Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷大食い女王決定戦!

2006/10/24 10:13:23
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切欠は誰かの何気ない一言だった。

 ――幻想郷で一番の大食いは誰なのだろう?

 退屈には事欠かないかの世界の住人のこと。疑問は瞬くうちに伝染した。
 解決を欲する声があちこちで囁かれた。
 そんな事態をあの少女が見逃すはずがない。「これは記事になる!」と射命丸文は自慢の足で幻想郷を闊駈する。
 そして数日後。ある晴れた日の午後。
 雌雄を決する舞台がとある広場で整われつつあった。
 役者は5人の少女たち。そして彼女らを取り囲むように多数の野次馬が今か今かと開幕を待ち続けている。

 まあとにかく。今回はそんな感じの物語であるわけであります。

 

文「さあ、何の前触れも無く、唐突に始まりました『第一回・幻想郷大食い女王決定戦』! この大会は読んで字の如く幻想郷で一番の食いしん坊は誰なのかを決定するものだったりするわけです! 実況は私、射命丸文! そして」
霖之介「解説はお馴染み香霖堂店主・森近霖之介でお送りします。今日は宜しくお願いします」
文「はい、宜しくお願いします! 見事優勝なさった方には賞金500万円を贈呈! 微妙な数字が逆にリアルです!」
霖之介「ちなみにこの大会の裏ではトトカルチョが開催されていまして賞金はそこから捻出されております。ぶっちゃけ本日の観衆が選手を応援する理由の殆どはそれです」
文「なるほど、会場がのっけから異様な熱気に包まれているのはそのせいですか。それではさっそく参加者の紹介です!
まずは第一席! 食いしん坊といえばこの人、幻想郷の甘味の全てを食い尽くす! 冥府の女王、西行寺幽々子選手!」
 
 うおおおおおっ!(歓声)

幽々子「今日はいくら食べても妖夢に怒られないのね~♪」

文「続いて第二席! 女王の名は私にこそ相応しい、食事の回数ならば誰にも負けるはずがない! 永遠亭当主、蓬莱山輝夜選手!」
 
 うおおおおおっ!(歓声)

輝夜「悠久の怠惰の中で、食だけが私を飽きさせることはなかった。勿論今日は優勝を狙わせてもらうわ」

文「どんどんいきましょう、第三席! 敗北の二文字は私の辞書には無い、だって主人公なんだもの! 博麗神社の巫女、博麗霊夢選手!」
 
 おおおおおっ(ちょっと微妙な歓声)

霊夢「500万あれば賽銭にはしばらく困らないわね」

文「そして第四席! めずらしく今回はやる気になっています、それは仕事じゃないからですか? 三途の川の水先案内人、小野塚小町選手!」
 
 ほおおおおおっ(意外と関心混じりの歓声)

小町「まあこういうのは嫌いじゃないからね」

文「以上のメンバーでお送りします。いずれ劣らぬツワモノ揃い、果たして栄冠は誰の手に――」
?「あのー」
文「はい? なんでしょう。質問なら後ほど伺いますが」
?「いえ、そうではなくて。誰か一人忘れていません?」
文「へ? あ、ああ・・・・・・失礼しました。第五席は紅魔館代表の中国さんです」
美鈴「説明短かっ! しかもまた中国呼ばわりだし!」
 しーん。
美鈴「観客席までノーリアクションだし! あーもーいいですよ! どうせムリヤリ出場させられたようなものだし誰も期待してくれなくても!」
文「えー、はい。それではルールを説明いたします! 選手の皆さんには4つの料理を順次食していただきます。それぞれ完食出来次第、次の料理に移って頂くという進行ですね。そしてどんな手段を使ってでも一番最初に全部食べきった人が優勝! よろしいですか?」
幽々子「はーい」
輝夜「わかったわ」
霊夢「了解」
小町「へいへい」
美鈴「むー・・・・・・と、とにかく頑張ります」
文「それでは準備が出来るまでしばしお待ちください。なお調理担当は幻想郷一エプロンの似合う女性、八雲藍さんです。厨房とマイクは繋がっていますか? 藍さーん! 今日は宜しくお願いします!」
藍『はいはい。まったく何で私がこんなこと・・・・・・あ、こら、つまみ食いしちゃダメだってば!』
文「ではこの間に展開の予想などしてみたいと思います。こーりんさん、ズバリ誰が優勝するでしょう?」
霖之介「そうですね、やはり本命は幽々子選手だと思います。彼女の大喰らいは有名ですから。オッズも当然一番人気です。ですが輝夜選手もなかなか侮れません。なにせ胃袋が破れるまで食べても問題は無いわけですからね」
文「なるほど、不死の肉体がこんな形で役に立つかも、と」
霖之介「そして霊夢選手。彼女は金のかかった勝負事には無類の強さを発揮します。小町選手もあの体格ならばかなりの活躍が期待できるかと」
文「つまり予想は難しい、ということでしょうか。ちなみに中国選手はどうでしょう?」
霖之介「彼女はまあ人数合わせのようなものですから。どうせ満干全席のイメージや『あれだけ胸がでかいなら普段からいっぱい食ってるんだろう
とか難癖付けられて参加させられたのでしょう。同情を禁じ得ません」
美鈴「こらー! 聞こえてますよーっ!」
文「的確な分析、ありがとうございました。ん? はい、こちら射命丸・・・・・・そうですか、わかりました。ようやく準備が整いましたようです! いよいよ試合開始です! 『第一回・幻想郷大食い女王選手権』! レディ――」

 ごーん。(試合開始の銅鑼。担当慧音)

文「さあ、まずは最初の料理が運ばれて参りました。一品目は5玉入りの特盛うどんです! 飴色に輝く麺がいかにもおいしそうです!」
霖之介「出汁の良い香りがここまで漂ってきますね。シェフの努力が伺えます」
文「さてこーりんさん。このメニューの大食いにおけるポイントとは何でしょう?」
霖之介「一番のポイントは熱さ対策でしょうね」

美鈴「ふー、ふー、ずるずる・・・・・・あ、熱っ! あちちちっ!」

霖之介「麺類は熱持ちがいいですから。でも冷めるのを待っていては他を引き離せない。その点を如何にして対処するかですが・・・・・・」
文「なるほど。さて、選手の皆さんはこの難題をどうやってクリアするのか?」

幽々子「いっただっきまーす♪ ずるるるるっ」
輝夜「するするするする」
霊夢「ずるずる・・・・・・うん、これはなかなかイケるわ」

客1「うわあ、見て幽々子さん! 一すすりで1玉分食べてしまったわ!」
客2「いや、それよりも輝夜さんよ! 箸の勢いがすごく早い! なのに食べ方がとても優雅!」
客3「霊夢もあの熱いうどんを平然と食ってるぜ! あいつ不感症かよ!」

文「おお! しかし各選手順調に食べ進んでおります! 熱さなど意にも介さぬが如く! これはすごい!」
霖之介「まあ幽々子さんと輝夜さんはある意味当然ではありますね。霊夢も普段から熱いお茶を好んで飲んでいるので慣れているのでしょう」

美鈴「はあう、舌が、舌がひりひりします~」
小町「・・・・・・」

文「現在一番手は幽々子選手、それに輝夜選手がぴたりと追走しています! 霊夢選手はやや遅れて3番手、小町選手と中国選手は熱さに苦労しているようですが・・・・・・あ! あーっと、ここで!」
 
 バシャバシャ

客「「「えええええっ!」」」

小町「・・・・・・よし。ずるっ、ずるずるずるっ」

文「な、なんと! 小町選手、どんぶりの中に水を注ぎ込みました! そして瞬時に冷えたうどんを猛烈な勢いで啜りこみます!」
霖之介「成る程。これなら熱々のうどんも楽々食べられる。食べ方にこだわりを見せないとはマイペースな彼女らしいですね。観客は引き気味ですが」
文「わ、私も若干引いてます・・・・・・しかしルールには『どんな手段を使ってでも』と明記されております、彼女を咎める術はありません! これで小町選手は霊夢選手を抜いて3番手に浮上!」

幽々子「ごちそうさま~」
輝夜「ごちそうさま。さあ次を持ってきて頂戴」

文「さあ、幽々子選手完食、続いて輝夜選手も完食です! タイムはなんと6分30秒!」
霖之介「素晴らしいですね」
文「ですがまだまだ勝負は始まったばかり! 果たして最後にはどんな結末が待っているのか! 第二品目はハンバーガーです!」

 ざわ、ざわ

文「各選手の前に並べられたハンバーガー、その数実に10個! 実況の私は見ているだけでもうお腹いっぱいです!」
霖之介「それも一つ一つ手作りの品ですね。柔らかそうなパンにジューシーな肉、シェフの努力が伺えますね」
文「こーりんさん、ポイントをお願いします!」
霖之介「はい。今回は10個ということで味の単調さと水分補給が問題です。同じものを食べ続けることは段々と食事が苦痛になっていくものであり、また水分の過剰補給は胃の中の食物を膨張させます。これが大食いの辛いところです。ですが」

 おおおおおっ!

幽々子「あーん、むぐむぐ」
輝夜「もむもむもむもむ」

客1「うわあ、見て幽々子さん! 一口で1個食べてしまったわ!」
客2「いや、それよりも輝夜さんよ! 高速で細かく食べ続けてる! なのにとても綺麗な食べ方!」

霖之介「この二人に関してはまったく問題無いようですね」
文「仰る通りです! 瞬く間にお盆の上のハンバーガーが減っていきます! 彼女たちの限界はいったい何処にあるというのでしょう! さあ、そして小町選手、霊夢選手も二品目に突入! 中国選手は完璧に出遅れてしまいました!」

霊夢「・・・・・・うわ」

文「霊夢選手はトップの二人のペースと料理の量にうんざりした表情! それでも覚悟を決めてかぶりつきます!
 小町選手もしばしハンバーガーを見つめて、そして! あ、ああーーっ!」

小町「えーい、一個ずつチマチマ食べてられるかってのよ!」
 
 がそごそ、がさごそ、べちゃっ

客「「「うえええええっ!!」」」

文「こ、これはすごい! 今度は小町選手、ハンバーガーを全てパンとハンバーグに分別しました! そしてハンバーグをまとめて口に放り込み、残ったパンを水に浸して食べています!」

霊夢「げ」
美鈴「うわあ・・・・・・」

文「思わず霊夢選手と中国選手の手が止まります! その気持ちはようくわかります! 確かにこれなら早く食べられますが・・・・・・」
霖之介「作り手としてはこんな食べ方をされるとたまったものではないでしょうね」
文「会場と厨房が別箇所に配置されているのは幸運であったかもしれません! もしこの様を目の当たりにすれば藍さんは卒倒して
いたでしょう! 客席が俄かにざわめき始めました、でも小町選手はまったく気にした様子は見せません! そして、ついにトップ二人を射程圏に捕らえましたーーっ!」

 おおおおおっ!

文「幽々子選手、輝夜選手、完食! 15秒遅れて小町選手も完食! 3品目に入ります!」
霖之介「中国選手は今ようやく二品目に移ったようですね」

文「あ、ほんとだ。最早周回遅れといった感じですが。でもどうしてこんなに遅れを取っているのでしょう? 事前の情報によりますと彼女は今日のために昨日から断食していたそうなのですが」
霖之介「それこそが素人が陥りやすい大食いの罠です。断食は逆に胃を収縮させてしまい食べ物を詰め込めなくなってしまうのです」
文「へー。そうなのですか」
霖之介「詳しくは『大食いの秘訣』という本に載っています。お買い求めは是非香霖堂にてお願いします」
文「パチュリーさんに頼めば無料で読ませてもらえる気がするのですがね。あ、中国選手が立ち上がりました!」

美鈴「うう、もう食べられませ~ん・・・・・・」

文「これはギブアップということでしょうか? 涙目で席を去ろうとします、が、その目の前に!」

 さくさくさくっ!

美鈴「ひいっ」

文「何処からとも無く飛来した銀色のナイフが突き刺さりました! これはリタイアは許さない、という応援団からのメッセージでしょうか!?」

美鈴「さ、咲夜さ~ん・・・・・・」
咲夜「美鈴。お嬢様に恥をかかせる気?」
美鈴「で、でもここからの挽回は不可能です~」
咲夜「いいから座りなさい。そして食べ続けなさい」
美鈴「うう・・・・・・」

文「中国選手、しぶしぶ席に戻ります! いやはや、紅魔館の住人の厳しさを垣間見たような気が致します!」
霖之介「晒し者にして楽しんでいるだけみたいですけどね。観客席のレミリア嬢は大笑いしてますし」
文「さて、実況が脇道に逸れてしまいました。引き続き本戦を追っていきたいと思います。第3品目はチルノ印のかき氷! バケツ1杯のかき氷です!」
霖之介「今回のポイントは・・・・・・皆さんもご存じの通りですね」
文「そう! かき氷といえばあれです! 一気食いすると襲ってくるあの痛み! ああ、想像しただけで痛い、頭が痛いです!」

霊夢「うわ・・・・・・流石にこれはきっついわ」
幽々子「しゃくしゃく」
輝夜「さくさく」

文「そ、それでもトップ二人のペースは変わりません! 幽々子選手に至っては恍惚の表情を浮かべています! ここまでくると余人には立ち入れない領域です! そして注目の小町選手ですが、あーーっ! やっぱり!」

小町「ここで一気にブチ抜くよ!」
 ばしゃっ

客「「「げええええっ!!」」」

小町「んぐっ、んく、んく」

文「予想通り、そして期待通り! 熱湯を器に注ぎこみ、全部溶かしてしまいました! そして液体となったかき氷を飲み干そうとしています!」
霖之介「邪道の極みですね」

客「「「ぶーぶーぶーぶー!」」」

文「ついに客席からブーイングが! 私もこれは流石にどうかと思います! こまっちゃん、それ既にかき氷じゃないから!」

小町「ぷはー。五月蠅いな。どんな食べ方しても別にいいんだろ?」

文「そりゃそうだけど! マイペースにも程があるでしょう!?」

小町「ふん、知らないね。よっしこれで完食っと。ほら、さっさと最後の料理を」
?「お待ちなさい」

文「!?」

小町「げ――、ゆ、映姫さまっ!?」
映姫「主催者が裁けないのなら、私が貴方を裁きます。小町、これ以上みっともない真似はおよしなさい!」

文「あーっと! ここで裁判長の乱入です! 上司自ら小町選手の悪行を咎めようというのでしょうか!?」

映姫「その通りよ。食のありがたみを理解しようとしない食べ方、この私が許しません」
小町「で、でも映姫さまだって何にでもマヨネーズかけて食べるじゃないですか!」
映姫「そ、それはいいでしょ別に! おいしいんだから!」

 ざわ、ざわ(映姫さまはマヨラーだったのか・・・・・・)

映姫「と、とにかく! 仕事をサボってこんな大会に参加してるだけでなくこれだけの人の前で醜態を晒すなんて! ほら、さっさと帰りますよ!」
小町「え、あ、ちょっと、映姫さま引っ張らないで私お腹パンパンで、うわ、産まれる、産まれる~!」

 ざわ、ざわ

文「・・・・・・え、えーと。つまり小町選手はリタイア、ということになってしまったようです」
霖之介「残念な結果に終わってしまいました。あの勢いなら優勝も不可能ではなかったかもしれません」

幽々子「ごちそうさま」
輝夜「ごちそうさま」

文「おーっとここで! 幽々子選手、輝夜選手3品目完食です! いよいよ最後のメニューに移ります!」
霖之介「ここまでのペースは二人まったくの互角ですね。実にいい勝負です」
文「ただ今の順位は幽々子選手、輝夜選手、そして少し離れて霊夢選手となっております! 誰が勝ってもおかしくない、余談を許さぬ展開となっております!」

美鈴「うえ~ん、このハンバーガー冷め切ってパサパサしてます・・・・・・おいしくないです・・・・・・」

文「4品目はお寿司! お寿司100皿200貫です! どこの接待ですかそれは! うらやましい! でも私はそんなには食べられません!」
霖之介「ここまで来ると余計な解説は無粋ですね。黙って勝負の成り行きを見守ることにしましょう」
文「さあ、幽々子選手と輝夜選手がお皿を手に取ります! そして食べます、食べます! もの凄い勢いです! イカ、タコ、エンガワ、中トロ、さまざまなネタが口の中に吸い込まれ! 5皿、10皿・・・・・・瞬く間に空き皿が重なっていきます!」

幽々子「ふふ――やるわね」
輝夜「貴方こそ」

文「おお! 二人の視線が絡み合います! 火花が散ります! とはいえ言葉ほどに表情は相手を讃えてはおりません! それでも『自分が負けるはずがない』という自負がありありと見てとれます!」

 わー、わー

霊夢「げ、もう20皿も離されてるわけ!? しかも何よあのペース!」

文「そして今ようやく霊夢選手が3品目を完食! しかし上位二人とはかなり差が開いてしましました! 果たしてここから怒涛の追い上げを見せてくれるのでしょうか!?」

霊夢「くっ、お腹も張ってきたし逆転は厳しいかも・・・・・・こうなったら!」

 どよっ

霖之介「おや」
文「おおっと! ここで霊夢選手袖口から札を取り出しました! それをどうする? どうするのでしょう? まさか博麗秘伝には胃袋拡張の術でもあるというのでしょうか?」

霊夢「こーするのよ!」

 ひらっ、ぺたっ

文「! な、なんと宙を舞った札が幽々子選手、輝夜選手の軍艦巻きに貼り付きました! そ、それに両選手まったく気付いていません!
 そ、そのまま二人ともお寿司を口に――危なーーいっ!!」

 ぼんっ!

幽々子・輝夜「!!」

文「うわああ! 何ということ、何ということでしょう! 二人の口の中で札が爆発しました! 幽々子選手、輝夜選手の口から濛々と煙が立ち昇っています!」
霖之介「容赦無いですね」
文「まったくです! ここまで、ここまでするのか博麗霊夢! 正に悪魔の所業! 神に仕える巫女がこんなことでいいのでしょうか!?
 これに比べれば小町選手の邪道食いなど可愛いものです!」

霊夢「どんな手段を使ってもいい、んでしょう?」

文「うわまたです! ルールの揚げ足を取った勝手な物言い! 幻想郷でヴァーリ・トゥードは危険極まりないと私は今改めて痛感しております! しかし観客席の反応は今回は至って涼しいもの! 『あーあいつならやると思った』、そんな声まで聞こえてきました!」
霖之介「邪道食いは許さなくとも力技なら許される、これぞ幻想郷クォリティですね」

霊夢「これで敵はいなくなったわ。後はじっくり時間をかけてでも完食すればいいだけよ」

文「くう、ざ、残念ながら幽々子選手と輝夜選手はこの時点で続行不可能に――あ、ああああっ!」

霊夢「な、なんですってえっ!!」

幽々子「はぐはぐ」
輝夜「むぐむぐ」

文「と、止まりません! 口から黒煙を撒き散らしながらも両選手まだ食べ続けております!」

 うおおおおおっ!

霊夢「そ、そんな・・・・・・」

文「これは食への執念なのか、はたまた勝利を渇望するが故なのか! 何人たりとも彼女らを止めることはできないということなのでしょうかあ!!」

霊夢「ふ――負けたわ」

文「そして霊夢選手手を上げてギブアップの合図! あれだけのことをやらかしておいて随分とふてぶてしいこと! 胸を張って堂々と花道を歩み、去っていきます! あ――その前に双剣と弓矢を掲げた憤怒の形相の二人の従者が!」
霖之介「それはまあ。あの二人だけは許すはずもないでしょう」
文「壮絶な追いかけっこが始まりました! まああちらの決着はもう任せておきましょう。それよりも大会です! ついに勝負の行方はこの二人に絞られました!」

幽々子「はぐ、はぐ」
輝夜「むぐ、むぐ」

客1「す、すごい、この二人に限界は無いのかしら!?」
客2「胃袋に穴でも空いてるんじゃないの!?」
客3「食の権化かこいつらは!?」

文「さあ食べます! 食べ続けます! 40皿、50皿・・・・・・積み上げられたそのお皿は天に仇成すバベルの塔! 時折相手の様子を横目で見つつ、1貫でも、一口でも多くと食べ進みます!」

 うおおおおおっ!

文「その食べっぷりには既に優雅さの欠片も無く、手も口元も米粒だらけ! それでも私は断言します! この二人の今の姿は誰よりも、誰よりも美しいと!」

客1「ゆゆ様ー! 頑張って!」
客2「輝夜さーん! ファイトー!」

文「おお、お聞きになられたでしょうか! 観客席からエールが! これは応援団の身贔屓の声ではありません! 彼女たちの姿に魅入られ! そして感動を隠すことのできない、本心の、本音のエールであります!」

 うおおおおおっ!

幽々子「はぐ、はぐ・・・・・・」
輝夜「むぐ、む・・・・・・」

文「しかぁし! 遂に80皿を越えた辺りで両者のペースが落ちてきました! 無理もありません、うどん5玉、ハンバーガー10個、かき氷バケツ1杯に加えてこれだけの量のお寿司を食べているのです! 如何な大食いであってもこの量は厳しいはず!」

幽々子「う、ぐ、もう、お腹いっぱいなんだけど・・・・・・でも!」
輝夜「え、ぷ、これしきの難題で・・・・・・挫けるわけには!」

文「それでも! それでも一口、二口と小さく前へと進みます! 87、88、89・・・・・・90! とうとう90皿到達です! さあ、残すは10皿、勝利の女神はどちらに微笑むのか――え? はい、どうしました厨房の藍さん?」


藍『あのー。もう食材が無くなってしまったんですけど』

文「へ? ど、どういうことでしょう? 材料は十分に用意していたはずですが」

藍『それが・・・・・・とある二人組がつまみ食いして全部食べてしまって』
紫『もぐもぐ。たまにはお寿司もいいものねー。もう無いの?』
橙『むにゃー。もう食べられませーん・・・・・・』

文「は、はあ・・・・・・了解しました。と、いうことは・・・・・・?」

幽々子「・・・・・・どうなるの?」
輝夜「・・・・・・どうなるのよ」

文「申し訳ありません! 大会はここで打ち切り終了です!」

 ざわざわざわざわっ!

文「そして優勝者は無し、トトカルチョも勿論該当者無しで賞金含めた掛け金は親の総取り、ということになります! やったラッキー! これで新しいカメラが買えますー!」
霖之介「いやそれはないでしょう。こうなってしまったのも運営側の不手際なのですから。賞金は二人に折半、掛け金は払い戻しが筋では?」
文「へ? なんでですか? ちゃんとルールに書いてあるじゃないですか。『どんな手段を使っても最初に食べきった人が優勝』って。誰も食べきってないのですから賞金を払う必要はないでしょう? それに無効試合に賭けてはいけないと言った覚えもありませんし」
霖之介「いや、しかしそれは」
文「まあ大食い大会だけにおいしい話でした、と綺麗にオチがついたということで。・・・・・・あ、あれ? 皆さんどうしたんですか怖い顔」

一同「「「ふ――っざけんなああああっっ!!!」」」

文「わ、うわわっ! 弾幕です一斉に弾幕です! 参加者観衆総勢百余名による弾幕の嵐です! 空間は埋め尽くされ向こうの景色は見えません! こ、これは幻想郷最速を誇る私の足を持ってしても避けるのは不可能かも――てーい、こーりんバリヤーっ!」
霖之介「ちょ、文くん、いきなり何を――うわあああああっ!」

 どがががががっ!

文「ああ、こーりんさん! 私を庇ってくれるなんて、感激です!」
霖之介「い、いや、今こーりんバリヤーって・・・・・・ぐはっ」
文「貴方の尊い犠牲は無駄にはしません! 私は必ず逃げ延びてこの戦いを立派な記事に仕立て上げます! 以上、『第一回・幻想郷大食い女王決定戦』! 実況は私、射命丸文がお送りしました! それではみなさん、さよーならーー!」


~おいそれと終了~

 おもいっきり偏見で書いてしまいましたw
 ゆゆ様はともかく輝夜が大食いだったりましてや小町があんな食べ方はしないとは思いますが。

 まあ、それでも楽しんでいただければ幸いです。
desio
[email protected]
http://www.k4.dion.ne.jp/~touhoubb/
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コメント



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7.30名前が無い程度の能力削除
こまっちゃんは粋だよ!あと四季様って呼ぶよ!
10.30名前が無い程度の能力削除
ちょwwwこまっちゃんwwww
邪道喰いwwww
11.20名前が無い程度の能力削除
るみゃはいないのですか?いや別にいいですが。

中国はどうなったのですか?いや別にいいですが
20.20名前が無い程度の能力削除
ルーミア・・・orz
25.50NICKEL削除
気になったところ >幻想郷最速を誇る私の足を持ってしても
残念だがテングよりも韋駄天のほうが速いんだ。〔つまり橙は文より速い〕
かき氷はチルノに作らさせたのでしょうか?
26.60名前が存在しない程度の能力削除
中国の存在がよくわからなかった。
まぁ、楽しかったけど
28.無評価名前が無い程度の能力削除
こまっちゃん、邪道食いはよせーっ!
33.80名前が無い程度の能力削除
第二回幻想郷大食い女王決定戦!
期待してます。
34.70時空や空間を翔る程度の能力削除
映姫さんはマヨラ~(メモメモ・・・・
  文手帳にカキコミ
35.70名前が無い程度の能力削除
なかなか良かったです、笑わせていただきました。