Coolier - 新生・東方創想話

紅魔夜話

2007/06/19 05:30:19
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ダークなのは東方じゃない!とかオリキャラ、オリジナル設定は一切認めない!って人は受け入れられないと思うので緩衝地帯として空白を少々・・・。































ルーマニアで最も深いといわれる黒き森の深部にその館はあった。
通称紅魔館、その紅き概観と内に住む者の曰くの為である。
人は謡う、その者は人血を啜ると。
人は謡う、その者は夜を統べると。
しかし、実害の報告は全くなく、目撃例も森で行方知れずとなった娘が1年後
生還し、証言したものが唯一のものである。
その後、娘は女児を出産する際に死亡。
女児はレミリアと名づけられ、里で育てられることとなる。
人里には、もはやその実在を証言し得る者は誰一人居ない。
それでも人は謡う、その館に住むはカインの末裔なりと。


彼は想う、去りし娘を。
彼が見つけたとき、娘は衰弱していた。
おそらく森で迷ったのだ。
普段の彼ならば放置したであろう。
不死者である所の彼は、みだりに人と関わるべきではない。
それは無用の怖れを生むだけだ、と彼の経験が告げるためである。
しかし、彼は娘を拾い、館へと連れ帰った。
幸せだった、と思う。
人の温かさと古き記憶を呼び起こす懐かしさ。
それに溺れた時点で「罪」は始まっていたのだろう。
純白の香りと黒き瞳、それを引き裂く衝動と血の赤。
懐胎していることが発覚した夜、娘は言った。
「すべて思い出していたの。貴方の事、貴方を招き入れず自殺した始まりの夜の事。
輪廻は調和をもたらし、すべてを無に帰す。私には解るわ。この子は貴方を殺します。
それでも、それでも私は貴方と私の子どちらも愛さずには居られない。
だから、さようなら。」
そして、娘は去っていった。
彼は再びその娘の記憶を呼び起こし、そして慟哭する。
「あぁ、わが君よ」


そして、10余年の月日が流れ、異変は、遺された娘レミリアに訪れた。
彼女の背の不自然な突起。
里の人は、最初はその異常現象に対処しようと手を尽くすが、
それが服の上からでも解る様になった頃には彼女の姿を避けるようになり、
そして、影で囁く。
悪魔の子、母を喰らって生まれてきた呪われた身、と。
やがて、里の緊張が臨界を超え、恐怖に駆られた人は彼女を里から追放する。
行く当ても無く、彷徨ううちに彼女は黄昏に紅く染まる館を見つける。
彼女は、この館が紅魔館と呼ばれることも、此処に吸血鬼が住むと言われている事も
知らなかった。
里の人は誰一人、彼女にそこについては話さなかった。
話せば何かが目覚める、そう感じた為だ。
故に、ただ一夜の宿を借りようと、彼女はその館の戸を叩く。

彼は、館の戸を叩く音に気付く。
珍しい、と彼は思う。
今までこの館を訪ねてくる人はいなかった。
不穏な噂が広がっているし、そもそもこれほど森の奥まで入ってくる人間は稀だ。
戸を開けようとして、彼は再び珍しい、と思う。
昔の自分なら、この訪問者は無視しただろうと思う。
この10年でずいぶん心が弱くなったものだ、と彼は頭を振り、そして戸を開ける。

レミリアは戸が開いた事にホッと胸をなでおろす。
正直、この館に人がいるとは思えなかったためだ。
戸を開けたのは男性、服装はきちんとしており館の立派さと相まって貴族のように見える。酷く驚いてるように見えるのは・・・こんな所に私のような子供が居る為だろうか。
「一晩宿をお借りできないでしょうか」
そう尋ねると、男性は横に避けて、道を開けてくれたので、館の中に入る。
長い回廊、しかしながら装飾の類はまったく無く、10年以上も掃除していないかのように
厚く埃が積もっている。
何処まで行くのか、と尋ねようとしてまだ彼の名前を聞いていないことに気付く。
「自己紹介遅れてすみません。私レミリアと言います。お名前を伺っても良いですか?」
そう聞くと、彼は少しの間をおいて、
「カインの・・・いやカインと呼べば良い」
と答え、黙り込んでしまう。
やがて、回廊は終わり、食堂に着く。
カインは食事を用意すると、回廊にある扉の一つを指し、
「寝室にはそこを使えばよい」
と言うとどこかへ行ってしまった。
酷く疲れていた彼女は、食事が終わるとすぐその部屋へ行き、すぐに眠ってしまう。

明け方、レミリアは痛みで目を覚ます。
肉を裂き貫く痛み。紅く染まるシーツ。
バタン、と扉が閉まる音を最後に、彼女の意識は再び闇に落ちる。

正午、レミリアは再び目を覚ます。
起き上がろうとする彼女は破れた服と真紅に染まったシーツを見て困惑し、
そして、自らの背に翼があることに気付き驚愕する。
とりあえず、部屋の中にあった服で身を包み、館の主を探す。
と、その時玄関の戸が開き、そして閉じる音がする。
彼女は慌てて玄関へ行き、扉を開けるが、そこには誰の姿も無かった。
ただ、風が足元に積もった灰を吹き流していくのみ・・・。
外に出ようとした彼女は、ふと思う。この翼を人にどう説明すれば良いのだろうか、と。
以来彼女はその館に住んでいる。館の主は戻らない。

10年後、その館の前を通りかかった旅人が館に住む姉妹を見たという。
そして500年が経ち、今、その場所には館は無い。
















初投稿なのですが、いきなりこんな色物出すと引かれるかなぁ・・・と思いつつ。
オリキャラと言うか・・・辻褄合わせの為のキャラでしかないのですがね。

紅魔郷のおまけ.txtを読んでいて思いついたネタです。本来は歌詞だったのですが、文章に起こして見たりしました。
ネチョ目的で書いた小説ではないのですが、設定の都合上匂わせる表現は避けて通れなかったりするので、匂いがするだけでも嫌だ、という方にはごめんなさい。

以下小説のネタバレ風味な物を・・・。
基本的に吸血鬼伝説を踏襲しています。
登場した次の文で死んでいる「娘」は吸血鬼である所の「彼」の生前の妻の生まれ変わりです。
吸血鬼の為す悪行(?)の一つに生前の妻と同衾して子を為すってものがあるんですね。
で、その結果生まれるハーフは吸血鬼を狩る者となる、と。
つまりレミリアは吸血鬼を狩る者、なのですが吸血鬼を狩る代償に自分自身が吸血鬼となってしまいます。
これは、吸血鬼をカインの末裔と呼ぶ所から借りてきた設定で、
曰く「カインを殺すものには7倍の責め苦が襲うだろう」と言う事です。
多分出典は聖書。
最後の仕掛けは旅人の「姉妹を見た」という証言です。
そりゃ、まぁどう見ても年齢的に母娘には見えませんからね。
この部分がおまけ.txt見ていて思いついた部分で、
「495年程、悪魔の妹をしています。」
この表現が気になった、とただそれだけの話です。


夕凪
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