Coolier - 新生・東方創想話

類は友を呼ぶ

2007/09/24 16:23:02
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この話は「藍のとある一日2」と「紫の悪巧み・序章」と関連しています。
後、過去の色々な作品とも微妙に関連しています。
以上の事を踏まえた上でお読み下さい。
































里の外れの森の廃屋

最初に来たのは藍だった。
「ふぅ……参ったな…突然降って来るとは………」
藍は、先日幽々子に食い尽くされてしまった食材の買出しに里に降りていた。
買い物も終わり、さて帰ろうかと言う時に突然雨が降ってきた。
しかも、やや強めに。
小雨がパラつく程度なら、藍の脚力を持ってすれば、マヨヒガまで濡れ過ぎる前に辿り着く事が出来る。
だが、今降っている雨では、マヨヒガに着く前に結構濡れてしまう恐れがある。
藍は式神ゆえ、あまり水に濡れすぎると式が剥がれてしまう。
藍くらいに長く生き、精神的にも成長している者なら、無理矢理に式にされている状況で無い限りは主の下に戻り、式を付け直して貰えば良いだけだ。
とは言え、余計な手間を主に掛けさせたくないと言うのが藍の考え。
故に、偶々近くにあった廃屋で雨宿りをする事にした。
廃屋ではありそうだが、見た所、雨漏りしそうなほど傷んでもいなかった。
念の為、人が居ないか確認したが、案の定、誰も使ってなさそうな廃屋であった。
これ幸いと、藍はその廃屋で暫く雨宿りをする事にした。
「う~ん……雨が降りそうな匂いはしなかったんだが………考え事をしていた所為で、気づけなかったか?」
藍も普段は人の姿なれど、そこは妖獣。
五感の殆どが人間のそれを遥かに上回る。
故に、遠くの空気の湿った匂いなどで天候の変化に気づく事も出来るのだ。
「しかし、橙は大丈夫だろうか?ちゃんと雨宿りして濡れるのを避けてくれると良いのだが………」
橙もまた藍の式神である。
しかし、橙はまだ妖獣となって日が浅く、知恵があまり高くない。
藍の式となっている間はそうでもないのだが、式がはがれると獣の特性の方が強く出てしまう。
つまり、暴れるのだ。
そして、それらのお叱りを受けるのは、橙よりも寧ろ、主たる藍の方が多かったりする。
橙自身が風邪を引く事も心配ではあるが、そっちの方面でも心配な藍であった。


2番目に来たのは妖夢だった。

「参ったなぁ……突然降って来るなんて………」
妖夢は里に買い物に来ていた。
先日、藍に悩み事を解決してもらった為、そのお礼の品を買いに来ていたのだ。
そして、帰ろうかという時に突然の雨。
藍に買った品も雨で濡れて困るような物ではなかったので、強引に走って帰ろうとしていた。
が、段々雨脚が強くなるように感じ、このままでは白玉楼に着く頃には濡れ鼠になってしまう。
一端、森の中に入って雨を凌ぎながら歩いていると、目の前に廃屋が見えた。
これ幸いと、妖夢は廃屋の戸をノックした。
万一、人の住処か何かだとしたら、勝手に入るわけにはいかない。
返事は無かったが、中から何かが戸口へ向けて歩いてくる気配がした。
そして、ガラッと戸が開く。
「ん?妖夢か」
「あれ?藍さん?」
出て来たのは、先に雨宿りをしていた藍だった。
「ここって藍さんの持ち家……には見えませんね」
「だろうな。勿論、私の物ではない。家財道具も荷物も何も無い所を見ると、ただの廃屋だろう」
「そうでしたか」
「妖夢も雨宿りか?」
「ええ、突然降って来られまして………」
「奇遇だな、私もだ。さ、中に入るといい。私の家ではないがね」
「はい、失礼します」
藍に促されて、妖夢も廃屋に入る。
「あ、そうだ。藍さんに渡す物があったんですよ」
妖夢は早速買い物袋を漁る。
「私に?」
「ええ、昨日、色々助言をいただいたじゃないですか。そのお礼ですよ」
「礼を言われるような事じゃないんだがな……私の体験談を話しただけの様のものだしな」
「それでも私の悩みは解決しましたから。はい、これです」
そう言って、妖夢は買い物袋から礼の品を取り出した。
「悪いな………む…こ、これは……!?」
藍はそれを見て表情を変えた。
「何にしようか悩んだんですが、無難な所で食べ物を選んでみました」
妖夢が手渡したそれは、藍の好物の油揚げだった。
「妖夢……これをどこで?」
藍が真剣な顔で尋ねてくる。
「え?それですか?」
妖夢は藍にその油揚げを手に入れた場所を教えた。
「な、何!?そんな所に売ってたのか!?」
「ええ、折角なので良い物を用意しようと思って、里の方に尋ねたらそこを教えて頂きまして」
「く…不覚……!!…行きつけの店よりも良い物が売っている所があるとは……時代は動いているという事か………」
「あの、お気に召しませんでしたか?」
険しい顔をしている藍に妖夢がおずおずと尋ねる。
「ん?あ、いや。ありがとう。凄く嬉しいぞ」
藍が嬉しいと言っているのは嘘でなく、その満面の笑みと嬉しそうに揺れる尻尾がそれを如実に表している。
「それは良かったです」
妖夢も笑顔でそれに答える。


3人目は鈴仙だった。

「何よこの雨……いくらなんでも不自然に降ってこなかった?」
鈴仙は毒づきながら森の中を歩く。
今日は里の方へ薬を売りに来ていたのだが、ついでに紅魔館にも寄っていたのだ。
何故紅魔館に寄ったか?
それは、咲夜に頼まれたのだ。
紅魔館は確かに、殆どが薬なんて必要無さそうな者達ばかりだ。
が、咲夜は特異な能力があるとは言え、人間なのだ。
無理をすれば体に負担がかかり、負担が増えれば病にもかかる。
そんな事にならないよう、もしくは、なっても直ぐに治せるように、薬の手配を頼んでいたのだ。
そして、その紅魔館からの帰り道に雨に降られてしまった。
「森の中が濡れにくいとは言え、偶に落ちてくる雫だけでも結構濡れるのよね………」
ぶつぶつ言いながら、鈴仙は森を歩いていた。
「ん?あれは………?」
すると、目の前に小屋が見えてきた。
やや古くなっており、人が使ってそうな気配も無い廃屋だ。
「丁度いいわ。あそこで雨宿りしようっと」
鈴仙は廃屋の前に立ち、一応ノックする。
(これで人の家だったらまずいしね………)
が、誰も居る筈が無いと思っていた鈴仙の思惑は外れ、何者かの気配が戸口に来る。
こんな所にいったい誰が?と思いつつ、戸が開くのを待つ。

ガララッ

「あ…れ?」
「え?あ、鈴仙さん」
現れたのは妖夢だった。
「妖夢?貴女、何してるのこんな所で」
「突然雨に降られたので雨宿りを……鈴仙さんこそ、どうしたんですか?」
「私も同じよ」
「そうでしたか。さ、中へどうぞ」
「ええ、お邪魔するわ」
「ははは…ここは廃屋で、誰の物でもありませんけどね」
笑いながらそう言い、妖夢は鈴仙を家の中へと招く。
「おや?誰かと思えば永遠亭の兎じゃないか。確か、鈴仙、だったな」
妖夢に招かれた鈴仙を見て、藍が言う。
「ええ、お久しぶりね、八雲藍」
「あれ?お二人は知り合いでしたか?」
妖夢が意外そうに尋ねる。
「知り合いって程でもないわ。前に上白沢さんの家で会っただけよ」
「そうだな。私よりも妖夢の方が彼女と知り合いに見えるが?」
「ああ、私と鈴仙さんは一時期紅魔館に一緒に仕えてましたので……」
「ああ、あの時の………か」
「ええ、あの時の………です」
「そうね、あの時の………ね」
三者三様に遠い目をする。
妖夢と鈴仙は恥ずかしかったな………と。
藍は、紫様に遊ばれて死に掛けたなぁ………と。
三人して遠い目をしていると、またまた戸を叩く音が聞こえてきた。


4人目は慧音だった。

慧音もまた、森を歩いていた。
この辺りの森は人が偶に通る。
故に、危険な妖怪が居ないか。
もしくは、そんな妖怪に襲われている人間が居ないか、見回りに来ていた。
そんな折に、やはり雨に降られてしまった。
「参ったな……雨が降ると思ってなかったから、傘が無い………」
呟きながらも慧音は森の中を歩く。
木々が雨を多少遮ってくれるとは言え、これ以上降られれば、最早凌げない。
困っているところに、眼前に廃屋が見えてきた。
「ふむ……廃屋なら不法侵入にもならな………くはないが、取りあえず、あそこで凌ぐか」
緊急避難だ、と自分に言い聞かせて、慧音は廃屋を目指した。
そして、やはり一応戸を叩く。
誰も居ないと思っていた慧音の予想に反して、何者かの気配が戸に近づいてくる。
(人が住んでいた?いや、同じ境遇の者かもな)
答えは後者だった。
戸が開き、そして妖夢が現れた。
「む、妖夢か」
「あれ?今度は慧音さんですか」
「今度は?」
「ええ、藍さんと鈴仙さんも中に居るんですよ。雨宿りで」
「成る程、同じ境遇という事か」
「ええ。さ、中へどうぞ」
「ああ、そうさせてもらおう」
妖夢に促されて慧音も中へと入る。
「ん?今度は慧音か」
「ああ、邪魔をするぞ、藍」
「構わないさ。別に私の家という訳でもないしな」
「と言うか、廃屋だから誰の家でもないしね」
藍の言葉を鈴仙が繋げる。
「しかし、また妙な顔が揃ったものだな」
慧音が3人を見ながら言う。
「確かに、共通点が見あたら無そうだな、私達は」
薄く笑いながら藍が言う。
「確かにそうですね」
妖夢も同意する。
「いえ、私達にはとんでもない共通点があるわ」
が、鈴仙はそう言った。
「共通点……ですか?」
「どんなだ?」
慧音が怪訝な顔で尋ねた。



「決まってるでしょ……………苦労人って共通点よ」


鈴仙のその言葉に屋内は静まり返った。
誰も否定出来なかったからだ。
「否定……出来んな」
最初に肯定したのは藍だった。
「悲しいですけどね………」
妖夢も肯定した。
「う…む……ぅ………否定出来ないな………」
そして慧音も肯定した。
それぞれがそれぞれの苦労を思い浮かべる。
そして四人揃って溜息。
そんな時、5人目の来訪者を知らせる音が響いた。
「今度は誰だ?」
「きっと私達と同じ苦労人仲間よ」
藍の言葉に鈴仙が疲れたように答える。
そして、またまた妖夢が戸を開けに行く。





5人目は美鈴だった。

美鈴は困っていた。
美鈴はシフトで非番の時に、何か面白い物は無いかと、人の里に来ていた。
そして、用事が住んで、さぁ帰ろう、と言う時に雨がパラつき始めた。
最初の方は気にするほども無い小雨だった。
が、里から出て少し経つと、段々雨脚が強くなってきた。
流石に濡れ鼠は御免なので、美鈴は走っていこうとした。
が、雨が地面を濡らし、泥を作る。
このまま走れば、間違いなく衣類がかなり汚れる。
そう思った美鈴は、森の中を歩く事にした。
直ぐ止むような雨かもしれないし、何より森の中を歩いていれば、必要以上に濡れる事も汚れる事も無い。
しかし、美鈴の思惑とは違い、雨は止む気配を見せない。
思い切って服が汚れるのを覚悟で走ろうかとした時、目の前に雨宿りが出来そうな廃屋が見えた。
これ幸い、と、美鈴は廃屋に駆け込む事にした。
が、やはり、万一誰かの家だと困ると言う事で、一応戸を叩く。
そして、中から何者かの気配がする。
(あれ?廃屋じゃなかったのかな………?)
まぁ、誰かが住んでたら住んでたで、雨が止むまで軒先借りる位は出来るだろう、と考えていた。
ややして戸が開き、姿を現したのは妖夢だった。
「あれ?貴女は………?」
「あれ?貴女は確か……中国さん?」
「美鈴!紅美鈴です!!」
妖夢の言葉に全力で答える美鈴。
「あ、すみません……レミリアがそう言ってたので………」
「うぅ……所で、ここは貴女の家ですか?」
「いえ、ここはただの廃屋で、私達は雨宿りしてる所です」
「私達?」
「ええ。さぁ、まずは中へ。貴女も雨宿りなのでしょう?」
「ええ。じゃあ、お邪魔するわね」
妖夢に促されて美鈴も家の中へと入る。
「ほら言った」
「うぅむ………」
鈴仙の言葉に慧音が唸る。
「何かあるんじゃないか?この家は………」
藍は半分本気で言っていた。
「ちょっ!何ですか!人の顔を見るなり!!」
入ってきて早々、そんな事を言われて美鈴は叫ぶ。
「ああ、すまん。ちょっと……な」
慧音が歯切れ悪く答える。
「さっきここに居る者の共通点が判明してね。多分、次来るのもそうなんじゃないかって言ってたら、本当にそうだったからね」
鈴仙が慧音の代わりに答えた。
「共通点……ですか?私と皆さんの?」
美鈴が4人の顔を見ながら考える。
「…………人間じゃない?」
「まぁ、それもありますね」
「違うの……?それじゃあ………はっ!?」
美鈴は何かに気づいたようだ。
しかも、気付いてはいけなそうな事に。
「気付いたようだな」
藍が少し悲しげに言う。
「そうだったんですか………皆さんそうだったんですね………」
美鈴が、同類相憐れむ、といった視線で言う。
「そんな目で見ないでよ。貴女だって同類なんだから」
「う………」
鈴仙に言われて美鈴が唸る。
「まぁ、やはり解ってしまうものなんだろうな………」
「そうですね……本音では解りたくないものですが………」
慧音も妖夢も溜息をつきながら言う。
「でも、私だけかと思ってましたよ」
美鈴が少しだけ嬉しそうに言う。
「そんな訳ないでしょ?皆同じよ。少なくともここに居る面子はね………」
鈴仙が疲れたように言う。
「そうだったんですか…………」
美鈴は少し悲しげな顔になり








「皆さんもお給料がとんでもなく少なかったんですね…………」





そう言った。
「「「「は?」」」」
4人の声がハモった。
「え?あれ?違いました?」
美鈴は意外そうに尋ねる。
「きゅう……りょう?」
鈴仙が呟く。
「給料……か、ふふふ……そうだな、私の給料は少ないな………ははははは!!!」
藍が気が触れたように笑い声を上げる。
まぁ、あれだけ振り回されて無給は確かに辛い。
「ら、藍さん!!しっかりして下さい!!私なんて貰ってませんよ!?」
「ははははは!!妖夢!!私だって貰ってないさ!!!あはははははは!!!」
が、藍はますます笑い声を大きくする。
「あぁ……そう言えば、私も貰ってないわね、お給料」
鈴仙もそう呟いた。
「給料と言うほどではないが…私は寺小屋の月謝があるからな……まぁ、それほど多い訳ではないが」
しかし、慧音の場合は、周りから色々と贈り物を受けているので、食で苦労するような事は無い。
慧音の人徳のなせる業だ。
「も、貰ってないんですか……?」
「ああ、貰ってないさ」
開き直り気味に藍が答える。
「うぅ………私はまだ恵まれていたんですね」
「そのようね」
鈴仙がうなずく。





「はぁ………例え三日分の食費だけでも貰えるだけマシって事ですね」



「「「「はい?」」」」
またまた4人の声がハモった。
「三日分?」
妖夢が尋ねる。
「ええ、三日分です」
「それは週単位で給料を貰ってるのか?」
今度は慧音が尋ねる。
「いえ?一ヶ月分ですよ?」
「ちょっ!?一月の給料なのに三日分の食費しかないの!?」
鈴仙が驚愕しながら聞く。
「ええ」
あっけらかんと答える美鈴。
「ええって………全然足りないじゃないか!!」
藍が叫ぶ。
「大丈夫ですよ。非番の時に食材を狩りに行ってますから」
笑いながら答える美鈴。
なんともワイルドな話だ。
話している本人は全然ワイルドじゃないのに。
「あれ?でも、貴女のその袋は?」
鈴仙が美鈴の買い物袋を指差して尋ねる。
「ああ、これですか?どうせ食費なんて狩りで済ませればいい話なんで、その給料は私の嗜好品に充ててるんですよ」
笑顔で言う美鈴だが、言ってる事は結構ヘヴィだ。
「やはり、お前も同類だな」
藍がうんうんと頷きながら言う。
「そうだな」
「そうですね」
「ええ、そうね」
慧音、妖夢、鈴仙も同様に頷く。
「え?何がですか?」
「苦労人って事よ。ここに居る者、全員ね」
美鈴の質問に鈴仙が答えた。
「…………あ~」
ポンッと手を叩きながら美鈴は納得した。
「いっそ同盟でも組むか?苦労人同盟とか」
藍がそんな事を提案した。
「あら、良いわね、それ。苦労人の苦労人による苦労人の為の同盟って所ね」
鈴仙はそれに乗った。
「まぁ、確かに愚痴る仲間は必要かもな」
慧音も同意する。
「それは、確かに………」
先日の事で、人に悩みを打ち明ける事を知った妖夢も同意した。
「解ります解ります。こう言うのってぶちまける場所が必要ですよね」
美鈴も賛同する。
「しかし、だとするとやはり盟主が必要だな」
案外、藍の考えは本格的だった。
「リーダーね……順当に行くなら、八雲藍か上白沢さんよね」
鈴仙は候補の二名を上げる。
因みに妖夢と美鈴もそれに同感だった。
そんな時である、最後の来訪者が訪れたのは。
「ん?誰だ?」
藍が戸を叩く音に反応した。
「またお仲間?」
「かもな」
鈴仙の言葉に慧音が相槌を打つ。
「見てきますね」
最早、役割と化している妖夢が戸を開けに行く。
そして、戸を開いた。



「おや、先客がいましたか。雨宿りしたいのですが、良いですか?」


その来訪者を見た妖夢は中にいる4人へと叫んだ。
「皆さん!リーダーが来ました!リーダーが!!」
「な、何ですか?一体何の事ですか?」
その来訪者は突然の言葉に戸惑う。
「何!?」
「誰だ!?」
中の4人がその「リーダー」を見に入り口に来る。
「おお……リーダーだ!」
「ああ、リーダーだな」
「文句なしにリーダーね」
「ええ、リーダーですね」
そして、4人ともその来訪者を見て
そう言った。
「さ、さっきから何なんですか?リーダーとはどういう事ですか?」
突然リーダーと言われて戸惑う来訪者。




その名は、四季・映姫・ヤマザナドゥ



幻想郷の閻魔様だ。
「まぁ、リーダー。まずは中へ」
「いや、だから……まぁ、まずは中へ入れて頂きましょうか」
映姫は抗議をしたかったが、取りあえずは雨を凌ぐために中へ入った。
「で、何なんですか?そのリーダーとは」
中へ入り、開口一番そう尋ねる。
「ああ、それはですね………」
藍が映姫に事のあらましを説明する。

「……事情は解りました。が、何故私が?」
「いや、だって閻魔様って苦労してそうじゃないですか」
鈴仙がそう言う。
「……否定はしません。よくサボる死神とか、悪行を減らそうともしない者達とか、よくサボる死神とか、
人をおちょくる隙間妖怪とか、よくサボる死神とか、真面目に幽霊を管理しないお姫様とか、まぁ、色々ですが」
「「すみません」」
妖夢と藍が、ここには居ない主に代わって頭を下げる。
「まぁ、そんな訳で、その「白黒はっきりつける程度の能力」もありますし、リーダーに適任かと」
鈴仙がそう言う。
「別段、私の能力で貴女達の苦労の理由に白黒つけるのは構いませんけどね」
「それは是非。あ、所で閻魔様は何故こんな所に?」
美鈴が尋ねた。
「今日は非番を利用して悪行の溜まって居る者たちに警告をしに来たのです。そして、その帰りに雨に降られた、と」
「なるほど」
美鈴はその回答に納得した。
「まぁ、雨に降られた、と言うよりは、雨を降らされた、が正確ですけどね」
「やはり、ですか?」
藍がその言葉に反応する。
「ええ。私とて自然発生の天候ならある程度は読めますよ」
「では、自然じゃないと言う事ですか?」
慧音が尋ねる。
「ええ、これはある者の仕業です。と言っても、こんな事が出来るものは限られていますがね」
「紫様に萃香様、ですか?」
「それに師匠もね」
妖夢と鈴仙が容疑者候補の名前を挙げた。
「ええ、恐らくはその三人の誰かですね」
「紫様と萃香様は解るが、あの薬剤師もそんな事が出来るのか?」
藍が鈴仙に尋ねる。
「そりゃね。あらゆる薬を作れるんだもの、天候を強制的に変える薬を作れても不思議じゃないわ」
鈴仙が当然でしょ?と言わんばかりに答えた。
「まぁ、彼女等は意味も無く天候操作などしないでしょうから、止むのを待つのが得策でしょう」
「それもそうだな」
映姫の言葉に慧音は頷く。
彼女等は確かに一見面白おかしく、色々画策したりするが、あまり無意味な事はしない。
と言うか、能力の高い妖怪ほど無意味に力を使ったりしない傾向にある。
「では、折角ですから、貴女方のその苦労とやらをお聞きしましょう」
「あ、じゃあ私から!」
美鈴が、ハイッ!と手を上げる。
「どうぞ」
「私の雇い主が、一月に三日分の食費文の給料しか払ってくれません!」
「残念ですが、それは貴女に原因があります」
「えぇ!?」
てっきり雇い主が悪いと言われると思っていたのに、美鈴はショックを受けた。
「貴女が侵入者、霧雨魔理沙をしょっちゅう通しているのは聞き及んでいます」
「う……でも、彼女と私じゃ分が悪すぎますよ………」
肉弾戦ならともかく、スペルカードバトルでは美鈴の手に負える相手ではない。
「解りませんか?だったら貴女を解雇してもっと優秀な者を雇えばその問題は解決してしまうんですよ?」
「か、解雇!?」
美鈴はかなりショックを受けた。
「しかし、貴女は解雇をされていない。数多の失敗をしているのに、です」
「うぅ………」
「ならば、それに見合った罰を受けて然りでしょう。解雇されてない事に寧ろ感謝をすべきです」
「あうぅ………」
「それに、それは貴女にチャンスを与えてくれてると言う事なんですよ?」
「チャンスを?」
「ええ。先程言いましたとおり、問題解決するなら、貴女より優秀な門番を雇えばいい。それをせずに貴女を引き続き雇用していると言う事は、チャンスを与えてもらっていると言う事です。汚名返上のチャンスを」
「汚名……返上………」
「もっと貴女に出来る事はある筈です。まずはそれをしなさい」
「は、はい………」
シュンとなりながら答える美鈴。
「さて、次はどなたですか?」
「あ、私、良いですか?」
今度は妖夢が手を上げた。
「どうぞ」
「主の…幽々子様の食欲をどうにか出来ませんでしょうか?」
「残念ですが、それも貴女が悪いですね」
「え、ええぇぇぇぇ!?」
まったくの予想外の回答に驚く妖夢。
「ですが、私にはその理由を言う権利はありません」
「ど、どうしてですか!?」
「それは貴女自身が気付かなければいけない事だからです」
「お、仰る意味が解らないのですが………」
「残念ですが、ここまでです。ですが、これだけは教えてあげましょう」
「何ですか?」
「彼女はすべからく、貴女を思って行動していると言う事を」
「私を……思って?」
「それ以上は貴女が見つけなさい。さて、次は………」
そんなこんなで、リーダー、もとい、閻魔様の相談室は続いた。




「さて、こんな所ですか?」
一通り悩みと言うか愚痴と言うか、それを聞き終えた映姫が尋ねる。
「そうですね。それじゃあ、今度はリーダーの悩みを聞きましょう!」
美鈴がそう言う。
「だから、リーダーではないと……しかし、私の悩みですか?」
「ええ、閻魔様もご苦労なさってるでしょうし、偶には人に打ち明けるのも良いのでは?」
慧音が映姫に提案する。
「……一理ありますね」
「今度は我々がリーダーの悩みを聞く番ですよ」
藍がそう言った。
「だから、リーダーではないと………まぁ、確かに、偶には人に言うのも良いかもしれませんね」
映姫も少し考えてから、そう結論を出した。
「思いっきり言っていいですよ、リーダー!」
鈴仙が言う。
「はぁ……もうリーダーで良いです。さて、では私の悩みは…………」
そうして、今度は映姫の悩みの打ち明けが始まった。
その内容の大半は、よくサボる死神の事であった事を追記しておこう。
やがて、雨は止み、集った6人は解散する事にした。
しかし、解散する前に、皆、一様に思った。




やはり、我々は苦労人である、と。






-了-
なんか苦労してるだろうなぁ、という面子を集め、そして彼女等が一堂に集ったらこんな感じの会話でも交わすのかな?と思いながら書いてみました。
本当は美鈴を咲夜で出そうかと思ったんですが、咲夜の場合は、こういう風に打ち明けるような事はしなさそうなんで、美鈴にしました。
美鈴は美鈴で色々苦労してそうなので^^;

ともあれ、楽しんでいただければ幸いです。
好評不評問わず、待ってます。
華月
[email protected]
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コメント



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8.100時空や空間を翔る程度の能力削除
何時はその苦労が報われる日が
きっと来る事を信じて歩んで生きましょう~
応援します、皆さん。
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・・・苦労人連盟・・・;;涙が止まらない
11.80名前が無い程度の能力削除
彼女らに神でも仏でもいいから救いがあらんことを・・・(号泣)
13.90名前が無い程度の能力削除
みんな頑張れと励さざるを得ない。
18.100名前が無い程度の能力削除
あれ・・?画面が歪んでよく見えない;;;
苦労人の彼女等に幸あれ!!
19.100名前が無い程度の能力削除
私の好きな面々が揃ってる!と思ったら苦労人同盟か・・・せめてその幸多からんことを・・・
22.100名前が無い程度の能力削除
自分は苦労人キャラが好きなんだと気付かされましたw
39.100名前が無い程度の能力削除
魅力は負うた苦労に比例するという説が立てられそうです