Coolier - 新生・東方創想話

幼娘物語

2007/03/05 00:36:13
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「ふっ! ふっ! はっ! ふっ! ふっ! はっ!」

格式高い色調で彩られたヨーロピア~ンな部屋で、大きな鏡を前に一人の少女が汗を流していた。

「駄目ね、これじゃまだ完成度は八割……ふっ! ふっ! はっ!」

レミリア・スカーレット、紅魔館の主にして最強の吸血鬼、
広大な館に優雅に佇み、月をその手中に収める夜の支配者だ。

「レミィ、今日も張り切ってるわね」
「パチェ……そうよ、もうすぐあの日なのだから」
「いよいよ始まるのね、四年に一度の祭典とやらが」
「そう、始まるのよ……私の幻想郷での威信と名誉を懸けたカーニバルが」



『ぷりてぃガールコンテストが!』










マヨヒガに紫様が帰ってこられた、全身をカプサイシンの臭いで包んだ状態で帰ってこられた、
帰ってきた途端お風呂場に直行されたがお風呂が沸いていないのでどうしようもない。

「らぁ~ん! お風呂ぉ~! お肌がひりひりするのぉぉぉ~!!」
「少々お待ちください、狐火で急速に沸かしますゆえ」
「は、早くしてぇ~! 目が辛いの! 舌も辛いのぉ!」
「下が辛い!? それは急いでお拭きしないと!!」
「はよ沸かせエロ狐」

コンコンコンコン狐火の力を借りて今必殺のテイィィィルズファイアァァァァァ!!

「……お風呂が沸きました」
「何よ最後のは」
「ああすると火力が上がりやすいものでして」
「まあそれはどうでもいいわ! 隙間オープン!! ゆかりぃぃん! オォォン!!」
「あっ、お風呂にはゆっくり入らないと」
「ひぎぃぃぃぃぃぃ!! しみるぅぅぅぅぅぅぅ……」
「あーあー」

ひゃぃぃぃぃぃぃぃん

「にゃ? 今の……紫様?」

紫がお風呂で喘いでいる頃、マヨヒガの縁側では黒猫がのんびりと一休み。

「はぁ……」

しかしその表情は暗く、何か思いつめている用でもあった。

「私も藍様や紫様みたいに素敵になりたいなぁ……」

橙はずっと傍で見ていた、美しい肢体を持つ主の姿を、
豊かな胸を持つ主の主の姿を、素晴らしい二人の女の姿を。

「……いいなぁ」

片やせくしぃクイーン、片や元豊胸王、改めて二人と自分との差に溜息が出る。

「私にも、何か無いかなぁ」

胸は無い、お尻も無い、腰のくびれには自信があるけどそれだけじゃ勝負は出来ない、
猫耳コンテストでも開催されたら優勝なのに、と空を見上げながら思いにふける。

「……にゃ!」

ふとその時、橙の頭にとある人物が思い浮かんだ、あの人ならきっと何か知ってるはずだと。

「さっそく行ってみよっと!」

そして橙は走り出した、マヨヒガを出、薄暗い森を風のように駆け抜け、
およそ半刻ほどの道のりを越えた末にたどりついたのは、一軒の古ぼけたお店だった。

「こんにちわー!!」
「ああ、いらっしゃい」

つまり香霖堂である。

「あのっ! 相談があるの!」
「随分と急だね、一体何の……」

そこまで言いかけて香霖は固まった、橙の真後ろにあるたわわとした九つの尻尾、
鬼神のごとき顔でこちらを睨んでくるちょっと身長が高めのせくしぃクイーン、
いつの間にか現れた彼女は間違いなく殺気を香霖へと放っている、まだ何もしていないというのに。

「キィサァムァァァ~!」
「藍様っ!?」
「狐狸妖怪レェェェェェェザァァァァァァァァ!!」
「ちょっ……待っ」
「藍様やめてぇーーー!!」
「むっ!」

今にもその手から放たれんとする弾幕、しかし橙が立ちはだかりそれを止めた。

「いきなりこんなことするなんて藍様らしく無いよっ!」
「どくんだ橙! その男は危険だ!」
「なんで!? いい人だよ!!」
「いい人だと!? そんな事は絶対にありえない! 断言する!!」
「で、でもタオルで身体を拭き拭きしてくれたり、美味しい牛乳を飲ませてくれたよ!?」
「何だとっ?!」

主に猫の姿の時に、ですが。

「お腹を撫で撫でしてくれたりベッドで一緒に寝てもくれたよ!!」
「待つんだ橙君! その言い方は非常に誤解を招……」
「右手に飯綱権現降臨!! 左手に憑依荼吉尼天!!」
「手遅れか」

香霖が消し飛びました。





 ~同時刻 紅魔湖

「チルノちゃん、3足す4は?」
「あたいを馬鹿にしてるの? 34に決まってるじゃない!!」
「あー、やっぱり馬鹿だ」
「あたいは馬鹿じゃなーい!!」

香霖もろとも香霖堂が消し飛んだ頃、湖の上では何やらいつものように戯れるチルノと大妖精。

「……ふん、馬鹿のふりも今度のコンテストまでよ」
「あっ、素に戻った」
「素? そもそも高貴な氷精のあたいが何で馬鹿のふりをしないといけないのよ! 言ってみなさい!!」
「ぷりてぃガールコンテストで優勝する為、だったよね?」
「そうよ! 紅魔湖に吸血鬼などというものが来てからすっかりこの湖は奴の縄張りと勘違いされてるわ!
 昔から湖といえば妖精! そうと相場が決まっているの! 吸血鬼なんか樹海で暮らせばいいのよ!」
「そのとーりぃ」
「聞けばあいつもコンテストに出るとほざいてるじゃない! だから全力で叩き潰すのよ!」
「ぱちぱちぱちぱち」
「だけど、コンテストで叩き潰すよりも事前に叩き潰して、幻想郷の愚民共にレミリアはチルノに勝てない
 から逃げたと思わせた方が、確実に奴のカリスマの地位を叩き落せるとは思わない?」
「むっ、さすがはチルノちゃん、グリーンランドの覇者だっただけはあるねー」
「ふっふっふ、あはははははは! さあ行くわよ! 吸血鬼の館へと!」
「おー!!」
「奴さえ叩きつぶせば後はあたいの馬鹿キャラで優勝決定ってものよ!」
「(……でも最近演技が真に迫ってる気がするのは何故だろう?)」

 ~007テーマソング演奏中~

「ふは~、今日もいい昼寝日和ねぇ……むにゃむにゃ」

今日も平和な紅魔館門前、そして門番は寝転がって三秒で熟睡、シェスタ中、
なお、その門番から向かって湖のほとり側にダンボールが一つ。

「こちら大妖精、目標を確認した、指示をくれ」
「……いつものお得意のアレで仕留めるのよ」
「性欲をもてあます」
「紅魔館のやつらにに見せ付けてやるのよ、北欧の夜帝と呼ばれた大妖精のテクニックを!」
「今だ! その胸は戴いたぁ!」

むわーん

「臭っ! シンナー臭っ!!」
「ど、どうしたの大ちゃん!」
「駄目だ大佐! シンナー臭くて近寄れない!!」
「何だってー!!」

昼寝していてもさっきゅんが怒りにこないわけである。

「ど、どうしようチルノちゃん」
「……行くのよ」
「ひぇ」
「退いたら氷漬けにするわよ!」
「ふぇぇぇん……やだよぉ……しくしく」

そして大妖精は泣きながらダンボールを脱ぎ捨てた、と同時にシンナーの臭いが身の回りを包みこみ、
凄まじい悪臭が鼻に突き刺さる、こんな所に一日もいれば歯はボロボロになるかもしれない。

「こうなったら……シンナーの臭いが身体に染み付くまでに仕留める!!」
「ん……むにゃむ……殺気っ!?」
「その胸! 今度こそ貰ったぁ!!」
「だ、大ちゃんっ!?」

美鈴が迎撃に失敗した理由は二つ、昼寝していた事と、相手が知り合いだった事、
故に大妖精の両手はその豊かなバストへと添えられたのであり、それは敗北でもあった。

「大妖精流手技が一つ……手獄殺!」
「なっ! 手が高速震動し――!!」

ひゃ……ああっ…あっ…あーーーーーーーーーーーーー……

「……また、つまらぬ胸を揉んでしまった」
「さすが大ちゃん……恐ろしい女ね」





――パキンッ

「お嬢様、カップの取っ手が壊れましたわ、力を込めすぎかと」
「今の声は……美鈴のものか」
「そうですね、変な叫び声でした」
「違うな、今のは喘ぎ声だ」
「……それよりもお嬢様」
「何だ?」
「壊れたカップから熱ーい紅茶が太ももの上に」

ぼたぼたぼたぼたぼたぼた……

「おあっちゃああああああああああああああああああ!!」
「お嬢様! 早くドレスをお脱ぎにならないと!」
「熱い熱い熱い熱い熱ーーい!!」
「下着にも染みていますわ! さあ早くお脱ぎになってください!」
「う、うん……はっ!」
「(どきどき)」
「何よその期待に満ちた目は」
「ちっ、美鈴の様子を見てきます」
「こらちょっと待……はぁ、まったく」

最近咲夜のセクハラが酷いんです、と誰かに泣きつく訳にも行かず、一人溜息レミリアん。

「しかし、今の喘ぎ声は北欧の夜帝の……」

レミリアの脳裏に欧州に住んでいた頃の記憶が蘇る、欧州で敵は無しと呼ばれた吸血鬼に、
力でも魔法でもなく、子供にはとても説明できない手段で渡り合った北欧の妖精達、
そんな彼女達の中でも特に危険な存在と認識されていたのが北欧の夜帝とよばれる一匹の大妖精であった。

「……いや、まさかな」

やがて吸血鬼達と妖精のエロくも甘い戦いは吸血鬼側のどろどろとした内紛によって終焉を迎えた、
やれ、あの妖精と不倫してるんでしょ、だの、私と妖精とどっちが大事なの!? だの、
レミリアは見ていた的なその過去は、誇り高い吸血鬼達にとっては黒歴史にも近かった。





「ノーアラート、ノーアラート」
「……っ!!」

背後からこっそりと忍び寄り、右手を口元に、左手をメイド服と柔肌の隙間に、
広い広い紅魔館の片隅でまた一匹、声をあげる事無くその意識を落とす。

「んしょっ、んしょっ」

後は潜入した事がばれないように適当な部屋にメイドを放り込むだけである、
何せここは紅魔館、広大なこの館には誰も使っていない部屋などごまんとあるのだ。

「失礼しまーす」
「それでね、夢子ちゃん、今度は魔界に遊園地を作ろうと思ってるのよ」
「神綺様、もしかしてその遊園地の名前はネバーランドですか?」
「あら、わかってるじゃないの~」
「失礼しました」

何せここは紅魔館、広大なこの館には不法滞在者がこっそりと住んでたりもするのだ。

「目標の部屋まであと221メートル……」

赤絨毯の上をダンボールが這う、なあに、意外と気づかれないものだ。

「従者長は獲物を逃さない」
「ぎくっ」

ただし世の中には気づく相手もいる、光学迷彩が通用しない相手とかいるのだから。

「ダンボールなんか被って侵入するなんてふざけた曲者ね、正体を拝ませてもらうわ!」

掴まれたダンボール、振り上げられる右手、露わになるその姿。

「妖精?」
「…………」
「いえ、死んでるわね……身代わりの術?」

しかしダンボールの中にいた大妖精は呼吸も脈拍も止まっていた、
これではさすがの咲夜といえども騙される他は無い。

「ならば、侵入者はどこに……」
「あなたの真正面にです」
「えっ?!」
「その腋貰ったぁ!」

ぴちゅーん





「咲夜が堕ちたか……」

高貴な吸血鬼たる者、大事な従者に何かが起きた際は空間を越えてでもそれを察知しなければならない、
たとえそれが最近本性を現してきたセクハラ魔人であったとしてもだ。

「何時までもこそこそしていないで出てきたらどうだ?」

腕を組み、仁王立ちの状態で天井を睨む、美鈴と咲夜が堕ちた今、残っているのは自分のみ。

「さすがですね、そう簡単に隙をつける相手ではないとは知っていましたが」
「ふん、私を誰だと思っている」

大妖精がぱかりと板を外して床下から出てきたのはさておき、もはや二人を分かつ物は何も無い。

「というか……なんで下着だけなんですか?」
「咲夜が着替えを持って来てくれないからよ!」
「かぼちゃぱんつ……」
「う、うるさいわね」
「胸無いですね~」
「子供なのだから当然だ」
「えー、でも小さすぎませんか?」
「……姑息な時間稼ぎはもういい」
「おや、そっちもばれてましたか」

レミリアが感じ取った気配は一人のみ、しかし相手が現れ、
もう一人の気配も消えていないとすれば、それは二人いるということ。

「(くっ、大ちゃんに気をそらさせて私が奇襲を仕掛ける完璧な計画がばれた!?)」
「まあ、もう一人はどうでもいいわ、あなたごと吹き飛ばしてあげる」
「スペルカードですか……しかしこの私に当てられますか?」
「スペルカード? そんな物騒な物は使わないわ、活目なさい! これが私の最新最終兵器!!」

レミリアの両手がゆっくりとあがる、その右手は右胸の前に、その左手は左胸の前に、
そのまま互いの手のひらを向かい合わせると、そこに何かが集い始めた。

「これは……まさかっ!!」
「れみ!」
「逃げて! チルノちゃん逃げてぇぇぇぇ!!」
「りあ!」
「(な、何!? 何が起こ――」



うーーーー!!



「この揺れは……ついに完成させたのね、レミィ」

パラパラと天井から落ちる埃を見て、軽く笑みを浮かべる図書館の主、
こほこほと咳き込みながらも、倒れ来る本棚を冷静に見つめる。

「これならぷりてぃガールの座もあなたの物……って本だむきゅう」

紅魔館で起きた謎の揺れ、たまたま湖に釣りに来ていた人間はこう言った、
遠くでいきなり爆発が起きたのだと、おかげで魚がぷかぷか浮いてきて豊作だと。

「……ふぅ、随分と見晴らしが良くなったわ」

四方の壁が、天井が吹き飛んだ自らの部屋で、レミリアは空を見上げる、
さんさんと日光がその身を照らしても、その体が灰となる事は無かった、
その身を包み込む謎のオーラが日光を防いでいたのだ。

「これが幼力……ふふっ、くふふふふっ!」

かつて六代目か七代目あたりの阿礼乙女はこう書き記そうとしたらしい、
幼力、それは裸力と並ぶ二大美力であると、しかし後にこの記述は消される事となる、
その力はあまりにも強大な為、上手に扱えぬ者が手にすれば危険、と言われたからかもしれない。

「愚かな妖精よ、あなたはいい練習台だったわ、この技さえあれば私が新たなぷりてぃガールよ!」
「それを言うにはまだはやいってものよ!」
「むっ!?」

レミリアの背後から高らかな声、振り向けばそこには氷精チルノ。

「私の技を受けて無傷!?」
「ちっちっち、甘いわね……あたいは馬鹿だからよく分かんないのさ!!」
「何ぃ!?」

元来賢いはずのチルノは、ぷりてぃガールコンテストで優勝を狙う為にとある技を生み出した、
それは馬鹿になる事、これによって馬鹿っ子として幼力を得るのだが、本来の目的はそうでは無かった。

「つまり幼力とやらは効かないのよ!」
「ぬぬっ……」

真の目的は無知によるダメージの無効、赤ん坊に色仕掛けが効かないのと同じ理屈である。

「さあどうするのさ!」
「素手で殴る!」
「へもぁ」

レミリアに上から下へと拳骨気味に殴られて床へ頭から埋まるチルノ、
だがチルノは立ち上がった、しかもダメージを受けた様子はほとんど無い。

「無駄無駄無駄ぁ! 今のあたいに幼力を纏った攻撃は効かないよ!」
「……こいつは厄介ね」
「さあ、後はゆっくりあんたを料理するだけよ!」
「無力化とは……とんでもない発想をしてくれるじゃない!」
「レミリアスカーレット! 覚悟ー!!」
「お嬢様っ! 今の爆発は!?」

ぼいーん

「もぷぷっ!!」
「美鈴!?」
「あ、お嬢様! ご無事でしたか!」

突如部屋に飛び込んできた美鈴のビッグバストに、特攻気味のチルノが弾き返される、
もし飛び込んできたのが咲夜だったならばそれはもう悲惨な事になっていただろう。

「はっ、美鈴! あなたが居たじゃない! シンナー臭いけど!」
「ほえ? 私はいつも居ますけど?」
「チルノ! あなたの善戦もこれまでよ! やっぱりシンナー臭いけど!」
「あいたたた……な、何なのよ~」
「馬鹿にはより強い馬鹿をぶつけるまで! 美鈴! 幻想郷一の馬鹿っぷりを見せ付けてやりなさい!」
「はいっ!?」

ここでいきなりクイズタイムです。

「それじゃ最初の問題よ、67+45は?」

レミリアの妖力によって中空に赤い文字が描かれる、まずは小学生低学年レベルから。

「そんなの簡単よ! 6745で決まり!」
「自信満々の馬鹿っぷりね……美鈴、あなたは?」
「えぇと……すみません、+は分かるのですが、数字は漢数字しか読めないんです」
『馬鹿だぁーーー!!』

美鈴、1ポイント獲得

「まったく嬉しいけど呆れるわね、答えは102よ! さあ、次の問題行くわよ!」

レミリアもちょっとお馬鹿さんです、あしからず。

「次の単語を正しく読みなさい! [Lemiria]」
「えーと、エルイーエムアイアールアイエーね!!」
「純然たる馬鹿ね……美鈴!」
「それは文字ですか?」
『大馬鹿だぁーーー!!』

美鈴、2ポイント目獲得

「主人の名前ぐらい読めるようになりなさい……正解はレミリアよ!」

でも綴り間違えてます。

「次が最後の問題よ、より馬鹿な方に3ポイントだから、美鈴、頑張りなさい!」
「は、はぁ……微妙な気分です」
「それ、今までの二問の意味がないじゃない……」
「五月蝿いわね、それじゃいくわよ! 幻想郷で最も偉大で強くて美しいのは誰!?」
「あたいよ!」
「即答か!」
「八雲紫さんです!!」
「お前もか!!」

きっぱりと言い切られました。

「はいはーい、チルノ3ポイント、美鈴5ポイントで美鈴がキングオブ馬~鹿~」
「元気を出してくださいよお嬢様~、きっと近い将来、お嬢様が最も偉大になる日が……」
「うわぁぁぁぁーーーん! 咲夜に言いつけてやるんだからー!!」
「あああああああ!! それだけはご勘弁をーーー!!」

泣きながらレミリアが去っていく、それを泣きながら美鈴が追ってゆく、
後に残され一人ただ立ち尽くす氷精チルノは見送るだけ。

「レーション美味しいよレーション……で、追わなくていいの?」
「大ちゃん……うん、あたい、もう馬鹿キャラはやめる」
「えっ!?」
「人工は天然に敵わないって言われてるけど、本当だったみたい」
「チルノちゃん……」
「こうなったら新たな幼スタイルで優勝を狙うわ!」
「えっ? で、でも今からじゃ間に合わないよ?」
「今回は諦めたわ、そしてもう四年後に向けての戦いは始まっているのよ!」

そしてチルノは湖へと戻っていった、いつの日か、夢の舞台に戻る為に。

「しかし、チルノの馬鹿の模倣はあまりにも完璧すぎた、そう、幻想郷中にチルノは馬鹿だと
 知らしめるほどに、そしていつしかそれは事実として固定されてしまった」
「あ、パチュリー様こんな所に埋まってたんですか」
「その為に彼女は馬鹿をやめようとしてもやめれない、幻想郷の存在全てが彼女を馬鹿に
 縛り付けているのだから、そして馬鹿であり続ける限り、美鈴に勝る事はない……悲劇よね」
「くっちゃべってないで中から這い出る努力もしてくださいよ~」










そして運命の日はやってくる、ぷりてぃガールコンテスト、開催の日。

「よし! 私も藍様や紫様みたいに立派になってみせます!」

マヨヒガで黒猫一匹大空を見上げ、太陽に誓うは己が勇士、
お気に入りの衣装を纏い、目的地へと一歩駆け出し、高らかに飛んでゆく。

「……藍、見送ってあげないの?」
「今回ばかりは遠くから見守る事に決めましたから」
「そう……あの子も少しずつ成長していくのね、昔のあなたみたいに」
「昔ですか、あの頃は紫様の自慢の式であろうと、色々とやっていました」
「そうね、そして古来より続くこのコンテストにあなたも出ようとしたことも、ね?」
「そんな事もありましたか……では紫様、私はそろそろ幻想郷の見回りの方に」
「あら、もうそんな時間? ふふ、十分に気をつけて」
「勿論です」

そしてまた一匹、くるりくるりと回りながら大空へ、
式の旅出を見送った主は優雅に扇を取り出して、その微笑を覆い隠す。

「やっぱり、似てしまうのかしらね?」

ふと湧き出た言葉は自分に問いかけるように。





 ~コンテスト開始一時間前 会場へと続く森~


「咲夜、今日は何の日?」
「お嬢様がぷりてぃガールの覇者として幻想郷中にその名を深く知らしめる日ですわ」
「パーフェクト、さすがは咲夜ね」

木漏れ日の中を優雅に歩く紅魔の主従、とっておきのドレスに身を包んだレミリアから一歩遅れて
いつもの服装そのままの咲夜が後を追う、目的地は人里のコンテスト会場。

「見なさい咲夜、この身体を包む幼力を……日に日にどんどんとキレを増しているわ」
「素晴らしゅうございます」
「そこのあなたもそう思わない?」
「……気づいていたウサか」
「後ろだと!?」
「気づいてなかったウサか!?」

レミリアは右前の木の上を見上げていたのだが兎が出てきたのは左後ろの藪の中。

「き、気づいていたわよ!」
「間違いなく嘘ウサね」
「嘘じゃないわ!」
「嘘ウサ、この私は騙されないウサ」
「いいえ、お嬢様が嘘などつくはずはありません」
「ウサッ!?」

だが、気づけばその兎は木の上に立っていた、動いた覚えも動かされた覚えも無いのに。

「この通り、お嬢様の仰られた事は本当ですわ」
「……相変わらず嫌な能力ウサね、永遠亭で暴れられた時の事を思い出すウサ」
「ああ、どこかで見たと思えばあなたはあの時の白兎」
「まずはお前から仕留める必要がありそうウサね」
「おかしな事を言うのね、兎は仕留められる物よ?」

兎がぴょこんと木の上から飛び降りてメイドを睨む、
メイドもその両手にいつの間にかナイフを一束。

「ふん、私の咲夜を「長い時をかけて研鑽し続けた私の力、悪魔の狗風情がどう抗うウサ?」
「風情とは何よ風情「そういえば読んだわよアレ、あなた結構な年増みたいじゃない」
「……あ、あれって「だああああ! もう泣いて謝っても許さないウサ!! ラビットチェェェェンジ!!」
「……二人とも聞い「こ、この力はお嬢様と同じ力!?」

レミリアはうずくまっている。

「あ、お嬢様、そんなところでうずくまってると危ないですよ」
「その目にしかと焼き付けるウサ! これが私の幼スタイルウサー!」
「うっ! 光――」
「幼稚園児モード!!」

ポーズを決めた兎が一瞬光ったと思ったら、幼稚園児の服を着ていた。

「…………ぐふっ」
「咲夜っ!?」
「なんという……恐ろしい……技……ガクッ」
「咲夜! しっかりしなさい! 何が起きたの!? 咲夜ぁぁぁぁぁ!!」

レミリアの腕の中で咲夜は意識を失った、顔に満面の笑みを浮かべ、鼻血を流したままで、
そしてピクリとも動かない事を確認すると、レミリアはおもむろに咲夜の胸元に手を突っ込んだ。

「……咲夜のパッドをゲットしたわ!」
「いや、ゲットしてどうするウサ」
「胸の大きい咲夜なんて咲夜じゃないもの」
「で、なぜそのパッドを自分の胸にしまっているウサ?」
「ちょっと確かめてるだけよ!」
「感想は?」
「good!」
「わ、私にも付けさせて欲しいウサ!」
「何をしているんだお前達は……」
『誰だっ!?』

上空より響く声に振り向く二人、その視線を受け止めるのは九尾を携える仮面の女だった。

「恥じらいを忘れた幼娘を裁く正義の味方! 天狐仮面参上!!」
「変な仮面ね、八雲藍」
「むしろ恥じらいが必要なのはお前の方ウサ」
「なっ!? 違うぞ! 私は断じて八雲藍などではない!」
「そういうのは尻尾隠してから言うウサよ」
「うぐっ」

どう足掻いてもあの尻尾を隠すのは至難の技です。

「くっ、パピヨンマスクにアメリカ~ンなマントまで用意したのに」
「その様子だとあなたも妨害に来たのかしら?」
「……話が早い、痛い目に会いたくなければここで引き返す事だ」
「舐めるなウサ!!」
「むっ!?」

兎が叫び、一足飛びで空高く舞い上がる、その身体は既に光に包まれていた。

「一撃で決める! ラビットチェェェェンジ!!」
「ほう、間接的視覚攻撃か」
「スクール水着モード!!」

兎の先制攻撃は、未発達の身体に張り付く青い布地、鮮明になるボディライン、
そして何一つ隠されないそのぷにぷにとした四肢がまさにワンダフォーな一撃。

「成る程、特異な衣装で敵の心に隙を作り、そこに自らの幼力を同期させて相手の鼻孔を破壊する技か」
「(なっ!? 一瞬で見抜いたというのかウサ!?)」
「しかぁし! その程度の力では猫と戯れている橙のぷりてぃ具合の足元にも及ばぬ!!」

だが、その一撃は藍に何の手傷も負わせる事は無かった、
そしていざ反撃せんと藍は自らの襟元に手を添え、後ろへと振り向く。

「食らうがいい、裸力の極みと言う物を」
「(しまったウサ! 空中では逃げ場が――)」
「身体四大裸点が一つ……黄金のうなじ」
「う……ウサァァァァァァァ!!」

上着をはだけさせると共に森に響く一つの衝撃、それが止んだ後には、
地面に倒れ伏した兎とその後方数十米に渡ってなぎ倒された木々の跡だけが残っていた。

「なんともぬるいものよ……さて、残るはお前だけだな」
「あら? 余興はもうお終い?」

目の前で兎が一撃で葬られたにもかかわらず、涼しげな顔を浮かべるレミリア、
むしろこの状況になるのを待っていたようにも見える。

「さすがはせくしぃクイーンね、咲夜を瞬殺した兎すら一撃だなんて」
「何のことは無い、私が強すぎるだけの事」
「……でも私はあなたよりさらに強い」
「ほほう、さすがは吸血鬼、態度だけは一流か」
「ならばその身で確かめてみる?」

そしてレミリアは一呼吸の後、胸の前で両の手のひらを向かい合わせた、
そこに段々と集い始める膨大な幼力に、藍の表情がどんどんと険しいものに変わっていく。

「下手な小細工も、回りくどい謀略も、絶対的な一撃の前には無力!」
「(むぅ、この溢れんばかりの幼力は……レミリア・スカーレットを甘く見すぎたか!)」
「せぇ~の!」
「相殺しなければ!」
「れみっ!!」
「桃源のふとももぉ!!」

その時、たまたま遠くの森へレアな茸を探しに来ていたM・Kさんはこう語った、
私が緑色の茸を手に取った瞬間に森が真っ二つに割れた、1upしてなかったらやばかったぜ、と。

「……凄いわね、私のれみ!を相殺するなんて」
「ふん、私こそお前を侮りすぎたようだ、たかが500年でこれほどのぷりてぃの領域に達するとは」

互いに睨みあう二人の間の地面は裂け、底が見えぬほどに抉れている。

「だけど私にはまだ、りあと、うーが残っているわ……そして繋げるほどに威力は倍増する!」
「その構えは……続けて放つ気か!」
「あなたが手加減できない相手と分かった以上、全力で葬るのみ!」
「ならば! この私も全てを解き放つのみ!」

レミリアが再度両手を向かい合わせ、藍は自らの衣服を握り締める、
互いが発する幼力と裸力が大気を震わし、大地を揺るがす。

『勝負!!』

夜の王が両手を叩き、満面の笑みをその顔に浮かべたのと、
九尾の狐がスピンしながら服を脱ぎ始めたのは、一寸のズレもないほど同時であった。

「れみ!」
「全!」
「りあ!!」
「裸!!」
「うーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「天狐ーーーーーーーーーーーーーー!!」

そして桃色の巨大な光の柱が、幻想郷の空を貫いた。





 ~コンテスト開始四十五分前~

「あの様子じゃ……相打ちって所かしら?」

燦々と幻想郷中を照らす桃色の光を見上げて、八雲紫はぽつりと呟いた、
人里にある会場へと続く道、そこに彼女は立っていた。

「予想以上に夜の王が優れていた、それを見抜けなかったのがあなたの誤算」

光を浴びながら話す紫の周りには、地に倒れピクリとも動かぬ幼娘達、
中にはルーミアやミスティア、リグルに加え、プリズムリバー三姉妹の姿もあった。

「でも安心なさい、あなたが止めれなかった者達は私が止めてあげる」

橙はきっと立派に戦ってくれるだろう、そう思うと顔に軽やかな笑みが浮かぶ、
しかしその笑みはすぐに消え、その目は厳しいものへと変わった。

「……こんにちは、お二人さん」
「紫様、何故こんな事を?」
「あなたは自分のしでかしている事の重大さが分かっているのですか?」

紫の前に姿を現したのは、腰に二対の刀を携える半人半霊の剣士と幻想郷の最高裁判長、
周りに倒れている者達の姿を見ても何ら動じる事もなく、むしろ覇気を増す二人。

「タイトルホルダーと警備責任者……足止めといえども厳しいわね」
「成る程、そういうことですか」
「あなたはこのコンテストに参加する資格は無い、よってこの妨害行為は認められません」
「だったら……どうするの?」

魂魄妖夢が刀を抜く、上から下まで黒いフリル満載のドレスに身を包み犬耳を搭載した妖夢が、
四季映姫にいたってはアメリカンポリス的な衣装に身を包んで悔悟の棒でぽんぽんと手を叩いている。

「(閻魔って葉巻吸ってもいいのかしら?)」
「紫様が何を考えてるかは知りませんが、邪魔をすると言うのならば……」
「ああ、ちょっと冥府の法律について考えていたのよ」
「こんな時に何故!?」
「落ち着きなさい、相手のペースに乗せられてはいけません、HAHAHAHA!」
「(あなたは変わりすぎです……)」

葉巻をぷかぷかとくわえてグラサンかけた閻魔様なんて嫌にも程があります。

「と、とにかく斬る!!」
「刀を振り回すゴスロリやや幼めの犬耳少女……見てるだけでも鼻孔が厳しいわね」
「冷静に分析しないでくださいよ! 結構恥ずかしいんですから!」
「妖夢も恥を知る年になったのですね、昔はあんなに張り切ってたのに」
「これだから昔を知ってる方と一緒になるとぁぁぁぁぁ!!」」

気分は親戚全員集合状態。

「斬る斬る斬る斬るぅぅぅぅ!!」
「二対一……ま、エントリーの締め切りまでは食い止められるわね」
「八雲紫、あなたは規定を違反しすぎる、その罰を受けなさい!」
「たまには幼力も何も無く、ただ少女達が楽しみあうのがいい、お祭りとはそういうものよ?」

それは勝ち目の無い戦い、しかし何よりも大切な戦い、
溺愛する式の、さらに溺愛する式の、そして自らも溺愛する式の式の為に。

「(藍、あなたがいないと、少し背中が寂しいわね――)」





そして人里では沢山の観客達に見守られる中、ぷりてぃガールコンテストが無事開催された、
例年のように観客が鼻血ミサイルになったりはせず、それはもうにこやかで楽しいお祭りだったそうな。










「へくちっ!!」
「くしゅんっ!!」

まるで隕石が落下したかのような広大なクレーターの真ん中で、尻尾でぎりぎり覆い隠されて肝心な所が
見えない全裸な天狐と、これまた破れた衣服がギリギリで肝心な所を隠している全裸の夜の王。

「寒いな」
「寒いわね」

すでに空には月が真上に、美力も妖力も切れたこの状態では凍死は間違いない。

「……寄り添って暖めあわない? 尻尾まだ余ってるんでしょ?」
「誰が貴様などと……ま、まぁ三本ぐらいなら余っている」
「十分よ……へくちっ!!」
「おっと、大丈……くしゅんっ!!」

互いにくしゃみをして互いに顔を見合わせる、先程まではあれほどに敵視しあっていたのに
今ではどこか愛らしい、この特異な環境がそうさせるのか、それとも互いに全力をもって戦った為か。

「……レミリア、お前は強かった、この私が認めよう」
「くすくす、あなたも強かったわ、私もまだまだって所ね」

暖かい尻尾に包まれた二人の顔が段々と近くなる、やがて互いに頬を赤らめ、その唇が近づき――。

「藍……」
「レミリア……」
「お嬢様……」

何かが見ていた。





この世には四種類の身力がある、幼力と裸力、それに加えて胸力、
そしてこの日、封印されし最後の一種が覚醒した、が、そのお話はまた後日。
最初は単なる後日談の予定でした、膨らみすぎました、
どうしようもありませんでした、だって藍様大好きですから!

ちなみに身体四大裸点は以下の通り。
・黄金のうなじ
・桃源のふともも
・神秘のわき
・太陽のくびれ

凄いシリアス物の直後に凄い馬鹿作品を投稿しなければならない
この背中に流れる冷たい汗は今更ながら後悔しつつもおんぱっきゃらまど!
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



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1.100名前が無い程度の能力削除
腹筋が壊れるwwwwwwwwwwwwww
2.100猫の転がる頃に削除
レミリア×藍。その破壊力は幼力と裸力の相乗効果により崩壊の渦を引き起こす!
主に鼻孔の。……ぶるぁ。
3.100名前が無い程度の能力削除
相変わらずぶっ飛んだのりでwwwwww
7.90名前が無い程度の能力削除
しっ……神秘のわきだと……!
ならばヤツは圧倒的じゃあないか……
10.100名前が無い程度の能力削除
何というすさまじさ!!
相変わらずのテンションの高さ…!
11.70おやつ削除
身体四大裸点……桃○朗伝説(RPG)の装備に出てきそうとか思った俺氏ねよ。
最後の身力って百合力でしょうか?
藍レミ……裸力と幼力の夢のコラボ……あ、鼻空が……
13.70更待酉削除
どこから突っ込めばいいのだろうか、
最初から最後までギャグ満載で楽しませていただきました。

誤解で吹っ飛ばされた霖之助に合唱……
27.80名前が無い程度の能力削除
北欧の夜帝スゲェ。
35.100名前が無い程度の能力削除
ともあれ笑うしかなかったwwwwww
46.100名前が無い程度の能力削除
最高すぎるwwww
56.100名前が無い程度の能力削除
腹筋がwwwwww
58.80名前が無い程度の能力削除
誰かこの山田の絵を描いてくれ!