Coolier - 新生・東方創想話

胸娘物語

2006/12/13 17:39:47
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  ~ 幻想郷豊胸王選挙 決着つかず!? ~

 幻想郷十一代目豊胸王選挙は先日、投開票が行われた。
 豊胸専門家の森近氏によると、今回の選挙はこれまでの通り、紅美鈴(紅魔館)や八雲紫(マヨヒガ)
 風見幽香(夢幻館)らの有力者同士で争われると予想されたが、新人の上白沢慧音(人里)
 八意永琳(永遠亭)、小野塚小町(冥府)らの参戦により史上稀に見る大混戦となった。

 開票の結果、なんと誰も四分の一以上の得票数を得られないという事態が発生し、
 本日未明、幻想郷選挙委員会は明日正午より再選挙を行って豊胸王を決めるとの発表を行った。










「何でなのよーーーっ!!」
「紫様、気をお静めください」

ハラリハラリと無残に引き裂かれた新聞紙が舞い落ちる、
黒白の紙ふぶきの中で天を仰ぐは隙間の主、後ろでなだめるはその式、
夕日に染まったマヨヒガを、主の悲鳴が覆い尽くす。

「何故!? どうして!? 手応えは全て完璧だったのよ!?」
「恐らく、他の方々も紫様と同等以上のキャンペーンを展開してきたのでしょう」
「ならばあなたは全部無駄だったって言うの!? 妖怪達の群れのボスを狭い会場に押し込めて
 二週間にも及ぶ不眠不休耐久演説! 深・弾幕結界で一族共々脅しまくった実弾射撃!
 薄い上着だけを羽織ってこの寒い中胸を強調し続けたのも全て無駄だったの!?」
「まあ、結果だけ見れば無駄でしたね」
「エターナルフォースブリザード!」
「冷たっ!?」

外気温に晒されて冷えた手を首元にピタッとやられると冷たいんです。

「ふーんだ……どーせ藍はせくしぃクイーンだもんねーだ、私はただの隙間妖怪だもんねーだ」
「お言葉ですが紫様、私はせくしぃクイーンの座を守る為に相当な努力をしております」
「どーでもいーわよそんなのー、どーせどれだけ頑張ったって私は駄目なのよー」
「甘ったれるなぁ!!」
「はぶっ!!」

中指だけを出っ張らせた正拳突き、つまり中高一本拳で殴られるとすこぶる痛いんです。

「いいい痛い痛い! 何をするのよらぁん!!」
「あなたがどれだけの苦労をしたというのですかっ! たかだか選挙活動開始以降の三週間程度
 頑張っただけでしょう!! 私は常日頃からせくしぃクイーンである為に苦労し続けているのですよ!!」
「何よっ! 所詮せくしぃで居続けるだけでしょ!? それにどんな苦労がいるのよ!」
「どんな苦労が……? あなたに男が抱きしめた時最高の感触を与える為の上中下のボディバランスを
 維持する苦労や徹底的に栄養管理をして美肌を維持する苦労がわかるものかぁぁぁぁぁ!!」
「痛い痛い痛い!! ほっぺをつねるのはやめてっ!!」

伸びます伸びます。

「そんなの妖力でちょちょいと身体を弄くれば楽勝じゃない!!」
「人工的な肉体でせくしぃクイーンの座につけるものかこの未熟者がっ!!」
「式に未熟っていわれたっ!?」
「いいですか!? 胸王になる為には脂肪を上手く蓄えるための栄養取得と胸や肩、腰周りの訓練だけで
 それなりに戦えますがせくしぃクイーンになる為には腕、足、顔も含めた総合力が必要なのですよ!!」
「総合力!?」
「例えば先程も述べたとおり、せくしぃさとはどれだけ男性を惹きつけて魅了するかが必要です、
 原則として胸のサイズはCかD!! 身長は150cm以上165cm以下!! そして腰のくびれの形の調整!
 必要とあらば筋肉をつけ! 不必要な贅肉は完全に計算された栄養管理と運動の下にそぎ落とし!
 血のにじむ訓練によって骨格を調整して「せくしぃ」と呼ばれる体系にまで持っていくのです!!」
「だから妖力でちょちょいと弄くれば……」
「この愚か者がっ!!」
「式に愚かって言われた!?」
「所詮人工的に作られた身体などまやかしに過ぎんのです!! 確かにそのまやかしの体でも男達を
 惹きつけることは出来る! しかし自然の体を持ったものと並び比べるとその差は一目瞭然っ!!
 輝きが! 優雅さが! あふれ出る魅力が! 発せられるフェロモンが! 何もかもが違うっ!!」

藍の力説は続く、時代ごとに変わる男達の嗜好に合わせるために日々続けられる肉体改造、
油揚げを食べるために過酷な苦労を強いられる食生活、橙を可愛がるために手を抜かれる紫の世話、
血の涙を流した事もあった、シッポを切り落としてバランスを取ろうと考えた事もあった、
だが全ては主のために、素晴らしき従者を携える者というカリスマを主に捧げるために。

いつしか藍も紫もその目から涙を流して抱きしめあっていた。

「紫様、あなたの力はこの程度ではないはずです、諦めないでください……!」
「わかったわ藍……私は諦めない、必ず豊胸王の座についてみせるわ、最高の式であるあなたの為にも!」
「その意気です! その意気ですよ紫様っ!」

こっそりと障子の影から覗いていた橙も、その熱い思いに涙を流していた、
彼女も将来はせくしぃクイーンになる為に過酷な道を自ら歩む事だろう。

「そうとなれば足を止めてる場合じゃないわね」
「はい、まずは胸の張りを良くしますか? それともマッサージで大きくしますか?」
「紅魔館に奇襲をかけるわ」
「それとも……って、何故!?」
「再選挙までもう一日も無いわ、今からの特訓程度ではとても現豊胸王、紅美鈴には敵わないもの」
「む……確かにそうですが、ここまで来たのならば正々堂々と……」
「正々堂々と叩き潰すのよ!」
「うわぁ、さすが紫様だ」
「まあ、再選挙と決まったときからそのつもりだったし」
「うわぁ、やっぱり紫様だ」

しかし紫の立案した紅魔館の美鈴を襲ってもにょもにょしよう計画はいきなり壁に突き当たる事になった。

「何よこれ!! 紅魔館周辺の隙間空間に防壁が張ってあるわっ!!」
「はて? 紫様ならどんな結界でも破る事は容易い筈では?」
「防壁と結界を一緒にするんじゃないわよこのカースト最下層!!」
「うわ酷っ!!」

藍、生まれは踊るマハラジャ発祥地。

「結界は境目を強固にして中を封印するもの、対して防壁は外の方向に力を向けた単純なる壁、
 力の向かう先が逆であり、その性質も全く非なるものなのよ、つまりは私の専門外なの」
「知ってましたけどね、というか皮肉ぐらい理解できないんですか?」
「こ、こん腐れ狐……!」

ゆかりんはピュアガールなんです、苛めないであげてください。

「しかし何故防壁が……まさか選挙のためだけにこれほどの大掛かりなものを張ったと?」
「多分そうね、三十年前に美鈴の胸を切り落としたのをまだ覚えてたみたい」
「切っ!?」
「でも翌日の朝には元通りだったわ、彼女の再生力を見誤ったわね」
「何という争いですか……」

藍は甘く見ていた、豊胸に賭ける女のプライドというものを、
藍には想像もつかなかった、たかが体の一部分に賭ける女の意地というものを。

「今度は胸を切り落とすなんて生易しい真似はしないわよ……」
「(た、戦いの場が違う……せくしぃクイーンコンテストが光の争いならば、豊胸王選挙はまさに闇!!)」

そう、単なる嫌がらせなどではない、まさしく胸の削りあい、
その果てしない闘争の果てに得られる称号が、豊胸王なのだ。

「顔が強張ってるわよ、藍」
「あっ……」
「あなたが考えている通り、豊胸王をめぐる争いは醜いわ、この世の最後の食料を奪い合う人間のように」
「(何もかもお見通しか……やはり恐ろしい方だ)」
「今回の選挙はね、あまりにもこれまでの争いが不毛すぎて、互いに干渉は無しと決まっていたの、
 でも、この私が防壁を破壊して紅魔館へ乗り込んだら……どうなるかしら?」
「……紫様、引き返しましょう、まだ何か別の対策が打てるはずです、何もリスクを犯す必要は」
「駄目よ、引き返すのはあなただけ」
「紫様!」
「新たな強者が三人も現れた以上、この戦いは新たな豊胸王の時代の幕開けとなる、
 だから私はもう守勢には回れない……橙を連れて明日まで逃げなさい、私の背はあなたに委ねるわ」
「背を? ……!」

藍は気づいた、いつも有力候補に上げられる紫が、何故一度も豊胸王になれなかったのか、
二人を、藍と橙を密かに守っていたからだ、巻き添えを食わせぬ為にその身に全てを受けながら。

「そんな顔をしないの、いつもの冷静沈着厚顔無恥全裸天狐なあなたはどうしたの?」
「……はぁ、それでは笑えませんし、怒りもできませんよ……必ず、無事に帰ってきてくださいね」
「勿論よ」
「もう紫様の手は煩わせませんから……私達だけで逃げ切って見せます、絶対に」
「本当にあなたは優秀な式ね、何も言わずとも全てを理解してくれる……ふふっ」

式は振り返らずにマヨヒガへと直結された隙間をくぐり、二人の距離が遠くなる。

「アスタラビスタ」
「せめて日本語を使いなさい」

しかしどれだけ距離が離れようとも二人の心はいつも隣に。





その頃、紅魔館正門前では二人の弾娘が仁王立ち。

「レミィ、防壁が歪み始めたわ」
「あら、あなたが全力で張った防壁を突破できる妖怪なんているの?」
「私の目の前に一人いる事は確かね、そして地下にもう一人」
「でも異次元に張られた防壁を突破できるのは」
「隙間の大妖怪だけね」

二人の前で空間が歪み、歪んで歪んで隙間が開く、中から覗く二つの瞳が隙間からゆっくりと……

「ワタシユカリン! コインヲイレテネ!」
「スカーレットシュート!!」

出てきた瞬間大爆発である。

「くっ、こいつは囮だ! 直接美鈴を叩く気か!」
「大丈夫、美鈴の周りにはさらに強固な防壁を張ってあるわ、私達が到着するまではまず破られない」
「しかし相手は紫……とにかく急ぐわよパチェ!」
「ああっ、ちょっと乱暴に引っ張らないでー!」
「あら? コインは入れてくれないの?」
『!?』

それは堂々とした奇襲であった、まさか囮が本物のはずが無い、そんな心の隙間を突いたバックアタック、
すでに紫は二人の真後ろまで迫っている、状況は圧倒的に不利だ。

「(あえて弾幕をその身で受けてまでだと!!)」
「(いけない! 完全に後ろを……)」
「ならコンティニューは無しね?」
「この……私をなめるなぁ!!」
「レミィ!?」
「ハラキリグングニルァー!!」
「へうっ!!」

叫びと同時にレミリアの背から飛び出してくる紅い槍、自分ごと紫を貫くグングニル、
吸血鬼の圧倒的な生命力を生かした玉砕戦法により、急所を貫かれた紫のダメージは大きい。

「けふっ……貴様の心臓取ったぞ!」
「……無茶をしすぎよレミィ」
「ふんっ! それよりも覚悟はできたのか隙間妖怪! その槍はもう抜け……」
「ジバクシマス、ジバクシマス」
『二重フェイクだと(ですって)!?』


二重の極ちゅどん


「ふふ、岡崎印のロボゆかりん、甘く見てもらっては困るわ~」

煮てよし、焼いてよし、愛でてよし、食用にも愛玩用にもお勧めの岡崎印ロボ、
博麗神社近くの洞窟奥研究所にて絶賛販売中、勿論自爆機能もデフォルトで搭載。

「さてさて、残るは目標ただ一人……隙間オープンッ」

ぐいーん、ぐわんっ……サクッ! サクサクサクサクッ!

「……痛いですわ咲夜お姉様」
「うさんくさい妹を持った覚えなんてないわね」

美鈴が閉じこもっているであろう扉の前に、優雅に佇む一人の従者長、
何も脳天にナイフが刺さるのは美鈴だけではない、弾娘全てにその可能性があるのだ。

「酷い! 酷いわお姉様!」
「まだ言う気?」
「十年前の冬にソ連の寒空の下で当時ストリートチルドレンだったあなたはお腹を空かせ倒れてた私に
 食料をこっそりと分けてくれてそれがきっかけで姉妹になろうと誓い合ったあの日の事を忘れたの!?」
「はっ、まさかアンナ!?」
「そうよ! 私がそのアンナよ!」
「そんな訳ないでしょうがこのダボハゼがー!!」
「ひぎゃぁぁぁぁぁ」

サクサクリバイボー

「うっうっ……酷いわ、かわいい妹を苛めるなんて……」
「しつこいわね、そもそもソ連は十五年前に崩壊してるしストリートチルドレンだった覚えも無いわ」
「だったらあなたは誰なの? カレン姉さま? それともアン? 憐花なの?」
「……あなたには何人姉妹がいるのよ」
「ざっと全世界に二百数十名ですわ」
「うわ、うさんくさい」

ちなみにバチカンにも居るそうです、眉唾物ですが。

「……あら?」
「何よ、今更用事を思い出して帰るの?」
「違うわ、確かあなた、少し前にどこかのサーカス団で……」
「え?」

サーカス団、サーカス団……紫の急な一言に咲夜の脳が過去の記憶を脳内から取り出し始める。

「(投げナイフのアルバイトで生活費を稼いでいたのは確かフランスとイタリアと……)」
「そうよ! あれは南米、ブラジルのサンパウロで!」

ドスッ!

「直で刺されると脳天奥深くまで刺さって凄い痛いですわ」
「お黙り、記憶を全力でたどった私が馬鹿だったわ」
「酷い! 脱出マジックのゆかちゃんと目隠し投げナイフのさっきゅんの黄金コンビはどうなったの!?」
「残念だけど……私が得意なのは妖怪切断マジックよ!!」

言い終えると同時に紫の視界から咲夜の姿が消える、代わりに視界に飛び込んでくるのは
左右斜めから徐々に迫りくる銀幕の壁、その刃と刃の間は5cmと開いていない。

「これは弾幕ごっこじゃないわ、れっきとした弾幕」
「あらあら、もうちょっと漫才に付き合ってくれても良かったのに」
「美鈴の胸はお嬢様の為の至高の枕、それを奪おうとするものには血の粛清を」
「ふふ、こんなものでこの私を仕留めるつもり?」

相手は紫である、当然咲夜もこれで仕留めれるとは思っていないだろう、
そんな彼女が右手に取り出したのはギラギラと輝く巨大なナイフ、刃渡り96cm、重量12kg、
それはナイフと呼ぶよりも銀塊と呼ぶべきなのか、処刑執行者はギロチン裁断がお好みのようだ。

「物騒なものを持ってるのね、刃物マニアの藍みたい」
「ええ、どこかの九尾の狐に特製で作ってもらいましたの」
「(あの馬鹿狐……!)」
「さてどうするの? 串刺しにされるか、隙間を開いて出てきたところを切られるか、それとも逃げる?」
「あら、弾幕は避けるのがセオリーじゃなくて?」
「避ける? 体一つ潜り込む隙間も無いこの弾幕を? 笑わせてくれるわね」
「くすくす、あなたにも見せてあげるわ、私と博麗の者だけに許される回避術を」
「究極の……?」

紫の体がふわりと宙に浮く、ゆらりゆらりと漂いながらじっと見つめる紫の瞳、
そして周りを取り囲んだナイフが紫を串刺しにせんと速度を上げた。

「活目なさい! これぞ究極にして至高の回避術!」
「(紫、博麗……結界か何か?)」
「チョン避け! チョン避け!」

スペルブレイク!!

「そんな馬鹿なことがっ!!」
「ふぅ~、危なかったわ」
「いやいや! どう考えてもおかしいわよ!」
「だって当たり判定小さいし」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「ゆかりんよくわかんなーい(はぁと」
「……その首切り落とす!」

もうさっきゅんブチ切れである、目は赤くなってるし時を止めるのも忘れて切りかかってるし。

「たとえこの身が砕け散ろうともこの刃を振り切ってやるわよ!!」
「甘いわね! 妖忌直伝真剣白羽取り!」
「なっ! 掴む気!?」

そして紫の首は跳ね飛んだ。

「……横に振ってるのに何で縦に構えてるのよ」
「そっちの方が格好いいからよ」
「なんで首がはねられてるのに無事なのよ」
「だって当たり判定小さいし」
「世の中って理不尽……!!」

むしろ幻想郷が理不尽。

「さて、楽しいお遊びもこの辺でおしまい、良い子はおねむの時間よ」
「まだ夕方よ?」
「逆・弾幕結界」
「それってただの弾幕……ぶっ!!」

無粋なツッコミを入れるものには容赦無い弾幕を、それが八雲家の掟。

「さて、邪魔者も排除した所でいよいよ本命とご対面ね~」
「……こふっ……無駄よ、その防壁はパチュリー様の渾身の作、内側からじゃないと絶対に壊せないわ」
「あらあら、気絶していれば良かったのに」
「もう動けないわよ……」
「そう、ならそこで見ていなさい、その渾身の作とやらがあっさりと砕け散る様を」

そう言うと紫は上着を軽くはだけさせ、肌着に包まれた美しき胸を露わにした。

「……何で脱いでるの」
「さっきゅん、何故私達が豊胸王を争うのかわかる?」
「ただの見栄でしょ」
「違うわ、全然違う、あなたには胸の何たるかがわかっていない」
「そんなもの分かりたくも無いわよ」
「それは分かりたくないのではなく、分かれないだけ、なぜならあなたは……」

紫が振り向いて咲夜の胸元を見つめる、その悲しげな瞳はまるで虚構を哀れむように。

「な、何よ……何なのよ」
「胸にはね、胸力が溜まるのよ、大きければ大きいほど、美しければ美しいほど大量に、力強く」
「うわ、凄くうさんくさい」
「豊胸王になるということは最も強き胸力を持つという事、それはそれはもう、素晴しい事ですわ」
「……それで?」
「見なさい、胸力の威力を、古来よりあらゆる女達が求め続けた究極の力を!」
「!?」

 ― 胸符 フェロモンビーム ―

「フェ、フェロモンビームってあなた……馬鹿?」
「充電完了……発射!!」


防壁が破壊されました。


「パチュリー様の渾身の防壁が訳の分からないビームに破壊されたーっ!?」
「これが胸力よ!」
「わかったわ、これは夢ね、夢なんだわ、こんな事ありえないもの……はふぅん」

ざんねん、さっきゅんの冒険はここで終わってしまった。





「……来ましたか」
「ええ、この通り」

紅美鈴と八雲紫が相対す、揺れるは四つの大きな塊、
片や究極の張りを持つ者、片や究極の形を持つ者、二人の龍が向かい合い睨みあう。

「どうする気ですか? あの時のように切り落としますか?」
「しないわ、どうせ無駄だもの」
「賢明な判断ですね」
「だからこそ! あなたが何をしようとも関係ない処刑方法を思いついたわ!」
「何っ!?」

隙間から取り出される何十本もの棒状の物体、それを見て美鈴の顔が一気に青ざめる。

「それは油性マーカー!? なんて物を!!」
「うふふふふ……少しでも肌に触れれば落ちない汚れが、薬品で落とせば肌荒れが、まさに恐怖」
「くっ、胸力の重要な部分である見た目とフェロモンを封じに来たというわけですか!」
「もうあなたを助ける味方は誰も居ない……この戦い、私の勝ちよ」
「あなたは……それほどの胸力を持ちながら、何故……」
「何故? それはあなたも知ってるでしょう?」
「……どうと……のに……」
「聞こえないわ」
「……正々堂々と! 戦ってくれれば良かったのにっ! 全てあなたが悪いんですよ!!」
「美鈴!?」

美鈴から零れ落ちる大粒の涙、それを拭おうともせずに胸元から取り出したのはいくつもの瓶。

「そ、それは?」
「これが、これが私の最終兵器です!!」
「この臭いは……唐辛子!?」

禁断の蓋が開かれる、中にある物は禁断の物質、食す物全てを地獄に落とす悪魔の食物。

「超高濃度唐辛子エキス、タイラント・ハバネーロ……これが胸に触れればどうなるか……!」
「な、なんて物を! あなた正気なの!?」
「あなたが! あなたが悪いんですよ! こんな物を私に使わせるからぁぁぁぁ!!」
「くっ……私だって負けてらんないのよ! あんたなんかにぃぃぃぃ!!」










「空気が……変わった?」

紅魔館から遠く遠く離れた彼岸塚で一人の女性が振り向く、
その肌に感じ取れたごく僅かな違和感に、彼女は日傘を閉じるとにやりと微笑んだ。

「ま、ライバルは一人でも多く潰れてくれた方がいいわよねぇ?」
「う……」

風見幽香、最初に予想された三人の有力者の中の一人である、
その足元で呻いているのは小野塚小町、爆乳を持つ今期より新たに参戦した新人だ。

「な、なんでこんな事をするんだい……」
「なんで? 馬鹿ねぇ、互いの胸を削りあい、生き残った物が豊胸王になる……それが普通なのよ?」
「皆、真面目にやってたじゃないか……再選挙になったぐらいで何で今更!」
「再選挙になったからなのよ」
「!?」
「こんな事は今までに無かったわ、皆が争い潰しあい、生き残った物が王になっていた今まではね、
 だけどその争いを封じた今回、決着は付かなかった……そう、豊胸王は争いの果てにのみ生まれるの」

好みは千差万別、百の好みの為に万の通りの胸がある、
例え各個人がどれだけすばらしい胸を作ろうとも、四分の一の票を得る事は至難なのだ。

「お前さん、あたしをどうする気だい」
「そう睨まないで、大したことはしないわよ、ちょっとこんなのを塗るだけ」
「それは……」

○ロンアルファ

「やめてくれええええええええええええええええ!!!」
「大丈夫よー、その二つの大きなのを一つの巨大なのにするだけだから」
「やめてやめてやめてやめてやめてぇぇぇぇぇぇ!!」
「それっ」
「あ」


ドッキングオーン


「まったく、小町はまたサボっているのですか……、小町ー! サボってないで仕事を……小町ー?」
「…………」
「こ、小町っ!? 何があったのですかこまっ……」
「…………」
「小町の胸が……エベレストに……」
「…………」
「あ、でもこれも結構いいかもしれませんね」
「四季様の馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
「わっ! 起きてたんですか小町! あああ、待ちなさい小町ーーー!!」

上司と部下の信頼を破壊せし物、アロン○ルファ。





「人里、永遠亭、人里、永遠亭、人里……永遠亭、じゃあ、次の目標は八意永琳ね」

幽香の手からはらりはらりと花びらが散る、占いが示した先は竹林の中の大屋敷。

「自惚れた新人を二度と参加する気を起こさせないぐらいにプチッと……ああ、ゾクゾクするわぁ」

サド、見紛う事なきサド、苛められたい男は数知れず。

「後悔なさい、戦場に足を踏み入れた事を、怯えなさい、これからの人生を、なぁんてね」

そうして彼女は門の前に立つ、沸き立つ妖力を抑えきれないのか足元に一つ、二つと花が咲く、
新参者ゆえに分かるはずのない奇襲の前にどんな表情を見せてくれるのか、その顔に悪魔の笑みが浮かぶ。

「駄目ね、落ち着かなきゃ……よし、ノックしてデストロォォォイ!!」

幽香様グーで門をぶっ飛ばしました、豪快すぎます。

「さあ! 逃げ惑え怯えなさい兎達よ!」
「総員目標をロック! 集中攻撃ウサー!!」
「立ち向かってきたーーー!?」

予想外です。

「セーイセイセイセイ!! その程度のちんけな攻撃でこの日傘を破れる物ですか!!」
「対戦車砲、弾込め! 放てーーー!!」
「オゥノゥ!!」

幽香様、性格が安定していません。

「兎風情がこの私を舐めるんじゃないわよ! 一本足打法!!」
「砲弾が打ち返されひぎゃぁー!!」
「ちぃぃ、やっぱり一筋縄では行かないウサか!!」
「私を誰だと思っているの! 私はオリエンタルフラワーマスター、風見幽香よ!」
「知らないウサ」
「ジェネレーションギャップ……!!」

ゆかりんとゆうかりんって紛らわしいよね。

「対象がストップしたウサ! 総員あれを放てーー!!」
「うっ! 何をする気!」
「除草剤散布ーー!!」

まるで傍目から見ればそれなんて漫才? といわれる戦いの最中、
ガスマスクを装着した兎達からぶっしゅーと放たれる怪しげな霧、というか薬。

「ふん、たかだか除草剤でこの私を倒すって? 笑わせてく……あ、あれ?」
「クックック、それがただの除草剤に見えるウサ?」
「お、おかしいわ、身体に力が入らない……一体何を撒いたの!?」
「枯葉剤、ダイオキシン入りウサよ」
「うう……あどけない顔してなんて酷い……」
「弱者は知恵で対抗するしか無いウサでねぇ」

膝、手、肘、肩と徐々に地に倒れゆく幽香をニヤニヤと見下すてゐ、
ついにその顔も地に付いた時、戦いの一部始終を見ていたのだろうか、
タイミングよく、幽香のターゲットであった八意永琳が姿を現した。

「永遠亭へようこそ、歓迎しますわ、風見幽香さん」
「……ふん、ここまでの防衛網を張ってるなんて、いつから私の奇襲を知ってたわけ?」
「私にとってあなた方の行動を計算するぐらい、大した苦労ではないわ」
「全てお見通しって事? 嫌な天才もいるものね……」
「まあ、ゆっくりとお休みください、明日の選挙が終わるまでは」
「うっ!」

永琳が幽香の首元に手をやり、チクリと一本の針を刺す、即効性の睡眠薬でも塗ってあったのだろうか、
幽香は一瞬表情をゆがめるとすぐにその意識を手放した。

「ふぅむ……このまま眠らせておくのも惜しいわね、実験体にしましょうか」
「師匠ー! 大丈夫ですかー!!」
「ああ丁度良かったわ、うどんげ扉を開けて頂戴、コレを研究室まで運ぶから」
「あ、はい、新しい実験体ですね」

手馴れた様子で幽香を背負う永琳、その前に立ち手際よく戸を開く鈴仙、
その後ろでは永琳特製の枯葉剤がガスマスクを装着していない兎達を悶えさせている。

「あれ? 師匠、あの枯葉剤は確か他の生物には効かないって……」
「死にはしないわ」
「師匠は鬼ですか」





延々と続く木の廊下、長い長いその道を、悪魔を背負いながら歩く薬剤師とその弟子二人。

「師匠、重くないですか? 変わりますよ?」
「いいのよ、運動になるから」

ぺたりぺたりぺたりぺたり

「何も師匠がわざわざ運ばなくても……」
「いいのよ」

ぺたりぺたりぺたりぺたり

「もうすぐ研究室に着きますよー」
「いい運動になるから」
「師匠?」

ぺたりぺたりぺたりぺた……

「研究室に付きましたよ」
「…………」
「し、師匠? 研究室を通り過ぎてどうするんですか?」
「……いい運動よね」
「師匠ー?」
「うふふふふふ、あなた知ってる? 世の中には他の動物に寄生する植物もいるのよ」
「ああっ! 貴様!!」

がくりと背負われていた幽香の首が後ろに倒れる、
顔に浮かぶ不気味な笑み、その腕からは永琳へと巻きつく蔓が何本も何本も伸びていた。

「例えば冬虫夏草とかね」
「冬虫夏草は菌類ですが」
「…………」
「…………」
「き、寄生植物とか!!」
「寄生植物は植物に寄生しますけど」
「…………」
「…………」

沈黙約一分。

「そんな事はどうでもいいのよ! 今重要なのは私があなたの師匠に寄生したって事なの!」
「ああしまった! 師匠を離せ!」
「……あなたいい娘ね」
「えっ、あっ……ありがとうございます」
「本当にいい娘なのね」

幽香様、久々に温かみに触れたようです。

「でもそれとこれとは関係無し! さああなたの師匠が私の送り込んだ毒で壊れていく様を見届けなさい!」
「なっ! 師匠に毒が効くわけが……」
「甘いわね、それは蓬莱の薬とやらの肉体保全機能と生来、もしくは後付の耐性によるもの、
 もし常に脳に麻薬物質を延々と分泌され続けられたら……もはや何の効果もなさない!!」
「し、師匠ーーー!!」

ざわざわと永琳の皮膚に埋め込まれるように蔓が体内へと侵入してゆく、
既に刺さっていた物とあわせて何十本もの蔓が永琳の頭を囲むように形を成した。

「くっ……一体師匠に何をする気だ!」
「ふふふ、別に殺すわけじゃないわ、というか死なないし、というわけで毎度恒例お楽しみ!」
「!?」
「ゆうかりんの過去の恥ずかしい話とか失敗談とか話させてみましょうのコーナー!」
「うわっ! 聞きたい!!」

いつの間にかうどんげが座布団自前かつ耳をピーンと伸ばして正座してます。

「聞く気満々な観客ね! それじゃ最初の話いってみましょう!」
「わくわくてかてか!」
「それそれ、ちゅーっとな」
「はうっ!! うっ、あっ…………あー……そうですよ、私が蓬莱の薬の罪を姫に押し付けたんですよ」
「…………」
「…………」

何かいきなり重い。

「ちょっとした茶目っ気じゃないっすか、不死機能だけを除いた薬を無差別に実験しただけの事ですって」
「うわぁ、なんか凄い事言ってるわ」
「でも周りが五月蝿いから罪は姫に押し付けてね、ちょっと家族脅せば誰だって言う事聞くんだし」
「師匠……マジッスカ」
「いーのよいーのよ、どーせあれも不老不死になって死なないんだし、馬鹿だから気づかないって」
「や、やめてください! これ以上は放送コードにかかっちゃう!!」
「今度は地上の人間相手に実「ていっ」ふぐっ!!」

さすがのゆうかりんもこれ以上はまずいと判断して脊髄チョップ。

「ちょっと待っててね、今のは後ろめたい事だったから……ここをこうして……」
「師匠……私師匠を尊敬してたのに……」

すでに師と弟子の信頼関係は揺らぎまくりです。

「じゃあ次は過去の失敗談いくわよ失敗談!」
「あ、でもそれ聞きたい!」
「えーと、失敗談は麻薬分泌をこう変えて……脳天にチョップ!」
「みゅっ! ふぐぅ…………ごめんなさい、使者の皆さん注入する燃料を間違えてごめんなさい」
『燃料?』

しなしなと塩をかけた青菜のようにへたれて失敗談を語り始める永琳、
そのかわりに幽香とうどんげはワクテカしっぱなしである。

「本当なら姫を連れ帰って皆で祝賀パーティーする予定だったのに途中で爆発しちゃってごめんなさい」
「うわ、意外な結末ね」
「師匠……」
「しかも姫がよくやったわ永琳! などと親指を立てて言うものだからどうにもできずにごめんなさい」
『それは辛い』
「さらに爆発が謎の光として後世まで伝えられたものだから今時のお子様とかもう本当にごめんなさい」
「後世まで恥を晒したのね」
「悲惨ですね」
「ついでに爆発した燃料が結構な毒性をもっていたので、煙を吸って気絶した方とかごめんなさい……」

新説・竹取虐殺物語

「よし、それじゃーラストは悲しかった事で締めね」
「ううう……嫌な予感がするけどこの場を離れられないこの私の好奇心が憎い!」
「ふふふふ、誰だって他人の秘密は聞きたくなるもの……というわけでこめかみチョップ!」
「はうっ!!」

どちらかというとチョップよりもグーパンチがこめかみにヒットするや否や
永琳はいきなりボロボロと大粒の涙をこぼしながらよよよ……と廊下に女の子座り。

「へにょり耳の何が悪いのよ……へにょってるからいいんじゃないのー!!」
「うわぁぁぁ! 何か嫌な予感がする!!」
「そもそもバニーガールを作れって言ったのはお偉い様方じゃないの! それが何よ!
 耳がへにょってるからいらない!? ただの耳なんて飾りよ! 偉い人にはそれがわからんのです!!」

今明かされた兎月人の衝撃の生誕劇。

「でもいくらいらないからって軍に回すことないじゃないのよ……確かに私の作だから優れてるけども」
「うわぁ、この女よっぽどのマッドサイエンティストね」
「ああでも良かったわ……戦場で怯える兎、目の前で仲間が倒れて泣き出す兎、
 へにょり耳とあいまって命の危機にガタガタと震えるバニーガール達は至高の愛玩動物――」

途端、パキューンと小気味良い音がし、永琳の脳天に直径5cmぐらいの穴が開いた。

「っ!! あなた自分の師匠を……!」
「幽香」
「な、何よ!」
「……埋めろ」
「イエッサー!!」

立てた親指で首を切る動作をした後にそれを下に向けるものだから、怖いねー、ぷるぷるしちゃうねー。




















そして夜が明けた。

とある人里は沢山の人と妖怪達で賑わい、それにつられて妖精達が輪を作る。

今日は幻想郷の豊胸王が決まる日、とてもめでたいお祭りの日。



「というわけで始まりました豊胸王再選挙の前哨戦、おっぱいアピールコンテスト!」
「えー、女体評論家の森近霖之助です、よろしくお願いします」
「司会進行を務めます、射命丸文です、よろしくお願いします、というか女体評論家ってなんですか」
「女体評論家は文字通り女体を評論する者の事です、顔、胸、腰、尻、腕、足、全ての箇所を……」
「えーそれでは九時五十分現在のエントリー状況を見てみたいと~」

おっぱいアピールコンテストとは、人里のとある会場を貸しきって選挙出馬者達が自らのおっぱいを
有権者の男達に様々な手法で見せ付けるコンテストの事である、コンテストにエントリーした乙女達は
壇上で様々な手法で胸のアピールをするのだが、乳首を出すのはNG、色々と五月蝿いからである、
ちなみに乳首以上の物を公開したとなってはそれはもうとんでもない事になる、とんでもなさ過ぎる。

「このコンテストは十時までにエントリーしないと参加できません、参加できなければ他者に致命的な
 差をつけられてしまいますので、実質これに参加する事が選挙に勝つための最低条件となります」
「ふむ、にしては風見幽香、上白沢慧音、西行寺幽々子の名前しかない、と」
「そうです、現王者である紅美鈴とその対抗馬である八雲紫がまだエントリーしていないんですよ」
「その点さえ除けば例年通りといえるのだが……」
「そうですね、結局その他は潰しあいとなったようです」

そして時計の針が刻一刻と十時に近づく、未だに受付所に姿を現さぬ王者とその好敵手、
カチリ、カチリと歯車の音が静かに響き、そしてついに……。

「たった今、エントリーを締め切りました……今回の参加者は、三名です」

スピーカーから無情な宣告が言い渡された、
失意の表情を浮かべる観客達の中で、式が一人地に膝をつく。

「だから申し上げたではないですか……何もリスクを犯す必要は無いと……!」
「藍様……紫様は来ないの?」
「橙、紫様は立派に戦って散っていかれたのだ……」
「紫様ぁ……」
「泣くな、泣くんじゃない橙、こうなれば私達は見届けなければならないのだ、新たな豊胸王を……」

八雲紫と紅美鈴は戦いの中に散った、それは必然だったのかもしれない、
迎え撃つ者、挑戦する者、その両者が消えた中で、新たな戦いがこれから始まる。

「それではっ! これより有権者へのアピールコンテストを始めます!」



 エントリー No.1

    風見 幽香



「エリー、例の物は準備できてる?」
「はい、幽香様」
「そう……ならば! 行くわよ!」

男達が熱視線を送る壇上に、二人の女性が今、姿を現した。

「さて、最初に強豪の一人といわれている風見幽香が出てきたわけですが、どうですか森近さん」
「ふーむ、衣服の上からでもはっきりと見える胸のライン、きっちりと仕上げてきていますね」
「さ、さすが女体評論家! すでにその目は二つの球体を捉えている!!」

「ふふふ……胸に飢えた男達よ、今こそ至高の胸を拝みなさい!」

そして壇上の悪魔が自らの衣服に手を掛け……その布を大空へと脱ぎ捨てた!

「これは……ビキニだぁぁぁ!! それもかなりきわどいチェック柄のビキニだぁぁ!!」

もうすぐ冬が到来する幻想郷で、水着一つでその胸をアピールする幽香、その根性、計り知れない。

「ふっ……この程度では終わらないわ! エリー!」
「はい幽香様!」

幽香は続けて付き人に声をかけると、うつぶせに寝っ転がってなんと水着のホックを外し始めた。

「さあやりなさい」
「はい……よいしょ、よいしょ」
「んんっ……あっ……」

「こ、これは……サンオイルだ! サンオイルを塗っているぞおおおおおお!!」

ぬりぬりぺたぺたと塗られていくサンオイル、きちんとカメラ映りも考えられているのがすばらしい。

「この寒空の中でステージの上だけはまさに南国!! ああしかし付き人の手が背に触れるたびに
 幽香の顔が悶え喘いでいるうう!! しかし一体何のためにこんな事を彼女らはしているのか!!」
「わからないのかい? 見たまえ、うつ伏せになった彼女の左右を……」
「あっ、あれは……はみチチだぁぁぁ!! まさかこんな胸のアピール方法があったとはぁぁぁぁ!!」
「うむぅ、なんと素晴らしい胸の弾力だ……はみ出た部分が円形を見事に保っている」

「ふふふ、これで終わりではなくてよ」

幽香が今度は水着のホックを締めなおすと、ゆっくりと女の子座りの体勢へと移行し、
付き人からサンオイルを受け取る、そしてその透明な液体をたらりたらーりと……でも乳首は見えない。

「ん……こうして回すように……捻るように……うふふふふ」

「サ、サンオイルのあまりを胸にかけたぁぁぁぁぁ!! しかも塗るだけではない!! 揉んでいる!!
 上に下に! 左に右に揉みしだいているぞおおおおおおおおおおお!!」
「これは基本的な胸のアピール方法の一つですね、形、柔らかさ、弾力、全てにおいて見事です」
「ちょっとちょっと! 森近さんも男ならもっとこう……激しい解説とかすべきではないのですか!」
「うーむ……本来ならサンオイルを使うというのは邪道なんです、やはり胸の美しさを競う物ですからね、
 だが彼女の場合は胸が見事にサンオイルと一体化し、さらなる美へと昇華させている……素晴らしい!」
「いやいやいやいや! あの巨乳を揉みまくってるんですよ!? もっと何か無いんですか!?」
「黙れこのエロレイヴン!!」
「エロレイヴンッ!?」



 エントリー No.2

   上白沢 慧音



「も、妹紅……本当にやるのか?」
「ほらほら、そんなに怯えないの、ほら上着をはだけて」
「うむ……」

妹紅に唆されて胸元を少しずつ開けていく慧音、やがて白い肌着の中に埋もれた谷間が姿を現すと、
会場のボルテージは一気にヒートアップ! でもやっぱり乳首は見えない、失格になるから。

「で、で、で、でかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!! もはやこの大きさは説明不要!!」
「いいや、でかいだけではない! あの白さ! そして遠目からでも分かるあの柔らかさ!
 何故彼女ほどの豊胸者がこれまで参戦してこなかったのか! これはまさしくニューエイジ!!」

司会者も評論家もあまりの衝撃の前に、椅子から立ち上がり机から飛び出しかねない勢いだ。

「それじゃ、やるよ慧音」
「あ、ああ……」

ヒートアップする会場を横目に、なにやらゴソゴソともんぺから物を取り出す妹紅、
そしてその右手が取り出した物は、木製で直径30cmはあろうかという謎の棒だった。

「あ、あれは……こけしだぁぁぁぁぁぁ!! そしてこけしを胸の谷間に……埋めたぁぁぁぁぁぁ!!」

「んっ……冷たいぞ妹紅」
「我慢我慢、じゃあ動かすよ」

慧音の胸の谷間の中で上へ下へとこけしが動く、それにつられて胸も上へ下へと形を変える。

「この表現は危険です! 色んな意味で危険すぎます! どう思われますか森近さん!!」
「ふーむ、まあ胸の包容力や可変力をアピールする方法としては基本的なものですね、
 アピールするには挟む物の大きさがやや小さいですが、これでも中々の物というのが伺えます」
「断言します!! あなた男として間違ってます!!」
「黙りたまえこの変態烏!!」
「変態って言われたぁぁぁぁぁ!!」

司会者が泣きながら絶叫する中、慧音の胸に挟まれたこけしが妹紅のもんぺの中へとしまわれる、
どうやらまだ他にも何かあるようで、慧音を何かを探すようにその胸の谷間へと手を突っ込んだ。

「んーと、えーと……あった、これを食べればいいんだな?」
「そうだよ慧音、頑張って!」
「よし、わかった……それ」

「ああーっと、いつの間にか慧音がその手に握っていたのは……バナナだぁぁぁぁぁ!!」

黄色くて細長いの。

「ん……あむっ」

「ああ! そして皮をむいて今……頬張ったーーー!!」
「バナナを縦に一本収納できるとは、中々の収納力ですね、ワンダフル」
「だから何でそっちの思考を維持できるのかが分からない!!」

しかし慧音のアピールはこれに留まらない、バナナの手に持つ部分を谷間に挟むと、
腕組をし、剥き出しになった果実の部分にゆっくりと……かぶりついた。

「こ、これはヤバぁぁぁぁぁぁぁぁい! いくらなんでもこれはやりすぎだぁぁぁ!!」
「ほほぅ、あの胸の柔らかさでもバナナが滑り落ちない、これは肌の吸着力がかなりのハイレベルだと
 示していますね、出来ればもっと重い物で試して欲しかったが……若さが出たという事でしょうか」
「森近さん!! あなた本当に男ですかぁぁぁぁぁ!?」
「痴女天狗に言われたくは無いですね」
「うわぁぁぁぁぁん! 女体評論家に痴女って言われたぁぁぁぁ!!」



 エントリー No.3

   西行寺 幽々子



「えー、それでは三人目にして最後のエントリー、西行寺幽々子さんです、どうぞー」

そして最後の一人が付き人を連れ、盛大な拍手に包まれながら壇上へと姿を現した。

「うーん……しかし彼女では力不足なんですよねぇ」
「え? 森近さん、力不足とは一体?」
「胸のサイズがやや小さいんですよ、Dですからね、豊胸王選挙のレベルではちょっと……」

その時、文はひっそりと自分の胸を揉んでみた、涙が止まらなかった。

「妖夢ー、パネルの準備はいい?」
「はいっ! いつでも大丈夫です!!」

壇上では幽々子がなにやら了解を取っている、すると妖夢がステージの端から
白い布に覆われた巨大な四角い物体を引っ張ってきた。

「えーと、どうやら巨大なパネルでアピールする模様ですが……」
「パネルですか……とすれば恐らくは腰の上部から両肩の辺りまでを含めた総合的な胸力で勝負する
 つもりですね、今は胸技術の発達により誰も使わなくなった手法ですが……」
「それですが……全身図みたいですよ?」
「全身図? それはまた珍しい……」

そしていよいよ妖夢の手が白い布にかかる、
同時に幽々子の口からカウントダウンが始まり、ついに布が取り払われる時が来た。

「今よ! 妖夢!!」
「はいっ!!」









  モ ロ の ビ ー ナ ス










「モロだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 上だけでもギリギリ失格なのにそれ以外の部分とかもう完全失格だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やはり胸が小振りですね、肌の美しさや周辺とのバランスは見事なんですが……」
「あんたもそう冷静に評価してる場合か!! 係員は早くパネルを撤収してくださーーーい!!」

その時会場中の男達が前かがみになったかどうかは知る由も無い。

「あらあら、ダメじゃないの妖夢、これは今度のせくしぃクイーン用って言ったでしょう?」
「ああっ、すみません幽々子様~」

壇上で妖夢の額を軽く小突く幽々子といっけなーい、という顔をした妖夢、
しかしその時、壇上に一人の女が新たに姿を現した。

「果たして……本当に間違えたのですかな? 幽々子殿」
「あらぁ? 藍ちゃんじゃない、本当に間違えたのよ、妖夢ったらどじっ子なんだからぁ」
「戯言を、あなたは今度のせくしぃクイーンコンテストへの前宣伝としてこの場を選んだのでは?」
「そんな事無いわよ~、どうせ今度も藍ちゃんが優勝するんでしょう?」
「相変わらず、すっ呆けるのが紫様並にお好きな方だ」
「それでこそ彼女の親友は務まるのよ?」

やがて、二人の目付きが徐々に厳しい物へと変わっていく、
段々と尻尾が膨れ上がる藍と、扇で口元を隠す幽々子。

「なっ……壇上の二人の妖気が膨れ上がっていく!?」

文もとうとう異常事態に気づいたが、時はすでに遅すぎた。

「今ここで勝負しますか? 私はいつでも構いませんよ?」
「あらあら物騒ね……あなたがずっと目の上のたんこぶだったわ、いつもいつもいつもいつも……」
「敗者の戯言など、聞いている暇は無かったものですから、ね」
「もはやあなたがせくしぃクイーンでいる時代は終わったのよ! 拝みなさい! 真の美肌という物を!!」

そして二人の手がその衣服へとかかる!!

「係員んんんんんん!! 壇上の二人を止めろおおおおお!! 服を脱がせるなぁぁぁぁぁぁぁ!!

『いいや! 限界だ! 脱ぐねっ!!』




















  ~ 幻想郷豊胸王再選挙 ついに決着 ~

 先日正午より行われた幻想郷十一代目豊胸王再選挙は一位が全体の得票率の九割近くを占め、
 圧倒的な得票数でその波乱劇の幕を閉じた、再選挙の前に行われたアピールコンテストにて、
 参加者である西行寺幽々子と突如乱入した八雲藍による全裸バトルが繰り広げられ、一時は
 選挙の中止も考慮される事態となったが、彼女ら二人に感化されて壇上に現れた一人の猛者が
 その自らの立派な豊胸を披露、幻想郷の九割を占める女性達の得票を得て見事豊胸王に輝いた。


 第十一代目豊胸王、森近霖之助さんのコメント

 「いや、まさか僕が選ばれるとは思いもしなかった、壇上の二人に影響されて
  つい脱いでしまったのですが、まさかこの僕の大胸筋が選ばれるなんて……感無量です」





                  < 終劇 >


この作品を、騙された六十人の漢達に捧ぐ。

えー、まず最初にですが……ごめんなさい。
ノリと勢いの原点回帰を目指して書いていたのですが
何故か途中からエロティシズム全開となってしまいました。


しかし野郎二人のラブ小説の前には負けた……!!
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.6580簡易評価
1.80騙された漢削除
ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!
4.100名前が無い程度の能力削除
胸関係の話はたくさんありますが完成形をここにみたかもしれない。
6.100名前が無い程度の能力削除
相変わらず胸とは素晴らしいものだな!!
7.80名前が無い程度の能力削除
俺、今日から大胸筋鍛えるよ!
10.80変身D削除
美鈴とゆかりんは相討ちになられたのですね……(ホロリ
あと、永遠亭の裏側が凄惨すぎてもう(w
……と、あえて漢度と関係無い感想を書いてみる(何
13.90名前が無い程度の能力削除
おーい、胸「娘」はどこいったっ!?
18.70名前が無い程度の能力削除
グレイズしすぎなネタ満載だぁ!!
確かに鍛え上げられた大胸筋もある種豊胸と言えますが…
20.100CACAO100%削除
この発想は無かった!お見事!勘当した!(ぉ?
うどんげ誕生秘話ふいたwwwwww
21.100名前が無い程度の能力削除
あうとおおおおおおおおおおおおお
22.90名前が無い程度の能力削除
こまっちゃんの胸を嫌がらない四季様は珍しい気が。
とりあえず藍様のフェロモンを直に感じたいものです。
23.100名前が無い程度の能力削除
吹きっぱなしwww それにしても黒いよ永遠亭。黒すぎるw
24.80蝦蟇口咬平削除
こ、これが本当の泣き笑いかよぉぉぉっ!
30.80名前が無い程度の能力削除
最後は脱ぐんかい!?
そしてオチヒドスw
32.90名前が無い程度の能力削除
すんばらしいwww
33.100名前が無い程度の能力削除
チョン避けツボったwww
34.90しるし削除
うわあ……マッシブだあ……
つか大胸筋でSS書くとかありえねー
39.90名前が無い程度の能力削除
>コンテストは十時までにエントリーしないと参加できません
という設定どころでなく最初から最後まで何もかんもちゃぶ台返しなオチに惜しみない喝采をw
46.100名前が無い程度の能力削除
だ、大胸筋ときたかぁ……
それはそうとして埋められた師匠とかどうなったんでしょうね
47.100ぐい井戸・御簾田削除
こまっちゃん→つミ[はがし液]
52.100名前が無い程度の能力削除
混沌過ぎ、カオスだカオス。
56.100名前が無い程度の能力削除
接着されたエベレストもアリなんではないかと思う俺は悪食
60.80名前が無い程度の能力削除
>大胸筋でSS書くとかありえねー
待てwwwwwwww
61.90名前が無い程度の能力削除
>>つか大胸筋でSS書くとかありえねー
あんたwwwwwwwwwwwww
63.90oblivion削除
最初から最後まで笑いが止まらないテンポのよさに負けました
とてもいいものをみせていただきましt
65.100名前が無い程度の能力削除
ここであえて痴女認定された文に萌える俺。
68.無評価名前が無い程度の能力削除
これがプロの書くへちSSかッ……!!
69.80名前が無い程度の能力削除
一番の狂気は!終始冷静だった森近!あんただ!
71.100名前が無い程度の能力削除
>つか大胸筋でSS書くとかありえねー
ちょwwwwwおまwwwwww
76.無評価名前が無い程度の能力削除
>つか大胸筋でSS書くとかありえねー
えぇぇぇぇぇぇぇぇっwwwww
77.100名前が無い程度の能力削除
↓点数いれわすれごめそ・゚・(ノД`)・゚・
84.90  削除
おおおおおっぱあああああああああああいいいいい!
87.90無銘削除
エロレイブンで吹いた
あとおっぱいおっぱい!
91.90ハッピー削除
こぉーーーーーりーーーーーーん!!!!!!!
お前は真の漢だぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!…いや、大胸筋か。
93.100名前が無い程度の能力削除
カオスがあるよ、ここにあるよ…
99.100名前が無い程度の能力削除
こーりんよかった
103.80名も無き猫削除
紫と美鈴は相打ちか。
というか慧音の時点でぶっちぎりアウトですゴッド!
105.90名前が無い程度の能力削除
こーりんてめぇwwwwwww
115.90名前が無い程度の能力削除
とんでもねえクオリティの作品を見た気がする

ただ、あの作品をしあげるほどの しるし氏のコメに全て持っていかれた気がしなくもない
116.90名前が無い程度の能力削除
なんという胸…!胸!胸!こーりん!こーりん!
117.90bobu削除
こーりん!こーりん!
こーりん!こーりん!

あと変態痴女烏の文に萌え
119.100あをぢる削除
こーりんやべぇwww
オチが素晴らしすぎてもう作者GJとしか言えねぇw
142.100名前が無い程度の能力削除
藍様エロい
143.80名前が無い程度の能力削除
く、最後にそれかよ!ちくしょう!ちくしょう!
147.100名前が無い程度の能力削除
なんというこーりんwww
149.100名前が無い程度の能力削除
この作品は...時を経て尚愛されている......ッ!
156.100名前が無い程度の能力削除
大きいおっぱいは人類の宝!