Coolier - 新生・東方創想話

真っ紅なアンテルカレール【4】

2006/12/18 11:33:02
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    【真っ紅なアンテルカレール(追憶技工)】









Not everything in life can be interpreted metaphorically.(人生のすべてが メタファーとして解釈できるわけじゃないぜ)

That's because things fall out on the way. (それはいろんな物が 途中で脱落するからさ)








  [Patchouli&LittleDevil]


エネルギーが無邪気な衝突を繰り返している。

特殊な物質で作られた、巨大な試験管。分裂と融合を繰り返す、瞬く光の変化を横目に、パチュリー・ノーレッジは本をめくる。今のところ、書物にあるとおりの反応だ。著述を信じるなら、このあと光はピーコックグリーンに――――――――

「…ならないわ」

それどころか、なにをまかり間違ったのか紫になった。古代紫よりも深く、鮮やかに昏いそれは、花では朝顔が近いだろうか。いや、それよりももっと底知れない顔をしていた。パチュリー・ノーレッジのシンボルカラーが紫系統に属するというのは、自他共に通じる認識だとは思うが、それでも自分の紫はもっと明るいものだと思っている。藤色がスタンダードとして、暗くなってもそれこそ古代紫の二歩手前くらいのような。京紫はちょっと赤味が強いから違う気がするけど。
しかしこれは…

「Red:48、Green:ゼロ、Buleはかろうじて5、あるかしら?色相296、彩度100、明度20…№300033の紫…」

これは、むしろその名を受けたあのスキマ妖怪の方が合うに違いない。
それが発光している。禍々しいものを感じた。

「どう見ても失敗ね」

魔女は断じた。というより、本の内容が間違っていたと言うべきか。手順は全く不備がなかったように思えるし。まぁ、理論に怪しい物を感じたからわざわざ実験したのだから、言ってみればこれは予測通りなのだが。
興が削がれたのでもう実験は止めることにする。つまらなそうに役にたたない本を燃やすと、パチュリーはある意味実験より面倒な後片付けにかかった。可能なら小悪魔にやらせてもいいのだが、今のこの時間、彼女はきっとお茶の準備に取りかかっているだろう。それを中断させてまでやらせることもないように思える。自分ではお茶をうまく淹れられないのだ。

放っておくと甚だ危険であるそれを、遠隔操作で処理していく。見えない腕でもあるかのように、浮遊し傾き漂う器具。未だ変化を続けるエネルギーを転換、分解、小さな爆力を抑える障壁。水分発生による発火防止、洗浄、水気を弾く、収納。
パチュリー・ノーレッジの扱う魔法は、主に精霊魔法。あるいは自然界に存在する力の模倣と応用だ。火は水を、水には土を、土には木を、といった具合に。世界を構築する源を、全体から見れば申し訳程度とはいえ扱うのだ。これは応用が広く、相手によって攻め方を変えられる。加えてそれを支える智こそが彼女の強み。しかし、裏を返せば不自然なものには弱い。例えば、火に負けない肉体を持つ者や、霊体などには。弱いと言っても自身は耐性がある。決定的な一撃を与えられないという意味だ。おまけに魔法以外の部分、肉体的な要素は貧弱極まりないので、長期戦や悪質な環境でも圧倒的に不利だ。もっとも、だからこその智なのだ。得意とするもので決定出来ないのであれば、不得手のもので攻撃するしかない。それには下準備が、そして日頃からの情報が重要になってくるのだ。如何なる者でも弱点が無いことなどあり得ない。ならばそこを突けばよい。それに見合う戦略を練ればよい。

そういうわけで、今日も知識と日陰の魔女は、智を蓄えるのである。

「パチュリー様。お茶が入りましたが」
「今行くわ」

返事を返す。

もしも彼女の考えを聞けるなら、それより前に自立した生活を出来るようになりなさいと、あの人形遣いあたりなら言うのだろうけれど。幸いにしてそんな機会は未だ訪れていない。

「実験の方はどうでしたか?」
「予想通り失敗だったわ」
「あー確かに、著者名からして怪しかったですねぇ、あれは」
「そうね…」

その部屋から声は遠ざかる。戸は閉められ、薄暗いのが真っ暗になった。燃え尽きた本の灰が、僅かな空気の揺らぎに舞う。



外の季節は、秋だった。












【Tom Tito Toto】

[Flandre&LittleDevil]

「こんな話をご存じですか、フランドールさま」

いつものように選りすぐった本を数冊抱えてやって来た小悪魔は、さっそく一冊目に取り掛かろうとしたフランに、御伽話を切り出した。

「昔々、とあるとことにとても楽観的な少女がいました。つまり、あまり物事を深く考えない質だったのです。ある日彼女はちょっとした勘違いから、パイを一日に五つも食べて、しかもそれを失敗とも思わないものですから、彼女の母親は呆れてしまいました」

そこでいったん小悪魔が言葉を切ると、フランはそれで?というような目を返した。

「フランドールさまは、ちゃんと本を閉じて聴いてくださいますね」
「パチュリーのこと?自分の主をそんなこと言っちゃダメじゃない」
「ふふ。そうですねぇ。じゃあ、今のは秘密にしておいてください」
「うん、わかった。だから話の続き続き」
「ああ、そうでした。それで、母親はあんまり呆れ果ててしまったので、思わずそれを歌にして…」

娘の楽天さに呆れ果てた母親は、それを歌にしたのだが、厄介なのはその歌を王様に聞かれたことだった。たまたま近くを通りかかった王様は、母親が歌っていることはわかったが、歌っている内容まではよく聞こえなかったので、なんと歌っていたのかを母親に訊く。母親は娘が一日にパイを五つも食べたとは恥ずかしくて言えず、とっさに『娘は一日に五つも糸を紡いだ』と誤魔化す。王様はそれに感心し、そんな働き者の娘なら是非とも后に欲しいと願い出る。一年の内に十一ヶ月は遊んでいても良いが、その代わりに残りの一月は、毎日五つ糸を紡ぐことを条件にだ。さぁ大変なのはそこからだ。今さら嘘とは母親も言えず、楽天的な娘は王に嫁いでしまう。そうして楽しい十一ヶ月の後に、王は娘を塔に閉じこめ、約束通り糸を毎日五つ紡げと言った。出来なければ首を落とすというおまけ付きだ。ところがこの娘、実は糸紡ぎが大の苦手で、さすがに途方に暮れてしまうのだ。

「自分は明日までの命に違いない。そう嘆く娘の前に、それは現れました」
「それって?」
「それはそれですよ」
「あー誤魔化したぁ」
「まぁまぁフランドールさま。実はこの話、それが何であるかがとても重要なんです。というのも、その突然現れた奴は、嘆く娘の話を聞くと、『自分なら一日で五つ紡げるぜ』と言うんです」
「わぁ魔理沙みたい」
「う~ん、それはどうでしょう。確かに、人間の癖に無茶苦茶言うし、滅茶滅茶やりますね、あの魔法使いは」
「『これくらい普通だぜ』とか言ってね」
「だったら威張らなでくださいよってはな……」

こほん、と一つ咳払い。古本ではないので悪しからず。

「今はその話は置いておきまして」
「ああ。ごめんね」
「いえいえ。それで、代わりに糸を紡いでやってもよいが、もちろんタダというわけにはいかないとそいつは言います」
「うんうん」
「糸を紡ぐのは一月です。だから、毎夜紡いだ糸を持ってくるときに、そいつは自分の名を当ててみろ。当てられなければ俺と結婚しろと契約を持ちかけます。毎晩、三回まで挑戦してよいからと」
「え、いきなりプロポーズ?何気に持てるね、その人間」
「そう言えばそうですねぇ。一体この人間のどこにそんな魅力があるのやら。と、まぁ楽観主義の娘は、一月もあれば大丈夫だとその契約をのむわけです」

懲りない娘ですよねぇ、と小悪魔は笑う。

    一度、それで失敗しているのに

「でもまぁ、命は確実に助かりますから、そうそう悪い話でもないわけですが」

フォーローではないが、そう小悪魔は付け加える。

「そいつは約束を守って、毎晩糸を五つ届け、娘は王に感心されます。自慢の后だとも誉められます。一方、娘はそいつの名前を当てられない日が続きました。毎夜娘が名前を間違える度に、そいつは嬉しそうに笑って帰って行きます。そうして、いよいよ明日が最後の夜という日になって、娘はまたまた慌て出しました。後の祭りとはこのことです。その夜も名前を当てられずに、上機嫌にそいつは帰ってしまいます。次の日、つまり約束の当日ですね。元気のない妻を心配して、王は見たばかりの面白い話をしました」

困り果てた娘の元に訪れた王様は、笑いながら自分が森の中で見た、不思議な生き物の話をした。

「狩りに出かけた王様は、森で糸を紡ぐ怪物をみたと言うのです。そいつはもの凄い速さで糸車をまわし、上機嫌にこんな歌を歌っていたそうです」




おいらは糸を紡ぐ はやくはやく
一日五つ おてのもの
だぁれも知らない おいらの名前
あの子は明日 おいらのものさ

おいらは糸を紡ぐ はやくはやく
一日五つ おてのもの
だぁれも知らない おいらの名前
今日もご機嫌 糸を紡ぐ

一日五つ おてのもの
あの子は明日 おいらのものさ

おいらの名前はトム・ティット・トット
だぁれも知らない おいらの名前
その名前はトム・ティット・トット




おわかりですね?


「もちろん、それこそ娘の求めていた名前でした。話を聞いて娘は大喜び。その日の夜にやって来たトム・ティット・トットに名を告げ、娘はこうして難を逃れました」

いやー酷い話ですねぇと笑う小悪魔。確かに、これではトムが好い面の皮だ。

「その人、ものすごい強運」
「というより、王様が歌を聞きすぎなんですよ」
「あれ?そういえばその人のお母様はどうなったの?あと、来年はどうするの?」

不思議そうに首を傾げたフランに、

「さあ?」

存じません、と小悪魔は微笑んだ。















【まぁ、あの日は夏だったんだけど】


「明後日の辰の刻ですから、お願いしますね」
「うん。わかった」
「―――――メイド長と」



        咲夜さん?


[Sakuya&Meirin&   ]



「え、美鈴と?」

話を聞かされた十六夜咲夜は、奇しくも紅美鈴と同様の反応を示した。

「はい。そのように決定しました」

が、告げた人間もとい妖怪はそれぞれ違ったために、この偶然の一致は誰も知ることはなかった。

「門番の仕事はどうなるの?行くのは朝なのよね」
「代わりはいます。それに、朝なら騒がしいのは妖精程度ですから、警備の面でもそれほど心配はないかと」

微笑むメイド壱。その笑顔に何か作為的なものを感じる咲夜だが、それによって誰がどのような利益を得るかまではわからなかった。少なくとも、今、目の前で明らかに別の意図があるっぽいこのメイドには、なんら特になる要素はないように思えた。
それに。

お嬢様の命令、だものね

それだけで、それ以外の理由など、咲夜にはいらないのだ。

「わかったわ。留守の間は――――――――」

簡単な指示。どうせ当日もするが、今から通しておいた方がいいだろう事柄を並べる。頷くメイド。その様子には邪気はなさそうだ。あるいは、ひょっとすると暗に息抜きを勧められているのかもしれない。いや、お嬢様のことだから、十六夜咲夜の心中もお見通しで、さっさとケリをつけて仕事に励めと言う激励なのかもしれない。真相は、闇の中だ。

「じゃあ、私は私の仕事に戻るわ」
「はい」

美鈴の方は、きっと出された指示に疑問一つ持たずに了承するのだろう。そう思うと、馬鹿馬鹿しくなってその思考を切った。

それにしても、と代わりのことを咲夜は考える。美鈴と外出とは、随分と久しいことではないか、と。というか、久しいどころか、片手で足りるほど珍しいことでもある。試しに一つ一つ思い出してみる。

「…ほんとに片手で足りるわね」

九年間もここに住んでいるのに、驚きの事実である。忘れている記憶は無いかと探ってみるが、まぁ恐らく無いだろう。偶に、ほんの稀に生まれる時間に、散歩に誘ったことが無いわけではない。それすら、かなり前の話だが。誘ったってどうせ来やしないのだ。私には門番の仕事がありますから、とかなんとか言って断ってしまう。メイド長になってから、咲夜は美鈴とどこかに出かけた記憶が無かった。普段はサボってばかりいるくせに、この線引きはよくわからない。
そう、確か一番最初の外出は、あの時は――――――――


そうだ、あの日は夏だったのではなかったか。


とても暑い、うだるような昼下がり。まだ咲夜がここに来て半年も経たない頃のことだ。本格的に始まる咲夜の生活に、最低限必要な物を調達しようと、人の集落へ、それも限りなく町に近いような場所へ。そこは妖怪の文化という恩恵を多く受けている土地で、美鈴も行きやすかったのだと思う。物質調達のついでに、咲夜の嗜好を把握しようと考えたのだろう。咲夜が店の前で足を止める度に、美鈴は急かすことなく何か気になった物が有るのかと、軽い調子で何度も問うた。

そうだった。中でも咲夜が最も興味示した店を見て、彼女は困ったように笑ったのだ。それは、どう考えても必要最低限でないものばかりの店だったから。わずかに悩んでから、

――――――――まぁ、いいかな

やっぱり困った目のまま、美鈴はその雑貨屋へと咲夜を送り出したのだった。自分は、もう少し必要な物を探してくると、渡された紙を持って。また半刻後に。その時は、あの辺りで待っています、と。

でも、咲夜はその時間を超えてしまった。当然ながら、行ってみると彼女はすでに咲夜を待っていて、おそらく約束より早くいたのだろう。少し汗をかいていた。繰り返すがそれは夏で、うだるような昼下がりだった。

――――――――そんなに暑いなら、どっか中に入ってればいいのに

近くの木陰を指して、呆れたように言ってやる。

――――――――そうですね

その言葉に、何でもないふうに一つ笑って、彼女は手を伸ばしてきた。
咲夜はその手を握り返す前に、一瞬考えた。
つまり、そこで手を繋ぐ意味について。
はぐれるほど人もいないし、今は暑いのだ。
繋がない方がメリットがあるに決まっている。

でもきっと、そういうことじゃないのだと、なんとなくわかっていた。
握り替えした彼女の手は、戸惑うほどやわらかだったから。

――――――――咲夜さんの手はやわらかいですね

彼女の言葉にびっくりした。

――――――――美鈴の方が柔らかいよ?

彼女は笑った。子どもの手よりやわらかい手は、赤ちゃんの手だけですよ、と。

だから。

だから、やわらかいのは手でなく、握り方だったのだと、そこでようやく思い当たったのだった。


ああ。


「――――――――思い出すんじゃ、なかった」













【メトロノーム的思考欠如】

[Meirin]

最近、十六夜咲夜は素っ気ない。というか、『反抗期』らしい。よくわからない。でも、困る。

「咲夜さんが冷たいよぅ。今日も帰ってこないし。帰ってきても怖いし」

自棄酒のように中国茶をあおりながら、紅魔館門番隊長こと紅美鈴は、大変元気がなかった。情けないことこの上ない姿だったが、見る者に同情より微笑みを誘ってしまうところが、彼女の彼女たる所以だった。ようは、みんな他人ごとだと思って気にしなかった。薄情である。

「いけない、いけない。パチュリー様から鷹揚に構えろと言われたんだった」

そんなふうに立ち直りが突然だから本気にされないのだが、本人もとい本妖は気づいていなかった。共同スペースである食堂のような大部屋を出ると、美鈴は自室へ向かう。ひょっとすると彼女は、先ほどの怒りを静めたかもしれない、と。いや、元はと言えば怒ってはいなかった。ただ、廊下ですれ違った彼女から漂う空気が、ぴりぴりとしていただけで。


紅美鈴は気づかない。

墓穴を掘っていることがわからない。

だから、あの夜が待っていた。

それは、冬の頃だった気がする。
















【Miagolare】

――――――――相変わらず人見知りする猫みたいな奴だな。確かに、私とはえらい違いだ

それは、霧雨魔理沙の言葉だった。

[LittleDevil&Patchouli&Alice]

「にしても違いすぎですね」

今日も今日とてあの一角、古き魔導書の本棚を陣取って、彼女は腰を下ろして修復作業。集中しているのか、本を膝に置き、アリス・マーガトロイドは目を閉じている。まさか寝ているということはないと思う。思いたい。

「訂正が必要ね」

魔女はいつものように人形遣いを横目に本を読んでいる。こっちもこっちだと小悪魔は思ったが、賢明にも言葉にはしなかった。

「訂正ですか」
「懐き方を知らない猫みたい、に訂正」
「猫は否定されないのですか?」
「どう見ても猫っぽいわ」
「それはまぁ、犬や鳥や猿よりは。でも、さんざんネズミ呼ばわりしておいて、よりによって猫ですか」
「高そうじゃない、猫度」
「猫度………あー言わんとしていることがわからない気がしなくもない気がします。室内猫ですね。外に出たことがないタイプの。それから、少し神経質の」

そうそれ、と魔女。言いたい放題である。


      「聞こえているわよ、魔女と小悪魔」


自称都会派魔法使い、思ったよりも耳が良いようだった。

「猫も関心が無い振りして、耳だけ傾ける…」
「失礼な。聞き耳なんてたててないわ」

近くに置いてある人形とリンクしている為、こっちの音もよく聞こえるらしい。接続を切ればいいと思うのだが、やっぱり小悪魔は言葉にしなかった。最近ふと感じたのだが、もうこの二人はこれで結構仲がいいんでないかと邪推をしている。思い返してみれば、魔理沙とアリスの会話も、いつ聞いても喧嘩しているようにしか思えなかった。案外、これで普通なのかもしれない。

魔理沙、霧雨魔理沙、普通の魔法使い、白くて黒い奴。

小悪魔はふと閃いた。ひょっとするとアリスがパチュリーのお茶(淹れているのは小悪魔だが)を頑なに断っているのは、魔理沙が彼女に妙なキノコの粉末でも盛るからではだろうか。そういう魔法使いだ、あの白黒は。どうも概ね知り合いである人間の友好の表し方は、小悪魔といえどついていけない時がある。ついていきたいとも思わないのでいっこうに構わないが。


お茶、淹れようかなぁ



毎日は、つつがなく過ぎていく。















【真っ紅な回顧録Ⅴ】


「こんばんは」

冷たいのにどこか無邪気で、それでいて澄ました気配を持つ、幼いようで優雅な声。
それが今日も、耳朶を打つ。

「今宵も、お話をしに来たわ」

 ――――――――どうしたの、それ

「え、何が?」

 ――――――――血の臭いがするわ

「おかしわね。治ったと思ったのに」

本気なのかそれとも巫山戯ているのか、影は言う。

「さて、今宵で七度目のお誘いよ。少しは心が変わったかしら」

 ――――――――何度訊いても同じ。どのみち先は永くない

「そうね。ここもだいぶ焦臭くなってきたわ。もう、あまり猶予がない」

 ――――――――違う。そう言う意味じゃないことぐらい、わかっているでしょう…

「紅きティンクトゥラ」

影の言葉に、少女はかすかに反応を示した。

「他ならぬその製造方法のヒントは、きっとあの図書館にあるわ」

本をめくる指が止まる。

「大丈夫。あとは貴女の覚悟次第。私が運べば、少なくとも辿り着くまでに死んだりはしないでしょう?」

指し示す運命のそのままに、影は言った。


少女は動かない。しかし、それは上辺だけの話。

 ――――――――あなたは、少し頭が悪い…

「失礼な話ね」

 ――――――――きっとそう易々とは入れないわ

「なら手こずって入ればいいじゃない」

何でもないふうな声。

「あるいは、味方を増やす、か」













時間が、ありません。

こちら、歪な夜の星空観測倶楽部です

駄目だ、絶対に今年中に終わらない。いつものようにラストは決まっているのにそこにいくまでが長い。しかも人数多すぎて困る。自業自得だけれど困る。

そんなこんなですが、まるで意味のなさそうな【4】です。本当に意味が無いのかもしれませんし、実は有るのかもしれません。何気に遊んでいるのは間違いないですが。

参考:『蒼い時』エドワード・ゴーリー
   『トム・ティット・トット』英国民話


かっこいい咲夜さんが、書きたいなぁ。


>>アリスの猫度
>確かに高いかも、構ってもらえないと寂しそうにするくせに、
>構われると迷惑そうに逃げてくあたりとか。
>こっちの手がギリギリ届かない距離からじっとこっち見てたリ。
>この手の猫は、家に新入りが入ってきて、そいつばかりが可愛がられると
>不機嫌になって家出するようになります。(体験談)
あーお家に猫がいらっしゃるのですね。彼らあるいは彼女たちは、何に機嫌を損ねたのかわからない時がよくあります。ちなみに小悪魔は内心で、「パチュリー様だって充分猫っぽいですけどね。タイプは違うけど」とか思っていますが、やはり賢明にも口には出しません。


>年内完結無理ですか・・・なんとなく予感はしてましたwまぁ待つ楽しみがあるというのはいいことだと思います。うん。
>私は犬を飼ってるので猫のことはよく知りませんが、懐き方を知らない猫(しかも野良じゃなくて室内猫)っていうのは相当に不器用な生き方をしてそう。
実を言うと、私人身、猫は飼っていません。昼間誰も家にいない+小さい子が家にいるので、動物はアウト。しかし小さい頃からずっと飼うことが夢なので、友達や近所の猫を可愛がっています。その結果、お隣の猫は我が物顔で我が家の庭先にいたりしますが。その知り合い猫?の中で、一匹だけいつまで経っても懐いてくれない猫が居て、彼女はなんと飼い主にすら愛想がありません。なまじ可愛い物だから、仲良くなるのが諦めきれない我が身が哀しいって……なんか猫トークになってますが、そんな実体験に基づく感情が、これから先の話に影響していく………かもしれない。それは私にもわからない。

>かっこいい咲夜さんに期待しています
正直、自分の話にずっと不足しているのはこれだと思っています。いや、本当は格好良いって言うか、『完全で瀟洒な従者』な咲夜さん大好きなんですよ。ただ、何気に天の邪鬼ま自分としては、ついついそうじゃない彼女を書いてみたいという誘惑に耐えきれずにこんなことに。
その所為で、作中リアルタイムでは殺人ドールどころかナイフを投げてすらいないし、何故かみんな使いたがる、女性特有の身体のなんちゃらの話は徹底的に避け、彼女の頭の中のレミリア分は少ないという咲夜さんに。とまぁ良い感じに日本語が崩壊するくらい、瀟洒分が足りない。

>なんか猫な流れ?になってますね。
>パチェも猫っぽいというのに納得。
>あと、悪魔の犬でパチェにも猫度低いと言われている咲夜さんですが、何気に猫っぽい気がします。
>特にこのシリーズの彼女は。美鈴は犬っぽいかな。
あまり意識してないですが、確かにこの咲夜さんも言われてみれば猫な気がしなくもないような今日この頃。でもほら、彼女は何よりレミリアの従者でメイドさんじゃないですか。刃物を持った。美鈴が犬なのは異論無いですが。とはいえ、猟犬と番犬は違うはず。
歪な夜の星空観察倶楽部
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コメント



0.1940簡易評価
9.80名前が無い程度の能力削除
>アリスの猫度
確かに高いかも、構ってもらえないと寂しそうにするくせに、
構われると迷惑そうに逃げてくあたりとか。
こっちの手がギリギリ届かない距離からじっとこっち見てたリ。
この手の猫は、家に新入りが入ってきて、そいつばかりが可愛がられると
不機嫌になって家出するようになります。(体験談)
11.90名前が無い程度の能力削除
年内完結無理ですか・・・なんとなく予感はしてましたwまぁ待つ楽しみがあるというのはいいことだと思います。うん。
私は犬を飼ってるので猫のことはよく知りませんが、懐き方を知らない猫(しかも野良じゃなくて室内猫)っていうのは相当に不器用な生き方をしてそう。
14.80名前が無い程度の能力削除
かっこいい咲夜さんに期待しています
18.80名前が無い程度の能力削除
なんか猫な流れ?になってますね。
パチェも猫っぽいというのに納得。あと、悪魔の犬でパチェにも猫度低いと言われている咲夜さんですが、何気に猫っぽい気がします。特にこのシリーズの彼女は。美鈴は犬っぽいかな。
46.100名前が無い程度の能力削除
うん、アリスは猫っぽい。パチュリーも猫っぽい。そしてどこぞの黒白も(タイプは違うが)猫っぽい気がする。

結論、魔法使い組はみんな猫ッ気がある。かわうい。

誤字報告
>握り替えした彼女の手は
握り返した、だと思われます。
47.無評価名前が無い程度の能力削除
猫はいいものです。家にいた猫で一匹だけ擦り寄ってきてくれないのがいたけど、他の猫を撫でてると鳴いて自己主張するのに近づくと逃げる子でした。ここのアリスもそんな感じかな。
誤字報告
bule blue
特 得