Coolier - 新生・東方創想話

破顔、一閃

2004/04/12 10:58:10
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 私は、あの笑顔を忘れない。




 「苦しいときこそ、笑え。心の底から」

一輪の花を手にし、師匠はそう云って笑った。


 「必死の剣が通じるのは、生ける者のみよ。死人(しびと)には通じぬ」

花弁が輝く。


 「そして、死人の心で生きる者にもな」

花が、輝きを増してゆく。師の剣気が花脈を溢れて迸る。


 「だから笑え。死線を越えて、その先に或るものを視て、なお笑え」

師の手にはいまや、光を放つ一振りの剣。


 「それが、我が魂魄の剣、最終奥義」

天を衝く様に掲げられた剣。師の顔は、かつて見たこともない、満面の笑み。


 「見よや、『一念無量劫』!」

眩き光が弾け、花弁が、散った。





 笑えるだろうか。今の私に。

「――これ以上踏み込んで」


 心の底から笑えるだろうか。

「お嬢様に殺されても知らないわよ――」



 眼前の人影は、死人だ。間違いなく生きている人間だけれど。
しかし普通の人間ならば、生きて冥界にいられる筈もなく。

 身を掠める無数の殺気の中で、魂を絞り上げる霊気の渦に巻かれて。
それでも尚、涼しい顔で笑ってみせた。
彼女には視えるのか。死線の先に或るものが。



 ならば、私とて笑ってみせよう。

「六道剣」


 心からの笑みを浮かべて。

「一念無量劫!」


 剣気が、光迸らせて、疾った――。




 お師匠様、

私は、上手く笑えたでしょうか。
さてさてさて。
えらく短いですが、まぁ、ワンシーンのみの思いつきということで。

妖々夢6面中ボスで登場する妖夢の、あの満面の笑みは何事か、
と常々思っていたところ、永夜抄情報の「真剣」というキーワードで得心。

彼女は、きっと真剣に笑っているのです。
妖夢が対峙している相手は、それぞれのご想像のままに。

なお作中、妖忌が手にした花に剣気を集め振るうシーンは、
「向日葵の咲く丘」P-board 301番、観城はるか様の画「終符 一輪之太刀」に
多大な影響を受けたものであります。この場を借りて御礼申し上げます。
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コメント



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9.80名も無い読み手削除
かっこいいですね…。短いけどすごく良いと思います。