御阿礼の子の秘密作者: ＥＸＡＭ

　御阿礼の子が代々稗田家の正統な当主を勤める。
　御阿礼とは、神が姿を現す事を言う。
　御阿礼の子とはすなわち――神力を授かった子――である。
　その神力とは、絶対記憶。
　その神力の使命は、幻想郷の妖怪達を記し続ける事。
　ただの一つの間違いも無く、唯々真実のみを書に記す。
　それは、歴史編纂の勅命を受けた阿礼から始まる。
　阿礼の後、千二百年経った現在。
　九代目の阿求は稗田の当主を勤め、その使命――妖怪の歴史の編纂――を全うしている。

　§　§　§

　机に向かっていた少女はうーん、と背伸びをすると開いていた書を閉じてしまう。
「さて、今日はこの辺りで……」
　少女は机の抽斗から古ぼけた手帳を取り出し、開く。
「今度はこっちね……」
　少女――稗田阿求は鼻歌交じりに筆を滑らせる。
「♪～♪～」

『黄金十二宮編』

●白羊宮
　アリエスのアリス。
　驚異的な握力（テレキネシス）の使い手。
　聖闘士の中で唯一人形の修復が可能。
　前教皇であるパチュリーの弟子である。
　師に似たのか良く引き篭もっている。

●金牛宮
　タウラスの慧音
　聖闘士の中で並ぶ者のない剛の者。
　長くて太くて硬い角（グレートホーン）は正に必殺。
　彼女の角を圧し折った聖闘士は彼女に愛されるか殺されるしかない。

●双児宮
　ジェミニの紫
　次期教皇に選ばれるほどの聖闘士であるが、その胡散臭さから落選する。
　後に前教皇のパチュリーを暗殺して偽の教皇に成りすます。
　必殺技は隙間エクスプロージョン、ゆかりんディメンションだけでなく、
　教皇だけの技　幻朧八雲拳をも操る。
　この技はフェニックスの妹紅の繰り出す藤原幻魔拳と相打ちになる。
　なお、マエリベリーというそっくりさんが居るが、双子ではない。

●巨蟹宮
　キャンサーの幽々子
　蟹座の皆喜べ！
　諸君らは遂に日の目を見ることになった！
　冥界への穴を開け、相手を冥界へ送る西行寺冥界波。
　もちろん自分自身も冥界へは自由に行き来可能である。
　最近はこの恐ろしい技を喰らってでも冥界へ行きたがる男どもが多いのだとか。
　ドラゴンの美鈴との脱衣聖衣で戦う。
　艶めかしいうなじで圧倒するも、巨大な胸に敗北してしまう。

●獅子宮
　レオの魔理沙
　他の聖闘士と見比べると地味な存在である。
　使える技も、直線的なレーザーが多い。
　サジタリアスの永琳とは兄弟でもなんでもない。
　しかしその実力は確かなもので、バルゴの映姫と千日戦争になりかけた。
　過去編であるエピソード爺では主役を張っている。

●処女宮
　バルゴの映姫
　最も神に近いと称される聖闘士。
　むしろ女神である魅魔よりも神様らしい。
　彼女の繰り出す技は有罪者には強烈無比。
　黄金闘士３人と互角以上に戦った。
　ちなみに、どんな存在にも罪があるとか。卑怯。

●天秤宮
　ライブラの輝夜
　前教皇パチュリーと共に前聖戦の生き残りである。
　聖戦の終了した243年前から永遠亭で冥闘士を見張っている。
　決して引き篭もりという訳ではない。
　全聖闘士中で最強と評されている。
　女神・魅魔が唯一武器の使用を許可した存在でもある。
　その武器を使うには魅魔か輝夜の許可（難問解答）が必要である。
　ドラゴンの美鈴の師匠。
　彼女の放つ蓬莱山百龍波は、龍の顎の玉１００個分の威力を持つ。
　美鈴の崋山昇龍波は龍の顎の玉１個分の力だとか。

●天蠍宮
　スコーピオンの霊夢
　まったくもって激情家でもないし、情が厚いわけでもない。
　お茶さえあれば平穏な巫女さん。
　ただし、一度怒るとレオの魔理沙もビビる程。
　パスウェイジョンニードルを急所に撃ち込んでくる。
　それも正確無比に１４発以上。
　それでも立ってた場合、トドメとばかりに放つのは陰陽玉将（アンタレス）
　巨神兵でも磨り潰すとは本人談。
　むしろこの一発で十分なんじゃないの？

●人馬宮
　サジタリアスの永琳
　前教皇パチュリー暗殺の際、まだ悪霊だった魅魔を抱いて脱出し、力尽きて死んでしまう。
　現在は永遠亭で輝夜の面倒をみながらのんびり暮らしている。
　本来ならば、パチュリーの後を継いで教皇になるはずだった最高の聖闘士である。
　彼女が弓と矢――女神に禁止された武器――を持つ理由を永遠亭の輝夜に聞いてみた。

　「相手の頭を掴んで、大きく振りかぶり、全身を一張の弓と化して放つ渾身の一撃。
　彼女の放つ一撃は、矢ではなく、正に破城槌。
　嘆きの壁をも破壊するわ。
　相手の頭が掴めない？
　どんな手を使ってでも拳をぶち当てて、勝利する。
　その為の手段は全て知略で片付ける。
　故に彼女は『突きの頭脳』と呼ばれるわ」

　あれ、弓使ってなくない……？

●磨羯宮
　カプリコーンの妖夢
　まだ悪霊だった魅魔を抱いて逃げる永琳を瀕死に追い込んだ聖闘士。
　彼女の持つ楼観剣と白楼剣は切れ味がすさまじく、聖剣とも呼ばれる。
　ドラゴン美鈴の捨て身の攻撃によって落命してしまうが、彼女の右腕に聖剣を託す。
　妖夢自身は四肢全てで聖剣を操れる。
　が、足じゃ刀は持てない。
　種明かしとしては半身を人化させているのだとか。
　何故かキャンサーの幽々子には頭が上がらない。

●宝瓶宮
　アクエリアスのレティ
　「氷と水の魔術師」と呼ばれる氷の闘技の使い手。
　でも実際は氷と寒波しか操ってない。
　キグナスのチルノの師匠でもある。
　常にクールであるが、弟子が可愛すぎて仕方が無い。
　チルノと戦った時も、手加減してる。絶対。

●双魚宮
　ピスケスの幽香
　自称最強の聖闘士。
　彼女はどんな花でも操れる。
　でも性格がひねくれている為に、教皇の間への通路に敷き詰めて下りて来れないように悪戯ばかりしている。
　アンドロメダの萃香と相打ちになって倒れる。
　「天と地のはざ間に輝きを誇る美の戦士」を自称はしていないようだ。

●前教皇
　アリエスのパチュリー
　前教皇である。
　次期教皇に選ばれなかったジェニミの紫に殺された。
　ライブラの輝夜と共に前聖戦の生き残りである。
　前アリエスであり、現アリエスのアリスの師匠でもある。
　アリス以上の関節技（テレキネシス）の使い手であり、その技はパチュリーサービスと恐れられていた。
　実力はライブラの輝夜と対等。
　ジェミニの紫に殺された時は、引き篭もりからのブランクがあったからだとか。

●双子
　マエリベリー
　もう一人の双子座の聖闘士。
　それでいて、海闘士の海龍でもある。
　紫とは血縁関係でも兄弟でも双子でも親戚でもない。
　顔見知りでもない。
　でも似てる。　　　かもしれない。
　必殺技も似通っている。
　マエリベリーエクスプロージョン、ハーンディメンションだけでなく、幻朧メリー拳をも操る。
　海王レミリアが敗れた後は女神・魅魔に忠誠を誓う。

●女神
　アテナの魅魔
　まだ悪霊だった際にジェミニの紫に命を狙われたが、サジタリアスの永琳に助けられる。
　女神となった今もイロイロと狙われているようだ。
　
●天馬座
　ペガサスのリグル
　流星拳の使い手。
　実は足でも流星拳を放てる。
　生き別れの姉なんて居る筈も無く。

●白鳥座
　キグナスのチルノ
　氷と凍結拳の使い手。
　アクエリアスのレティの弟子。
　師匠にべったりである。
　技は強いのだが、頭の方が弱いのでどうにもこうにも。

●龍座
　ドラゴンの美鈴
　最強の篭手と最強の盾を持つ。
　崋山昇龍波は龍の顎の玉１個分だとか。
　ライブラの輝夜に弟子入りし、カプリコーンの妖夢に聖剣を授けられる。
　そんな恵まれた環境なのに、戦闘方法は脱衣。
　そんなに自慢したいのか！

●アンドロメダ座
　アンドロメダの萃香
　両手に持った鎖（＋飾り）を操る。
　フェニックスの妹紅とは兄弟でもなんでもない。
　でも、呼べば助けに来てくれる。
　実は５人の中で最強かもしれない。

●鳳凰座
　フェニックスの妹紅
　鳳翼天翔、藤原幻魔拳の使い手。
　その聖衣は唯一自己修復機能を持っている。
　たとえ粉々に砕けてもリザレクションで大丈夫。
　でも疲れる。
　何故かライブラの輝夜を目の敵にしている。

●海王の依代
　ポセイドンのレミリア

●冥王
　ハーデスの神綺

●従者
　パンドラの夢子

●死の神
　タナトスの幻月
　夢月とは仲の良い双子。

●眠りの神
　ヒュプノスの夢月
　幻月とは仲の良い双子。

　題して「東方聖闘士」
　遠い昔に見た記憶も案外使えるものである。
　何か言われてもインスパイアされたって言えば問題無しよね！
　今はまだ企画段階だけど、
　編纂し終えて私が生み出した物語として出版すれば稗田家の家計も大助かり……！
「んふふ～♪」
　下から五つ程の内容は思いつかなかったけど、まぁ明日にしましょうか。
　パタリと古ぼけた手帳を閉じる。
　すると、襖が少しだけ開く。
　侍女だ。
「何かしら？」
「阿求様、妖怪のお客様が……また、お見えに……」
　……また？
　という事は紫様ね……
　この間幻想郷縁起はお見せしたけど……？
「ん、今行きます」
　なんの用かしら？
　席を立ち、すぐさま玄関へと向かう。
「ごきげんよう」
　やはり紫様だった。
「今日はなんの御用で？」
「あら、解っているのでしょう？」
「幻想郷縁起ならこの間お見せしましたが……」
「あら、あら、あらあら……もうすぐ完成するのでしょう？」
「……はぁ、以前と比べれば完成も近づきましたが」
　紫様は扇子で口元を隠し、目を細める。
「なら、見てもいいわよね？」
　やはりこのヒトの考えは良くわからない。
　別に何度見せても減るわけじゃないし。
「はい、それではこちらへ」
　と立ち上がり、案内しようとすると、紫様は妙な事を言い出す。
「案内はいりませんわ」
「へ？」
「だってほら、件の物はこちらに」
　と空間の裂け目から取り出したのは――
　とても見覚えのある古ぼけた手帳。
「わ、わ……、わ、私の手帳！！」
　しかも全然完成してないのにッ
「クスクス、それでは内容を改めさせて頂くわ」
「だだだ、ダメですよぉおおおッ」

　おしまい