Coolier - 新生・東方創想話

寺子屋クライシス【最終話】

2007/07/18 09:06:21
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ついに試験が始まった。



永琳が人里の寺子屋に臨時教師としてやってきたことから始まった。
その裏には、永琳による慧音への復讐心があった。

それに対する慧音の反撃、そして生徒達に情が移った永琳の寺子屋への残留要求。
二人は正式にルールを決め、文句の無い決着をつけることに。

だが、律儀な慧音が霊夢に決闘許可をもらいにいったのがいけなかった。

人里でいたずらし、守護者・慧音の頭突きで歪んだ橙の頭。
また、永琳が人里で教師をする上で、参考資料として魔法図書館から無断で持っていった本。

そして冬眠明けの報告に、博麗神社に来ていた八雲一家。
偶然宴会に居合わせた紅魔館組。

紫とレミリアが慧音の決闘法案を滅茶苦茶に改ざんし、慧音と永琳をそれぞれ恨む藍とパチュリーの参戦が決まった。
そこから事態は予想できない方向に展開することになる。



そして慧音、永琳、藍、パチュリー入り乱れての教育対決。
しかしそれを迎え撃つのは紅魔館屈指のバカメイド、そして転入生三名……橙、チルノ、ルーミア。

言うことをきかない、教えたことを覚えられない。

苦しむ教師四名と、ほくそ笑む紫、レミリア。
どうでもいい騒動に巻き込まれてイラつく咲夜。

ショックで記憶喪失になった藍。
無理をして倒れるパチュリー。
女の命、長髪を切り落とされた慧音。
てゐの嫌がらせにも苦しめられる永琳。

楽な道のりではなかった。
恨み合いながらも、時には助け合わねばならなかった。

そんな戦いも今日をもって、この試験で終わり……。
この試験が終われば皆それぞれ、在るべき場所へと帰っていく。
罰ゲームを消化した上で……。



戦いが地味になり始めたので途中で飽きてしまったレミリアも、この日だけは楽しみにしていた。
流石に朝一番に起きることはなかったが、昼前には起きて、朝食兼昼食を採りながら咲夜の報告を聞いている。
この日は咲夜だけでなく紫もレミリアの部屋へと赴いていた。
互いに見張りし合っているあの状況なら、教師四名が不正を働けるはずもないだろうし。

「誰が勝ちそう? 咲夜」

レミリアはサクリ、と良い音でトーストをかじりながら咲夜に問いかけた。
真正面には紫が、頬杖をついてにやけながらレミリアの食事を観察している。

「客観的に述べます。私の見立てでは八雲藍が有力かと」
「ま、私の式神ですし」
「……」

ただでさえ目の前で食事の様子を見られて落ち着かないのに、言うこともまた不敵である。
レミリアの表情が見る見る強張り、ピキピキと血管が浮き立つ。

「パチェは何してたの?」
「しょっちゅう体調を壊してダウンしていたわ。流石ね」
「あんたに訊いてないのよ。バカ」
「パチュリー様は……まぁ、今紫が言ったような感じです。一度、戦線から外れていますわ」

付け加えれば藍の方が抜けていた期間は長いのだが……。
ここで余計なことを言ってモメるのもまた鬱陶しい。それは後でレミリアにこっそりと告げれば良い。
今言っても、紫はあれやこれやと口八丁でかわしつつ、さらにレミリアの神経を逆撫でするだろうし。

しかしそれではレミリアの怒りは収まらない。

「そんなに言うなら賭けでもしましょうか? 紫……」
「あら、何を賭けるの? 言っとくけど私、大体なんでも簡単に手に入れられるから……」

紫がそこまで言って、レミリアの顎を人差し指で持ち上げてその目を見つめる。

「……そう簡単に手に入らないものじゃないと、応じないわよ?」
「わかってるわ、そんなの」

レミリアが鬱陶しそうに、顎にかけられた紫の手を払いのけた。

「例えばそうね……貴女を式神にするとか」
「紫、調子に乗りすぎじゃなくて? お遊びもほどほどにしないとつまみ出すわよ」

聞き捨てならない紫の台詞に、咲夜の表情も鋭くなる。
レミリアを連れて行かれたら誰が紅魔館の主になるのだ。
フランドールかパチュリーぐらいしか思い浮かばないが、どちらもその手の権力にはあまり興味が無いだろう。

パチュリーは本を、誰にも邪魔されない環境で読めればそれで満足してしまうし。

フランドールは最近、寝ているメイドの部屋の戸を乱暴に叩いてからダッシュで逃げる遊びが好きらしい。咲夜もやられた。
子供丸出しだ、とても紅魔館当主の座などに興味はないだろう。

咲夜が本気で睨みつけているのに気付き、紫は肩をすくめながらおちょくるように笑った。

「ふふっ。やあね、冗談よ……こんなの式神にしても役に立たないわ」
「こ、この……」
「お嬢様、抑えてください……今は試験中ですわ」
「クッ!! 試験中じゃ仕方ないわね……!!」

レミリアが一発で大人しくなった。試験すげえ。

「私から要求するとシャレにならないから、そちらから何か提案していただけないかしら?」
「……どの程度のものなら満足するのよ」
「お遊びだから。まぁ、本気で痛手になるようなものでなくて良いわ」
「……そう」

レミリアが血管を浮き立たせたままニヤリと笑った。
それを横から眺めていた咲夜は身の毛がよだつのを感じた。

レミリアはあれを要求するつもりだ……。
以前の、あのときのレミリアの顔だ……。

意味もなく紫に耳打ちをするレミリア。咲夜に訊かれたら止められると思ったのかもしれないが……。
その賭けの内容、咲夜には見当がついている。

「もにょもにょ……よ」
「……ふーん、そんなので良いのかしら?」
「もちろん、それなりのダメージになる量……」
「これぐらい?」
「そうね、私が負けたらこれぐらいまで」

二人は腕を広げて何かの量を相談している。
ああ、やはりか、と咲夜は思った。今更止めても無駄だろうし、もういい。
レミリアの話を聞いた紫は、大満足、という程でもないがそれなりに楽しそうな顔をしていた。

「……面白いわ。それで良いわよ」
「決まりね。それじゃどれに賭ける? 四人いるから……まぁ、私はパチェ、あんたが藍は当然として……」
「残り二名を分けましょうか。優勝者を選んだ方が勝ち。あとはどうでもいいわ」
「藍は優勝候補だし、もう一人は貴女が先に選んで良いわよ」
「……ほえ面かかせてやるわ」
「お嬢様、口が悪いですよ」

咲夜の注意も気に留めず、レミリアが選んだのは慧音。
それを見た咲夜はまずいと思ったが、レミリアは自分で決めたことに口を挟まれるのが嫌いなので、言い出せなかった。

咲夜の予想では『藍>永琳>パチュリー=慧音』の順だと思っている。

わざわざ下位になりそうな者二名を選んでしまったことになる……紫は口元では微笑みつつも、目を細めてレミリアを嘲っていた。

「それじゃ私は残りの永琳先生で。残り物には福があるって言うの。知っているかしら?」
「先手必勝って言葉の方が好きなのよ、私」

今になって突然レミリアと紫にも対立関係が芽生えた。
これまでは互いに無関心な風だったのだが……。

余計に厄介なことが起こりそうな気がして、咲夜は大きなため息をついた。



「あーおーげーばー……とーおーとーしー……」
「チッ、鬱陶しいな、まだ終わってないんだから静かにしてろ」
「いーつのーことーだかー……」
「曲を変えれば良いというものじゃない! 静かにしてろ!!」

なんか永琳が早くも泣きそうな感じだった。

寺子屋を出るときもこんな感じで駄々をこねたが、そんなに教師業が好きなのだろうか。
はたまた永遠亭に帰るのが嫌なのか……理由はどうあれ、自分の試験じゃないからといって歌うのはやめてほしかった。

「こんなに長く感じる四週間、無かったもの」
「わかったわかった。良いから、試験の結果も出てないのに思い出に浸るんじゃない」

慧音が見ると、別に涙目にも何もなっていない。永琳の表情は普通だった。
この期に及んで何か、かく乱のようなことを狙っているとでも言うのだろうか。

「らしくないな上白沢先生。私も少し悲しいよ?」
「計算高く行くんじゃなかったのか?」
「それとこれとは別さ」

藍も腕組みをし、尻尾をふっさふっさと揺すっている。
その目には、確かに、かすかな悲しみが覗けた。

教室の方へ視線を流すと、パチュリーが教卓に頬杖をつき、憂鬱そうに試験監督をしていた。
生徒達は……当然のことだが、一言も声を発さずに試験に取り組んでいる。
序盤一週間、あれだけ反抗的だったのが嘘のようだった。

『これが『あいうえお』よ……さ、手元の紙に十回、書き取りしなさい』
『めんどくさ』

そんな状態だったのだ。
「めんどくさ」の一言で済ませるあたり、超反抗的である。

――それが……出来はともかく、こんな真面目にやるようになったのね――

その点について、パチュリーは素直に感心していた。
何をするにおいても集中力は大切だ、たとえそれが望まない作業だったとしてもだ。
ふと時計を見ると、試験時間は残りわずか……それを告げるのも教師の義務である。

「……あと五分よ」

それだけ言えば良い、と思ったが付け加えることにした。

「ちゃんと名前を書いたか確認しなさい。あと、ここまで考えてできないような問題は残り五分考えたところで無駄よ」

生徒達の表情が硬くなる。
最後まで頑張ろうとしているのに、そんな酷いことを言うなんて……。
だが、パチュリーの助言はそこで終わりではなかった。

「……だから、自信のある答えこそ見直しなさい。意外とそういうところに落とし穴があるのよ」
「……先生……」
「どの問題を解いて1点取ろうが同じ……確実にね」

そう言ってパチュリーは口を閉じた。
言いたいことはまだあるが、これ以上割り込むわけにはいかない。

バカだバカだと言い続けてきた生徒達だが、真面目にやってくれれば可愛いものだ。

そう思ってパチュリーはふっと微笑み、その口元を隠した。



一科目目、史学。
二科目目、化学。
三科目目、数学。
四科目目、語学。

これで四科目全ての試験が完了した。
試験問題は紫と咲夜が回収、今は採点に当たっている。
生徒達は結果を待ち、教室であの問題はこうだった、この問題はああだった、と思い思いの会話をしていた。

「ねぇ、三代目博麗ってどれだったっけ……私、これにしたんだけど……」
「それは咲夜さんが紅魔館に来る前のメイド長でしょ?」
「えっ!?」

イザベラとジェシカの会話ではないのだが、やはり三代目博麗の問題が出たらしい。
三代目博麗と前メイド長は似ているのか?

「なんで博麗の巫女服着て撮った写真があるのよ……!!」

間違ってしまったメイドが、悔しそうに机を殴りつける。
だが言われてみれば確かにそうである。
問題用紙には博麗巫女服を着て誇らしげにバンザイし、腋をさらす前メイド長の姿があった。
ムカつくポーズだった。

「盗んできたらしいわよ。クビになったときにちゃんと持って行ったみたいだけど」
「……」
「あいつが居なくなった後、お嬢様と妹様のタンスもスッカスカになってたわ。酷かったわよ、あの変態」

相当なツワモノだった。キャラが濃すぎる。



教師達は教師達で落ち着かない。
永琳はまるで……妻が出産中、何もできずにうろつき回っている父親のようだった。
壁のように巨大な本棚に挟まれた、小さなスペースに置いてある丸い机の周りをぐるぐると回っている。

「で、できてたのかしら……」

どんなに時計を確認したところで、秒針の進みが速くなることもない。
他の科目の試験中は教室を観察していられたが、それも無くなってしまった今、手持ち無沙汰だった。

「今更焦ったってどうしようもないだろう、少し落ち着け……あ、これ借りて良いか?」
「ちゃんと返すなら良いけど」
「わかってる」

慧音は落ち着いた様子、諦めているのか、自信があるのかはわからない。
無表情で本棚から本を引き抜いては、パラパラと流し読みしている。
横に立って見張るパチュリーも、永琳ほど落ち着きがないわけではないのだが、慧音の態度を訝しんでいた。

「紫様達が居なくなって三十分、そろそろじゃないか?」

藍はメイドから受け取った紅茶を啜りつつ言う。
慧音ほどではないが落ち着きが見られるのは、自信があるからだろう。

咲夜の見立てでも有利とされた藍。もちろんその理由がいくつかある。

一つは、前半潰れていたとはいえ、全員が語学に当たっていたと言うこと。
つまりこれは藍にとって一切不利な条件とならない。

また、最初期から橙に好かれていたと言う事が一つ。
紫はマグロがどうこうと言っていたが、それでも橙が藍を贔屓するのは目に見えている。

そして教科としての特性。
語学をそこまで必要としないので、スタートが他より早かった。

付け加えればルーミア。
二進数表記をやらないでまともに答えてくれるなら、パワーアップしたルーミアは8ビット……。
つまり0~255の範囲の答えを完璧に当ててくる。加減乗除は全て基礎、相当な点を稼ぎ出すだろう。

これらの要素が藍の余裕へと繋がっていた。
藍は立ち止まった永琳と目を合わせ、嫌味に微笑みながら紅茶を啜る。

永琳はそれを見ても、歯をギリギリと食いしばることしかできなかった。



そして……ついに咲夜と紫が魔法図書館へと戻ってきた。

「お待たせ、先生達……ふふ」
「さぁ教室に行きましょ。生徒達も待っていると思うから」

待ち望んでいたような、来ないでほしかったような……。
落ち着きを崩さない慧音と藍に対し、永琳とパチュリーは緊張で手が湿るのを感じていた。

「……自信ある?」
「……あんまり……無いわ」

周囲から見れば永琳は十分な胸囲……もとい脅威だった。
それなのにここまでビビリになっているのは、失敗をし続けたことによる自信喪失が原因だろう。
節分のとき、その知略と魔力で紅魔館を追い詰めたはずなのに、今はとんだ腑抜けになってしまっている。
勝利を諦めていないだけ上等かもしれないが……。

だが教師達の思惑をよそに、結果発表のときは徐々に近づいていく。

先に紫と咲夜が教室に入り、四名の教師がそれに続いた。
それまで騒がしかった生徒達も、自分の試験結果を案じてか、途端に静まり返る。

「これまでお疲れ様……」
「明日から早速職務に戻らせるからね。結果が出たらすぐ準備なさい」
「まぁまぁ、十六夜先生、そう固いこと言わないの」
「はぁ?」

紫の中では自分が担任、咲夜が副担任ということになっていた。
咲夜はわけのわからないことを言われて眉をしかめる。教師になった覚えなど無い。

「まずは転校生以外の答案を返します」
「これは各科目の担当にやってもらうわ。紫に採点させた後、不正が無いか私も見直したから」

そう言って咲夜は採点済みの答案をそれぞれの教師に手渡していく。
一番上には科目名だけが書かれた紙が乗っているから、渡されてすぐに中を確認することはできない。

「……ウッ!?」
「どうしたの上白沢先生?」
「な、なんでもない……」

紙が透けて、うっすら「2」という赤い数字が見えた。出席番号1番の奴は2点だ……。
見た感じ、選択問題が大分多かったはずなのだが……確か、全25問中15問。1つにつき2点だったはずだが……。
それも四択問題だから、単純な確率計算で、勘で書いても3~4問当たる計算になる。
勘で書いて統計の力を覆すとは……このバカさは神がかっている。八百万の神の「バカの神」に好かれているに違いない。

「透かして見ないの、上白沢先生」
「す、すまない……」
「慧音、早速配ってもらえるかしら?」
「ああ……」

二人が教卓を空けてくれたので慧音はそこに立ち、青ざめながら答案用紙をまとめる。
表紙をめくると、やはり出席番号1番は2点……狙って取れる点数じゃないはずだ……。

「で、では配るぞ。出席番号順に取りに来てくれ」

きっと、こいつだけ運が悪かったのだろう。
慧音はそう信じたい、統計の力はもっと偉大で強大なはずだ。
しかし、一番の答案を渡した直後に、慧音は再び凍りついた。

出てきた答案、出席番号2番、0点。

「お、おぉぉ……ッ!?」
「先生……どうしたの?」
「い、いや、なんでもない……すごいよ、お前達は……」
「ほんと!?」

逆に誉めるしかなかった。
その後も10番までほとんど一桁、及び0点……二桁に達した者はたったの二名だった。
それも10点と11点。ギリギリもいいところだ。

史学、ここまでで平均得点……なんと、4.3点。

「うあぁぁぁぁぁ!!」

負けるのは覚悟していたが、ここまで点を取れないなんて話は聞いてはいない。
慧音は答案用紙を返した後、頭を抱えて地面にうずくまった。

「だ、大丈夫!!」

そんな慧音に声をかけるのはチルノ……肩に手を置いて、自分の胸の前に握りこぶしを持ってくる。

「あたい、しがくは自信あるよ! あとで巻き返してあげるから!」
「ち、チルノ……」
「だから最後まで諦めないで!」
「あ、ああ……」

ふらつく慧音に肩を貸し、チルノが立ち上がらせる。
その光景は感動ものだったが、紫だけがにやにやといやらしく笑っている。



二科目目は永琳の化学。

慧音のあまりの惨敗っぷりに、永琳も完全に萎縮してしまっていた。
教卓まで歩くその足取りさえおぼつかない。

「ハァ……ハァ……」

谷間むき出しのメイド服な上、よろよろと妙な歩き方にうつろな目、そして息が荒いので永琳がエロかった。
気分的には、今にも緊張でぶっ倒れそうである。やはりこの生徒達恐ろしい。

史学だけが極端にダメだった、と思いたい。
しかし今までの生徒の様子を鑑みると、そうは考えにくいのが実情だった。おそらく他の科目もぼろぼろだろう。

「か、返すわよ……」

震える手で表紙をめくると……。

8点。

「ん……んん?」

これが普通の学校だったら即座に涙がちょちょぎれるが、この紅魔女子学校ではそうではない。
いっそ、10点満点だと思った方が気が楽なぐらいだろうから……この点は悪くない。

「よくやってくれたわ!!」

だからって8点で誉めんな。

「やったー! 8点よ!!」

8点で喜ぶな。

そんなシュールなやり取りがしばらく展開されたが、結論から言えば化学は良い方だった。
史学は2~4点が多かったが、化学は誰も10点前後をキープすることができた。
最高で20点に到達したものも居たから、偶然の産物ではないだろう。

化学、ここまでで平均点10.7点。

永琳は慧音に大きく差をつけた。
そして、後の二人に対しても強烈な牽制球を放ることができた。

「おしべ! おしべ!」

永琳がそう叫べば、生徒達は……。

「めしべ! めしべ!」

そう応える。

なんだこれ。

ともあれ、永琳と生徒達の心が一つになった瞬間だった。

永琳、受粉は一生懸命教えていた。

生徒達もそこだけはパーフェクトだった。

そして永琳は一通り盛り上がった後、高潮した顔を持ち上げて胸を張り、藍とパチュリーを見下す。
その瞬間、胸ボタンがもう一つはじけ飛んだが、自信を取り戻した無敵の永琳先生は、そんなこと意に介さない。



そして三番目は優勝候補、八雲藍の数学。

「藍、負けるんじゃないわよ」
「……」
「し、シカトしたわね!?」
「良いご身分ですね、紫様」

藍はすねて唇を尖らせている。
本気で怒っているのとは少し違うようだが、紫を見損なっている節があるのは確からしい。
今までの紫を見ていれば不思議なことではないが、とりわけ慧音の足を掴んだ事件が大きな要因の一つだろう。

そして、この藍の態度を見て再び紫がビビリ始めた。
いつあのことをばらされるかわからない……不穏な気配。

「さあ、邪魔しないでもらえますか? 藍は答案用紙を返却しなければなりませぬゆえ」
「う、うぅ……」

藍に嘲るような冷たい目で見下ろされ、紫は少しゾクゾクしてしまった。
しかも、そんな自分が嫌いじゃなかった。どうでもいい。

「よし、返すぞ」

藍はキリッとしていて格好良い。
教え方も上手いし、さっぱりとした性格から男性に通ずるものを見出したのか、生徒達には割と人気だった。
ただ、幼児退行していた実績があるので、生徒達は手放しに藍を好きになることはためらった。残酷だった。

まぁそんなこと今は関係ないこと、藍も生徒も真剣な顔で結果発表に臨んでいる。



数学、平均13.2点。
最高26点。



「見たか! これが数字の魔術師の実力よ!!」

肩を怒らせ、不敵な笑いを浮かべる藍。
しかし冷静に考えてみれば、こんな点数、恥にこそなっても自慢にはならない。
教師達も既に毒されつつあった。ここ、紅魔女子学校での10点は高得点なのだ。



最後にパチュリーの語学……しかし、パチュリーはなかなか答案を配ろうとしない。
神妙な面持ちで、手に持った答案用紙を見下ろし、ずっと口をつぐんでいた。
そして唐突に口を開いたのは、パチュリーが教壇に上がってから十分ほどが経った頃。

「……皆、名前ちゃんと書けたのね」

そう言ってパチュリーは柔らかく微笑む。
生徒達はそんなパチュリーの顔を見て、胸が熱くなるのを感じた。
一体どういうことだろう、最初あれだけ生徒達を「バカ」と呼び、卑下し続けていたのに……。

「ここしばらくあんた達に触れ合ってて、私も一つ学べたわ」

誰も口を挟む者はいない。
ただ黙って、その小さな口の動きを見守っていた。

「全部自分を基準に考えちゃいけないんだってこと。人に何かを伝えるのって、こんなにも難しいんだってこと……」

引きこもってばかりいる自分……こんなことでもなければ、一生気付かなかったかもしれない。

「でも、あんた達はなんだかんだ言って、自分の名前を書けるようになったわね」
「せ、先生……」
「私は今……その確かな一歩がすごく嬉しい……」

まるで、母のような優しい眼差しが生徒達を包み込む。
生徒達の目に、じわりじわりと涙が溜まっていく……。



「だからもう、こんな試験の結果なんてどうでも良いわ……ロイヤル……ッ!!」



突如パチュリーの顔が鬼気迫る表情に変わった。
答案用紙を消し炭にしようと、魔道書を開いて手のひらに魔力を集中し始めた。

「いかん!! あいつ、なかったことにするつもりだ!!」
「ドベなんだわ!!」
「と、止めろぉっ!!」

パチュリーは他の科目の結果発表中に、裏でこそこそと語学の点を確認していた。
そして即座に平均点を割り出して、周りの様子を見てから発表するか否か決めるつもりだったのだろう。
慧音はともかく、永琳と藍があまりに高得点だったので、戦線離脱を強行しようとしたのだ。

「とんだ茶番ね……この魔女め!」
「くっ!? 永琳……!!」
「とめる!!」

驚異的な踏み込みで横っ飛びした永琳が、語学の答案用紙を片手で鷲掴みにし、奪い取った。
ここまで来て往生際悪く逃げ手を打つなんて、許せることではない。

「どれどれ……私が代わりに発表するわ」
「や、やめなさい!! レミィ!! レミィーッ!!」

そういえば、何故レミリアがいないのか不明だ。
今までは寝ていたのだろうが、最後ぐらい来そうなものなのに……。
慧音に羽交い絞めにされ、じたばたともがくパチュリー。
しかし、至って健康体の慧音と、虚弱体質のパチュリーとでは体力に違いがありすぎる。
すぐにパチュリーは息切れを起こし、慧音の腕の中でぐったりとうなだれた。

「平均点8.1ね……何よ、そこまで悪くないじゃない」

永琳は一通り点数計算を終えてから、面白くなさそうにそう呟く。
そしてそのまま生徒達に答案を返し始めた。これならば慧音の方がよほど酷い。

化学は、採点する側の考え方にもよるだろうが……。
漢字表記できる事柄について、平仮名で書いても失点とされないことがある。
紫はそういう方式を取ったから、必然的に点数が少し上がりやすくなった。

それに対して、語学は言わずもがな、史学も固有名詞が大量に出てくる。
そこで記述ミスをすれば間違いと見なされるわけだ。
ただでさえ複雑な科目、さらに拙い言語能力では史学の点数が低くなるのも不思議なことではなかった。
全てに通ずることではないが、この決闘の環境を考えれば、おのずとそうなってくる。

不公平に思えるかもしれないが、担当科目の時点である程度勝負付けは済んでいたのかもしれない。



ここまでの結果では、

1.藍(13.2)
2.永琳(10.7)
3.パチュリー(8.1)
ドベ.慧音(4.3)

という順位になった。
藍や咲夜の予想は概ね当たっていたと言える。

――あたい、しがくは自信あるよ! あとで巻き返してあげるから!
――だから最後まで諦めないで!

慧音の状況は絶望的。
一位の藍に追いつくためには、最低でも転入生達が合わせて89点は取ってくれないといけない。
しかし、藍には式神の橙、そしてルーミアという伏兵がいる。逆に離される可能性が高い。
そもそも、89点も取らせることが難しいだろう。

(チルノが一人で90点取ってくれればなぁ)

数学はあまり得意でないようだったから、チルノの点数は慧音に偏るだろう。
それでどこまで差を縮められるか……だが、やはりそう簡単に行くとは考えにくい。

先ほど暴挙に出たパチュリーだが、そこまで悪い状況でもない。
慧音に追いつかれる可能性もあるが、この勝負は一位以外は皆同じだ。
そう考えれば、51点で巻き返せるのだから、慧音に比べて大分楽だろう。

しかし、これといって転入生達との強い絆がないのがパチュリーの弱み。
ここからの巻き返しは考えにくい。だからこそ、答案用紙を燃やそうとしたのだ。

永琳は25点で藍に追いつく。これはまだ十分に優勝を狙える位置だ。
永琳の化学は効率的な授業方法で、洗脳レベルの水準を誇っていた。
それでも点は低いが……その教育法が、転校生達に対してどれほどの効果をもたらしたかがポイントとなる。

「それでは転入生……これは副担任の十六夜先生から発表してもらうわ」
「誰が副担任よ……ったく」

咲夜の手には十二枚の答案用紙。
転入生三名、四科目……勝負の決着がここにある。

実はこの採点だけは香霖堂の店主、森近霖之助にやらせた。
そうでないと、紫とレミリアの賭けが面白くなくなってしまうからである。
よって、転入生の点数だけは今、紅魔館にいる誰一人として知らないことになる。

「それじゃ……まずは歴史から行くわよ」
「……ああ」

慧音が腕組みをし、頷く。
その表情は晴れやかではなかった、もう、敗北は目前……。
この状態から勝利できる可能性など高が知れている、慧音は腹をくくっていた。
チルノには悪いが、もうここからの巻き返しはありえないだろう。

「まず、橙……31点」
「……」

思ったより悪くない。慧音の眉がぴくりと動いた。
他の三人も無意識のうちに表情が強張る。これはわからなくなった。
しかしまだ安心はできない、他の科目がこれ以上に良かったら、とんだぬか喜びになってしまう。
それに、残り58点……決して低い壁ではない。

「チルノ……は最後に回すわね」
「な、なんだ!?」
「仲良かったじゃないの、面白くないでしょ」

咲夜が意地悪く微笑む。
散々迷惑をかけられたのだから、この程度の演出しかるべきだ、と、その表情で訴えている。
まぁ、別に発表順序が変わったからと言って結果に違いが出るわけでもない。
慧音としても、咲夜に迷惑をかけている意識はあった。

「……わかった」
「物分りが良くて助かるわ、それじゃ、ルーミア……」

咲夜がペラリ、と答案用紙をめくる。
その顔は至って無表情……表情で悟られないようにと、咲夜なりに盛り上げているのかもしれない。

「……28点」
「……むぅ」

橙ほどは伸ばしてこなかった。
しかし、これで藍に追いつくまで残り30点……チルノが頑張ってくれれば、或いは……?
慧音は両手を顔の前ですり合わせ、目を閉じて祈った。

「チルノは……」

これほど緊張したのは久しぶりのことだ。

大分前に、人里に買い物に来た妖夢が「迫力ない」と言ってバカにされ、逆上したとき以来か……。
あれは、迫力は無くても殺傷力は恐ろしいし、実はああ見えて気位が高い。
里の人間を追いかけ回す妖夢を羽交い絞めにして、後頭部に十数発頭突きを見舞ったところでようやく大人しくなったっけ……。
妖夢は悔しくて泣いていた。そんな姿を哀れに思わなくもなかった。
やっぱり、迫力は無いと思ってしまったが……。

「チルノ、0点」
「はぁっ!?」

余計なことを考えている間に発表されてしまったし、しかも負けた。
おのれ、妖夢め……と思う慧音だったが、別に妖夢は何も悪くない。

「あ、ああ……」
「チルノ……」
「ごめーん!!」

頭を抱えてくずおれるチルノ……。
まぁ、もともと勝てる見込みは少なかった……慧音は特にチルノを責めなかった。

「ごめん、ごめん……」
「いいさ、全力でやってくれたんだろう?」
「うん……」

涙すら流すことなく、呆然としているチルノの頭を優しく撫でてやる。

「顔を上げろ……私は、この経験が元で少しでも歴史に興味を持ってもらえたら、それで構わない」
「先生……」

史学、上白沢慧音……総合得点102点、平均7.8点。
敗因は、生徒達の言語能力がいつまでも足を引っ張ったことだろう。

やはり人間相手に教えるのとは違う、という事実をむざむざと見せ付けられる結果となった。



咲夜はそんな結果に特に興味なさそうにしている。
泣きじゃくるチルノをなだめている慧音を見ても、眉一つ動かすことはない。

しかしその実、心中穏やかでなかった。

(お嬢様、まずいんじゃないかしら……)

早速一人ダメになった。
もはや頼れるのはパチュリーのみとなったが、そのパチュリーも先ほど答案を燃やそうとしていたぐらいだし……。
いざとなったら、レミリアを守るために……今度は八雲一家と一戦交えなければならないだろうか。

「それじゃ、次は化学、行くわよ」
「ええ、準備は良いわ」

この時点で慧音との勝負には勝っている永琳、その表情にはいくばくかの余裕が見える。
まだ安心しきってない様子なのは、何よりも藍の存在のせいだろう。

「まずは……橙。43点」
「……フッ」

そうか、別に歴史だけ高かったわけではなかったか。
転入生達はもともとの学力が紅魔館のメイド達よりも高かったのだろう。
そう考えれば、慧音は永琳に完全敗北……改ざんされた歴史を修正させるのは容易だ。
この調子で藍にも勝てれば、それは確実な未来となる。

「チルノ……0点」
「ブッ!?」
「うあーっ!!」

頑張っていたし、それなりに点を取るだろうと思われていたチルノだったが……。
なんというか、奇跡的な頭の悪さだった。
チルノ自身としては、答えはわかっているのだが……注意力散漫で解答欄を間違えたりもしていた。
そう考えると、単に学力が足りないというわけでもないようだ。運も、集中力も無い。

「ふ、ふふ……まぁいいわ」
「それじゃ、ルーミアも行くわよ」
「ええ、どうぞ」

藍と永琳の勝負は、実質ルーミアが左右すると言っても過言ではなかった。
どうもルーミアは理数系科目に強い気配がある。

「ルーミア……66点」
「え、えぇぇぇっ!?」

やはり、理数系に強いらしい。
それにしたって、まさか50点を上回ることがあろうとは……永琳は驚きのあまり腰を抜かした。
そしてルーミアはそんな永琳を見つめながら、サングラスの奥でニヒルに笑う。

「る、ルーミア……っ!?」
「美肌クリームのお礼をしたまでだよ……ふっ」

ルーミアは、なんかキャラが変わっていた。
肌もつやつやだった、枝毛もない。

化学、八意永琳……総合得点216点、平均16.6点。
なんと、慧音に倍以上の差をつけることができた。

そして永琳は藍を睨み付ける。こうなったら、怖いのは藍だけだ。
それに対して、本棚の影から観察している藍は、全く怖気づく様子も無く袖に腕を突っ込み、胸を張って永琳を見下した。

次の結果発表は藍の受け持った数学、ついに、理数系教師二名の決着がつく。



藍は今までの二人には無い、毅然とした態度で教壇へと上がる。
そして、咲夜をはすかいに眺め、よく通る声で、

「さ、私の結果も発表してくれ」

……自ら結果発表を促した。
これまた前例の無いことである。前例と言っても二人しかいないが。

「なによ、随分自信あるみたいね」
「ああ、あるよ」

藍は「ふふん」と鼻を鳴らし、大きな尻尾を得意げに揺すった。
これは完全に勝利を確信している……咲夜はレミリアの肩を持つ者として、そんな藍の態度を面白いと思わなかった。

「自信満々で出てくるやつって、大体失敗するのよ」
「ほう?」

そう言って永琳に目配せをした。
豆のときも似たような感じだったが、それでなくたって最近の永琳は、

『自信満々に余計なことをする→失敗して恥をかく→かっこ悪い』

という死亡フラグ確定パターンを我が物にしている。
言われたことが即座に飲み込めなかった永琳だったが、すぐにそんな咲夜の皮肉を解し、にやりとほくそ笑んだ。
永琳の条件だって、けして悪いものではない。藍はまだ油断してはいけないのだ。

「ごちゃごちゃとうるさいな、結果発表がお前の役割だろ? さっさとしてくれ」
「……ふん、わかってるわよ」

まぁ、永琳が勝とうが藍が勝とうが、お嬢様は紫に何か罰ゲームを与えられてしまう。
そう思えばこんないさかいはまったく意味が無い。咲夜はためらうこともなく答案用紙をめくった。

「チルノ……0点」
「それは想定内だ、問題ない」
「ひーっ!?」

チルノだけが騒ぎ立てている。それにしたって、これまで全部0点のチルノもすごい。
何か宿命的なものを感じずにはいられなかった。

だが勝負は最後までわからない、次はキーマン、ルーミアの結果発表だ。
咲夜は藍に急かされる前に、さっさと答案をめくる。

「ルーミア……12点」
「……は?」
「12点よ」
「うそつけ」
「12点だってば」
「み、見せろッ!!」

何が起こったんだ……藍は「二進数はやめろ」と、ルーミアに散々言ってきた。
それについてルーミアも承諾していたのだ、二進数での解答はしていないはず……答案用紙を、じっくりと見直す。

だが、じっくり見直す必要も無かった。

ルーミアの答案用紙には「2E」やら「3A」やら、見慣れない文字列が並んでいる。
しかしそこは数字の魔術師、八雲藍。その文字列の意味をすぐに理解した。

「……じゅ、十六進数だと!?」

ルーミア脳は8ビットを超えた辺りで、別の方向にパワーアップしていた。
もちろん、はずれ。

12点だけ取れたのは、全て計算結果が9以下になる問題だけである。
なおかつ、十六進→十進と変換すると、ルーミアは100点満点だった。皮肉なものだった。

「ルーミアァァァァッ!!」
「二進数使ってないじゃん」
「だ、だからって何故十六進なんだ!?」
「妖怪は十六進数を採用しましたー」
「してない!!」

いつものカカシみたいなポーズで藍を挑発するルーミア。
永琳にしか懐いていないらしい。

これだから天然モノは……藍は床に膝をつき、頭を垂れた。
そしてそんな様子を満足そうに見下ろしながら、咲夜は意地悪く言う。

「あら、さっきまでの自信はどこに行ったのかしらね? まだいるじゃないの、あんたの信頼すべき、式神が」
「う、うぅ……橙……73点以上……」
「はい、橙は22点でした、残念」
「え!? け、結果発表が早すぎだろう!?」
「さっさとしろって言ったのはあんたじゃないの」
「ぐ、ぐぅぅぅっ!!」

咲夜さん酷い。

数学、八雲藍……総合得点166点、平均12.8点。
やはりキーマンとなったのはルーミアだった。
そして、式神であるはずの橙もダメだった、優勝候補の筆頭として恐れられていた八雲藍、ここに撃沈。

「う、うぅ……」

橙も青ざめ、ぶるぶると震えている。目には大粒の涙。
藍は精も根も尽き果てた様子でそんな橙を見上げて、哀しそうに叫ぶ。

「チェーン!!」

その目には、己の従者を叱責する、厳しい怒りの色が宿っていた。

「あ、あぁ……」

橙の目から涙がぼろぼろとこぼれだした辺りで、藍は正気を取り戻した。
そうだ、この子は一生懸命やっただろうに……私を助けるため……。

「100点取れなかったよー! マグロがーっ!! うわぁぁぁぁん!!」
「……? チェーン?」
「うわぁぁぁぁん!!」

橙はそのまま走り去って行ってしまった。

「マ……マグロ!? チェーン!!」

あんま、藍のためってわけでも無かったらしい。
『藍<マグロ』だった、悲しい現実がそこにあった。

真っ白になっている藍が流石に哀れすぎたので、永琳はその横にしゃがみ、肩を抱いてやった。

「まぁ……うちのウサギはもっと酷いわ。だから、あまりめげないで……」
「う、うぅっ……ちぇん、ちぇんのバカァ……」
「ハァ……ハァ……あぁ……」

永琳の息が荒かった。肩を抱くふりをしつつ、尻尾をにぎにぎして恍惚としていた。

永琳はどさくさにまぎれて藍の尻尾を触りたいだけだった。
酷い話だった。

「ハァ……ハァ……あ、あと優勝は私だから。残念!」
「う、うぅーっ!!」

どうしようもなかった。
尻尾触りたかっただけか。

「……なんかアレだわね」

あっという間に混沌としてしまった教室の様子を見て、唖然とするのは咲夜。
慧音はチルノといちゃつき始めるし、永琳は泣きじゃくる藍の尻尾をいじり倒しているし。
紫は賭けの勝利を確信した辺りで、椅子に座ったまま目を開けて寝ているし……バカ生徒達と同レベルだった。

生徒達も、試験疲れから皆ぐったりしている。

(仕方ない、明日一日ぐらい休みをやるか……)

咲夜がそう考えていたとき……何やら、足元から嫌な空気が舞い上がってくるのを感じた。



パチュリー。



「あっ」
「……」

パチュリーは咲夜の足元で膝を抱え、スカートをクイクイと引っ張っていた。
恐ろしく陰鬱なオーラを発していた。ほっといたら頭にキノコでも生えそうな勢いだった。

「……あんた、人がせっかく離脱を阻止されたっていうのにスルーしちゃうわけ? へぇ……」
「すすす、すいませんパチュリー様!」
「どうせだったら、完璧に負けてるところも発表してよね……煮え切らないじゃないの、けっ」

すごいやさぐれてた。

影は薄いわ、すぐ倒れるわ……結果も、ドベでもなければトップでもないという地味っぷり。
そりゃ、やさぐれるのも無理はないだろう。

「はーい! 皆注目! 一応パチュリー様の結果も発表するわ!!」
「一応って何よ!!」
「あ、ああっ!? すいません! 痛ァッ!!」

咲夜は、パチュリーの持つ分厚い本の角で向うずねを強打されて涙目になった。
このイジケっぷりは相当だ、早くケアしてあげないと、心の病にかかってしまうのではなかろうか。
とはいえ戦線離脱を図って相手にされなくなったのだから、自業自得だと思うのだが……。
その辺は、紅魔館のヒエラルキーの頂上近くに君臨する者特有のワガママさなのかもしれない。

周囲に居た一同も、咲夜が声を張り上げたことでパチュリー付近に注目した。
皆気まずそうな顔をした。やっぱり忘れていたらしい。
紫も、ぷくぷくと膨らませていた鼻ちょうちんが破裂したが、目を開けたまま寝ていたので不気味な光景だった。

「えーと、それじゃパチュリー様の結果ね」

恨めしそうに見上げているパチュリーと目を合わせないようにしつつ、咲夜は答案をめくる。

「橙が……え?」
「……どうしたのよ?」
「……81点」
「!?」

一瞬にして辺りが静まり返った。
意地汚く戦線離脱まで図ったパチュリー。誰しも、優勝は無いと踏んでいたのだが……。

「チルノ……」
「ごくり……」
「……は0点」

チルノ、さりげなくグランドスラム。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

なんと全教科0点と言う偉業を達成した。
教師達の面目は丸つぶれである。

しかし、橙の結果だけでパチュリーの総合得点は一気に二倍の162点となった。
藍が166点だったので、これでほぼ肩を並べたことになる。
永琳は216点、つまり……ルーミアが55点以上取っていれば、なんと逆転優勝である。

「さ、させないわ!!」

突然、優勝者の座を脅かされ、永琳が冷や汗を流す。
優勝候補だった藍を打ち負かし、これから罰ゲームでも言い渡してやろうと思っていたのに……。
いきなり出てきて優勝を攫っていくなんて許せない。

と永琳は思っているものの、パチュリーだって立派な参加者の一人である。
そんなことを言われる筋合いはない。

もしかするとレミリアも紫との賭けに勝利できるかもしれない。
まったくノーチェックだったが……咲夜は一縷の望みに全てを託し、最後の答案……ルーミアの答案を見た。

「る、ルーミア……62点!!」
「嘘よ! 見せてみなさいよ!!」
「嘘なんかつくもんですか! 見てみなさいよ!!」

咲夜は左手を腰に当て、憤る永琳に答案用紙を突きつけた。
永琳が何度確認してもその答案用紙には「62」の赤い文字。
採点ミスは一つもありはしない、他の転入生にも、紅魔館のメイド達にも。

「え……私、勝ったの?」

誰よりも驚いていたのはパチュリー自身だったかもしれない。
戦線離脱を図ったのだって、自分が優勝する見込みが無いと思ったからである。
だというのに、それを邪魔されて、何故か優勝してしまうとは……。

パチュリーは膝を抱えたまま、頭をかきむしって悔しがる永琳を呆然と眺めていた。

語学……パチュリー・ノーレッジ、総合得点228点、平均17.5点。
誰も予想しなかった、大どんでん返しの優勝だった。



メイド達は語学でほとんど点を稼げなかった。
しかし転入生達はチルノを除き、高得点をたたき出した。

こうなった背景には、転入生達のもともとの語学能力の高さがある。

橙は自分の名前を漢字で書けなかったりもしたが、そもそもこの語学の試験は難しくない。
漢字の書き取りにしたって、小学校低学年レベルである。流石に橙もそのぐらいは書けた。

チルノも本来この程度の語学ならばわかるはずなのだが、それでも0点を取ったのは、もはや宿命としか言いようがなかった。
そこには、誰にも見ることのできない大きな力が働いていたのだろう。

ルーミアは理数系科目が得意だから橙に比べていくらか低得点に落ち着いたが、これまたそこそこの語学能力はある。
射命丸文が持ってきた新聞もある程度読んだりできるのだから、不思議なことではない。

序盤に「語学が遅れている」と焦りすぎたせいで、逆にそこが盲点になっていた。
メイド達の結果は思わしくなかったが、転入生にとってはそこまで難しい問題ではなかったのだ。
カリキュラム的にも無理がない。十分に理解できるレベルだった。

「優勝……?」
「はい、パチュリー様! 優勝ですよ!!」
「わ、私が勝ったのね!?」
「はい!」
「わあーっ!!」

パチュリーはめまぐるしい状況の変化にパニックを起こしつつ、雄たけびを上げた。
しかしその顔には喜びの色が濃厚に漂っている、自分の勝利をようやく理解したのだ。

「見たかーっ! 八意永琳!! 勝ってやったわよ! ふんっ!!」
「く、うぅぅぅー!!」

興奮したパチュリーは永琳を指差し、声高に嘲る。
対する永琳は何も言えず……あのとき、答案用紙を黙って焼かせれば良かった、と、とりとめのない思案を巡らせていた。

最終的な結果としては……

1.パチュリー
2.永琳
3.藍
ドベ.慧音

となった。
こうしてパチュリーは、二位以下全員に罰ゲームを言い渡す権利を得た。
目の仇である永琳はもちろんのこと、慧音や藍にも、である。



こうして結果発表も終了。
教師達は任期を終え、それぞれの在るべき所へと帰ることになった。

パチュリーより課されるペナルティはひとまず後……先に、紅魔女子学校の卒業式が執り行われることになった。
既に時刻は夕飯時だが、もともと夜の方が活発な連中が多いので、特に問題は無い。

「あーおーげーばー……とーおーとーしー」

歌っているのは、今度は永琳ではなく生徒達である。
転入生は除き、後の十名はまたすぐに紅魔館のメイドとしての仕事に戻る。
また、同じような日常を繰り返す。

(長い二週間だった……)

いや、四週間か……慧音はこれまでのことを振り返り、目を細めた。
目の前にいる生徒達にとってどんな二週間だったろうか……既に、泣いて歌になってない者も数名いる。

『……今は私闘でしかないんだよ上白沢先生。私達は生徒を巻き込んで勝手に争っているんだ』

意地汚い争いに巻き込んでしまった後ろめたさはあるが、こうして悲しがってくれるのは有難い。
それだけで、罪悪感が洗い流されていくような感覚だった。

『そんなに真面目に教えたいなら、この決闘が終わったあともここに通って教えてやれば良い事だ』

そうしてやりたいのは山々だ。教えたいことはたくさんある。
しかし自分には人里の教え子達も居るし、この生徒達を人里の寺子屋に呼ぼうにも、人間でないので難しい。
里の守護者が、人でない者を積極的に里に入れるなど、あってはいけないことだ。

横を見ると、永琳が神妙な面持ちで生徒達を見下ろしていた。
同じような気持ちもあるだろうし、永琳の場合はほったらかしだった永遠亭のことも気になっているだろう。

不機嫌そうなのは八雲藍。
主も式も側に居たから、慧音で言う寺子屋、永琳で言う永遠亭のような心残りは無いだろう。
その分、勝負に負けた悔しさが顔に滲み出してしまっている。

パチュリーだけが晴れ晴れとしている。
優勝もしたし、このメイド達はもともと同居人だから、別れの寂しさも無いのだろう。
たまに目つきが悪くなり、口の端が歪むのは……きっと、ペナルティを考えているに違いない。
パチュリーは最初から最後まで己のスタンスを崩すことが無かった。考えようによっては相当な頑固者だろう。
虎視眈々と、冷酷に、計算高く……今回の決闘に、最も真摯に向き合っていたと言えるかも知れない。

(魔女、だからか?)

ただ、生徒達に対する情も多少はあるらしい。
試験のときの助言などその最たる例だろう。その辺がどことなく憎めなかった。
基本的に他人に厳しいが、パチュリーなりにどこか、ボーダーラインを設定しているのだろう。
そこが明確だったから優勝したのだろうか? 納得の行く根拠にはならないが、ともかく、見習える所はある。

「そそそ、それじゃ……卒業しょ、しょ、しょ……授与よよ」
「落ち着いてください、八雲先生」
「お、おお、落ち着いているの」

うそつけ。

感傷に浸っていた慧音の心は、紫のせいで一瞬にして台無しになった。興ざめも良いところだ。
反面、隣にいる副担任の十六夜先生はレミリアも安泰ということで落ち着いている。

「チッ……こんなにかっこ悪いと思わなかったわ」
「ヒッ!?」

ここにいる数名の中で紫が一番怖がっていたのは藍だった。
反抗心むき出しだった。

「こんなのの式神やってるなんて祖国の仲間達に知れたら、大恥だ……チッ!!」
「う、うっ……」

言いすぎだった。紫はもう涙目である。
藍としては、堂々と、

『足? ええ掴んだわよ、面白くしたかったから』

ぐらい言って欲しいのだが、なんだこのビビり方は。
冬眠している間に随分とぬるくなったな、八雲紫。藍の目はギラギラと、紫を捉えて離さない。
私は誇り高き九尾、威厳無き者に付き従うことはできん、と、その目で語っている。

紫は紫で、この一触即発な藍がいつ慧音の足の件をチクるのか、気が気でない。
しかも、レミリアとの賭けも負け……あの罰ゲームは結構キツい。流石夜の王、罰ゲームは容赦無かった。
まだその全貌は紫とレミリアしか知らない……そして、未だにレミリアが出てこないのが気がかりだ。
いつレミリアが出てくるのかを考えると、声が震えてしまう。

「は、はい……イザベラさん、よく頑張ったわね……」
「……」

青い顔した紫に卒業証書を渡される生徒達もたまったものではない。
「なんでお前に渡されなきゃいけないんだよ。ひっこんでろ、外野」とでも言いたげだった。
そもそも、ここに来て担任設定とか卑怯すぎる。生徒達も不服そうだった。

こうしてついに紫のへたれ結界が決壊。完全なる四面楚歌。
感動的な卒業式は一転、今宵は紫いじりの満漢全席である。

「薄汚れた手で神聖な卒業証書に触るんじゃないわよ。私が渡すわ」
「や、八意永琳……たかだか教科担任のくせに」
「ん? 何か言った?」
「い、言ってません……」

紫は察した。この中で一番やばいのはこいつだ。
今までのへたれ永琳先生じゃない、紫は見たこと無いが、月の使者を皆殺しにしたときの永琳はこんな目だったに違いない。
フッ切れた今の永琳は、永遠亭の裏番長として君臨するに相応しい力を取り戻している。

それぞれを、一人ずつ相手にするなら……と思う紫だったが、これらをまとめて相手するのは厄介すぎる。
永琳一人でいっぱいいっぱいだ……。

「はぁっ!?」
「……何よ、人の顔ジロジロ見て」
「な、なんでもないわ……」

そういえば……まだ精神的にも若かった頃、死にたての幽々子、幽香辺りを連れ、調子に乗って月に行ったとき……。
最前線で指揮を取り、地上の妖怪をねじ伏せていた月人が居た……。

そのとき、部隊の指揮を執っていたヤツに似ている……今の永琳はサルダートの目だった。

紫的にはふざけてちょっかい出しに行っただけなのだが、月人達があまりに本気すぎて怖かった。
自分の血を見たことから、怒り狂ってビームを乱射する幽香を絞め落とし、ほうほうの体で逃げ帰った。

幽々子もしばらく「やばい、やばい」としか言わなくなった。それ以来、無闇に人を殺すことも無くなった。
命の尊さを知ったのかもしれない。死んでるくせに。

(な、なんで走馬灯なんか流れるのよ!!)

はっとして我に返った。

ふと見ると、永琳が卒業証書を引っ張っている。しかし紫もガッチリと握って離さない。
紫だって幻想郷最強クラスの妖怪……こんなところで負けてたまるかと、永琳を睨みつけた。
だがその程度で永琳はひるまない、手塩にかけて育てた生徒達。最後ぐらいはしっかりしたい。

「……千年ぐらい前だったかしらねぇ、あれ」
「ひ、ひいっ!?」

やっぱりサルダート永琳だったっぽい。紫は即座に卒業証書を放し、身構えた。
まだ若かった当時の自分に、きっつい苦手意識を植え付けてくれたあの月人は……。
永夜異変のときは気付かなかったから、普通に戦っていたが……。

「べ、別に私が教えたわけじゃないし良いか……」
「そうそう、大人しく渡せば良いのよ」
「チッ!!」

尻尾巻いて逃げた紫を見て、またも藍が怒りをあらわにする。
もうどうしようもなかった。紫、万事休す。



卒業証書は四名の教師が手分けして配った。

なんだか感動的な光景だったが、外界の常識で考えればあんな点数で卒業できるわけがない。
序盤に授業態度が最悪だったことも考えると、平常点も心もとない。
晴れて全員落第、紅魔女子学校残留、という流れが普通だが……元々二週間という期限が決まっていたので仕方がない。
態度も点数も地味だった橙ぐらいは卒業させてもいいかもしれないが。

「さて、卒業証書授与も終了ね」

あとのプログラムは特に無い。
生徒達が歌ってる間にも咲夜は時間を止めてあれこれと仕事していた。メイド長は多忙なのだ。
咲夜にしてみればこんなイベント鬱陶しいだけである、なので強権発動で卒業式のプログラムは短くした。

「そろそろ罰ゲーム発表かしら?」
「そうですわね」
「く……」
「……受けて立つわよ」
「悔しいが、負けた以上は仕方ないな……」

パチュリーが三人の顔を見回し、口元に手を当てて唸る。
いろいろと罰ゲームは考えてあったが、正直なところ、もうどうでもよくなりつつあった。

そして教室の隅で体育座りをし、その様子を眺めていた紫がニヤリとほくそ笑む。
自分から注意がそれた……今までは誰かが目を光らせていたが、逃げるなら今だろう。
紫には追尾不可能なスキマ移動がある。一瞬でどこまでも逃げることができる。

悟られないように、ゆっくりとスキマを開き始めた、そのとき……。

ジャッキン!

嫌な音がした。
ハサミのようだが随分音が大きいような……。
そして紫はその音に心当たりがあった。

「紫ぃ~?」
「レ、レミリア……」
「トンズラしようったってそうは行かないわ!!」
「く、くぅっ!?」

レミリアが手にしていたのは、自分の背丈ほどもあろうかという巨大なハサミだった。
一体それで何をしようというのか……グロテスクな展開だけはご勘弁願いたいが……。

「アンタが賭けたスカートの丈!! いただくわよ!!」

全然そんな展開じゃなかった。
そんなことのためにいちいち物騒なハサミを持ってくるなと言いたい。

「誰かこいつを抑えなさい! 恨んでるんでしょう!?」
「は、放して……藍! ラァーン!!」
「あ、慧音。チルノとの決闘のときお前を転ばせたの、紫様だから」

藍は紫を助けるどころか、さらっとチクった。

「ラァーン!?」
「なんだと!? 許せん!!」

レミリアに羽交い絞めにされる紫……全力で抵抗しているのだが、体格に見合わないレミリアの怪力が脱出を許さない。
永琳が左腕を捕まえ、藍が右腕を捕まえ……さらに、そのまま仰向けに倒された紫に馬乗りになった慧音が、上から頭突きを放つ。

「痛!! 痛いっ!!」
「……よくも散々引っ掻き回してくれたわね!」

パチュリーも便乗して、紫の頭を分厚い本の角でどつく。
頭突き、本の角、頭突き、本の角……紫の頭は見る見るうちにタンコブだらけになっていった。

「さ、お嬢様……今です、フィニッシュですわ」
「よし……紫、暴れたら足ごと行っちゃうわよ……じっとしてなさい」
「ひぃー!?」

咲夜が両足を押さえ、ついにレミリアが紫のスカートにハサミを入れた。
ジャキンジャキンという小気味良い音と共に、紫のスカートがセクシーになっていく。

(やっぱりこれでしたのね、お嬢様……)

紅魔館で働き始めて間もない咲夜も長いスカートをはいていたのだが、レミリアにぶった切られた。
今のレミリアはそのときのレミリアの顔だ。短いスカートが好きなのか、生足が好きなのか知らないが……。

「あははははは!」

すごい楽しそうだった。



「う、うぅっ……」

太ももむき出しで座り込み、べそをかく紫。

「藍……」
「う、うーん……」

ちょっとやりすぎただろうか、と思う藍だったが、これで紫が更生するとも思えなかった。
三日もしないうちに今日のことを忘れ、新しい騒動を起こしそうな気がする。

「う、うぅ……藍、おなか空いた」
「……」

もう忘れてるっぽかった。恐ろしい。
短すぎるスカートの中がたまに見えるのだが、勝負下着をはいている辺りがまた忌々しい。
実はあんまり嫌がってないんじゃなかろうか、これ。

入浴するとき、紫はもちろん自分の服など用意していかない、それは藍の役目だ。
だから知っている。あんな下着、滅多にはかない。博麗神社に行くときぐらいだ。

「まぁ、紫様はほっておこう」

藍はそう結論付けた。
いつまでも外野に構っていても仕方がない。

「紫をいじめたらすっきりしてしまったわ……」

パチュリーは呆けていた。
小物よりも大物の方がいじめ甲斐がある……レミリアも椅子に座り、恍惚とした表情で余韻に浸っていた。

「ああ、藍はうちでメイドしなさい、一週間ぐらい」
「まぁ、仕事が溜まってるから助かりますわ」
「……」

すごい投げやりな感じで罰ゲームを言い渡されるのもなんだか複雑だった。
もっと全力でいじめてほしいと思うのは、マゾな体質なのだろうか……。

「永琳はとりあえず、本返して」
「……はい」

こうして『デキる教師のバイブル』がパチュリーの元へ返ってきた。
永琳もまた、なんだか釈然としない表情だった。

「慧音は……うーん……」
「なんだ?」
「……肩でも揉んでもらおうかな」

そう言ってパチュリーが席に着く。

慧音は泣きそうな顔になった。
二週間戦ってようやく決着がついたのに、そんなショボい罰か。

「も、もっとキツイのは無いか……?」
「何よ、不服なの? 変態ね」
「く、くっ……!!」
「良いからとっとと肩揉みなさいよ」

慧音は涙ながらにパチュリーの肩を揉む。

なんだこれ、紫が羨ましい……酷い目に合わされてるはずなのに、なんなんだ、紫のあの満足そうな表情は。
「その罰ゲーム、しょぼっ」とでも言いたげだ、やめろ、艶かしい視線と勝負下着をこっちに向けるな。

「あ、あの、私はどうすれば……」

目の仇にされていたはずの永琳など、本を返却して終了である。これまた惨めだった。
藍は早速咲夜から受け取ったメイド服に着替え始めていた、ちょっと照れている表情が不愉快だ。
一応永琳もメイド服のままなのだが、なんだろう、この敗北感は。

「せっかく人が慈悲深い罰にしてやってるっていうのに、ほんとに変態ばかりね……はぁ」

パチュリーが眉をひそめる。
すっかり毒が抜け切ってしまったらしい、罰を与えるのを心底面倒がっている。

「そんなに言うなら、死ぬほどきついのにするけど良い?」
「私は死なないわ! 蓬莱人だもの!」
「わ、私も混ぜろ!! こんな罰じゃ……不完全燃焼もいいところだ!!」
「あっ、そう」

慧音も泣きながら便乗する、前フリが滅茶苦茶長かったのに、こんなオチじゃどうしようもない。
多少きつい目に合わなければ、かえって収まりがつかなかった。

それじゃ……と小さく呟くパチュリー。
その口から出た罰ゲームは、一見簡単そうで、とてつもない難題だった。

慧音も永琳も、すぐに後悔することになった。



慧音に課せられたペナルティ……というよりも使命は、霧雨邸に侵入し、
パチュリーが盗まれた本を奪還するというものだった。

パチュリーは、

「どうせ無理だろうけどね」

と、初っ端から諦めた風だった。
慧音はそれを見て、そこまでの難題なのだろうかと首を傾げたが……。

「人の物を勝手に持って行こうとはとんでもないやつだ!! 食らえ!!」
「いたたたたたた!!」
「懲らしめてやるぜ!!」

人の物は平気で持っていくが、自分の物が盗まれるのは許さない……霧雨魔理沙。
元々はパチュリーの物だと言うのに、まったく悪びれた様子も無い。
数冊の本を持ち出そうとした慧音の手を箒でバシバシと叩き、握力が弱った瞬間に素早く取り返した。

「里の守護者から泥棒まで落ちぶれたか! その根性、叩きなおしてやる!!」
「ふ、ふざけるな!! パチュリーに頼まれて、本を取り返しに来ただけだ! 泥棒はどっちだ!?」
「バカ言え! 霧雨邸の中に入った瞬間、全ての物は私の物になるんだ!! へい! アリス!!」
「はーい」

魔理沙は慧音からむしり取った本をアリスにパスした。
アリスは先ほどエプロンをし、手に大根を持って玄関から出てきた。手料理でもふるまっていたのだろうか。

「パチュリーの差し金か! あの魔女……!!」

パチュリーは何も悪くないはずなのだが。
しかしそんなことはお構い無しに、魔理沙はうつぶせに倒れた慧音の背を足蹴にし、今度は頭に箒を振り下ろす。

「ぐくっ……な、なんて力だ……痛ッ!!」
「前に咲夜のやつも来たぜ!! あいつは八卦炉を盗もうとしたこともあったからな……!!」
「さ、咲夜でもダメだったのか……」

それではパチュリーが諦めムードなのも頷ける。
咲夜と言ったら紅魔館有数の実力者……役職はどうあれ、レミリアとタッグを組むに相応しい力の持ち主である。

「流石に二度目は許さなかったぜ、箒でこてんぱんにした後……」
「痛い!!」
「もみあげのリボンをほどいて『貧乏パーマ』って呼んでやったぜ!!」

地味な嫌がらせだった。

それにしても、慧音の石頭とカチ合ったら魔理沙の箒などすぐに折れてしまいそうなものだが、
折れるどころか慧音の頭にダメージを与えているのはどういうことだろうか。

「お、お前だってモミアゲを結んでるじゃないか、ほどいたら……」
「私はもともと癖っ毛だから違うんだよ! 貧パと一緒にするな!!」

魔理沙は凄まじい剣幕だった。
これ以上の言及は自殺行為だと思い、慧音は大人しく箒殴打に耐えることにした。

そして激痛の中で悟る。

パチュリーは、自分の所有物を守るときの魔理沙の異常な戦闘力を見越した上で、慧音を霧雨邸に行かせたのだ。
よく見ると魔理沙の箒は青白く発光している。魔理沙の魔力を吸って強度を増しているらしい。

「早くしてよね魔理沙。ご飯が冷めちゃうじゃない」

突然なんなんだアリス。どういうポジションだ。

「ま、魔理沙がダメなら……てぇぇぇぇい!!」
「なっ!?」

慧音は最後の力を振り絞り、渾身の力で大地を蹴ってアリスへと突進した。
せめてアリスが先ほどパスされた本ぐらいは持ち帰らないと、パチュリーに合わせる顔が無い。

「わっ!? まま、魔理沙ぁーっ!!」
「くそ! なんて踏み込み速度だ……このままじゃアリスが……ならっ!!」
「本を返せぇぇぇっ!!」

慧音に追いつけないと思った魔理沙は箒を地面に深々を突き刺し、それを蹴って三角飛びした。
そして、頭からアリスに突進する慧音に飛びつき……その突進を片手で止めた。

「霧雨邸の門は割らせない……! きえーっ!!」
「ぐぅっ!?」
「な、な……絶対普通に走って追いつけただろう、お前……なんだその要らない演出は……」

確かに。

頭を鷲掴みにされた慧音はもはや気力も尽き果て、疲れた目で魔理沙を見つめた。
そしてそのまま、一つの疑問を口にした。

「アリスとお前は犬猿の仲だったじゃないか、それが、どうして……」
「ふん、言っただろう……」

そう言って魔理沙は慧音を片手で放り投げ、アリスを指差し、ウインクをした。

「霧雨邸の中に入った瞬間、全ての物は私の物になる……アリスだって例外じゃないんだぜ」
「ま、魔理沙……」

頬を赤らめるアリス。

何この展開。

慧音はうんざりした。
そしてこんなふざけた連中に敵わない自分が情けなくて、涙を流した。

(うざ……)

じゃあ、慧音も霧雨邸に招き入れられた瞬間に魔理沙の物になるのだろうか……。
結局、一冊の本も奪還することができず、慧音はべそをかきながらパチュリーの元へと報告に帰った。

肉体的にも精神的にもきつい罰ゲームだった。



一方永琳が来ているのは博麗神社。

パチュリーは最初、永琳を霧雨邸へ行かせるつもりだったのだが、割り込んできた慧音にそれを任せた。
永琳の罰ゲームはさらにワンランク厳しい……博麗神社の賽銭箱をかっぱらってこい、というものだった。
慧音の場合、自分の側に非は無いのである意味正当な行動である。
しかし永琳の罰ゲームは完全に永琳が悪い、永琳が泥棒である。霊夢に見つかって何をされようと文句は言えない。

「はぁ、はぁ……」

既に永琳はビビっている。
鳥居の影に隠れてこっそりと様子見しているのだが……どこに霊夢が潜んでいるかわからない。
既に永琳はサルダートからヘタレに戻っており、賽銭箱を盗むなんて大それたことをやる度胸は無かった。

バサバサバサッ!

「ひぃっ!?」

茂みからカラスが飛び立っただけでこのビビリよう……永遠亭への復帰は可能なのだろうか。

妖魔調伏が金にならない霊夢にとって、それは単なるストレス解消にしかならない。
言うまでも無く賽銭箱は霊夢の重要な収入源であり、それを盗むことは大罪である。閻魔も黒と言うだろう。

つまり、賽銭箱を盗もうとしている妖魔がいればボコボコにして良いということだ。
永琳は妖魔などとは少し毛色が違うが、強力な術を使うことや身体能力が高い辺り、大きな相違は無い。

「ふぅ、ふぅ……」

そしてついに、ゆっくりと賽銭箱へ歩み寄る永琳。
こういうとき、その手の物語だと確実に枝を踏み折って、怪物か殺人鬼か、その辺のクリーチャーに見つかるものである。
しかし永琳はここ一番でお約束をやらなかった、なんとか、物音を立てずに賽銭箱の元へ辿り着くことに成功した。

(よし、あとはこれを担いで持っていくだけよ……)

賽銭箱が無くなったら確実に霊夢は気付くだろうが、ブツは紅魔館に置いてくるのだから永琳は関係ない。
レミリア辺りがボコボコにされて終わりだろう、そう思えばそこまでキツイ罰ではないのでは……?
そんなことを考えながら、永琳は賽銭箱に手をかけ、力いっぱい持ち上げた。

「ふんっ!! お、重ッ!? 何これ!?」

どうせ賽銭など入ってないから軽いだろうと思ったのだが、賽銭箱は信じられないほど重かった。
そしてそのまま永琳の腰が徐々に反り返り……。

ゴキッ!!

「ひぎっ!? うぐっ!!」

ぎっくり腰が発動し、永琳はそのまま仰向けに倒れ、賽銭箱の下敷きになった。

「むぎゅーっ!! く、くるし……痛いしっ……なんでこんなに重いのよ……!!」

腰にはしる激痛に耐えながら賽銭箱の蓋を強引にこじ開けると、中からいろんなものがこぼれ落ちてきた。
すぐにわかったのは、それらがお金ではないということだった。

「な、なにこれ……? うぐぐぐ……」

それにしても、何故こういうときすぐに腰がリザレクションしないのか。

なんとも都合の悪い不死の体である。

しかしそんなことはもはや諦めつつ、永琳はこぼれ落ちてきた物体をつまみあげ、愕然とした。
それは大量の小石やら、五寸釘やら、藁人形やら……葉っぱも出てきて、目に砂も入った。たまったものではなかった。

お金は一円も入っていなかった。

どうやって食いつないでるんだ、あの巫女。

「し、死ぬ……」

賽銭箱の中身がわかった途端、満足感があって……徐々に意識が遠のくのを感じた。
死にかけることは最近も何度かあったが、これは久々に死ぬな、と思った。賽銭箱、超重い。

メガトン賽銭箱、だが中身の属性は限りなくゴミ箱に近かった。哀しかった。

永琳が薄れ行く意識の中でそんなことを考えていたとき、遠くから足音が聞こえた。
目がかすんで、誰だかはよくわからない。

「た、助けて……」

油断したら途切れそうな意識を必死に保ち、助けを求める。
別に死んだって生き返るから良いのだが……こんな変死、射命丸文が黙っていないだろう。

『月の頭脳、博麗神社で賽銭箱抱え、変死』

明日の文々。新聞の一面を、そんなシュールな記事で飾ってしまう。

一回死んでリザレクションするまでのタイムラグが命取りだ、天狗は足が速い。
慧音に食ってもらう歴史が増えてしまう……。

「助け……」

永琳が覚えていたのは、その後「賽銭泥棒ーーーーッ!!」という叫びが聞こえたところまでだった。
その後何回か死んだ気がしたが、よく覚えていなかった。

盗まれる賽銭なんか一銭も入っていないのに。
五寸釘でも盗めと言うのだろうか。

きっと、霊夢の財布の中は残虐行為手当てでホックホクだろう。

そして文々。新聞の一面は、バッチリ、飾った。

これまたキツい罰ゲームだった。



こうして罰ゲームも終了。
藍は紅魔館でメイドの片手間に再び紅魔女子学校を開いて、橙ともども、メイド達に勉強を教えているらしい。

もともとパチュリーとは同盟に近い関係だったし、罰ゲームが緩いのはそれほど不思議ではない。
そして、慧音に言った言葉、

『そんなに真面目に教えたいなら、この決闘が終わったあともここに通って教えてやれば良い事だ。
 ……今は私闘でしかないんだよ上白沢先生。私達は生徒を巻き込んで勝手に争っているんだ。
 上手い具合に生徒を手懐けてそれを許してもらおうなどと、そんなものは我々の側のエゴにすぎないのさ』

これは慧音というよりも、自分に対して言った言葉だったのだろう。
勝負中は冷酷に、勝負が終われば大らかに……なんとも割り切った、合理的な考え方だった。

午前の部と午後の部があり、日勤のメイドと夜勤のメイドの両方をカバーしているらしい。
チルノやルーミアも顔を出し、さらにはパチュリーもときどき手伝うそうだ、それはなんとも微笑ましいことだった。

「よーし、今日も五十音の書き取りからだ」
「はーい」

はきはきとした藍の声に、生徒達が元気良く応える。

生徒達の中に紫が混ざっているのは無かったことに。
帰っても一人だから家事が面倒らしい。



永琳は、溜まってしまった調薬の仕事を精力的にこなしていた。
博麗神社での罰ゲームは確かに辛かったが、もうそういったことには強い耐性がついてしまっているらしい。
死んだことで腰もまとめてリザレクションし、イナバワッペンの服を身に着けて永遠亭へと戻ってきた。

永琳の部屋にはてゐと鈴仙が。鈴仙は薬を箱詰めし、てゐはメモを片手に在庫の点検をしている。

「モサGと美肌クリームが全然足りてませんね、すぐ作れます?」
「素材さえあればできるわよ」

永琳はすぐに必要な素材をメモに取り、てゐに渡した。
てゐはそれを眺めながら、小さく頷く。

「じゃ、これは私が下っ端に指示しておきます」
「てゐー、今回里に持っていく分ってこれだけだったっけ? ちょっと、一緒にチェックしてくれない?」
「あー、うん。ちょっと待って、今行くわ」

てゐは永琳に背を向け、鈴仙と一緒に納品物の点検をしに行った。
なんてことない、いつも通りの永遠亭……しかし、随分と長い間忘れていた感覚だった。
まだ、てゐが少し永琳に対して身構えるような態度を取ることはあるが、表面上は普通にしている。

満月がまだだから慧音も歴史をいじってないのだろうか? 慧音の能力の詳細についてはよくわからない。
しかしこうしていられるのは、ウサギ達の側にも反省があったからだろう。
イナバワッペンも案外、本当に永琳を応援していたのかもしれないし。

だが仮にそうだとしても、素でああいった応援をするというのはどうだろう。
服を隠したのも、着て欲しいから、という気持ちだけで説明できるものだろうか。
なんとも釈然としないが、てゐも大人しいし鈴仙も従順だ、忘れることにしよう。

(忙しくて、それどころじゃないしね……)

総じて、嫌な思い出の方が多いが……たまにはこういった刺激もあった方が良いだろう。
溜まりに溜まった疲れは、住み慣れた永遠亭が少しずつ癒してくれるに違いない。
それも、しばらくは仕事が忙しくて難しいかもしれないが……。

「それじゃ師匠、私、里に行って薬売ってきますね」
「お願いね、ウドンゲ」

ウサギ達もサポートしてくれる。
いつに無く、鈴仙の姿が頼もしく映った。

「私が行ってる間に、またどこかに消えたりしないでくださいね」

鈴仙が笑いながら、冗談っぽく言う。

「ええ」

そして永琳の表情も緩む。
ようやく、永遠亭に……本当に、帰ってきたのだ。



魔理沙にぼろぼろにされた慧音は、数日間紅魔館で療養した後、寺子屋へと戻ることになった。
藍とパチュリーが生徒達の世話をしてくれているということで、自分も気兼ねなく人里の教師に戻れる。
慧音の足取りは軽かった。怪我も治ったし。

あと、霧雨邸でのことは、歴史を食って無かったことにした。
実はそれで食あたりを起こしたのも、紅魔館での療養内容に含まれていた。
永琳の変死の歴史も大分胃腸にダメージを与えた。キツかった。

しかし本当に、物理的に歴史を食っているのだろうか、そうであれば強烈な話である。
一体どんな味がしたのだろう。特に永琳の変死。

さておき慧音は風を切り、人里へ向かう。
あの子はどうしているかな、と、幾人もの生徒の顔が脳裏に浮かんだ。

(……待てよ?)

そういえばすっかり忘れていたが……。

『まぁ、それなりに学もあると思うし、面倒見が良い奴だから大丈夫よ』

咲夜の言葉を思い出す。そうだ、慧音の代わりに臨時教師が入っていたはずだ。
得体の知れない悪寒を覚えた。根拠は無い、あえて言うなら野生の勘というか、本能というか……。

(嫌な予感がするぞ……)

臨時だとか、代理だとか……そういえば、そもそもこの騒動が始まった理由って……。

(永琳が臨時教師としてやってきたからだ……!!)

軽かった足取りが一気に重くなる。
しかし、できるだけ早く寺子屋へ戻らなければ大変なことになるような気がした。
気持ちが逸る、そういえば……。

(決闘が始まって以来……紅魔館の門番を一度も見かけなかったが……)

人里の入り口に降り立ち、寺子屋へと走った。
そろそろ夕時……沈んでいく夕日が慧音の気持ちを一層焦らせる。

そして寺子屋の前に立つ、息を切らして、戸の隙間から中の様子を探る……。



「美鈴先生ーー!! 行かないでぇぇぇぇ!!」



嫌な予感的中。

「皆ーっ!! ごめん、ごめんね……でも私にも、お仕事があるから……」
「美鈴先生ーーっ!!」
「美鈴先生のオッパッ……ッッ!! ……美鈴先生のこと大好きだったのに!!」

言い直しやがった、またあいつか。

入り口から中を覗く慧音の額に、メキメキと血管が浮かぶ。

温厚で情深く、母性溢れる美鈴先生は生徒達の心を鷲掴みにしていた。
それは八意永琳、八雲藍、パチュリー・ノーレッジ……どのタイプにも属さない、強敵。

「美鈴せんせーっ!!」

どさくさに紛れて美鈴の胸元に顔をうずめる邪悪な生徒。
それに気付いてない無邪気な美鈴先生。

慧音はもう限界だった。



「お前らーーーーッ!! そこになおれーーーーッ!!」



人里に慧音の怒号がこだまする。

その後、頭突きの音もこだまする。



これ以降、慧音は金輪際誰かに寺子屋を任せることは無くなったという。



~続かない~
ようやく終わりました。
ここまで読んでくださった方々、まずは長いことお付き合いありがとうございました。

我ながら滅茶苦茶だと思うんですが、今回、レミ豆(作品集38)のときにあまり活躍させられなかったパチュリーを積極的にいじっていきたいと思ってました。
大体満足したかな、と……やはり、あまり表に立ってどうのこうのってイメージが無いようです。

あとは思うさま永琳さんもいじれました。
全編通してあまりにも可哀想なので、最後は少しやさしめに。

なので酷いオチは慧音先生にパスしました。
ごめんなさい。

今まで「臨時教師どうなった」と言われまくり、ひやひやでした。オチだったので。

美鈴と予想してた人は正解!
何も無いですけど。

もう、こんなに長くギャグばっかり書いていて、脳みそがスカスカな感じです。

それでは、まとまり悪いですがこの辺で……。
VENI
http://www.geocities.jp/hurkai732/index.html#
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コメント



0.4090簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
チルノはやっぱり⑨から脱出できないんですね…

いつもながら楽しく読ませていただきました。
今後の作品も楽しみに待っています
5.100名前が無い程度の能力削除
お疲れ様でした。楽しませてもらいました。
16進数と本編関係ないのにラブラブなマリアリには吹きました。
9.100名前が無い程度の能力削除
ようやくコメできるぜ。というほどコメントはなく。
ただ、紫様のヘタレに哀しみつつも、にやけている私が居たのは確かだったのだ……
14.100ムク削除
まずはお疲れ様でした。
長編ながらも退屈せずに読ませていただきました。本にして布教したいです、これ。
オチ担当が中国とは斬新。まあ、参戦させられたら間違い無くジョーカーでしょうねえ。おっぱい的に。

・・・「チェーン!!」のフレーズにほれました。⑨っぽくてなんか。
15.100名前が無い程度の能力削除
藍に見下されながらも感じちゃう……ビクッ!ビクッ!ってなってる紫様に噴いた。このままヘタレて行く紫様が読みたいなと思ったり。あとルーミアはやっぱり十進法を採用しなかったので安心した。努力が報われなかったチルノがグレないか心配だけど、理解者というかイチャつくほどの相手がいるなら大丈夫?

>チルノほどは伸ばしてこなかった。
橙では?
16.100名前ガの兎削除
寺子屋作品群、大変おいしゅうございました( ´Д`)b
19.100華月削除
16進数とラストに爆笑しました。
全話通じてとても面白かったです^^
20.無評価VENI削除
>橙では?
ああ、そうですね……見落としてました。
修正しました、ご指摘ありがとうございます。
23.100名前が無い程度の能力削除
前メイド長!ド級の変態行動ッ!ぼくは「敬意」を表するッ!
美鈴先生の授業すごく……受けたいです……
31.100名前が無い程度の能力削除
ルーミア色々と超越しすぎwww
32.100名前が無い程度の能力削除
貴方は一体どれほど私の腹筋を破壊すれば気が済むんだい!?w
藍様には吹きすぎました。
35.90名前が無い程度の能力削除
ヤバイ、ヤバイ
38.100名前が無い程度の能力削除
いや、素敵でした。色々と。お腹いっぱいです。
またいずれ新たな作品でお会い出来る日をお待ちしてます。
39.100名前が無い程度の能力削除
若島津、若島津魔理沙じゃないか!
40.80名前が無い程度の能力削除
やさぐれた藍に吹いた。
ただチルノはちょっと残念。
16進数とオチは多分来るだろうなぁ、と思ってました。
41.100名前が無い程度の能力削除
全編通して見所多すぎwwwさすがとしか言い様がない。
藍の尻尾目当てな永琳とマリアリが特にツボった。
42.100エリス・ブライト削除
最後まで最高ですね!チルノと前メイド長が一番笑えました!慧音先生には是非とも寺子屋家業を頑張っていただきたいものです。また今回のを設定に含めたお話がくることを楽しみに待ってます!
43.80名前が無い程度の能力削除
前作までに比べて若干勢いがなかったかな、てのが正直な所。
優勝者は発表順から予想がついたし、罰ゲームも対象者が痛めつけられるだけなので、笑える以前に引いた。
チルノもここまで盛り上げておいてそれは…ってオチだったので、最後なにかもうひと工夫欲しかった。
とまあ愚痴愚痴書いてしまったけど、娯楽作品として十分楽しませてもらいました。
45.100名前が無い程度の能力削除
紫様が!紫様が!www
すっごく楽しかったです!読後感が最高です!
47.90名前が無い程度の能力削除
おちはめーりんwwwww
48.80思想の狼削除
思わず「ちぇーーーん! カムバーーーック!!」と言ってしまう所でした…w
52.100名前が無い程度の能力削除
面白すぎるwwwwww
56.90名前が無い程度の能力削除
いや、技が多彩すぎてどこをどう褒めたりけなしたりすればいいのか(ぇ
とりあえずサルダートな師匠とかゆかりんとか素敵すぎ。
57.無評価名前が無い程度の能力削除
ルーミアの優秀さに吹いた
61.80名前が無い程度の能力削除
月面戦争の回想に吹いた。
ずっとチルノは実は全部九十点台だけど、
名前書き忘れで0点というオチを期待してた。
コテコテですね^^;
64.100名前が無い程度の能力削除
いや、とても面白い作品をありがとうございました!
68.100名前が無い程度の能力削除
ゆかりんの立場がw
やっぱ美鈴は子供に好かれますよね!
70.90名前が無い程度の能力削除
これだけの長編をきちんと纏める力量に感服しました。
71.100名前が無い程度の能力削除
永琳が無事に永遠亭に戻れたことに感動しました。

ギャグもすごく面白かったのに、感動までさせられるとは思いもよらなかったです。
100.70名前が無い程度の能力削除
毎回露骨に紅魔組を贔屓する…いやらしい
111.90名前が無い程度の能力削除
紅魔館びいきとかえーりん不遇とかはいいとして、けーねは主人公?なんだからもう少し活躍させて欲しかった。
112.無評価名前が無い程度の能力削除
魔理沙とアリスのところが邪魔