Coolier - 新生・東方創想話

すずめすずめ -3-

2004/06/03 07:42:16
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「今日もその美しい金の髪を梳きながらローレライは歌っていた。ローレライにはその気はなくても、多くの者がその歌に惹かれた……」

私は今ローレライに本を読んで聞かせている。
本の題名は「ローレライの歌声(簡約版)」
おねえちゃんに読めるようにしてもらったの。
別の紙に写してもらったんだけどね。
簡約版ってなに?って聞いたらお前達にも読めるってことだって言われた。
なんか含みがあるけど、事実それ以上でもないのであんまり気にしないことにした。

「舟はバラバラになって川の流れに流されていった。……うーん、今日はここで終わりにしよ。どうだった?」
「このローレライ、ちょっとかわいそうだね。」
「そうだよねー。舟沈める気なんてないのに沈んじゃうんだもんなぁ。」
「どっちかっていうと悪いのは船乗りの方じゃない? ローレライは歌ってるだけだもの。」

ちりん
棚においてある和時計が鈴を鳴らす。
針が挿しているのは午の刻。
「あ、そろそろお昼だね。」
時計なんてなくてもいいんだけど、意外とこういう時には役立つんだなぁと思う。
「んじゃ、私は家に行ってくるから。今日のお昼はどうする?」
「んー、今日は自分で採ってくる。」
「それなら、ちょっとゆっくりしてくるね。」
「うん、いってらっしゃーい。」

近頃ローレライは自分でご飯を採るようになってきてるんだけど、その日は私は家でゆっくりすることにしてる。
なんでかというと……
ローレライは人間みたいな姿しててもやっぱり鳥だから、その……虫とか……食べるんだよね。
前帰って来たとき、ちょうど食べてるとこ見ちゃって……ね。

それからローレライにどうするかって聞くことにしてる。
もうあんな猟奇的な光景は見たくないもん。



ということでたっぷり一刻ぐらい家のほうでのんびりしてから倉へ向かう私。
家の外に出るときつーい日差し。
ここは山のほうだからそこまで暑くないけど、やっぱり夏なんだなぁって教えてくれる。
ここは早いところ倉に行って涼むのが吉だね。
あそこの辺は森が近くて日陰も多いし。
ちょっとだけ駆け足で行ってみよう。



私はフラフラの状態で倉に背中から寄りかかった。
そのままずるずるとすべる様に座りこむ。
「はぁ、はぁ……つ、疲れたぁ……暑いぃ……って、なんで私は全力疾走してたんだろう。」(汗
だらだらと流る汗で服がべっとり張りついてますます暑苦しかったり……
しばらく動けそうにないよ。
「あ、お母さんおかえり……なんでそんなにぐったりしてるのさ。」(汗
ローレライがぱたぱたと倉から出てくきて私の側による。
「はぁ、はぁ……なんでだろうね……多分誰かが私の行動を勝手に決めてるんじゃないかな……」(汗
「……? ともかく、すごい汗だね。そんなに暑い?」
「うん。もうどうにもこうにも暑苦しさ全開。」(汗
今にも煙噴いて倒れそうだよ。
……既に座りこんでるけど。
そんな私の様子を見たローレライは、ちょっと考えてから
「ちょっとついて来てよ。」
私が頭に疑問符を浮かべている間にローレライは森のほうに歩いていく。
「あ、ちょっと待ってよー。」
置いてかれるのは嫌だから、なんとか体を動かしてついていく。



あ、歩いてるだけでも体が熱くて……くらくらするよー。
ローラレイにどこへ向かってるのか聞いても
「秘密秘密ー。ついてくればわかるから。」
と言って教えてくれないし……
あー、ほんとこのままじゃ倒れるよー。

と、そこで森を抜け視界が開ける。
「はい、ついたよ。」
「うわぁ……」
立ち止まったローレライ。
その先にあったのは小さな滝、ゆっくりと流れる小川。
水の落ちる音はサーと軽くて……すごく落ちつく。
「ここ、私の秘密の場所なの。暑い日とか、他にもたまにここに来てるんだ。……絶対他の人に教えちゃダメだよ?」
「秘密の場所かぁ……なんか隠したりしてるの?」(にやり
「そ、そんなことないよ。ただ他の人に教えたくないだけだってば。」
「ふーん? まあいいか。んじゃ、ここは私とローラレイの秘密ね。」
「約束だよ。」
ローレライが右手の小指を差し出す。
「うん、約束。」
私も右手の小指を差し出して指切り。
やっぱり約束の時は指切りがないとしまらないよね。

「ふぅ、こうやって水の近くにいるとやっぱ涼しいね。」
「そうだねー。」
二人並んで川に足をつけて涼む。
ゆらゆらと流れる水面はきらきらときらめいている。

かさ…かさ…

と、そこで突然草を踏み歩く音がした。
動物の足音には聞こえないし……ってことは誰か来る?
ふと横を向くと驚いているローレライの顔。
そうだ!ローレライを見られたら……!
「ん?珍しいな、先客か。」
草むらのほうから聞こえてきたのはすごく聞き覚えのある声……あ。
「おや、かすみか。」
「なんだおねえちゃんか。びっくりしたなぁ、もう。」
「お母さん、この人……知り合い?」
「ん? この人は物知りなおねえちゃんで……うぁ。」(汗
そうだった。
おねーちゃんに見られてもまずいのには変わりないじゃん!
「お母さん、か。なるほどなるほど。近頃かすみの様子がおかしいというのはこの子のせいか。」
「あ、うー……」(汗
「さあ『お母さん』、この子はどうしたのかきちんと説明してもらおうかな?」
おねえちゃんを騙すなんて到底無理だし……逃げてもどうにもならないし……
これはもう観念して本当のことを話すしかないね……
「実は、この子はね……」

かくかくしかじか

「ふむ……で、他の人には教えないで欲しい、と。」
「うん。」
「お願い……します。」
手を顎に当て、しばらく考えているおねえちゃん。
「……秘密にしてもいいぞ。」
「本当!?」
私とローレライはぱあっと顔を輝かせる。
「だが……その子が鳥なんかじゃなく、物の怪だったとしても……それでも秘密にしていて欲しいか?」

そう言ったおねえちゃんの顔は珍しく笑っていなくて
しばらく私は、言葉を返せなかった。

「秘密に……していて欲しい。」
ポツリと、言葉を搾り出す。
おねえちゃんは黙ったまま私を見ている。
「お願いだから秘密にしていて!次から何も教えてくれなくてもいいから、叩いてもいいから、この子が物の怪でも秘密にして欲しいの!」
もう一回、今度は毅然とおねえちゃんにお願いする。

ふう、と小さくため息をついた後
「……ならいい。ちゃんと秘密にしてあげよう。」
おねえちゃんはいつもの笑顔に戻っていた。
「うふふ、おねえちゃんならそう言ってくれると思ってた。おねえちゃんは優しいもん。」
「んー、ばればれだったか。あ、ちなみに色んなこともこれまで通り教えてやるからな。私は教えことがすきなんだ。」
「言わなくてもわかってるって。」

「あ、あの……」
「ん?」
ローレライがおずおずとおねえちゃんに問いかける。
何か気になることがあるのかな?
「秘密にしてくれるのはうれしいけど……私は物の怪なんでしょ?本当にいいの?」
「まあ確かに、かすみの母親から何か隠して育ててるんじゃないか確かめてくれないかと言われたが……」
……お母さん気づいてたのか(汗
「ならそれは嘘ついちゃうことになるじゃない。」
「そうでもない。確かめてくれとは言われたが報告までして欲しいとは言われていないからな。」
「そういうもんなの?」(汗
「お前のお母さんだってそれ位のことはわかっているさ。こうしてみていても人を襲うようには見えないし……なにより、私も物の怪だからな。」
あ、なんか今さりげなくすごいこと聞いちゃった気がする。
「おっと、しまった。これは秘密だったのに。」
「おねえちゃん……さすがにそれはわざとらしすぎるよ。」(汗
これでおあいこだと言うようにおねえちゃんは笑顔。


「で、おねえちゃんはここに何しに来たの?」
「こんな暑い日には水浴びに限ると思ってな。お前達も一緒だろう?」
「というか、早くも秘密の場所じゃなくなっちゃったね。」
とほほとため息をつくローレライ。
「もともとここは私の秘密の場所だったんだが……そうだな、これからは3人だけの秘密にしてしまおう。」
「んー、まあいいか。ちょうどローレライのこともばれちゃったんだし。」
んじゃ指切り、と指を差し出す。
ローレライもおねえちゃんも指を組んで、三人で指切り。
これでここは三人だけの秘密の場所。
大事な秘密を言い合った。
三人だけの秘密。

結局その後は三人で水浴びをした。
私もこんな暑い日には水浴びに限ると思ったよ。


間がかなーり開きました3話目。
結構難産でした。
……もうちょっと文書くのに慣れよう(泣
秋霞
http://www.cronos.ne.jp/~syuka/
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コメント



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15.無評価名前が無い程度の能力削除
「おねえちゃん」ってやっぱりけーねだったんですねw