足」
「足………?肉球が付いてるが?」
「そんなの見ればわかるわよ。汚れてるでしょうが。あんたの足」
「はっ!?これはしたり!!」
「いや、何が「したり」なのよ」
因みに、「したり」とは、上手くやった、あっぱれ、という意味と、しまった、という意味がある。
この場合は「しまった」の方だ。
「あんたが前に進みながら雑巾を掛ける。その後をその足で走る。汚れて当然じゃないの」
「ぬぅ…………これがコーメイの罠と言うものか………」
「んな訳ないでしょ。ああ、もう、ちゃんとやっておいてよ」
頭を押さえながらてゐは去る。
「そうは言うがな、軍曹」

ぐぅ~

妖怪兎のお腹が鳴る。
「食欲を持て余す」
しかし、その呟きは誰にも聞こえる事がなかった。

ぐぅ~

「…………持て余す」
暫し考え込んでから、妖怪兎は再び雑巾掛けを開始した。
前と変わらぬやり方で。
数時間後、同じように悩んでいる妖怪兎を永琳が発見し、相手にするのも疲れそうなので、ダンボールを被せたのはまた別の話だ。

「ふぅ………今年も終わりね」
お茶を啜りながら、居間で永遠亭の主、蓬莱山輝夜は呟く。
「ええ、そうですね」
同じく、お茶を啜りながら従者でもある八意永琳が答える。
「師匠、姫、大掃除、粗方終わりましたよ~」
月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバが居間に入って来て報告をする。
「そう、御苦労さま、イナバ」
「今晩はどうします?」
鈴仙が夕食の事を尋ねる。
「ああ、夕食の準備はいいわ。今日は御呼ばれさてるから」
輝夜がそう答えた。
「という事は、師匠もですか?」
鈴仙は永琳に尋ねる。
「何を言ってるの、うどんげ。貴女もてゐも一緒よ」
永琳はそう答えた。
「あ、そうなんですか?で、何方に呼ばれたんですか?」
正直、鈴仙は兎も角として、輝夜や永琳はあまり幻想郷の者達と交流はない。
理由は二人とも滅多に外出しないから。
対して、鈴仙は薬売りや買い出しで外出する事が多いため、何気に交流は多い。
「それは秘密。ま、楽しみにしていなさいな」
しかし、輝夜は鈴仙の質問には答えず、そう返した。
「解りました。それで、持って行く物はありますか?」
どうせこれ以上突っ込んでも答えてくれないのは解っているので、鈴仙は素早く切り替えた。
「そうね~………まぁ、それはこっちで選ぶから気にしないでいいわ」
「解りました」
「まぁ、それまでゆっくりしていましょ」
再びお茶を啜りながら輝夜はそういう。
そして、鈴仙も輝夜や永琳に倣ってお茶を飲み始めた。



そして夜の帳が落ちる



午後9時・博麗神社

「突然呼び出されて何事かと思ったら、年越し蕎麦とはね」
七色の魔法使い、アリス・マーガトロイドは呆れたように呟く。
「まぁ、前の時のお礼みたいなものよ」
前の時、とはクリスマスの時にアリスに御馳走を振舞ってもらった時の事だ。
「意外に律義なのね」
「意外に、は余計よ」
「しかし、珍しいのが居るな、今日は」
魔理沙がその珍しい面々を見て言う。
「私は正当な報酬を頂きに来たまでですよ」
「私は文様の付き添いです」
鴉天狗の射命丸文と白狼天狗の犬走椛だ。
「私は博麗の巫女に呼ばれたので」
そしてもう一人。
いや、一神と言うべきか。
厄集めの神、鍵山雛だった。
「ふむ。まぁ、雛は何の為に呼んだのかは察しがつくが、天狗二人は何の報酬だ?」
魔理沙が文と椛に問いかける。
「広告を配って来たんですよ。この神社での珍しい催し物の」
「催し物ぉ?」
今度は霊夢を見て言う魔理沙。
因みに現在蕎麦は茹で中だ。
アリスが操っている上海が。
呼んでおいて作らせるのだから、酷い話である。
まぁ、霊夢らしいと言えばそれまでだが。
「そ。ひとつはお察しのとおり、雛に厄集めをしてもらうのよ」
霊夢、魔理沙そろって神様を呼び捨てである。
因みに雛は人から祓われた厄を集める神である。
つまり、霊夢が祓い、祓われた厄を雛が集める。
普段なら、祓われた厄はどうなるのか?と思う事もあるし、本当に祓われてるのか?とも思うが、厄集めの神が居るのなら厄払いの信憑性も増す。
恐らく、今年は厄払いの為の参拝客が殺到する事だろう。
「で、もう一つは?」
今度はアリスが尋ねた。
「そっちは後のお楽しみ」
「そう言えば、神社の裏手に何か大きな物が布で隠されてましたが、それが関係するのですか?」
文が霊夢に尋ねた。
「もしかして、中見た?」
「いえ、流石に無断で見るのは失礼と思い、見てません」
「それは良かったわ」
「なんだそれ?私は気付かなかったぞ?」
「貴女の場合は、正面から神社に来たからじゃないですか?裏手にありましたからね」
「あ、なるほど」
文の指摘に納得する魔理沙。
「私としては、何で貴女がこの神社に居るのかが不思議なんだけど?」
アリスが雛に問う。
「言われてみれば………妖怪の山にも神社はあったよな?」
最近外の世界よりやってきた守矢神社の事だ。
「理由は二つ。一つはかなり早い時期から博麗の巫女から誘いを受けていたから。あの神社の事が解決して直ぐだったかしら?」
「はやっ」
あまりの速さに魔理沙も驚く。
「もう一つは、守矢神社では恐らく厄集めは出来ないと踏んだから」
「なんでだ?」
魔理沙が問う。
「あそこは妖怪の山の中にある。当然、人は来れない」
妖怪の山は閉鎖的で、余所者を全く歓迎しない。
それ故、人間があそこにある守矢神社に行く事など不可能である。
「それで、妖怪が厄払いなんてしに来ると思う?」
そこに居る面々は思い浮かべる。
妖怪が厄払いをしてもらう様を。
「…………ダメね。私には想像できないわ」
「奇遇だな、私もだ」
「ええ、私も出来ませんでした」
「私もです」
アリスを筆頭に、魔理沙、文、椛も賛同する。
「となると、こちらに来た方が効率的に厄を集められるもの」
「なるほど」
魔理沙も納得したようだった。
「こんばんわ~。お蕎麦貰いに来たわよ~」
「ちっ」
唐突の来訪者に霊夢は舌打ちをする。
舌打ちをしたのは来訪者が来たからではない。
来訪者に向けて放った退魔針が難なく避けられたからだ。
「いきなり酷い歓迎ね、霊夢」
「あんたなんて呼んでないわよ、幽香」
やって来たのはフラワーマスターの風見幽香。
「つれないわね~。折角良い事しに来てあげたのに」
「良い事?」
「そ、良い事。お蕎麦くれたらしてあげるわよ」
「何を?」
「それは秘密。でも、貴女にとって有益である事は約束するわ」
「胡散臭いのよねぇ………あんたと紫は」
「失礼ね。あんなのと一緒にしないでよ」
恐らく、紫に対して同じ事を言っても同じ返答だ来る事だろう。
「まぁ、良いんじゃないか?霊夢。どうせ蕎麦に余裕はあるんだろう?」
「まぁ、あるけどね」
「じゃあ、良いじゃない。良いもの見れるわよ」
「まぁ、良いわ。その代り、期待外れだったら弾幕お見舞いするわよ」
「ええ、お好きになさいな」
「お話し中失礼。お蕎麦、出来たわよ」
アリスが人形達を操ってザルに入った蕎麦を持ってくる。
「お、待ってました!」
魔理沙がそちらを向いて嬉しそうにする。
「良い感じで小腹も空いてきましたしね~」
文も同じように言う。
「それじゃま、今年も一年お疲れ様でした」
そう言って霊夢が箸を持ったままお辞儀をする。
それに倣ってみんな同じ事をする。
「じゃ、いっただきま~す!」
霊夢の号令を合図に、それぞれが蕎麦を食べ始めた。



同刻・紅魔館

「洋館で蕎麦ってのもシュールよね」
紅魔館の主、レミリア・スカーレットは蕎麦を啜りながらごちる。
「じゃあ、食べるの止める?レミィ」
動かない大図書館こと、パチュリー・ノーレッジがそう言う。
「そうは言ってないでしょ」
「そうですよ、パチュリー様。レミリア様は洋館で蕎麦がシュールだって言っただけで、別に蕎麦が不味いともこんなもん食ってられるかぁ!とも言ってませんよ。あまつさえちゃぶ台返しなんて全くしてませんし、と言うか、洋館にちゃぶ台なんてありませんよね。いやいや、でもどこかの本には円卓をちゃぶ台とこじつけて、更にはそこから名前を取ってチャブダイn」
「食事中は静かになさい、小悪魔」
レミリアの従者にして紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が小悪魔の口を手で塞ぐ。
「美鈴、それ取って~」
レミリアの妹、フランドール・スカーレットが紅魔館の門番、紅美鈴に言う。
「え?妹様、これ七味唐辛子ですよ?」
七味唐辛子は、少量なら香りを引き立てるのに良いが、入れすぎると唐辛子なので当然辛い。
「うん。お姉様が入れてたから入れてみたいの」
子供にありがちな、兄、もしくは姉がやっているからやってみたいという思考だ。
「入れすぎないようにね、フラン。それは一応辛い物だから」
「は~い」
返事をしてツユの中にトウガラシを入れるフラン。

「い、妹様!それは入れすぎです!」
大量の七味を入れてしまった。
咲夜がそれを見て叫ぶが、入った物は戻せない。
そして、当のフランは意に介さず、あらかじめツユに入っていた蕎麦を啜る。
「あっ!」
レミリアや咲夜、美鈴が止めようとしたが、遅い。
七味唐辛子がタップリ付いた蕎麦がフランの口の中へと吸い込まれていく。
「……………んぅ……かりゃいぃ…………」
フランは涙目になりながら舌を出してそういった。
「妹様、お水です」
素早く咲夜がフランに水を差しだす。
「んく…んく……うぅ………まだ舌がヒリヒリすりゅ…………」
辛いと言うより痛くてフランは上手く発音できていない。
「時にお嬢様。この後はどうするおつもりですか?」
咲夜が尋ねているのは大晦日かか新年への切り替えの時の事だ。
本来夜型であるレミリアは当然起きている。
「まぁ、霊夢の所にでも顔を出してあげましょうか。面白いチラシも見たし」
文の作った文々。新聞の号外の事だ。
「了解いたしました」
「パチェも行かない?折角の初詣だし」
レミリアがパチュリーを誘う。
「そうね………今日は体調も良いし、それも良いわね」
「決りね。まぁ、どうせ向こうで飲み会とかになるでしょうから、お酒持って行ってね、咲夜」
「承知いたしました」
「どうせ新年早々誰も来ないでしょうから、中国。貴女も来なさい」
「え?良いんですか?」
「かまやしないわよ。それに新年早々夜中に門前で待ち惚けなんて嫌でしょ?」
「勿論です!」
きっぱりと断言する美鈴。
「お姉様!私も行きたい!」
「ええ、もちろんそのつもりよ、フラン」
レミリアはフランに柔らかく微笑み返す。
「やった!」
今まで閉じ込められていて初詣を知らないフランは大喜びだった。
「さて、それじゃあコレが始まる前に付くように調整しましょうか」
レミリアはチラシをヒラヒラさせながらそう言った。
「はい。では、準備の方をしてまいります。貴女達、後片付けしておいてね」
妖精メイドにそう言って咲夜は下がった。
「じゃあ、私の方も準備をいたしませんと。ただでさえ滅多に外に出たことがないパチュリー様が外出なさるんですから、それはもう、色々と準備をしませんと。ああ、外でも寝られるように寝袋とか枕があった方がいいですか?本は持っていかないでくださいね?とっても重いですから。あ、でも美鈴さんが持って下さると言う事でしたら何冊でもOKですよ。ほら、私かよわいですから本なんて持てませんよ。ええ、ペンより重い物は持った事がないという奴ですね。司書ですけど。ともあれ、準備をしてきますね」
小悪魔の方もお決まりのマシンガントークをかましながら部屋を出て行った。
「相変わらずこぁちゃんは喋るの早いですねぇ………殆ど聞き取れませんでしたよ」
美鈴が呑気に言う。
「さて、それじゃあ暇つぶしに一局、どう?」
レミリアがドンと箱を取り出して机に置く。
中に入っていたのは麻雀牌。
どうやら、ここでも麻雀は知られていたようだ。
「良いわね。ボッコボコにしてあげるわ」
パチュリーが自信たっぷりに言う。
「言うじゃない、パチェ。私の能力の前に果たしてどれだけ持ち堪えられるかしら?」
レミリアの能力、運命操作能力。
本人の意思とは無関係に発動もするが、いまいち、目に見えて分かりにくい能力である。
が、麻雀においては非常にわかりやすい。
早い話が、適当に牌を取っても、凄まじい引きの良さを見せるのだ。
天和、地和が珍しくないくらいに。
因みに地和(チーホー)は親以外が一巡目にツモする事である。
当然、これも役満だ。
が、順番が回ってくる前にポンやカン等で鳴かれると地和は潰されてしまう。
「私もやる~」
「それじゃ、私も混ぜて頂きましょうか」
フランと美鈴も参加して、紅魔館、麻雀対決が始まったのであった。




同刻・三途の川

「あ~………なんだって大晦日にこんな所に居なきゃいけないかね~」
三途の川の渡し守、死神の小野塚小町は一人ごちる。
「なら、私と一緒に出かけますか?」
その死神の背後から声がかかる。
「し、四季様!?ちゃ、ちゃんと仕事してますよ!?サボってませんってば!!」
反射的に気をつけの姿勢になり、そう言う小町。
小町に話しかけたのは、この幻想郷の最高裁判長。
閻魔様の四季映姫・ヤマ・ザナドゥだ。
「誰もそんな事は言ってないでしょう。まぁ、その口ぶりからサボってたんでしょうけど」
悔悟の棒を口元に当てながら片目だけ開けて映姫は言う。
「う………」
ここで言い淀む時点で認めているようなものだ。
「ま、それはさておき、貴女も私と一緒に出かけますか?」
「へ?良いんですか?」
意外にも仕事に煩い映姫からのお出かけの御誘いだった。
「良いも何も、貴女の今日の仕事時間は終わっているでしょうに」
「あれ?」
小町は首を傾げながらシフト表を見る。
「あ!本当だ………」
「普段からサボってばかりだからそんな事も忘れるんですよ」
「あぅ…………」
返す言葉もない小町。
「ところで、何処に出かけるんですか?」
「今日は八雲紫からお呼ばれしていましてね。どうせなので貴女もどうですか?」
「八雲紫が?珍しいですね。あいつは四季様の事苦手かと思ってましたけど」
「実際快くは思っていないでしょうね。とはいえ、長く生きる者同士、毛嫌いしている訳ではありませんよ。お互いに」
「そんなものですか」
「そんなものですよ。で、どうします?」
「勿論行きますよ!こんな所で新年なんて迎えたくないですからね!」
「解りやすい理由ですね。まぁ、同感ですが」
ここ、三途の川のほとりは音が一切しない。
無音の領域。
静かでいいかもしれないが、殺風景過ぎて新年を迎えたい場所ではない。
「それでは参りましょうか。と言うか、向こうから迎えが来ましたね」
「へ?」
呆ける小町の背後で隙間が開かれる。
「こんばんわ、閻魔様」
「今は非番ですから映姫で構いませんよ」
「相っ変わらず神出鬼没だねぇ、あんたは」
「お褒めに預かり恐悦至極。それじゃ映姫様。そちらの死神も一緒でいいのかしら?」
「ええ、貴女が嫌でなければ」
「賑やかなのは大歓迎よ。さ、入ってらして」
紫はそう言うと、隙間を大きくあける。
隙間の向こうにはマヨヒガの紫の家が見える。
「それでは、お邪魔いたします」
「邪魔するよ」
「はいは~い」
そう言って紫は二人を家に招いた。

マヨヒガ・八雲家

「来たわよ~」
紫が居間に入るなり中にいるメンバーにそう伝える。
「あら、いらっしゃ~い。私の家じゃないけどね~」
幽々子が映姫と小町にそう言う。
「ええ、お邪魔しますよ」
「邪魔するよ~」
そう言って二人とも居間へと入る。
「今年一年お世話になりました」
妖夢が正座したまま映姫に頭を下げる。
「こちらこそ。来年も………いえ、来年は………いや、止めましょう。折角の場で説教などするものじゃないですからね」
映姫はそう言って言いかけた言葉を飲み込んだ。
「そうね。今日と明日は無礼講で行きましょ♪」
紫が楽しげにそう言う。
「はい、出来ましたよ~」
藍が台所からザルに入った蕎麦を持ってきた。
「お、タイミング良いね~」
小町が嬉しそうに言う。
「って、ちょっと多すぎませんか?」
映姫がそう言うのも無理はない。
なんせ、文字通り山と積まれているのだから。
「大丈夫ですよ、閻魔様。幽々子様がいらっしゃいますから」
若干申し訳なさそうに妖夢がそう言った。
「ああ………」
その一言で映姫も納得してしまった。
「さて、まどろっこしい挨拶は抜きにして、いただきましょう」
紫がそう言い、皆蕎麦を食べ始めた。
「藍、七味とって~」
「はい、紫様」
「小町、私にも七味を頂けますか?」
「はい、四季様」
「あら?妖夢は麺を全部ツユに漬ける派?」
「え?ええ、こちらの方が好きなので」
「って、橙!?その食べ方どこで覚えた!?」
「幽々子様の真似です~」
「あら、通じゃない、橙♪」
橙の食べてる食べ方は、端で掴んでる所はツユに漬けずに食べる食べ方だ。
人から色々と学ぶのは良い事だが、周りがこれではなぁ………とちょっと失礼な事を考えた藍だった。
「って、あれ?ツユに入れた筈の蕎麦が無い?」
藍も妖夢と同じく全部ツユに漬けていた。
が、入れた筈の蕎麦がない。
とは言え、横から椀に入っている蕎麦を食べられて気付かないほど間抜けでもない。
ならば、答えは一つ。
「紫様!セコイ事しないで下さい!!」
藍がツユに入れたと思った蕎麦は全て隙間を開けられてそこに放り込まれ、そのまま紫の椀へと入っていた。
「あらあら、叫んでる暇あったら食べた方が良いわよ?幽々子が凄いから」
「うわ!?幽々子様、早っ!何ですかその椀子蕎麦も顔負けな速度は!!」
「驚いてる暇あったら食わないと無くなるよ?」
小町が藍にそう忠告をする。
「ですね。余裕があるかと思いましたが、急がないと西行寺幽々子に全て持って行かれそうですよ」
「あの食べ方でなんで机が全く汚れていないんだろう?」
妖夢は幽々子の周りの机の綺麗さに只々驚いていた。
「スピードを上げるわよ!!」
そして、さらに気合を入れる幽々子。
「だれか取り締まれ!!」
藍が叫ぶが、取り締まれる者など居る筈もなし。
唯一紫が居るが、止める筈もなし。
(なんで大晦日にこんな食バトルみたいな事をしてるんでしょうか?)
映姫はふとそんな事を考えたが、気付けばその状況を楽しんでいる自分が居た。
(まぁ………こんな騒々しい大晦日も偶には良いですかね。毎年は嫌ですが)
映姫はマイペースに蕎麦を啜りながらそう思っていた。



紅魔湖・チルノの住処

「は~い、お蕎麦出来たよ~」
大妖精がお椀にお蕎麦を入れて持ってくる。
ザルに入っているのでなく、椀に予めスープのようにツユを入れてその中に蕎麦を入れるタイプのものだ。
「来た来た~!」
チルノが大喜びでそれを迎える。
「良い匂いだね~」
冬の妖怪、レティ・ホワイトロックも嬉しそうにする。
因みに冬場ゆえに普通はこう言うタイプの蕎麦は熱いのがセオリーだが、ここのは冷たい。
理由はいたって単純。
チルノは氷の妖精で、レティは冬の妖怪。
どっちも暑さに弱い。
いや、レティは解らないが、冬の妖怪と言うだけに暑さは嫌うだろう。
それを見越して大妖精はツユを冷たくしてある。
「それじゃあ、今年も一年お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「でした~!」
大妖精の挨拶に合わせてレティとチルノも挨拶をする。
「来年もよろしくお願いします」
「ん、お願いね」
「お願いするわ!」
チルノはそう言いつつも、すでに目線は蕎麦にロックオンだ。
「ふふ、それじゃいただきましょうか」
その様子を見て大妖精微笑みながらそう言った。
「いただきます」
「いただきま~す!」
三人揃って蕎麦を食べ始めた。
「ああ、ほら、チルノちゃん。もっと落ち着いて食べなよ」
大妖精がチルノの顔に飛び散ったツユを拭きながら言う。
「にゃに言ってるにょよ。あたいはサイキョむぐむぐ!」
「はい、口に物入ったまま喋っちゃダメだよ。口の中が見えたら相手を不快にしちゃうでしょ?」
大妖精は口に物が入ったまま喋ったチルノの口を手で塞ぐ。
「んぐ!ぷはぁ!あたいはサイキョーだから大丈夫なのよ!」
口に入っていた物を飲み込んでから、さっきの続きを言うチルノ。
「あんたは何でもサイキョーなのね」
「そうよ!あたいはサイキョーなのよ!!」
(意味解ってて言ってるのかしら?)
レティは半分呆れながらそう思った。
「そういや大ちゃん」
「何?レティちゃん」
「冷たい蕎麦なのにザル蕎麦じゃないんだね」
「え?ああ、ザルはちょっと縁起が悪いかなって」
「縁起?」
レティは大妖精の言葉に頭を捻った。
年越し蕎麦がザルで縁起が悪いなど聞いた事もない。
しかし、その瞬間、レティの頭にピーンと何かが来た。
(ま、まさか…………)
レティは大妖精の顔を見た。
いつも通りの笑顔。
だが、レティはその笑顔に恐怖を感じていた。
(ザル……ザル………ザル→ザル頭→入った物が片っぱしから抜け落ちる頭→馬鹿→チルノ……いや、まさか、そんな…………)
レティはもう一度大妖精を見る。
「ほら、チルノちゃんって……」
「い、良い!それ以上言わなくて良い!!」
聞いてはダメだ!
聞いて、そうだったらヤヴァイ!!
「大ちゃん!食べないなら貰っちゃうよ!!」
「あ、ダメだよ!チルノちゃん!!」
そのやり取りは親友同士の微笑ましいそれだが、レティは何かに脅えていた。
(黒い………黒いよ大妖精さん!!)
いつの間にか大ちゃんから大妖精さんに変わってしまっていたレティだった。



同刻・慧音宅

「で、何でお前達が居るんだ?」
不機嫌そうに、妹紅が慧音の客人に向かって言う。
「勿論、この家の主に招待されたからよ。貴女に文句を言われる筋合いはないわ。妹紅」
そう返すのは永遠亭の主、蓬莱山輝夜だった。
因みに永琳も鈴仙もてゐも来ている。
「何でこいつら招いたのさ、慧音」
「前に一度迷惑をかけただろう。その詫びだ」
台所から慧音の声が聞こえてくる。
前とはクリスマスの時の事だ。
「ちぇ………なんだってこいつ等と新年迎えにゃならないんだ?」
「ほらほら、蕎麦が出来たぞ」
文句を言う妹紅をなだめるようにザルに乗せた蕎麦を持ってきて言う慧音。
「あら、中々良さそうなお蕎麦じゃない」
輝夜がそれを見て言う。
「本当。これ、結構良い物じゃないの?」
永琳も同じように言う。
「解るか?まぁ、私が選んだ訳でも買った訳でもないんだが………日ごろの礼だと、蕎麦屋の店主がくれてな」
「なるほど………人徳のなせる業ね」
それを聞いて鈴仙が納得したように呟く。
「まぁ、細かい経緯はさて置き、食べようか」
本当は挨拶のような物をしたかった慧音だが、挨拶の今年一年も、とか来年も、とかで一々妹紅と輝夜が言い争いそうなので止めておいた。
「そうだね。いっただきま~す!」
「そうね。いただきます」
妹紅と輝夜に続き、皆が蕎麦を食べ始めた。
「ん、美味い!」
一口食べて妹紅が叫ぶ。
「うん、やっぱり美味しいわね」
「ええ」
察してた通りの味だ、といった感じで輝夜と永琳が言う。
「あ、コラ!てゐ!何人のツユにワサビ入れてるのよ!!」
鈴仙が蕎麦を取っている間に、自分の椀にワサビを入れているてゐを見つけて言う。
「あ、バレた」
「バレた。じゃないでしょ、もう。まぁ、少量なら風味が増すから良いけど」
そう言って、そのままツユに漬けて蕎麦を啜る鈴仙。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!?!?!?」


そして、口に含んで暫くしてから、涙目になりながら鼻を押さえた。
「あははははははははは!!!」
その様子を見て爆笑するてゐ。
どうやら、少量ではなく、もっさりと仕込まれていたようだ。
「お下品ね、イナバ」
「全くですね」
鈴仙の方など見向きもせずにそう言う主と師匠。
「やれやれ、騒がしい事だね」
そう言って妹紅も蕎麦を啜る。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!?!?!?」


そして、鈴仙と同じように涙目になりながら鼻を押さえた。
「妹紅!?」
慧音が驚く。
「あら?急に静かになったわね」
「本当ですわ」
やはり、妹紅の方など見向きもせずに言う輝夜と永琳。
「誰かさんが騒がしいと言っていたから丁度いいわね」
「そうですね」
「そうですね~」
優雅に蕎麦を啜りながら言う輝夜と、同意する永琳にてゐ。
無論、妹紅が鈴仙に気を取られて居る隙に、何食わぬ顔で妹紅のツユにワサビを大量投下しておいたのだ。
「か、輝夜ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「てゐぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
この日、上白沢宅は例年になく賑やかな年の瀬だったと、近所の人間は後に語った。



午後10時・守矢神社

「神奈子様、諏訪子様、お蕎麦出来ましたよ~」
守矢神社の巫女、東風谷早苗がやはりザルに蕎麦を入れて持ってきた。
「お、来た来た!」
「早く早く!」
居間で二人とも既に食べる準備OKの状態だった。
「はいはい、今置きますよ」
どちらが年が上なのか解らない場面だった。
「それじゃあ、今年も一年お疲れ様でした」
「ほい、お疲れさん」
「お疲れ~」
「来年もよろしくお願いします」
「ああ、お願いするよ」
「ん、お願いね」
早苗の挨拶に合わせて二人も挨拶をする。
「それでは、いただきます」
「いただくよ!」
「いっただっきま~す!」
挨拶と同時にすごい勢いで食べる二人。
「そんなに焦らなくても………」
それに対し、あくまでマイペースに食べる早苗。
「あ、そうそう。早苗。これ食べ終わったら博麗神社行くわよ」
蕎麦を食べながら、唐突に神奈子はそう言った。
「はい!?なんで博麗神社に行くんですか!?」
博麗神社は幻想郷内において、二つある神社のうちの一つ。
元々は博麗神社のみだったが、今年の秋にこの守矢神社が来た為に2つの内の1つ、と言う事になった。
そもそも、守矢神社及び早苗達がこの幻想郷に来たのは外では最早得られなくなった信仰を集める為。
その為、はっきり言ってしまえば、もう一つある博麗神社は邪魔者、ライバルなのだ。
そのライバルの所に何故新年を迎える時間帯に行かねばならないのか………
「なんでって、聞けばあそこは新年早々宴会やるそうじゃない。行かなきゃ損でしょ?」
が、神奈子の答えは信仰とかは全く関係のない答えだった。
「いやいやいや!この神社どうするんですか!?信仰を集めるチャンスじゃないですか!!」
新年に神社に初詣はお決まり事だ。
参拝客が来れば少なからず信仰も集まる。
それは、この神社に居る二神、八坂神奈子と洩矢諏訪子にもとても関係のある事だ。
「あんたねぇ……少し考えなさいよ」
早苗に対し、呆れたように言う神奈子。
「え?」
早苗は解らないといった表情をする。
「私達はここでは新参者。加えて、この妖怪の山は余所者を嫌う節がある。そんな神社に誰が来るって言うのよ?」
「う………」
「そりゃ、時間が経てば信用を得られて、来てくれる者も出てくるでしょう。けど、信用ってのが一朝一夕で得られる訳無い事くらい知ってるでしょう?」
「それは……まぁ………」
「普通の人間の信仰当てにする?この排他的な山の中で?来れるのと言ったらあの巫女と魔法使いくらいじゃない。それこそ来る訳無いわ」
「あううぅぅぅ…………」
因みに、神奈子は色々言いながらも蕎麦を食う手は止めてない。
流石に、口に物が入ったまま喋ってはいないが。
「誰も来ない神社で寂しく新年迎えるなんて阿呆らしいわ。だったら今年は向こうで騒いだ方が断然良いってものよ」
「………神奈子様は宴会がしたいだけじゃないんですか?」
「あら?だったら誰も来ないここでひとり新年でも迎える?悪いけど、私と諏訪子は向こうに勝手に行くわよ」
「解りましたよ。行きますよ。もう………何でライバル神社に初詣しに行かなきゃいけないのかしら」
「何言ってるの。宴会に参加しに行くだけよ。初詣する訳じゃないわ」
「はいはい……って、お蕎麦殆ど無い!?」
「あれ~?早苗食べてなかったの?」
諏訪子が呆けたように聞いてくる。
「話してたじゃないですか!!」
「あら?私は話しながら食べてたわよ」
「なんて器用な………」
「しょうがない。それじゃあ残りは早苗にあげるね」
「本当、もっとしっかりしないとダメよ」
「どうしっかりしろと………」
呆れつつも、残った蕎麦に手を付けていく早苗だった。



午後11時・マヨヒガ

山のようにあった蕎麦は既になく、藍によって食器類も全て片付けられていた。
今は皆、お茶を飲んで一服していた。
「さて、それじゃあそろそろ神社の方に行きましょうか」
「あれ?もうですか?早いですね」
紫の言葉に藍が返す。
「今年はちょっと色々あるみたいだからね~」
紫はそう返した。
「へぇ……それは楽しみねぇ」
幽々子がいつも通りの笑顔でそう言う。
「さ、それじゃ皆準備は良いかしら?」
「問題ないよ」
「もとより準備と言うほどの物はありませんからね」
小町と映姫がそう答える。
「大丈夫そうね。それじゃあ……」
「ああ、ちょっと待って下さい」
紫が隙間を開けようとした時に、映姫が待ったをかけた。
「どうかして?映姫様」
「どうせ向こうに行ったら全員バラバラになるでしょうから、今の内にこれを………橙、妖夢」
映姫は懐から何かを取り出し、橙と妖夢を呼んだ。
「なんですか?」
「なんでしょう?」
「少し早いですが、お年玉ですよ。私と小町、二人分のです」
そう言って、映姫はお年玉袋を二人に手渡した。
「わっ!やったー!!」
「え?いえ、しかし………」
「良いから貰っておきなさい」
戸惑う妖夢に映姫はそう言う。
「はい、ありがとうございます」
妖夢は笑顔でそう言った。
「すみません、四季様、小町」
藍が映姫に言う。
「悪いわね~」
幽々子も続いて言う。
「何、このくらい構いませんよ」
「そうそう。気にしない気にしない」
「良かったな、橙」
「はい!」
橙は満面の笑みで返事をする。
その様子を見て小町も映姫も微笑んでいる。
存外、橙と妖夢の喜ぶ顔が見たかっただけかもしれない。
「じゃあ、そろそろ良いかしら?」
紫が再度確認を取る。
「ええ、手間を取らせましたね」
映姫がそう返す。
「あら?礼を言う事はあっても文句を言う事は何もありませんよ」
センスを口に当てながら微笑んでそう言う紫。
「じゃ、行くわよ」
そう言って紫は隙間を開いた。


博麗神社

「新年、明ける前からおめでと~♪」
紫は神社に現れるなり霊夢に向かってそう言った。
「ったく、年の切れ目に変なのが来たわ」
「本当、酷いわねぇ、霊夢は。魔理沙もそう思わない?って貴女、どうしたのその恰好」
「邪魔するぞ。って、お前らどうしたんだ?その恰好は」
紫に続いて入って来た藍も何かを見て驚く。
「霊夢に無理やり着させられたんだよ」
「右に同じ」
紫と藍が見たのは、霊夢と同じ巫女服を着ている魔理沙とアリスだった。
「てっきり二人が博麗神社の巫女に弟子入りしたのかと思いましたよ」
幽々子と一緒に現れた妖夢が言う。
「冗談。私は生涯魔法使いだぜ」
「これも右に同じね」
二人とも不満げなのは隠せない。
「さて、紫。約束通り藍借りるわよ」
そんな二人を無視して霊夢は紫にそう言う。
「はいは~い」
「はい!?何の事ですか紫様!!」
何も聞いていなかった藍は驚いた。
「何って、今の聞いてなかったの?貴女に霊夢の手伝いをさせるのよ」
「前者は聞いてましたが、後者は聞いてませんよ!」
「ええ、言ってないもの」
しれっと返す紫。
「大体ですね、この姿で巫女なんて出来る訳………」
藍は精一杯の抵抗をしてみせる。
「何言ってるの。ちゃんと貴女用の巫女服も用意してあるわよ。私が」
が、紫の前には無駄な抵抗だった。
その巫女服はちゃんと藍の尻尾が出せるようになってる巫女服だった。
「もう、何も言っても無駄ですね」
「勿論よ」
疲れ気味に言う藍に遠慮もなしに言い放つ紫。
藍は諦めて従うことにした。
ここで従っておかないと、この後どんな条件を加算されるか解ったものでないからだ。
「じゃ、隙間で着替えてらっしゃいな」
紫に言われて藍は巫女服を持って再び隙間の中へと戻った。
「あ、それから幽々子」
「何かしら?」
次いで、霊夢は幽々子に声をかける。
「妖夢貸して」
「はい!?何を言ってるんですか!?貴女は!!」
これには流石に妖夢も抗議の声を上げる。
「まったくだわ。私が妖夢を貸す訳無いでしょ」
「幽々子様……」
妖夢はちょっと感動していた。
「そんな事を言わず、ここは一つこれで」
霊夢はわざとらしく辺りを警戒するように見まわしながら、幽々子に何かを握らせた。
何を?と幽々子は手にある物を見る。
そして
「霊夢…………貴女も苦労してるのね」
とても爽やかな笑顔でそう言った。
「幽々子様!?」
嫌な予感がした妖夢は思わず叫ぶ。
「じゃ、貸してくれる?」
「しょうがないわね~」
「ちょっ!?幽々子様!?さっきのは何だったんですか!?」
叫ばずにはいられない妖夢だった。
「じゃあ、妖夢。これ、巫女服ね。さっさと向こうで着替えてきて。」
「な、何を言って……!!誰がやると…!!」
「さ、行くわよ妖夢~」
「幽々子様!?なんで手を引っ張るんですか!?何で巫女が指定した場所へ引っ張っていくんですか!?」
幽々子の手にはしっかりと霊夢が提示した巫女服が握られていた。
「うふふふふふふふふ~♪」
妖夢を引っ張りながら楽しそうに笑う幽々子。
「幽々子様ぁぁぁぁぁぁ!?!?」
悲鳴を上げる妖夢が部屋に入ると同時に、スパンッ!と襖が閉じた。
「ちょっ!?幽々子様!一人で着替えられますから!!」
「遠慮しないの、妖夢~♪」
「どさくさに紛れてどこに触って……ひゃん!!」
部屋から何やら艶やかな声も聞こえてきたが、みんな聞こえないふりをした。
襖に耳を当てている紫を除いて。
「ところで霊夢。お前、幽々子に何をあげたんだ?」
魔理沙が尋ねる。
「え?ああ、この正月に出る屋台のタダ券よ」
「タダ券?なんだってそんな物持ってるのよ」
今度はアリスが尋ねた。
「ほら、屋台を出す場所ってウチの敷地内でしょ?けど、神社と言う手前、売上を貰う訳にもいかないのよ。非常に残念な事に」
「本当に残念そうね」
幽香がボソッと呟く。
「けど、それじゃ悪いからと、毎年屋台やってる人がタダ券くれるのよ」
「なるほどね」
アリスも納得の様子だ。
「けど、忙しくて大抵使わずじまいだから、こういう風に交渉の材料に使ってるのよ」
「しっかりしてるぜ」
魔理沙の言葉には、ここにいた皆が心で同意した。
「相変わらずですね、貴女も」
「あら、閻魔様も居たの?」
「あたいも居るよ」
「新年早々死神ってのも縁起悪くない?」
「酷い言いようだねぇ」
が、小町はそれほど気にしている様子はない。
「ところで幽香。あんたの良い事って何よ?そろそろ見せなさいよね」
「そうね………そろそろ今年も終わるし、頃合いかしら」
幽香はそう言って表へと出た。



午後11時30分・慧音宅

「はい、残念。ロンッ!平和(ピンフ)」
「輝夜ぁぁぁぁ!!私の役満を平和で潰すなぁぁぁ!!!」
「上がれぬ役満より上がれる平和ね」
「ですね~」
慧音宅では再び麻雀バトルが繰り広げられていた。
今の面子は、輝夜、妹紅、永琳、てゐ。
正直、妹紅では厳しすぎる相手だ。
「妹紅、良いようにカモられてるわね」
「そうだな」
「姫も師匠もてゐもイカサマ使ってるから尚更勝てる訳無いわ」
「麻雀ではイカサマが普通なのか?」
「玄人(バイニン)じゃあ普通みたいよ。まぁ、一般の人はやらないでしょうけど」
「難しい世界だな」
「そうね」
慧音と鈴仙は茶を啜りながら遠くから観戦していた。
「あれ?そろそろ時間じゃない?」
「ん?ああ、そうだな。おい、そろそろ初詣に行く時間だぞ」
慧音がマージャンをしている4人に声をかける。
「あら?もうそんな時間?」
「さて、それでは行きましょうか」
「くっそぉぉぉぉ!!」
あっさりと切り上げる輝夜と永琳、てゐに対して、まだ未練のありそうな妹紅。
「ほら、用意をしろ、妹紅」
「ううぅぅぅぅ…………」
悔しそうに唸る妹紅。

「流石に少し冷えるわね」
家の外に出た輝夜が言う。
「そうですね………空も雲に覆われてますしね」
永琳も空を見上げて言う。
「新年早々嫌な天気ですね~」
「雪でも降れば違うのにね」
鈴仙とてゐも家から出てきて言った。
「まぁ、そう都合よく雪は降らんさ」
最後に妹紅と一緒に慧音が家から出てきて、戸締りをしてから言う。
「それもそうね………あら?」
慧音の言葉に同意しながら、博麗神社の方を見た輝夜が何かを見つける。
「姫、どうかなさいまし…………あれは……」
輝夜と同じ方を見た永琳も輝夜と同じように固まる。
「ん?どうし…………あれは………」
慧音も、いや、他の面々も同じように博麗神社の方を見て固まる。
何故か?
それは


「さ、桜!?」


そう、この時期にあり得ない筈の桜の花が咲き乱れていたのだ。
「え~!?あり得ないよ!この時期に桜なんて!!」
てゐが叫ぶのも尤もだ。
「ふふ………雅な妖怪でもいたんでしょう」
が、輝夜は既に理解しているのか、微笑みながらそう言った。
「そうだな………毎度毎度、こういう事をしてくれる奴なら良いんだがな」
慧音も察しているようだった。
「え?なんで二人ともそんな普通にしてるんですか?」
まだ解っていない鈴仙はそう言う。
「まぁ、行ってみればわかるわよ。それに、あの桜をもっと近くで見たいしね」
輝夜はそう返す。
「そうですね。季節外れの桜……遠くから眺めるだけでは勿体ないですね」
永琳もそれに同意する。
「それじゃあ、行くか」
妹紅も察しているのか、そう言った。
そうして慧音と妹紅、そして永遠亭の面々は博麗神社へと向かった。



午後11時45分・博麗神社

「…………………………………」
霊夢はその光景を眺めて、呆けたようにしていた。
「どうかしら?良いもの見れたでしょ?」
霊夢の元に戻ってきて幽香が尋ねる。
フラワーマスター、風見幽香の能力。
花を操る程度の能力。
枯れた花を咲かせたり、花の動きを操る事が出来る。
「大したもんだぜ………こいつは凄いな」
魔理沙が代わってそう答える。
「ええ、これは確かに良いものだわ」
アリスもそう答えた。
「ツボ?」
「解りづらいボケは止めて下さい、紫様」
紫のボケに即突っ込む藍。
因みに巫女服に着替え、何時もの帽子も付けてない。
「こ、これは記事に出来ますよ!!」
すかさずその光景にシャッターを切りまくる文。
「あ、文様!待って下さい!!」
その後を追う椛。
「どうかしら?霊夢」
再び霊夢に尋ねる幽香。
その表情は勝者の笑みがこぼれている。
一々返答を聞かずとも、霊夢の顔を見れば解るからだ。
「え?ああ………素直に凄いと言っておくわ。驚いた…………」
霊夢は未だその光景に心を奪われていた。
「感動してくれるのはありがたいけど、チラホラ人が来始めたわよ」
幽香が言うように、参拝客が現れ始めた。
が、その参拝客達も突如咲いた桜に目と心を奪われてはいるが。
「霊夢、アレ、使うんでしょ?」
紫が霊夢に尋ねた。
「っと、そうだった!あまりに見事だったから呆けてたわ………」
「アレ?」
雛が尋ねる。
「もう見せても良いわね。裏手に面白いものがあるのよ」
「おや、ついにお披露目ですか」
いつの間にか戻って来た文が言う。
「いったい何があるんだ?」
歩きながら魔理沙が尋ねる。
そして、文の言っていた、布がかぶさっている物の前に辿り着く。
「さて、それじゃあお披露目といきましょうか」
霊夢が浮かび上がってその布の被っている物のてっぺんに立ち、布をつかむ。
「いくわよ!」
そして、布を思いっきり引っ張って、剥がした。
「な、なんだこれは?」
「………鐘?」
魔理沙が驚き、アリスが呟く。
「そう、鐘。外の世界では除夜の鐘と言う物にも使われて居るわ」
紫が代わって説明する。
「除夜の鐘?」
幽香が尋ねた。
「ええ、年の切り替わりと同時に108つの煩悩を追い払う為に、108回、この鐘を突くのよ」
「はぁ………108回ね………大変だな、霊夢」
「は?私が突く訳無いじゃない。こんなの108回も無理に決まってるでしょ?」
確かに、鐘を突くのはかなり力と体力を要する。
正直、霊夢では108も突けないだろう。
「じゃあ、どうするんだ?」
藍が霊夢に尋ねる。
「鈍いわねぇ………何の為に妖怪のあんたを借りたと思ってんのよ」
が、霊夢は呆れたように藍にそう返した。
「待て!私が突くのか!?これを!?」
「他に誰がいるって言うのよ」
「そ、それは………」
正直突けそうな者なら他にもいる。
妖夢、幽香、紫、小町あたりがそうだ。
が、流石にここで指名したら被害を流す事になる。
よって、藍は口をつぐんだ。
因みに、幽香は言っても絶対やらないだろうし、紫に頼むなど論外。
小町は多分サボるだろう。
そして、妖夢に流すのは気がひけたと言うのが本音だ。
「しかし、こんなのどうやって手に入れたんだ?」
魔理沙が尋ねる。
「ああ、なんか霖之助さんの所に転がり込んできたから、貰ったのよ。あっても邪魔だからって」
「どうやって運んだの?」
今度は雛が尋ねる。
「ん?紫に頼んだわ」
「本当、霊夢ったら妖怪使いが荒いのよね~」
紫が頬に手を当てながらほぅっと息を吐く。
「幻想郷広といえども、八雲紫を顎で使うのは貴女くらいでしょうね」
映姫が呆れながら言う。
「さて、それじゃ頼んだわよ」
霊夢は藍にそう言って去って行った。
他の面々も続いて去っていく。
「はぁ………」
藍は大きくため息を吐いた。
「藍様」
と、橙だけが藍の傍に残っていた。
「ん?橙、どうした?」
「藍様、忙しいの?」
藍は橙が何を言いたいのかを察した。
橙は藍と出店などを回りたいのだろう。
「すまないな。紫様の命令でもあるし、私はここを動けそうにないよ」
藍は申し訳なさそうに言う。
「はい………」
橙はさびしそうに返事をした。
「どれくらい時間がかかるかわからんが、突き終わったら一緒に店でも回ろうか?」
「あ、はい!」
橙はパァッと顔を明るくした。
「そうだ。橙、私からもこれを」
そう言って、藍は巫女服の裾からお年玉袋を取り出した。
「わぁ……!!」
橙の顔がより一層明るくなる。
「だから、それまでちょっと我慢してておくれ」
「はいっ!」
橙は笑顔でそう返すと、その場を去って行った。
「さて、可能な限り早く鐘を突くとするか」
藍も除夜の鐘の事は知っている。
故、一定間隔あけて鐘を突かねばならない事も知っていた。
それでも、持前の計算力を生かして、ほぼロスタイムゼロで突く意気込みだった。

「さて、そろそろ年が明けるわね」
霊夢が呟く。
「ああ、新しい年が来るな」
魔理沙がそれに反応する。
「来年こそは静かに暮したいわね~」
「何老人みたいな事言ってるんだ」
「そうは言うけど、ここの所異変起き過ぎじゃない?」
「まぁ、それは確かに」
魔理沙も一年を振り返りながらそう返す。
「ま、どうせ来年になっても変わらずウチに黒いのは来るんでしょうけどね」
「ああ、変わらず来るぜ」
「まったく………ま、来年もよろしく頼むわ。適当に」
「ああ、こちらこそよろしく頼むぜ。適当にな」
お互い、薄く笑いながらそう言う。
そして



ゴーンッ…………



幻想郷初の除夜の鐘が打ち鳴らされ、旧き年が終わりを告げた。



それでは、皆様も良いお年を…………
はい、大晦日番です。
何とか間に合いました。
が、正月の方が当初は日付切り替わったら乗せるつもりでしたが、時間が足らなかった為、3が日の内に載せると言う方針に切り替えました。自分の中で。

なんだか、段々大妖精が黒くなってきています。
東方紅魔郷外伝・黒いよ!大妖精さん!!ってタイトルを思いついてしまうくらい、黒くなってきます。
なんでだろ?(´・ω・`)

さて、それじゃあ次は正月用書いてきます。
最後に、来年もよろしくお願いいたします。

それでは、好評不評問わず、待ってます。
華月
[email protected]
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コメント



0.1520簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
年越し蕎麦ってざるが普通なんですか!?
カルチャーショック…

私は色々と理由があって初詣というものに行ったことがないのですが、やっぱり良いものなんでしょうか。
4.60名前が無い程度の能力削除
読んでいて楽しかったです
でも、兎に肉球ってありましたっけ?
5.90Mr.N削除
「ツボ?」っていい音だろう。これはいいものだ。ですか?
7.100名前が無い程度の能力削除
帽子をかぶってない藍様に憧れるのは僕だけではないはず^^
9.-10名前が無い程度の能力削除
除夜の鐘は仏教で、初詣は神道。
博麗神社は神道だとおもうんですが?
霊夢が他宗教の儀式をやっていいものかと思いました。
10.90名前が無い程度の能力削除
とても読みやすくて良かったです。
年越し蕎麦は年を越してから食う物だと思ってたorz
>叫ばずにはいられない幽々子だった

妖夢 ではないでしょうか。
11.70華月作品を読み漁る程度の能力削除
>除夜の鐘
せつこ!それ神道ちゃう仏教や!

大妖精は黒くないよ!いたずら好きなだけだよ!…きっと。
なにはともあれ明けましておめでとうございます。
12.80中尉の娘削除
まったりしていて良かったです
華月さんの『とある一日』シリーズは毎回楽しませてもらってます
正月版も平日版の続編も楽しみにしてます^^
>早苗に対し、呆れたように言う早苗。

口調と状況から、二個目の「早苗」は「神奈子」でしょうか?
13.80名前が無い程度の能力削除
>チャブダイn
何というほかほか戦士、懐かしすぎて噴いた。
というかギャ○王もあるのか魔法図書館!?
14.100名前が無い程度の能力削除
最近、蛇兎が気になってしょうがないw
神社で除夜の鐘ってあたりが、なんとも幻想郷って感じがしますね。
その寛容・・・いや、無関心っぷりが。
とりあえず藍様がんばってw
19.無評価華月削除
>ALL
総じて高めの評価、ありがとうございます^^

>年越し蕎麦ってざるが普通なんですか!?
いえ、コレは単に自分が好きなだけです^^;

>でも、兎に肉球ってありましたっけ?
あれ?肉球見たいのありませんでしたっけ?

>帽子をかぶってない藍様に憧れるのは僕だけではないはず^^
自分もあこがれてます(´・ω・`)
でも、悲しいかな、絵を描く才能が無い○| ̄|_

>除夜の鐘は仏教で、初詣は神道
>それ神道ちゃう仏教や!
>神社で除夜の鐘ってあたりが、なんとも幻想郷って感じがしますね。
すみません、完全に自分の常識の欠如です。
大晦日といえば除夜の鐘と頭の中で連結していて、そちらの方を完全に忘れてました。
次の冒頭辺りでその辺のこじつけを書いてます^^;

>年越し蕎麦は年を越してから食う物だと思ってたorz
ウチでは年を越す前に食べてましたが・・・違ったのかな?(´・ω・`)

>華月さんの『とある一日』シリーズは毎回楽しませてもらってます
ありがとうございます^^
ご期待に添えられるよう、頑張ります><

>何というほかほか戦士、懐かしすぎて噴いた。
知っていた人が居てくれて嬉しいです><
誰にも気づかれないかも知れないと思ってたので・・・・・・・・・・^^;

>叫ばずにはいられない幽々子だった
>早苗に対し、呆れたように言う早苗
誤字の指摘ありがとうございます。
修正いたしました。

3が日中に正月編を出すと書きましたが、進行度合いにより、ちょっと厳しくなってしまいました・・・・・・・・・
期待されてた方、本当にすみませんm(__)m
近日中には公開いたします。
23.90名前が無い程度の能力削除
中々面白いものでした。

ぶっちゃけ仏教のものだろうと、霊夢ならおきそうですね。(笑)
なんせ本人は信仰を集める気0ですから。
25.100名前が無い程度の能力削除
そういえば幻想郷には寺ってのはないのだろうか。
28.100すっきー削除
俺はツユ全部つける派だー
37.無評価名前が無い程度の能力削除
>お蕎麦もらに行かないと
もらいに?
>同じ返答だ来る事だろう。
返答が?
>大晦日かか新年への切り替え
大晦日から?
>端で掴んでる所はツユに漬けずに食べる
箸?
42.80名前が無い程度の能力削除
麻雀編あったら面白そうだ
46.10名前が無い程度の能力削除
ほのぼのとしててよかったと思います。
ちょっと淡々としすぎて退屈だったのは否めませんが、幽香の能力による桜はよかったです。
しかし、神社で除夜の鐘はちょっと許せませんねぇ(笑)
マイナス評価つけるほどのことではないと思いますが・・・
ということで、この点数です。
47.90名前が無い程度の能力削除
四季映姫・ヤマ・ザナドゥ
ではないと思います。

>>9さん見て思ったんですが、点数ってマイナスあるんだ!?