Coolier - 新生・東方創想話

魂魄妖夢八番勝負(一)

2007/02/19 02:11:14
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一.青龍刀と妖夢


「西行寺の――」
 吸血鬼がいった。「ひとつ、頼みがあるのだけどね……聞いてくれる?」
「おや、おや。柄にもなく」
 亡霊姫がいった。「いやに、殊勝な口ぶりですこと。それで? 頼みとは?」
 何ね、他でもないと血を吸う方の姫。
「貴方のところの、庭師だったか、剣術指南だったか――あの娘のことでね」
 あぁ、と血を吸わない方の姫。
「妖夢がどうしました?」
「いやなに。最近、うちの屋敷には門番がいないの」
「あぁ」
「ただ、門番と言うのはそれなりに要るものよ」
 無駄なように見えるけれども、
「あれはあれで――そうね、この茶碗の文様みたいなもの」
「なくてもいいけれどあったほうが見栄えが良い、と?」
「まぁそうね」
 だから、
「しばらくあの娘を貸して貰えないかしら」
「代理門番――と言う塩梅?」
「そういうこと」
「フムン」
 西行寺の嬢は庭に目をやった。
「だ、そうだけれど。どうする?」
 声をかけられた庭師は手を止め、あるじに向き直った。
「おおせのままに」
 従います、と一礼。
「そう――それじゃ、しばらく厄介になっておいでなさいな」
 魂魄妖夢は無言で頭を下げた。


 この時からさかのぼること、ひと月ばかり前。
 悪魔の巣・紅魔館にて開かれた宴の席でのことである。
 かくべつの趣向も用意しておかなかったところへ、レミリアに仕えるメイドの咲夜が
「西行寺家の庭師は名だたる手だれです。ひとつその剣の妙技を拝見しましょう」
 と、提案した。
 このとき、
「べつに興味がないわね」
 とか、
「うーん。どうでもいいわね」
 とでも、レミリアが答えていれば良かったのだろうが、実際の答えは
「そうね、好きにしたら?」
 というものであったので、メイドは西行寺の令嬢に
「そんなわけですので、ちと拝見させてくださいませんか」
 と、願い出た。
「ははぁ。私はいっこうに構いませんけれど」
 かたわらに控える庭師にむかって、
「座興をご所望よ。一手披露してあげたら?」
 うながされ、魂魄妖夢は二刀をひっさげ立ち上がると、かがり火に照らされた庭へゆるゆると歩み出した。
「ほう……」
 思わず声を漏らしたのはメイドの咲夜である。
「流石。ものが違いますわ」
「どうして分かるの。ただ歩いているだけじゃない」
 あるじの疑問に、メイド答えて言うには
「あの歩の進め方は、達者のそれですわ」
 一見すればただ歩いているだけに過ぎないが、分かる者にしか分からぬ勘所があるのであろう。
 妖夢は太刀を掲げるとひらりひらりと舞い、銀光をひらめかせた。
 が、それは、ただの舞ではない。
『誰かと闘っているような……』
 いわば架空の立会いである。
 一通りの動きを終え、庭師は双剣を垂らして立ち尽くす。
「お美事」
 咲夜が手を打って賞した。「眼福でしたわ」
 しかし面白くなさそうに酒を啜り、目をそむけたのはレミリアである。
 剣技に暗い彼女にとっては、妖夢の舞はただの舞でしかない。
 それはそれで良かったが、咲夜が過剰なほどに賞したのが気にさわった。
 まるで、自分に剣を見る目がないとあてつけているようではないか。
 そこでメイドに腹を立てるのならまだ分かるが、彼女の思考はそこには向かわない。
 自分に通じない技術を披露した妖夢へ、その悪意が向いているのが、常とは異なるところだ。
 もとより、あるじの不興を感じ取ることにかけて、メイド長ほど優れた者はいない。
 咲夜はたちどころにレミリアの気持ちを汲んだ。
「時に西行寺の御方様、我が方にも剣の達者はおります。ひとつ、魂魄氏との立会いを願えますまいか」
 こう申し出たのは言うまでもなく、架空のそれではない、真の立会いを見せることで、レミリアが抱いた屈託を晴らそうが為である。
 幽々子が請合い、妖夢もそれにならったので、咲夜は手下に命じ、ある者を呼びにやった。
 それがすなわち、門番妖怪の紅美鈴であった。


 彼女はおのが死地とも知らず、
「お嬢様御用」
 の知らせに胸を躍らせ、畏まって候とばかりにひごろ愛用の青龍刀をひっさげ、勇躍宴席へむかって飛び立った。
 その途中フト、あっとなって停止した。
 青龍刀が掠め取られていたのである。
「またお前か」
 目を怒らせた視線の先で、薄笑いをうかべて刀をためすがめつしているのは、館に巣くう小悪魔である。
 たいそう悪戯好きで、美鈴などはちょうど格好のからかい相手、いたく被害をこうむっていた。
 といってもせいぜい、食事に下剤を盛られたりとか、酒瓶の中身を小便とすり替えられたりといった、他愛のない悪戯ではあったのだけれど。
「さっさと返しなさい! お前と遊んでいる暇は無いんだからねっ」
 小悪魔はニヤリと笑い、青龍刀をひねくり回した。
「行かない方が良いと思うけどねぇ」
「何ですって?」
「貴方はどうして自分が呼ばれたか、知っている?」
「知らないけど。でも宴席に呼ばれて、刀を持って来るように言われたから、剣舞でもさせられるんじゃないかしら」
「それだけで」済むかしらねぇ、と小悪魔は意味ありげに微笑む。
 流石に気味が悪くなり、美鈴は
「どういうこと?」
 とたずねた。
 そこで小悪魔は事の次第を語った。
 彼女は宴席から肴のひとつもかっぱらおうと、ひそかに潜り込み、一部始終を目撃していたのである。
 見る見るうちに紅美鈴の顔色が変わった。
 喜色満面、というべき笑顔に。
「素晴らしいじゃないの!」
 達者と認められ、呼び寄せられるとは。
「斬られるわよ」
 呆れたように小悪魔。
「そんなはずがないでしょう」
 美鈴は浮き立つ思いを押さえきれずにいる。己の技量に絶対の自信を抱いていた。
 しかし小悪魔は、既に妖夢の剣筋を見ている。
 とうてい、美鈴が敵う相手とは思えなかった。
 青龍刀をかっぱらったのも、それゆえであったが……
「さぁ、返して頂戴! お嬢様たちをお待たせ出来ないわ」
 やむなく、小悪魔は刀を手渡した。
 意気揚々と宴席へむかう紅美鈴を見送り、小悪魔は嘆息した。

 小悪魔が館から姿を消したのは、それから間もなくのことである。
 もっとも、そのことに気付いた館の住人はまれであり、ましてや、無人となった門番小屋の中から一振りの青龍刀が消えていることに気付く者など、いようはずもなかった。
なんとか五番勝負までは行きたいと思います。
STR
letcir@hotmail.com
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コメント



0.1030簡易評価
9.60舞ってました! もとい 待ってました!削除
何があったんだろう。ドキドキ。
10.70床間たろひ削除
うほっ! 何だかオラすんげぇわくわくしてきたぞ!

という訳で続きを楽しみにしてますw
11.90名前が無い程度の能力削除
八番勝負中五番勝負までか……
六から八がミステリーだな
16.無評価名前が無い程度の能力削除
ここで終わられると続きが激しく気になって困るですよっ
21.60銀の夢削除
|ウサギ小屋|∀`)良いきり方。ワクワクウサウサ
24.無評価名前が無い程度の能力削除
ワクワクワクテカ

>酒瓶の中身を小便とすり替えられたりといった、他愛のない悪戯
それ、我々の業界ではご褒美です
25.80名前が無い程度の能力削除
点数付け忘れたっ
早く続きを!
26.100名前がない程度の能力削除
貴方の書く、
小悪魔→美鈴のちょっと素直じゃない一方通行の愛が凄く好きです。

技能で使いこなす剣(両刃の直刀)ではなく、力任せに振り回す青龍刀なのが
美鈴らしいかも。
33.70名前が無い程度の能力削除
わぁ久しぶりのゼネギエラ