Coolier - 新生・東方創想話

奇跡を起こす程度の運命

2007/11/05 11:38:13
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前回の投稿である「さぁ高らかに叫ぼう~」の後の話です。
けど前回のを見て無くてもいいです。見てても最後の4行目だけ覚えてればいいです。
ようは、奇跡は運命には勝てないのかなぁとちょっと悔しい思いをした風祝がいたという話の解決編です。








「お神酒?」
「そう。ちょっと切らしちゃったみたいでね。アナタなら持ってるでしょ?」
「無いわよ」
「は?」

 レミリア、魔理沙、咲夜、アリスに囲まれながら縁側に座っている霊夢は、そう言うとお茶を一杯飲んだ。
庭に立っている早苗はその答えに唖然としており、とりあえず今の霊夢の状況には突っ込んでいられない。

「な、無いなんてことないでしょ!仮にも巫女でしょ!?」
「この間萃香が全部飲んじゃってねー。私は止めたんだけど」

 必死に止めたのになー。という顔をする霊夢だが、どうもその顔からはやる気が感じれないので恐らく嘘だ。
どうぜ霊夢の事だ、めんどくさいとかそんな理由で見てただけなのだろう。

「はぁ……仕方ないから人里までいくか」
「でも珍しいわね、早苗がそういうのを切らすなんて」

 霊夢の素朴な疑問に、早苗は乾いた笑みを浮かべてから振り向き歩き出した。

「あなたの所の鬼と同じよ。うちの神様が私の知らない所で飲んじゃったみたいなの」
「あぁ~……それはご愁傷様」

 聞くんじゃなかった。という顔をする霊夢だが、当然早苗はそんな顔は見れない。
小さなため息を漏らした後、博麗神社を後にした。

「…………」
「どうかしましたか、お嬢様」
「今の巫女が例の……」



 無駄に長い神社への階段をうっとおしく思いながら、早苗はこれからどうしようかを考えていた。
 どうしようか。と言ってもお酒を買ってきて帰るだけなのだが、それだけだとあの2人がまた飲んでしまうかもしれない。
今まではこういう事は無かったんだけど、一回起こってしまうと2回目や3回目も起こるんじゃないかと不安になってしまうのである。

「そこのあなた」
「なによ」

 少しイラッとしているところに上空からの声に、早苗は不機嫌さを表しながら顔をあげた。
 そこには、傘をさした吸血鬼が浮いていた。

「確か……レミリア」
「正解。いつも宴会に参加しないくせにやるわね」
「神奈子さまと諏訪子さまが出席してるんだから私はいかなくてもいいでしょ」

 レミリアの事を無視するように歩き出す早苗。レミリアは何も言わずに後を付いて行く。


 早苗はレミリアが苦手である。
 先日、霊夢がなぜか匿ってくれというので霊夢に人に発見されない程度の奇跡を起こしたにも関わらず、
この吸血鬼は『運命的』に霊夢と出会ってしまったのだ。

 『奇跡』と『運命』。
 似て非なるものなのでどちらが優秀だとは言えないのだが、そこからレミリアに対しての苦手意識が湧いてくる。

「お付きのメイド長は放っておいていいの?」
「あら、咲夜の事も知っているの?感心ね」
「帰ってきた神奈子さまが一々今日あった事を説明するから、名前くらいは覚えたわよ」
「そう。咲夜は置いてきたわ。私が来たいから来ただけだから」

 ということは、偶然なんかでは無くただ話したいから話しかけてきたということか。
そもそも霊夢の周りにレミリアはいたので偶然なんてことは絶対に無いのだけども。
 早苗はもうさっさとお酒を買って帰ろうと思い足を速めるが、宙を浮くレミリアはそんなの関係無しに背後からスイスイとついてくる。

「……私、この後人里まで行くんだけど」
「大丈夫よ。今日は曇りだし、傘があればなんてことないわ」
「あなたの心配をしているわけじゃなくてね……」
「あら、人間の心配?それこそ大丈夫よ、たまに咲夜と一緒に買い物にいくもの」

 真昼間から人里で買い物とは、とんだ吸血鬼だ。吸血鬼の風上にも置けない。
そもそも、早苗の知識の中での吸血鬼はこんなゆるいものでは無いので違和感を禁じ得ない。
そんな事を言えば、妖怪と人間が共存するこの幻想郷自体に違和感はあるのだけど、それは外の世界から来てまだ間もないからだろうか。

「なによ黙っちゃって。そんなに私が嫌い?」
「嫌いじゃないけど、好きでもないわ」
「現代っ子な発言ね。私は好きよ、あなたの事」
「へ?」

 あまりの言葉に、早苗は足を止めてレミリアの方を見た。
レミリアは妖しく笑っているように見える。

「あなたの奇跡を起こす程度の力、とても気になるわ」
「……私も、あなたの運命を操る程度の力が気になるわね」
「そう。なにか運命的なものを感じるわね」
「そうでもないわよ」

 そういう事か。と胸をなでおろすと早苗は再び足を動かす。
そもそも飛んでいけばよかったな。と考えたが今更なのでもう歩いて行くことにした。
レミリアは、相変わらず傘を持ったままふよふよとついてきていた。



「無い?酒屋にお酒が1つも?」
「へぇ、この間萃香ちゃんが来て全部飲んでいっちゃいましてね。1週間ほどしないと入荷しないんですよ」
「……」
「災難ね」

 人里につき、さっさと用事を済ませようと酒屋に直行したがこのざまである。
がっくりと肩を落とす早苗の肩にレミリアはそっと手を置いた。

「でも急ぎでお神酒が必要ってなにかあるの?」
「……ただ単に、お酒が無いだけ。お神酒とは言っても普通の日本酒でいいのよ。
 お神酒と、飲むようのお酒を別々に保管しておいたんだけど……2人にみつかったみたいで」

 渋々と語りだす早苗。レミリアはふんふんと聞きいっている。
今更ながら、周りのみんなが騒がない辺りさっき言っていた、咲夜と一緒に買い物という話は本当らしい。と早苗は思った。

「だったら、あなたの奇跡ってやつでどうにかできないの?」
「……奇跡をなんだと思ってるのよ。
 そういうレミリアこそ、運命操って私にお酒手に入れさせるとかできないの?」
「運命をなんだと思ってるのよ」

 どっちもどっちなようだった。
やっぱりこいつは苦手だな。と思いつつ早苗は歩きだす。

「どこいくのよ」
「悩んでても仕方ないでしょ。とりあえず休憩よ休憩」


 何軒か先に会った茶屋に腰かけた早苗とレミリア。
早苗はお茶をだんごを、レミリアは紅茶とケーキをそれぞれ頼んだ。

「……なんでケーキと紅茶があるのよ」
「私のなじみの店だからに決まってるじゃない。
 店主、今日もいい腕前ね」

 ありがとうございます。と奥で店主が嬉しそうに返事をしていた。
 つくづく、吸血鬼らしくないしお嬢様らしくないやつだと思う早苗だった。

「でも、よく考えれば当り前の結果なんじゃないかしら?」
「なにが?」
「お酒が神様に飲まれたことよ。お神酒って、ようは神様にお供えするものでしょう?
 だったら結果的には同じ事じゃない」
「それはまぁ……そうだけど」

 よく考えたらそうだった。と今更ながらに早苗は思った。
 しかしそれとこれとは話は別だ。
 神奈子達が『勝手に』呑むのと、早苗が『差し出す』のでは天と地の差がある。
そうでなくても、神様っていうのは大酒のみなのだ。どこかで止めないとどこまでも飲んでしまう。
神様ではないが、件の鬼がいい例である。

「……とりあえず、お酒だけでも勝って帰らないと」
「あら、もしかして今夜の宴会のため?」
「霊夢が言ったんでしょ?今夜の宴会はお酒持ち込みって」
「えぇ。萃香が全部飲んじゃったから、しょうがないんじゃないかしら?」

 どうも今回の騒動の原因が萃香に思えて仕方が無い。
 しかしそこで萃香を責めるというのもおかしな話だと思っているので仕方なく早苗は酒を求めて再び歩き出すのだった。
 団子とお茶をまとめて飲みこむと、さっさと早苗は立ち上がり歩き出した。
もちろん、レミリアもその後をついてくる。一応人里ということを意識しているのか、徒歩で。

「あなた、そこまでしてお酒求めてるのに自分はいかないのね」
「神奈子さまと諏訪子さまが参加してるので十分でしょ。って何度も言ってるじゃない。
 それに、あまり人の多いところは好きじゃないの」
「人じゃなくて、妖怪の多い場所ならいいの?」


 得意げに揚げ足をとるレミリアに少々カチンときつつも、早苗は黙々と酒屋をめぐって行く。
 しかし、何軒か回ったところで結局はお酒の入手はできなかった。

「……はぁ」
「あなたの奇跡ってやつも、こんなところじゃ無駄だったみたいね」
「うるさいわね……だったらあなたも運命捻じ曲げてお酒貰えるようにしてみてよ」
「お酒が手に入らないのも、また運命よ」

 日は暮れ始め、夜の宴会までもう時間が無い。
そもそもお酒が無いというのはどういう事なのか。
 次第に歩く力も弱くなっていく早苗の肩に、レミリアは後ろからポンと手をおいた。

「でも、そうね。
 あなたも参加するっていうのなら、考えないでもないわね」
「……私は、神奈子さまと諏訪子さまが楽しんでもらえればどうでもいいわ」
「あの2人だって、あなたが参加してないと心から楽しめないんじゃないかしら?
 いつも楽しそうにはしてるけど、どこか遠くをみてるわよ、あの2人」
「…………」

 もしレミリアの言う事が本当なら、気を利かせたのが仇となっているのだろうか。
しかし、早苗は自分が宴会に顔を出してもなんら変わらないと思っている。
特になにかできるわけでもなく、お酒にも弱い。そんな自分が参加したところで逆に周りの空気を悪くするだけじゃないのか。
 早苗は常々そう思っている。だから幾度となく開催される宴会に顔を出すことは無かった。

「……でも」
「往生際が悪いわね。
 決めたわ。今夜の宴会にあなたは参加する!!」
「はぁ?」

 突然の発言に、思わず振り返る。

「これは、『運命』よ」

 後ろに立っていたレミリアは、ニヤリとした笑顔で、堂々とした態度で早苗を見ていた。
 参加するにしても、そもそもお酒が無いんじゃ意味が無い。
いくらレミリアでも、突然お酒を降って湧かせるなんて芸当できるはずがないのだ。

「……そうなったらいいわね」
「信じてないのね?」
「当たり前でしょ。とりあえずもう帰るわ。神奈子さまと諏訪子さまに報告してこないと」

 頬を膨らますレミリアは半分無視する形で、再び早苗は歩きだした。
 なぜかその後ろをまだふよふよと飛びながらレミリアもついてくるが、早苗は無視をすることにした。



 日も落ち、辺りが暗くなってきた時刻。
 妖怪の山に入り、もうすこしで洩矢神社。というところで、早苗はふと小さな違和感を感じた。

「……声が聞こえるわね」
「それも、大勢の声が。ね」

 いまだに後ろを着いてきていたレミリアの声が聞こえる。どこか自信ありげな声だ。
そしてそれ以上に、多くの声が聞こえる。その中には、最近になって知った声や、以前から知っている声も混じっていた。
 慌てて早苗は神社に向かって走り出す。そこには―――



「そ~れ一気!一気!!一気!!!」
「ぶはははは!あたしがこのていどのさけでようわけないでしょ~が~」
「とか言いながら、千鳥足じゃない。危ないわよ」
「れ、霊夢!私も千鳥足で倒れそうなの!だから支えてぇ~」
「シャンハーイ」
「よかったなアリス。シャンハイが支えてくれてるぜ」
「空気読んでよシャンハイ!」
「シャンハーイ……」

「ぐすっ……一番がんばってるはずなのに誰もわかってくれない……」
「大丈夫よ美鈴。あなたのがんばりはお譲様も認めてるわ」
「ぐすっ……咲夜さん……」
「中国中国言われるのだって、みんなから愛されてる証じゃない」
「うぅ……咲夜さぁ~……」
「咲夜ぁ~。ちょっと萃香の介抱手伝ってくれない?」
「分かったわ霊夢!!!」
「あ、あぁ~……(おのれ霊夢……ッ!!!!)」

「妖夢ぅ~、このお肉まだ固いわよ~」
「ゆ、幽々子様!それはお肉じゃありません、橙です!!」
「うわ~ん、藍様ぁ~!!!」
「ちぇ、橙!!!くそ!!幽々子!!食べるなら私を食べろ!そのかわり橙は放してもらうぞ!!」
「良い心がけね藍。幽々子~、藍が食べていいって言ってるわよ~」
「……ジュルリ」
「ゆ、幽々子様落ち着いて!!」
「ちぇ、橙のためならしっぽの1つや2つ……」
「藍さんも落ち着いてください!幽々子様にかかったらしっぽ全部食べられちゃいますよ!」


「……な、なんで?」

 洩矢神社には、溢れんばかりの人間妖怪が思い思いに騒いでいた。
 紅魔館の連中や、白玉楼の面々、博麗神社にたむろしている連中まで来ている。
それはまるで、普段の博麗神社での宴会のようだった。

「お、早苗遅かったね。先にはじめてるわよ」
「か、神奈子さま!なんでここでやってるんですか!?」

 宴会場から離れた場所で唖然としている早苗に気づいた神奈子がとっくり片手に近寄ってくる。
そんな神奈子に詰め寄る必死の形相の早苗に、思わず半歩下がってしまう。

「な、なんでって……もしかして、怒ってる?」
「怒ってはないです。けど、なんでここで宴会が開かれてるのか聞きたいです」

 言いにくそうに顔をそむけながら、神奈子はポリポリと頬をかいた。
そして早苗の背後に立つレミリアにそっと視線を向けてみる。
早苗からは見えないが、レミリアはどこか得意げに笑っていた。
その様子を見てか、仕方なさそうに神奈子は口を開いた。

「まぁ、なんだ。こうすれば早苗が参加すると思ったわけよ」
「―――」

 神奈子の言葉に、思わずレミリアの方を見る。レミリアはニヤリと笑っていた。
 ……まさか、本当にこいつの言った通りになるとは。

「……奇跡ね」
「いいえ、運命よ」

 不敵に笑い合う2人を不思議そうに見つつ、神奈子は、それじゃあ気が向いたら参加しなよ。と言い残して自分は騒ぎの中へと再び戻って行った。
 不敵に笑い合う2人はそれを見届けつつ、立ちつくす。

「それで、参加しないのかしら?」
「するわよ。ここまでされて参加しないほど空気を読めないわけじゃないわよ」
「そう。それはよかったわ」

 そう言い残すと、レミリアも騒ぎの中へとはいって行った。
どうやら、霊夢や咲夜のいつ場所へと向かっているようだ。
 さて、私はどうするか。と辺りを見回す早苗だが、

「さーなえ」
「ひゃあ!!」

 そんな早苗の背後から手がニュっと出てくると、そのまま早苗のお腹をがっちりと抱きかかえた。
見覚えのある服の袖だ。

「す、諏訪子さま。なにするんですか」
「幻想郷の宴会初心者の早苗にアドバイスをしてあげようと思っただけよ」

 お腹に回していた腕を解くと、早苗の前で自信ありげに胸を張る諏訪子。
その様子に苦笑しつつも、早苗は一言お願いします。と頼みこんだ。



「それにしても、ここまでうまくいくなんて思わなかったわ」
「今回の主犯は諏訪子さまでしたか」

 延々と続く宴会も、折り返し地点を迎えたのか帰るモノやその場で寝てしまう者が続出しだした。
そんな中、なんだかんだで楽しんでいた早苗は隣で泥酔している諏訪子の独り言のような言葉に反応した。

「ん~……初めは神奈子と私で計画してて……それでどうやって実行しようって話になったら……」
「諏訪子さま、こんな場所で寝ないでください。風邪ひきますよ」
「んん~……そしたら、紅魔館の吸血鬼が手伝ってくれるって……」
「え?」

 半分以上を睡魔に襲われているような諏訪子の口から出てきた人物の名前に、思わず思考が止まってしまう。
 レミリアが手伝い?

「それで、今日も……早苗をここから離すようにいろいろ歩かせるって名乗り出てくれて……」
「……諏訪子さま、寝るのならちゃんと中でお願いします」
「むにゃむにゃ……」
「……はぁ」

 すっかり眠ってしまった諏訪子を背負い、早苗は寝室へと向かった。
そこですでに寝ていた神奈子の横に諏訪子を横にすると、そのまま宴会場まで再び歩いて行く。

「……やっぱりまだ起きてたのね」
「あなたは吸血鬼をなんだと思ってるのかしら?」

 外で寝ているもの。まだ飲み続けているもの。いまだに話しこんでいるものが集うその端で、レミリアは空に浮かぶ月を見ていた。
 昼間は曇っていたのに、今ではすっかりと快晴だ。夜なのに快晴というのもおかしな話だが。

「まったく、なにが運命よ。全部あなたの思惑通りじゃない」
「それを事に運んだことこそが、まさに運命を操っているってことじゃない。
 酒屋にお酒が無くて一日中歩き回ったのも、そのお酒がみんなが買い集めていたものなのも、最後に諏訪子がネタバレするのも、全部が全部私の操った『運命』よ」

 そう聞くと、もはや神の領域にいるんじゃないかと錯覚してしまう。
だがそれでも、きっと早苗のいま持っているこの感情は、少なくとも彼女の操った運命ではないだろう。早苗は、そう思っている。

「だったら、私も1つくらい奇跡を起こしてあげた方がいいわね」
「そうね。その方が平等ね」

 なにをするのか。とワクワクしているのが目に見えるような表情のレミリアに思わず苦笑しながら、
早苗はスッと夜空に指を向けた。
レミリアがなにごとか、とその指先の夜空を見上げた瞬間。


「……奇跡、なんてものじゃないわね」
「いいえ、奇跡よ」

 思わず呆気にとられてしまったレミリアが憎まれ口をたたくが、早苗は涼しい顔でそれを受け流した。

 早苗の指先に落ちた、1筋の光。
 『流れ星』が落ちたその通り道を悔しそうにレミリアは見つめている。

「星1つ動かすなんて、人間ごときがやっていいことじゃないわ」
「人間ごときができるわけない事だから、奇跡って言うのよ」

 言いながら、早苗は少しくやしそうにお酒を口にするレミリアを見た。
その思考は見た目通りに子供のようなのに、行動がどこぞのおっさんのようで、早苗はまた苦笑してしまった。

「まぁいいわ、今のは奇跡ってことにしてあげるけど、次はこうはいかないわよ」
「次って……なんの対決なのよ」
「奇跡なんか、私が運命を捻じ曲げて起こさせなくしてあげるわよ」

 得意げにそう言うと、レミリアはニヤリとした笑みを早苗に向けた。
ちょっとお酒も入って、テンションも上がっている早苗はそれを受けて、

「だったら、私はそのねじ曲がった運命を元に戻すような奇跡を起こしてあげるわ」

 と、そう言った。
 お互いが不敵に笑い合う。


 きっとレミリアは知らないだろう。
 幻想郷にきて早々にとんでもない事をしてしまったと自覚した早苗が、自主的に皆から距離を取ろうとしたことを。
 だけど、2人の神様だけは馴染ませようとしていた事を。

 そしてきっとこれも、レミリアは知らないだろう。
 早苗はレミリアに対して、小さな友情を感じたことを。

 そして―――幻想郷流の宴会っていうのも、悪いくないな。なんて思い始めたことを。

 これはきっと奇跡であって、運命なんかじゃない。きっと。多分。おそらく。
レミ早って新しいと思うんだ!思うんだ!!って主張したい少年です。
早苗も神奈子も諏訪子いまいちキャラが掴みきれてないけど、まぁ人ってのは話す相手によって口調とか変わるから仕方ないとポジティブにいきます。
一番つかめて無いのがおぜうさまが気がしてならないのはきっと気のせい。

今回も節々でさりげなく霊夢総受けだったりしたわけですけど、少年はレイマリ大好きな人ですよ。と言っておく。でもレイアリも好きなんだとも言っておく。


ここまで読んでくださった皆様に多大の感謝を。
そしてよろしければ感想や指南も。それではありがとうございました。
少年
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コメント



0.3480簡易評価
1.70名前が無い程度の能力削除
運命と奇跡、表裏一体で似て非なる言葉。いい着眼点だと思いました。

そして自分の中で早苗さんはもう少し丁寧な口調でしゃべってる印象があるので、そこだけ少し違和感があった感じですね。

流れ星とか久しく見てないから見てみたいものです。
2.80削除
面白かったですが……前作のあの雰囲気からこの展開は読めなかった(笑)
しかし、レミリアの「運命を操る程度の能力」というのは
他のキャラクターの能力より描写しにくいのか…あまり出て来ないですよね。
出てきても精々やる前から勝負の行方が分かっているとかそんな感じでしか。
もしかしてレミリアも幽香と同じように
能力はおまけみたいな存在なんでしょうかね?
4.60名前が無い程度の能力削除
レミ早はいい。まさに新天地
5.90名前が無い程度の能力削除
「お酒だけでも勝って帰らないと」になっていますよ、
「買って帰らないと」ですね、

シナリオは非常に面白かったです。
読みやすく、疲れない長さでした。
11.80道端から覗く程度の能力削除
>お酒だけでも勝って
「お酒だけでも買って」
>レミリアは半分無視する形で
「レミリアを半分無視する形で」では?
二人の漠然としたイメージの能力をうまく使っていていいなぁ
12.80名前が無い程度の能力削除
意外な組合せでしたが、なかなかどうして良い感じですね
13.90名前が無い程度の能力削除
レミ早、新しくていいですねえ。
“「星一つ」動かす”てのは文学的な表現ですね。まぁ確かに星なのでしょう。
15.90アズサ2号削除
これは予想外な組み合わせ、驚きました。
能力で共通点を見つけるというのはいいですね。
他の作品とのキャラの絡みは難しいと思っていましたが、こういう突破口はなかなか。
流れ星にはセンスを感じました、これからも期待しています。
19.90名前が無い程度の能力削除
これはよいお話。
筋書きが非常に自然で、違和感がないからすっと読める。

上海の鳴き声が、ポケモン的に投げやりなのもなにげに面白かった(笑)
26.90名前が無い程度の能力削除
面白かった。先読み出来ない展開が楽しかった。
レミ早とは新しい。
28.80名前が無い程度の能力削除
これは新しい絡みですね。言われてみれば奇跡がおきたのか運命だったのかってのは誰にも判らないもんですし、それを操るもの同士ってのが。
44.90名前が無い程度の能力削除
レミと早のやりとりが面白かったです
>あなたのがんばりは『お譲様』も認めてるわ
『お嬢様』ではないかな?
48.80削除
奇跡と運命……その取り合わせは発想になかった。
良い、実に酔い。……あれ?
63.80bobu削除
面白かったです。
風神録キャラと今までのキャラのからみって書くの大変だろうと思いますが頑張ってください。
次作も期待してます。
78.100名前が無い程度の能力削除
ん~マンダム