Coolier - 新生・東方創想話

謎の少女から聞いた話

2007/08/26 10:51:59
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「最近ね、幻想入りしてくる物がどんどんと増えてきたような気がするのよ」

沈みゆく夕日を見ながら、しゃくりと萃香を一かじり、さすがは鬼だ、甘くもなんともない。

「紫様、西瓜と萃香の境界を弄くっちゃ駄目ですよ」
「はいはい」

甘くない西瓜を食べても美味しく無い、故にぽいちょと投げ捨てる。

「紫様、ポイ捨ては駄目ですよ、鬼は神社に捨ててください」
「そうしたいんだけどねぇ、スキマでいいでしょ?」
「幻想郷のどこかに落ちるようにしてくださいよ」

夕日に向かって覚えてろ紫ぃぃ~と言う声が木霊した気がするが、きっと鬼のせいだろう。

「それで、幻想入りが何か問題でも?」
「問題なのよ」

隣に座る藍の尻尾をもふもふしながら、ふうと溜息。

「この前無縁塚に行ったらね」
「はい」
「バイクに変形する氷の女王様がいたのよ」

とすん、と小気味良い音がした。

「藍、耳に尻尾を刺さないでくれる?」
「紫様、反対側まで尻尾を通さないでください」

しゅるしゅるしゅると反対側の耳から尻尾が出てくる、
日本、ルーマニア、ポルトガルと万国旗を吊り下げながら。

「はー、頭の中を掃除するには藍の尻尾は最高ねぇ」
「……雷化!」
「みぎゃああああああああ!!」

ほんの一瞬、紫の骨が見えた、とてつもなく恐ろしかった。

「いきなり何をするのよ!! あなたどこの白面!?」
「中国ですが」
「紅魔館の門番にあなたをあげた覚えは無いわよ?」
「一昨日籍を入れました」
「えっ!?」

裾から取り出された一枚の紙には婚姻届の文字が。

「……嘘! 嘘よ! 大きくなったら私のお婿さんになってくれるって言ってたじゃない!!」
「紫様より彼女のほうが魅力的だったのです」
「それじゃあなたのプロポーズを待ち続けた私はただの道化だったというの!?」

両手で顔を覆い嘆き悲しむ紫、そんな彼女を見て藍は裾からもう一枚の紙を取り出した。

「紫様、これをご覧ください」
「ひぐっ……何よ、何なのよ」
「離婚届です」
「らぁぁぁぁぁぁん!!」

涙で顔をぐじゃぐじゃにした紫が藍の胸元へと飛び込んでいく、
藍は微笑を浮かべながら両手を前に差し出して紫を持ち上げた。

「トゥイージー!!」
「ぐはぁっ!!」

当て身投げである。

「はぁぁぁぁ……腰が、腰がぁぁぁ……」
「腰痛ですか? いい医者が竹林にいますよ」
「なんでギースなのよ……!」
「初代ギースです」
「だから何よ!」

紫もこのままではくやしいので起き上がり様に攻撃してみた、
本日二度目のトゥイージー! が夕日に木霊した。

「ここですか?」
「あー、そこそこ、もうちょっと強めでお願い」

紫の腰に乗っかってぐりぐりとマッサージ、
夕日も大分沈んできた、そろそろ橙が帰ってくる頃か。

「そろそろ橙ちゃんも私の式にしちゃおうかしら?」
「それは聞き捨てなりませんね」

紫の一言でほんの少しだけ背中への圧力が強くなる。

「あら? でも強くなるわよ?」
「橙は私が育てます」
「ナイスバディの美女にもなるわよ?」
「橙はつるぺたがいいんですよ」

ふと背中への圧力が消える、紫がゆっくりと身を起こせば、藍もその背からどいた。

「つるぺたがいいですって?」
「ええ、つるぺたこそ最高ですね」
「笑わせるわね、幻想郷でも特に絶世のボディを持つあなたがつるぺた好きだなんて」
「ふ、コレを見てもいえますか?」
「え?」

そう言って藍は胸元から二つの物体を取り出した。

「そ、それは……!」
「紫様ならコレが何かお分かりでしょう?」
「それはまさしく鳥王堂のチキンまん!!」
「食べます?」
「いただくわ」

一かじりすると、鶏肉とタマネギのいい臭いが鼻を駆け抜ける、
そして二人の脳内には大量飼育されているミスティアの姿が頭に浮かぶ。

「お姉ちゃん! いっちゃやだよ!!」
「ごめんなさい、でもね、これは私達の宿命なの」
「嫌! ずっと一緒にいるって言ったじゃない!」
「あなたもいつか理解するわ、私達は食物連鎖の下位にいることを……」
「何をしている! 幽々子様がお待ちだ! 早く来い!!」
「やめてっ! お姉ちゃんを連れて行くぐらいなら私を連れて行って!!」
「な……何を言っているの!?」
「だって私が食べられればおねえちゃんは食べられないんでしょ!? そうでしょ!?」
「ふざけた事を言わないで! 少しでもあなたには長生きしてほしいのに!!」
「そんなの関係ないよ! お姉ちゃんがいなければ私生きていけないもん!!」
「ミスティ……」
「お姉ちゃん……」
「残念だが幽々子様は二人前を食する事をお望みだ」
『ちぃぃぃぃん!!』

紫の目からとめどないほどの涙が溢れてきた、あれほど美味しかったチキンまんなのに、
今は何故か塩味しかしない、二匹はいったいどうなったのだろうか、天国で再び会えたのだろうか。

「しくしく……酷い話よね、藍」
「ミスティア!! 降りて来て爆弾を離すんだ!! まだ……まだ他に手があるはずだ!!」
「藍っ?!」
「お前が犠牲になることは無い! 降りて来い! ミスティアアアアアアア!!」

その時、やや薄暗くなりはじめた幻想郷の空で、花火が一つ大輪を咲かせた、
その花火はオレンジ色だけの粗末な花火だったが、何よりも美しく、何よりも悲しい花火だった。

「思い込みも度を過ぎると実現するのかしら?」
「うう……ミスティア……」
「ほらほら、元気出して~」
「どうして……何故だ……」
「……元気だすにゃ~♪」
「フシィィィィィ!!」
「フニャッ!?」

ちょっとお茶目をみせたら全力で敵意をむき出しにされたマヨヒガの夕方と夜の隙間。

「フシィィィ……」
「ま、負けないわよ! フシャァァァ!」
「フシャッ!? フシィィィ!!」
「フシャオウ!!」
「フシャシャシャシャ!!」
「フシャシャビバギャシャシュベシィシャキシャ!!」
「ブシュベシャシャバショシュビシェベベシュ!!」
「フシャーッ!!」
「ミャッ!?」
「ミャ~……」
「ミャミャッ!? ミャァー!! ミャァー!!」
「ミャー!!」
「ミャーッ! ミャッ……ミ、ミヤァァァォウ……ミャァァァァァァァァォウ……」

ふとその頃、マヨヒガの敷地内に橙と彼女に懐く猫達の姿が。

「はー、今日は楽しかったね!」
「ミャー!(イエスマム!!)」
「ミャー!(野郎ども警戒を怠るな! 遠足は帰るまでが遠足だ!!)」

前方警戒兵三匹、後方にも三匹、左右を十匹ずつの猫が縦列隊形で固める、
そう、彼らは屈強たる猫兵士、藍が橙防衛の為に鍛え上げた最強の猫ソルジャー。

「……ォォォゥ……」
「あれ? 誰の声かな?」
「ミャーッ!!(いかん! この声は第三種交尾声だ!!)」
「ミャミャッ!!(まずいぞ! 猫又に生まれ変わって間もない橙様には刺激が強すぎる!!)」
「ミャオウ!!(どうにかして我々で橙様の気をそらすんだ!!)」
「ミャミャッ! (しかしどうやって!?)」
「……ミャッ!(お前ら全員脱げ!!)」
『ミャーッ!?(そんな無茶な!?)』

そして猫同士による毛の抜きあいが始まった、目を血走らせながら
容赦なく毛をちぎりあう猫たちの姿に、橙はただ震えながら見ている事しか出来なかった。

やがれ太陽は完全に沈み、幻想郷に夜が訪れた。

「どうしたんだ橙、何か怖い事でもあったのか?」
「ひぐっ…ぐすっ、藍様……」
「はぁはぁ……ほら涙を止めて……」
「藍、あなたこそ鼻血を止めなさい」

紫にもっともなツッコミを受けると誰もが無性に悔しく感じるのは何故だろうか。

「で、紫様、橙に何をしたのですか?」
「え? 私?」
「つるぺたを好まぬ紫様しか犯人はおりません」
「それは失礼ね! 私はつるぺたもナイスバディも好きよ! 後者に大が付くだけで!」
「黙れ太ましい!!」
「酷っ!!」

間接的かつ直接的に非難しております。

「ふ、太ましくなんかないもん! ぷにぷにしてるだけだもん!」
「黙れデブ」
「もっと酷い!!」

直接的かつ心を抉るように非難しております。

「うわぁぁぁぁん!! 藍が作る料理が美味しいからいけないのよー!!」
「むっ、上手い言い訳を考えましたね」
「だから今晩の料理は私が作ってやるー!!」
「何ぃぃぃぃぃ!?」

その言葉を聞いた時、藍の脳裏にかつての記憶が蘇った、
かつて紫の式になりたてだった頃の記憶が。

「はーい、藍ちゃん、ゆかりんお手製のご飯よ~」
「はぁ」

食卓の上に並ぶ色とりどりの食事、七色の焼き魚に真っ黒のご飯、
緑色の吸い物に何かを噴出している漬物、極めつけは動く箸。

「(これは……食べたら死ぬ!!)」
「どうしたの? 美味しいわよ?」
「は、はい」

紫様は何かに期待しているような表情でこちらを見ている、
逃げ場がないと悟った私は意を決して味噌汁の茶碗を手に取った。

「そぉい!!」

作戦は成功した、紫様は悲鳴を上げながら転げまわっている、
今の間に川にでも食事を捨ててこよう、というかもう捨ててきた、
後は紫様にあまりにも美味しかったのでもう食べ終わりましたと伝えるだけだ。

「そしたら川の下流にある京とか言う町で流行り病が起きたっけなぁ」
「藍様ー?」
「ん? おお、どうした橙」
「紫様がご飯できたってー」
「おーまいがっ!!」

三分後、ちゃぶ台を囲んで主と式と式の式。

「はーい、藍も橙も一杯食べてね~」
「そぉい!!」
「そぉい!!」

それは見事なコンビネーションだった。

「ほあっちゅぁぁぁぁぁ!!」
「橙! 今の間に捨ててくるんだ!!」
「はい藍様!!」
「何かしらこの熱さはまるで何かを思い出せそうなでも熱いー!!」
「そぉい!! そぉいそぉいそぉいそぉい!!」

藍はかけ続けた、橙は自分と違って捨ててくるのに時間がかかる、
その時間を稼ぐ為にかけ続けた、金銀に煌く味噌汁を、おたまで、泣きながらかけ続けた。

「…………」
「はぁはぁ……」

やがて紫は動かなくなった、それはまさしく藍が紫を超えた瞬間であった。

「…………そおい!!」

一応、お鍋に残っていた味噌汁を全部かけておいた、もったいなかったようだ。

「紫様、静かにお眠りください」

藍は紫の横に座り込むと、そっと両手を合わせて祈った、
マヨヒガの脅威は去ったのだ、もはや平和を脅かす物は何も無い。

「藍様ー! 捨ててきましたよー!!」
「よし、よくやったぞ橙、それじゃ行こうか?」
「え? 何処にですか?」
「私とお前の二人で暮らせる、どこか幸せな所にさ」





今、人里で賑わっている一つのお店があるの、
豆腐屋きつねこ、美人の妖狐とかわいい猫又の少女が切り盛りするお店よ、
そこの油揚げは特に絶品らしいわ、人里に出向いた時には立ち寄ってみるといいかも、ね?
後日、紅魔湖の妖精達の間で八意永琳ですらどうにも出来ない
謎の疫病が発生したが、そこは幻想郷、やっぱり大変な事になった。
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.1820簡易評価
5.無評価脇役削除
ぬう、この話を書いた亭主を呼べ!!!!
どうすればその夢のようなお店にいける
教えてくれ!たのむ
8.100名前が無い程度の能力削除
はじめの話はなんだったんだよwww
10.100名前が無い程度の能力削除
紫何食べてんのwwwwwww
12.60イスピン削除
あぶないよー、作者との間の境界をいじったかのような料理、二重の意味であぶなすぎるよー。
っていうか、箸が動くって何やったんだよー、ゆかりーん!
16.70名前が無い程度の能力削除
パタリロ!のような無節操な話の流れに吹いたw
23.無評価名前が削除
面白かったが採点不能だ!!斬新だ!
37.100名前が無い程度の能力削除
そぉい!
39.80名前が無い程度の能力削除
最初の話はどこいったんだ!