Coolier - 新生・東方創想話

山田の大晦日

2006/12/02 04:47:21
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今日は12月30日。霊夢は明日神社で行われる年越し大宴会に備えて嫌々準備をしていた。
また境内を荒らされるのは嫌だが、久しぶりに豪華な食事が摂れるし、
新年ともなればお賽銭もはいるだろう。そう思っていた。
「今年も色々あったわねー」
去年の夏の日に突然現れた紅い霧と、紅魔館で対峙した咲夜とレミリア。
そのことも大事件であったが、今年はさらに大事件が多かった。
春になっても雪に閉ざされた幻想郷と、冥界で戦った幽々子と妖夢。
幽々子達のせいで春が短く宴会が無いのがいやで無理やりみんなを萃めた萃香。
いつまでも終わらない夜と本当の月の下で戦った永琳と輝夜。
花が異常に開花する原因を探り、誰かに説教されたこともあった。
「・・・誰かに善行を積めとか言われた気がするけど・・・
 誰だったっけ。思い出せないわ」









「ふう、今年の仕事も大体終わりですね」
映姫は最後の幽霊を裁き、一区切りつけた。閻魔といえど休みぐらいほしいのである。
「小町もいつまでもさぼってないで早く終わらせたらどうですか?」
「ち、違いますよ四季様!私も終わったんですよ!」
「・・・そうですか。ところで小町」
「なんですか四季様?」
「どうして私って影が薄いんでしょう・・・」
「・・・・・」
「こっちは善意でやってるのに説教魔扱いされるし!名前ちゃんと覚えてもらえないし!
鴉天狗は取材にきてくれたけどあんまり訪ねてくれる人いないし!」
(来た人片っ端から追い返してるとか言えない・・・)
「チクショー!スペカが特に無いのがいけないのか!対戦ゲ○ムなのがいけないのか!」
「四季様、変なこと言ってないで落ち着いてください。終わりよければ全て良し、という言葉があります。
今年の終わりにババンとアピールして来年から人気爆発を目指しましょう!」
「ふむ、名案ですね。何がいいでしょう」
「四季様らしいことがいいんじゃないでしょうか。」
「そうですね、ならば人々を正しい方向に導いてあげましょう」
(いつもと変わらない・・・)
「そうですね、除夜の鐘にあわせて108人の煩悩を取り払って差し上げましょう。
では、行ってきます」
「もう行くんですか!明日の11時ごろには神社の宴会に招待されてるのでちゃんと戻ってきてくださいね」
しかし無限の超高速物体顔負けの速さで飛んでいった映姫にはその声は届いていなかった。
・・・残り108人









12月31日
「まずは・・・そうですねあの迷惑な魔法使いがいいでしょう」
そのころ魔理沙は宴会に備えて家で準備していた。
「ん~なにを持って行ったものか。去年は被ると叫びはじめる帽子を持っていきアリスにかぶせて遊んだものだが。
今年は食べると8頭身になって無敵になりそうなキノコでも持ってくか。
よし、ちょっと早いが神社に行って準備でも手伝ってやるか。」
魔理沙が家をでて神社に向かおうとすると、
「魔理沙さん、ちょっといいですか?」
ジャーン!ジャーン!ジャーン!
「げぇっ、映姫!」
「あなたは少し、周りに迷惑をかけすぎる。反省をしてから年を越すべきだと思いませんか?」
「くっ、今は急いでるんでな。どいてもらう!
パチュリー(から勝手に)直伝!ノンディレクショナル・・・」
「私にレーザーで勝負しようだなんて百年早い!必殺!ラスト・ジャッジメント!」
「あべし!」
吹っ飛ぶ魔理沙。覚えたぜ・・・とか聞こえたのはきっと気のせい。
「うーん、説教の途中でしたが、きっと悔い改めてくれたでしょう、うん。」
・・・107人









「ん?こんなところにも家が・・・」
アリス邸を発見した映姫。
「ふっふっふ。これさえ魔理沙のお酒に混ぜてしまえば・・・
こっそり神社を抜け出し意識のはっきりしない魔理沙に既成事実を作り!
あのにっくき紫もやしから魔理沙を奪い取ってみせるわ!」
アリスにとって不幸なことに、ちょうど煩悩に身を任せてこれまた宴会のために準備中であった。

ガタッ
「誰なの!」
 「ひとつ、人の世の生き血を啜り」
「あなたは・・・」
 「ふたつ、不埒な悪行三昧」
「見られたからには・・・」
 「みっつ、醜い浮き世の鬼を退治てくれよう、ヤマザナドゥ!」
「死んでもらう!」
そう叫ぶと、アリスはものどもであえいと剣を持たせた人形をたくさん映姫にけしかけた。
しかし、正義の味方相手にそんな悪代官みたいなことをしたところでかてるはずはなく、
お約束どおり一人ずつ斬りかかる人形たちは映姫に1体ずつ丁寧に杓で叩き落されていく。
「これで人形は全部ですかね」
「くっ」
「あなたは少し・・・」
「おぼえてやがれ!」
アリスはどこまでも小悪党な捨て台詞を吐くと作っていた薬をもたずに逃げだした。
「あ・・・説教まだ言ってないのに・・・
まあ、邪なことを未然に防いだのでいいとしましょう」
・・・残り106人









「まずい・・・こんな一人ひとり家を訪ねていっては今日中にはとてもじゃないが終わらない・・・
そうだ!人の多いところへ行こう!」
やってきました紅魔館。ここならたくさんのメイドを教え導けるはずだ。
大晦日の紅魔館は、夜までに大掃除を終わらせるためたくさんのメイド達が忙しく働いていた。
「よし、そこのあなた・・・」
 「ちょっとそこの緑の。なにやってるの?」
やってきたのは紅魔館の法を司る恐怖のメイド長十六夜咲夜である。
「見てのとおり、彼女達にも今年の罪を償ってから気持ちよく来年を迎えてもらおうと思って」
 「償うのもいいけど、今私達は忙しいの。邪魔するようなら力ずくで出て行ってもらうわよ?」
「しかし、私も譲るわけにはいかないんです!閻魔秘技!小町召喚!」
川辺で昼寝していたところをむりやり呼ばれた小町が光と共に現れる。
  「え?えっ?」
 「そう、そっちがそのつもりなら!」
「小町~ここは任せましたよ~」
  「え、どういうことですか四季さm」
小町がしゃべり終わるまえに小町の体がナイフの海に消えた。
「小町・・・あなたの仇はかならず・・・」
映姫は自分の罪は棚に上げて全力で迷惑がるメイド、図書館の小悪魔、紫もやし、はてはそのへんの毛玉にまで説教していた。 
「ふう、こんなもんでしょう。吸血鬼姉妹にも会いたかったですが今は寝ているようだし、
下手に手を出すとメイド長が本気になりますからね」
最後まで咲夜がこなかったところを見ると、小町はかなりがんばったらしい。
「さて、時間がありません。次は、と」
小町の回収を忘れて次に向かう映姫。
・・・残り46人











「日が暮れそうです。急がなくては・・・」
里にやってきた映姫。入り口で半獣に人々が驚くから飛ばないでくれと言われたので歩いて入ることにした。
人間達の里でも、多くの人が年越しの準備をしていた。
「ちょっといいですか?」
  「ん?みかけん子供じゃのう」
  「お使いかのう」
  「迷子じゃないか?」
「あ、いや私は・・・」
そう、映姫は背がとても低いのだ。少女サイズの妹紅よりさらに小さく、見かけはまさに女童といったところか。
そんな小さい見かけない子供が一人でいるのだから、心配されてもおかしくない。
  「親はどうしたんじゃ?」
  「捨て子かのう」
  「また{神隠し}にあった子じゃないか?」
「いや、だから私はそうじゃなくて」
  「いや、無理に言わんでええ。ここには捨て子から記憶を失った子までいる。
   おまえもここにいていいんだ」
  「明日 慧音様に知らせにいくか」
「あ、あの・・・」
  「よし、わしと一緒にきなさい。村の子供達も村長の家に集まっておる」

・・・連れて行かれた映姫が誤解を解き、みなに説法ができたのは完全に夜になってからだった。
・・・残り6人









12月31日午後11時
「後1時間・・・ラストスパートですね」
気合を入れて飛び回る映姫。しかし人間どころか妖怪や妖精の姿すら見当たらない。
「どうしてっ!?」
ここならいるだろうと永遠亭や冥界の白玉楼にもいったがいつもの騒がしさもどこへやら、
ひとっこ一人いなかった。
それもそのはず、もうすでに神社で宴会は開始している。
つまりみんな神社に集まってしまっているのだ。
「誰かいませんかー 
今ならカリスマが4割引! カリスマの足りないあなたもこの機会に!」
カリスマの足りない人でも呼んでみようとしたが、誰もこない。




「四季様こないなー」
小町はまだ映姫がいないことを気にはしていたが、彼女にも考えがあるのだろうと思い酒盛りに戻った。











1月1日
「ねえ霊夢、こんなふうに全員揃って宴会なんてひさしぶりじゃない?」
すっかり酔っ払って服を脱ぎだす狐をほったらかして紫がやってきた。
「そうね、あそこの酔っ払いの騒動以来ね」
妖夢と鈴仙にむりやり酒を飲ませる小鬼を見て言う。
「霊夢、今年もよろしくね」
「あんまりよろしくしたくないけどね」
全員揃った賑やかな宴会を楽しみながら、月を見てそうつぶやいた。








その後宴会に出られず[影が薄い]から[忘れられている]にランクアップしてしまった映姫に小町が
延々と愚痴られたのは別の話・・・・・・
  




「あ、思い出したあの閻魔。確か山田とか言ってたわね」



初めまして。カンナというものです。
読んでいただきありがとうございます。
山田の出番少ないよなーと思いつつこんなものを書いてみました。
山田の報われない苦労人っぷりが大好きです。
カンナ
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コメント



0.990簡易評価
7.60名前が無い程度の能力削除
山田への愛をたっぷり感じました。あとはお約束どうりはどおり、小町→映姫の呼び方は四季様、というのを踏まえていただけたらと思います。
10.無評価カンナ削除
ご指摘ありがとうございます。訂正させていただきました。
23.80名前が無い程度の能力削除
次回も期待