Coolier - 新生・東方創想話

流星群

2007/08/19 22:32:49
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 熱気を帯びた、乾いた風に揺らされ、縁側の風鈴は、ちりん、とかわいらしい音をたてる。
 その縁側に、私と魔理沙は、体を文字どおり大にして寝そべっていた。

  「・・・・・・暑いぜ」
  「・・・・・・暑いわ」

 雲のない空からの日差しは強く、セミの声はやかましく、そして、なにより暑かった。

  「・・・・・・・・・暑いぜ」
  「・・・・・・・・・暑いわ」
  「そうねぇ、確かにあついわ」
  「・・・・・・って、紫、急に出てくると、びっくりするじゃない」
  「びっくりだぜぇ・・・」
  「あら、ごめんなさい」
  「びっくりだぜぇ・・・・・・」

 私と魔理沙の間に、いつの間にか、スキマ妖怪、八雲 紫も寝そべっていた。

  「で、何の用なの」

 私は、めんどくさそうに言った。

  「あら、霊夢はせっかちねぇ・・・・・・。まぁ、いいわ。ねぇ、あなた達、明日ってどういう日か知ってる?」

 紫は、何か秘密を言いたくて仕方ないという表情だ。

  「ん、そうねぇ・・・・・・宴会なんか、明日やる予定あったかしら?」
  「私の誕生日会でもいいぜ」
  「あんたの誕生日会はずっと前にしたでしょ」
  「何度あっても、いいものだぜ」
  「そうだけど・・・・・・」
  「はぁ・・・・・・あなた達、そうじゃなくて、空のことでよ」

 紫は、少しがっかりしている。

  「空?雲一つなく、これぞまさに、日本晴れ、というやつだな。だが、それがどうした?」
  「昼の空じゃなくて、夜の空のことよ」
  「そうねぇ・・・・・・確か、新月だったかしら」

 私は、少し考えてから言った。

  「それもそうだけど・・・・・・はぁ、もういいわ。明日は、流星群が一番綺麗に見れる日なのよ」
  「龍凄軍って・・・・・・なに?どっかの新しい軍隊かしら」
  「霊夢・・・・・・お前、流星群も知らないのか?」

 二人は、あきれてこちらを見ている。

  「うるさいわねぇ、知らないわよ、龍凄軍なんて」

 私だけ知らないのは、ちょっと悔しかった。

  「霊夢、流れる星が群れを成すで、流星群よ。そんな物騒な何とか軍じゃないわ」
  「つまり、流れ星がたくさん見れるってことだ」
  「流星群の期間には、ちょっと前から入ってたんだけどね。それが、明日の丑三つ時に一番多く見れるらしいの。これって、すてきじゃない」

 紫は、ひどく楽しそうだ。

  「それは、なかなかすてきね」
  「でしょ、だから、今日の夜、みんなで流星群を見るわよ」
  「紫・・・・・・おとといに宴会したばっかりよ」
  「あら、宴会じゃなくて、天体観測よ」

 紫は、すました顔だ。準備をして、片付ける側の事なんて、これっぽっちも頭に無いだろう。

  「わかった、連絡はこの魔理沙様にまかせな」

 いきなり立って、魔理沙は勝手に話を進めた。こいつもか。

  「まかせたわ。あと、だからみんなに今のうちに昼寝でもしといてって言ってねぇ~」
  「おう、私もさっさと連絡して、さっさと寝るぜ。それじゃ、じゃましたぜ」

 そう言うと、魔理沙はすばやく箒に乗り、あっという間に視界から消えてしまった。

  「あなたも早く寝なさいよ」
  「うるさい」
  「あら、一人じゃ寝れないの?添い寝でもしましょうか?」
  「私が、あんたを眠らせましょうか?」
  「あら、怖い」
  「さっさと帰れ、このばか」

 それじゃあ、またね、と言い、くすくす笑いながら、紫はスキマに戻っていった。

  「はぁ・・・・・・しかたがない、か」

 とりあえず、私も寝ることにした。









  









  「それで、こうなるわけね」
  「すごいだろ、私の腕は」

神社の前には、紅魔館、白玉楼、永遠亭のいつもの連中に加え、妖精やら記者やら人形遣いやら鬼やら騒霊やらでいっぱいだった。
空間はいじられ、広くひらけた場所には、ここにいる全員が入っても、ゆとりがまだあるような大きな敷物がひかれていた。

  「フラン、この前みたいに、流れ星を壊したらだめよ」
  「うん、わかったぁ~」
  「ねぇ、永琳。妹紅とあの半獣は来てないの?」
  「なんでも、姫様と一緒に星を見るくらいなら、死んだほうがましだと言って、来なかったらしいですよ」
  「あら、どうやって死ぬのかしら」
  「幽々子様!!夜雀は食べちゃだめって、言ってるじゃないですか!!」
  「あら、妖夢、だいじょうぶよ、ちゃんと火に通すから」
  「ひぃ~」

  「・・・・・・うるさいわね」
  「カオスだな・・・・・・」

セミの声より、こっちの方が騒々しい。
紫が、注目~、とか言いながら手をたたいて、のんびりと口を開く。

  「じゃあ、そろそろ、見ましょうか。はい、みんな、寝ながら星を見ましょう」

みんな、いっせいにがさごそ動いて、敷物の上に寝る。
視界には、一本も木々がはいらなかった。
なるほど、空間を広げたのは、こういう理由もあるのか。

  「なるほど、これなら首も疲れなくて楽だな」
  「まぁ、確かにそうね」

腕を枕にして、私は、空を見た。

赤銅、乳白、黄、淡緑・・・・・・。
星々は、本当に様々な色と異なった光の加減で、真っ黒な闇にささやかな彩りを添えていた。
星々は、静かで、華やかだった。
月の光がなくてよかった、と私は思った。


  『『『あっ・・・・・・』』』


一瞬だった。白い光は煌めき、落ちた。
まばたきしていたら、見逃していただろう。



 静寂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  「・・・・・・これで、終わり?」 私は、言った。

  「いえ、これからよ」 彼女は、そう答えた。



そのとき、また流れ星が見えた。
今度は、淡い桃色の星で、夜空を駆けて、すぐ消えた。

  「流星群ってのはね、普段はめったに見られない流れ星が、ひと時の間ならたくさん見れるってものなの。おそらくだけど、日が昇るまでに、あと20から30個位は見れると思うわ」
  「つまり、連続して何個も流れるものじゃないのね」
  「そうね、いつ流れるかなんて、わからないわ。だから、見逃さないようにじっと見るのよ」

目を凝らして、夜空を見る。
空は美しいままだ。
風が体をやわらかになでてゆく。
それは昼間の時と違い、涼しくて心地よかった。
虫の声が響く。
本当に静かだった。
時は、ゆっくり流れている。

 ・・・・・・・・・こう時間があると、いろんなことを考えてしまう。
過去の事、自分の生き方、これからの事・・・・・・。
そんな私の上を、流れ星は、何の前触れも無く、やってきては、消えてゆく。


  「・・・・・・・・・こう時間があると、余計な事ばかり考えてしまうな」

魔理沙は、ぽつりとつぶやいた。そんな声に、パチュリーが答える。

  「あら、じゃあ、こんなフォークロア知ってるかしら?」
  「どんなのだ?」
  「流れ星が見えている間に、三回願い事が言えると、その願いがかなうってお話」
  「すごいなぁ、それ。じゃあ、例えば、もっと本が手に入りますように、とかか?」
  「まぁ、それでもいいけど、流れ星は一瞬だから、もっと短い言葉の方がいいわね・・・・・・それに、そんなこと願う前に、図書館から持っていった本を返してよ」

あちこちで声があがる。

  「酒!酒!酒!」
  「私は、血、血、血、ね・・・・・・咲夜、時をとめるのは、無しよ」
  「・・・・・・うぅ、わかりました」
  「もっと強くなれますように、もっと強く・・・・・・」
  「橙!橙!!!!橙!!!!!!!!!」
  「肉、肉、人肉!」
  「ともだち・・・ともだち・・・・・・ともだち・・・・・・・・・」

様々だ。顔を少しおこして、あたりを見る。
メイドは小さな声で何か言ってるし、アリスは、何かぼそぼそとを呪詛を唱えてるようにしか思えない。
魔理沙が、いきなり声をかけてくる。

  「霊夢はなんだ?どうせ、腋だろ?」
  「腋って、何よ。もっと別なのよ」
  「じゃあ、なんだよ」


  「・・・・・・・・・金」

  
  「切実だな」「かわいそうです」「みじめね」「橙、見ちゃダメだ」「わきぃ・・・・・・」
  「うっ、うるさいわね」

その時、一筋の光が流れた。

  「ともだち!!!ともだち!!!!!!ともだちぃ~~!!!!!!!!!」
  「酒!酒!酒!」
  「・・・・・・胸、胸、胸」
  「肉!肉!!人肉!!!」
  「腋、腋、わきぃ~~~」
  「橙!!!!橙!!!!!!!!!橙~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」
  「金、金、金・・・・・・・・・って、誰よ、腋って言った奴は」
  「あなたたち、そんな、別に声を出さなくても・・・・・・」




それからも、流れ星は、何度も黒い大空を、何度も何度も流れた。
声を出して願い事を言うやつは少なくなったが、みんな真剣に空を見ている。
きっと、心の中で様々なことを願っているのだろう。
私も自分の本当の願い事を考えながら、流れ星を待とう。
時間は、まだたくさんある。















 




空は美しい。
長い間、何度も見てきたが、飽きることは無かったし、これからも無いだろう。

  「紫」
 
 幽々子は、私の隣まで寝転がってきて、小さく声をかけてきた。
 
  「何?」
 
 私も小さく答える。

  「みんなで見るってのも、なかなかいいわね」

  「そう、ね・・・・・・」


 流れ星は、あっという間だ。見えたと思えば、次の瞬間には、消えている。
 彼らは、私達を喜ばせ、自分達はすぐに消えてゆく。
 残るのは、私達と闇だけ。
 辺りは、静寂になるだろう。
 ・・・・・・・・・それでも、私は、流れ星が好きだった。
 一瞬でも、夜空を強い光で駆け抜ける、流れ星が好きだった。



  「紫」

  「何?」

  「楽しいわね」

  「ふふ・・・・・・ええ、楽しいわ」



 白い流れ星が、夜空を流れ、少し尾をひいて、すぐ消えた。 


 あとがき


  「幽々子、あなたは何を願ったの?」

  「世界征服」

  「かっこいいわね」

  「紫は?」

  「もちろん、そんな世界征服をたくらむような人から幻想郷を守ることよ」




 saigyouです。初めてここにのせた、というより、人に自分の書いたものを見せるのが初めてです。あらためて見ますと・・・・・・・・・すいません、つたないところは、ご勘弁を。次は・・・・・・がんばれたら、のっけますので、よろしくお願いいたします。





8月20日 修正  ご指摘感謝です。言われてみると、たしかにそうですね・・・
 
saigyou
[email protected]
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コメント



0.720簡易評価
2.90名前が無い程度の能力削除
アリス・・・(泣)
4.70名前が無い程度の能力削除
わりとなごめましたよ^^特に最後の幽々様と紫の会話が^^
次の作品を心待ちにしています^^よろしくです。
9.70名前が無い程度の能力削除
ラストの紫とゆゆ様の会話が良かったです。
アリスに幸あれ!
10.40名前が無い程度の能力削除
区切りに◆◇の羅列は可読性を激しく損なうのでやめたほうがいいです
そもそも行間を空けていれば記号自体必要もないかと…

漢字と平仮名の使い分けに統一性が無いのが気になりました
12.80時空や空間を翔る程度の能力削除
願い事が叶うと良いですね。

願い事にワロタ。
16.90読み解く程度の能力削除
とても初めての作品とは思えませんでした。ただ、全体的なボリュームが少し少ないかなと感じましたが。
これからの作品に期待です。