Coolier - 新生・東方創想話

亡きメイドの為のカルテットⅡ

2007/09/16 00:10:51
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見慣れぬ場所で、アリスは彷徨う。
辺り一面、赤い彼岸花。
その光景は象徴的で、とてもわかりやすい。

「カラダはあるから、死んでないと思うんだけどね」

はぁ。人知れず溜息を吐いてしまう。
何故こんな彼岸にいるのか?
三途の川を渡った記憶はない。
しかし、その疑問にはある程度の仮定が想像できる。
――――八雲 紫。
隙間を使い、こんなところに送り込んだ可能性の高い妖怪の名前を思い浮かべ、なんとはなしに思う。
紅の異変が始まり、一度もその姿を見ていない。
ただ、単純にアリスと会わなかっただけ、だと思うけれど。

「……何を企んでるの?」

どうにも紫が暗躍してそうな匂いがある。
現にこうして、アリスが意図せずに、文字通り”死の淵”に居ることがその証明だ。

「ふぅん、ま。考えてもアレのことなんて……あ。」

彼岸花は赤い。
だから、彼岸花で埋め尽くされた野原は血塗られたように真っ赤だ。
一部を除いて。
さくさく、と花を蹴り別け、ソレの目前で止まる。
白い小山、綿のように柔らかそうな雪が積もっていた。
赤を避けるように、周りには彼岸花が咲いていない。

雪が―――まるで、紅を溶かしたような。

「……」

黙考。
考えるべき事は多い。
しかし、今重要なのはどんな状況なのかを理解すること。
……知らない間にか、こんなところにいる。
あの時、神社にいたメンバー内には紫は居なかった。
もしかすると助けてくれるかも。却下。自分でなんとかしよう。
なら、あの後はどうなった?
疑問が浮かぶ。
ルーミアは?
そもそも、なんでレミリアはあんな霧を?
雪は何?誰が?赤の魔法を消すために。

いや、
いや、

『赤の魔法に何か害なんてあった?』

ただ、遠くの景色がぼんやりと赤みを帯びただけだった。
強いて言えば、夕陽の色が濃く、それを見た子供が発狂したと聞く。
ほぼ、被害は無い。

……なら雪を降らせる必要なんて、皆無。

なら、誰が、何のために?……不明。

思考が止まる。

「情報、少なすぎね」
指先でこめかみを叩き、アリスは訝しげに眉をひそめる。
雪の山から、何か生えているからだ。
人形の手だ。これだけ精巧で綺麗な手は珍しい。

手を掴み、引っ張り出すなんて愚行をアリスはしない。

人形を作るものとして、蒐集家として、当然の常識をもって雪山を掻き避けていく。
半分以上を掘り進むと、ソレの一部が顔を出し、結果ソレは人形ではなかった。
そもそも、人形と勘違いしたのは生気を感じない手のひらだったから。
思えば、当然。
ここはとっくに”死者の世界”なのだ。
掘り出した少女に生気を感じないのも自然なこと。
だから、より一層悔しいと思う。


「なんで、貴女がここに居るのよ?」


アリスは呆然と呟いた。

―――咲夜、と。







文は彼女の後ろを付いていく。
通路は狭い。
しかも時折、天井からぽちゃり。と、水滴が首筋に垂れた日には気分が悪くなる。
さらに加えると、

「~♪」

終始、笑みを浮かべる西行寺 幽々子。
しかし、今日その声を聞いた回数は意外と少ない。
二人に分かれてからも、言葉をかけられた覚えは文には少なくとも無い。
だから、時折。

くふ、あはは。

薄く開いた口から漏れる笑い声が恐ろしい。

―――く、食われる!?

冗談では内心、そう言える。
文は、あえて気付かないことにしていた。

幽々子の機嫌が異様に良すぎることに―――。

核心に触れて、逆鱗でした。じゃあ、困るのだ。
ここは慎重に聞いていきましょう。
新聞記者として。


「…あの、幽々子さん。ちょっと質問を幾つか宜しいですか?」

彼女は振り返らぬままに、「良いわよ」との了承の声を返してくれる。

「では。……貴女は最初から、あのメイドが死んだことを知っていたのですか?」

十六夜 咲夜の死。
それを知ってるか、知らないかで今回の行動は大きく変わる。
例えば、霧雨 魔理沙。
彼女も知っていれば、あんな集合をかけなかったはず。
むしろ、最初から紅魔館の方へ味方していたかもしれない。

「ええ。知っていたわ。それがどうかしたの?私のすることは三つだけよ」

内心を見透かせられているような含みを持った言葉。
妖怪としてじゃなく、何か生き物としての存在が違う気がした。
……普通に考えて、彼女は死者ですけども。

「三つですか?良ければ教えてください」

「んー、一つ目はお腹一杯にたべることよ!二つ目は新しいベッドが欲しいわ。ちょうど、洋風のね」

なんだいつもと変わらないじゃないですか。
そう、文が思った時


「三つ目がなんなのか、私にも聞かせてください。ほら、もし勘違いで無関係な人を倒しちゃったらレミリア様も困っちゃいますから」


幽々子が、ほぉと感心したように声を伸ばす。
文もまた、声の主がそんなことを言うのが意外だった。

薄暗い通路の先、奥に開いた扉の前で彼女は立っていた。
紅の名前を持つ、華人門番  紅 美鈴。
後ろの部屋から漏れた光を背に、美鈴は両腕を組んで立っていた。

美鈴は、はっきり言って弱いと思う。
弱いくせに、今の言葉は誇り高い鴉天狗に対しての言葉じゃない。
簡単に言うと、『なめている』だ。
しかも、
あくまで西行寺 幽々子に対して。

文は、視野に入っていない。
まるで敵じゃないと、美鈴の態度は言外に告げていた。


幽々子がふわり、と綿のように軽やかに飛んで音もなく着地する。

「ええ、そうね。じゃあ、聞いてもらおうかしら?私の目的はね」

幽々子は右手を伸ばす。開いた手のひらを見せ付けて。
正確にいうと、その手のひらに付随して浮いている紫色の霊魂を。
ぼぼぼ、と風前の灯の蝋燭みたいな音で激しく揺れている。



「―――レミリア・スカーレットを殺すことよ」


ころす?
文は予想外だ。まさか、こんなにも明確に目的、殺意を持っているなんて。
だって、と思う。
何故なら、ことの始まりは魔理沙の手紙から。集まり、宴会をしていて皆が丁度酔った所に。
アリスが来て、話しが始まる。
そこでルーミアの暴走。
その後は、なし崩し的に紅魔館まで来た。
いつのまに、どうして、その目的に達したのか、文には全然理解が出来ない。


「……そうですか。いつもの冗談じゃあないみたいですね」

文と反して、美鈴は平然と殺害予告を了承する台詞を吐いた。

「わかりました。なら私たちがお相手させてもらいます」

深く頭を下げながら美鈴はそう言って、奥の部屋に戻っていった。
幽々子は右手を下げる。
いつのまにか霊魂は無くなっていた。
ゆっくりと、彼女は歩を進める。
文もまた、幽々子の後を真似するようにゆっくりと。

余程、今までの通路が暗かったのか。
部屋から漏れる光は思ったより、少ない。
薄暗いじゃなく、仄暗い光が満ちていそうだ。


「――部屋に入ったらすぐに左へ飛びなさい」

幽々子から、初めて文への言葉。
その意図を問いただすより早く、部屋に足を踏み入れた。

瞬間
            

「きゃは♪ようこそぉ!私の地下室へ、そして、ばいばい」


裂けたような笑み、金髪の悪魔が剣とも呼べない大雑把な”赤”を振り下ろした。

文は、「そういうことですかっ」と、言われた通りに逃げる。
ふと、振り返り、自分の目を疑った。
避けろと言った張本人は避けてはいなかった。

部屋の全体に比べて、まるで小さな入り口を赤の大剣が破壊した。

真正面から落ちる赤に対し、幽々子は穏やかに微笑んでいたのが眼球にこびり付いている。

ただ土煙が上がる中、けらけらけら、と楽しそうな悪魔の笑い声が反響していた。














「なんで」


広いダンスホール。
豪勢な絨毯が引かれており、幾つものテーブルに料理を並べたら豪勢な立食パーティになりえるだろう。
しかし、何もない。
唯一あるのは、霊夢達と対面し、本を捲る魔女と。

「なんであんたがここにいるのよ?」

霊夢は声を張らせて尋ねる。
その疑問は、無論。不敵に笑う魔法使い 霧雨 魔理沙に対してだ。

「なんで?って聞かれてもなぁ」

魔理沙は横を向き、指先で頬を掻く。
彼女の表情はなんともいえない、微妙な感情を覗かせている。
言わなくて悪かった、なんで来てしまったのか、と。
言いづらそうに、だけどはっきりと魔理沙は真実を告げる。

「いやぁ、最初から私はレミリア側だぜ?」

その言葉、霊夢は信じられないと一つの疑問をぶつける。

「だって、魔理沙はルーミアに……」

語尾が途絶える。
言葉にして気付いたのだ。
あれは演技?
そして、
何故、魔理沙が敵なのか?

「最初から、咲夜が死んだの……知ってたの?」

霊夢はさらに尋ねる。
腹の底からふつふつと、ある感情の熱があがっていく。
例えば、子供の時、遊びに混ぜてもらえず一人、遠巻きから見ていることしかできないような居心地の悪さ。
別に魔理沙が悪いとは言わない。
ただ、何か理不尽で、明確な理由がない不明瞭な苛立ち。
そんな煙のような気持ち悪さがつま先から頭の天辺まで満ちていく。


「あー、まぁな。レミリアの奴が夜遅く来てな、協力してくれっていうからさ」


平然と魔理沙は言う。
そもそも、霊夢は一番最初にこう聞いたのだ。
『なんでこんな時にしかも私ん家で宴会なんてするのよ?』、と。
その時、魔理沙は適当にはぐらかしただけだ。「こんな時だからこそ、だぜ?」と。

「そうそう。宴会はな、敵を少なくするためだよ。その為のルーミアだ」

悪戯が成功したような笑みを浮かべ、魔理沙は言う。

「……代償として、ルーミアは消えてしまったけれども」

パチュリーが補足を付け加える。
口調が単調な為か、まるで手に持った本を音読してるみたいで、真実味が感じられない。

「私はあの場から抜けて、ここに居るわ。ルーミアには感謝してる。だから、本気の魔法……見せるわ」

……パチュリーの、本気?

「つーわけだ。死んだ咲夜の為に、この私も一肌脱いでやるぜ!パチュリー」

咲夜が死んで、ルーミアも消えた?
まるで、おかしい。この場の雰囲気が異常過ぎて、霊夢の視界が歪む。
誰かが死ぬ。
それだけで、皆が嬉々として殺気だっている。
なんでこうなってしまっているのだろうか?
なんでこんなことをしてしまうのか?
なんで二人は死んだのだろうか?

そんな疑問はどうでも良かった。
ただ、一つだけ。



なんで死人を言い訳に戦うのだろうか?



『ぎしぃりぃ』

扉が軋んだような異音がフロアに響く。


脳内に響くような不快な音は、魔理沙が見てはいけないものを見せ付けられたように呻き、パチュリーの驚愕で丸くなった眼
の見つめる先、霊夢、の歯軋りだった。


―――――ふざけるな、この大馬鹿魔女共は。


霊夢はさらに顎に力を加える。奥歯が歯茎に沈み、代わりに血があふれる。
口の中は、血の味だ。

それがどうした?

血が口の端からこぼれても知るもんか。
嫌なら啜ればいい。
―――っは、まるで吸血鬼になったみたい。

「はっ、あはははははは」

天蓋を仰いで笑い始める霊夢。
一瞬、ざわっと皆が引いた。
まるで異常だと、魔理沙がパチュリーが妹紅が眼を剥いて驚き、絶句している。

「ど、どうかしたのか?霊夢」

魔理沙が、「おいおい」と数歩だけ近寄ってきた。
ほんとうにコイツはおかしなことを聞く。
どうかしたのか?
そんなものは、

右足を一歩、大きく踏み出して、床を潰すように踏みつける。
響くは落雷の如く、威圧感のある轟音。


「どうかしてるのは、あんた達だろうが!この馬鹿魔理沙!!はっ?ふざけないで。レミリアが何しようと知らないけれど、私には関係ない!」


言葉が何度も伽藍洞なフロアに反響する。
反論は聞こえない。そもそも、異論も無いのだろう。
これは完璧なぐらい霊夢の我が侭で、だけど全員が勝手な都合で動いてるのだから、文句は言わせない。
文句がある奴は一瞬でぶっ飛ばす。

「―――だから、止める。あんた達、覚悟しなさい」


手伝いましょうか?と、背後から幽香は告げる。
いいえ、手をださないで。と、霊夢は憤りを隠さない。

ゆっくりと。
霊夢はいつも真っ直ぐ歩く。
誰が見ても、違うと言うが自分にとってソレはなによりも真っ直ぐで最短ルートだ。
右足を踏み出し、足に力を込める。ぐにゃりと、それは床の固い感触とは異なった。
言うならば、沼。そして先にあるのは時空の崖。落ちないように飛び越える。

すると、景色が変わる。


「っ時空移動か!?」


眼前には慌てふためく魔理沙の表情。
唇と唇が重なるぐらいの距離で、霊夢は背をむけるように回る。


「”霊符”夢想妙珠」


一、二、三、四、五、六、七。
赤、黄色、緑など、各色バラバラの球が魔理沙目掛けて、駆ける。

素早くまるで猫みたいに魔理沙も後退し、逃げるが、それでも避け切れない。
あと少しでその黒衣に衝突する―――。
肉薄した弾幕に、魔理沙は険しい表情で口を開いた。

「”彗星”ブレイジングスターっ!」
刹那の差で箒に跨り、八卦炉をブースター代わりに爆速で逃げる。
なぜか背後のパチュリー目掛けて飛んでいく。
ホーミング球だから、逃げ切れない必中のスペル。
後を追うように、七色の球も滑空する。
魔理沙が過ぎ去り、弾幕の直線上にパチュリーが立ちはだかった。

                             
「これは、とっておきよ―――日火日符「賢者の石<破片>」


七色の球が迫り、パチュリーにぶつかる瞬間、眩い閃光が走る。

「魔理沙、準備を」

光の中、パチュリーが何かの用意を促している。
鋭い光が消える。そこには七つの弾幕も消えていた。
パチュリーの持つ本が光った。

「”月符”サイレントセレナ」

月の光が何千ともいえる細長い槍になって襲い掛るスペルだ。
霊夢は小刻みに一本一本丁寧に避ける。
そうなれば、嵐中に居るようなもの。辺りを槍が針山にする中、着実に霊夢は避け続ける。
つまり、霊夢は今、大きく身動きが出来ない。

パチュリーの上空に、魔理沙が箒で飛び上がり、
霊夢へ箒の先端を向け、空中停止。

「”魔砲”ファイナルスパークーーーっ!」

巨大な光柱が落ちてくる。
これは避けないと不味い、だけど――。
一瞬でも気を抜くと、全身穴だらけになる。
閃く思考、霊夢は地面に一枚の符を押し付ける。


「魔浄閃結」

光の壁が左右に移動して、パチュリーのサイレントセレナを駆逐していく。

眼前に魔砲が落ちてくる直前、霊夢は大きく右に飛び、空間を移動する。

ふと、パチュリーの頭上に三種類の石が浮かんでいるのがみえる。
賢者の石というスペル。アレはたしか、五種類なかったっけ?

大きく右方の方角へ時空を跳ねる。

ビリビリと耳の奥を震わす爆発音


さっきまで霊夢が居た場所に巨大な柱みたいな物が突き刺さっていた。
それは未だに放出中ということを意味し、まともに喰らったらそれこそ消滅ものだ。

「そう来ると思ったわ」

パチュリーが一言、何か囁き、両手を挙げる。
その間には西瓜より少し大きな、オレンジの球体が――――。

「”日符”ロイヤルフレア!」

一気に視界を焼き枯らす。
光が辺りを包み、熱が乗る直前、

霊夢が―――。

全てを焼き尽くす極度の太陽。
その圧倒的な威力。

熱量を打つ尽くすまで、パチュリーは両手を挙げたままだ。

ごぉっ、と谷と谷の合間に吹く風の音。

溶かすではなく、ジュっと気化させる程の熱量。

それもやがて鳴き止み、パチュリーが両手を下ろす。

「…はぁ、…っ」

前に膝を倒し、地面に手を突く。
パチュリーの顔色は処女雪のように真っ白で、呼吸も荒い。
二度ほど、咳をしてとっさに口を押さえた。
咳が収まったらしく、口元に当てた掌を広げると、僅かばかりの血が付いていた。
霊夢と戦う前から、どこか負傷している様子だ。
余力どころか、すぐに死にそうなパチュリーの攻撃。
それは今の攻撃で倒せなければ、勝つのは難しいということ。


「さすがにこれで倒せないなんて、無いわ」


パチュリーの呟き。まるで小鳥の囀りのように小さく、本人にしか分からないほどだ。
だけど、パチュリーの背後に潜む霊夢には聞こえた。
パチュリーは霊夢の存在に気付いていない。
霊夢は空間を移動する。
だから、空間を移動し、再び現れた瞬間にスペルを放ったのだろう。
それでも捕らえられなければ意味が無い。


「何が無いのかしら?」

地面に手を突いているパチュリーの全身が挙動する。

「……ふ、ふふ。今ので倒せないなんてね―――じゃあ、分かった。仕方ないわね」

見下ろす背中に霊夢は語りかける。

「なに言ってるのよ。ここまで暴れて今更負けを認めても遅いわ、パチュリー。……覚悟は良い?」

「……」

答えは、ない。
パチュリーが負けを認めても許さないけど、逆に無言で迎えられると少し困る。
さて、どうしようか?
と、考えた直後。
唐突にくぐもった笑い声が聞こえた。
見下ろす視線を冷めたものに変えて、霊夢は笑い出したパチュリーの言葉をしばし待つ。


「っふふ、あはは。何を勘違いしてるの霊夢?私は別に、負けたわけじゃないの」


床に腰をのっそりと下ろし、パチュリーは自分の真上を指差した。
しかし、霊夢は素直には顔を向けない。
上を見て、パチュリーが何かするのか?否、そんな余力はない。
もしかしたら、魔理沙が仕掛けてくるのだろうか?だとした、迎撃。
瞬時に、示された通りへ視界を移すことの安全を確信して、上を見上げる。

そこに魔理沙は居ない。
代わりに、三つの赤ワイン色の透き通ったクリスタルが浮かんでいた。

「でも、勝ったわけでもないけれど。……ああ、楽しかったわ、レミィ」

三つある内の一つにヒビが入る。
その隙間から、見たことのあるオレンジの光が漏れた。

「ルーミアに会えたら、言わないと――。ごめんなさいって」


パチュリーがボケたわけじゃないのにまるで、死ぬのが前提みたいなセリフをつらつらと吐いている。
嫌な汗が、吐き気がするような未来を肌に感じる。
霊夢は自分の予想が必中だと確信するが、できれば外れてほしいと願う。


だってアレは、さっきの繰り返しだ。陽の魔力。
しかもソレの三倍。

単純にロイヤルフレア三発分である。その事実に霊夢の心臓が早鐘を打つ。
防げるのだろうか?
そこに逃げるという選択肢は無い。
空間移動なら容易く、生き残れる。普通ならそうするべきだ。
本当なら霊夢は逃げたい、いやもう逃げているハズだった。

―――パチュリーさえ、居なければ。

「……霊夢、逃げないの?」


馬鹿げた質問の所為で、頭に血が昇る。


「ああ、寝言は永眠してからにして。どうせ死ぬつもりなら黙ってて」


だから、顔を背け、背中を見せ付けてやる。
死にたいなら、勝手に死ねば良い。
でも、こんなところで死なせてやらない。
死ぬ前に絶対、この馬鹿を一発ぶん殴ってやる。そのために霊夢は、目前の脅威に立ち向かう。


見据える先、クリスタルのヒビが大きくなっていく。
次第に崩壊が進み、そして、破裂する――――――。

霊夢は叫んだ。

「”夢符”二重結界!」


眼が潰れてしまうような光が生まれる。
額の髪を掻き揚げる熱風が駆けた。
完全な光の世界で全ては消滅していく。

圧倒的なエネルギー。
万物を燃やし滅ぼす太陽の暴食の前に霊夢は歯を噛み締めた。

熱量とはいえ、それは単純な物理的な重さとして二重結界を押し潰そうとしている。
伸ばした両手の先に展開される薄い青光の壁が、まるで大岩だ。
こんなもの、人間の私じゃなく萃香が受ければ丁度良いに違いない。
腕にぴしり、と嫌な音が走る。
骨じゃないことを願いたい。血管が切れた音かもしれない。どちらにせよ、引きつったような痛みが蝕む。
潰れそうなぐらいに重いし、それに暑い。かくっ、と右膝が負けそうになる。
いつまでこのスペルは続くの?
汗が頬を伝う。それは暑さによるものではない。
最悪な未来に対する嫌悪の冷や汗だ。

間隔無く、連続でロイヤルフレアが来たら。
それ以上に、二つ三つと一緒に破裂した威力は計り知れない、想像もしたくない。

「―――?」

唐突に、予想に反して光はあっさり途絶えた。

最悪な現実として。

眼がおかしくなった?と、自分の目を疑った。
クリスタル二つに、キレイな模様みたく、はっきりくっきり見事な一本の線が走っていた。
それは次の脅威が二倍になったことを示す。


しかし、そんなことは些細なことだった。


「……あれって、パチュリー?もしかして、…」

嗚呼、ヤバイヤバイやばい。
警鐘代わりの心臓の鼓動がもっともっと高まっていく。

霊夢は、音にならない声で尋ねる。

「なんか、大きくなってない?あの石」

いつものぼそぼそとした声ではなく、パチュリーと会って初めて、彼女のはきはきとした言葉を聞く。
しかも、嬉しそうに。親に褒められた子供みたく。
素直に喜べない捻くれた子供のように、彼女は無感情を装って話し出した。

「ええ、賢者の石。本来は五種類の石が浮かぶ魔法だけど、これは違うわ。火と日を併せた石を三つ、浮かべることによって”火”と”光”のエネルギーを吸収し、解き放つ魔法なの。貴女の攻撃で、この魔法を発動して、私のロイヤルフレアでエネルギーを溜めて」

……なんかパチュリー。眼が生き生きと輝いてるよ。
輝かしい眼の魔女は一端、言葉を区切ってスー、ハー、スーと深呼吸を始める。
そして、「っ」と呼吸を止め、再び口を開く。

「しかも、石が放つ魔法もロイヤルフレアで、その石が放った魔法も別の石が吸収して威力を倍増していくの。これはとってお、っごほっごほっゴホ、ぶばはっ!」

パチュリーの口から血がびっしゃー、って地面に吐き飛んだ。
興奮してるのか、喘息持ちの癖に血を吐きながらの饒舌な解説ありがとう。


「はいはい、あー、わかったわかったから。もう良いわよ、喋らないで」


と、言ったそばから

「とっでおぎで、自分なりっぃ、っほごぽっ。……ぅー、すー、はー。に、改良ぢてびたの」


言葉の途中で咳を吐き出す。
血をダラダラ溢しながらも、喋りたいのだろう。ある意味、病気だった。
病気ついでに、さっきからえらく元気な(だけど、吐血)パチュリーに疑問を感じ、尋ねる。


「ってか、なに?さっきまで死にマス私。みたいなこと言ってたのにえらく楽しそうねこの野郎」


あー、とパチュリーが咽喉を慣らす。
呆然としたような表情だが、眼が左右に泳いでる。
明らかに挙動不審だった。
霊夢は嫌な予感がした。というか、さっきから”嫌な予感”しかしていない気がした。


「だって、そう言えば霊夢が逃げないかもしれない」

……確かに。
あのまま、敵だったなら見捨ててた。
だけど、敵以前にパチュリーは知り合いだから戦意を失ったのなら、そんなことはしたくない気持ちも半分は生まれる。
そんな霊夢の気持ちを知ってか、パチュリーは自分ではどうにも出来ないような状況を作り、霊夢にとって敵から、無力な存在に変えた。
すると、否応無しに助けないといけない義務のような意識が働く。
自然、ロイヤルフレアへ真正面から向かわないといけなくなる。


「つまり、パチュリーの作戦勝ちってことね」

ふん、と鼻を鳴らしパチュリーは告げる。

「そもそも戦うってのは攻撃が成立しないと戦いじゃないの。攻撃が絶対に当たらないなんて無敵以外になんて言えばいいの?そんなものと戦おうとした私の気持ちも考えてほしいわ」

若干速めの口調で、しかも長々しい言葉をゆっくりと霊夢は吟味する。
冷静に考えてみると、ただの逆ギレだった。

「……」

無言でパチュリーを見つめる。

「嗚呼、そんな『やっぱこんな奴、見殺しにすれば良かった。というか、今からでも遅くねぇ、さっさと喘息で死にやがれ、この○○女』……って顔しないで、怖いから」

と、”嬉しそう”にパチュリーは告げた。
……はい、そこ。腰をしならせるな。
その艶色な背中を蹴飛ばしたい衝動に駆られるが、なんか触るのさえ嫌だったから蹴るのは止める。

「……はぁ、あんたのせいでなんだかどうでもよくなったわ」

「まったくだわ。なんでこんなことになってしまったのかしら?」

お前が言うな、と霊夢はつっこみを入れる。蹴りで。
脳天に踵落としを喰らったパチュリーが地面に倒れた。
体を横たわらせたまま、パチュリーが唐突に弱弱しい叫び声を上げる。

「あーっ。……ねぇ霊夢」

「何よ?」

「いえ、やっぱりなんでもないわ。……―――っ。言うっ、言うからほっぺた伸ばさないで」

つい、反射的に抓んでしまった柔らか肉を思いっきり引っ張って離す。
まるでゴムみたく、パチュリーのほっぺは勢いよく元に戻った。林檎のように真っ赤になって。

「ぅー。鬼、悪魔、巫女の三拍子は極悪ね。もし、良ければ……美鈴を助けてあげて」


突然、話が飛躍したせいもあるが、意味が解らない。
霊夢は首を傾げる。
美鈴?あの門番を何故?
どんな状況かも知らないのに、助けてあげてと言われ素直に首を頷かせられない。
むしろ、私が助けて欲しいと思った。


さっきから破裂しそうでしない赤いクリスタルに対し、握る右手には幾枚もの結界符が束ねられている。


「……今の、は忘れて。そろそろ、来るわ。用意は出来て?霊夢」

自分のスペルなだけあって、アレが炸裂するタイミングが分かるのだろう。
それならば、あのスペルを止めることは出来るのでは?

「あれって、あんたのスペルでしょ?解除とか分散出来ないの?」

「無理よ。完全に自律してるもの、あの石単体を落とすだけで千の人間を滅ぼせるわ」

「そんな補足は要らない蛇足なのよ」

「ぐっ」パチュリーは小さな呻きを洩らさないよう、口を押さえる。
微かに苦しげな声が霊夢には聞こえた。
喘息のくせに、無理をするからだ。彼女の背中は僅かばかり震えている。

「……くっ、は。…霊夢。補足の蛇足って面白くないわ全然」

ぷぷっ、と押さえた手の指と指の間から笑い声みたいな音が。
ぷるぷる震える背中はまるで笑いたい衝動を無理に抑えてるように思える。

「黙れバカ魔女」


ぴしり。
硬質なガラスとガラスの押し合う音が響く。
クリスタルからドロリとした赤が垂れた。
それは、現在が最期の時となるか、振り返り過去の光景として懐かしみを覚えるのかが決まる合図。


「”夢符”多重結界」

破裂する前に、あらかじめ結界を張る。
二重に四重を足した結界。
これで駄目なら、博麗結界を使うしかない。
しかし、再び結界を張る時間さえ無ければ死への可能性が一気に高まるのだ。
火の魔法、ロイヤルフレアを飲み込んだクリスタルの中は、溶岩のように赤と黒マーブル色が練り混ざっていた。
それは丁度、霊夢の胸中を映し出しているようだった。
燃え死ぬことへの”不安”と消え逝くことへの”恐怖”。
渦巻く感情に呼応する心臓は悶えてる。
頬を汗が伝い、

床に落ちていく。

透明な水滴が、音を発する。

焼け石に水の如く、蒸発した。

っ、?

光じゃない。白だった。
気付けばいつのまにか、全てを塗り替えた白だけの世界で霊夢とパチュリーは居た。

「まさか、これほどなんて」

白は全て、熱と光だけでしか出来ていない。

背後でパチュリーが絶句していた。
自分が愚かだと、貧困な予想を信じた自分への戒めのように。

「……」

言葉が出ないのはパチュリーだけではない。
霊夢もだ。
体が軋んでいる。
心臓が痛いのだ。動きすぎとかじゃない、びりびりと直接心臓が揺らされている。
多重結界が幾重にも残像を残すほどに動かされていた。
支える腕から力が抜けていく。
このままだと、確実に私たちは―――。

爪の付け根から血が漏れ出した。
左腕は手の甲から、肘まで。青い筋が浮かんでいる。
負荷をかけ過ぎた腕がぼきり、と折れるのが眼に浮かぶ。
なら、どうする?
足でも頭でも結界を支える。それが霊夢の答え。
死んだら諦める。
しかし、逆もまた然り。

決死の覚悟は、だけど負けそうで。

左腕が何か圧迫される。

だから、純粋にソレが嬉しかった。

「…しっかり踏ん張りなさい」

口から血を滴らせるパチュリーが霊夢の腕を支えている。

……。
なんだか自然と霊夢は頬が緩むのが分かった。
決して紫なんかには見せれない。

ぎしり。
結界がより強固なものとなって、白の光を真正面から堂々と遮る。

このままならいける。
防ぎきれると霊夢は確信し、ガラスが割れたような甲高い音で盲点に気付かされる。

白に白を乗倍。

一気に結界の端がボロボロと崩れていく。

さっきまでのは、クリスタル一個分だったのだ。

「……パチュリー。あとでさ、一発殴らせなさい」

「生き残れたら良いわよ」

命を捨てるのは馬鹿だけだ。
霊夢は知っている。
パチュリーが馬鹿なことを考え、今に至り、この先に何を仕出かすのか。
パチュリーは馬鹿だから、忘れてるのだ。
アイツがどんな奴なのか。

霊夢は叫ぶ。

「この結界が解けるまで、十秒!」

水をかけられたように体を恐縮して、パチュリーは霊夢に尋ねる。

「…何を、何言ってるのよ?」

「八!」

「霊夢止めて、意味無いわ」

パチュリーの無表情が、弱弱しいものに変わっていく。

「六!」

「止めて」

「四!」

「来ないで、」

「二!」

パチュリーが虚空に叫ぶ。
霊夢は二の次、一とは別の言葉を叫んだ。


魔理沙、と。

多重結界が崩壊する。

白が霊夢を燃やし潰そうと包み込む一瞬よりも短い時

黄色の光が割り込むように白を押し返す。

「霊夢、今だ!」

聞きなれた声が告げる。

「言われなくても、――博麗大結界」


……。


………。


…………。


「何よ、あの二人先行っちゃったの?」


部屋の床の中心は大きく抉られている。
まるで満月が着地したような、大きな跡だが、その表面は氷のように滑らかだ。
元の部屋とは全然違う、円形に広がった壁や天井を眺めながら霊夢は幽香と妹紅の姿を探す。

「ああ、アイツらなら先に行ったぞ」

端が焼け焦げた帽子をクルクルと指先で回しながら魔理沙は言う。
彼女の姿は酷い。
服の所々に穴が空いている。
恐らく、黒い服だから余計に光の熱を集めたのだろう。
反して霊夢の巫女装束は汚れ一つもない。
そのまま、見た目どおりに勝敗は決していた。

「……」

冷たい眼光。
珍しく、パチュリーが怒りを露にしていた。霊夢はその理由に心当たりがある。
視線の先、魔理沙はそっぽを向いて口笛を吹き始めた。

「魔理沙。私の眼を見なさい」

魔女の命令に、魔法使いは「嫌だぜ」と拒絶。
ここまで来て、霊夢は改めてパチュリーの本気を感じていた。


―――つまりは、あのロイヤルフレアもパチュリーとのやり取りも全て、囮だったのだ。


霊夢がパチュリーの魔法を防ぎきれば、疲弊したところを姿を隠していた魔理沙が追撃。
防ぎきれなければ、パチュリーはおそらく霊夢と共に死ぬつもりだったのだろう。

ただ予想外だったのは、パチュリーの魔法が異常だったこと。
だから、魔理沙は助けてくれたのだ。

原因としては、パチュリーの魔法と二人の見解だった。

魔法が強すぎた。
だけど、パチュリーはその威力を理解し直した上で、霊夢を倒そうとした。
だから、魔理沙にはまだ隠れていて欲しかったのだろう。
もしくは、魔理沙を死なせないように配慮した結果かもしれない。

魔理沙は、違った。
あの魔法を前にして。
死を覚悟してまで倒そうとしたわけではない。



死を覚悟して、二人を助けようと思っただけだ。




「……もう、いい。私たちは負けたわ」


魔理沙から視線を外し、いつも通りの平坦な視線が霊夢を見つめる。
パチュリーは霊夢の言葉を待っている。
敗者だからと、今なら何を言っても私は受け入れる。そういう眼をしていた。

霊夢は三枚の符を取り出し、告げる。

「眼を瞑りなさい」

言われた通り、パチュリーは眼を瞑る。
その様子を魔理沙はニヤニヤと見つめて、霊夢は「とおっ」と、魔理沙の腹部に蹴りをいれる。

「あんたもよ」

腹部を抱え地面に倒れこみ、声にならない声で呻く魔理沙。

「…っ、な、なんで、私もな、んだ」

ぶっちゃけ、……なんとなく。
そんな気まぐれで蹴飛ばしたなんてことは口が裂けても言えず。
霊夢はそんな魔理沙を無視して、パチュリーに向かう。

そして、胸部の少し下の真ん中、丁度鳩尾に手のひらを当てる。

「……なんで?」

眼を閉ざしたままで、パチュリーは戸惑いを口にした。
それも当然。
霊夢は、パチュリーの怪我治しているのだ。

思えば、パチュリーは短期決戦を仕掛けてきた。
余力が無い、最初から怪我をしていたからだ。

そして、霊夢は。

鈍い、鐘の音が響く。


「ぁ……っ、」

頭部を抱え、パチュリーが地面に額を当てる。


しゅうー、と霊夢の拳から白い煙が上がっていた。ついでに少し、焦げ臭い。
髪が焦げたのだろう。霊夢の殴り方は勢いよく当ててから方向を変え、擦る。
これは痛い。
悶絶し、蹲るパチュリーの気持ちが霊夢には分かる。
昔は霊夢もよく喰らったのだ。
博麗家に代々?伝わる口伝(体伝かもしれない)拳骨の使い方である。


「さて、と。じゃあね、私は疲れたから帰るわ」

霊夢は颯爽と来た道へ足を向ける。

「…先に行かないの?」

パチュリーが尋ねてきた。
魔理沙はまだ苦しみ悶え中。

「ええ、妹紅はともかく、あのもう一人いたでしょ?幽香ってやつなんだけど、ソイツが行ったからもう良いわ」

「……霊夢が他人をアテにするなんて。…どんな妖怪?」

どんな妖怪?
その質問にはなんとも答えづらい。
幽香は気まぐれで加虐的で、しかも強い。
ただ。彼女は綺麗や強いものを好む。
そして、今のレミリアに対して、どんな行動を取るのか。
まるで予想が出来ない。

「さぁね。でも、まぁ悪いようにはならないんじゃない?それに私も戻ってやることあるから」

「え?」

「神社には萃香と永琳が居るからね。さっさと昼のうちにルーミアを蘇らせないと大変だわ」

あー、忙しい。
そういえば帰っても、宴会の片付けがあるのだ。
……仕方ない。
多忙な一日に、霊夢は後ろを振り返る暇も無い。

だから、後ろから聞こえる泣き声を確認出来ない。

「……、ありがとう霊夢。―――ごめんなさい、ルーミア」


聞こえないフリして、出口を過ぎる。
ついでに、もうひとつ聞こえたが霊夢には関係が無い。

後の事は全部、幽香と、さっきから覗いていた紫に任せる。

最後に一言。
霊夢はこの館の何処かで頑張る誰かに呟く。

「あんたなら勝てる」

応えるように獣のような叫び声が館内を反響した。
その声に、霊夢は微笑み、紅魔館を後にした。












闇が消える。
ルーミア亡き、今。黒い渦に飲まれた者達は無傷で勝手に這い出てきた。
各自が適当に騒ぐ中、妖夢は仕えるべき主人が居ないことに気付く。
辺りを見回してもやはり見つからない。
酷く気持ち悪い。
あの幽々子様が私を置いて何処かに行く。
つまり、魂魄 妖夢は―――不要ということ。

「そんなこと、あるわけないのに」

頭を強く振り払う。
まったく修行が足りてない。こんな愚想に駆られるなんて。

「まったくよ。だから、貴女はいつまでも半人前なのよ」

空を見上げる。
幽々子様のセリフを真似た八雲 紫だった。
からかわれたと怒りを感じるよりも、この人なら知っている。その期待感に口を開いて尋ねる。

「幽々子様が今、どこに居るか知ってたら教えてください」

「……。残念だけど、悠長に教えれるほど時間無いの」

言葉とは裏腹に随分と余裕そうな笑みを浮かべている。
さりげに足を組みなおしているところから、退屈ねと主張。ほんっとうに性格が悪い。

「そんな言葉信じません」

妖夢はいつもの冗談だと思った。
だから、刀を抜こうと柄を握る。”本当”が知りたいのだ。



「――――――だから妖夢、一緒に来なさい」


「…みょん?」

眼が点。
あの紫が誰かと一緒に行動する?
ありえない。幽々子様が夕飯を要らないって言うぐらいにありえない。

「さぁ、行くわよ。今回の敵は大物よ」

うふふ、と笑う頬は心なしか紅潮しているように見えた。

「大物って、何ですか?」

紫が手を伸ばす。妖夢は伸ばされた手を取るために飛ぶ。
ガラス物を扱うように柔らかく握ると、ぎゅっと強く握り返される。

「うふふ、遠慮なんていらないわ。だって、相手は閻魔さま。さぁ、逝きましょう」

「え、逝くって…、そんな閻魔様に、――良いんですか?」

紫の背後から黒い闇が広がっていく。
それはクルンと津波のように丸まり、私達を飲み込んだ。

「駄目よ。でも、誰かが止めないと、誰も彼もが裁かれてしまう。本来ならありえないのよ。出張裁判なんて」

ありえない?出張裁判?
妖夢はしばらく考え、あたりまえのことに気付き、紫の言葉に合点がいく。
ああ、そうか。死んだものを裁くのが閻魔。
なのに霊夢や吸血鬼、……生者を裁く?
――――西行寺 幽々子。
自分の仕える主人は、亡霊だ。既に死んでいて、それはつまり。

隙間の中、妖夢の声が響く。

「幽々子さまが危ない!?」
相変わらず文章はアレですが。
自分で読み返すと、迫力ある文作るため勢いで誤魔化し誤魔化し……。そんな感じで。
それでも、なんとか一段落したので、投稿します。
しかも続きます。
周期的には月刊みたいな感じで。微妙。
まぁ、楽しんでもらえれば幸い。
お目汚しとなれば、精進するようにしたいです。
それだけです。
設楽秋
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コメント



0.490簡易評価
4.60名前が無い程度の能力削除
うーんやっぱりかなり分かりづらいと言いますか…。
しかしながら話としての続きには期待しています。
10.100名前が無い程度の能力削除
なんか皆かっこいいなあ
面白くて続きが気になりますねえ
頑張ってくださいー