Coolier - 新生・東方創想話

抱擁毒は愛と苦痛とウサギを回す <第二波長>

2007/09/06 07:32:55
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竹林に囲まれた屋敷、永遠亭



やっとウサギ達から解放されたうどんげは今回の事件の調査に出ることにした

波長を見れる自分ならこの原因の根本を探すのも早いと思ったからだ


「じゃあ師匠、少しの間お暇をもらいます」

「ええ、ゆっくり調査してらっしゃい。姫もまだ帰ってこないしね」

「うーどーんーげー、私も連れてって~」


師匠の腕の中でじたばたとてゐがもがいている


「だめ、また抱きついてこられたらたまらないからね。今回は私一人で調査するわ」

「もうだいじょうぶよー。なんだかさっき抱きついたのですっきりしたし」


そういってまたぴょこぴょこと腕の中でもがく


「ふーむ、どうやらなにかをきっかけに抱擁衝動に駆られるようね」


永琳がウサギ達から聞いた話より事件を分析する


「そして抱きついた末に満足するとその感情も自然と消えていく・・・か」


うどんげが顎に手をあて、うーむと唸る


「いったいなんなんでしょうね、これは」

「それを調べてくるのが今のあなたの仕事。まぁ気をつけていってらっしゃい」

「わかりました。では」


玄関を出るとその真っ赤な目をきっ、とこらす

ぶわーっと謎の波動が流れていく様子がわかる


「あっちね」


そのまますいーっと飛んでいくうどんげを見送る二人

てゐは永琳の腕の中でぶすっとした表情を浮かべる


「不満そうね、てゐ」

「お師匠様~私も行かせてください~」

「ん~そうねぇ、うどんげ一人は確かに不安ね。じゃ、こっそりついていきなさい」

「わっ!ほんとですか!」

「あの子が危なくなったら助けてあげなさい」


にこりと微笑み、腕を解放する

てゐもにこりと笑い、腕を降って飛び出していく


「いってきま~す♪」

「はい、いってらっしゃい」


まるで母親のように手を振り返す

そしててゐの姿も見えなくなった


「・・・さて、こっちはこっちで対策とらないとね」


振り返るとウサギ達がギラギラした目でこちらを見ている

また抱擁波動にやられたのだろう


「さぁいらっしゃい、うどんげで試そうとした新薬がたくさんあるのよ~♪」


永琳の笑顔に、ウサギ達の間で旋律が走った














「・・・こ・・・・こう・・・もこう・・・」


誰かに呼ばれてる


「・・・妹紅・・・おい、妹紅!」

「・・・うぅ・・・?」


ゆっくりとまぶたを開く

全体的に青い服と、胸元の赤いリボンが見える


「・・・慧音?」

「ようやく起きたな」


むくりと横たわっていた上体を起こす


「めずらしく今日は大して怪我もしてないな。というか服すら破れていない」


慧音にそう言われ、自分の姿を確認する

いつもの戦いの後に比べ、節々に痛みなどは殆どなく、戦う前となんら変わりなかった


「まさか今日は二人でお昼寝か・・・?」


慧音が横を指差す

そこには輝夜が寝息を立ててぐっすりと眠っていた


「なっ!だれがこいつなんかと昼寝するか!!」

「ならあまり大きな声を出すな、向こうが目を覚ましたら面倒だぞ」


腕を組んで慧音はふぅとため息をつく


「まぁ、何があったかは知らんが終ったならもう帰ろう」

「いや待ってほしい。折角こいつの寝首をかけるチャンスだ」


そう言って妹紅はにやりとしながら輝夜に火鳥術をかまそうとする


「お前・・・それは卑怯過ぎないか?」

「勝負に綺麗も汚いもない、こいつの場合はな」


そう言って何か呪文を唱えると、さらに両腕から激しく炎が巻き上がる

そしてまさに術が放たれんとした瞬間、ふと妹紅の動きが止まる


「・・・やっぱやめた」


ボシュゥウ、と出掛かった火鳥が引っ込む


「おお、やはり正々堂々が大事とわかったんだな」

「まぁ、それもあるけど、なにより今はなぜか戦う気が起きない」


それだけ言うとすたすたと妹紅は歩いていってしまった

その寂しげなようなスッキリしたような背中を慧音はじっと見つめる


「なんだか人里のほうも様子がおかしかったが、こっちも妙な感じだな・・・」


ぽつりとつぶやき、慧音も妹紅の後に続いた














「どうやらそいつも波動にやられたようね」


うどんげの目の前では黒い羽を持つカラス天狗が氷精に抱きつかれて困り顔をしていた


「あ、うどんげさんいいとこに。ちょっとこの子取るの手伝ってください~」

「うーん、それにしても波動の効果の発動きっかけが『   』だったとは・・・」

「聞いてますか~?この子がっちりとくっついちゃって、しかも冷たくて困ってるんですけ・・・はっ、はーっくしょん!」


湖に大きなくしゃみが響いた



ことの発端は5分前に戻る

湖まで飛んできていたうどんげは、チルノと文がなにやら口論しているところに遭遇していた


「相変わらず大がま相手に負け越しのようですね~」

「うっさいな!あたいが本気になればあんな奴!」

「そして口だけなのも相変わらずっと」


さらさらーっと手帳に筆を走らせる


「むきゃー!あんな奴、サイキョーのあたいが勝てないわけがない!」

「本当に勝ちたいんですかぁ?ここまで負け続けてるとその本心すら怪しいですよ」

「勝ちたいわよ!勝ちたい勝ちたい勝ちたーーーーい!!!」

「は~そして『   』だけが空回りの巻っと」


その文の言葉に空から見ていたうどんげははっとする

今いった言葉・・・


「う、うわ!なんですか急に!」


文の叫び声

見ればチルノが文に抱きついていた。抱擁波動の症状だ

これはどうやら間違いないようだった




そして今現在


「たしかに私がウサギ達に抱きつかれた時も・・・」



考えるほどしっくりとくる結論だった

あらゆる『   』を抱擁欲求だけに変換する波動

それは様々な波動を見てきたうどんげにも全く未知の波動だった

しかし少なくともわかるのは、すでに人間が大勢いる人里付近は大混乱になっているということだ


「とりあえず波動の解析はできたし、後は根本を叩くだけね。急がないと」

「う、うどんげさ~ん、これ・・・」


文が渋い顔でチルノを指差す


「ああ、しばらくすれば勝手に離れるからほっときなさい」

「えぇ?ど、どういうことですか?」

「じゃ私もういくわ」

「あぁ、そんな!・・・はーっくしょん!!」


大きなくしゃみを横目に波動のたもとを目指し飛び上がる

はぁーっ、と文はその姿を恨めしそうに見つめる


「この子のネタはしばらく凍結しますか。氷精だけに」


辺りの気温が一気に5℃ほど下がったのは気のせいだろうか

そしてまさか絶好の特種を逃してしまったとはこの時の文は知るよしもない











場所は変わり、ここは全てが紅色の館の内部

その無駄に広い廊下をコツコツと一人のメイドが歩いてゆく


「フランお嬢様~お昼をお持ちいたしました」


部屋の前でそう言うと、どうぞと中から合図が聞こえてきた

失礼しますと一礼し、ドアを開ける


「お昼はいい小麦粉が入ったのでアップルパイを焼いてまいりました」

「へぇ、いい匂いね」


フランと呼ばれた奇怪な羽を持つ少女はすぅっと匂いを吸い込む


「ええ、それといつも通り最高級の紅茶も」


にこりと笑い、メイドの咲夜は部屋のテーブルに昼食の準備をする


「さぁ冷めないうちに」


椅子を引き、席へとフランを誘う

が、フランは動こうとしない


「どうしましたかフランお嬢様?」

「ねぇ咲夜、今日少しだけでいいから外に出ちゃだめ?」


それを聞き、咲夜は顔色を変える


「なりませんお嬢様、遊びたいというのならお屋敷の中でこの咲夜がお相手を・・・」

「今日だけでいいの!ちょっと外の様子がいつもと違う気がするから見てみたいの」


いったいどういうことなのだろうか

前にあった脱走経験で懲りたお嬢様が必死に外出の許しを得ようとするほど外に異変が?


「・・・だめです、お屋敷から出ないことがレミリアお嬢様ともお約束のはず」

「咲夜のケチッ!外に行かせてよ!!どうしてもだめっていうなら・・・」


傍らからレーヴァテインを取り出す

まずい、暴れる気だ

はぁ、とため息をつき、咲夜も足に取り付けていたナイフを構える


「お嬢様、失礼ながら全力で止めさせてもらいますよ」

「できるかしら、私を止めることが!」


そう言ってフランが大剣を振りかぶった瞬間



―――― ピキィーッン ――――



「うっ!?」


何かがすごい速さでフランの頭の中を通っていった

思考が一瞬止まり、そのまま手に持っていたレーヴァテインを床に落としてしまう


「・・・お嬢様?」


拍子抜けした感じで咲夜も戦闘態勢を解く

見ればフランの頬がほんのり赤く染まっていく


「・・・ね、ねぇ咲夜」

「な、なんですか?」


かわいらしく手を合わせ、くるくると人差し指同士を回すフラン


「外出の件はもういいわ・・・その代わり、その・・・少し抱きついても・・・いい・・・?」

「・・・え?」


恐ろしく数秒前と状況が一転したため、さすがに完璧瀟洒なメイドも面を食らった


「あ、あの、抱きつかせたら外出はあきらめると・・・?」


こくこく


「・・・実は油断させて、なんてこともないですか?」


ぶんぶん


「・・・わかりました」


そう言って咲夜はナイフをしまい、両手を広げる


「さぁどうぞお嬢様」


ぱぁっ、と表情を明るくさせたフランが飛び込んでくる



本当になにがどうなっているのやら

しかしこれで事態が収まるなら安いもの。むしろ役得では?

あのフランお嬢様に抱擁されるなんて夢のようじゃないか

そう、フランお嬢様の・・・



抱・・・擁・・・?



飛び込んでくるまでの短い時間、そこまで考えて咲夜は反射的にフランをかわす

目標が変わったフランはそのまま後ろの柱に飛び込み、そしてその柱を抱きしめ


バキバキ!メキャキャキャキャ!


木っ端微塵に粉砕した

危なかった。危うく世にも奇妙な抱擁粉砕死なるものを経験するところだった


「あ~さくやぁ、なんで避けるのよ~」


フランが半泣きでこちらを見る


「いやその・・・フランお嬢様の抱擁は私めが許されるような代物ではないと思いまして」


間違ってはいない。肉体細胞が全否定をしている

苦笑いと冷や汗が止まらない


「やはりここはレミリアお嬢様になさるのがよいのではないかと~・・・」

「嫌!いつもやさしくしてくれる咲夜がいい!」


ああ、なんと嬉しいことか。メイド冥利に尽きるお言葉だ

だがそのご褒美はあまりにも刺激的すぎる


「大変ありがたいのですが~その~なんというか無理というか~・・・」

「さ~くや~♪」

「わぁっ!」


後に咲夜は語る

この日ほど幸せで生きた心地のしなかった日はなかったと・・・












「ああ、五体満足ってすばらしいな・・・」


なんともうつろな目で魔理沙は天井を見つめる


「悪かったわ、なんか自分でも抑えられない衝動だったのよあれは」

「ご、ごめんね魔理沙・・・」


霊夢とアリスが口々に謝罪する

布団に寝転がりながら魔理沙は軽く寝返りを打つ。その動作だけで節々痛む


「なんかまた異変が起きてるなこりゃ」

「みたいね。まぁ迷惑かけた身だから、私がとっとと行って解決してくるわ」


そう行って霊夢が出かける支度を始める


「あてはあるのか?」

「ま、大体予想がつくわ。勘は鋭いほうでしょ私」

「じゃ、私も一緒に・・・」


アリスが立ち上がろうとする


「あんたは魔理沙見てなさい。あ~・・・でも今回の場合はむしろ一人にさせたほうが安全かしら」


その言葉に魔理沙が口を出す


「いや、多分もう大丈夫だろう。原因はわからんがさっきみたいな感じは微塵もしないし」

「魔理沙・・・」


あれだけのことをして信用してもらえることにアリスは少し感動した


「そ。んじゃ行ってくる。何か食べたかったら台所のもの使っていいわ」


それだけ言って巫女は音もなく飛び立っていった

残された二人の間にしばし沈黙が流れる


「魔理沙」

「ん~?」


眠そうな声で返事が返ってきた


「ありがとう、残ってもいいって言ってくれて」

「別に大丈夫と思ったからそう言ったんだ。危なそうならとっととどっかに行ってもらってたぜ」

「うん、それでもいい。ありがと」


にこっとアリスが笑う

鳥居の前でみた不気味な笑顔がウソのようである


「あ、そうだ魔理沙お腹空いた?ご飯作ってくるわ」

「ん?あ~そうだな、言われてみるとなんだか腹も減って・・・」


そこまでいった瞬間



―――― ピキィーッン ――――



「っ!?」


魔理沙の脳を何かが駆け巡り、思わず息を詰まらせる


「ど、どうしたの・・・?」


心配そうにアリスが顔を覗きこむ

微動だにしない魔理沙。まさかさっきのダメージで何かが・・・

そう思った瞬間にすごい力で何かがアリスの首に巻きついた。

魔理沙の腕だ。


「えっ、ちょ!?」

「あーりーすぅ・・・」


捨てられた猫のように寂しそうな声をあげる魔理沙

が、腕の力自体はどんどんと増していく

さっきまで寝返りもつらそうだった人間の力ではない


「も、もしかしてこれが例の異変の症状・・・?」


耐え切れずアリスは魔理沙に倒れこむ

すると一層腕の力が強くなった


「いたた、魔理沙いたいってば」


どうやって抜け出そうかとアリスは少し悩んだ

が、


「はぁ~・・・」

「うっ」


とても満足そうな魔理沙にその気も失せた

とりあえずお互い苦しくないような姿勢にだけなる


「・・・まぁ、私も迷惑かけたしね。多少は協力するわよ」




そして数分後


隣からは健やかな寝息が聞こえてきた

少しのはずだったアリス添い寝は大幅に伸びることとなった













「うどんげどっちいったんだろ~」


ふよふよと辺りを見回す詐欺師ウサギが一匹


「折角お師匠様にお許しもらったのにこのままじゃうどんげにおいしいとことられちゃう~」


目的がすっかりいいとこ取りに一転していた


「あら、あんた永遠亭のうさぎじゃない」

「ほわ?」


振り返ると霊夢がえらそうな態度で後ろを飛んでいた


「あー巫女だ。ねぇねぇ、うどんげ見なかった?」

「あ~?あんたらウサギ同士ならテレパシーとか使えないわけ?」

「そんな奇抜な能力は一般のウサギにはございません」


はぁ、とがっかりして先に進もうとするてゐ


「ま、私はこれから変な異変の解決にいってくるから見つけたら教えてあげるわ」

「え、事件ってもしかして急に抱きつきたくなるあれ?」

「知ってるようね。そう、それ」


これはチャンスかもしれない

このまま闇雲に動き回るよりは勘の鋭い巫女についていけばうどんげにも会えそうだ


「ねぇ、なら私も連れていって」

「えぇ?嫌よ、なんであんたを」

「お願いお願いおねがーい!」

「やーよ、あんたは仲間探しだったんじゃないの?」

「結果的にそこに繋がるの!」


必死の説得が続くが、巫女の反応はしらーっとしたものである

このままではラチが空かない


「・・・う!!」


突如てゐがうめき声をあげる

そして巫女めがけてスパイラル抱擁を繰り出す


「ちょおっ!なによ!?」

「ううう・・・急に抱きつきたくなってしまいまして・・・」

「・・・うそでしょそれ」

「いえいえ、もうそれはそれはくっついていないと頭が割れそうでして・・・」


もはやこうなると巫女の負けである


「はぁ・・・わかったわよ、ついてくればいいわ」

「おお、それは助かります」

「もう離れなさいよ」


が、いまだてゐの腕の力は緩まない


「まだ抱きつきたくてしょうがないのでこのまま現場まで・・・」

「夢想封印と封魔陣、どっちがいい?」

「おっと急に気分がよくなった!さぁ行きましょう霊夢さん!」


やはり同行させるべきではなかったと後悔する霊夢だった












「・・・ここね」


怪しげな雰囲気の屋敷の前で仁王立ちのうどんげ

中からは普通の人や妖怪には見えないだろうが大量の波動が溢れ出してきているのがわかる

さてここからどうしたものか

こっそりとどこかから潜り込もうか。はたまた中の者を外におびき出してみるか・・・

色々考えた末にうどんげが出した結論は


「たのもー!!」


まさかの正面突破だった

こそこそするより正々堂々かたをつけてやろう。さながらヒーロー気取りな展開


「はいはーい、どちらさまー?」


勢いに反して中から出てきた人物に拍子抜けを食らう

それは九尾の狐の化身だった


「ん?あなたは・・・」


狐の化身は目をきょとんとさせる


「あ、あなたは確か紫さんの式の・・・」

「そういうあなたは・・・確かうどんげさん?」


驚いた

まさか事件が知り合いによる犯行だったとは・・・


「あなた、ここに一人で住んでるの?」

「いえ、紫様もいらっしゃいますよ」

「ならちょっと呼んで来て。話がある」


いくら知り合いとは言え、甘い顔はできない

強気に藍へ要求を出す

藍は眉を八の字に歪める


「多分無理。今は寝てますから起きないと思う」

「いいから起こしてきて、この家から怪しい波動が駄々漏れしてるのよ」


そのうどんげの言葉に藍は再度きょとんとする


「波動?もしかしてそれって」


ぴっ、と九尾の式は奥の居間においてある怪しげな装置を指差す


「あれから出てるんじゃない?」

「ああ!あれよ!」


そこからは激しく波動の流れが噴出していた


「ああ!ちょ、勝手に・・・」


ついに突き止めた元凶に、うどんげは藍の静止も聞かずズカズカと乗り込んでいく


「コレさえ止めれば・・・」


そう言って有無を言わさず装置に弾幕を打ち込もうとする

が、その刹那体が動かなくなる


「なっ!」

「いけませんよ~、おいたは・・・」


声は後ろにいた九尾の狐からだった

おかしなことに先ほどより明らかにそれから発せられる妖気がまがまがしいものになっている

浮かべる表情はにこにことしているが異様に威圧感がある



「あなた・・・藍さんじゃないわね?」


この感じはどこかで体験したことがある


「クスクス・・・ばれちゃったようね」


パァッ、と藍の体を光が包み込む


「久しぶりね、うどんげさん」


すぐに光が消え、豪華なドレスを着込んだ人物が現れる


「あなただったのね・・・紫さん」


「ふふふ・・・こんなとこで会えるとは奇遇ですことね」


今回の事件の主犯者は、律儀な挨拶と共ににこりと微笑んだ











ふよふよ漂う黒髪のピンクと紅白


「ねぇねぇ、ほんとにこっちで合ってるの?」

「ええ、私の勘がそう言ってるの」

「でも気のせいか行ったり来たりしてない?」

「気のせいよ」


本当に巫女についてきてよかったのかと、てゐは一抹の不安を覚えた














「先ほどは藍の格好で失礼しました。私少々臆病なところがありまして・・・」


紫はクスクスと笑いながらそう言う

まぁ、当然ウソだろう

だれか来たときに油断させる作戦だったのだ

まんまとしてやられた


「あなた、こんなことをしてどうしようっていうの!」


体が動かせないため視線だけを紫に向けるうどんげ

肝心の弾幕も放つことができない


「うふふ、気に入っていただけましたか?私が作った【幸せ波動発生装置】」

「【幸せ波動】!?」


ネーミングセンスもさることながら、それをけろっと言ってのける主犯に少々度肝を抜かれた


「そうです。この装置には特殊なある感情に反応してそれを抱擁という形に変える仕組みなのです」

「ええ、知ってるわ。ここに来る途中でこの波動の分析はすでに出来ている」

「あら、それは研究熱心なことで。ではその特殊な感情というのもご存知で?」

「ええ、それは・・・」


自分がウサギ達に引っ付かれた時、彼女らは休みがほしいと愚痴を漏らしていた

湖であったチルノは大がまに勝ちたいと叫んでいた

それらの感情から来る答えは一つ


「『欲望』」

「ご名答、さすがここを突き止めるだけのことはあるわね」


実に楽しそうに紫は微笑む


「でもなんでこんな装置を作る必要があったの。みんな迷惑してるのよ!」

「なぜってあなた、抱擁はすばらしい物じゃないですか、うふふ」

「はぁ?」


紫は近くの壁に寄りかかりながら語りだす


「前に読んだ本に載っていたのです。抱擁は世界を救う・・と」

「ほ、本で読んだって・・・」


相手の完全に自分勝手な理論に力が抜けるのがわかった


「この幻想卿は実はとても精密なバランスで保たれている。それはとても怖いこと」


紫がこちらに近づいてくる

そして動けないうどんげの顎をしなやかな人差し指でなぞる


「もしも欲望に負けた人間や妖怪が何かの拍子にそのバランスを崩そうするかもしれない」


うどんげはきっ、と真っ赤な目を逸らさず、紫に向ける


「だから、先手を打って欲望を変換する装置を作ったと?」

「その通り、抱擁という平和的欲望解消法により幻想卿は未来永劫平和なのです」


くるっ、と紫はターンしてみせる


「私は幻想卿を最も愛する一人ですから」


そしてにやりと少々いやらしい笑みを浮かべた


「はぁ、それで結局みんなの不満がガンガン溜まってるようじゃ意味ないわね」

「!!」


突如紫の後ろから声がする

主犯は驚いて振り返るとそこにはうどんげの姿があった


「そんな、かなしばりが解けたっていうの?」


しかしそれは違った

うどんげのお得意の幻覚能力である

じっと会話中紫を見つめていたのでその隙はいくらでもあったのだ


「ふふ、どこをみてるの、こっちよ!」


そして慌てた紫がかなしばりの術を解いたため、本物のうどんげも紫から距離をとることが出来た


「やるわね・・・さすがは月のウサギ」

「お褒めに預かり光栄。大人しくその装置を止めなさい!」

「あなたもわかってらっしゃるでしょ?こういう時の決着方法・・・」

「そうね、じゃそれできっちり決めるわ」


互いが呼吸を整え、懐からスペルカードを取り出す




「「弾幕勝負!!」」
















「ねぇねぇ、やっぱりさっきのところは右だったんじゃ・・・」

「うっさい、ならあんたはそっちにいけ」


黒髪コンビは果たして事件に間に合うのか怪しいところだった






二話目~。急に少しシリアス展開混じったり。
というかこの小説タイトルが意味不明ですね。
本人もなんでこんなタイトルにしたか不明・・・
ちょっと一気に詰め込みすぎた感がありますが、次回で終わりの予定
パク
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コメント



0.250簡易評価
3.60名前が無い程度の能力削除
少々荒削りな感じはしますが、好きな話です。
期待してます。
5.無評価脇役削除
マリアリはいいものだ・・・しかし本物の藍はどこに?
6.無評価名前が無い程度の能力削除
>この幻想卿は実は
>幻想卿は未来永劫
>私は幻想卿を最も