Coolier - 新生・東方創想話

ゆうかりん、ファイト!

2007/01/29 06:39:10
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 注意:『東方求聞史記』ネタバレあります。





 昼なお暗く、人の気配の寄り付かない、ここは通称、魔法の森。
 年がら年中じめじめむしむしのため、夏場など、絶対に住みたくないと色んなところで話題のそこに舞い降りる影があった。
 その影は、緑色の髪の毛、薄桃色のパラソル、さらに赤と白のチェック柄の衣装という原色ばりばりカラフルな色彩で、目にも鮮やかかつ非常に目に痛い。ふわりとスカートなびかせ、どこからか『げーきょげーきょ』だの『くすくすくすくす』だのといったよくわからない声の響く不気味な空間を、それを全く意に介さずに進み、やがて、一軒の家の前にやってくる。
 その家は、この空間の中において、非常に浮いていた。白亜の外壁、慎ましやかだが堅実な佇まい、加えて、どこからか漂ってくる甘い匂い。これはアップルパイかしら。そんなことを思いながら、その人物は、とんとん、とドアをノックした。
 待つことしばし。
 はーい、という声がくぐもってドアの向こうから聞こえた。同時に、ぱたぱたという足音が響く。そうして、がちゃっ、とドアを開けた家の主が顔をのぞかせる。
「どちらさ……」
「ごきげんよう」
 開けると同時に即座に閉めた。
『……ホラーイ(あの、マスター? よろしいんですか?)』
 どんどんどん、とドアを向こう側からたたく音が響く。その音に顔を引きつらせながら――といっても、セリフの主は人形なのだが――訊ねる蓬莱人形に、そのマスターことアリス・マーガトロイドは言う。
「いいの! あんな災厄の源、うちに上げてたまるものですか! 魔理沙よりタチが悪いっ!」
 そこまで言うか、と言わんばかりの視線であった。
 しかし、マスターの言葉には絶対服従が彼女たちなので、特にそれ以上は、蓬莱人形もコメントすることはない。
「上海! 釘と木の板持ってきて! ドアを打ち付けるから!」
『シャンハーイ(そんなことしたらマスターも出られなくなるんじゃ……)」
「未来より今よ! さあ、早く!」
 どうしたもんかしら、と上海人形が蓬莱人形に目配せし、蓬莱人形は大仰な仕草で肩をすくめる。それで上海人形も自分のやるべきことを悟ったのか、とりあえずふよふよと家の奥へと向かって飛んでいく。
『あーけーてー! 開けなさいよー! 開けないとひどいわよこらー!』
『ホラーイ(マスター、外の方、何か怒鳴ってらっしゃいますけど……)』
「それは空耳よっ!」
『今から十秒以内に開けないとこの家ごとあんたを吹っ飛ばすわよ! 開けなさいよー!』
『ホラーイ(何か物騒なことも仰ってますけど……)』
「聞こえないったら聞こえなーい!」
『シャンハーイ(マスター、持ってきたけど……)』
「よしでかした! さあ、あなた達! 家のドアというドア、窓という窓をこれで塞ぐのよっ!」
 つくづくひでぇ対応だが、その場の人形たちも、やっぱり上海人形や蓬莱人形と同じため、渋々、渡された釘と木の板、ついでになぜかこの家には常備されているトンカチなどを片手にそれぞれの作業に出ようと動き出す。
 ――と、
『……っく……何よぉ……。開けてくれたっていいじゃないのよぉ……ひっく……』
『ホラーイ(……あの、マスター。外の方、ついに泣き出したようですけど……)』
「う、うーむ……」
 さすがに、ちょっと居たたまれなくなってきたらしい。ここまでやったらただのいじめっ子、なイメージが頭の中に浮かんでいるのだろう。
 仕方なく、アリスはそっとドアを開ける。ドアの向こうでは、来客――風見幽香がべそかいていた。
「……何か用?」
「あ……」
 顔を覗かせたアリスを見て、幽香はぐしぐしと服の袖で目元をこすると、無理していつもの尊大な表情を浮かべつつ胸を張って、
「ちょっと用事があったから出向いてあげたのよ。じゃないと、誰がこんな不衛生な薄汚い森に来るものですか。
 わかったなら、とっとと私を招き入れてお茶の用意でもしたら?」
 問答無用でアリスはドアを閉めて、窓とドアの打ち付け作業を再開した。


「……で?」
 アリスの対応についにマジ泣きかましだした幽香を、さすがに放っておくことも出来なかったのか、渋々、家の中へと招きいれた後のことである。
 一応、部屋の中にテーブルを出して、その上にはお茶とおやつ用に焼いていたアップルパイが一ピース載せられたお皿が出されている。
「……どうせ、聞いてもすぐ追い出すんでしょ?」
「しないわよ。……さすがにあそこまでやられたら寝覚めが悪い」
 そりゃそうだ、と言わんばかりに人形一同が首肯する。
 ともあれ。
「その……あなたに相談があって来たのよ」
「相談?」
 この幽香が? 傲岸不遜、天上天下唯我独尊、傍若無人、ついでにゴーイングマイウェイのイケイケゴーゴー街道驀進中の輩が、一体私に何の相談を?
 ――考えていることは色々ひどいのだが、悲しいかな、幽香にはそう思われるだけの前科があったりするのである。
 アリスの問いかけに、ごそごそと、幽香はスカートの中を探った。そこから取り出されたのは一冊の本、通称『幻想郷縁起』である。
「……これが何?」
 そういえば、これを書いた娘が、執筆に当たって、という理由で取材に来たっけなぁ、と思いながら取り出された本を一瞥する。幽香は無言で、ぱらぱらとその本のページをめくり、やがてある一箇所で手を止めた。
 それは、『妖怪』の項。自分が書かれているところだ。
「何か思うことはない?」
「別に何にも」
「あるでしょねぇ!?」
 あっさりとスルーかますといきなり幽香が泣きついてきた。
「と言われても……」
 書かれていることに間違いなんてないじゃないか、とつぶやく。
 人間に対する友好度は最悪、危険度最強、いじめっこ、好戦的な性格、その他にも種々様々。はっきり言って悪口連ねてるだけじゃないかと思うほどの文面なのだが、しかし、これが全部、目の前の風見幽香と言うものを一ミリの狂いもなく表現している単語なのである。
「……何が言いたいのよ?」
「私は……私はね、確かに幻想郷最強の妖怪よ。っていうかむしろ、弱者はみんな私の足元にひれ伏すべきよ。そうでなければ私がひれ伏させるわよ」
「上海、追い出して」
「ああっ! ちょっと待ってよ!」
 全く自分の言動を省みない一言に、容赦ない対応を放つアリス。当然、幽香はうろたえて、自分の首根っこ掴まえた上海人形を振りほどく。
「で、でもね!? でも……その……あ、あなたならわかるでしょ!?」
「何が?」
 そう言われても、主語抜きの会話についていけるほど、あいにく、アリスは頭がいいとは言えないのだ。と言うか、そういう会話についていける人間は、直感とひらめきで行動する、いわゆる天才肌の相手のみである。そういう類の存在ではないアリスにとって、いきなり話を振られてもな、というのが本音であった。
「だから……そ、その……あのね……。ええい、もう、察しなさいよ!」
「無茶言わないでよ。どこぞの巫女じゃあるまいし」
「あいつの神社に、最初に行こうとしたら撃ち落されたのよ! あんたが遊びに来るから、うちには参拝客が寄り付かない、って!」
「何でそこで私に逆切れするのよ!」
 あれ? 何か既視感が……。
 怒鳴ってから、ふと、何となく、こんな展開が以前にもあったような気がして、アリスの勢いがそがれていく。それを見逃さず、幽香は言った。
「だから……あの……。わ、私……お……お……」
「……お?」
「お……!」
 喉まで出掛かった言葉を一気に吐き出すためなのか、彼女は勢いをつけて立ち上がると同時、ほとんど叫ぶように言った。
「お友達が欲しいのよっ!」
 …………………………………………………………。
 海よりも深い沈黙、ここに。
「な、何よ! 何よ、その目! 私が友達を欲しがったらダメだっていうの!? 悪かったわね、そりゃ、私はこんな風に書かれるような奴かもしれないけど立派な女の子なのよ!
 みんなと一緒に、お茶を飲んだりお酒飲んだりケーキ食べたりご飯食べたりしたいって思っても悪くないでしょ!? 枕並べてお話してみたいのよ! お風呂で洗いっことかもやってみたいの! それが悪いって言うの!? ねぇ!」
「あー……えっと……」
 ……なるほど、既視感の原因はこれか。
 アリスは内心でつぶやくと同時、とりあえず、落ち着いて、と幽香の肩を軽く叩いた。そうして、上海人形に言って、空っぽになっている彼女のカップへと、新たなお茶を注がせる。
「……うん、その……幽香……さん?」
「何でさんづけなのよ」
「……いや、その、あまりにもお言葉が意外だったもんで……」
「……そうよね、みんなそう言うの。私にはそんなの似合わないとか、あの黒と白のツートンカラーなんて指差して笑ってくれやがったのよ? むかついたからあいつがためこんでた魔法書全部を紅魔館だっけ? そこの図書館に転送してやったけど」
「……そういうことしてるから友達できないんじゃないの?」
「……うぐ」
 その後、どういうことになったのか、考えなくてもわかることだ。と言うか、それはそれで、その笑い飛ばした輩の方が悪いような気もするが、ある意味、幽香もやりすぎといえばやりすぎである。せいぜい、あいつの家の食料を全部かっぱらって神社に持っていく程度でいいじゃないか、と。
「……それはそれで問題か」
「え?」
「あ、ううん。こっちの話」
 こほん、と一つ咳払い。
 微妙に冷め始めているお茶を一口してから、
「で……幽香? 何で私に聞きに来たの? その……自分で言うのもあれだけど、私よりそういうのには適した相手がいるんじゃないの?」
 人生相談みたいなことをやっている医者がいるじゃない、とアリス。
 しかし、幽香は、なぜか頬を赤らめつつ、
「あ……その……あんまり迷惑かけたくないのよ」
 私ならいいのかよ。
 握り締めた拳は、しかし、行き先をなくす。幽香の一言は色々と暴言だが、それでもここをぐっとこらえるのも、また人格としての器である、と考えたのだ。我慢しすぎは体に毒、と言う言葉もあるのだが。
「それに、ほら。
 初代友達いないツンデレキャラとして立ち位置確定されながら、今はそれなりに周りと交流があって、一人じゃとても食べきれない量のアップルパイを楽しそうに焼いているあなたになら、私と色々つながることがあるんじゃないかと思って」
「……」
 無言で、アリスはぱちんと指を鳴らした。
「いったぁぁぁぁぁっ!?」
 その直後、幽香の座っていた椅子が突然形状を変え、まるで肉食動物のように板を広げて彼女のお尻にかみついた。確かにこれは痛いだろう。悲鳴を上げて床の上をのた打ち回る幽香に、冷徹に、アリスは言う。
「親しき仲にも礼儀あり」
「な、何よ、事実でしょ!?」
「かみつきパワーアップ」
「いたたたたたたっ! お、お尻がちぎれるぅぅぅぅっ!
 ご、ごめんなさいごめんなさい! 私が悪うございましたっ!」
「よろしい」
 再び、ぱちんと指を鳴らす。すると、あれほど徹底的に容赦なく、幽香のお尻にかみついていた椅子が元通りの椅子へと姿を変える。しかし、幽香のお尻に刻まれたダメージは、かなり痛々しいものであった。何というか、容赦ないなマジで、という感じである。
「……な、何なのよ、この椅子……」
「無礼な相手を速やかに痛めつけるための椅子型人形よ。魔理沙を座らせようと思っていたの」
「……あんたね」
「まあ、テストケースとしては合格ね。もっとかみつく力を上げようかとも思っていたんだけど、それをしたら骨が砕けるか、肉がちぎれるかのどっちかだからやめておくわ」
 なんて陰湿な……。
 幽香の視線など無視して、アリスは彼女に新しい椅子を渡した。今度は何も仕掛けられてないだろうな、と入念に椅子を調べる幽香に「大丈夫よ」と一言。無論、こんなことやらかしてくれた相手の言葉を、その次の瞬間には信じられることが出来たら、そいつは聖人君子である。
 恐る恐る、椅子に腰を下ろして、幽香は改めてテーブルに体を寄りかからせる。
「……だからね? その……あなたに、私に、お友達を作る方法を教えて欲しいのよ……」
「と、言われてもねぇ……」
 正直、そんな方法が世の中に『こんなやり方がいいですよ』という形でマニュアルでもついて売っていたりするのなら、むしろ自分の方が欲しい。ぶっちゃければ、友達を作る方法なんぞというものが形式化されて存在されているわけなどないのだ。
 しかし、幽香の視線と言ったら。
 普段のドSな顔などどこにもなく、『何とかならない?』と言う感じで眉がハの字になっている。よっぽど、色んな意味で困っているのだろう。こんな顔をされると見捨てると言うわけにもいかず、さりとて、これといった答えを出すことが出来るはずもなく、悩んでしまう。
「ほら……何かあるでしょ? こう……」
「と言われても。第一、意識して友達なんて作ろうと思った覚えはないわよ。ただ、何となく、毎日を暮らしていたら……勝手に……」
「……羨ましい話ね。私なんて、花畑を訪れる客も滅多にいないから、必然的に、何か引きこもりみたいな生活になってしまうんだもの。
 年を取れば取るほどアクティブじゃなくなる!? 悪かったわね、年取ってて!」
 テーブルの上に広げられた『幻想郷縁起』を掌で叩いて叫ぶ。そんなことをされたらテーブルが壊れるんだけど、という視線を向けてくるアリスに気づいたのか、幸いなことに、一発、それを叩いただけで彼女は手を収めた。
「っていうかさぁ」
「……何よ」
「そういうことを人前で堂々と話せばいいんじゃないの? 友達になって、とか」
 以前、そんなことやったでしょ、とアリス。
 しかし、そんな一言を投げかけられた幽香当人はと言うと、なぜか顔を赤くして、もじもじしながら、
「だって……」
 そのまま、上目がちに、一言。
「……恥ずかしいじゃない」
「……そう言う仕草似合わないんだけど」
「う、うるっさいわね! いいじゃない、こっちのが素なのよ!」
「え!?」
「『え』とか言われたっ!?」
 アリスの反応の方が正しいのは、ある意味、間違っちゃいないのだが。
 しかし、そういう反応の仕方というのもあんまりと言えばあんまりである。さすがにちょっとまずかったかな、と落ち込んでいる幽香の肩を、アリスはぽんぽんと叩いた。
「と、とにかく! 私は困ってるの! 私に友達を作る方法を教えなさい!」
「いやだからんな情けないことを居丈高に言われても……」
「じゃあ、どうしたらいいのよ!?」
「……とりあえず、他人に頭を下げることを覚えたら?」
「くっ……そ、それはっ……!」
 何やら痛い腹を突かれたらしい。
 妙な葛藤を始めた幽香をとりあえず無視して、アリスは一度、席を立った。と言うか、あんな疲れる相手を前にして、長時間、空気を張りつめさせている方が無茶だ。精神がすり減ってしまう。一度、席を外し、台所で改めてお茶の用意を、彼女は始めた。ちなみに、上海人形達が持ってきてくれたポットの中には、まだまだたっぷりとお茶も残っているのだが。
「と言うか、友達が欲しい、ねぇ」
 正直、あの女の口からそう言う単語が出てくることは意外だった。本音を言うのなら、幽香という妖怪は、一人で孤高に気高く生きている方が似合っていると思っていたのだ。それは、彼女のそんな生き方に、ある意味で憧れていたと言っていいだろう。実際はあの通りだが、一応、傍目に見て、幽香はそんな視線を集める存在でもあるのである。
 ……まぁ、物事の本質なんてものは見通してしまえばそれまでとはよく言ったものだ。
 あれはあれでかわいくていいんだけどね、というのは包み隠さない気持ちである。
「友達を作りたいならさ、まずは、とにかく自分から行動を起こすべきよ」
 改めて、温かなお茶をティーポットに入れ直し、アリスがリビングに帰ってくる。幽香は不機嫌そうな顔で、とんとん、とテーブルを指先でつつき、時折、何かを思い出したかのようにぶつぶつとつぶやいていた。
「普段の態度を少し改めて、相手とお近づきになりたい、って気持ちを全面的に出していくべきだと思うわ」
「……難しいのね」
「いいじゃない、別に。困難な物事の方が攻略しがいがあるってもんでしょ?」
「手っ取り早く友達を作る方法って、意外にないものなのね」
 そういうこと、とアリス。
 もちろん、その後ろでは、蓬莱人形が『マスターも言うようになったものですわ』と何やら腹黒い笑みを浮かべていたのだが。
「けど、あなたはどうやって友達を作ったのよ」
「……別に何にもしてないって。ただ、普段通りに生活していただけよ」
「普段通りに、ね。私はそのようにやっても失敗してしまうんだけど」
「じゃ、生活を見直したら?」
「ふぅん……」
 あのひまわり畑、気に入ってるんだけど、とよくわからないことをつぶやく。もちろん、その言葉にはそれなりの意味も込められている。しっかりと、言葉の裏に隠された意図も汲んで、それでもよ、とアリスは返した。
「結局さ、自分に悪いところがあるのなら、素直に反省してそれを直していくのが一番だと思うのよね」
「私の悪いところ、か」
 こんな本に書かれるくらいだしね、とどこか寂しそうにつぶやいて、幽香は手元のティーカップに唇をつける。
「っていうか、何をどうやったらここまでのこと書かれるのよ」
「別に何にもしてないわよ。嘘を書いたら許さないからね、って取材に来た……何だっけ? あっきゅー? あいつの前で、山を一つ砕いてみせただけだし」
「……ダメだこいつ」
 自分の行いそのものに、全くの疑問を抱いていないことがわかる一言だった。んなことすりゃ、人間に対する友好度も危険度もトップクラスに悪く書かれて当たり前だ、と言ってやりたかったのだが、なぜか気持ちが萎えて言葉が出てこない。ついでに言えば『あっきゅー』じゃなくて『阿求』だ、とも言ってやりたかった。
「……ま、その後、霊夢と追いかけっこする羽目になったけど」
「そう言えば、あなた、霊夢と交流があるんだったわね」
「……ま、色々と」
「それなら霊夢に手伝ってもらえば? 食料なりお賽銭なりを持って行ってやれば喜んで協力してくれるわよ。ちなみに食料なら一日分、お賽銭なら百円くらいで充分」
「……あれ、何かしら、アリス。この、目から落ちる雫は……」
「わかる……わかるわ、その気持ち」
 ちょうどこの時、そのくだんの人物は神社の縁側で盛大にくしゃみをしていたのだが、それはともあれ。
「その他に……そうね、魔理沙はあれだからさておくとして……慧音さんとか。別段、あの人は、あなたが妖怪だからって悪さをしなければ、ちゃんと理詰めでものを考える人だからきちんと協力してくれると思うわよ」
「慧音……ねぇ」
「そうよ、それがいいじゃない。それで、たくさんの人間と友達になってさ。ひまわり畑に遊びに来てもらったりしたら? 子供なんて、あのきれいな花畑を見たら、きっと感動するわよ」
 ふぅん……、と笑顔で語るアリスに、どことなく、気が乗らないような相づちを打つ。
「それからね……そうだなぁ。ああ、そうだ。どうせだからイメージチェンジとか。こう……何て言うの? 人間にとって危険じゃない、いい妖怪ですよ、仲良くしましょう、って」
「どういう風に?」
「まずは笑顔」
「笑顔浮かべてたら逃げられたわ」
「それは、あんたの笑顔が他人に警戒心を抱かせる笑顔だからよ。女は笑顔って言うじゃない。屈託のない笑みを浮かべられるようになれば、特に男なんていちころね」
 へぇ、と幽香。
 何だか、妙に楽しそうに話をしているアリスの顔を見ながら、アップルパイを一口。すっかりと冷めてしまっていたが、これはこれでなかなかの味わいだった。
「シナモンがちょっと足りないわね」
「はいはい」
 それをぴしゃりと指摘すると、さっさとアリスはそれを受け流して、『それからね』と自説を滔々と語る。なかなか話し好きなのね、と思うと同時に、こういう風に他人と話をするようなスキルがあるから、彼女には友達が出来るのかしら、とも思う。
 思い返せば、アリスみたいに、誰かを楽しませたりするような話し方はしなかったな、なんて。
「……何?」
「……ううん、何でもない。
 ありがとう、アリス。じゃ、私、そろそろ帰るわ」
「え? まだ来てから一時間も経ってないわよ?」
「十分、参考にさせてもらったから。後は自分で何とかする」
 席を立とうとする幽香の肩を、ぐいぐいと人形達が押してきた。無論、『立つな』の意思表示であるのは言うまでもない。どういうつもりよ、とアリスを見る幽香の視線は、わずかにきついものになっていた。しかし、そんな視線を受けながらも、アリスは微笑を崩さない。
「つれないわねぇ」
「……別にいいじゃない。何か、あんたの話を聞いていると、私も色々やらないといけないことがあるみたいだから、さっさと帰るの。だから、こいつらどけてちょうだい」
「恥ずかしがり」
「なっ……!」
 見事なその指摘に、幽香の顔が一気に真っ赤になった。完熟トマト……いや、紅魔館より真っ赤と言っていいだろう。それくらい、ほっぺたを火照らせた幽香が「う、うるさいわね!」と怒鳴る。
「いいじゃない、別に」
「な、何が……!」
「恥ずかしがりでも強がりでも。ちゃんと、そう言う相手だって、誰かがどこかで見てくれているものなんだから」
「……誰かが……って?」
「あなたの友達」
 その一言に。
 一瞬、惚けたように幽香は立ちつくす。そんな彼女の手を取って、アリスは一言、ささやいた。
「私が、あなたの一番最初の友達よ」
 ――と。


『ホラーイ(マスター、よろしかったのですか?)』
「何が?」
『シャンハーイ(あいつ、何か誤解してったみたいだけど)』
「いいのよ」
 結局、幽香は、アリスが夕飯を勧めたにも拘わらず、その誘いを断ってマーガトロイド邸を後にしていた。アリスは一人、キッチンに立つ。今日は外が寒いからシチューなんていいかしら。そう思いながら、紅魔館からもらった鍋に材料を放り込んでいく。
「何か既視感感じていたと思ったらさ、あいつ、私にそっくりなのよね」
『シャンハーイ(どういうこと?)』
『ホラーイ(ええ、全く)』
「あはは、蓬莱は気づいてたか。
 ……何か、ね。ちょっぴり、私も感傷的になってたみたい」
 だから、いつもよりも、ちょっぴり優しかったのかな、と。
 出だしの容赦なさはさておいて、彼女はシチューをお玉でかき回しながらつぶやく。
「あんな風に、昔は、友達とか欲しかったもの」
『ホラーイ(今はどうなのでしょう?)』
「今? そうねぇ……」
 どんどんと、無遠慮にドアをノックする音。そして「邪魔するぜー」と上がる声。
「あーいう厄介な友人でも、持てて幸せではあるわね」
 そう言って、「勝手に人の家に上がり込むなー」とアリスは声を上げる。上海人形は、何が何だかさっぱりわからないと言った顔で首をかしげ、蓬莱人形は、『あらあらまあまあ』と言わんばかりにくすくすと笑う。
 お玉片手にキッチンを出て行くアリスは、その視線の先に、『厄介な友人その一』を見つけ、いつも通りに「何しに来たのよ」と一言、告げたのだった。


「……よし、笑顔、笑顔……」
 笑顔を手に入れる。
 幽香が、最初に掲げた目標はそれである。だからこそ、彼女はそこの扉を叩いた。

「紅魔館で、笑顔の特訓をさせてもらうわ!」

 よくわからない珍客を前に、紅魔館の主は言う。

「面白いから採用」
「帰ってくださいませ」

 もちろんその後に、その従者の一言で一波乱あるのだが、それは言わない約束である。
ここからMMRな後書き

魔:「――という話をアリスから聞いたんだが、霊夢、どう思う?」
霊:「どう……って、何が? 別にいいじゃない」
魔:「だって、幽香だぜ? この本にもこんな風に書かれるくらいだぜ?」
霊:「ふーん……どれどれ?」
魔:「第一なぁ。あいつに友達とか、そういうことは似合わないとは言わないけど……キャラじゃないよなぁ?」
霊:「……待って、魔理沙」
魔:「ん?」
霊:「ここに書かれていること……そして、アリスから聞いたこと。それは真実なのね?」
魔:「そうだけど……?」
霊:「……そうか。
   魔理沙、私たちは、どうやら大変な勘違いをしていたようよ」
魔:「な、何がだ?」
霊:「考えてみて、魔理沙。もしも、ここに書かれていることが本当だとしたら、こんな風になるはずよ」

行き先 ニア太陽の畑
幽:「なっ……! だ、誰がここに来ていいって言ったのよ! 帰りなさいよっ!」

霊:「直後、マスタースパーク」
魔:「……別にあいつのいつも通りじゃないか」
霊:「だけどね、魔理沙。ここからが重要なの」

行き先 ニア太陽の畑
幽:「ま、また来たの!? 何だってここに来るのよ! とっとと帰らないとひどいわよ!」

行き先 ニア太陽の畑
幽:「また……! ……何でここに来るのよ、もう。そんなにここにいたいなら好きにすればいいじゃない!」

行き先 ニア太陽の畑
幽:「……また来てくれたのね。こんなところに来たって楽しくないじゃない……。ここにいるのは私だけなのに……」

行き先 ニア太陽の畑×α
幽:「……ねぇ、どうして、いつもいつもここに来てくれるの?」

選択肢
ニア君に会いたくて
幽:なっ……! ば、バカなこと言わないでよ! ど、どうして私なんかに……! だ、第一、私なんて、いっつもあなたにひどいことしてばっかりで……それなのに……」

幽:「……ねぇ。私と一緒にいて……楽しい?」

選択肢
ニアはい
幽:「……嬉しい。ありがとう」

幽:「ねぇ……また来てね。私……ここで待ってるから。あなたのこと……いつまでも」


霊:「つまりっ! 幻想郷縁起は『ツンデレゆうかりん攻略ルート』の存在を示していたのよっ!!」
魔:「な、何だって――――――――――っ!?」




ここから本物のあとがき

ただ単に、淡々と会話だけで進めていく話にするつもりだったのに、気づけば後書きにネタを仕込んでいた。
な、何を言っているか(以下略&AA略)
つまるところ何が言いたいかというと、求聞史記のあの箇所からはこのようにしか読み取れなかったと言うことだっ!
あ、MMRは「みこみこれいむ」の略ですよ。

あなたは、ツンデレゆうかりんは好きですか? 私は大好きです。
haruka
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コメント



0.10040簡易評価
3.100NEOVARS削除
イエス、私も大好きです。ツンデレゆうかりんラブ。
しかし、アリスの昔に似ていると言うことは、これからゆうかりんは弱体化(ドールズウォー
6.100名前が無い程度の能力削除
勿論大好きです!
15.100彼方削除
ゆうかりんテラカワユス
27.100猫の転がる頃に削除
>つまりっ! 幻想郷縁起は『ツンデレゆうかりん攻略ルート』の存在を示していたのよっ!!
そんなルートが存在していたなんて……ッ!

天然属性も追加ですよね?ね?
28.100SSを見る程度の能力削除
実にいいツンデレです
43.100名前が無い程度の能力削除
これぞ我々が待ち望んだツンデレゆうかりんだ!
45.100名前が無い程度の能力削除
ツンデレゆうかりんは正義です。
46.100名前が無い程度の能力削除
これはイイゆうかりんですね
ちょっと花映塚やってゆうかりんに会ってきます
47.100名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんは
ツンデレが
良く似合う
49.100名前が無い程度の能力削除
>「私が、あなたの一番最初の友達よ」 これなんて百合フラグ?いや違くても普通にイイ話ですけど敢えて。
50.100名前が無い程度の能力削除
前からファンだったけど、今回の話で完全に惚れたww
ツンデレこそ日本が生み出した最強の属性です
54.100削除
OK、これから1ヶ月朝からの行動全部「太陽の畑に行く」にするわ。
55.100名前が無い程度の能力削除
yukarinkawaiiyo!!!
57.100名前が無い程度の能力削除
萌えた
59.100てるてる削除
よし、俺も自由行動枠を全部向日葵畑にする!
60.100名前が無い程度の能力削除
ゆうかりん蕩れ~
68.100oniyarai削除
旧作からの付き合いですもんね。デュアルスパークでダブルツンデレ ドン!
94.100コマ削除
イッツ ジャスティス
102.無評価名前が無い程度の能力削除
> ゆうかりん蕩れ~

戦場ヶ原乙
112.100名前が無い程度の能力削除
牛V・
114.無評価名前が無い程度の能力削除
ニア太陽の畑
116.80削除
ADV「東方棘照畑」が発売されると聞いて歩いて来ました。
118.100蝦蟇口咬平削除
ゆうかりんかわいい
さ、花畑へレッツゴー!!
119.80おひる削除
ゆうかりんはツンデレって言う概念は今まで無かったのですが、これはこれでありですねw
133.90名前が無い程度の能力削除
これはよいフラワーマスターと人形遣いですね。
ってか最後の「ドアをノックする」魔理沙に何よりも驚いてしまった・・
134.100卯月由羽削除
ゆうかりん、あの性格は作ったものだったのか…
140.100紫音削除
いいお話です、うむ。やはりゆうかりんはツンデレでガチですよね!

>あなたは、ツンデレゆうかりんは好きですか?
愚 問 !
150.100bobu削除
回復薬いっぱいもって太陽の畑に通いつめようw
155.80名前が無い程度の能力削除
な、何だってー!!
168.100名前が無い程度の能力削除
こりゃいいなw
171.100名前が無い程度の能力削除
うっひょー!!!
180.100名前が無い程度の能力削除
なんという素敵sswww
ゆうかりんとアリスの今後に期待ww
181.100名前が無い程度の能力削除
イヤッハアアアアアリスとゆうかりん大好きな俺には刺激が強い
192.100名前が無い程度の能力削除
>ツンデレゆうかりんは好きですか?
大好物だぜぇーーーー!!!
208.100名前が無い程度の能力削除
ツンデレゆうかりん!?
恋愛ゲームでは一番落としやすいタイプ!!
213.80幻想削除
あとがきGJ
220.100名前が無い程度の能力削除
かわいいなあもう
アリスのキャラも良かった
239.100名前が無い程度の能力削除
イイネ
253.100コメントする程度の能力削除
いいセンスだ!