Coolier - 新生・東方創想話

夜空に叢雲が

2007/09/07 06:02:30
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1.雨が降る

すすり泣くような、しっとりとした雨が降る。起き抜けの私は図書館のテラスからぼんやりとそれを見やる。
本が湿気てしまう・・・とも思うがそもこの図書館の防湿対策はばっちりで湿気るわけがない。でも、湿気た本のにおいもあれはあれでいいのよね。黴臭いような、古臭いようなそんなにおいに心が落ち着き、だが新しい本のあのすっきりとした独特のにおいもまたいい。いやいや、だが手書きの本のあの紙とインクの・・・と考えていたところで下から地響きが響き、図書館が、いや、館全体が身震いした。
どこかの本がばさばさと崩れ落ちる音がする。
未整理棚の本かしら、と思考を巡らせる。本が傷つくことと、小悪魔の怠慢と妹様に内心忸怩たる思いだ。本ありきの己、故に本が傷めば悲しいし非常に悔しいのだ。それの責任が自身ではなく他人であれば尚更に。
今度、自動整理の魔法を作ろうかと真剣に思う。図書館自体を術式にすれば十分可能なはずだ。そうすれば小悪魔たちももう少しあのモノクロに対応しやすくなるはずだ。紅白のいうところによるとあれの家は片付いていない、散らかり放題のようだ。
いつも、それに想いを巡らせるといらいらする。あれの持ち帰った本のことをついつい心配してしまうのだ。だが、どうにも本人を前にすると―――

そこまで考えたところで、自慢の蔵書を格納している本棚が崩れ落ちていくのを目にし。

無意識のうちにその惨禍の真上へと瞬間移動していた。図書館の中なら詠唱せずとも術式は既に組んである。いつでも何処でも思い通りの場所にいけるのだ。
「な、なんてことっ!あの出来損ないの風鈴が・・・!」
そう、風鈴は風に揺れ音を鳴らし気分を涼しくさせるもの。だがあれは辺りに恐怖を撒くときだけ、高らかな音を響かせる。音は極上、だが効能は最悪。
友人の妹をそこまで悪し様に罵るのは気が引ける、だが、それ以上に気が立っていた。図書館のほぼ中央の大理石の床が溶解し、マグマの坩堝の中に本棚が落ち込んでいた。直径はまだ10mに至らないほどかしら?

「あら、そっか、図書館の下だったのね」

その声音すら、聞くものが聞けばまさに天稟たるものだろう。話に聞いた騒霊三姉妹とやらなら羨ましがるかもしれないな、と思ったところで思考を切り替える。

今は

「あら?」

その謳うような甘い声すら

「すっごい顔ね?寝起きは最悪?」

ハーゲンダッツバニラ味を初めて食べた時より腹立たしい!甘ったるすぎるのよ!
「あははっ!次はパチュが相手をしてくれるのっ!?」
妹様の持つステッキがすでに蛇のように変形(メタモルフォーゼ)しており、口に当たる部分から火を噴く。恐らく門番が返り討ちにでもあい、宣誓せずともまだ時間が残っているのだろう。
私の周囲に光の帯表れ、それが周囲を奔りあたりの空間はそれに合わせて軋むような音を奏でる。帯は私の体を包むように球状になりその帯が空間の魔力を喰い軋むような音を立てるのだ。その不協和音の中で光の壁は顕現しレーヴァティンの炎を防ぎきり、
「わぁっ」
妹様が感嘆の声を漏らす。
退くわけにはいかない。退けばまた本に被害が及ぶのだから。
故に、ここで迎撃し、そしてお帰りいただく!
障壁は受け止めた炎をくるりと包み込み圧縮し手のひらの上に小さな火種としてそれを寄越す。
「火金符『セントエルモピラー』」
そう呟くと手のひらの火種はゆっくりと浮き上がり頭程度の高さに達すると妹様めがけて奔りだす。初めは目で追える程度のものだったが周囲に展開していた光の帯が筒を成しその中を通過した後は目に映るのはその流星の残した残像のみ。

目に残る赤い光の線の先には何もなく、そこにあったはずの妹様の胸すら貫通し遥か下階で炎を撒き散らしていた。
ちらっと、門番のことが頭を過ぎる。もし、予想が当たっているのだとしたらまだ穴のところで倒れているはずなのよね。黒焦げになっていなければいいけれど。

「すごい、すごいすごい!」
胸を貫かれたというのに随分元気だ。少々頭が痛い。
「ふぅん?魔理沙には手加減していたんだ?」
覗き込むようない悪戯っ子の目で悪魔が言ってくる。気付けば既に胸の穴は塞がっている。
「違うわ。あれを機に少し新しい法陣を組んだだけよ」
そう、ただそれだけのこと。それまでは必要性を感じなかった。自身を打倒し得るものなんてそういないはず。その考えこそが大甘だったのだ。故に、多少時間は掛かったが二次元の魔法陣、今まで平面のみに存在していた魔法陣を三次元、立体に組みなおした。まだ一部の術のみだが先ほどのを見る限り妹様には充分使える。ただ、魔理沙やアリスには使えないわね、少々、威力が強すぎる。とも思う。妹様のような首を刎ねても心臓を穿っても死なないようなものになら使えるけれど死んでしまうようなものたちには使えない。私は決して、他者の命を奪うのを本懐としていないのだから当然だ。私はただ、紐解くだけの傍観者なのだから。
だから、精々こういう何の意味もないところで力を使うのがとてもよく似合っている。
「でも、それならもっと遊んでくれるよね?」
くにゃっと顔が歪み、そして体を丸めて妹様が堕ちていく。下階の照明は破壊されており、その惨状を良く見ることもできない。妹様の体はその闇の只中へと堕ちていく。
詠唱の問題はない、が。
そしてとぷん、と妹様の体が闇の中に沈み、
体力を使うのだ、この立体魔法陣は!
そして、禁忌「フォーオブアカインド」のカードが展開された。

大きな水音を立て妹様が四人に増えた。色とりどりの羽根がなんともうっとおしい。
「さぁ!本物はど―――――」
「金土符『エレメンタルハーベスター』」
その言葉とともに丸鋸が形成され妹様の言葉を物理的に切断し、折角揚がってきた四人の妹様はもとの闇の中へと還っていく。しかし、丸鋸の生成に図書館の床を指定したためにまた本がいくつか落ちていく。土生金故に土属性のものから金属性のものを精製するのは容易いのだ。
やっぱり、五行器でも組んだ方がいいのかしら、でもここの所実験などやってもいないしそもそも魔術の探求は私の本懐とすべきところではない・・・などと思考を巡らせているところにまたもや妹様の声が響く。

「ひっどーい!何するのよもう!」
堕ちていった妹様は元気溌剌だ。一階下で言っているにもかかわらずその声は良く通る。
「まだまだ付き合ってもらうからね!」

毎度の事ながら、これには少々飽き飽きしてしまう。個人的にはそろそろ切り上げたい。切り上げて読書と洒落込みたい。
そう思った時にそういえば、と思い出してしまった。

そういえば、あの落ちた棚のところにまだ読んでなかった本がなかったっけ?、と。
「あら?」
そうだ、あれは今日読もうと思って取っておいたはず!
「パチュリーもやる気になったの?今日はみんなやる気ね!」
妹様は元気だ。
でもそろそろそれに付き合うのも腹立たしい。懐から一枚のスペルを出す。これは図書館でしか使えないが、このスペルを打破したのは今のところレミリアだけ。常考の私なら決して使わなかっただろう。だが今は、寝起きの気分を害されたこと、本を焼失されたことに腹を立ててしまっている。

屋根を打つ雨音が聞こえる。

でも、そんな雨じゃ私の思考の熱は冷ませない。
灼熱の意思がスペルカードを使えと促しそれに従いスペルカードを持つ手を前へと突き出す。

だが、長い間使われることのなかったものというのは悉く出番を奪われる。それはまた、今回もそうなる必然だったのだろう。

「フランドールお嬢様、そんなに騒がれてはレミリアお嬢様が起きてしまいますよ?」
しっとりと、あくまで落ち着いた声音。私から姿は見えないがそれは確かに紅魔館のメイド長十六夜咲夜の声だった。



2.雲居を歩く

「美鈴、明日の朝食はいつもより遅めに摂りなさい」

目の前のご馳走に身も心も奪われよく考えなかった私が悪かった。
昨日の夕食時、珍しく私も呼ばれ、主人であるレミリア様、パチュリー様と一緒に食事を摂った。一門番である私が呼ばれることなんて稀だ。
珍しいこともある、と思ってはいたものの、自分の能天気さが恨めしい!あぁ、でも晩御飯、おいしかったなぁ。
そんな心の油断を見抜いたのか床が撓んで左右から押し潰そうと迫りくる。
「うひゃぁ!」
それを飛んでかわし安全そうなところへ着地する。
あ、危ない。涎と一緒に命まで落っことすところでした。

「あいかわらず、しっぶといわねぇ?」

背後から声がかけられる。
あぁもう、私としてはこのまま門まで行って二度寝と洒落込みたいんです!フランドール様に背を向けて脱兎のように駆けていく。
でもでも、レミリア様が朝食を遅めに摂れって言ったのはイクォールフランドール様を止めろって言うことで・・・
「もー、そろそろ鬼ごっこには飽きちゃったな」
匂いすら漂ってきそうな甘い声と共に目の前の床が津波のようにせり上がる。
えぇい、いい加減覚悟を決めろ、紅美鈴!
反転し、フランドール様に向き直る。制動は一瞬。鍛え上げた足は床を摑み体は動きを止める。背後からは床が押し潰そうと迫りくる。体勢はそのまま。後はタイミングを見計らって発射するのみ。
「じゃ、次は誰と遊ぼうかな?」
その声と共に、力を溜めた足が弾けた。


「ご馳走様でした」
おそまつさま、と咲夜さんは返してきた。
昨日のご飯は格別でしたがやっぱり朝は咲夜さんのご飯でないといけません。・・・昨日のも咲夜さんの手作りでしたが。
食器を纏めて咲夜さんに渡してふと、窓の外を見る。今日は朝から雨だ。
「今日は町のほうまでちょっと買出しに行こうと思っていたのだけれど上がるかしら?」
と咲夜さんが困り顔で言う。既に渡したはずの食器はなくおそらく水にでも漬けてしまっているのだろう。
「きっと上がるんじゃないですか?ほら、少し晴れ間が」
雲は決して厚くなく、ところどころから日の光が漏れていた。
なら、平気そうね、と安心した声で言う。さて、機嫌を損ねないうちに退散退散。今日もお勤めを頑張りましょう。

いつもより遅い朝食を済ませ食堂を後にする。
赤い絨毯の続く赤い廊下。廊下は相も変わらず薄暗く今が朝なんだか昼なんだか夜なんだかさっぱりわからない。なんせ、窓というものがないのです。ここ、紅魔館の主人、レミリア・スカーレット様が吸血鬼であるため主人たるレミリア様が通る場所には一切の窓が設けられていないんです。でも、さっきの従業員用の食堂や私の部屋やメイドたちの部屋には窓はあるようですけども。でも、パチュリー様が言うには館の中にいる限りはたとえ日光が入ってもレミリア様に害を成すことはないのだとか。館、という囲いとレミリア様が服を着ている以上日光に当たっても精々ちょっと熱いかな、という程度、なのだとか。妖怪は概念で生きているので肌を隠す、家の中に姿を隠す、ということで云々、と仰っておられましたね。
そういえばこの廊下の照明の明かりもパチュリー様の術式なんだそうですがもう少し明るくならないのでしょうか。薄っ暗すぎです。
などなど益体もないことを思いつつ廊下を抜けそのままロビーに至りロビーを抜け外に出ればいつものお勤め場所。さて、今日も頑張りますか、昼寝を挟みつつ。今日は雨ですし門の脇にある詰め所に入っていればいいのですし楽なものです。でも日の当たるところでの昼寝もまた格別なんですよねー。
そう思いながらロビーへつけば、様子がいつもとは違う。
赤い絨毯は所々が裂け大理石の床は割れ、豪奢なシャンデリアは床の上に砕け散っている。
あれ、これは
「あら」
甘さを含んだ鈴のような声音が廃墟のようなロビーに響く。
この光景は何度も目にしている
「やっぱり妖精たちじゃ壊し甲斐がないのよね」
左に結わえた金の髪が広がる。こちらを振り向いたのだ。歪な骨に付いた水晶のようなものが色とりどりに明滅している。
どうやら、退屈でご機嫌斜めらしい。
「じゃぁ美鈴?」
くにゃっと白い顔が歪む
いけない、凄く動揺している。いつもこういうときは凄く不意打ちだ。昨日のご馳走はこういう意味だったのですか!
「遊びましょ」
その言葉と共に、大理石の床が大きく撓み襲い来る。
始まりはそんないつも通りの朝にやってくる。
これも、いつも通りといえばいつも通りなんですけどね。定例イベントというところでしょうか。


いつ見ても可愛らしいお顔です。でももう少し加減を憶えてくれるとなぁ。とても可愛いのでかいぐりかいぐりとしたいところなのですが今のままでは恐ろしすぎてそんなこととてもじゃないけどできません!すいません、嘘なんですが。時々ついふらふらとその愛らしさにこう、かいぐりとしてしまうわけなのですが今日はそういうわけにもいきません。
フランドール様との距離が一気に縮まる。あぁ、驚いている。そういえばこうして向かっていくのは随分久しぶりだった気がします。
真下で一度着地し、そしてそのまま真上目掛けてジャンプ。
気で強化した私の脚力なら一瞬の隙を付くくらいなら、多分平気。まずは一発、フランドール様の無防備な顎に右の掌底アパカー。上を向いた顎にあわせて駄目押しの右ハイキック。
くるっと反転し見事に着地。10.00くらい?いやー照れるなぁ。素直に飛べって話ですかね?
そして背後ではどしゃっという落下音。うん、決まった!普通ならこれで終わりなんだけど。
「いったーい!うふふっ、でも美鈴、今日は随分やる気みたいね!」
あぁ、見たくない見たくない。でもこういうのはついつい見ちゃいます。だって女の子ですし。
もー、生き物の法則とか弱点とか全然関係ないんですよね、この種族たち。ほら、もう平気な顔して立ち上がってる。
「じゃぁ、禁忌『グランベリートラップ』!」
あはははははは!とフランドール様の哄笑が廊下に響き渡り、それと共にフランドール様の持つステッキが廊下の隅にうねうねと這って行く。
うわぁ、もういつ見ても素敵なくらいにやばい予感。何度対峙しても良く解らないのでそろそろフランドール様のあのステッキとか羽根とかレミリア様に色々聞きたい気分です。

そんな悠長な思考が許される筈もなく第一のスペルが展開される。

ステッキだったものからいくつもの実のような光玉が生まれ、それが跳ね回り襲い掛かってくる。
うひゃあ、避け避け。避けきれないものは気を溜めた手で捌き足でいなし、って相変わらずめちゃくちゃ痛いです!なんかもう、咲夜さんのナイフとは種別の違う痛さなんですよね。こう、正真正銘、存続の危機を感じる痛さです。魂の芯に響きます。
でも我慢我慢。我慢は女の子最後の武器です。
でも、これは参った、近寄れる気がしません。
「ん~なに、さっきのはまぐれ?つまんなーい」
くぅっ、これでも精一杯なんです。
いつもだったらそう言っているかもしれません。でも、今日の私の馬力はいつもと違うんです!
「彩翔『飛花落葉』!」
一瞬の切れ目。雲の間を抜くような、そんな一瞬。馬力が違う、その言葉の通り、足の筋肉が破裂するように弾け、一瞬でフランドール様との間を詰め、そのままフランドール様の喉めがけて足刀が突き刺さる。
が、案の定、霞のように背後へ抜ける。手ごたえがあったのはほんの一瞬。
「やればできるじゃ」
もう幾度も、フランドール様とは戦ってきた。だからここまでは読めている。天井に着地する。グランベリーの光弾が届く前に―――
「華符『彩光蓮華掌』!」
天井を蹴り掌でフランドール様の喉を摑む。その手から光弾が迸りフランドール様の首が弾け、分断された首と体が床に向かって一直線に落ちていく。
うぅっ、グロいことをしてしまいました。そういえば図書館で読みましたが吸血鬼って首切ったり心臓刺したりすれば死ぬ筈なのになんであの人達は平気なんだろう。今度パチュリー様に聞いてみよう。
ざぶん、と分断されたフランドール様の体が床に沈む。でも、着地した私の体は沈まない。いつも思いますがどうなっているんだろう?もー、長い間お仕えしてる割には解らないことばかりです。やっぱり謎があるというのが魅力なのでしょうかね!?
と思ったのも束の間、ざぶん、とフランドール様の体が床から揚がってきた。
「すごい!すごいすごい!美鈴もやればできるじゃない!正直ただの極潰しだと思っていたわ!」
その言葉がざくっと胸を穿つ。正直気になってはいるもので。これも一度レミリア様に聞いてみたい。でも聞けない。だって絶対「そうね」って答えるに決まってる!悪魔だし!
「ふふっ、楽しくなってきたわ。じゃ、二枚目ね?」
そして、禁忌「レーヴァティン」のカードが展開される。
さっきは蔓の様に伸びていたステッキが今度は蛇のように変形しその口から火を吐く。
知ってましたか皆さん。火って質量があるんですよ、もう重たい。見てるだけでその重量が伝わってくるようです。あんな火に捲かれたら骨までウェルダンです。

で、

「やっぱり私には避けられません!」
気を溜めた両手で真剣火刃取りぃぃぃいいぃ!熱い!痛い!痛熱い!焦げる焦げる、炭になっちゃう!
「力比べなら負けないよー!」
いえいえ、比べようなんて思ってません。だからそんなに火力を上げないで!ウェルダン何秒前!?でも声が出ないんです、出してる余裕がないんです、だって歯を食いしばらなくっちゃ持ちこたえられません!

でも、いつもならここまで頑張れませんでした。ここまで頑張れたのは

重さがあるとはいえ所詮は炎、抜けられないわけじゃありません。熱いですけど。半端なく熱いんですけど。
溜めた足が破裂するように弾け火勢を抜け、フランドール様の目の前に出る。
「華符」

昨日食べた

「『破山砲』!」

人肉ステーキのお陰で今日は元気に頑張れました!

伸ばした拳が吸い込まれるようにフランドール様の鳩尾に落ち着き、一拍の間を置き虹色の閃光と共にフランドール様の体が上を目指して弾け飛ぶ。天井を突き破り、炎に捲かれたフランドール様の体はそのまた上の階の天井を溶かし、その上の階にある図書館へと至る。


パチュリー様、後は任せました!もう、熱くて痛くて辛いんです!おててだって真っ赤で煙が出ています!
ではでは、ちょっと遅くなりましたが二度寝でも。皆さんおやすみなさい。ぐぅぐぅ。


「ほぉあっちゃぁ!」
と叫び、辺りを見回せばあっれ?廊下が一面火の海?フランドール様はパチュリー様が相手してるんじゃないのでしょうか?って、きゃー、服が燃えてます、熱い熱い!

あぁ、もう、煙も出ません。




3.晴れ間を覗き

美鈴があそこまで頑張るとは意外だった。いつもは軽くやられているのに。
やっぱり、気を操る程度って言うだけあってご飯が資本なのかしら?いい物を食べれば食べるほど力が出る、とか?なんかそれは燃費が悪そうね、と思ってしまう。
昨日出した、あれ以上ともなるとなかなかないのではないのだろうか。いわば稀少品である。それを食べてあのくらいか・・・黒白や紅白の足止めくらいにはなるかしら?でもあれを毎日というのは少し骨ね、などとも思う。それに毎日ともなれば稀少とはいえないしやっぱり今までどおりの粗食で充分ね、と思い直した。
でも、少し、気分が晴れる思いだった。いつもいつも、美鈴にはがっかりしてばかりだし。これがフランドールお嬢様ではなく魔理沙や霊夢相手だったならもっと気分爽快だったのでしょうけど。

二階上ではパチュリー様とフランドールお嬢様が戦っている。先ほどの砲撃のような火弾にはあわててしまった。新たなスペルを組んだのでしょうか?広域に被害を及ぼすほどでないにしても一階の床を溶かし、地下まで到達している。地下にはフランドールお嬢様もいるとあって層の厚さ、耐久力は並以上、多分魔理沙のマスタースパークでも抜けないんじゃないかしら?なんていったらあの黒白はムキになるわね。黙っておこ。

再度、フランドールお嬢様は堕ちてきて床に沈んだかと思うと床の中からざっぱと元気に飛び出し上目指して飛んでいく。
以前、不思議に思いレミリアお嬢様に訊いたことがある。

何故床に着水するのか。

フランドールお嬢様のありとあらゆるものを破壊する程度の能力。言い換えれば略奪である。破壊し、この世から永遠に奪い去る究極の略奪。
本来、フランドールお嬢様のその能力とスペルは地下の自室とセットでフランドールお嬢様本体とその部屋がセットではじめてその真価を発揮する、のだそうで。そして、破壊し、略奪したものもフランドールお嬢様の領地となる。フランドールお嬢様が着水するのは傷ついた体を癒すためにエネルギーを搾取しているのだ。ただ、それだけのことらしい。

吸血鬼は己の領地では無敵を誇る。

でも、それを知っていても尚パチュリー様の取り出したあのスペルカードからはそれを犯すほどの力を感じるのは何故だろう。
故に、

「フランドールお嬢様、そんなに騒がれてはレミリアお嬢様が起きてしまいますよ?」

と横槍を入れてしまうのだった。
「「咲夜!」」
と二人の声が同時に発せられ、むっとお互いの顔を見つめあう。
「咲夜、お姉様が起きるからなんだっていうの?あ、そうか」
フランドールお嬢様はさも当然のように勝ち誇るように口にする。
「たまには揉んでやれってこと?ほんと、妹に劣るなんてなっさけないよねー、あいつは」
コロコロと鈴を転がすように笑う。笑うフランドールお嬢様の向こうでパチュリー様が私の顔を見て顔をしかめる。私は、そんなに酷い顔をしているのでしょうか?
「いえ、そうではなく、レミリアお嬢様は今ご就寝中ですから・・・」
「だからあいつの為に私が気を遣えって言うの?気を遣うなんて美鈴の役割でしょう?私のすることじゃぁないわ!」
と、高らかに言い放つ。
「解りました」
たまに思います。
「では、私もお相手いたしましょう、お嬢様の安眠のために!」
あらゆるものを破壊するって当然言葉でこちらの理性も破壊できるんじゃないかって。
どこかで冷静にそんなことを思いつつ、ついついフランドールお嬢様にそんなことを言い放ってしまった。

「ふふっ、今日はとても楽しいわ!禁忌『カゴメカゴメ』!」
スペルの宣誓と共に二階の廊下に石柱が居立する。
それが猛スピードで迫ってくるものだから焦る焦る。
「咲夜」
肩に手を置かれふわっとパチュリー様が私の腕の中に納まる。その中で、「面倒だからお願いね」なんてパチュリー様は言いのける。
もう、解りました!最初から当てにしてないのでデッドウェイトとして頑張ってください!あ、頑張らずおとなしくしておいて下さるととてもありがたいのですが。
華麗なステップ、華麗なターンで迫る石柱をひらりひらりとかわし抜く。あくまで瀟洒に優雅に淑やかに。
「咲夜、くるわよ」
と、クイクイ、と私のお下げさんをパチュリー様が引っ張る。なんか、いちいち可愛らしいんですよね、パチュリー様って。
そんな余分な思考が災い招いたのか、
「って、キャー!」
巨大な光弾が石柱を破壊しながら猛然と詰め寄ってくる。キャーキャー言いながらそれをかわす私。もう全然瀟洒ではありません。
腕の中のパチュリー様は煩そうに耳を両手で塞いでいます。ガレキで服と髪が汚れたのと相まってなんだか少し腹立たしいですわね。
「咲夜、遊んでないで妹様に近づきなさい」
別に遊んでいるわけじゃないのですが唯々諾々とそれに従い石柱の間を抜いていく。まだ、時計を使うほどではありませんね。
そうして抜けていけばフランドールお嬢様の正面に出る。
「あら、仲のいいこと!」
そういいながらまたあの巨大な光弾を放つ。パチュリー様は手をかざしそれを受け止め薄い光の幕が低い音を立てながらそれを飲み込んでいき、
「咲夜、あわせなさい!」
その光弾をそのまま、フランドールお嬢様に返された!あれ、とフランドールお嬢様はその光弾をあっけなくまともに喰らい、たたらを踏む。その間にパチュリー様を放り投げ、駄目押しの
「傷符『インスクライドレッドソウル』!」
両手に持ったナイフでフランドール様を滅多切りにした。あっけなく粉微塵となり、その肉片はやっぱり案の定、床に沈んでいく。
うーん、これではまだまだかかってしまいそうね、と思っているとどすん、と背後に何かが落ちる音がした。
「さ、咲夜、ちゃんと受けとめてー」
とパチュリー様が尻もちついたお尻をさすりながら涙目ながらに訴えている。
「す、すいません、つい忘れてしまいました」
ついじゃないわよ、もう、とパチュリー様はぶちぶち言っている。というか、自分で飛べばよかったじゃないですか、パチュリー様。
「もー、咲夜、今のはなかなか痛かったよー」
そんな非難を含んだ声で私の名前を呼びながらフランドールお嬢様がゆっくりと揚がってきた。もう、そんなこと言って一体私にどうしろと仰るんですか。
などということはおくびも出さずに、
「でも、お嬢様もお楽しみになられているでしょう?」
と返せば、フランドールお嬢様は華のように笑う。

「今日はとてもいい日だわ、まだまだスペルもあるのだから存分に付き合ってもらうわよ!じゃー次は、禁忌『恋の迷路』!」

その言葉と共に、今度は石の壁が出現しフランドールお嬢様の姿を覆い隠す。私とパチュリー様の周囲にも出現しそれはさながら迷路そのものだ。違うのは、その石の壁は高速で動き、その進路も、退路も徐々に塞いでいこうとする。壁はそれぞれ互い違いに動き巻き込まれればミンチになってしまうだろう。
「咲夜、抜けるわよ」
パチュリー様が言わずもだっこ、を要求しているのが解る。笑顔でそれに応え抱き上げつつ、なんか、パチュリー様、あんまり役に立ってないような、とも思う。
「ほら、咲夜」
はいっ、と答え石の壁の隙間を抜けていく。一人分、抜けられるか、どうか。こう考えると、パチュリー様の抱っこの判断も間違いではない、様な気がしてくるけど間違いなくパチュリー様は自分で抜けるのが面倒なだけに違いない。
「いい、見つけ次第全力で叩き込むわよ」
それは同感です、私もさっさと終わりにしたいですし幅が狭いのでスカートの裾がどんどん擦れていってしまうんです。
回るように抜けていき、目の前がばっと開き、フランドールお嬢様の姿が眼前に広がる。
その瞬間、パチュリー様の体は浮き上がり、フランドールお嬢様の目の前で着地し、瞬間。
「月符『サイレントセレナ』」
ぎゅあっとパチュリー様の周囲を水の柱が迷路のように巻き上がり、さも、先ほどの仕返しだといわんばかりにフランドールお嬢様の体を巻き込み上へ上へと突き上げていき、そこへ
ばらっと目の前に並べた私のナイフが
「メイド秘技『殺人ドール』」
の言葉と共にフランドールお嬢様を追撃していく。
フランドールお嬢様の体はナイフで串刺しにされ、あれ、またか、という顔で穴に落ち、一階へと堕ちていった。

「はーっ、そろそろ終わりにしてくれないかしら」
疲れたわ、とパチュリー様は肩で息をしている。まぁ、今日は珍しく良く動いているようですし寝起きにしては頑張っていらっしゃる方なのではないのでしょうか。
「確かに、そろそろ落ち着いてくださるとこちらとしてもいいのですけどねぇ・・・」
などという思いは通じるはずもなく、
「もうっ、二人がかりなんてずるいずるい!」
と大声を上げながらフランドールお嬢様は戻ってきた。
「ですが、私たち一人ではお嬢様を満足させることもできませんし・・・」
と言ったところでフランドールお嬢様が手に持つそれにはた、と気付く。それは、緑だったり赤だったりする、良く見慣れた―――
「お、おはようございます、咲夜さん」

先ほど食堂で会い、黒焦げになるのを見届けた筈の紅美鈴だった。

「だからぁ、これならいい勝負ができると思わない?」

ご満悦の表情で、フランドールお嬢様は言い放つ。パチュリー様と顔を見合わせる。きっと私の顔も目の前のパチュリー様と同じくげんなりとしていることだろう。
朝から続く雨はまだ晴れないのか、今日、紅魔館を訪れるものはまだいない。

できることなら、黒白や紅白に丸投げしたいところだ。彼女たちは、こういうときにはまるで役に立たないのだから。まったく。




4.虹を見る

部屋の中はほの暗く、私が起きればいつもなら咲夜が飛んでくるのに今日はこうしてまどろんでいても一向に咲夜はやってこなかった。
ずずん、とまた轟音が響く。
どうも派手に遊んでいるみたいね、解っていたことだけど。
欠伸を一つ、噛み殺しもそもそと慣れない手つきで服を着る。上着の袖を通し、胸のボタンを留めているときにはたと思い出した。
しまった、肌着を着けるのを忘れていた。
普段やらないことだとこういうことをしてしまうのが困ったところだ。・・・困ったところといえばそういう場合もまぁいいか、で済ませてしまう自分の心根が少々、問題のような気もした。

部屋を出て、蝙蝠を一つ飛ばして様子を見ることにする。
さて、今はどんな状況かしら?

どういうことか、今日は正面から普通にフランの相手をしているようだった。恋の迷路もブレイクし、次はいよいよ本番とも言える禁弾だ。こうして観戦しているだけだと少しわくわくしてくるのよね。パチェも咲夜もあの手この手でフランのスペルを封殺しているけれどそろそろ小細工も通用しなくなってくる頃合だし、一体どうやって決着をつけるのか非常に楽しみではある。
でも、美鈴がフランに味方するとは。少々予想外というか、肝を抜かれたというか。
今までなら、フランが誰かの助力を仰ぐなんてこと、するとも思わなかったのに。あの子もちょっとは成長したって事なのかしら?

「ここからはちょーっときっついよ!じゃぁ、禁弾『スターボウブレイク』ッ!」

その宣誓とともにフランの羽根がバキバキ、メキメキと天を突くように伸びていく。より歪に、より強大に、七色の羽もさらに禍々しく。
その様子だけでも尋常ではないのにその羽一枚一枚に濃密な魔力が篭っていることが傍から見ていても良く解る。なにせ、隠そうとは微塵もしていないのだからそれは当然だ。
美鈴の顔は青ざめ引きつりその怪異を呆然と見続け、咲夜やパチェは緊張の面持ち。まぁ、当然ね。
「めーりんっ!咲夜は任せたわ!」
げ、とそれを聞き美鈴は不満を漏らしかける。多分無意識のうちに言ってしまったのだろう、あわてて自分の口を押さえ、「任されました!」と泣きそうな顔で請け負う。その真正面からは「げ、とはなに。げ、とは」という顔で咲夜がねめつけている。美鈴もなんとも災難だこと。
「妹様は私をご指名のようね」
一歩、パチェは前に進み出る。表情はややげんなりとしているもののもしかして楽しんでるんじゃないか、と思うほどに今日のパチェは積極的だ。珍しい。
咲夜は苦笑しつつ、「すぐに駆けつけますので」そこの門番をのしてからね、と目で美鈴に語る。美鈴、腰が引けてる引けてる。
「うふふ、じゃぁそろそろ行くよ?」
フランがまるで飛び立つように廊下の幅一杯に翼を広げる。14対の羽はまっすぐ前を向き、羽根の骨格は大きくたわみ弓のようにしなり、反りが返ったかと思えばまっすぐに、色とりどりの槍が廊下を縦断する。
飛び立つのは、フランではなく当たれば必死の色とりどりの槍であった。
そのやりは三人の位置を分断し、フランの正面にパチェ、そこから右手に咲夜、美鈴という位置あいだった。驚いたのは、咲夜を美鈴の正面に誘うべく、弾幕にわざと隙を作ったことか。前はただ壊すだけだったのに!
無尽蔵に放たれる槍をパチェはふらりふらりと最小限の動きでかわしていく。あくまで自分に当たらないように交わすだけなのでだんだんと服の裾が切れ始める。もう少しちゃんとかわせばいいのに。そうやってずぼらにかわしていくうちにどんどんと退路は塞がっていく。床に刺さった槍もそのままその威力を維持し続けているためだ。
そんな最中、何かに足をとられてパチェが転んだ。

フランが弾幕を調整しているのか、美鈴と咲夜を結ぶ直線状には一切槍が刺さってはいなかった。美鈴に当たらないようにしているのだろう。そこ以外は何処もかしくも槍だらけなのだ。そこから逃れるのは少々骨が折れるだろう。
そのため、正面からのぶつかり合いに終始することになり、どちらかといえばトリックプレーを得意とする咲夜がやや押されつつある。
美鈴も接近しての戦いは巧く、ナイフで切り込んでくる咲夜の斬撃を巧いこと捌いていく。ナイフの腹を、持つ手を、腕を、と自在に捌き、いなし、引き寄せ、咲夜に幾度も打撃を浴びせる。でもどうやら手加減でもしているのか大技は使わないし顔も急所も狙わない。
そんな斬撃打撃戦の最中、咲夜が美鈴にこそっと耳打ちをした。
「え!」
はっと、漏れ出た自分の口を押さえる美鈴。だが声は抑えても態度がおかしい。体はそわそわふらふらと泳ぐし、目も泳ぐ。やっぱり美鈴に腹芸なんてできるはずもない。
咲夜は目で落ち着け、と訴えるもののそれが見えている様子もない。どうにも、困ったものね。

転がりながらパチェが何度か槍をかわして漸く立ち上がる。それに足をとられたのか、その手には一冊の本が握られていた。
「良かった、まだあったのね」
とその場でぱらぱらとページを捲りはじめる。
残った退路もあとわずか。とてもではないけれど読書に興じる余裕なんてないはずなのに。
それを見たフランの形相が一変する。
「ちょっと、余裕じゃないパチュリー!こんな時に本を読むなんてもしかしてもうあきらめたの!?」
怒りが魔力となって槍に篭められる。それはより強大に、力強くなっていく。それが放たれれば、パチェの退路はもう何処にもなくなるだろう。
「いいえ、あきらめていませんよ妹様」
そうは言っても本からは決して目を上げずすさまじいスピードで本を捲っていく。それは、読むというより何かを探しているようだった。
そんな最中、
「極光『華厳明星』!」
の宣誓と共に美鈴のスペルが放たれ虹色の弾丸が咲夜に当たる間際に咲夜のスペル、奇術「エターナルミーク」が発動し両者とも後方に弾けるように吹き飛ぶ。
美鈴と咲夜のいた直線状にはスターボウブレイクの槍は一本も刺さっていなかったため二人ともスペルのダメージだけで致命的な追撃は受けなかったようだ。
「ほら、妹様。こちらもそろそろ幕引きにしましょう」
本を捲るのをいつの間にやめたのか、パチェはまっすぐにフランを見る。それにフランは高らかに笑い、
「いいよ!終わりにしよっ、パチュリーの被弾でね!」
溜めに溜めた槍はまっすぐにパチェを射止めるために殺到する。これはさすがに避ける間がない。おおっと、そろそろ私の出番かしら、と身を乗り出したところでパチェがゆっくりと本から一枚のスペルカードを引き抜くのが見えた。
両手で頭上に掲げたそれは良く見覚えのあるパチェの虎の子とも言える一枚。
「日符『ロイヤルフレア』」
静かに行われたスペル宣誓の言葉と共に、カードは燃え尽きその火種がパチェの両手に灯され、スターボウの槍が届く前にその場の一切を容赦ない灼熱が焼き尽くす。
相打ちになった二人は運良くスペルの範囲外まで飛ばされていたために難を逃れることができたが、もし、こうなっていなかったらどうするつもりだったのか。少し、気になるわよね。
ただ、当然フランはロイヤルフレアの圏内に居り、身を灼熱で焼かれその絶叫が廊下に反響していた。

火勢が消える頃には炭化したフランが佇むだけだった。
・・・のだけれど。
「あっついなぁ、もう!」
と元気良く脱皮するようにペロン、と黒焦げの皮を捲って何事もなかったように元気な姿を現す。当然のように服も新品だ。かたやパチェの服はぼろぼろでパチェの方が敗者に見える。
「何で落ちてる本にロイヤルフレアが挟まっていたの!?そんなのずるいわ!」
猛烈な講義をするフラン。確かに、落ちていた本から出てくるのは不思議だろう。
「しおりが見つからなかったからしおりの代わりに挟んでうっかり小悪魔がそのまま棚に戻したんでしょう」
で、それが多分上の図書館に通じてると思われる大穴から落ちてきた、ということのようだった。フランはそれを真っ赤な顔で聞き地団駄をふみふみしながら、
「じゃぁ次よ!次はこんな風には行かないんだから!」
そして、二つ目の禁断が宣誓される。

「禁弾『カタディオブトリック』!」

先ほどはフランの羽根が上げていた音だったが今度は空間がペキペキという音を立てていく。フランの両手に集まる魔力に空間が軋みをあげているのだろう。両の手で筒を作るようにそれを前に突き出し、
「じゃぁいくよ!死んじゃったらだめだからね!」
上手くいかない時は癇癪を起こす割には最近はこうやって相手を気遣うようになってきた。フランも随分と変わっていく。こうした変化を見るたびにあいつらに感謝してしまいそうになる。
ただ、変化といえばまさか門番があそこまでのザルっぷりを発揮するとは思ってはいなかったけれども。こういうのは、馬脚を現すっていうのかしら?
放たれる高密の魔弾が五つ、パチェに迫る。あらゆる方向から迫るそれを辛くもパチェはなんとか避ける。一度目は避けたけれども魔弾の残滓でパチェはもうそこから迂闊に動けない。
そして、二撃目でチェックメイトといえる。もう、逃げ場はないのだし。
うずうずと、体がうずく。そろそろ私も混ざりたいっ。
そして、二発目の魔弾が放たれ、パチェ、絶体絶命、と思いきや。
パチェが目を細めたかと思うとパチェの周りに光条が奔りパチェの体を包み込みそれが球状になる。辺りはその光条にあわせて軋むような異音を放ち魔弾が着弾する前に、ゆっくりと
「土水符『ノキアンデリュージ』」
とパチェのスペル宣誓が行われた。
パチェの周囲を奔り球状となっていた光条のところどころに隙間ができ、その隙間から水飛礫が発射されていく。本来なら、ノキアンデリュージにカタディオブトリックの魔弾を相殺する力はないだろう。たとえ手数が多くても本来ならば魔弾は悠々と押し切るだろう。
そのはずなのに、魔弾は水飛礫の手数に押されあらぬ方向へと軌道を変えパチェを守り抜いた。
実際目の当たりにして驚いた。解ってはいたけれど実際に見るとやはり驚いてしまう。あれが、立体魔法陣の力、か。なかなか厄介そうなことをしているようね。
「うわっ!やっぱりそれは凄いわねー!」
チェックメイトを外された割にはとても嬉しそうだ。嬉々として魔弾をところ構わず放つがパチェがそれに応えている余力もない、とばかりに黙々と魔弾を処理していく。そろそろ、体力も限界なのかもね。さっきロイヤルフレアも使ってしまったし。
そう思った時、突然パチェの立体魔法陣は解除され、前につんのめるようにパチェがたたらを踏んだ。肩で息をし、目は朦朧としている。前を向いてはいるけれど、ちゃんと見えてはいないのでしょうね。そのパチェに、左右から魔弾が迫る。元の位置にいたなら当たらなかったのだけど前に出てしまったせいでこのままでは直撃してしまう。
今度こそ私のっ、と思いきや。
そこで、パチェの背中を押し、庇うように立つ人影一つ。両の手にはやや大振りのナイフを握っており、
「傷魂『ソウルスカルプチュア』!」
の宣誓と共に両手のナイフが閃光となりすべての魔弾一切を一掃する。
「危ないところでしたね」
見上げるパチェににこりと咲夜は微笑み、それにパチェは「遅いわよ、咲夜」と文句を垂れる。
それに困り顔で、
「えぇ、その、あの馬鹿が手加減できないというのを忘れておりました」
と言う。そして、その馬鹿はといえば。
「ぇ、めーりん?」
フランの前に立ち拳を構え、
「すいません、フランドール様っ!三華『崩山彩極砲』!」
とスペル宣誓をし、流れるような美鈴の三連撃は虹色の残光を残し、フランの体が後方に思いっきり弾け飛んだ。
呆然と撃たれ飛ぶフランの目にはすまなそうな美鈴の顔が映っていたでしょうね。


蝙蝠が一匹、廊下の先にいる。
その蝙蝠は徐々に大きくなりやがて人の形となった。
紅魔館の主人、フランドールの姉たるレミリア・スカーレットその人である。
十六夜咲夜は、レミリアの安眠を守るため、と言ったがこれだけ騒げば誰であっても起きてしまう。そう、喧し過ぎたのだ。
起きて途中から見ていたものの今ひとつ混ざるタイミングを逃し、どこで登場しようかとうずうずして、運命を読んでフランの飛ばされてくる廊下の先で待ち構えていたのだ。
眠りを妨げられ、ハブにされていた怒りが、今、その右手に集中し、美鈴に殴り飛ばされたフランドールの体が手の届くところにまで近づいてきて、

「ドカバキメキバキギャーゴォースガーンと、煩いのよあんたたちは!
私の怒りを思い知りなさい!
神槌『レミリアハンマー』!!」

一気に捲くし立て、スペルの宣誓と共にフランドールめがけて思いっきり拳をスウィング。インパクトの瞬間その場にいる四人はみな、こう思ったという。それは、言ってしまえば、ハンマーというより・・・

「それアッパー!」
「お嬢様、それはアッパーです」
「レミィ、それはアッパーカットというのよ・・・」
「お姉さま、これアッパー」

であった。あんなにいがみ合っていた四人の心もレミリアのお陰で一つに纏まってしまう。さすが紅魔館の主人、そこらの妖怪とはモノが違う。
そんな突っ込みされてしまうようなものとはいえ威力は凄まじく、フランドールの体はいくつもの層を抜いて運良く時計塔の内部に到達しそこで止まった。上の階からは軋むような音がする。咲夜は、少々直すのが骨だわ、などと思っていた。
「じゃぁ、そろそろお昼にしましょうか。咲夜、フランを連れてきて頂戴」
機嫌よく、レミリアはその場をあとにする。残されたものの心境は、どうにも複雑というか、やりきれないものだった。
咲夜はため息を一つ吐くと、
「今日は町に出ている暇はなさそうね。美鈴?」
咲夜は、フランドールに悪いことをしてしまったと項垂れる美鈴に声をかける。「は、はひぃっ!?」と美鈴は応えるがその声はあわてて応えたせいか裏返っている。
「お昼は少し遅くなってしまうけどいいかしら?」
ちゃんと約束は守るわよ、とウィンク一つ残して咲夜はパチュリーを促して立ち去っていく。
スターボウブレイクの時に咲夜に耳打ちされたとても魅力的に聞こえた約束だったのだが、美鈴としては正直、その誘惑に負けてしまって良かったのか、と思い悩んでしまう。でもそうやって悩むのもお腹が空いている今のうちだけだろう。きっとお腹が一杯になってしまえば忘れてしまうに違いない。
・・・というほど、単純ならよかったのですが、と嘆息を一つ、美鈴が漏らし、その場を後にした。

ある意味レミリアを除く四人の心は一つだった。レミリア、最後の美味しいところだけ持っていきすぎ!主人なだけあってやはり美味しい部分だけ戴くんですね。



「ほら、フラン?あーん」
とレミィが食後のケーキを一欠けフォークに刺しフリフリと妹様の前で動かす。むっすりと妹様はそれを見据え、
「なに、馬鹿にしてるの!?」
と、ご機嫌斜め。先ほどの決着に不満たらたらなのだろう。正直、あの決着は私もどうかと思うわ、レミィ。
「仲直りしようとしているだけじゃない?ほら、あ~ん」
ん、ん、と少し唸ってから頬を朱に染め口を小さく開く。
その瞬間、フォークはまるで違うところを向き、
「油断大敵よフラン?」
と、妹様のまだ手付かずだったケーキを一刺し。そしてそのままレミィの口にゴールイン。もっしもっしとケーキを丸ごと頬張るさまはとてもではないけれどお嬢様とは言えないんじゃないかしら?
「あ~~~~!」と妹様は絶叫しレミィに飛び掛り押し倒してくんずほぐれつと揉みくちゃになって髪の毛を引っ張ったり頬を伸ばしたりとお互いにやりあい他愛もない悪口をお互いに言い合っている。どう考えても、レミィが悪いわね・・・長い間ちゃんと接してなかったから接し方を考えあぐねているのかしら?などとも思うがどうにも見かけ通り、というか、
「とても500年以上生きてる方とは思えませんね」
と咲夜が私の心を代弁するように言う。その顔は苦笑しているようでもあり、微笑ましく綻んでいるようでもある。紅茶を飲みながらそれを観察する。レミィにしろ、咲夜にしろ、あいつらが来てからみんな変わったわね。・・・それはやっぱり私もなんでしょうけど。
紅茶を飲みながら、先ほどの弾幕ごっこの時に拾った本をめくっていると、
「あ、そうそう、図書館の穴の方はどうしますか?」
と咲夜が聞いてきた。多分、私が本を読み始めたので思い出したのだろう。・・・私としては忘れていたかったのだけれど・・・
「小悪魔たちにやらせるわ、咲夜も大変・・・」
といったところで妙案を思いつく。うん、それはいけるんじゃないかしら?ちょうどあいつに嫌がらせするためにスペルも組んでいたことだし。
「だとは思うのだけれど、やっぱり頼めるかしら?本も、読めそうなものがあったら回収しておいて」
カップを置き、席を立つ。「お出かけですか?」との咲夜の問いに、「えぇ、丁度運良く晴れたようだしね」と、答える。
まだ二人は「姉が姉が!」「妹が妹が!」となにやら転がりながらいがみ合っておりそれを聞きつつレミィの部屋を後にするのだった。

「わ、虹ですよパチュリー様!」
小悪魔がはしゃいだ声を出して知らせる。四体の小悪魔と共に紅魔館を出て、司書長の小悪魔に抱きかかえられてお出かけですることにした。
前を見ると、確かに虹が出ている。虹の消えるところまで目に納めた時、ふと、こんなことを思った。
「知ってる、小悪魔?」
小悪魔たちがびくっと、反応する。時折、小悪魔たちはこういう反応を見せるのだけれど何故なのかしら?
「え、えぇと、なにをでしょうか?」
とおずおずとか細い声で私を抱きかかえる小悪魔が聞き返してきた。
「ふふっ、なんでも虹の根本には金銀財宝ザックザク、財宝が山のように埋まっているっていう話よ」
うふふふふふふと、自然と笑いが口から漏れてくる。あぁ、確かに私も変わったわね。昔はこんな風に笑うこともなかったもの。
小悪魔たちもぎこちない笑顔で笑いを漏らす。
そう、ここから見える虹の根本には魔法の森があった。さぁ、どんなお宝があるのかしら?

「な、なに笑ってるんだ、お前ら?気持ち悪いぞ」

と、不意に聞きなれた声が耳朶を打つ。
目を向ければそこには―――



「はい美鈴。約束だものね」
と咲夜さんがお昼ご飯を用意してくれた。紅魔館の屋上で、昼食の前に咲夜さんの修理を手伝っていた。気がつけば太陽もほんの少しだけ傾いている。一時か二時か私にはちょっとわかりませんけれど。
目の前のお皿には・・・これは、何だろう?サンドウィッチ?丸いパンにハンバーグとレタスだかが挟んでありますよ?
「ハンバーガーというものだそうよ。町の雑貨屋でね、そんなのが載っている本があってね」
と、いう咲夜さんのお皿にも同じくハンバーガーなる代物。
「こうして食べるんだそうよ」
上の丸いパンを取ってその下のハンバーグにケチャップとマスタードをかけて取ったパンをまた載せて今度はざくざくとナイフで半分に切った。そしてその半分をテーブルナプキンで包みさくっと食べた。
ほぉー、と観察観察。咲夜さんがあんなに口を大きく開けて食べるなんてめったにあることじゃありません、と、それは兎も角私もいただきましょう!
咲夜さんと同じようにしていただきます、と言って食べる直前にはた、と気付く。
「えーと、咲夜さん?」
「なにかしら?」という咲夜さんはすでに半分を食べきりもう半分をナプキンで包んでいるところだった。
えぇと、その、とちょっと口篭ってしまう。すこーし、聞き辛いことなのだ。
「どうしたの、美鈴?」
もくもくと、咲夜さんは食べ始める。ちょっと聞き辛いですが、ここは聞いてしまいましょう!
「咲夜さんのも人肉入り・・・なんですか?」
ぴたり、と咲夜さんの動きが止まり、なにやらだんだんと汗が。というか脂汗が?
どんどんと自分の胸を叩き始めるのであわてて背中をさする。び、びっくりした!
「びっくりするじゃない、もう!」
すいません、と謝ってしまう。どうにも咲夜さんには弱いのです。餌付けされてるせいでしょうか。
フランドール様を裏切ったのも昼食にご馳走してくれるというからつい・・・。フランドール様、食べ物に弱くてすいません!
「あ、あなたのだけよ、もう。ほら、あなたも食べなさい」
咲夜さんに促され一口ぱくり。
・・・うん、やっぱり咲夜さんの料理は美味しいです!お嫁にするなら咲夜さんみたいな人がいいなぁ、そんなことを言ったらぽかりと叩かれました。少し無駄口が過ぎましたかね。
ふっと見ればさっきまで出ていた虹が消えうせて嘘のような青い空が覗いている。明日は、天気どうでしょうか?



十六夜咲夜は時計塔を見上げ時間の調整が確かであることを確認する。すでに太陽は傾き世界が朱に染まっている。これより先はお嬢様方の時間だ。
破壊の限りを尽くされていた紅魔館もなんとか夜までにその修理を終えていた。美鈴も手伝ってくれたし、思っていたよりは早く終わったわね。今日は不意の来客もなかったようだし。
ふと、目をやれば夕日をバックに大きい影が四つ、こちらに向かってくる。
なにかしら、と見ていればそれは昼に出かけたパチュリー様たちだった。
出かけるときにはなかった大きな包みを小悪魔たちが抱えパチュリー様は小悪魔にだっこされている。あの人はほんと、ものぐさというか・・・。
普段なら表情を動かすのも面倒、といわんばかりの仏頂面が遠目から見ても生き生きと輝いて見える。
・・・何かいいことでもあったのでしょうか?

なんにしても、これで明日は町にお買い物に行けますね。



もーいやっ!なにかとちょっかいかけてくるし悪戯するし意地悪するし、そういうのって妹の役割じゃないのかしら!
でも、今までこんな風に構ってくれたこともなかったからちょっと最近は毎日が楽しいかな・・・。

でも、もうちょっとやさしくしてくれたっていいじゃない!




魔理沙に泣きつかれ魔理沙宅を訪問した霊夢は驚く。
「あんたにも片付けってできたのね!」
正直、入るのが嫌でここの所玄関先で用を済ませていたのだが今日の魔理沙の家は驚くほど整頓されており掃除も行き届いている。ただ、床だけが汚く足跡が残っている。だが良く見ればその足跡は一人の人間のものであり恐らくそこで泣きはらしている魔法使いのものであろう。
良く整理整頓され綺麗ではあるのだが。
「本がないわね?」
「もやしが、もやしがっ・・・!」
と、うっうっと魔理沙は咽び泣く。
話を聞けば、折角晴れたので紅魔館に遊びに行く途中に珍しくパチュリー・ノーレッジを発見。声をかけた途端に弾幕勝負を挑まれたという。しかも、
「あいつ、私のマスタースパークまで・・・」
そこでさらに魔理沙は泣く。当然の事ながら魔理沙にノンディレクショナルレーザーが真似できたのならば魔理沙の何倍も魔女をしているパチュリー・ノーレッジに真似できないわけもなく、自慢の魔法すら真似され弾幕勝負にすら敗退し身も心もズタ襤褸にされた魔理沙が家に帰ってくればドアの鍵は抉じ開けられ侵入者用のトラップは新調され自身に襲い掛かってくるわそれをなんとか解除してはたと部屋を見回せば大事な自分の蔵書がない。図書館から黙って拝借して来た本は当然として自分が集めた数々の魔導書も著作途中の魔導書も、そしてつけていた日記すら・・・ありとあらゆる読み物という読み物が根こそぎ奪われていたのだという。

なんというかこれは、まったくの魔理沙の自業自得である。霊夢は呆れ果て、霧雨魔法店を後にする。ぴぃぴぃ泣き喚く魔理沙の泣き声が聞こえるがやれやれといったところである。どちらかといえばパチュリーの方に同情してしまう。
「まぁ、こういうこともあるわね」
霊夢は空を見上げる。重苦しい日差しも消え、もうすぐ実りの秋だ。それを思うとわくわくする。
お芋に鮎に松茸に・・・ふふっ、一番後ろのは食べたこともないけれど一年の中で秋が一番楽しみね、だっておなか一杯食べれる日が多いもの!

霊夢に慰めてやって、と言われて魔理沙の家にやってきたアリスだったが、家の中に入り愕然とする。
「ちょっと、私の家から持ち出した魔導書はどこにやったの!?」
本が一冊もない。そう、霧雨魔理沙はアリスの家からも本を持ち出しているのだ。
べそべそと小さな声で「もやしが・・・もやしが」と繰り返している。アリスは爪を噛み、あっの紫もやしめ!やるときはやるのね!と対抗心を燃やしていた。今度は私もこいつから略奪してやろう、とも思っているようだ。
さっさと家に帰ってちょっとスペルの研究でもしましょう、といきこんで外に行こうとすればマリサに腕を摑まれた。
「ありす~」
と泣きついてこようとする魔理沙をアリスはすげなく突き放し、
「霊夢の方がいいんでしょ?」
と冷たく言い放ち霧雨魔法店を後にする。


朝降っていた雨も上がって見事に晴れ上がり、秋の空は何処までも高く爽快で、眺めているだけで心が晴れるかのようだ。
昼とは打って変わって夜にはレミリアとフランは仲良く食事をしていた。フランと一緒に食事を摂ることは珍しいことだが、これが習慣になってくれれば、と睦まじく食事をするスカーレット姉妹を見ながら咲夜はそう思う。やはり、仲がいいのが一番好ましい。
パチュリーもご機嫌で、「夕食はいいわ、さぁ、本の整理をしてしまいましょう」と小悪魔たちに指示を出している。その様子はとても楽しげで、「うふふ、奪い返しに来たら返り討ちにしてやるわ、本気の魔女は凄いのよ?」と笑いながらぶつぶつ言っていたのだという。それを横目でちらちらと見ながら、こっちに火の粉が降りかかりませんように、と本の整理をする小悪魔たちは思うのだった。
美鈴は昨日の晩御飯と今日の昼御飯がことさらご馳走だったせいか、いつにも増してご機嫌で、さっきまで鼻歌を歌いながらいつものやや粗食、とも言える食事を摂っていて、ごきげんねぇ、と咲夜などは呆れてしまうほどだった。
紅魔館の面々の気分はまさに晴れ上がるようなものだった。雨降って土固まるという言葉もあるわけで。
ただ、唯一とばっちりを食った霧雨魔理沙の心は決して晴れることはなく、「見てろよ、あのもやしめ・・・」と、薄暗い部屋で一人ぶつぶつとなにやらやっているのだった。
上がらない雨はない。だから、略奪の限りを尽くされた魔法使いの心に降る雨もいつか必ず晴れ上がるだろう。ただ、それがいつになるかはレミリアの能力を持ってしても見通せなかったりするのだが。




珍しく、レミリアとフラン、両方から一緒に食事を取ろう、と言い出した。
当然その言葉には裏があり、お互いに
「「さっきの仕返しをしてやる」」
と思ってのことだった。

だが実際に席に着けば咲夜はにこにこと上機嫌で配膳をしとてもではないがそんなことをする雰囲気ではない。咲夜を怒らせてしまうと後がとても恐ろしい。
お互いに顔を見合わせ、どちらからともなく足を踏み、声を押し殺して互いの腿を抓る。
いぶかしむ咲夜に「「なんでもない」」と言いそれらの行為はだんだんとエスカレートしていく。
それが大喧嘩に発展するのはそう遠いことではないだろう。

夜の門の前に立つ美鈴は、ふと、月明かりが翳ったことに気付き空を見上げる。
「あれ、空に雲が」
いつの間にかに月は姿を隠し雲が夜空を覆いつつあった。


それを見て、明日は晴れるのでしょうか、と美鈴は館の方からかすかに聞こえてくる怒声に気付かないフリをしつつ思うのだった。
長くて申し訳ありません。ザキブランドの55でございます。

先ほど出してしまった雨が降る、の拡張発展型でございます。
内容としてはフランちゃんが暴れてしまったどうしよう!さぁ、紅魔館の住人の力を結集してフランちゃんを宥め賺しておとなしくさせるんだ!的な内容となっております。
言ってしまえばザキブランド造型ノートフランドール弾幕立体案草稿的なものとお捉えいただけるとこれ幸い。
紅魔館の面々を造型している際に思いついたアイディアをそれなりに盛り込んでみました。


カタディまでなのは私がそこまでしか辿り着けないから。頑張ってフランちゃんを地下の部屋に押し込めなくちゃ!がんばろー、おー。


という感じだったのですがちょっと気になったので虹を見る、の部分の一部を書き直しちゃいました。
ザキブランド
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コメント



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楽しかったよ それとやはりあのフランの弾幕は紅魔館全員でかからないと突破できないよね・・・それを単独でクリアした魔理沙と霊夢は化け物だね