Coolier - 新生・東方創想話

Reine Himmel Sein ~マリサ~

2007/12/25 07:19:16
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Reine Himmel Sein ~マリサ~



 空を飛ぶことが夢だったわけじゃない。
 幼い頃から空を飛ぶことが当たり前だと思っていただけ。
 けれど普通の人間は空を飛べない。だから魔法使いになろうと決めたのは今でも至極当然のコトだったと思う。
 その為に勉強したし、親と絶縁して家を飛び出しもした。

 そして、ワタシは空を飛ぶ方法を身につけたのだ……



 霧雨魔理沙はいつもの様に箒に跨り、いつもの様に空を飛んでいた。

 魔法の森にある自宅から飛び出し、森を下に見ながら上昇・下降を繰り返している。
 航空機がもつエルロンやラダーの代わりに体の重心・脚を動かして舵を取る。ロールすることだって可能だ。上昇には箒の先端を持ち上げるだけでなく、推進力を放っている後部のピッチも変える。実際、箒を上向きにあげるのは気分の問題でエレベータ代わりに箒の末端から吹き出す魔力の噴射角を変えることで上昇下降を行う。
 しかし、これだけでは3次元を自在に飛び回るとは言い難い。推進しながらの移動は基本的に円を描き、動きが大雑把なものになってしまう。
 緻密な隙間をかいくぐることが重要な弾幕ごっこにおいて、この動きはムダ以外の何者でもなく、もっと直線的な2次元的な動きが要求される。
 霊夢やアリスといった空を飛べる者たちは無意識に行っているようだが(地上を歩く時と同じ感覚なのだろう)箒という道具を使うことでしか空を飛べない魔理沙には何らかの方法で実現させる必要があった。
 解決策が推進口を別に設けると言うものだった。箒の末端から放出されるエネルギーをカットし、曲がりたい方向の逆に瞬間的な推進力を与え、反動で全身毎移動する。噴射の勢いが強ければ流されてしまうが、また噴射をすることでバランスを取る。そもそも噴射の威力さえ把握しておけば、勢いで流されることはない。
 力業に見えて、緻密な魔力制御が必要なこの技も魔理沙は今では完全に習得していた。
 今行っているのは整備士が機体のチェックをするように、魔理沙が空を飛ぶために必要な能力を要しているかの点検である。
 いくつかの挙動のあと、魔理沙は地上へ降り、出かける準備をしてから再び蒼の空へと飛びだっていった。



● ● ● ● ● ●



 空を飛ぶことがワタシにとってのシアワセだ。もし、飛べなくなってしまったら、ワタシは生きる意味を失い、屍のようになるだろう。
 大空を好きに回る快感。風がワタシを通り抜けてゆく心地よさ。そんなときに空と同化してゆくのが分かる。
 人はどうして空と生きるコトが出来ないのだろうか? こんなにも気持ちいいのに……こんなにも優しいのに……
 多くの人は一生を地に縛られて生きる。空を見上げるコトがあれば明日の天気と今日の曇り空、星の輝きを覗くため。誰も空を飛ぶコトを考えないのだ。いや、実は……

 思考に耽っている間に目的地である紅魔館が見えてきた。迎撃の用意をしないとな。
 箒の推進力を絞って速度を落としてゆく。この時がいつも嫌いだ。スピードが緩むたびに体が重くなってゆく。あれほど高ぶっていた気持ちも重力と一緒に地面に押しつけられてゆくみたい。
 しばらくすれば、うっとおしい門番たちが形だけの出迎えをしてくれるだろう。速度の出ない憂鬱な戦闘スピードモードに切替、ミニ八卦炉の確認をし、自身の気持ちも戦闘モードに切り替えた。
 奥から妖精らしき一団が編隊を組んでやってくる。数はおおよそ10。こちらの姿を確認するやいなや、即射撃を行ってきた。

「牽制目的なんだろけど……」

 アイツらの頭は数日経てば忘れてしまう鳥頭なのだろうか? それともフォーメーションが決められていて、融通を利かすことのない頑固者なのだろうか? 
 実際にはどうでもいいので、レーザーで吹っ飛ばす。すると次の編隊が現れるので、こいつらもレーザーでぶっ飛ばす。同じやりとりをしているウチに門番の総責任者が現れる。
 このパターンも既に飽きているのだが、美鈴と撃ち合うのはまだ楽しめるので楽しむコトにする。飽きたらマスタースパークを撃てばいいだけの話だ。

「魔理沙さん!! ここから先へは行かせません!!」
「へっ、そのセリフにももう飽きたぜ。私を行かせたくなかったら、いつも通り実力で止めてみせるんだな!!」
「もとよりそのつもりですッ。先制のぅ~、華符『セラギネラ9』」

 美鈴の手から抜き放たれたスペルカードから色鮮やかに動く弾幕がワタシと周囲に向かって放たれる。
 口元が思わず笑う。
 弾幕ごっこで唯一楽しめる瞬間……空と踊る歓びと空から墜ちるコトの恐怖がないまぜになった感情がワタシの中を走る。
 毎日調整している箒とブーストマジックを駆使して弾幕を避ける。縦に。横に。前に。後ろに。左上に……
 ワタシが空を翔る術がこの勝負で全て試される。弾に当たって箒から墜ちれば、当然即死だ。それはワタシが望む死に方……ワタシは地上で死ぬことは絶対しない。空を愛する者として空に抱かれたまま死んでゆくのだ。
 けれど、ワタシには自殺願望などないし、もっと空を飛んでいたいと言う願望がある。
 しばらく空と弾幕でステップを踊っていると、遠くから声が聞こえてきた。美鈴が何か言ってるようだ。

「何だ? ワタシは今、楽しんでるんだよ。邪魔をするな」
「あの~、そう申されましても、避けるばかりで反撃しないというのはちょっと……」
「ああ、今日はそういう気分じゃなくて、こういう気分なんだ。気にするな」
「気にするなと言われましても、何もしないんでしたら帰ってくれないですか?」

 乙女のくせに乙女心の分からないヤツめ。仕方がない、デートは一旦お預けだ。

「名残惜しいが、美鈴。楽しかったぜ」
「へ?」

 懐からミニ八卦炉を取り出し、張り付いた符を一枚破る。

「恋符『マスタースパーク』!!」

 八卦炉の中にチャージされていた魔力がスペルカードによる封印を解いたコトで解き放たれた。



     光状一閃



 美鈴の弾幕を飲み込み、射線上の美鈴に見事直撃。多少、威力がありすぎたか門と庭の一部を壊したが、恋路を邪魔した罰として受け取ってもらおう。うむ。
 空の戦いは長すぎず短かすぎずが一番美しいのだけど、今回は短すぎた。
 けど、そう上手くいかないのが人生ってヤツか。
 そしてワタシは図書館までゆらゆらと上空を眺めながら飛んでいった。



「ま、魔理沙さんの考えてるコトはいつも分かりませんね……」

 瓦礫の中から出てきた美鈴がポツリとつぶやくと、バタリと倒れた。今日も左官屋になるのか……と心の中で思いながら。






 紅魔館の図書館は館の外見に反して異常なほどの広がりをもつ大図書館である。
 実は魔理沙自身はここの図書館があまり好きではない。ここはいつも暗く乾いて、空を感じるものが一切ないからだ。
 魔導書の類には困らないので、その点だけは評価している。ただ、図書館の主にはあまり会いたくなかった。魔女である彼女を魔法使いとしての最高系として認めるコトが出来なかったからである。

「魔法を極めようとして魔法使いになったワケじゃないからな……」

 魔理沙の魔法は空を飛ぶ為の手段だ。弾幕勝負とて空と戯れるコトが出来るから楽しいのである。
 時折、語られる高度な魔法分野の話は聞いていて、面白いと思えるコトがあるが、ことあるごとに魔法使いがどーの、魔女とはこーの、と言うのは勘弁してほしい。

「この辺りだったかな」

 広大な図書館内で魔理沙は本を漁りはじめた。魔法の森の動植物を記した図鑑。薬草学が修められた学術書など……etc
 ひっつまんだ書物を風呂敷に包んで図書館を後にしようと箒に跨った時、図書館の主が現れた。

「いらっしゃい、泥棒魔法使い」
「いらっしゃってやったぜ、根暗の魔女」

 薄暗い図書館の通路に光球を浮かせて飛んで来たパチュリーは魔理沙の背負う風呂敷を見て嘆息をつく。
 魔理沙も心の中では「げっ、パチュリー」と思いながらも、さすがに顔には出さない。

「アナタが死んでから取りに行かせるからいいけど、それまで本はキチンと保管してよね」
「失敬だな。借り物は丁寧に扱ってるぞ。なんせ死ぬまでワタシの物だからな」
「……なんか矛盾してるわね。ハァ、ここで立ち話もなんだから、向こうでお茶でもしながら話しましょう」
「へ? 何でだ?」
「アナタに縁のある珍しい人が来てるからよ」



 パチュリーに連れられてやってきたのは、直列状に伸びた本棚が途切れて広い通路を成しているスペース。
 紅魔館内からの入口に近い(魔理沙が入るのはいつも窓)この場所に置かれたテーブルには意外な人物がいた。
 椅子に腰掛け、紅茶を飲みながら本を読む姿はあまりにも自然なのに、衣装の所為なのか、はたまた人物の存在なのか--恐らく両方だろう--とても不自然な人物。霊夢がいた。
 霊夢はこちらに気付いていないのか、首どころか視線を向けるコトもせずに読むことに没頭している。側にいる小悪魔も霊夢が読み終えたものなのだろうか、多くの本を抱えて奥へと飛んでいった。

「霊夢、お客を連れてきたわよ」
「ん? ああ、魔理沙じゃない。こんなところで会うなんて珍しいわね」

 それはコッチのセリフだ。

「こんなところに霊夢がいるほうが珍しいんだよ。ちなみにワタシはここの常連だぜ」
「迷惑と言う名の常連ね。二度と来てほしくないのだけど」
「はっはっは、パチュリーはサラリと酷いコト言うな」
「酷いと思うなら気にしなさいよ、魔理沙」

 読んでた本を閉じ、テーブルに頬杖を付きながら呆れた口調の霊夢。霊夢の読んでる本が気になって、ワタシも椅子に座り、置かれた本の表紙を覗き見た。

「『何もない空』?」

 大きさは和綴本に近いが、本文が固い表紙に挟まれた形のこの本は明らかに幻想郷産ではないコトを示していた。そして文字が日本語であるなら、この本は推して知るベし。

「ええ、外からの漂流物よ」

 ワタシの考えをパチュリーが読み取ってワザワザ口にしてくれた。霊夢もまた本について少しばかりの説明をしてくれる。

「詩集というか空想物語というか、中身を簡単に言うと空に憧れた人の心象を描いた本ね」
「空に……憧れた」

 胸がズキンとした。
 これを書いた人間はワタシのように空に憧れていたのだろうか? 空を愛おしく感じていたのだろうか?
 ワタシ以外の人間が同じような気持ちを持っていたコトに驚き、思わず本に手を伸ばす。

   パシッ

「痛ッ!! 何するんだよッ」
「今、私が読んでるの。横取りしないでくれる」

 ワタシの手をはたいた霊夢がジト目でこちらを睨んでくる。

「横取りなんてしないぜ。ただ、ちょっと読むだけだ」
「泥棒家業のアンタが言っても説得力ないでしょ。大体、これ魔法の書じゃないのよ?」
「私がいつも魔導書ばかり読んでると思ったら大間違いだぜ。分かったら、貸してくれ」
「今ので何を分かれと……魔理沙に貸したら取りに行かなきゃならないから、そうね……弾幕ごっこで貸権を決めましょう」
「へ? 霊夢から弾幕ごっこを仕掛けてくるなんて、これまた珍しいな。だが、その勝負乗った!!」

 霊夢が玉串を持ち出すと同時にワタシもミニ八卦炉を取り出し、箒に跨る。霊夢との間に緊迫したムードが流れる。
 魔力を受けて浮き始める箒と霊夢。一触即発。今すぐ飛び上がって、所有権を頂こうじゃないか。

「手加減しないぜ、霊夢。今日の私は今までとは違うぜ」
「確かに違うわね。魔理沙の連敗数が増えるんだから」
「ハッ、私の勝利数が増えるの間違い、はぼっ!!」

 突然、ワタシの体を衝撃が襲った。勢いに押され通路に数mほど吹っ飛ばされる。
 肩の鈍痛を堪えながら、体を起こして抗議する。相手はもちろん――

「パチェリー!! いきなり何しやがる!!」
「やっぱり生きてるのね。貴女ってホント魔法使いらしかぬ魔法使いね」

 巨大な樹木の一部を空間から召喚させたまま、何事もなかったかのように振る舞うパチュリー。って、さっきぶつかってきたのはアレなのか……
 霊夢はやる気を削がれたみたいで、やれやれといった顔をしながら明後日の方向を向いている。

「とりあえず貴女達に言っておくけどね、ここは私のテリトリーなの。暴れるならドコか余所でやってくれないかしら?」
「それもそうね。じゃあ本人の了承も得たし、この本は借りていくわ。あ、ついでに読み切れなかった『生活のハウツー本』も借りていくわね」
「ちゃんと返してね」
「魔理沙に取られなければね」



● ● ● ● ● ●



 博麗神社に着くと背負いの荷物を縁側へ下ろす。霊夢も借りてきた本の束を「えいっ」と言いながら境内へ滑らせると、目当ての本を縁側へ置いた。

「靴を脱ぐのが面倒だからって、本を投げるなよ」
「投げてないわ。畳に沿って滑らせただけよ」

 しれっと言う紅白腋巫女。
 まぁ、いい。ワタシの目的は元々あの一冊だけだ。
 箒とワタシにキノコの粉を撒いて戦闘準備をする。八卦炉に貼られた符は残り二枚。

「さて、始めようか。博麗霊夢さん」
「魔理沙にしては珍しくやる気よね。けど、私にも渡せない理由があるの」
「霊夢が賽銭以外に固執するなんて、珍しすぎて、明日は雨どころか台風に竜巻のセットが来るぜ」
「『空にはなにもない 故 すべてを受け入れる』」
「……それは?」
「本に書かれていた詩……ねぇ、魔理沙、私……うぅん、何でもないわ、始めましょう」

 ポツリと呟く言葉の中に一瞬だけ見えた霊夢の顔。
 もしかしたら今まで気付いていなかっただけで、霊夢は別の形で……いや、それはきっと撃ち合えば分かるコトだ。
 ワタシも霊夢も先程と同じように睨みあい、空中へと浮遊してゆく。言葉はない。動きもない。ただ風だけがワタシ達をなぞるだけ。
 その心地よさに心を奪われそうになるけども、今はそんな時じゃない。
 霊夢の方へ目を向けると、にこやかな顔を返してきた。余裕の態度? 違う、あれは感激だ。



今になって確信した

         優しい風の勢いが弱まって

霊夢は
         凪に変わる時

ワタシと同じ

         始まりの鐘が鳴る

空が好きな人だ

         風はもう吹かない

弾幕勝負が始まった



 同時に放たれた初撃は互いの横を通り過ぎるだけに終わった。その後、距離を取り散発的に弾をバラまく。
 それは普段とは180度異なる消極的な戦い。
 力の出し惜しみをしているわけじゃない。相手の力量を量っているわけでもない。
 ただ、分かるのだ。弾幕を通じて感じる空と相手の気持ちが。

 もっと踊りましょ。もっと遊びましょ。もっと楽しみましょ。

 空を通じて、他人と遊べるなんて信じられなかった。
 人は空を飛べず、ただ眺めるだけだったから。誰も空を飛ぼうというワタシの気持ちを理解してくれなかった。
 でも、ワタシは空を飛びたかった。周りがなんと言おうと、それは約束されたものだったし、ワタシにとって夢でもおとぎ話でもなく現実としてあるべきものだったから。
 方法は実家にいた陰険眼鏡が教えてくれた。曰く

「空を飛びたいのなら、魔法使いになればいい。古来より魔法を使う者は空を飛ぶ者と相場が決まっている」

 言葉通り、ワタシは魔法使いになり、空を飛び回っている。
 満たされたハズだったのに、とても楽しいのに……



 今の方がもっと楽しいと思えるなんて想像もしなかった。



「なぁ、霊夢!!」
「何、魔理沙」
「楽しいなっ!!」
「……ふふっ。魔理沙らしいわ」
「何だよ、それ? 霊夢は楽しくないのか?」

 数秒の間

「楽しいわよ……まさか、私も楽しいだなんて思いもしなかったわ」
「霊夢……」

 飛び交う弾幕の中でワタシ達は互いが近しい存在と言うことを知る。
 決して、触れ合うコトはないけど、空を飛んでいるだけで伝わってくる想い。
 霊夢が見せた顔がどこから生まれたものか、ワタシには分からないけど、それでも空が好きなんだと言うことが分かった。それだけでとても嬉しい。
 勝つとか負けるとか、もうそんなコトはどうでもよかった。ただ、いつまでも二人で戯れたいと思った。けれど、ワタシ達は人間で、いつか地上に降りなくちゃいけない。

「さて、本当に名残惜しいが、そろそろ勝負を決めてやらないとな」

 八卦炉に貼られた二枚目のスペルカードを破いた。
 美鈴に放った時と同威力の魔力が今にも八卦炉から零れそうだけど暴走しないようにコントロールする。みれば、霊夢もスペルカードを取り出していた。思わず笑ってしまう。

「いっけぇぇぇぇ、恋符『マスタースパーク』!!!!」
「舞いなさい、霊符『夢想封印』!!!!」

 臨界状態の八卦炉から極太のレーザー砲が放たれ、霊夢のカードからは無数の光弾が弾けるように飛び出した。
 マスタースパークは美鈴の時と同様に夢想封印を飲み込んで更に膨れあがり、霊夢をも飲み込もうとして――



     Spell Card Break!!!!



「残念、魔理沙♪」
「何ッ!?」

 射線上にいるはずの霊夢がワタシの真横にいた。しかも手にはまたスペルカードを持っている。
 コイツ、わざと夢想封印を潰して、硬直時間を避けやがったな。
 ワタシのマスタースパークは臨界状態だったこともあり、まだ放出を続けて方向修正すら効かない。

「魔理沙、信じてるから」
「何を信じてるんだか」
「空の広さかな」
「それなら前から信じてるさ」



 そしてワタシは撃墜された。






● ● ● ● ● ●



 魔法の森は昼でも薄暗いが、夜になると鳥目になったみたいに何も見えなくなる。
 霧雨魔理沙はそんな暗闇の森の中を魔法で作った浮遊する光を伴って歩いていた。その手には霊夢から渡された本を持ち、視線と思考の90%を読むことに注ぎながら、残りの10%を使って帰路へ着く最中だった。
 霊夢に破れた魔理沙はしばらく気を失っていたらしく、気が付いたときには霊夢が隣に座って本を読んでいた。
 そこで霊夢は自分が抱えていた感情と本との符号について魔理沙に聞かせてくれたあと、食事を馳走してくれて「読み終わったから」と言って本を渡してくれた。
 帰ろうと思い、神社を出た時には既に辺りは真っ暗だった。
 ふと、魔理沙は自分がどうして魔法使いになったのか、霊夢に話したくなった。そして話した。霊夢の感情も魔理沙の感情も根っこの部分では同じだったのだ。
 魔理沙は本を閉じると、空を見上げた。
 森の木々で作られた天蓋のおかげで星も月も見えない。魔理沙は閉じられた森の中で思う。



     ワタシがここに住んでいるのは研究だけじゃなくて


              飛ばないと空を見ることが出来ないから


                           ここに住んでいるんだ


 今まで気づかなかったコトに気づいてしまった。
 この本のおかげだろうか?
 魔理沙は笑う。本を読めてよかった。もう一度、夜空に向かってマスタースパークを撃ち上げたかったが、神社で使い切ってしまった。
 代わりに空を思い切り飛んでやろう。
 箒に跨った魔理沙は天蓋をスプレッドスターで突き破ると、全速で飛び上がった。
 
 夜の空には星が瞬き、大きな月が光り輝いていた。

 あれらも空の一部。

 『空にはなにもない 故 すべてを受け入れる』

 そこにはワタシも霊夢も入るコトができる。



 「Reine Himmel Sein……」



 何もないHimmel(空)だから 好き


初めまして、RATHといいます。

今回が初めての東方SS投稿になります。
タイトル通り、魔理沙が主役の話です。
魔理沙のスペカが乙女なのは何故だろうと思い、ふと空を見上げたら、思いついたのがこのSSです。
ちと長いですが……orz

あと、微妙に語られてない部分があります。
次作品への伏線なのですが、投稿は何週間先になることやら(今回だけで3週間かかってます)

初めてで緊張しておりますが、また次もよろしくお願いします。
RATH
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コメント



0.400簡易評価
3.70名前が無い程度の能力削除
そして、また本が戻って来ない(涙

>出来なかったである。
出来なかったからである。
6.90名前が無い程度の能力削除
こういう話好き。