Coolier - 新生・東方創想話

案内人

2007/10/06 02:22:41
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このssは東方キャラ分が非常に不足しています。作者の筆力も不足しています。
それを踏まえたうえで読んで下さる方がいれば、お願いします。





























「最後まで残ったのは?あら、文と椛と私か…。私この係好きじゃないのよね。負けないわよ」

「私も嫌ですよ。面倒だし、新聞のネタを探す時間が減りますからね」

「はいはい、さっさと決めるわよ。じゃ~ん!け~ん!…」





―――――――――――――――――――――――――――――





「最近、こんなことを考えるのです。特にしたいこともない。
 妻も子もいなければ恋人もいない。親はとっくの昔に死にました。私などが生きていて何か意味があるでしょうか。
 いえ、人間が生きる意味など、人それぞれだということはわかっています。しかし私にはもう生きる原動力が何も無い。
 私が消えても、この世界にはなんの不都合もない。そして私は生きたいと思うわけでもない。ならば生きる必要は無いの
 では、と」

男は早口でここまで喋り終えるとうつむいて黙り込んだ。

ここは精神科、『不治の病』この言葉を聞かなくなって何年になるだろうか
ほとんどの病気の薬がコンビニで買えるようになったこの時代に唯一、はばをきかせている病院である。

この男のような人間は、この時代珍しくもなんともなかった。
高度に発展した人間社会は、心の弱い人間に多大な重圧をかけていた。

「まぁ落ち着きなさい。あなたは少し疲れているだけだ。あなたは働きすぎなのです。前に取った休暇はいつでしたか?
 働きすぎは良くない。心に余裕がなくなってしまう。
 有給でも取ってのんびり旅行をするといい。もちろん薬もお出ししますがね。
 あなたのような人に丁度いい旅行先を知っている。そこへ行ってみなさい。のんびりできると思いますよ」

そういって、医者は一枚の紙に住所と簡単な地図を書き込み、男に手渡した。
男はそれを受け取り、医者に礼を言うと自宅に帰っていった。

「確かに、前に取った休みはいつだったか、思い出せないな…。医者の言うことも、もっともかもしれない」

誰も出迎える者のいない部屋に帰り、明かりをつけながらそう呟くと、男は会社に医者の診断書と共に休暇を取るメールを送った。
5分後、あっさり返信が届く。休暇は許可されたようだ。
この時代、精神病は社会問題となっており、精神科の診断書は大きな力を持っていた。

次の日の朝早く、男は電車に乗り、医者に紹介された場所へ向かった。何本もの路線を乗り継ぎ、着いた先は田舎の農村であった。
村に人影は無い、ひび割れたアスファルトから伸びる草木が、それが何年も使われていないことを物語っていた。
爆発的に増加した人口は、ある年代を境に急速に収縮していった。
少子化は止まらず、地方には多くの廃村が出来た。ここもその一つなのだろう。

「確かに、のんびりできそうな場所ではあるな…」

男はそう呟くと、渡された地図を頼りに歩き始めた。
少し歩くとアスファルトの道は途絶え、山道となった。
都会では嗅ぐことの出来ない自然の臭い、男にはそれが新鮮で心が洗われるようだった。

もう20分も歩いただろうか、医者の地図に書かれた目印は未だに見えない。
目印は3つ並んだ地蔵、そこで医者の紹介してくれた案内人と合流する段取りになっていた。

見逃したのだろうか?男は後ろを振り返ってみる。麓の荒れ果てた村は、もうかなり小さくなっていた。
男は都会生まれ都会育ちだった。地蔵なんて旧世代の遺物は、歴史の教科書の写真くらいでしか見たことが無い。

男はため息をつきつつ、少し戻ってみようと歩き出した。その時、背後から唐突に声をかけられた。

「どこにいくんですか、こちらですよ」

男が振り返ると、いつの間にか不恰好ともいえる大きさの帽子をかぶった少女が立っていた。
その髪の毛は青に銀の混じったような、不思議な色をしている。顔立ちは整っており、美少女という言葉が相応しい。
こんな子が案内人とは、男は予想外のことに驚いたが、同時に少し、嬉しくもあった。

「こんにちは、私のことはお医者様から聞いてますよね。
今日一日、ご案内させていただきます。犬走 椛といいます。よろしくおねがいします」

そういって少女は笑顔を見せる。男は久しぶりに見る『営業的』ではない笑顔を見ると、初対面ということから来る緊張がほぐれる気がした。

椛と名乗った少女の案内で再び山道を登る。少女は草木に詳しく、男に道端の植物の説明をしながら歩いた。
草花を綺麗だと思ったのはいつ以来だろうか、と男は思った。
一時は霧が出て視界が悪くなってしまったが、少女は迷うこともなく男を先導して進む。随分と山に詳しいようだ。
男は1時間ほど歩くと肩で息をしはじめたが、彼女は汗一つかいていない。やはり山登りは慣れているのだろう。
男は恥ずかしいと思いつつも休憩を取らせてもらうことにした。

「宿までは後どのくらいかかるのですか。お恥ずかしい話ですが、見ての通り運動は苦手でして、あまり体力には自信がないんです」

「もう少しですよ、さっきの霧の出た場所が中間地点ってところですかね、ここからは見所がたくさんありますよ」

少女の言ったとおり、その後見えてきた景色は素晴らしいものだった。
濃霧の中に舞う紅葉、山々の間を流れる渓谷、そびえ立つ巨大な滝、どれも幻想的で、素晴らしいものばかりだった。
男はこれまでの人生でこれほど感動したことは無いと思った。
日も暮れだした。長時間歩いたようだが、そんな疲れは全て今までの絶景で吹き飛んでしまったようだ。

「いやぁ、今日は椛さんのおかげで素晴らしいものが見れた。日本にもまだ、このような景色があったとは、
 世の中にはまだまだ素晴らしいものがあるのでしょうね、死のうなどと考えていた昨日の自分がバカらしく思えますよ」

「そうですか、それはよかったですね」

「全てあなたとお医者様のおかげです。帰ったら礼を言わねば、また頑張って生きる気力が湧いてきましたよ」

「帰る?それは困る。さて、このあたりまで来れば大丈夫ですかね」

男はそういわれて周りを見渡すが、宿らしき建物の影はどこにも見当たらない。何故か少女の声が急に冷たくなったような気がした。

「帰られては私のノルマが終わりませんから、お疲れ様でした。さようなら」

少女のほうを向き直ると、少女はいつのまにか刀を手に持っている。



それを機械的に振り上げ、降ろす。



その勢いで滑り落ちた帽子からは獣のような耳が現れ…



それが男の見た最後の光景となった。



少女が合図を送ると、どこからともなく数人の妖怪が現れる。妖怪は男の体を抱えると、飛び去っていった。



「これでノルマ達成ね。やっぱりこの係、嫌だなぁ、悪いことしてるような気分になるし…」

少女は少しの間考え込む。

「ま、誰かがやらないといけない仕事だからね、帰って文様と八目鰻の屋台で『天狗殺し』でも飲もう」




―――――――――――――――――――――――――――――



診療時間を終えた院内に二人の人影が動く。



「今回もありがとうございました。これはお礼です。お納めください」

「いや、私はただ患者を診療し、処方しただけですよ」

「…まぁいいでしょう。それより、何度目になるかわかりませんが、くれぐれもこのことは人にはお話になりませんよう、お願いしますよ。
あなたを殺すことになると、また我々も面倒なことになる。逃げても同じですからね、我々はいつでもあなたを見張っている。このことを忘れないように」


そういうと男の天狗は飛び去っていった。


つまり、昨日診察を受けに来た彼も、行方不明者の仲間入りを果たした、ということか。

こんな話、誰かに話したところで信じてくれる奴がいるものか。私は従うほかに無いのだ。
彼の言うとおり、逃げても無駄だろう。

そう、もう何年前のことだろうか、山登りが趣味の私は、昨日の男に紹介した山に登ったとき、妖怪とでくわしたのだ。

鋭い爪、口元に光る牙、一歩ずつ近づいてくる恐ろしい姿を前に私は死を覚悟したが、意外にも妖怪は私に話かけてきた。

「私は食料調達係でな、わけあって、我らの郷の中では人を攫えなくなった。
 しかし、妖怪は人を喰らう。確かに喰らわずとも生きてはいけるが、
 そうだな、お前らの酒やタバコの類だと思ってくれ。嗜好品なのだ。
 そこで郷の外の人間を攫うことにしたのだ。
 お前を今ここで攫い、殺すのはたやすい。だが、お前は運が良いことに精神科の医師だ。チャンスをやろう。
 お前がお前の元を訪れた患者の中から、そうだな…社会的に孤立した、孤独な患者を定期的にここへ送るならば、お前は生かして
 帰してやろう。
 こちらの人間の社会は発展しすぎた。考えなしに人間を攫い続けては、いつか幻想郷が暴かれるかもしれぬ。
 しかし、先ほど話したような者達ならば…」

妖怪も考えたものだ。人間は群れる。しかし、都会で多くの人と隣り合わせに暮らしているくせに、実は孤独であるものは少なくない。

特に私の元を訪れる患者にはそういうものも多い。どうせ半分死のうか迷っているのだ。そいつらが殺されて、私が生きてなにが悪い…。

第一、私のところから送られていく人間だけで足りるとは思えない、妖怪は大勢いると言っていた。私以外にもこのような仕事をしている輩がいるに違いない。

私がやらなくても誰かがやらされるだけのことだ。

しかし、今になって冷静に考えてみると、奴は私の仕事を知っていたのか、狙われていたのかな…。まぁそんなことはもうどうでもいい。

早く帰って、妻とわが子の顔を見て、酒を飲んで寝よう。それで忘れられるはずだ。


―――――――――――――――――――――――――――――



休暇が終わっても顔を見せない男、会社は一応警察に連絡はするが、見つかるわけは無いのだ。
警察も、彼が精神科に通院していたことを理由に、自殺か蒸発でもしたのだろう、と行方不明者として処理した。










男が消えても、世の中は何の不都合もなく、回っていった。









求聞史紀の「妖怪の食料係」という一文からここまで鬱な文を想像する俺はもうだめかもわからんね

はじめまして、電波受信機のNFSです。また電波を受信したので書きました。
文章を書く経験もあまりなく、へったくそなうえに改行も酷いですが許してください。

しかも東方キャラはまったく出てきませんね、これを東方でやる意味があったのか
でも、幻想郷内の人里が平和ならお嬢様の血はどこから出てくるのか
ルーミアも中国も人喰い発言はしてるし、どこかから供給はされてるはずだ!という裏話とことで一つ。

椛を使った理由は「妖怪の山が組織的にやってそう」「山の面子で使いやすかった、妖怪の特徴を隠しやすい」
ただそんだけです。ファンの方、気分を害されましたら申し訳ありません。
NFS
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コメント



0.260簡易評価
3.70名前が無い程度の能力削除
いやしかし、これは目の付けどころがすばらしい。
確かに東方キャラがメインではないですが、
話の薄黒さにかえって東方らしさを感じました。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
10.90名前が無い程度の能力削除
良し