Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷調査部隊(七)

2006/10/15 21:00:48
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「逃げるぞ、早くしろ」
 目の前で死んでいる男が斉藤だと分かると、高田は先陣を切って部屋を出る。その際メイドもしくは誰かが来るかどうか確かめていた。
「死体は置いていけ」


 篠田は大人しくその言葉に従ったものの、霧島は最初どうすればいいのか分からなかった。こんな所に、化け物の巣窟に死体を置いていってしまってもいいのか? どんな扱いを受けるかというのも分からないというのに? バラバラにされたり、湖にそのまま投げ込まれたり、蝿のエサになるかもしれないってのに? これはつまり、見捨てると同義なんじゃないのか?


 高田の後にいた篠田が霧島を振り返ると、慌てて戻って耳打ちをする。
「あいつは死んだんだ、放っておくんだ」


 死んだ。唐突にその事実を突きつけられてしまい、胸がむかつき吐き気がした。その死に様が凄惨なせいもあったが、さっきまで動いていた人間が簡単に、それこそ殺虫剤を振り掛けた虫みたいに死んでしまうことが非常にグロテスクなことに思えた。同時に今まで自分が目的としていたものが予期しない形で消えうせてしまい、半ば茫然自失だった。それでもきつく目を閉じて頬の内側を噛んで、散り散りに分裂してしまいそうな心を繋ぎとめて、霧島は走り出す。


 高田が廊下を先行していたが、咄嗟に隅っこにしゃがみこむ。それが意味するのを感じ取った二人は同じようにしゃがみこんで、その一瞬後で大量の光弾が脇を掠めた。恐ろしい程大量の弾が撃たれるその意味は明らかだった。


 とうとう見つかった。


 一発二発と反撃を加えると、今度は反対方向からも弾が飛んできて、霧島のすぐ脇を直撃した。その音や風を切る音、それがもたらす破壊力が恐ろしく、それが直撃した時のことを思い描いて霧島は凍りついた。
「くそ、後ろからもか!」と高田が叫び、気がつくと霧島はさっきの部屋に引きずり込まれていた。ドアを閉めて鍵をかけ、血や肉片で汚れたテーブルにイスをバリケードとして組み立てる。原始的だが、侵入を防ぐにはこれくらいしかなかった。


 すぐにメイド達が追いついたのか、ドアの向こうでは何発も弾を撃ち込む音が聞こえている。それなりにドアが丈夫なのか穴は開けられていないが、木が裂ける音や穴が開く音を聞かされる側としてはたまったものではなかった。それが止んだ時、自分達の運命が確定するのだ。


「くそ……くそッ、ここまで来てッ!!」
 身体の中から湧き出てくる苛立ちをどうにかして発散させようとするかのように、高田がイスを蹴り上げた。大きな音を立てて窓に当たるが、どういうわけかびくともしない。ためしに一発撃ちこんでみたが、ガラスに食い込んだまま弾は停止し、やがて血に濡れた床へと落ちた。


「万事休す…か」
 篠田が呟くと、ふらふらとした様子で隅まで飛んでいった椅子を起こして、その上に座る。まるで老人のような座り方だったし、篠田の顔はさっきより何歳分も老化してしまったように思われた。その間も高田はどうにかしてこの状況を脱出するべく思案を巡らせているが、何も思いつかないらしく髪を掻き毟っている。高田には気の毒だが、霧島にも名案らしきものは何も思いつかなかった。いっそこの拳銃で各自が自殺でもしてやればいいんじゃないかというネガティブな考えが不意をついて出てきたが、そういったものをすぐに打ち消す。何かあるかもしれない、自分達がここから出られる何かが。俺は誓ったじゃないか。この作戦を絶対に成功させてやると皆に。畜生、諦めるな。


 だが何も無かった。ドアの外では打撃が益々強くなり、やがてドアの中央辺りが音を立てて割れ、そこから突っ込まれた手ががむしゃらに弾を連射しはじめた。大急ぎで隅に避難すると、穴へと銃弾を撃ち込む。手の指が何本かもげた後に悲鳴がして、一時的に手が引っ込む。


 高田に手榴弾がまだ無いのか尋ねようとした時、大災害が起きたかのように館自体が震え、外では二十回連続で雷が落ちたような轟音が響いた。窓からは強い白光が差し込むせいで何も見えなくなり、外の打撃もそれに驚いたのかぴたりと止んだ。霧島たちは顔を見合わせたものの、何が起きたのかは分からなかった。外の慧音に通信を要請しても繋がらない。美村や熊谷に発信しても同じ状態だった。どうやらさっきの光のせいで電波、もしくは無線機に影響が出たらしい。一時的なのかそれとも永続的なのかは、専門家でもないので分からない。


 地震みたいな揺れはすぐに収まり、外も元の暗闇に戻った。ドア外の打撃も再開され、状況は元に戻った。篠田がドアを見て悪態をついた。


「美村と熊谷、逃げられるかな」
 霧島がぽつんと呟き、騒音で聞こえないだろうと思ったそれは高田の耳に届いたようだった。そして篠田にも。


「どうだろうな」と高田が首を振り、篠田の方は腕組みをして考え込んでいた。
「外のアレが何か分からんが、もしかしたらみんなやられたかもしれない。出来ればそうじゃない方を願うけどな」


 慧音と一緒に戦っているはずの美村と、筏を隠して自分もまた隠れているはずの熊谷のことを考えた。二人とも大丈夫だろうか? 熊谷はもう脱出しただろうか? 美村は怪我をしていないだろうか? 真紅色の壁にもたれかかると意図していたのとは別に、ずるずると座り込んでしまう。足から力が抜けてしまい、何故だかため息が出てきた。頭の中では必死に脱出方法を探っていたが、どうやら身体の方は既に諦めてしまったらしかった。


「みんな、ほんと、すまない。大口叩いといてこの様だった。俺は大馬鹿だ」
 そう言うと涙が出てきそうになり、目元を強く擦って無理矢理止める。自分の情けなさをこれ以上強調させたくはなかった。


「そんなこと言うな。俺はお前のプランが最適だと思ったし、全員が頑張った。俺達は最善を尽くしたんだから、これが最良の結果だ。仕方が無いさ」
 篠田が答えて、椅子からどうにかして立ち上がると霧島の方に近づき、頭に手を置いて撫でた。妙に慣れたその手つきがおかしかった。刑務所に入る前はどこかで保父でもしていたのかもしれない。


「逃げ出すタイミングを間違えた俺の責任でもある、お前ばっかりを責めることは出来そうに無いな。というか、ここは俺が謝るべきじゃないかね」
 高田は髪を掻き毟ることをやめると、開き直ったようにすっくと立ち上がる。
「俺達の人生、ここで終わるようだな」
 高田が言い、逃れられない事実を受け入れた他の二人が頷いた。高田は今や、片手に自動小銃、もう片手に拳銃と、まるでランボーみたいな銃の持ち方をしていた。果たしてそれで撃てるのかどうか分からないが、高田ならやってくれるだろう。なんとなく霧島はそう思った。


「出来るだけ道連れにするぞ」


 短い覚悟表明であり、遺言でもあったそれを二人は受け入れた。拳銃を取り出し、今すぐにでも破られそうなバリケードにそれを向ける。突入する奴らにありったけ撃ちこんでやろう。そして最後の最後になって諦めるしかない時には、この銃で頭を撃ち抜いてやる。


 奇妙な気分だった――前向きな絶望、とでも表現できるのだろうか、目の前には大きな大きな奈落が口を広げて待っているというのに、不思議と怖くは無かった。こいつらと一緒ならどこまでも行けるという感じだったし、やってやるぞ、とも思えた。


 がつん、…がつん、…がつん。


 ドアの割れ目は広がり、外にいるメイドたちの腕が見え、肩が見え、やがて顔が見えた。何が何でも侵入者を追い詰め殺してやるという、猟犬のような執念がその顔には広がっていた。銃を上げたその時、天井から小さい埃が一つだけ、ぽろっと霧島の頭の上に落ちた。篠田と高田はただ前方を見据えていたため、それに気付いたのは霧島だけだった。


 何だいまの、と言いかけた所で霧島は舌を噛んだ。とんでもない力で揺さぶられたように部屋が動き、バランスがぶれたせいだった。なすすべもなく部屋の中を転がされ、わけがわからないままピンボールの如く視界がぐるぐると回り続ける。


 そのまま壁に頭をぶつけて、目の中で黄色い爆発が起きると同時に、すぐ眼前で何が起きているか分からなくなる。耳の中ではノイズがごんごんと鳴り続け、今では五感全てが現実世界より遮断されて、意識が暗闇に吹っ飛ばされた。篠田と高田の顔が頭に浮かび、メイドたちの猟犬のような顔が浮かび、全てがぽっと消えた。


 目が覚めると、部屋はもう部屋の形を留めていなかった。顔に張り付いた粉塵と埃を拭って顔を上げると、部屋の中央には大きな穴が開いていた。下の方から物凄い力を加えられたように床が上に盛り上がり、奇天烈な花を形作っているように見えた。部屋中に立ち込めている埃などが邪魔でよく見えないが、辺りでは家具が倒れ、そこらに瓦礫や木片や漆喰の粉が散らばっている。救い主が現れたというよりは、気まぐれな悪魔が隕石を落としたようだった。手に違和感を感じ、視線を降ろすとそこにはまだ銃があった。無意識のうちに握り締めていたらしい。唯一の武器をどうやら無くしてはいなかったようで、ほっとした。その直後に鼻がむずむずして、くしゃみを二回連続でする。


 霧島の周りには誰もいないし、転がっても居ない。衝撃は部屋の外にまで及んでいたらしく、メイドたちが突入してくる様子は無かった。部屋の外がどうなのかは分からないが、今が逃げる好機なのは確かだ。だが高田や篠田の姿も見ることが出来なかった。力はこの部屋近辺だけではおさまっていないようで、更に上を見ると天井が破壊され、なんと夜空が見えた。夜空は汚れだらけの部屋の中と比較すらできないほど綺麗で澄み切っており、またその中では小さな満月がぽつんと存在していて、この館で右往左往する愚か者どもを嘲笑っているようだった。


 そして夜空の中には、少女が浮かんでいた。反射的にあの吸血鬼――レミリア・スカーレット――が浮かぶ。霧島が立ち上がって少女を見上げると、それに気がついた少女がすーっと下りてくる。背中から翼のようなものが生えていたが、それはとても翼とは呼べない代物だった。見たままを表現するなら、骸骨の羽に七色の宝石をくっつけたような、そんな感じ。あの時見えた翼はどうだったか? 骸骨か? 果たして宝石がくっついていたか? 断言はできないが、なんとなく違うような気がした。


「あら、生きてたのあなた」
 少女が透き通るような、透明な声で語りかける。
「結構力入れたのに」


 それを聞いた途端、霧島の心の中に言い様の無い恐怖感が入り込んできた。わずかばかりの隙間があれば入り込むゴキブリのようにそれはするりと侵入してのけ、どんどんと心を圧迫していった。ぷっくりと恐怖は盛り上がり続け、それは膨らみ始めた気球のように大きくなり…やがて霧島自身を…押し潰してしまいそうだった。脳髄や背筋が圧迫され、思わず呼吸することも忘れる。


 反射的に心臓を押さえて、止まっていないかどうか確認をする。まだ動いている。きちんと呼吸ができるか心配だったので、乾いた喉に口を大きく開けて空気を送り込む。少女を見ていると自分が本当に生存できているのか不安だった。すぐ前を浮かんでいる少女は紛れもない恐怖だった。彼にとっての死神であり、その気になれば指先一本で彼を破壊できるような存在であり、桁が幾つも幾つも…八つ以上、九つ以上、とにかく、違った。それは彼をはるかに凌駕し、圧倒しきっていた。例えるなら、アリと………なんだ? 太陽か?


「君は、誰なんだ」
 喉から搾り出すように、ようやくと言った感じの発声だった。
「君は、何なんだ」


 少女は可愛らしく小首を傾げて――猫がネズミのはらわたを引きずり出す直前に、小首を傾げるあの動作――答えた。
「フランドール。フランドール・スカーレット。あなたは誰?」


 問いかけられるとその声は彼の脳みそに突き刺さり、矛先が向けられたという事実だけで組織が完全にバラバラになるような心地がした。霧島遼一、とぜいぜい言いながらどうにか答える。今彼は、魔王と向かい合っていた。そいつは気まぐれに少女の仮装をした魔王だった。くそ、酔狂も大概にしろよ。


「キリシマリョウイチ…ふうん」
 それきり少女は興味を無くしたようにそっぽを向くと、瓦礫の山をぐるっと見て、おもむろに近づくと少女の八倍の大きさはありそうな瓦礫を軽々と持ち上げて、外へと放り投げた。小石が落ちるような音が聞こえてきて、土の上にどしん。その様を見せられても、彼はもう驚かなかった。これ以上に重たいものも持ち上げられるだろうし、粒子みたいに細かく砕くことだって可能だろう。


 次の瞬間、少女の両手には篠田と高田の姿があった。何事かを呻きながら身じろぎをしているということは、生きているらしい。安堵した一瞬後に、二人を文字通り手中におさめている存在の事を考え、心臓が凍りつく面持ちだった。


「これ、あなたの友達?」
 霧島の方を向いて尋ねるその姿は、無邪気な子供だった。小学校の校庭でミミズを掴み上げて尋ねる子供と同じく。霧島は頷いた。


 そして少女は、一瞬後にミミズを敷石で潰す子供のような顔で言った。
「じゃ、壊しちゃおうか、これ」


 霧島の中で瞬時に様々な感情が駆け巡った――逡巡、疑問、憤慨、憎悪、悲嘆、後悔、従順。その他色々とありすぎて理解することはできなかったし、ただ感じ取ることすら難しかった。それが必要なら少女は二人を殺すことは明らかだったし、それを言うなら二十人でも二十万人でも少女は平気で叩き殺すだろうということも霧島は分かっていた。イタズラで虫を殺す子供のように、笑顔で淡々と、殺戮を行なうのだと。飽きもせず……一人一人(もしかしたら十人いっぺんかもしれない)……笑いながら……殺せる。


 理性は混乱しきって何も命令が出せないでいたが、最も奥まった位置にある生存本能は、これでいい、と叫んでいた。このままやらせるままにしておけ、首を突っ込むな、耳を塞げ、目を閉じろ、情報を遮断しろ、さもないと彼女はお前をバラバラにして細胞の一つ一つに至るまで焼き焦がすぞ、と。地獄を見たくないならやめろ。もう揉め事はたくさんだ。


 だが霧島の中で、他の物とは毛色が違う意志が一つあった。彼はそれを選びたいと思ったし、実際に選ぶことに躊躇は無かった。


 彼は空気を吸い込んで、さっきよりはずっとマシになった声で言った。


 その時初めて、彼は本能を否定し、死神と対峙し、魔王と対決することを選んだ。


「やめるんだ」


 一言、大きくも小さくもない声で言った。どこかで何かが崩れる音がして、今にも夜空に飛んでいきそうな少女が彼の方を向いた。


 少女の目が大きくなる。見開かれんばかりに大きくなる。彼の本能は悲鳴を上げて今すぐ自殺しろ、あいつに興味を持たせるな、穴の中に飛び込めと叫び散らしていた――喚きたてているのと同じだ――身じろぎ一つでそれを無視する。
「やめるんだ」


「なんで?」
 透明な声で――天使のようにも悪魔のようにも聞こえる声で少女が問いかける。


「友達だからだ。死んで欲しくないからだ」
 教師が生徒に教え込むように、一言一言ゆっくりと、霧島は言った。


 彼の心の中では生存本能と理性が団結して主導権を奪おうとしていたが、それ以上に堅牢なものががっちりと保持していた。


 霧島はただ二人を助けたかった。何の打算も損得も無し、ただ命を救いたいと、それだけだった。他には何も無かった。


 ふと、霧島は目の前にいる悪魔こそ、今までの自分を写した存在ではないか、と思い始めていた。ひたすらに自己保存に努め、自分のことだけを考えて過ごしてきた学生時代、ぽっかりと空いた空虚さを小説を書くことで埋めてきた刑務所時代、最終的に出来上がったのは、心を人形にして性根の捻じ曲がった社会の屑だった。あらゆる己にとってマイナスとなりそうな要素を否定し、それから逃避し、挑戦することを避けてきた自分。家族と対決することを、社会と対決することを、逃避することで避けてきた自分。少女の姿と過去の己が合わさり、問いかけている。友達を犠牲にする? 自分を犠牲にする? 勿論自分を大事にするんだろ? 弟を殺した後で父親と母親を殺す決心をしたように、とっくにお前には友達を犠牲にする決心がついているんだろう? 


 今はとりあえず、友達を優先したい気分だ。そう思うと急に笑い出したくなって、鼻を手で覆って空咳をする。


「いやだ、って言ったら?」
 少女はさっきと同じ口調のままで言う。明らかに少女の中から恐ろしい物が流れ出してきたが、霧島はそれに耐えた。平時ならば絶対に耐えられないであろうそれも、今ならば平気だった。


 こうする、と霧島は答えて、手にした銃を向けた。狙いは少女の頭部、当たるかどうかは自信が無かったが、確実に当ててやろうという気はあった。銃を一発ぶち込んだくらいで怯むとは到底思えなかったが、本能に成り代わった意志は大丈夫、大丈夫と連呼していた。だから、霧島はそれを信じることにした。


 風が吹いて埃と粉塵を吹き散らかし、隅に放置されていた小銃や拳銃がかたかたと音を立てる。少しの間少女と霧島は見詰め合った。ライオンとシマウマが見詰め合う一瞬と言っても良かったし、西部の決闘でガンマン同士が睨みあう一瞬と言っても別に良かった。


 少女は澄み切った瞳でじっと彼を見つめていたが、やがて「いいわよ、返す」と言って二人を投げた。霧島が驚く間も無く、彼のすぐ脇に落下する。そのショックで目が覚めたのか、二人は何事かを呻きながら起き上がろうとしていた。まだ頭がはっきりしていないのか、立ち上がるまではいかなかったが。見た感じ気絶するほどのショックに見舞われたようだったが、どこかを骨折したり断裂させた様子はなさそうだ。ほんとに運がいい。


「何かやる気無くしちゃった。そんな言われ方したの久しぶりなんだもの」
 少女は再び霧島を見た――それはさっきまでとは違い、狂気とか凶暴さとか、危なっかしいものが抜け落ちたみたいに霧島には感じられた。勘違いかもしれないけれど。
「まるでお姉さまみたい」


 お姉さま? と霧島は疑問に思ったが、すぐにそんなものは打ち消された。少女が手を窓に向けると、まるでレーザーみたいなものが放出され、窓があった部分を壁ごと熱線で切り取ってしまう。思わず手で顔を守った霧島の横で、どすん、と床に音を立てて倒れ、大きく埃が立ち上る。


「そこから出られると思うわよ。下は確か木だったと思うから、運が良ければ死なないかもね」
 そう言った後で、あなたって空飛べたかしら? と訊ねた。


 霧島は首を横に振った。少女は考え込むように小首を傾げた後で、これから外に行くわ、さよならと霧島に別れを告げて、まるで落ちるように空に向かって一直線に飛んでいき、視界から消えた。


 それを見届けた後で二人を起こそうとしてから、急に力が抜けて地面に膝がつく。足ががたがたと震え、幾ら力を入れようとしても入らない。ぺたんと尻餅をつくと、腰の辺りも足と同じくぶるぶる震えるばかりだった。その時点で霧島はある事実に気がついた。


 どうやら腰が抜けたらしい。






「あら――へえ、なかなかこれがどうして、面白いじゃないの」


 レミリアは高度何十メートルの地点で蝙蝠製の椅子に座ったまま、その場で紅魔館の様子を――正確には、そこにいる人間と妖怪の運命を――眺めていた。丁度フランドールが霧島に興味を無くして、夜空に飛び出した所だ。咲夜の方はと言うと、爆発の瞬間に出来た隙を利用して逃げた慧音を途中まで追いかけようとしていたがとうとう諦めたらしく、フランドールの方へと向かっていた。今日はあの子不機嫌だろうから、宥めるのは時間がかかるでしょうね。咲夜に降りかかるはずの苦労を思い、当主は笑う。


 フランドールが暴走することは、大体分かりきっていることだった。館の内外での戦闘、そして発生する騒音はどんなに防音処置をしてもフランがいる地下室まで届くだろうし、またそれによって生じる衝撃も感じ取ることができるはずだ。フランドールの性格を考えれば、それらを感じさせて尚暴走させないというのが無理な相談だ。


 レミリアはあの男、霧島に対して段々と興味を持ち始めていた。紅魔館に突入してから彼が死亡する運命は何十通り、細かく言えば何百通り近くあったのに、それら全てを潜り抜け、最大の難関であるフランドールすらもやり過ごしたのだ。ああいや、試練と言えるのははまだあったか。まあ楽しみは後にまで取っておこう。


 メイド達による射殺、運悪く見つかり射殺、待ち伏せに合い射殺、ゾンビになったあの男に噛まれて感染死(下僕になる菌の他に、ついでに自殺をしたくなるような特殊な菌も仕込んでおいた。他人に感染しなかったのが残念)、挟み撃ちの際に射殺、篭城中に自殺、または仲間によっての射殺、爆発によって死亡、瓦礫に潰されて圧死、穴からフランドールがいた地下室まで落下して落下死、フランドールを怒らせてしまい、焼殺、刺殺、射殺――まあこのくらいにしとこう。一体彼はどうやってこれほどの障害を回避したのか? 運か、意志か、それとも努力か?


 レミリアの考えでは、前半辺りは運の賜物、しかし後半からは意志による割合が強くなっているように思われた。意志、その単語について思いを馳せてレミリアは笑いたくなった。そんな物があれほど強固に張り巡らされていた運命をいとも簡単に、子供の指みたいに捻じ曲げてしまうとは! いやはや、人間とは本当に面白い種族だ。


 このままどうしたものかと考えてみた。館に戻る、このままでいる、それとも霧島という男を追う、のどれかがある。館に戻る――論外。埃と瓦礫と木材とオーク材の廃墟となっているあそこに戻るのは御免だ。咲夜やその他に修繕させてからにしよう。このままでいる――あの男の運命を追えるし、他の物についても見ることが出来る。だが今では霧島以外の運命には全く興味が無い。あの男はどのような運命を辿り、最後にはどうなるのか? ただただ気になって仕方が無い。


 やはり追ったほうが懸命ということか。椅子に擬態させている蝙蝠を解くと、あくまで追いつかないように、自分が邪魔をしてしまう恐れを無くすために、レミリアはゆっくりと飛翔を始めた。空の中に羽を広げ、漆黒の翼で幻想郷の中を飛び回る吸血鬼。勿論月を愛でるのも忘れずに。


 これからのことを考えると、ひたすらに嬉しくてたまらなかった。こんな興奮は久しぶりだ。


 さあ、失望させないでね。






「はあ、はあ、は―――」


 ようやく湖の畔にまで辿り着くと、慧音は抱きかかえていた美村の死体を下ろし、力が抜けたように座り込んだ。陸地側まで全速力で飛んできたので、紅魔館は指の大きさ程まで小さくなっている。メイド長の追跡を退け、張り付こうとしてくる雑魚妖精を振り切り、どうにか逃げ切ることができたようだ。


 数分ほど呼吸をすることだけに集中して、ようやく肺を落ち着かせる。余裕が出てくると、抱えてきた美村の死体を眺めやることもできた。湖を飛んでいる間、彼の死体は一度も見ないようにしていた。


 慧音が人間の死に立ち会ったのはこれが始めてのことではなかった。何人も、何十人もの死を、殺害される様を、病気で果てる様を見てきた。その時ほど自分の能力の至らなさを痛感することはなかったし、この美村に対してもそうだった。もっと自分が注意の幅を広げていれば、もっと自己研鑽を怠ることなくやっていたら、もっと自分が強かったなら―――。


 握りこぶしを作って固く目を瞑る。抑えきれない涙がぼろぼろと頬を伝って落ちる。鼻水もあふれ出てきて、慧音にはそれらを止める術が無かった。これまで様々な人間の終焉を見てきた時は涙を流し、今回もまたそうだった。もしかすれば涙が出ないように努力することは可能なのかもしれないが、理性的なものではなく感情的なものが、本能のようなものがそれに異を唱えている。そんなことは嫌だ――、と。だから慧音はそれに従っていた。


 泣き続けてから、ようやく涙は止まる。ごしごしと鼻を擦って鼻水を掻きだし、湖の水で顔を洗う。季節が冬ということがあって、とてつもなく冷たかったが、意識を覚醒させるにはそれで良かった。月明かりで、水面には赤く泣き腫らした顔が見えた。それでも構わずに顔を洗い続ける。ざぶざぶ、ざぶざぶ。


 終えてから、美村の元に戻って死体を持ち上げる。まだ安全な所ではない、ここは村ではないのだから、こんな所に一夜も放置しておけば、獣たちが食い散らかしてしまうだろう。村に戻ったら、はずれにある墓地へと埋めてやるつもりだった。異国の地で埋葬されるのは気分がいいものではないだろうが、我慢してもらおう。


 飛び上がる直前に、慧音は美村の顔に目を向けた。ナイフのせいで体中に穴が開き、目は見開かれ口は開いている。せめてと慧音はその目をそっと閉じさせてから、もう答えることができない人間へ心の中で問いかけた。


 今際の瞬間、お前は私になんと言ったのだ?






 外の騒ぎはようやく治まったようだった。ヴワル魔法図書館付属の寝室にあるベッドに座り込んでいた小悪魔は、おそるおそる図書館長であるパチュリーの部屋に向かおうとする。一時的に揺れが収まった時に一度向かおうとしたことがあるのだが、その時は直下型地震のような激しい振動に邪魔され、結果として小悪魔の頭には床にぶつけた際にタンコブが出来てしまった。後で空を飛びながらドアを開ければいいことに気がついたのだが、最早後の祭り。今夜は悔しさで眠れない夜になりそうだった。


「失礼します」
 ドアの向こうにいるはずのパチュリー・ノーレッジに挨拶をすると、返事が返ってくることを期待していない小悪魔はドアを開ける。部屋の中は四方八方に本が積み上げられてあり、それらの本は衝撃のせいでぐちゃぐちゃに崩れてしまっていた。部屋の入り口を塞がなかったことが奇跡と言える程部屋は本によって埋め尽くされており、多分本好きが望む最後とは本の山に埋もれて窒息死することかなあ、となんとなく小悪魔は思った。そのパチュリーは、さっきまでの揺れを全く感じていないかのようにベッドの上に寝転びながら本を読んでいる。正確には、ベッドの少し上を飛びながら本を読んでいた。ちなみにベッドの下にもごちゃごちゃになるほどの本が置いてあり、いつものことながら小悪魔はため息をつきたくなる。生まれた頃からこんな性格だったのかなあ、この人。


「パチュリー様、さっきの揺れ大丈夫でした?」
 文字通り本の海を掻き分けながら、小悪魔はパチュリーへと近づいていく。んー、と気だるそうにパチュリーは本を読みながら返事をするが、全く気にならない。いつものことだからだ。この本好きの変人と向かい合う時には寛容さと少しばかりの諦念を持って望まなければならない。


 にしても、一体何があったんでしょうねえ、とベッドまでようやく辿り着くと、司書としての血が騒ぐのかベッド上の本を整理しはじめながら小悪魔が言う。
「正確な所はわからないけど、妹様とレミィが関わってるのは確実ね。メイド長とかは何をやっているのかしら」
 天井からベッドまで落ちてきたらしい埃を手で取り除けながらパチュリーが言う。


「とりあえずお部屋を掃除しますから、一旦ここから出てください。本だって整理する必要がありますし」と、タイトル順に本をベッドの上に置きながら、小悪魔は本題に入った。まずはここを掃除してから、図書館の被害を確認。必要ならメイドたちにも手伝ってもらって修復をしなければならない。今夜は一時間でも眠れるだろうか。


 だが当のパチュリーは「いや」と言って壁側にごろりと向きを変えた。あくまでこのベッドから動きたくないらしい。今日何回目になるか分からないため息をつきながら、小悪魔はパチュリーの説得に取り掛かった。


 その間パチュリーは小悪魔の言葉を背景音のように聞き流しながら、この騒動を引き起こしているのは何者か、それとも何物かということに思いを馳せていた。幻想郷でもある程度知られているここでこんな大騒ぎを起こし、わざわざ自分達から悪魔や妖怪に関わろうとする連中。そこらの妖怪では考えられないし、強い力を持ったのがやってきたとしてもその力を感知できない。もし八雲紫や風見幽香が面白半分でやったとしたら、気配を消していても微弱なものを発しているから分かるものだ。第一彼女らは気配を隠すようなタイプではない。おおっぴらに暴走するような人物なのだ。まあ、幻想郷自体がそういった輩で埋め尽くされているようなものだが。


 やっぱり外の人間ね、と最終手段に出た小悪魔に引っ張り出されつつ、パチュリーは思考を進める。となると、事態は収束していくだろうか?


 それとももっと酷くなるかもしれないだろうか?


 目を閉じて考えても、はっきりとした答えは出てこない。ただ、一つだけ分かることはあった。


 もし再び騒ぎが起きるとすれば、今度はもっと大規模なものだということだ。


 それもここだけでは収まらずに、ずっと大きなもの。それこそ幻想郷全体を巻き込みそうなほどの。


 そこまで思考が及んだ所でパチュリーはベッドから落ちて、小悪魔と一緒に本の海に埋もれる羽目になった。ついでに言うと、本に頭をぶつけて気絶した。






 足がようやく動くようになり、高田たちが完全に覚醒するまで時間はかかったものの、どういうわけかメイドたちはこっちへとやってこなかった。もしかすれば、館の破壊や霧島たちをどうにかするよりも少女を追う方が優先事項だと考えたのかもしれない。やっぱりあの少女は、救い主と呼べる存在なのだろうか。


 下には無事に下りることができた――広い意味で言えばだが。木の中に突っ込んだ時には枝や葉がクッションになって落下の衝撃を妨げてくれたものの(下りた後で確認してみると、なんとあれほど階段を上り下りしたというのに自分達がいたのは四階だった)、地面に着地する際に霧島は足首を捻ってしまったのだ。他の二人は軽い切り傷や打ち身などがあったが、行動に支障が出るほどではなかった。


 篠田に肩を貸してもらって草の上に散らばっている瓦礫の破片を避けて進むと、完全に怯えきった顔の熊谷がこっちに向けて手を振っているのが見えた。メイドたちが何回も近くを通り、爆発が起きた時など自分のすぐ横に煉瓦が落ちてきたと言う。こっちは死ぬほど心配したし、実際死ぬかと思ったんだぞ。生きているにしろ死んでいるにしろ連絡ぐらいはくれ、逃げる踏ん切りもつかねえ。


「それで、斉藤は?」と尋ねられた時、篠田は顔を伏せた。高田が何か言う前に、霧島が「死んだ」と一言、簡潔に言った。熊谷はメンバーを眺めて、そうか、と言ったきり無言だった。その後、さあここから逃げようぜ、お前らが死んでなけりゃそれでいいよ、と努めて明るく言った。意気消沈しているのは霧島から見てもすぐに分かったが、無理にでも元気を出そうとしているのが有り難かった。


 霧島はその時になってから美村のことを思い出し、すぐに無線機を取り出すと連絡を取ろうとする。だがイヤホンからはノイズばかりが流れ出てきて、それらしい声や音は何も聞こえない。問題が起きた時は慧音と逃げるように言い含めてあるから、もう脱出したのかもしれない。


 まだ美村がいたとしても、ここを動かないのは危険だった。館をここまでグシャグシャにしてしまったのだ、捕まれば殺されるのは確実に違いない。美村には慧音と脱出してもらうことにして、霧島たちは筏に乗り込んだ。


 湖に出た後はコンパスに沿ってひたすら東へと真っ直ぐ向かい、全員が妖精や妖怪に出くわしませんようにと祈っていた。その中でオールは熊谷と高田に任せ、篠田と霧島は残弾のチェックをしていた。一度か二度、遠くで何か光のようなものが動くのを目撃し全員が腹ばいになったが、興味を惹かなかったのか見つからなかったのかはともかく、光は消えていった。筏に揺られながら霧島はふと、帰ったらどうしようかと思っていた。


 調査を成功させた暁には、刑期が強制終了され、一千万が貰える。その金で俺はどこへ行って、何をしよう? 何をすればいいんだろう? 


 ぼんやりと熊谷にそのことを尋ねてみた時、彼は波に揺られながらも、墓参りがしたいと答えた。俺が殺した人の墓参りがしたいんだ。幾ら刑務所から出られても、そうしないと本当に償ったって気がしないからさ。


 ああそうか、と霧島は思って、両親や弟が眠る墓というものを心の中で描いてみる。墓標には何と記されているだろうか、霧島家之墓、それともキチガイ息子に殺された哀れな家族の墓?


 首を振って、その考えを追い出す。そういった自分を否定することはもうやめなくちゃいけない。多分それだと、俺の心はずっと捻じ曲がったままだ。そのうち嫌な臭いを発してまた腐り始めるだろう。


「墓参り」
 わざわざ口に出して呟いてみる。
「墓参りをする」


 そうだよ、と熊谷が言う。そうして初めて自由になれるんじゃないか、と口にしてから自説が愚かしいものであるかのように、恥ずかしそうに笑った。霧島も同じように笑う。


 そうしてから、自分が家族について考えても、もうあまり吐き気を感じないな、ということに気がついた。






 飢えた野獣のようにぎらぎらとした光を放ちながら満月が夜の中で自己主張している時、「獣」は草むらの中でじっと隠れていた。鼻を地面にこすり付けて荒い鼻息を噴出しながら前方を見据え、獲物が通りがかるのをひたすらに待ち構えている。


 あの子供に逃げられた時――己の生涯の中で、何と大きな不覚だったか!!――それはアレに追いつかれないぐらい安全な場所に逃げ延びてから自身の不甲斐なさに転げまわり、地面を何度も蹄で引っかいたものだった。勿論次に捕まえた獲物はズタズタに引き裂いて辺りに湯気がたったままの内臓を撒き散らしてやったものだが、それでも気が済む物ではなかった。


 だがあの獲物に逃げられてから幾らか年月が経ち、奴らは思いも寄らない時に現れた。一人でやってくるものもいれば、あの「獣」が恐れている筒を持って現れた二人組みもいた。一人の男は出会ったその場で内臓を引きずり出してやったが、二人組みの方を見た時には十分な貯蓄があったし腹も減っていなかったので、わざと逃がすことにした。あれから奴らは見ていないが、おそらく他の妖怪に食われたのだろう。生きていた時や死体から立ち上る匂いからして、その人間らはあの子供と同類だということにすぐ感付いた。長い間野生と隣り合わせに育った生き物特有の匂いがそいつらからは嗅ぎ取れなかったし、清潔な匂い、怯えた際に立ち上る柑橘類の匂いはあの子供とまるきり同じだった。


 そいつらを機にばったりと出現は止み、どれくらいの時間が経ったのか分からない頃、そいつらを見るまで「獣」は忘れてしまっていた。いつものように空を飛ぶ悪鬼の気配から隠れて、元いる場所に戻ってみれば、そこには大量に奴らの死体が落ちているではないか! 丁度腹を減らしていた事もあり、肉類は食料としておいしく頂いた。食いきれない分は千切って巣の中に持ち込んでいるので、他の生き物に持ち去られる心配は無い。今は雪が降る寒い時期だが、温かい巣の中では肉類に蝿が集っていることだろう。あまり気にするものでもないが、帰ったら追い払う必要がある。


 そして「獣」が待ち伏せしているのは、奇妙なぽっかりと空いた、穴のようなものの手前だった。今まででは全く気付かなかったが、肉類を食料にした翌日に発見してみれば、なんと奇妙な代物か。その穴からは生物の臭いがせず、また見た感じ生物的なものが何も感じられない。ただそこにぽっかり空いただけの、ごく普通の穴だ。


 きっとあいつらはここから出てきたに違いない。今のところ匂いが戻った感じはしないから、そのうちに戻ってくるだろう。


 だから「獣」はそれを発見した時から、獲物を待ち伏せするためにこの草むらへと身を隠し、奴らがやってくるのは今か今かと待ち構えている。もしも人間が、森で発見した奴らの同類がこっちに近づいてきたら、「獣」はその体躯を活かして突進し、一人残らず食い散らかしてやる積もりだった。一人ならば一人を食い、二人いるなら二人を食い、十人いるならば十人全員を食ってやろう。


 あの子供――むかつく程に小さくすばしこく、「獣」が手出しできないアレの下へと逃げ出してしまった姿が思い浮かぶ。より一層の苛立ちが高まり、憎しみが加速される。あいつらを殺せ、あいつらを殺せ、あいつらを殺せ。


 それを考えると、一際大きな鼻息が鼻の穴から漏れ出た。待ち伏せの効果を無くしてしまうそれを一瞬で止めると、狩人である「獣」は用心深く待った。


 待ち続けた。
長々と物語に付きあわせてしまいましたが、次でようやく一区切りというか終わりますので、それまでどうかお付き合い下さい。
復路鵜
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