Coolier - 新生・東方創想話

―InSoloLoving―

2007/11/21 07:54:32
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妖怪、幽霊、人間。
数多ある幻想郷の生存種の中、一つだけ特異な存在がある。
人間、幻想郷で最も少なく幻想郷で最も弱い存在のもの。

同じ魔法使いであっても人間と妖怪では天と地ほどの差がある。
たとえ同じだけの魔力を持とうとも才能を持とうとも、妖怪には人間は敵わないのである。
なぜなら、彼ら彼女らは、独りでは生きられないからだ。

人間とは群体の生存種である。
即ち、彼らは孤独に存在することを許されない。
独りでは子孫を残せず、一人では生存すらままならない。

個体として完成し、孤独に手も存在を許された妖怪たちは、人より永遠長き時間を生き、
孤独であってもその本能を失わず、新たな生命を生成することすら可能な種まで存在する。

つまり、人間とは脆いのだ。
一世紀にも満たない時間を、群れて、異端であれば除外され、そうして弱い本能を守りながら生きていく、そんな脆弱なものに

私はなぜ惹かれるのだろうか?



―InSoloLoving―



 呪詛を、纏う。
その結果得られるのは、呪いを含んだ純粋な死。

「・・・-魔符『アーティフル サクリファイス』」
 死の直前に見るのは走馬灯だと聞くが、それを直視する瞬間は今ほどないだろう。
呪を帯びた人形が、語りかける。
「こんな穢れた人形を、看取ってくれてありがとう」と。
違う
殺したのは私なのに、なぜこんなに優しく、してくれるんだろうか。


 盛った土に、手向けの花を。
「きっと、これを着たら可愛らしかったのにね。」
作りかけの服を、一緒に埋めてあげた。
最後に、別れの言葉を
さようなら、今までありがとう・・・ごめんね。

「そんなしんみりした顔をしてたらただでさえの薄幸に、余計に幸が逃げてくぜ」
「うるさいわね、あんたみたいに心臓に毛は生えてないのよ。」
「ちゃんと無駄毛の処理はしてるんだぜ」
「・・・そういう意味じゃないわよ」
何でこいつは、人の悲しみを無視するように割ってはいるのだろうか。
これじゃぁ、まるで私が悲しくないみたいじゃないの。
「大事な人形が死んだんだから・・・ちょっとは静かにして欲しいもんだわ」
「ほー、まるで血縁みたいな言い方なんだな」
「そりゃ長い時間一緒に居た大事な人形ですもの、もう家族みたいなもんだわ」
「アリスは一人でも生きていけるタチなのにな」
「生きていけるのと生きていくのは違うのよ」
「そりゃそうだ」
カラカラと笑う黒白の魔女は、なぜこんなに無神経なのだろうか。
「ところでアリス」
「何よ、まだ何かあるの?」
ふっと、何事もないように
「わたしが死んでも同じくらい弔ってくれるのか?」
さらりと、言ってのけた
「・・・あんたの好きだった本かきのこくらいは一緒に埋めてあげるわ」
「おー、アリスにしちゃ上出来だな」
「・・・どういう意味よ」
いいや、それだけしてもらえれば本望だってことだよ、とまた少女は軽く笑った。
この魔女は、人間は
なぜこんなことを言うのだろうか
どうあっても、魔理沙は私より先に死ぬ。
妖怪と人間では、どうあっても寿命が余りに違いすぎる。
彼女は一世紀をいっぱいに生き、私はそれを見取ってまだ数世紀の時間を生きていく。
絶対に、私はこの少女を、この少女の死を看取らなければならないのだ。

「魔理沙は・・・」
「ん?」
「・・・あなたみたいな無計画な人でも死ぬことなんて考えるのね」
「そりゃぁな、わたしだっていつか死ぬんだぜ。」
ま、当分そのつもりはないけどな。と、軽口を言ってのける。
「・・・妖怪になろうとは、思わないの?」
 聞いてはいけない問いだったのかもしれない。
人間をやめないのか、なんていうのは。

私自身が、人を辞めて後悔したように、この少女にそんなことを聞いていいのかと。

ふと、こちらを絶句の表情で見つめた後、魔理沙は、少女は少し笑みを取り戻して語った。


 確かに、人をやめれば好きなだけ本も読めるし好きなだけきのこも集められるし、わたしが好きなだけ集めたいものを蒐集したりできるだろうな。
でも、それじゃぁダメなんだ。一番大事なことを忘れてしまう。

わたしは意外と面倒くさがり屋なんだ。
そんなの知ってるわよ、だって?そうか、意外だったなぁ。
ま、それは置いといてだ。
わたしは面倒くさがり屋だから、きっと独りで生きていけるようになってしまったら、独りで生きていってしまう。
そうだな、人を、他人を愛せなくなる。
愛おしさを、恋を、忘れたくないから、わたしは独りで生きていけてはダメなんだ。


「・・・そう」
「もし、独りで生きられてもみんなと居られるようになったらなっても良いけどな」
「・・・それをまってたらきっとお婆ちゃんになるわね」
「その通りだな」
満足そうに、魔理沙は笑った。


わたしと違う種族で、わたしと同じことを求め、わたしと異なる道を行く少女。
わたしは孤独を知って、初めて独りでは存在しない愛を求めたように
この子は逆に、愛を知った上で、それを失う孤独を恐れたのだ。

わたしは魔理沙を笑えない、わたしはこの脆い人間と言う種族の少女に
失ってしまったものを求めているのだから。

「もしわたしが先に死んだら・・・魔理沙はどうしてくれるの?」
「んー?そうだな・・・墓の前で大事な告白でもしてやるぜ」
「じゃぁ死ねないわね、それは生きてるうちにしてもらわなくっちゃ。」
「じゃぁ、どっちが根負けするか勝負だな」
「えぇ、本当にその通りね」
わたしが愛を知るのか、彼女が愛を失わないかの、ね。

きっと、両立させて見せるから
この言葉は取っておこう、いつか孤独と愛を両立させる、その日まで
「好きだ」と。




―InSoloLoving― The END;
はじめまして。
初投稿なので、少々不安です。

アリス視点のアリス・魔理沙でのSSです。
途中で魔理沙の回想的な語りが入りますが、それ以外はほぼアリス。
稚拙な文章ですが、ご意見、ご指摘などありましたらよろしくお願いします。

m(_ _)m *境界
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コメント



0.370簡易評価
8.50名前が無い程度の能力削除
話自体はいいのですが、ちょっと読みにくいですね。

もう少し読みやすくなると、読み手側としては嬉しいです。

話事態はとてもよかったですよ。
それだけに読みにくいと感じたのが、とても残念でした。