Coolier - 新生・東方創想話

人形のくれた奇跡

2004/06/07 08:07:15
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 朝、目を覚ます。食事をして、本を読み、人形を作る。時折やってくる黒魔術師との情報交換。
 それがアリス・マーガトロイドの一日のはずだった。



「・・・・んっ・・」
 
 目を覚ますと窓からはすでに日の光が差しこんでいた。

「朝・・か。起きようかな。」

 そういって、まず顔を洗おうと思い、体を起こそうとした時


――――――――――――ドクン―――――――――――


「あ・・・・れ・・?」

 体がおもうように動かない。それに熱くて眩暈がする。

「・・・風邪でもひいたのかな?あんまりひくことないんだけどなぁ・・。」

 そう愚痴をこぼすと、とりあえず熱を測ろうと思い起き上がる。

「・・・・・っぐ・・・。」

 たった一歩。それだけなのにすぐに体が倒れそうになる。

「・・やば。けっこ・・・っ・・う・たちが悪い・・・・はぁ・・・風邪みたい。」

 一歩、足を前にだす。床を踏むたびに足の神経を通して頭にまで響きわたる。そこから生じる激しい頭痛、眩暈、
吐き気。目の前の空間がゆがんでまるで自分の家ではない感覚。まっすぐ歩いているのか、それとも曲がって歩い
ているのか。・・・いや、歩いてすらいるのかわからない。足の震えを、おさえることができない。
(あれ?足ついてるのかな?)そう思ったとたんに

―――――――――――バタン、と体が倒れる。

「・・・・・・けて。」

 言葉すらまともにしゃべることができない。呼吸が苦しい。倒れた時の痛みを何百倍もの不快感が塗り変える。
 まるで裸で蛇に巻きつかれているようだ。

「・・・たす・・けて。」

 アリスの風景が熱のせいか、赤くなり、紅くなり、朱くなる。それがしだいに黒くなっていく。

「だれか・・・たすけて。」

 自分の目の前が真っ暗になる。もう何も見えなくなる瞬間だった。アリスはあるものに目がいった。

「・・お人・・形・?」

 なんでこんなところに?だが、その疑問は解かれることなく、アリスは闇へと飲み込まれていった。







 

 いったいどれくらいの時間がたったのか。
 わからない。考えられない。それ以前に考えたくないのかもしれない。
 だって私は一人だから。友達なんていないから。
 初めはお人形がいればそれでよかったはずなのに、いつからだろう?
 友達がほしいなんて思うようになったのは。忘れてしまった。
 このまま一人で死ぬの?誰にもきづかれず、誰にも思われずに。
                
嫌だ。

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、イやだ、イやだ、イやだ、イやだ、イやだ、イヤだ、
イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤダ、イヤダ、イヤダ!イヤダ!!イヤダ!!!

 一生懸命に体を起こそうとする。なのにどんな努力をしてもゆうことをきかない。体が熱い。まるで体中に火
がついているようだ。いや、どちらかというなら、体中から出血しているといったほうが正しい。それほどまで
に熱く、痛い。ギシギシと、骨が鉄のような音をたて、それが溶けていくようだ。
 本当にこのまま死んじゃうのかな?そう思った矢先だった

               ピタ
 
 額に何か冷たいものがあたった。
 なんだろ?すごく気持ちいい。
 体の熱が下がっていくようなきがした。
 さっきまでざわついてた心がおちついていく。
 少しずつ意識が回復していき、わずかであるが目が開いた。
 自分の目の前に誰かがいる。誰?
 いや、その人物は自分が知っている者だ。
 そこにいるのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










「・・・・れい・・・む・?」

 そこにいたのは博麗神社の巫女、博麗霊夢だった。

「!!アリス、気がついたの!?よかった。」
 
 霊夢はほっと胸をなでおろす。

「私、どうしたんだろう?」
「それはこっちのセリフよ!!まったく、いくら玄関で呼んでも返事がないから中に入ってみれば、あんたが高
熱だして倒れてるんですもの。」

 ああそうだ、自分は倒れたんだ。額には濡れたタオルがあった。
 しかし、気になる事がある。それはなんで霊夢が私の家に来たのか?

「ねえ、霊夢。」
「ん?なに、アリス。」
「なんで霊夢が私の家にぃ「お、アリス、目が覚めたようだな。」

 私の発言は空振りに終わった。

「その様子じゃあ大丈夫そうだな。」
「・・・・・魔理沙?」
「おう。努力家の魔法使い魔理沙ちゃんだぜ。なんだ、まだ寝ぼけてんのか?」
「無茶いわないの、魔理沙。やっと目を覚ましたとこなんだから。」
「わかってるって霊夢。しかし最初見たときはあせったぜ。」

 そんなにひどい状況だったのか?まあ意識を失ってしまうほどなのだからしかたがな「霊夢が体を上気させて
倒れているアリスを抱えているから、てっきりヤバイ薬でも飲ませて襲おうとしていたのかと・・・・
    
       スパコ――ン!

って、おい霊夢、今の純粋に痛かったぞ!?」
「だまれ!冗談でもいって良い事と悪い事があるでしょ!!」
「ちょ、まて霊夢!私が悪かった、だからそのお払い棒しまえ。そしてこんな所で夢想封印使おうとするな!!」

 あ――、なんかまた頭が痛くなって気がする。

「霊夢、お願いだから夢想封印はやめて。それとあんまり騒がないでくれる。一応、私病人なんだから。」
「あっ、ごっごめんなさいアリス。」
「まったく、霊夢をほんとにうるさいよな。」

     ブチッ

「だ・れ・の・せ・い・だ・と思ってんのよ!!!!」
「うわ!スッ、ストップ!ワンモアプリーズ!!」

 双方、ともに全然反省の色なし。

「はあ。頼むから二人とも静かにして。」
「うっ、ごめんなさい。」
「あー、私も今回はいいすぎたな。すまん。」

 ようやく少しは反省してくれたようだ。余計に熱が上がった気がするが。まあそれはおいといて

「それより、なんで二人とも私の家にいるのかぉ「あら、目が覚めたようね。」

 ・・・・・・ツーストライク。あと一回でアウトである。

「ええ咲夜。ついさっきね。」
「しかし、流石メイド長だな。適確な処置をしてくれるぜ。」
「そんあ大袈裟なもんじゃないでしょ。あれぐらい常識よ。」

 次に出てきたのは、メイドの服を着た大人っぽい女性だ。彼女はたしか・・・

「前になんか服がどうとかいってた・・・」
「ええそうよ。覚えていてくれて光栄ね。そういえばまだ名前いってなかったわね。私は十六夜咲夜。紅魔館で
メイドをやってるわ。よろしくねアリス。」
「こちらこそ、助けてくれてありがとう。」
「私たちにはお礼の言葉ないのか?」
「さっきまで部屋で騒いでてよくゆうわね。とくに魔理沙、あんたはさっきの霊夢の言葉を聞くかぎり、私の容態
で楽しんでた感じがするわ。」
「おいおい、いくらなんでもそれは酷すぎるぜ。それならさっきあやまったろ。それに命をもてあそぶ趣味は
ないぜ。」
「はぁー。病人は安静にさせないとだめでしょ。また悪化したらたまんないわ。それよりアリス、食欲ある?」
「食欲・・・」

 そういうとアリスのお腹がきゅ――、と可愛らしい音をたてて鳴った。
 それによるためか、アリスの顔が真っ赤になる。それを見た咲夜は微笑んで

「お粥作ったからもってくるわ。」といって姿をけした。
「んじゃ、私はもう少しで薬の調合が終わるからさっさと続きでもするか。実験室はかってに使わしてもらってるぜ。
ちょっとちらかっちまってるがそれぐらい勘弁してくれよな。後片付けは病気が治った後やってくれ。」

 片付けくらいしようとは思わないのか。魔理沙の家はいろんな道具が放置しぱなっしなのを思い出す。ちょっとと
いえどもその風景を想像するだけで苦笑いしてしまう。

「それじゃ私は氷と水を換えに行こうかな。」

 そういって部屋を出て行こうとする二人に私は

「霊夢、魔理沙、助けてくれて本当にありがと。」

 と、自分でもびっくりするぐらい自分の素直な気持ちを伝えることができた。
 二人が私に振り返ると笑顔で「どういたしまして。」と同時に答えて部屋を後にした。










「・・・・おいしい。」
「そう?よかったわ。あせらずにゆっくり食べてね。」

 こくりと頷くとまた箸を動かしてお粥を食べ始める。熱にもかかわらず食欲が結構ある。
 思えば朝から何も口にしていなかった。そのためなのか、それとも咲夜が作ってくれたお粥がおいしすぎるのか。
(そういえば今までに誰かが作ってくれた物を食べたことあったかな?)そんな事を考えながらでも箸だけはしっ
かり動いていた。

「とりあえず少しはましになったようね。」
「でも、それは安静にしていれば大丈夫なレベル。また歩いたりしたらすぐとまでいかなくても、また倒れるわ。」

 霊夢と咲夜の会話を聞きながら最後の一口を口にする。

「ごちそうさま。すごくいおいしかったわ。」
「お粗末さま。片付けちゃうわね。」
「あっ、それ私がやる。咲夜ばかり苦労させるのもあれだし、休んでて。」
「そう?ならお言葉に甘えようかしら。」
「そうしといて。」というと霊夢は空になった器を持っていった。

 そうして今の空間にいるのは、私と咲夜だけになる。特別話すこともないせいかお互いとも黙ったまんまだった。
二人っきりという状況に何をすればいいのかさっぱりわからない。とりあえず何か考え

「そういえば、あなた・・」
「えっ、あっ、な、何?」急に話しかけられたのでビックリしてしまった。
「そういえば、あなたってほんとに人形を作るのが上手ね。」
「ああそのことね。そうね、物心ついてた時にはもう人形作ってたから。それに・・・・それにそれ以外にしようと
も思わなかったし、それ以外にすることもあまり思いつかなかった・・・・。
「・・・寂しかったのね。」
「・・・・・・・・・・ええ。」

 寂しかった。その一言にアリスは正直に答えた。これ以上見栄を張るのは嫌だった。
 自分には人形達がいてくれる。だから寂しくなんかない。それはただの自己暗示である。
 いくら自分にそう言い聞かしても心はそれを否定しようとする。
 私は誰かに見つけてもらいたかった。だけど誰にも見つけてもらえずに時間だけが過ぎていった。

「私もね・・・・・・」
「えっ?」
「私もね、人間界にいた時はずっと一人だった。」

 その言葉が頭の中を何度もよぎる。(この人も一人だったというの?)

「私にはね、時間を操る能力があるの。そのせいで、周りの人から奇妙な目で見られてた。中には人間じゃない、
妖怪の子供とまで言われたわ。」
「そんな・・ことが。」
「ここ幻想郷では、妖怪、幽霊、そして人間が何か能力を持っているのがあたりまえだけど、人間界ではそんなの
なくてあたりまえなの。人間は非現実的なものを恐れ、避けようとする。もしかしたら自分に危害を加えられるん
じゃないかと思って。そのせいで、私は両親にも恐れられて、すぐに捨てられたわ。たとえ自分の子供でも害があ
るとわかれば例外なく恐れるのよ。それが人間の心の弱さね。」

 開いた口がふさがらなかった。本当にそんなことがあったとしたなら、それは自分よりもはるかに辛いことのは
ずだ。相手にされないのではなく、周りの者から忌み嫌われていたのだ。それならいっそ無視されたほうがずっと
楽である。彼女は人間界で人ならざる能力を持っていた時点で、人間界のルールからはずされていたのだ。自分だ
けではなかった。
 むしろ、本当に孤独という寂しさを知っているのは彼女のほうだ。

「まあ、今さら何を言ったってしょうがないし。それにこの能力のおかげで幻想郷に来れたし、自分を必要として
くれる主にも出会うことができた。お嬢様には感謝してもしきれないわね。私に居場所と存在意義を教えてくれた
んだから。」
「存在意義・・か。私にも見つかるのかな・・・・・」
「見つかるわよ。それに、見つからなかったら見つからなかったでいいんじゃない。」
「それってどうゆう意味?」
「本当に必要なのは、存在意義ではなく、理解者ってこと。」
「理解・・者?」
「そう。自分のことを理解してくれる者がいれば自分を必要ともしてくれるものよ。」
「・・・でも、私にはそんな人・・」
「これから作ればいいのよ。時間はたっぷりあるんだから。それに霊夢や魔理沙に喧嘩を売るのは、自分を見つけ
てほしいからじゃないの?」
「!!!」

 図星を突かれて顔がいっきに狼狽していく。
 この前会ったとき、弾幕ごっこを持ちかけたのもそれ以外にする方法がわからなかったからだ。
 それが自分にできる精一杯のアピールである。

「彼女達も、まんざらあなたのことを嫌ってないみたいだし。そうでなければ看病なんてしないでしょ?もちろん私
もね。」

 その一言が私の心にしみこんでいく。
 まるで水面に落ちた水滴が波紋を描くように広がっていき、そしてきづいたら

「あっ・・あれ・・・?」

 私は涙を流していた。誰かの前で涙を流すのは初めてである。

「ふう。何かあったら紅魔館にいらっしゃい。相談ぐらいだったら仕事の間にでも聞いてあげるし。それに魔法使い
も一人いるから多分いい話し相手になれるわよ。」
「うん・・。ありがと・。」

 泣いてるせいで言葉がうまく話せない。もっと色々と伝えたいのに言葉にだすことができない。
 しかし、今はそれでかまわないのだ。言葉にしなくても十分伝わっているから。









「お――い、薬できたぞ。」

 それから数分して魔理沙が薬を持って部屋に入っくる。後ろには霊夢もいた。

「ごくろうさま。それにしても後少しって言ってたわりには随分時間がかかったみたいね。」
「あー、まあな。病状からして一日で治りそうになかったから、三日分くらい作ってたんだ。」
「ふーん。あなたにしては気が利くのね。」
「ふっ、今頃きづいたのか?」

 なぜかとてもえらそうである。

「どうでもいいけど魔理沙、私が病気なのをいいことに実験室や他の部屋をあさって、なにか良い物があったらパクッ
てないでしょうね?」
「・・・・・・・・・・・ソンナコトナイゼ。」
「なんで視線逸らすわけ?しかもセリフ棒読みだし。」
「まあせっかく薬できたんだし、早く飲めって。できたてだしな。」

 薬にできたてもくそもないきがするが。それ以前に無理やり会話そらしたきがひしひしと伝わってくる。
 後で部屋のチェックする必要があるわね。

「・・・ま、それよりせっかく作ってくれたわけだし、薬でも飲もうかしら。」

 魔理沙から粉末状の薬をもらうと、水といっしょにいっきに飲み干した。

「・・・・・ニガイ。」
「良薬口に苦し、ていうだろ?それぐらい当然だ。我慢しろ。」
「わかってるわよ。」

 とりあえず口の苦味をとるためにもう一杯水を飲む。っと

「ん、どうしたの霊夢?なんかさっきから私を見てるみたいだけど。」
「それに顔色も悪いわね。さっきから随分静かだけど、アリスの風邪でもうつった?」
「え?あっ、いや、そういうわけじゃあナインダケド・・・・・。」

 そう言って視線を逸らす。

「「??」」

 咲夜とアリスが同時に首をかしげる。




~~~霊夢脳内処理中~~~




「さて、洗い物も終わったし、戻るとするか。・・とその前に、随分魔理沙遅いわね。後少しって言ってたのに。
ちょっと様子でもみてくか。」

 そして実験室の扉前までやってくる。そこには

    立ち入り禁止   入ったらマスタースパーク

 と書かれた張り紙があった。

「・・・・黒魔術でもやってんのかしら。」

 そんなことないか、と半分否定しながらとりあえずなかの様子でも探ろうと扉に耳をあてる。

    ゴリ   ゴリ   ゴリ  
                         グツ   グツ   グツ
             ザク   ザク   ザク

 煎じてたり、煮込んでたり、細かく切り刻んでる音が聞こえてくる。
 どうやらちゃんと薬を作っているようだ。

 ゴリ                ゴリ
     グツ                    グツ
           ザク                  ザク
   カン                 カン              カン

 ・・・・・・・・・・・・・ん?

    カン       カン      ゴリ      ザク
       じゅ~~~~~~     キン
 ドドドドドドドドド           うぃ~~ん             うぃ~~ん

 ちょっとまった。なんで薬の調合でこんな音がするの?
 
    ちゅどん    グツ           ドカ             ベシ
 ガキン         スパン         じょぼぼぼぼぼぼぼ
       スカ          ねちゃ               でん
  はぐ     がががががががががが   ピーポーピーポー
               やめて~~~~~

 悲鳴!?ちょっと、なに調合してんのよ!??!!?

 その悲鳴がしてからしばらくして音がやんだ。そして魔理沙が部屋からでてくる。目が合ったとたんおもわず体が
ビクッとする。

「・・・・聞いてたのか?」
「うっ、うん。」
「・・・そうか。このことは誰にも言うなよ。もし言ったら・・・」

 コクコクとエターナルミーク以上の速さで首を縦に振る。

「ならよし!思ったより時間がかかったな。早くアリスんとこいこうぜ。」
「う、うん。」

 生返事を返したものの、やはり中が気になってしまうのは悲しくも人間の性である。
 実験室に目をやると、そこにはただ薬の調合に使ったと思われる小道具が散らかっていた。
 しかし、よく見ると小道具の周りに、赤い髪の毛と悪魔の羽の破片らしきものが落ちていた。
 そういえばこの前、図書館から小悪魔を見なくなったって咲夜が・・・・・

(まさか、ね・・・・。)

 思わず苦笑いをしていまったが、これ以上詮索するのを止めることにした。世の中には知らないほうが幸せなことも
ある。 
 その様子を見てか、魔理沙は霊夢に目で(賢明な判断だな。)と語っていた。




~~~霊夢脳内処理終了~~~
    



「大丈夫よ、別になんともないわ。」
「そう?ならいいけど。」

 このことについては深く考えてはいけない。考えたくもない。忘れるのが一番いいのである。そうでなければ、
次に実験道具になるのは自分である。






 


 それからは他愛のない会話が続いた。自分の周りで起こった事件や、紅魔館の話など自分にとってどうでもいい
ことなのになぜかとても楽しい。誰かと長い間しゃべったのは初めてである。

「思ったより長居しちまったな。そろそろアリスも休んだほうが良いんじゃないか?」
「そうね。私もまだ仕事が残ってるし。そろそろ帰ろうかな。」
「私も戻ろうかな。」
「霊夢はもうちょっといたらどうだ?どうせ帰ったって緑茶飲んでまんじゅうつまんで寝るだけだろ?私たちと違
って暇なんだから。」
「なんですって!私にだって仕事ぐらいあるわよ!!。」
「どうせ神社前の掃除くらいだろ?参拝客もいないし修行もしてないお前がやることといったらそれぐらいしか思
いつかないぜ。」
「・・・・・・・・・・・悪かったわね。」

 結局いい負けてしまう霊夢。そのあまりに哀れすぎる姿が同情心を誘う。

「ま、まぁあんな神社でも一年に一度くらい参拝客くるかもしれないし・・・・。」
「・・・それフォローになってないわよアリス。」

 霊夢残機、残り1。ついでにボムは0。

「・・・・それより帰りましょ。アリスに今必要なのは休息だし。」
「そだな。あーそれとこれ薬な。朝、昼、晩食後に飲んでくれ。三日分あるから多分たりるだろ。」
「そうね。後台所の鍋の中にお粥の残りがあるから、お腹すいたら食べて。」
「うん、ありがと。」

 そう言うと、三人が出て行こうとする。と、その時大切のことを思い出した。

「ちょっとまって。」

 三人がこちらに向き直る。聞こうと思ってたのにずっと忘れていた。

「三人ともどうして私の家にいる・・・というより来たのか教えてくれる?私が熱出して倒れたことなんてしらな
いはずだし、咲夜にいたっては家すらしらないはずでしょ?」
「そのことね。じつは・・・」

 先陣きって話し出したのは霊夢だった。霊夢がなにやら懐をごそごそと探ると

「これよ。」

 そう言ってでてきたのは・・・・

「それ、もしかして私の・・・・?」
「そう。アリスの人形。」
「なんで霊夢が私の人形を持ってるの?」
「神社前に落ちてたのよ。」

 神社前?おかしい。だって私が博麗神社に行くことなんてほとんどない。それに持っていくのなら魔道書のはず。

「落ちてたってのは正しくないか。この人形自分で歩いてきたんだし。」
「歩いて・・・・きた・・?」
「そっ。私の知っている人に人形使ってるのアリスしか知らないし、最初はアリスのいたずらかと思ったんだけど、
なんか急かしてる気がしたからアリスの家に来たの。」
「私のとこにも来たぜ。玄関開けたら人形が転がってたからな、この前来た時アリスが忘れてったのかと思って届け
にきたんだ。」
「私の所にもきたわよ。門番が『人形がかってに歩いてきた!!』とかいって泣きついてきたから調べてみたの。ど
っかで見たことあるな、と思ったらあなたのことを思い出したの。ここに来れたのは人形が教えてくれたからよ。救
難信号の魔術がかけてあったからすぐ駆けつけたわ。」
「ん?なんで咲夜が救難信号の魔術がかけてあるってわかったんだ?」
「パチュリー様に調べてもらったの。お嬢様にはパチュリー様から『連絡しとくから行ってあげたら?』って言われ
たから仕事を抜け出すこともできたし。」

 三人の手には人形が握られている。それは間違いなく私のだ。自分で作った物を忘れるはずがない。
 でもおかしい。だって私は・・・

「おかしいな。私魔術なんて使ってないはずだけど・・・。」
「頭がもうろうとしてて知らないうちに使ってたんじゃないのか?」
「それに、この人形たちや周りの人形はアリスが一生懸命に心をこめて作った大事な物でしょ?だからアリスの思い
を受けて魂が宿ったとしても不思議じゃない。アリスが大事にしてくれたのと同様に、この子達もアリスを守りたか
ったのよ。だからアリスが倒れたのを見て助けたいって思ったのね。」

 三人が私のところに人形を置く。なぜかとても心配そうな顔つきで見つめているきがする。

「・・・・ありがと。本当に・・・ありあとう。」

 そう言って人形を抱きしめる。目から本日二度目の涙を流していた。

「大事にしてあげなさいよ。後、たまには博麗神社にでもきてくれていいわよ。緑茶ぐらいならだしてあげるし。」
「悩み事ならこの魔理沙ちゃんがばっちり解決してやるぜ。もちろん対価はいただくがな。」
「強欲ね。そんなんじゃ行きたくても行けないわ。私のとこにも相談があったらきなさい。門番にも話とくし。」
「うん。そうさせてもらうわ。」

 そして三人が「お大事に」といってそれぞれの帰路についた。三人が出て行くと急に眠くなってくる。
やりたいことが沢山あったが、今は眠ることにした。病気を治してからでも決して遅くない。
 時間は逃げたりしないから。







 


 その後、三日ぐらいして熱も下がった。病気の間は、霊夢や魔理沙そして咲夜がたまにお見舞いに来てくれた。
 熱が下がった後は普通に忙しく、家の掃除魔理沙が使った実験室の片付けなどやることが山ほどあった。
 アイテムもいくつかなくなっているのを確認・・。まあ犯人はすぐにわかったしそのうちいくつかはお礼にあげ
ることにした。
 霊夢にも同様に欲しい物があったらわけてあげた。
 そして、一番親しくできた咲夜は、アイテムのかわりにレミリア人形(1/1スケール)を頼まれた。
 もらった封筒の中には、レミリアとおもわれる前後左右の写真と身長・体重・チャームポイント、おまけにスリ
ーサイズまでびっちり書かれた手紙が入っていた。
(何に使うんだろ?)という疑問は聞かないでおいた。
 作るのを承諾したときの咲夜がみょ―に怖かったのは秘密である。
 そして今日、私は博麗神社に行くことになっていた。もう一度ちゃんとお礼をしたかったからだ。
 魔理沙と咲夜も呼んである。

「これでよしっと。」

 焼いたクッキーを箱に詰めて準備がととのう。家を出ようとして一つやり忘れてたことを思い出す。

「危ない危ない。これは絶対忘れたらいけないことだった。」

 アリスが絶対忘れたらいけないこと、それは・・・・・

「行って来ます。」

 自分の大事な友達でもあり、家族である人形への挨拶である。
 そう言って今度こそ家を出て行った。
 青い空に向かって飛んでいく一つの影。
 それを見送る人形たちの眼差しはどこか温かかった。
 どうもはじめまして。MSCといいます。
 今年大学受験生だったりします。

 今回、初めてここに書き込ましてもらいましたが、やっぱしょぼいですね。
 一応これが処女作なので勘弁してください(;^_^)
 
 最後まで読んでくれた人、まことにありがとうございます。
MSC
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コメント



0.3120簡易評価
3.50名前が無い程度の能力削除
話自体は中々面白かったんですが、相手にされない<忌み嫌われるの図式にはちと疑問が。
まあ人によりけりですけど、どっちがより孤独かは両極端なので「この人も形は違えど孤独を知ってるんだな」みたいな表現のほうがいいように思います。
偉そうですみませんが・・・。

あと、アリスは「マーガトロイド」ですよw
6.無評価IC削除
友達ってのはありがたいですね。あぁ、涙腺が緩む…。こういう話は大好きです。ところで、あれはア・タ・シ(はぁと)?
中でいったい何が起k(ギュイイイイイン

大学受験…だいぶ昔の事に思えます。風邪などひきませんよう。
それと、『様態』は『容態』もしくは『容体』が正しいかと。
8.無評価いち読者削除
>レミリア人形(1/1スケール)
そ、その手があったか!(一応、冗談です)

話のネタがいいですね。孤独に関する咲夜とアリスのやりとり(どちらの方がより孤独だったのかは別にして)とか、何だかんだ親切な三人とか、アリス想いの人形とか。もちろんレミリア人形とか、ヤバい(?)薬の調合とかの小ネタもいい感じです。小悪魔どうなったんだろう(笑)。
ただ、やっぱり文章を書き慣れてない様子が。まあ、それは創作を継続することで慣れていくものなので、今後も作品を投稿していく事をおすすめします。……って受験生に何言ってんだろうな俺。

以下、細かいですが、誤字などの指摘を。
「きずく」ではなく「きづく」が正しいです(3か所)。他、「そんあ大袈裟な」「放置しぱなっし」、「すごくいおいしかった」、「魔理沙が薬を持って部屋に入っくる」、「図書館が小悪魔を見なくなった」、「苦笑いをしていまったが」。
>(中略)それ以外にすることもあまり思いつかなかった・・・・。(←カギカッコの閉じ忘れ)
>中には人間じゃない、妖怪の子供とまで言われたわ。
ここは少し不自然かも。例えば、文頭を「(ひどい)時には」にするか、末尾を「言う人もいたわ」にすれば自然な感じになります。
誤字に関しては、Wordを使っているのであれば文章校正にかけてみる事をおすすめします。基本的な誤字であれば、大概は拾ってくれます。頼りすぎるのも問題ですが。

色々知った様な事を書きましたが、参考になればと思います。長文失礼しました。
19.無評価MSC削除
まさかこれほど読んでいただけるとは・・・<br>
はっきりいって、結構しょうもない小説だなと書き終わって思いました。<br>
感想をもらえて光栄です。<br>
<br>
それにしても誤字が多すぎますね(汗)<br>
一応また投稿するつもりですので、そん時はよく見直します。<br>
読んでくれた皆様、ありがとうございます。<br>
43.90星野又三郎削除
なかなか良かったです。
私はこれを読んでアリスが少しすきになりました。
もともと私も友達は少ないのでアリスの気持ちがよくわかります。
あと、魔理沙のクスリネタもおもしろっかたです。
55.無評価名前が無い程度の能力削除
誤字
  『霊夢をほんとにうるさい』
どこぞのメイドですか?
65.100名前が無い程度の能力削除
なかなか面白かったです。アリスに友達が出来るなんて…(涙
そういえば、咲夜さんの能力は時と空間を操る程度の能力だったはずですよ?
内容はとても良かったです。これからも楽しい話をよろしくお願いします。