Coolier - 新生・東方創想話

永遠 ← 輝夜

2007/06/25 09:10:35
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永遠に続くかのような閉塞感。

ならばいっそのこと、壊れてしまえばいいと思った――

 















思えば能力とは、その者自身の性質そのものなのだろう。

いと高き者として生まれ、物心つく頃には自覚していたこの感情。

あの、息も詰まるほどの閉塞感。

その息苦しさに、私は何度殺されただろうか。

だから自身の能力について自覚したときは大いに喜んだものだ。

永遠と須臾を操る程度の能力よ

この永遠とも思えるくだらない時間を、須臾へと変えてしまえ――と。

それからの私は、きっと周りの連中からはまるで年を取っていないかのように見えたことだろう。

ふと気が付けば私の一瞬は、100年分の歳月を経ていた。

しかしそれでもやはり――気が、狂いそうだった。

100年経ってもまだこの空間は死んでいるのか、と。

須臾の刻の中でさえ何も変化しない世界。

あぁ…それならば自らの永遠を須臾とするのではなく、世界の永遠を須臾へと変えてしまおうか。

我が欲望に従い、壊してしまおう。

そう考え至り、実行しようとしたまさにその矢先。

永琳と名乗る変わり者が宮仕えとしてやってきた。

――我が愛しき変わりし者の姫。その退屈、私と共に潰しませんか?

その言葉は誘いの言葉というよりも、むしろ宣戦布告に近かった。

何よりも――

――その話、乗りましょう。

私はその挑発的な瞳を気に入ってしまっていた。

世界を壊すなんて簡単なことはいつでも出来るのだ。

それならば、この姫に仕えたいという変わり者の暇つぶしとやらに付き合ってからでもいいと思った。

知らず知らずのうち、月の命運を担ってしまった変わり者。

後に聞けば、こいつは月の頭脳と謳われた天才であることが判明した。

人はこの輝夜の永遠を欲して近づいたのだと噂し始める。

無二の才と謳われた道を究極的に極めるために永遠を欲したのだ、と。

だがそれは永琳にとっての真実ではなかった。

あれにとって、時間は既に必要なかったのだ。

彼女にとって有限とは幽玄であり、それは無限と同義だったのだから。

つまり何が言いたいのかといえば、

永琳はこの時点で既にありとあらゆる道を究極的に極めてしまっていたのだ、ということ。

そんな者が何故この輝夜の傍にいるのかと、以前に聞いてみたことがある。

永琳の答えは至って簡単で、私は笑ったものだ。

なんでも彼女曰く「左大臣の命令ですよ」とのことだ。

そんなことをあっさりと答えていいのかと問えばこれもまた、

「姫はそんな事を気にしないでしょうし、左大臣には何の恩義も抱いていませんから」と答えが返ってきた。

事実、私はそんな些末なことを気にしない。

こんな世界を維持したがっている小物になんて、興味はないから。

だけども…少しだけ、気になることが出来てしまった。

それは、永琳について。

彼女が宮仕えに来てからもう随分と経つけれど、果たして私に対しては恩義やら何やらを感じているのだろうか、という疑問がふと胸を掠めたのだ。

いや、そんな堅苦しいものでなくても何らかの感情を抱いているのだろうか、という。

それはあまりにも生物じみた、純粋な好奇心。


――もしも。


もしも、永琳がそんなものを抱いているのだとしたら、果たしてそれはどれだけ抱いているのだろう。

一度気になり始めたら止まらない、性質の悪い知的好奇心が私の心を侵食していく。

それは昔から爺や父様に窘められ、変人扱いされるようになったきっかけであり、永琳と共に様々なことをやってきた原因。

それを今更止めるなんてこと、できるはずがない。

だってそれを知るための方法を、私は既に知っているのだから。

だから私はそれをゆっくりと焦らして、焦らして、熟成させていく。

考えるだけでゾクゾクと背筋に快感が走るそれ。

――ねぇ、永琳。私のお願いなら、一体何処までやってくれるの?

それは永琳の私に対する思いを測る為の天秤。

私は天秤をいくつも用意して、その状況をシミュレートする。



ゆっくりと



焦らして



焦らして



熟成させて…




だけどそれだけでは駄目。

考えるだけではいずれ飽きが来てしまうから。

そんなことになってしまえば、詰まらない。

ならばこそ、飽きが来る前に実行に移さなければ。

まずは…そうね。実行するのが不可能であり、そも考えることすらおこがましいようなことを言ってみようかしら。

例えば永遠を作る薬――蓬莱の薬を作ってみろ…とか、ね。

ふふ。そんなことを言えば永琳はどんな反応をするかしら。

いくら天才と謳われた貴女でも、やっぱり不可能?

突拍子もないことを言い出す私を見て驚く?

少しでもそのお願いを叶えようと頑張ってくれる?

まずはそれを見てから、天秤を再調整していかないとね…

うふふ…ふふふ……!













――ねぇ、永琳。ちょっとお願いがあるんだけど…










後悔はしてないわ。
おもしろくもなき世をおもしろく――名言だと思わない?


つかさ
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