Coolier - 新生・東方創想話

すずめすずめ -1-

2004/05/25 22:12:21
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ぴいぴい

私は首をかしげる。
なぜこんなところで小鳥のような、鳴き声がするんだろう?


ここは森の中の薄暗い洞窟。
私の秘密の休憩場所。
森で遊んで、疲れたらここで休んで。
この洞窟は中まで日の光が入ってくることがなくて、でもすぐ外には日が当たってる。
丁度いい日陰の場所。
私だけが知ってる私だけの秘密の休憩場所。

ぴいぴい

こんな薄暗いところに鳥が巣を作るのかな?
私はよく知らないけど、この鳴き声は鳥で間違いなさそうだし、すぐそこは日が当たってるこの場所だから作るのかもしれない。
頭の上の天井、両手の先の壁、自分が座ってる床と見まわしてみる。

ぴいぴい

……声は聞こえど姿は見えず。
どこにいるのかわからない。
これでも耳には自身があるんだけどなあ、としょぼくれて顔を下ろした先にそれはいた。
なーんだ、真下にいたのか。
えーと、こういうのは灯台元くらい……だったっけ?
んー、このまえ教えてもらったばっかなのになぁ。
また今度おねえちゃんに教えてもらおう。

ぴいぴい

て、そうだった。
この目の前の小鳥をどうするか……あれ?小鳥?
私の足のちょっと先に居る小鳥はちょっと変わってる。
まず手があって足もある。
羽根は背中にはえてる……ちょっと小さいけど、これはこれで可愛くていいかな。
というか顔が人間にしか見えないんだけど

ぴいぴい

って鳴いてる。
これは……小鳥?
いや、小人さん?

まあいいや。
ぱっと見巣も見えないし、このままつれて帰ってあげたほうがいいよね。
見た感じまだ立ったりできないようだし。

ぴいぴい

お椀のようにした手のひらの中に小鳥を乗せてみる。
ちいさくとっくんとっくん。
あったかい。
小鳥は私を見上げる様に見てる。

「いい? 今から私があなたのお母さんよ。」



森を抜けて村まで戻ってきた私。
もちろん手のひらの上の小鳥も一緒。
で、ここまで帰って来て大切なことを思い出した。

「お母さんって、動物嫌いだったような……」(汗
たしか……猫とかすごい剣幕で追っ払ってた気がするなぁ。
見つかったらこの子も追っ払われちゃう気がするよ。

ぴいぴい

どうしよう。
洞窟に戻すのはかわいそうだし……その前にここまで来て戻るのが面倒くさい。

うーん……こまったなぁ。
家につれて帰るのは無理だよね。この子よく鳴くから絶対見つかっちゃう。
ていうか、その前にこの子すごく怪しいし。
可愛いから私はいいけど、大人の人に見つかったら……どうなるんだろう(汗
とりあえず、普通こんな小鳥いないし。
どこかいい隠れ家ないかな……誰にも見つからないところでいつでもいけるようなところ。
……そういえば村のはずれの方の倉って、誰も使ってなかったかな?
よーし、隠れ家はあそこに決めよっと。



倉の扉にかかってた大きな南京錠は外れたまま放ってあって、その鍵は倉の中においてあった。
なんて都合がいいんだろう。
これはきっと私にこの子を育てろっていうお告げよね。

ぴいぴい

うんうん。
この子もそう言ってるようだし、お母さん頑張るからね!

蔵の中に入るとけっこう埃っぽい空気が漂っている。
「うわー、掃除しなきゃ無理かな。」(汗
綺麗なところはないか探してみる……なんだか奥の方がきれいなように見えるけど、色々積み上げてあって通れない。
乗り越えようと手を掛けた途端、体のバランスが崩れる。
「って、わあっ!」

ガラガラガラ……どすーん

積み上げてあった荷物が崩れた。
幸い私も小鳥もなんてことなかったけど、荷物は全部崩れてしまった……奥の方に。
「あーあ……って、お?」
崩れた後から姿を見せてるものがある。
階段だ。

ぴいぴい

「これは、棚からぼたもち?」
見つけたからには登ってみるのが筋というもの。
小鳥を片手にせっせと登った。



で、運良く見つけた倉の二階はとても綺麗なものだった。窓もちゃんとあるし畳まで敷いてある。
私でも誰かが住んでたんだなわかる。
棚には色んな物が置いてあって、小さな鏡があって、結構立派な茶箪笥もあればちょっと小さな箪笥もあった。
机の上には墨とすずりと筆と……本?
日記でもつけてたのかな?もしそうだったら誰が住んでたかわかるかも!
そう思った私は本を手にとってみる。
その表紙にはぐにゃぐにゃした線が書いてあって、その上に「ローレライの歌声」と書いてあった。
……名前には見えないね。(汗
中にはこれまた表紙と同じよくわからないぐにゃぐにゃした線が書かれてた。
今度は上にはなにも書いてないから何が書いているのかまったくわからない。
まあ、あきらかに日記じゃないってことはわかった。
んー、誰が住んでたかはわからないか……っていうかそんなのわかってもどうしようもないよね。

ぴいぴい

……そういえば、この子にまだ名前つけてなかったっけ。
うーん、名前、名前……結花、美咲、由太……は男の子だし。
というか、友達の名前をこの子につけてもダメだよね。
そもそも漢字の名前って感じじゃないんだよねこの子。
うーん、こういうのはお姉ちゃんに聞いてみるといいんだけど……それはまた今度にしとこう。

ぴいぴい

「ごめんね、なんか思いつかないの。名前はまた今度決めてあげるから。」

ぴいぴい

なんか心なしか寂しそうに見えるけど……というか、体を抱えて寒そう…?
あ、この子服着てないし(汗
なんで今の今まで気付かなかったんだろう?
蔵の中って結構ひんやりしてるからなぁ。
そりゃ裸じゃ寒いよ。
ともかく、なんかこの子が着れるようなものはー……
見まわしてみると棚にちょこんと置かれたちいさなちいさな人形さん。
お、あの服ちょうどよさそう。
「ごめんね人形さん、この子が寒がってるの。だからその服ちょっと貸してね。」
とりあえず断りをいれておく。
人形は命が宿ってることもあるから大事にしなさいってお姉ちゃんも言ってたし。

「うん、ぴったりだね!」
人形さんの服はあつらえた様にぴったりだった。
小鳥も震えが止まり、くりくりとした目で私を見ている。
うんうん、と満足しているとわたしのおなかが「くぅ」と鳴った。
そういえばもうお昼かぁ。
「うーん……ちょっと待っててね。ご飯持ってくるから。」
自分だけご飯を食べるわけにもいかないしね。



一旦家に戻るとちょうどお母さんがご飯を入れていた。
「やっぱり予想通りね。」
「むう、なんの予想よ、それー。」
まあ、いつものやり取りなので気にしない。
そして普通にご飯を食べる。
……ふりをして手のひらにご飯粒を溜めておく。
もちろんお母さんにはばれないように。

途中お母さんが微笑んでた気がしたけど……ばれてないよね?



小鳥は小さなざるにちょこんと座って私の手のひらのご飯粒を食べている。
一生懸命に食べているのを見るとやっぱり小鳥もおなかがすいていたんだなってわかる。
ちなみに、このざるは鳥の巣に似たものはないかなと思って家から探してきた。
ちょっと厚みが足りないけど、ぱっと見は鳥の巣に見えなくもないからいいの。

ぴいぴい

しばらくぼーっとしてると小鳥は食べるのをやめて自分の入っているざるを揺らしていた。
もうおなかいっぱいになったから、次は遊びってことかな?
小鳥はその調子でどんどん揺らしてる。
と、気づくと机から落ちそうになっていて慌てて手を出して支えた。
ざるがいきなり止まったから小鳥は勢いあまってざるから落ちそうになった。
なんとかその小さい手で自分を支えると私をじーっと睨んできた。
「だって、あのままじゃ落っこちてたよ?ほら。」
小鳥をつまんでざるの端から下を見せる。

ぴい!

その高さに驚いたのかさっと体を引っ込めようとするが、私がつまんでいるから引っ込められない。
「わかった?」
ぱっと手を離すと小鳥はざるの真中に下がって私を涙目で見ている。
「あ……ごめんね。でも、あんまり揺らすと危ないから。」
じーっと小鳥は涙目でこっちを見たまま。
うーん、どうしよう。
そういえば、赤ちゃんはゆっくり揺らしてやると泣き止むってお母さんが言ってたかな?
ゆっくりゆっくりざるを揺らしてあげる。
揺り篭のように。
私が揺らしてくれたのが嬉しかったのか、小鳥はあっという間に笑顔になった。
激しく揺らそうとするが、とりあえずそれは押さえ込む。
でもまあ、嫌そうな顔はしなかった。

しばらくそうやって揺らしているとこっくりこっくりと小鳥は舟をこいでいた。
わざわざ起こすのもかわいそうなので揺らすのを止めると、小鳥はぱっと眼を開ける。
で、また揺らし始めるとこっくりこっくりと舟をこぎだす。
そのまま揺らしていると、今度はちゃんと眠ったようだった。
揺れてたほうが寝やすいのかな?と思ったけど、実際寝てるんだから揺れてる方が寝やすいんだなと思った。

寝顔も可愛い。人形みたい。
たまに動く表情が見ていて飽きさせない。
そうしているといつのまにか夕方になっていた。
どうやら小鳥もそのまま起きる様子がないので、部屋にあったハンカチを布団のように掛けておいて私も家に帰った。



夜、自分の布団の中で小鳥がどんな夢を見てるのかなと想像してみる。

食べ物を食べる夢

空を自分の羽で飛ぶ夢

綺麗な声で鳴く夢

人間と同じ夢を小鳥も見るのならそうなんじゃないかなと思った。

久しぶりに投稿してみる。
続き物ですよ続き物。
絵を書いててぱっと思い浮かんだネタだったはずなのにえらく大きなものになってしまいましたよ。
小鳥については……まあわかるでしょう。(そのうちであろうと無かろうと)
オリジナルのキャラ入ってるんで受け入れられるかちょっと不安だったり(汗

追記、間違い指摘ありがとうございます。
秋霞
http://www.cronos.ne.jp/~syuka/
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コメント



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1.無評価IC削除
中身と文体が調和していて、情景が目に浮かぶようです。
言葉も上手く選ばれているような気がします。

続きを楽しみにしています。少し怖い気もしますが。
4.無評価いち読者削除
のんびり、ほんわかとしてますね。けどこの小鳥さんを使っているので、そんな雰囲気が続く訳がないと邪推。かと言って先の展開が読める訳でもなく、勝手にもどかしい思いをしてます(笑)。という訳で続き待ってます。

あと…、「南京常」と、作品の真ん中あたり
>その表紙にはぐにゃぐにゃした線とが書いてあって、その上に「ローレライの歌声」と書いてあった。
の、「とが」がちょっとおかしいかも。